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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 植 松 敏 也

     学位論文題名

低カルシウム環境下培養ラット胎児頭蓋冠由来骨形成細胞      の ミ ト コ ン ド リ ア 内 遊 離 カ ル シ ウ ム の 動 向

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    緒言

歯周疾患あるいは骨粗鬆症などの硬組織代謝抑制を伴う病態を解明す る ため には, そのモ デルとしてjnレivoでは低カルシウム食飼育,m vf troでは低カルシウム環境実験系を用いることは有用である。これまで 低カルシウム環境下で培養したラット胎児頭・蓋冠由来骨形成細胞(骨形 成細胞)では,細胞内遊離カルシウム濃度あるいは蛍白質リン酸化酵素 のプ口テインキナーゼC活性の低下が生じ,細胞内情報伝達系に影響を 与えること,また低カルシウム環境に陥り,石灰化抑制の生じたラット の脛骨骨端軟骨板では,その軟骨細胞における細胞内カルシウムの貯蔵 所のーつであるミトコンドリアに形態学的変化の生じることが報告され ている。しかし,低カルシウム環境において培養した骨形成細胞のミト コンドルアにおけるカルシウムならびに遊離カルシウムなどのカルシウ ム動態に及ぽす低カルシウム環境の影響について検討した報告はほとん ど見当たらない。そこで,硬組織代謝抑制機構の一端を解明するために,

ラット胎児頭蓋冠から骨形成細胞を分離し,低カルシウム環境下におい て,その全細胞内カルシウ厶量,全ミトコンドリア内カルシウム量を測 定し,さらにミ卜コンドリア内遊離カルシウムに及ぼす低カルシウム環 境の影響を,カフェイン,ライアノジン,ルテニウムレッド等を用いて 調 べ, ミトコ ンドリ ア内遊離カルシウムの動向について検索した。

    材料と方法

  胎生18〜21日齢のWistar系ラットの頭蓋冠より酵素消化法を用い細 胞 を採 取し,a MEMを用 い通法 に従 い6〜7日間培 養を行 った。培養 液のカルシウム濃度は,対照群では1. 87 mM,低カルシウム群では0.34 mMとした。培養は,60 mm径のディッシュを用い37℃,5%C02,95%

(2)

Airの 気 相下 で ,培 養 液は2日 ごとに交換 して行った。細 胞fま,培養6

〜    7日目,コンフルエントの状態を確認後,ラバーポリスマンで採取し た 。全 細胞 内 カル シ ウム 量 の測 定の た め, 採 取し た 細胞 を ,750xg, 5分間遠心し ,正常ならび に低カルシウ ムの培養液を 一定量加え,十分 にピペットで均一化したのち,吸引法により,0, 45 11m,ミリポアーフィ ル夕、ー上に集めた。一方,全ミトコンドリア内カルシウム量ならびにミ トコンド リア内遊離カル シウムの測定のため,ラバーポリスマンで採取 した細胞を,0. 25Mシュク口ース中で段階的に処理を行い,ミ卜コンド リア分画 を回収した。カ ルシウム濃度の測定は,フアル夕一上に集めた 細 胞を0. 1NHC1,2縦中 に 浸漬 し ,ま たミ ト コン ド リア 分 画にfま,

O.lNHC1を1紺 加 え , 共 に 室 温 中 に24時 間 放 置 す る こ と に よ り , カ ルシウム を溶出し,原子 吸光分光光度計(Varian,AA・1475型)にて測 定した。 蛋白質量tま Lowry法にて 測定した。ミト コンドリア内 遊離カ ル シウ ム濃 度 は,Flu03―AMを用 い,螢光分光 光度計(目立F4010型)

で 測定 した 。 また ミ トコ ン ドリア 内遊離カルシウ ムの放出機構 は,カ フウイン ,ライアノジン ,ルテニウムレッド等を用いて検討した。なお ミ ト コ ン ド リ ア の 形 態 学 的 観 察 を 透過 型 電子 顕 微鏡 によ り 行っ た 。

