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研究組織 PL 中村英樹 名古屋大学大学院環境学研究科教授 メンバー 井料美帆 東京大学生産技術研究所講師 植竹昌人 警察庁交通局交通規制課課長補佐 大口 敬 東京大学生産技術研究所教授 小川圭一 立命館大学理工学部准教授 尾崎晴男 東洋大学総合情報学部教授 康 楠 名古屋大学大学院環境学研究科研究

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平成26 年度研究調査プロジェクト(H2645)

ラウンドアバウトの社会実装と普及促進に関する研究(Ⅲ)

平成27年3月

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研究組織

PL 中村 英樹 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 メンバー 井料 美帆 東京大学生産技術研究所 講師 植竹 昌人 警察庁交通局交通規制課 課長補佐 大口 敬 東京大学生産技術研究所 教授 小川 圭一 立命館大学理工学部 准教授 尾崎 晴男 東洋大学総合情報学部 教授 康 楠 名古屋大学大学院環境学研究科 研究員 小林 寛 国土技術政策総合研究所 主任研究官 塩見 康博 立命館大学理工学部 講師 下川 澄雄 日本大学理工学部 教授 鈴木 弘司 名古屋工業大学大学院工学研究科 准教授 高瀬 達夫 信州大学工学部 准教授 竹下 卓宏 国土交通省道路局環境安全課 課長補佐 玉垣 潔士 警察庁交通局交通規制課 係長 野津 隆太 国土交通省道路局企画課 企画専門官 浜岡 秀勝 秋田大学理工学部 教授 森田 綽之 日本大学理工学部 客員教授 研究協力者 真島 君騎 名古屋大学大学院工学研究科 伊藤 大貴 名古屋工業大学大学院工学研究科 安田宗一郎 名古屋工業大学工学部都市社会工学科 オブザーバー 勝岡 雅典 飯田市建設部地域計画課 係長 森 茂夫 飯田市建設部地域計画課 係長 宗広 一徳 (独)土木研究所寒地土木研究所 主任研究員 泉 典宏 ㈱オリエンタルコンサルタンツ 部長 神戸 信人 ㈱オリエンタルコンサルタンツ 部長 中嶋 一雄 ㈱オリエンタルコンサルタンツ 部長 藤岡 亮文 ㈱オリエンタルコンサルタンツ 副主幹 池田 典弘 ㈱キクテック 専務取締役 宮島 謙治 ㈱キクテック 部長 阿部 義典 国際航業㈱中部支社 副支社長 米山 喜之 ㈱長大 担当部長 吉岡 慶祐 ㈱長大 野中 康弘 ㈱道路計画 常務取締役 野間 哲也 ㈱道路計画 部長 小川 一郎 セントラルコンサルタント㈱ 部長 松岡 寿章 セントラルコンサルタント㈱ 次長 事務局 今泉 浩子 (公財)国際交通安全学会 梶田 智之 (公財)国際交通安全学会

本報告書のカラー版(PDF)は,(公財)国際交通安全学会の

ウェブサイトよりダウンロードできます:

http://www.iatss.or.jp/common/pdf/research/h2645.pdf

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目 次

1. 背景と目的 ... 1 2. 研究内容 ... 1 2.1 各地におけるラウンドアバウト計画への技術的参画による事例データ収集 ... 1 2.2 セミナー等の開催による普及促進活動 ... 8 2.3 事例集の作成 ... 8 3. 事例集カルテ ... 12 3.1 事例集の紹介 ... 12 カル テ 1 長野県飯田市吾妻町 ... 13 カル テ 2 長野県飯田市東和町 ... 45 カル テ 3 長野県軽井沢町六本辻 ... 89 カル テ 4 静岡県焼津市関方 ... 147 カル テ 5 滋賀県守山市立田町 ... 179 カル テ 6 長野県須坂市野辺町 ... 208 カル テ 7 長野県安曇野市 ... 232 3.2 事例の横断的整理 ... 253 3.3 事例集の今後の展望 ... 254 4. 結論と課題 ... 255 謝辞 ... 256

