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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 小 松 哲 也

     学位論文題名

  Late Quaternary lake ― glacier interaction in the Karakul closed‑basln . eaSternPamir

(パミール高原東部,カラクル流域における第四紀後期の      湖水位・氷河変動とその関係)

学位論文内容の要旨

  閉塞湖は排出河川を持たない湖であることから,その水位は流域の降水量と気温の変化 を反映するものとして古くから注目されてきた.一方,氷河を擁する閉塞湖の湖水位変動 とその意味についてはほとんど検討されていない,そこで本研究では,パミール高原東部 の閉塞湖であるカラクル湖(3915ma.s.l.)とその流域を対象に,湖と氷河の変動につしゝて 明らかにし,復元された湖水位変動の古気候学的意味について検討した.パミール高原は,

チ ベ ッ ト 高 原 の 西 端 部 を 占 め , 偏 西 風 に よ る 水 蒸 気 輸 送 を 受 ける 山 域 であ る .   湖水位変動と氷河変動の復元は,第四紀層序学的・地形学的手法にもとづいた.すなわ ち,湖と氷河の変動を示す地形の認定・区分を目的とした衛星画像の立体視判読と野外調 査による地形・堆積物の記載,汀線高度の測量である.

  旧 汀線地形 は,北 岸の扇状 地上に 比高1〜15mの 小崖地 形として60段残されている.

扇 状 地 発達 と の 関係 に 基 づい て ,この 旧汀線 地形群は4つ のグルー プ(H.M.L. LL旧 汀線;それぞれ22,13,15,10段)に区分される.各グループの最高位汀線の現湖面から の比高は,それぞれ205m(4120ma.s.l.),85m(4000ma.s.l.),35m(3950ma.s.l.),10m(3925 ma.s.1.)である.また,北岸と南岸での観察結果から,H旧汀線には7段,M.L・LL旧 汀 線 に は そ れ ぞ れ 2段 の 明 瞭 な 旧 汀 線 地 形 が 含 ま れ る こ と を 確 認 し た ,   南 西部の谷 中分水 界(3950ma.s.l.)付近の谷 埋め地 形とその 発達過程は,M‑L‑ LL旧 汀線に示される湖水位変動が,閉塞流域内の水収支を反映したものであることを示す|一 方,H旧汀線については,氷河地形の分布から,その最高湖水位は氷河塞き止めに起因す ると考えられる,しかし,この氷河拡大に伴う谷埋めの証拠は4080〜    70ma.s.l.までしか残 されていないため,4120ma.s.l.から4080〜  70ma.s.l.までの湖水位低下は,排出河川の形 成によって生じた可能性も考えられる.

  湖成地形と氷河地形の分布とそれらの発達史に基づき,湖と氷河の関係は次のようにま と められる .(1)4回の高湖 水位期 は流域内の4回の氷河前進期に対応する.(2)L‑H 旧汀線の最高位に対応する高さでターミナルモレーンが湖成段丘と接する,この点から,

カ ラクル流 域の氷河前進と湖水位上昇のピークは同期していたと考えられる.(3)H‑M 旧汀線の最高位に対応する高湖水位期には,山麓線を越えて発達した氷河のほとんどが,

当時の湖面に直接流出していた.すなわち,カーピング型氷河であった.一方,L. LL旧 汀 線 の 最 高 位 に 対 応 す る 高 湖 水 位 期 に は , カ ー ピ ン グ 型 氷 河 は認 め ら れな い .   4回の高湖水位期とそれに対応する氷河前進期がどの程度の時間間隔を持ったイベント なのかを判断するため,氷河地形上の礫の風化度合いの違いを評価した.着目したのは塩

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類 風化によ ると考 えられる 穿孔型の 風化現 象である.結果,L‑M‑H旧汀線に対応する氷 河地形上の礫の風化指標に有意な差が見られた,また,X線回析から塩類風化物にはジプ サムとハライトが含まれることがわかった,この地域と同様に塩類風化の卓越する南極で は,氷河地形上の礫の風化度合い,その絶対年代,そして風化に関わる塩の種類が明らか に されてい る.そ うした南 極での既 往研究 を参照すると,L‑M‑H旧汀線に対応する氷河 地形上でみられた礫の風化程度の違いは,数万年程度の露出年代の差を示したものだと考 えられる.

  湖成・氷河地形発達の特徴,礫の風化度合いの差,バミール高原内外の氷河地形の絶対 年 代研究か ら,4回の高 湖水位期 の時代 はそれぞ れMIS8,6,4,2に 対比される可能性 が高い.これにより多段旧汀線地形は,二つ前の氷期以降の各氷河最大拡大期から間氷期 に向かう流域の水収支の変化を一段一段に記録したものとして解釈できる.こうした湖水 位変動が,D‑Oサイクルのような急激かっ短期的な気候変化も反映している可能性もあり,

今後の詳細な検討が望まれる.また,復元されたカラクル流域の湖と氷河の変動は,両者 の最大拡大規模が顕著に縮小していくパターンをみせる.このことから,バミール高原内 へ の水蒸気 流入量は,少なくともMIS8以降,氷期を経るごとに著しく減少していったと 結論づけられる.