    鈷果

  1.全細胞内カルシウム量は,対照群の272土32nmol/mg protein(n二ニ6) に対し,低カルシウム群では,145土39nmol/mg proteinくn:6)と低く,危 険率0.1%で有意な差が認められた。

2. ミ トコ ン ドリ ア 分画 の透 過 型電 子顕微鏡 による観察か ら,対照群な ら びに低カルシ ウム群ともに ,膜構造の損傷 はほとんど認 められず,ま た 内部にはミト コンドリアの 特徴であるクリ ステを有して いることを確 認した。

  3.全ミトコンドリア内カルシウム量は,対照群の12.20土2. 81nmol /mg proteinくn=9)に対し,低カルシウム群では,6.55土2.55nmol/mg protein くn=9)と低く,危険率O.l%で有意な差が認められた。

  4.ミトコンドリア内遊離カルシウム量は,対照群では116土28nMくn=8),

低カルシウム群では118土30nM(nニニ8)であり,両群問に有意な差は認めら れなかった。

  5.ミト コンドリア内 遊離カルシウム は,両群においてカフウイン,ラ

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イアノジン ,ルテニウムレ ッド投与によ り減少し,それぞれの最大変化 の1/2の 変化 を与え る濃度(Ko.5)は, 低カルシウム 群において高く , 低カルシウ ム環境下で培養 した骨形成細 胞のミトコンドリアのこれら化 学物質によ るカルシウム放 出に抑制が認 められた。特に,その変化はラ イアノジン において著明で あり,低カル シウム群のKo.5は,対照群に比 較し100倍高かっ た。

  6.カフェイン によるミトコンドルア内遊離カルシウムの減少は,両群 においてラ イアノジン投与 により抑制さ れた。その減少の程度は,対照 群において 大きかった。ま たその減少は ,ルテニウムレッド投与により 対照 群 では 抑 制さ れた が ,低 カ ルシ ウ ム群 で は抑制が生 じなかった。

    考察

低 カ ルシ ウ ム環 境下 で 培養 し た骨 形 成細 胞 の全 細胞 内 カル シウム量お よ び全ミトコンド リア内カルシ ウム量が,正 常環境に比較 し,有意に低 下した。これは,外部カル′シウム環境の低下に伴しゝ,細胞内カルシウム 貯 蔵庫のーつであ るミトコンド リアから正常 な細胞機能維 持に不足した カ ルシウムを補償 するため,カ ルシウムを放 出したことに 基凶すると考 えられる。

  ミト コンドリア内 遊離カルシウ ムは,カフウイ ン投与により濃度依存 性 に減少した。ラ イアノジンお よび少テニウ ムレッドで前 処理するとカ フ ェイン投与によ る相対螢光強 度の変化の程 度は減少し,Ko.5は増加し た 。 一般 にCalcium induced calcium release(CICR)か興奮 性細胞の 筋 小胞体に存在す ることは知ら れているが, 非興奮性細胞 においてはそ の 存 在は ま だ不 明で あ る。 し かし , 本研 究 にお いてCICRを促進す るカ フ ェインの効果が ,CICRを抑制するラ イアノジンお よびルテニウムレッ ド により抑制され たことから, 非興奮性細胞 である骨形成 細胞のミトコ ンドリアにCICRの存在する可能性が考えられた。

  低カ ルシウム環境 下で培養した骨形成細胞では,紲I胞内情報伝達系の 一 部の抑制により 細胞機能に抑 制などの生じ ることが報告 されている。

こ の低カルシウム 環境の影響に より,ミトコ ンドリアのCICRと考えられ る 機構に対しカフ ェイン及びラ イアノジンの 反応性の低下 が生じたこと か ら,低カルシウ ム環境がミト コンドリアの カルシウム調 節機構に影響 を与えることが示唆された。

(4)

    結諭

低カルシウム環境下培養骨形成細胞では,全細胞内カルシウム量,全 ミトコンドリア内カルシウム量が減少しミトコンドリアのCICRにおける カルシウム放出機構に抑制が発生し,これらが要因となって細胞の機能 に抑制の生じることが推測された。したがって,生体が低カルシウム環 境に陥ると骨の改造に関与する細胞機能に影響し,細胞内情報伝達系に ぎそ常が生じることが示唆された。

(5)

学位論文審査の要旨

主査 副査.