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1. 背景と目的

これまでの(公財)国際交通安全学会(IATSS)におけるラウンドアバウトに関する調査研 究プロジェクトでの取り組みが一つの契機となり,平成25 年 3 月には飯田市東和町交差点 において日本で初めて信号交差点のラウンドアバウト化が実現した.これらの活動は国の 政策に対しても少なからず影響を与えることとなり,これまで軽井沢町や焼津市,守山市 におけるラウンドアバウト社会実験の実施にもつながっている.また平成25 年 6 月の道路 交通法一部改正では,ラウンドアバウトが「環状交差点」として正式に位置づけられ,平 成26 年 9 月 1 日に同法が施行されている.これらの状況を受けて,須坂市,安曇野市にお いてはラウンドアバウトの整備が進められ,他の自治体においてもラウンドアバウト導入 への動きが本格化している.平成26 年 1 月には,IATSS が共催して「ラウンドアバウトサ ミット」を飯田市で実施し,北海道から沖縄までの全国各地から約 230 名の参加者を集め 大きな反響を呼ぶとともに,同年 9 月の 8 自治体の首長らによる「ラウンドアバウト普及 促進協議会」の発足につながることとなった. このように,IATSS におけるラウンドアバウトに関する取り組みは,もはや一握りの集 団だけのものではなく,全国各地の行政関係者や技術者,周辺住民など,社会に対して広 く裾野を拡げたものとして,安全安心な地域づくりに欠かせないものとなってきている. このような取り組みを絶やすことなく,適切なノウハウの普及に努めていく必要がある. 他方,これまでの各地における技術的参画の成果としてデータや経験も一通り集積しつつ あり,平成26 年 9 月 1 日の改正道路交通法の施行を一区切りとして,これまでの蓄積を整 理して取りまとめることが必要であると考えられる. そこで本研究プロジェクトは,全国で整備済・整備中・計画中のラウンドアバウトや社 会実験に関して技術的参画を行い,事例データと経験を蓄積し,セミナーを各地で開催し て意見交換を図ることで,日本でのラウンドアバウトの適切な普及を促進する.また,こ れまでに得られた知見と経験を整理して,ラウンドアバウト整備事例集として取りまとめ ることを目的とするものである.

2. 研究内容

2.1 各地におけるラウンドアバウト計画への技術的参画による事例データ収集

平成26 年 9 月 1 日に施行された,環状交差点を位置づけた道路交通法の改正は,日本の ラウンドアバウトの運用方法に大きな変化をもたらした.環状交差点の規制標識が導入さ れることで,それまで丁字路として扱われてきたラウンドアバウト流入部における標識が 簡素化されるとともに,環道交通優先,徐行進入がこの規制に含まれるため,一時停止の 必要がなくなった.本研究プロジェクトで関わってきた複数のラウンドアバウトにおいて

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2 も,改正道路交通法施行に合わせて規制の変更が行われた. (1) 長野県飯田市 飯田市吾妻町,及び東和町のラウンドアバウトにおいては,9 月 1 日の道交法施行に合わ せて規制標識の交換が行われ,流入部の路面標示も「止まれ」から「ゆずれ」に変更され た.道交法施行後の交通流観測を行い,利用者挙動データの記録を行った. 図-2.1 東和町ラウンドアバウトの様子(写真提供:飯田市) (2) 長野県須坂市 須坂市野辺町の都市計画道路上に位置する無信号の通称 A 交差点は,約半年の改良工事 を経て,平成26 年 9 月 1 日に 5 枝のラウンドアバウトとして開通した.本研究プロジェク トでは,このラウンドアバウトの構想段階から関わってきたものである.本ラウンドアバ ウトは,すべての流出入部に分離島を備えて二段階横断方式を採用し,中央島周りのエプ ロンも初めて2cm5cm の二段階の段差構造を取り入れるなど,最新の技術を随所に導入し ている.中央島の視線誘導発光灯や照明の方法などにも,工夫が施されている.開通後の 平成26 年 10 月には,利用者挙動データの収集を行った.