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学位論文審査の要旨

主 査    准 教 授    渡 邉 悌 二 副 査    教 授    平 川 一 臣 副 査    教 授    杉 本 敦 子 副 査    助 教    澤 柿 教 伸

副 査    教 授    岩 田 修 二 ( 立 教 大 学 観 光 学 部 )

     学位論文題名

  LateQuaternarylake ―glaCierinteraCtion intheKarakulC10Sed ‐baSin . eaSternPamir

(パミール高原東部,カラクル流域における第四紀後期の      湖水位・氷河変動とその関係)

  申請者 は,パ ミール高 原東部 に位置す る閉塞湖であるカラクノレ湖く3915皿a.s.l.)とその 流域を 対象に ,湖と氷河の変動,および両者の関係について明らかにした。パミール高原は,

チ ベ ッ ト 高 原 の 西 端 部 を 占 め , 偏 西 風 に よ る 水 蒸 気 輸 送 を 受 け る 山 域 で あ る 。 湖 水位 変 動 と氷 河 変 動の 復 元 は, 第四 紀層序学 的・地 形学的手 法にもと づぃて 行われた 。 すなわ ち,湖 と氷河の 変動を示 す地形 の認定・ 区分を 目的とし た衛星 資料の立体規判読と野 外調査による地形・堆積物の記載,汀線高度の測量である。

  湖水位 変動に っいては ,過去 の湖水位 を示す地 形(旧 汀線地形 )の全てが,北岸に分布す る扇状 地上に 比高1〜  15mの 小崖地 形として60段残さ れている ことが 見出された。この60段 の 旧 汀 線 地 形 は , 扇 状 地 発 達 と の 関 係 に も と づ ぃ て4っ の グ ル ープ(H・M‑L‑ LL旧 汀線

; それ ぞ れ22,13,15,10段 ) に区分 された。 各グル ープの最 高位汀 線の現湖 面からの 比 高 は , そ れ ぞ ・}1205m(4120ma.s.l.),85m(4000ma.s.l.),35m(3950ma.s.l.,1 Omく3925ma.8.l.)で ある。 また,南 西部の谷中分水界(3950皿a.8.L)付近の谷埋め地 形とその発達澗l程の検ロ寸カゝら,H旧汀線の最高水位から40〜5011二1の水位低下分を除く全て の 湖 水 位 変 動 が 閉 塞 条 件 下 で の 水 収 支 を 反 映 し て 生 じ たも の で ある こ と が示 さ れ た。

  氷河・ 融氷河 流・湖成 地形の 分布,韜 よぴそれ らの発 達史に基 づき,湖と氷河の関係は次 の よう に 示 され た 。 (1) 旧 汀線 グ ル ー プが 示 す4回 の 高 湖水 位期は ,流域 内の4回の氷河 前 進期 に 対 応す る 。 (2) 湖 水位 ヒ 昇 と 氷河 拡 大 のピ ー ク は同 期 す る。 (3)H・M旧汀 線 の最高 位に対 応する高 湖水位期 には, 山麓線を 越えて 発達した 氷河の ほとんどが,当時の湖 面に直 接流出 していた 。すなわ ち,カ ービング 型氷河 であった 。一方 ,L・I亠旧汀線の最高

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位 に 対 応 す る 高 湖 水 位 期 に は , カ ー ビ ン グ 型 氷 河 は 発 達 し て い な か っ た 。   高湖水位期に対応した4回の氷河前進期がどの程度の時間間隔を持ったイベントぬのかを 判断するために,氷河地形ヒの礫の風 イ蹴いが調べられた。その結果,塩類風化に起因す る穿孔型の風化度合いが,L‑M‑H旧汀線に対応する氷河地形ヒで有意に異なることが示 された。また,この地域の塩類風化に関わる塩がジプサムとハライトであることが,風化物 のX線回析から示された。この地域と同様に塩類風化の卓越する南極では,氷河地形上の礫 の風イ蹴い,その絶対年代,そして風化に関わる塩の種類が明らかにされている。そうし た既往研究との比較から,L‑M‑H旧汀線に対応する氷河地形ヒでみられた礫の風化の差 は,数万年程度の露出年代の差を反映したものだと考えられた。

  4回の高湖水位湖の時代は,地形発達の特徴,氷河地形ヒの礫の風化度合い,パミール高 原とその隣接地域における氷河地形の絶対年代研究から,それぞれ,lvnS8,6,4,2に対 比された。これにより多段旧汀線地形は,二つ前の氷期以降の各氷河最大拡大期から間氷期 に向かう流或の水収支の変化を一段一段に記録したものとして解釈きれた。また,復元され たカラクル閉塞流域の湖と氷河の変動は,両者の最大拡大規模が顕著に縮小していくパター ンをみせることから,パミール高原内への水蒸気流入量は,少なくともMLS8以降,氷期を 経るごとに著しく減少していったと結諭づけられた

  以上のと船り,申請者はパミール高原での古環境変化に関する新知見を得たものであり,

中 央 ア ジ ア に お け る 第 四 紀 研 究 に 対 し て 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   審査委員一同は,これらの成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ熱心であり,大 学院博士課程における砌矧鷄単位などもあわせ,申請者が博士(環境i茸。の学位を受 けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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