副査

教授 教授 教授

下河辺 松本 久保木

学 位 論 文 題 名

宏功      芳徳

低カルシウム環境下培養ラット胎児頭蓋冠由来骨形成細胞 のミトコンドリア内遊離カルシウムの動向

審 査 は 主 査 , 副 査 全 員 が 一 堂 に 会 し 口 頭 で な さ れ た 。 始 め に 申 誚 者 に 対し 本 論文 の 要旨 の 説明 を 求 めたとこ ろ,以下の 内容につい て論述した 。

    緒言

歯 周 疾 患 あ る い は 骨 粗 鬆 症 等 の 硬 組 織 代 謝 抑 制 を 伴 う 病 態 を 解 明 す る た めに は ,そ の モデ ル とし てm、イ、′〇 では低カル シウム(Ca)食飼 育,nj vitroで は 低Ca環 境 実 験系 を 用い る こと は 有用 で ある 。 これ ま で低Ca環境 下 で 培 養 し た ラ ッ ト 胎 児 頭 蓋 冠 由 来 骨 形 成 細 胞 で は ,翁 ‖ 胞 内遊 離Ca濃 度 ある い はプ 口 テイ ン キナ ーゼC活性等の 低下.また ラッ卜J墜骨骨ウ 尚i臥 骨板では ,!1火骨荊‖胞ミトコンドリア(Mt)の形態学的変化が報告されてい る 。 し か し , 低Ca環 境 下 に お け る 骨 形 成 細 胞MtのCa並 びに 遊pl{ Ca等 の 勁 態は 不 明で あ る。 そ こで , ラッ 卜 胎児 頃 蓋冠 か ら骨 形 成細胞 を分離し,

低Ca環 境 下 に お い て , 全 細 胞 内Ca量 | 全Mi内Ca量 を 測 定 し , さ ら にMt 内 遊 離Caに 及 ば す 低Ca環 境 の 彫 響 を , カ フ ウ イ ン(Caf), ラ イ ア ノ ジ ン (Rya), ル テニ ウ ム レッ ド(Rut)等 を 用い て 調ベ ,lx4t内 遊 離Caの鋤向を 検 索した。

    材 料 と 方 法

胎 生18〜21日 齢のWLS tar系 ラッ ト 頭 蓋冠 よ り酵 素 消化 法 を用 い 細胞 を

(6)

採 取 し , a MEMを 用 い 通 法 に 従 い67日 間 培 養 を 行 っ た 。 培 養 液 の Ca 濃 度 は 、 対 照 群 で は 1.87mM, 低Ca群 で は0.34mMと し た 。 培 養 は ,60mm 径 の デ ィ ッ シ ュ を 用 い37℃ . ′5U/0 CO 95a/o Airの気 相下 で, 培養液 は2 ご と に 交 換 し た 。 細 胞 は , 培 養67日 目 , コ ン フ ´ レ エ ン ス の 状 態 を 離 認 後 , ラ ノ ヾ 一 ボ リ ス マ ン で 採 取 し た 。 採 取 し た 細 胞 を 吸 引 法 に よ り ,0.45 mミ リ ポ ア ー フ イ ル タ ー 上 に 集 め , 全 細 胞 内Ca量 の 測 定 に 供 し た 。 ま た , 分 画 遠 心 に よ り Mtを 回 収 し , 全MtCa量 並 び にMt内 遊 離 Caを 測 定 し た 。Ca濃 度 は , 原 子 吸 光 分 光 光 度 計 (VarianAA1475)で 測 定 し た 。 蛋 白 質 量 はLoxvry法 で 測 定 し た 。Mt内 遊 商flCa濃 度 は ,Flu03‑AMを 用 い 螢 光 分 光 光 度 計 ( 目 立F4010型 ) で 測 定 し た 。 ま たMt内 遊 離Caの 放 出 機W1は , CafRyaRut等 を 用 い 検 討 し た 。 な お , 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 でMtの 形 態 学 的 観 察 を 行 っ た 。