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図-2.2 須坂市野辺町交差点(左:事前,右:事後)(写真提供:須坂市)

図-2.3 須坂市野辺町ラウンドアバウト エプロン構造

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4 図-2.5 須坂市野辺町ラウンドアバウト 中央島の視線誘導発光灯 (3) 長野県軽井沢町 軽井沢六本辻の 6 枝ラウンドアバウトは,平成 24 年 11 月からの国土交通省社会実験の 後も,継続的に運用を重ね,改良を続けてきたが,平成26 年 1 月からこれらの知見を反映 した形で本格的な改良工事が始められ,5 月にはほぼ完成している.ラウンドアバウトの中 心位置や流入部形状の変更,段差付きエプロンの導入,横断歩行者防護柵,案内標識の設 置などが図られている.本ラウンドアバウトは,用地制約から理想的な形状とすることが できないため,特に流出入部の構造に限界があるため見通しも悪く,改正道路交通法の施 行後も一時停止規制が継続されることとなった. 図-2.6 軽井沢町六本辻ラウンドアバウト 事前,社会実験時,改良施工中の様子

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図-2.7 軽井沢町六本辻ラウンドアバウト 継続運用後の構造

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6 図-2.9 軽井沢町六本辻ラウンドアバウト 改正道路交通法施行後の様子 (4) 静岡県焼津市,滋賀県守山市 焼津市関方,守山市立田町の両正十字ラウンドアバウトは,平成26 年 1 月に行われた国 土交通省社会実験の後も継続的に運用してきたが,今年度はこれらの本格改良工事が行わ れており,年度内に完成している.本プロジェクトでは継続的にモニタリングを行い,構 造や安全対策などについて助言を行っている.いずれのラウンドアバウトもすべての流出 入部に分離島を設け,中央島周囲のエプロンは段差構造を導入している.流入部や隅角部 の構造も,これまでの経験を反映した形に修正している. 図-2.10 焼津市関方ラウンドアバウト 社会実験後の本格改良の内容

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7 図-2.11 守山市立田町ラウンドアバウト 社会実験後の本格改良の内容 (5) 長野県安曇野市 安曇野市の旧豊科町と旧堀金村の境界部に位置する変則 5 枝無信号交差点は,これに接 続する市道の拡幅に伴い変形 4 枝のラウンドアバウトとすることとなり,本年度はその改 良工事が進められている.本プロジェクトでは,構想段階から本計画に参画し,構造や安 全対策の検討を進めてきた.このラウンドアバウトは周辺の高校に通学する高校生の自転 車利用が多いことが特徴である.平成27 年 4 月に開通が予定されている. 図-2.12 安曇野ラウンドアバウトの改良前後の様子(左:改良前,右:完成後) (写真提供:安曇野市)

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8 (6) その他の地域 上記のほか,岩手,福島,静岡,愛知,兵庫,岡山,熊本,宮崎,沖縄などの各県にお けるラウンドアバウト計画・検討において,技術的参画を行った.

2.2 セミナー等の開催による普及促進活動

全国 3 箇所においてラウンドアバウト講習会を行うとともに,ラウンドアバウト普及促 進協議会主催,IATSS 後援のラウンドアバウトサミット in 焼津において,講演者やパネリ ストとして参加し,多数の聴講者を集めた.また,各地で住民説明会等に参加し意見交換 を行うことで,利用者の意見を聴取するとともに,ラウンドアバウトに関する理解を深め ることができた. また,平成26 年 4 月に米国シアトルで行われた TRB 第 4 回ラウンドアバウト国際会議に おいて,日本から計10 編の報告を行った.これらのほとんどが本研究プロジェクトからの ものであり,この報告数は71 編の米国に次いで世界で 2 番目であった.このほか,平成 26

年12 月に Springer 社から発行された書籍”Alternative Types of Roundabouts”で,IATSS プロ

ジェクトでの取り組みが掲載されるなど,IATSS 研究プロジェクトの活動を海外にも広く 発信した.

2.3 事例集の作成

これまでのプロジェクトでの各地で得られた計画・設計・施工段階での創意工夫や蓄積 された経験,さらには効果検証のための外部観測やアンケート調査やその結果を体系的に 整理し,日本におけるラウンドアバウトの計画・設計・運用に関する知見や経験をとりま とめることを狙いとして事例集を作成した. 本事例集は「I.展開経緯」,「II.カルテ」,「III.まとめ」の3部で構成している. 「I.展開経緯」では,経緯,事例集のとりまとめの方針を示す.「II.カルテ」について は,わが国の先行事例として,7 か所のラウンドアバウト(長野県飯田市吾妻町交差点(以 下,吾妻町),同市東和町交差点(以下,東和町),長野県軽井沢町六本辻交差点(以下, 六本辻),静岡県焼津市関方交差点(以下,焼津),滋賀県守山市立田町交差点(以下,守 山),長野県須坂市野辺町交差点(以下,須坂),長野県安曇野市本村円交差点(以下,安 曇野))に着目している.7 か所のラウンドアバウトの構造的特徴を表-2.1 に示し,外観を 図-2.13 から図-2.19 に示す.「III.まとめ」では事例を横断的に分析し,特徴を整理すると ともに,事例集適用の留意点を示す.

