博 士 ( 地 球 環境 科 学)宮 路淳幸
学 位 論 文 題 名
クリーン燃料合成のための
ヘテロポリ酸系二元機能触媒の設計 学位論文内容の要旨
ガソルンエンジンのアンチノック 性を向上させるためには,高オクタン価ガソルンが有 効である.オクタン価向上には芳香 族化合物やェーテル類が有効であるが,発ガン性や環 境汚染など環境負荷が高いことから ,これらのガソルン中への含有量の削減が要求されて おり,今後,さらに規制される予定 である.一方,オクタン価の低い直鎖炭化水素を骨格 異性化し,高オクタン価である多分 岐炭化水素へと変換する方法は,芳香族化合物などの 環境負荷物質を含むことなく高オク タン価ガソリンを合成するクリ ン燃料合成法として 注目されている.この反応では,酸 点上での多分岐炭化水素への異性化の副反応として.
クラッキングが起こる可能性がある .特に,直鎖炭化水素の中でも炭素数が7以上になる と,p開裂(C7の 場合C3とC4へ の分 解) が進 行し やす くなり,選択的異性化が難しくな る.即ち,目的生成物である多分岐 炭化水素収率向上と副反応であるクラッキングの抑制 が,この反応の課題である.
本研究では,高選択性骨格異性化 触媒の開拓を目的として,水素化機能と酸機能を有す るへテ口ポル酸二元機能触媒(PdーH4SiW12040/Si02)を用いて主に阿―ヘプタンの骨格異性 化反応を行い,生成物選択性と触媒 の表面酸性質との関連,水素化機能を果たす金属成分 の役割について明らかにした.また,門・ヘプタン骨格異性化反応における反応生成物の生 成過程を系統的に追跡し,副反応で あるクラッキングが起こるステップを明確にした.
門‐ヘプタン骨格異性化反応では,Pdを含まない固体酸触媒では反応はほとんど進行せず,
二元機能触媒ではその1000以上の初 期速度を示したことから,この反応ではまず金属上で 脱水素される過程が重要であること が分かった.また,H4SiW12040の担持量をSi02に対し て10‑40 wt%の範囲で変化させると,H4SiW12040のケギン構造は保持されたままH4S1W12040 の酸強度はまず強酸点側から抑制さ れた.これは,H4S1W12040のプロトンがSj02上のOH 基と相互作用したためである,担持 量の減少に伴って酸強度はさらに抑制されたが,これ はH4SiW12040の分散性が向上したた めにOH基と充分に相互作用することができ,酸強度 の抑制の度合いが高まったと結論し た.また,異性化選択性は,担持量の減少に伴って向 上したことから,触媒表面の酸強度の抑制が門・ヘプタン異性化選択性の向上に効果的であ ることが明らかになった.一方,触媒活性はPd‑15 wt%H4SjW12040/Si02が最も高く,さら にH4SiW12040の担持量を増加させる と活性は低下した.これはH4S1W12040が充分に分散 されないために,酸強度が抑制され ずに存在する強酸点のためである.最高活性を示した Pd‑15 wt%H4SiW12040/Si02は,これまで門‐ヘプタン骨格異性化反応に優れていると報告さ れているPd‑H‑pゼオライトの単位時 間,触媒重量あたりの異性化生成物の収率を3倍以上 凌ぐ,優れた触媒であることが明らかになった.また,この触媒の酸成分であるH4SiW12040 をあるいはアルカ゛リ金属で修飾することで酸強度を制御すると,さらに選択性の向上を図 ることが出来た.