    結果と考察

Ca環 境 下 で 培 養 し た 骨 形 成 細 胞 の 全 細 胞 内Ca量 及 び 全MtCa uGkが , 正 常 環 境tこ 比 較 し 有 意 に 低 下 し た 。 こ れ は , 外 部Ca環 境 の 低 下 に 伴 い , 細 胞 内 Ca貯 蔵 庫 の ー つ で あ るMtか ら 正 常 な 細 胞 機 能 維 持 に 不 足 し たCa を柿償することに基因すると考えられる。

  Mt内 遊 出 佳Caは , 両 群 に お ぃ てCafRyaRut投 与Iこ よ り 減 少 し た 。 そ れ ぞ れ の 最 大 変 化 の1/2の 変 化 を 与 え る 濃 度 ( Ko.s) は , 低Ca群 に お ぃ て 高 く , 低 CaFat境 下 で 培 養 し た 骨 形 成 細J胞 のMtの こ れ ら 化 学 物 質 に よ Ca放 出 に 抑 制 が 認 め ら れ た 。 特 に , そ の 変 化 はRyaに お い て 著 明 で あ り,低Ca群のKo.sは.対照群に比較し100倍高かった。

  C甜 に よ る Mt内 遊 離Caの 減 少 は , 両 群 に お い てRya投 与 に よ り 抑 制 さ れ た 。 そ の 減 少 の 程 度 は , 対 照 群 に お い て 大 き か っ た 。 ま た そ の 減 少 は , Rut投 与 に よ り 対 照 群 で は 抑 制 さ れ た が , 低Ca群 で は 抑 制 が 生 じ な か っ た。

  ー一般にcalcium‑uiducedCalCiunlreleaSe(CICR)7jf興香i性荊H胞の筋′JヽJJ包体に 存 在 す る こ と は 知 ら れ て い る が , 非 興 奮 性 細 胞 に お い て は そ の 存 在 は ま だ 不 明 で あ る 。 し か し , 本 研 究 に お い て CICRを 促 進 す るCafの 効 果 が , CICRを 抑f制 す るRya及 びRutに よ り 抑f馴 さ れ た こ と か ら , 非 興 衛 性 細 〃 & で あ る 骨 形 成 細 胞 の Mt CICRの 存 在 す る 可 薈 j巨 性 が 考 え ら れ た 。

(7)

低Ca環 境下 で 培養 し た骨 形 成細 胞では, 細胞内情報伝述 系の一部の抑 制 によ り 細胞 機 能に 抑 制等 の生 じるこ とが報告され ている。この 低Ca 環境の影響により,MtのCICRと考えられる機わ1ヰに対しCaf及びRyaの反 応性の低下が生じたことから,低Ca環境がMtのCa訓師機おIIlに影響を与 えるこ とが示唆され た。

    結 諭

低Ca環境 下 培養 骨形 成 細胞 は ,全細胞内Ca量 ,全Mt内Ca量が減少 し,

MtのCICRに お けるCa放 出 機榊 に抑制の 生じることが 推測された。 従っ て,低Ca環境に陥 ると翁‖胞内 情報伝述系に異常が生じ,硬組織代謝抑 制を引き起こ すことが示唆 された。

ひ きっ づ き各 審 査員 と申 誚 者の あぃだで |本論文の内 容とその関迎 項 目につ いて質疑応答が なされた。こ れらに対して,申請者は本研究から 得た知 見と文献を引用 して明快かつ 適切な回答を行った。その結果,本 研 究に お いて 低Ca環 境下 培養 骨 形成細胞のMtのCa放出機榊に抑 制が生 じるこ とを見いだした ことは,今後 の硬組織代謝抑制の機榊解明に対し 極めて有意義な研究であることが認められた。

  以上より,審査委員は全員,本研究が学位論文として十分値し,中lil'j 者が歯学博士の学位授与にふさわしぃと認定した。

参照

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