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9 表-2.1 各交差点の構造的特徴 交差点名 枝数 ①外径[m] ②環道 幅員[m] ③エプロン 幅員[m] ④中央島 幅員[m] 吾妻町 5 40.0 5.0 3.0 24.0 東和町 5 30.0 5.0 3.0 13.0 六本辻 6 27.0 5.5 3.0 10.0 焼津 4 27.0 5.0 1.5 12.0 守山 4 27.0 4.0 2.5 12.0 5.0 3.0 9.0 須坂 5 31.0 5.0 2.5 14.0 安曇野 4 32.0 5.0 3.0 14.0 図-2.13 吾妻町ラウンドアバウト 図-2.14 東和町ラウンドアバウト (写真提供:飯田市) (写真提供:飯田市) 図-2.15 六本辻ラウンドアバウト 図-2.16 焼津ラウンドアバウト 図-2.17 守山ラウンドアバウト (写真提供:軽井沢町) (写真提供:静岡新聞社) (写真提供:守山市) 図-2.18 須坂ラウンドアバウト 図-2.19 安曇野ラウンドアバウト (写真提供:長野県警察本部) (写真提供:安曇野市)

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10 主たる内容となる「II.カルテ」では,特に以下の 7 点に留意して執筆している. (i)「端的に」 時点の情報を断片的に伝えるだけでなく,どうしてそうなったのかなどの背景や検討の 流れ,ラウンドアバウトの一般論でなく,個々の課題に対する取り組みとして創意工夫が わかるように端的に記述する. (ii)「事例の特徴をわかりやすく」 各事例のタイトルに副題(事例のキャッチコピー)を付すとともに,事例の特徴を示す キーワードを10語程度箇条書きで示す. (iii)「視覚的にわかりやすく」 できるだけ高解像度の写真を入れる. (iv)「技術者が理解しやすく」 平面図は必ず入れる. (v)「検討の根拠を明確に」 参考文献をリストアップする. (vi)「時間経過がわかるように」 年月日,期間が記載できるものは極力入れて,時系列でしっかりと整理する. (vii)「各箇所における問題に対する対策効果を確認できるように」 個々の事例で特徴的な問題意識に対応した対策の効果などを明確にする. カルテの構成は,「Chapter1.ラウンドアバウト導入検討の経緯,Chapter2.当該交差点の特 徴,Chapter3.協議・設計,Chapter4.歩行者などの安全対策,Chapter5.施工計画と施工実施上 の工夫,Chapter6.住民説明や広報・教育,Chapter7.観測調査などの各種調査,Chapter8.評価 結果と改良・本設への反映,Chapter9.反省」の9章立てとしている.事例間の比較がしやす いように共通のフォーマットで作成している. Chapter1では,各交差点で何が問題であったかを示し,ラウンドアバウト化の意義を明確 にする.また,それに対して,社会実験を実施するか,交差点改良を行うかといったどの ような整備方法を取るかを示し,社会実験の場合にはそのスケジュールなどを簡潔に示す. Chapter2では,当該交差点の特徴として,交差点の存する地理的条件としてネットワーク 上の位置づけを行い,その交差点の利用状況として交通量の特徴を示す.続いて,交差点 整備を進めるうえでの計画上のチェックポイントとして,ピーク時交通量を用いて交通容 量面での処理可能性,横断歩行者,自転車による容量低下の有無など円滑性の確認結果を 示す.また,周辺地域,経済性への配慮,用地,道路勾配等の構造上制約など,設計上の 課題や留意点を示す.さらに,信号制御など他の運用形態との比較のための代替案評価に ついて検討結果を示す. Chapter3では,道路管理者,交通管理者との設計を進めるうえでの協議のプロセスについ