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か ヘ プ タ ン の 異 性 化 経 路 と し て ,単 分子 機構 と二 分 子機 構が 考え ら れる .単 分子 機構 で は ,C7カ ル ベ ニ ウ ム イ オ ン 中 間 体 がク ラッ キン グを 起 こす 可能 性が あ るが ,こ れは ェネ ル ギ ー 的 に 不 安 定 な 一 級 カ ル ベ ニ ウ ム イ オ ン で あ るCl,C2を 経 由 せ ず ,C3とC4が 選 択 的 に 生 成 す る . 一 方 , 二 分 子 機 構 で は , 生 成 し たC14カ ル ベ ニ ウ ム イオ ン 中間 体は ,ク ラッ キ ン グ 生 成 物 と し てC3とC4の 他 に ,C5,C6な ど を 生 成 す る 特 徴 が あ る . 本 研 究 で は , 水 素 化 能 を 有 す る 金 属 成 分 を 含 ま な い 固 体 酸 触 媒 上 で は ,C3とC4の ほ か にC5,C6の 生 成 が 認 め ら れ た た め に 二 分 子 機 構 で 進 行 し, 金属 成分 を含 む 二元 機能 触媒 上 では ,ク ラッ キン グ 生 成 物 と し てC3とC4の み が 選 択 的 に 生 成 し た た め , 単 分 子 機 構 で 進 行 す る と 結 論 し た . ´7‐ ヘプ タ ン骨 格異 性化 反 応に おけ るク ラッ キ ング過程を明確にす るため,単分子機構で 進 行 す る 二 元 機 能 触 媒 上 で の か へ プタ ン骨 格異 性化 反 応の 生成 物の 生 成過 程を 系統 的に 追 跡 した 結果 ,門 ‐ヘ プ タン は金 属上 で脱 水 素さ れて 反応 が 開始 する と, 水素 化分解を起こす こ とな く, 先ず 一次 異 性化 生成 物で ある2‐ メチ ル ヘキ サン ,3.メ チル ヘキ サンヘと異性化 し た. その 後, それ ら から ジメ チル ペン タ ン類 が二 次異 性 化生 成物 とし て逐 次的に生成し,
さ らに クラ ッキ ング 生 成物 であ るC3とiso‑C4は ジメ チル ペ ンタ ン類 から 逐次 的に生成した.
他 の 分 解 生 成物 は生 成し な かっ た.C3とiso‑C4が生 成す る可 能 性と して は,2‐ メチ ルヘ キ サ ンと2,4‐ジ メチ ル ペン ダン から のク ラ ッキ ング があるが,後者はD開裂でニ級カルベニウ ム イオ ンを 経由 する た め, クラ ッキ ング が 容易 に進 行す る と推 定で きる ,そ こでPd‑15 wt% H4SiW12040/S102で門‐ヘプ丶夕ン,2.メチルヘキサン,3.メチルヘキサンおよび2,4‐ジメチル ペ ンタ ンの 反応 特性 を 追跡 した 結果 ,2゛メ チル ヘ キサ ンと3. メチ ルヘ キサ ンの反応性はほ ぼ 同じ でク ラッ キン グ はほ とん ど進 行せ ず ,2,4‐ ジメ チ ルペ ンタ ンで はク ラッキングが容 易 に進 行し たこ とか ら ,ク ラッ キン グは2. メチ ル ヘキサンからではな く,主に2,4‐ジメチ ル ベンタンから進 行すると結論した.さらに ,Pd‑H4S1W12040/Si0っでの2,4‐ジメチルペンタ ン の反 応に おい て, ク ラッ キン グ選 択率 は 酸強 度の 増加 と とも に大 きく 増加 したことから,
2,4‐ ジメ チル ペン タ ンの クラ ッキ ング は ,触 媒の 酸強 度 に大 きく 支配 され ることが明らか に なっ た. この こと か ら, 触媒 の酸 強度 を 制御 し,2.4‐ ジメ チル ベン タン のクラッキング を 抑 制 す る こ と が , 高 分 岐 ヘ プ タ ン 選 択 性 触 媒 の 構 築 に 有 効 で あ る と 結 論 し た . 以 上 , 触 媒 酸 強 度 の 制 御 に よ り 高選 択性 骨格 異性 化 触媒 を設 計し , 優れ た触 媒性 能を 発 揮 する 門− ヘプ タン 骨 格異 性化 のた めの へ テ口 ポル 酸二 元 機能 触媒 を開 拓し た.また,骨格 異 性 化 反 応 に お い て の ク ラ ッ キ ン グス テッ プに 関す る 重要 な知 見を 得 るこ とが 出来 た. 今 後 , 本 研 究 の 知 見 を 基 に , ク ラ ッ キン グス テッ プを 踏 まえ た触 媒設 計 を行 うこ とで ,ク ル ー ン 燃 料 合 成 の た め の 高 選 択 性 異 性 化 触 媒 が 開 拓 で き る こ と が 期 待 さ れ る ,
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