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11 て示す.社会実験のケースでは社会実験の進め方,実験期間中の交通規制の進め方などを 示す.そのほか,横断歩道位置,歩行者動線,大型車対策,流出入部の安全性(分離島の 設置),縦断横断計画など,設計上の懸案事項とその対応を明確にしたうえで詳細設計案を 示す. Chapter4では,安全対策全般として,仮設の看板・構造物も含めた交通安全施設等の配置, 照明施設の設置,自転車通行に対する路面標示などの配慮,ラウンドアバウト供用開始時 の警察による交通指導の実施などを示す. Chapter5では,施工手順や施工時の現場での工夫,供用開始後の逆走防止への応急対応な どの工夫について示す. Chapter6では地元説明の実施内容,その時に出た意見の整理,地元学校への説明やリーフ レット作成など各種広報,さらには,通行ルールの周知などの教育面の対応について示す. Chapter7では,交差点整備効果として安全性,走行性,車両の円滑性,利用者の受容性な どを検証するために実施した観測調査,挙動調査,意識調査の方法について示す. Chapter8では,前章の調査にもとづき,ラウンドアバウト整備効果に関する検証結果を示 す.さらに,社会実験時に得られたデータや各種状況をもとに,本設への反映としての整 備計画,構造面の改良可能性などを示す. Chapter9では,各事例の特徴,得られた知見を整理するとともに,今後に向けた反省点を 示す. 図-2.20 事例集カルテの章立て

1. 検討の経緯

何が問題だったのか? – 社会実験か︖交差点改良か︖ – ラウンドアバウト化の意義

2. 当該交差点の特徴

ネットワーク上の位置づけ交通状況技術的(計画/設計)チェックポイント代替案評価

3. 設計

協議の上のポイント設計案

4. 安全対策

5. 施⼯計画と施⼯実施上の⼯夫

⼿順現場施⼯上の⼯夫

6. 住⺠説明

– 地元説明,指摘事項 – 広報 – 教育

7. 観測調査

ビデオ調査挙動調査意識調査

8. 評価結果とそれに対応した措置

評価項⽬評価結果の改良/本設への反映

9. 反省

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3. 事例集カルテ

3.1 事例集の紹介

カルテ作成にあたり,行政担当者と協力調整,内容確認をしつつ,執筆作業を進めた.7 つのカルテの題目,副題は次の通りである. カルテ1 長野県飯田市吾妻町 (13~44ページ) 「従来の円形交差点における日本初の社会実験」 カルテ2 長野県飯田市東和町 (45~88ページ) 「信号機を撤去し完成した日本初のラウンドアバウト」 カルテ3 長野県軽井沢町六本辻(89~146ページ) 「社会実験で改良を重ねて運用開始した6枝のラウンドアバウト」 カルテ4 静岡県焼津市関方 (147~178ページ) 「正十字交差点の標準ラウンドアバウトの社会実験①」 カルテ5 滋賀県守山市立田町 (179~207ページ) 「正十字交差点の標準ラウンドアバウトの社会実験②」 カルテ6 長野県須坂市野辺町 (208~231ページ) 「変形交差点におけるラウンドアバウトの計画と設計」 カルテ7 長野県安曇野市 (232~252ページ) 「自転車交通を重視したラウンドアバウト整備」 以下,各事例について報告する.

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カルテ1 長野県飯田市吾妻町

「従来の円形交差点における日本初の社会実験」

本事例は,飯田市吾妻町の円形交差点(通称,吾妻町ロータリー)を対象としたものである.従来から存在して いた円形交差点について,日本で初めての社会実験に取り組み,社会実験を通して得た知見を基に,幾何構造 の改良を実施したものである.  吾妻町ラウンドアバウトの概要 ・ 既存の円形交差点・ロータリーにおける幾何構造改良 ・ ラウンドアバウトに関する社会実験 ・ 社会実験の成果を受けた本格施工の実現  幾何構造の改良に関する特徴 ・ 仮設構造物による幾何構造の改良 ・ 直進的な走行の抑制を目的とした流出入部形状の変更 ・ 外径が正円でない形状の変更 ・ 流入部が鋭角に接続する場合の工夫 ・ 過剰に広い環道幅員の適正化 ・ 分離島の設置が困難な場合の対応 ・ 環道と横断歩道の間隔に関する検討 図-C1.0.1 吾妻町ラウンドアバウト(写真提供:飯田市)

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Chapter1 検討の経緯

1.1 何が問題だったのか? 吾 妻 町 交 差 点(通称,吾妻町ロータリー)は,飯田市の中心市街地に位置し,飯田市の都市計 画上 シン ボ ル的 な南 北4車線の桜並木通りの中に設置された,5枝の円形交差点である.流入部 一時 停止 制 御な どに よ り環 道交 通 流優 先と な って おり , ラウ ンド ア バウ トに 近 い運 用と なって いた .し か し, 設置 さ れて から50年以上が経過した古い設計によるものであり,交差点構造は 近代 的な ラ ウン ドア バ ウト とは 大 きく 異な っ てお り, 安 全上 の問 題 を抱 えて い た. 一方 ,中 心 市街 地の 外 縁部 に建 設 中で ある バ イパ スの 完 成後 は, 当 該交 差点 の 通過 交通がバ イパ スに 転 換す るこ と も想 定さ れ るた め, 近 い将 来こ の 街路 空間 全 体を 改良 す るこ とが 検討さ れて いた . その 中で , 吾妻 町交 差 点の 改良 方 法は 重要 な 懸案 とな っ てい た. 図-C1.1.1 吾妻町交差点位置図 1.2 社会実験/交差点改良(社会実験か?交差点改良か?) 幾何 構造 の 改良 によ る 安全 性・ 機 能向 上を 検 証す るた め ,社 会実 験 とし て, 仮 設の 構造物の みの 改良 を 実施 した . な お , 社 会 実 験 期 間 は , 平 成22年11月1日(木)~12月12日(日)であったが,その後,社会実験 によ り 得ら れた 知 見を 基に , 平成23年10月に交差点改良を実施し,同11月に本格施工という形 で供 用を 開 始し た. 1.3 ラウンドアバウト化の意義 従来 もラ ウ ンド アバ ウ トに 近い 運 用と なっ て いた が, 最 新の 知見 を 基に ,ラ ウ ンド アバウト と し て の 安 全 性 ・ 機 能 の 向 上 を 図 る た め , 飯 田 市 と(公財)国際交通安全学会の協働による社会 実験 とし て ,仮 設の 構 造物 によ る 幾何 構造 の 改良 を実 施 した . また ,社 会 実験 後は 仮 設の 設置 物 に対 して 構 造物 化す る とと もに , さら なる 安 全性 の向上を 図る ため の 各種 改良 も 実施 した . 吾 妻 町 ラウンドアバウト 東 和 町 ラウンドアバウト (検 討 時 は、信 号 交 差 点 の運 用 )

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Chapter2 当該交差点の特徴

2.1 ネットワーク上の位置づけ 吾妻 町交 差 点は ,飯 田 市の 中心 市 街地 の北 東 部に 位置 し てお り, 南 北方 向の 桜 並木 通りと東 西の 主要 地 方道(飯島飯田線),さらに南西側に市道が接続する5枝交差点である. 中心 市街 地 を通 過す る 主要 道路 に 位置 して お り, 郊外 部 から 中心 市 街地 を接 続 する 重要な交 差点 であ る . 図-C1.2.1 吾妻町ラウンドアバウト位置図 吾 妻 町 ラウンドアバウト 桜 並 木 通 り(市 道 ) (主 )飯 島 飯 田 線 市 道 東 和 町 ラウンドアバウト (検 討 時 は、信 号 交 差 点 の運 用 )

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16 2.2 交通状況 昼 間12時間の総流入交通量は8000~9000台/12h程度であり,朝ピーク時には全流入部合計の 15分間交通流率が1000台/h(15分×4)となる.大型車の交通は少なく,地元住民の生活交通の利 用が 多い . なお ,社 会 実験 実施 中 ・実 施後 と わず かに 交 通量 が増 加 して いる . 方向 別に み ると ,北(N)⇔南西(SW),東(E)⇔南西(SW)の交通が多い. 図-C1.2.2 吾妻町ラウンドアバウトの構造 表-C1.2.1 小型車12時間方向別交通量(6:30~18:30) 方 向 別12時 間 交 通 量 社 会 実 験 実 施 前 H22.9.29(水 ) 社 会 実 験 実 施 中 H22.11.10(水 ) 社 会 実 験 実 施 後 H22.12.1(水 )

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17 表-C1.2.2 大型車12時間方向別交通量(6:30~18:30) 方 向 別12時 間 交 通 量 社 会 実 験 実 施 前 H22.9.29(水 ) 社 会 実 験 実 施 中 H22.11.10(水 ) 社 会 実 験 実 施 後 H22.12.1(水 )

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18 表-C1.2.3 二輪車12時間方向別交通量(6:30~18:30) 方 向 別12時 間 交 通 量 社 会 実 験 実 施 前 H22.9.29(水 ) 社 会 実 験 実 施 中 H22.11.10(水 ) 社 会 実 験 実 施 後 H22.12.1(水 ) 表-C1.2.4 歩行者12時間各流入部断面別横断者数(6:30~18:30) 方 向 別12時 間 交 通 量 社 会 実 験 実 施 中 H22.11.10(水 ) ※ 横 断 歩 行 者 は , 各 流 入 部 の 断 面 を 横 断 す る 歩 行 者 数 と し て カ ウ ン ト 社 会 実 験 中 の み 調 査 を 実 施

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19 2.3 技術的(計画上/設計上)チェックポイント 設計 上の チ ェッ クポ イ ント とし て ,吾 妻町 交 差点 が有 し てい た幾 何 構造 上の 特 徴・ 問題点を 以下 に示 す . 課題 ① ラウ ンド ア バウ トの 中 心か ら環 道 外側 端ま で の距 離が 北 側と 南側 で 異な って お り, 南側では 環道 幅員 が 広大 であ る ため ,交 差 点全 体が 正 円で ない 形 状と なっ て いる .そ の 結果 ,幅 員の広 い南 ~西 部 分で は, 車 両の 走行 軌 跡が まち ま ちで あり , 危険 な交 錯 が頻 繁に 生 じて いる . 課題 ② 5つの接続道路の中心線が1点で交わらず,円の中央が南北軸から外れている. 課題 ③ 北側 流入 部(片側2車線)から南側流出部(片側2車線)に車両が直進可能な線形となっており,通 過速 度が 高 い. 課題 ④ 分離 島が 設 置さ れて お らず ,路 面 標示 等も 無 いた め逆 走 を招 きや す い. 図-C1.2.3 吾妻町ラウンドアバウトにおける設計上のチェックポイント 2.4 代替案評価 ラウ ンド ア バウ トの 幾 何構 造の 改 良で あり , 代替 案の 検 討は して い ない . 課 題 ③ 北 側 流 入 部 から南 側 流 出 部 に 直 進 的 な走 行 が可 能 課 題 ④ 分 離 島 が設 置 されていない 課 題 ① 正 円 ではなく、南 側 の 環 道 幅 員 が広 大 課 題 ② 接 続 道 路 の中 心 線 が 1 点 で交 わらない

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Chapter3 設計

3.1 協議の上のポイント 吾妻 町ラ ウ ンド アバ ウ トの 社会 実 験実 施に あ たり ,関 係 する 道路 管 理者 ・交 通 管理 者と度重 なる 協議 を 実施 した . とく に, ラ ウン ドア バ ウト に関 す る日 本で 初 めて の社 会 実験 であ ること と, 当時 は ラウ ンド ア バウ トに 関 する 国内 の 知見 や実 績 が十 分で は なか った こ とか ら, 安全性 をい かに 確 保す るか ・ 規制 や注 意 喚起 の方 法 が協 議の 上 での 重要 な ポイ ント と なっ た. 度重 なる 協 議の 結果 , 実験 後は 現 状に 戻す と いう 前提 で ,仮 設の 構 造物 によ る 幾何 構造改良 のみ の社 会 実験 の実 施 に至 った . 協議 の中 で ポイ ント と なっ た事 項 は以 下の 通 りで ある . ■社会実験の進め方について  社会 実験 は ,既 存の 道 路用 地内 で ,社 会実 験 後は 現状 に 戻す こと を 前提 とす る こと (ただし,のちに社会実験の成果を受け社会実験後に改良を加えたうえで本格施工する こと とな っ た). ■社会実験中の規制・注意喚起について  社会 実験 中 の交 通規 制 につ いて は ,現 状の ま まと する こ と (実験前は,横断歩道の手前に「一時停止」および「横断歩道あり」の標識が設置).  警 察 が つ け た も の で は な い と 明 ら か に わ か る よ う , 標 識 で は な く 看 板 な ど の 設 置 で あ れば 問題 な い. → ラ ウ ン ド ア バ ウ ト の 通 行 方 法 を 示 す た め , 白 地 の 立 て 看 板 に 「 前 方 優 先 」 と 「 ラ ウ ン ド ア バ ウ ト を 示 す 標 識(現 在 の 環 状 交 差 点 を 規 定 す る 標 識 )」 を 模 し た 看 板 を 設 置し た. 図-C1.3.1 社会実験中に設置した看板

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21 ■横断歩道位置について  社会 実験 で ある こと を 踏ま え, 横 断歩 道の 位 置は 変え な いこ と (ただし,社会実験後に横断歩道の位置は環道から5m離 した位置に変更(西側流入部 ・ 南西 側流 入 部は 除く)). ■歩行者の安全対策について  流入 部を1車線化することで歩行者の横断距離は短くなるが,車道上に歩行者の溜りス ペー スが で きる こと に なる ので , 車両 が突 っ 込ん だ際 に 危険 . 幾何構造の改良により生じたスペースには歩車道境界ブロックを設置し,車両が歩 道内 に突 っ 込む よう な こと が無 い よう に配 慮 する .  歩行 者に 対 する 注意 喚 起も 必要 . 歩行者に対する注意喚起のための路面標示シートを設置. 3.2 設計案 社会 実験 で ある こと を 踏ま え,既 存の 道路 用 地内 で改 良 する こと を 前提 とし,2.3で述べた幾 何構 造に 関 する 課題 の 解決 を図 る べく 設計 案 を検 討し た . なお ,社 会 実験 実施 後 に各 種改 良 を実 施し て いる が, こ こで は社 会 実験 実施 前 の幾 何構造の 検討 内容 に つい て触 れ ると とも に ,社 会実 験 期間 中の 図 面を 示す . 3.2.1 改良設計案の検討 (1)環道の正円化・環道幅員の縮小 (課題①に対応) 交差 点全 体 の形 状が 正 円で はな い 形状 とな っ てお り, と くに 南西 側 にお いて , 環道 の幅員が 過剰 に広 い 状況 であ っ た. そこ で ,仮 設の 構 造物 やゼ ブ ラ標 示等 で 環道 内の 幅 員を 調整 し,交 差点 の形 状 を正 円と し た. なお ,本 改 良で は「 中 央島 の大 き さを 変更 し ない 」こ と を前 提と し てお り, 中 央島 の大きさ に見 合っ た 外径 の大 き さを 設定 し てい る.

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22 表-C1.3.1 環道部における課題と対応 社 会 実 験 前 社 会 実 験 後 課 題 と 対 応 事 項  交 差 点 全 体 が 正 円 で は な く ,環 道 の 幅 員 が 一 定 で は な い(と く に 南 西 側 で 幅 員 が 過 剰 に 広 い ) た め ,通 行 位 置 が 不 規 則 で 速 度 が 高 く な り ,環 道 内 で の 接 触 の 危 険 性 が あ っ た .  交 差 点 の 形 状 を 正 円 化 し , 不 要 と な っ た ス ペ ー ス は 路 面 標 示 と 仮 設 の 構 造 物 を 設 置 し , 物 理 的 に 通 行 で き な く し た .  環 道 の 内 側 は 大 型 車 の 内 輪 差 を 考 慮 し て エ プ ロ ン に 相 当 す る ゼ ブ ラ を 設 置 し , 乗 用 車 の シ ョ ー ト カ ッ ト が 抑 制 さ れ る よ う 配 慮 し た . ⇒ た だ し ゼ ブ ラ の み で は 乗 用 車 の エ プ ロ ン 走 行 が 見 ら れ て お り , 段 差 付 き の 構 造 と す る こ と が 望 ま し い と 考 え ら れ る . 北 側 か ら の 流 入 平 面 図 A ‐ A 断 面 横 断 図 A A A A A A A 環 道 中 央 島 環 道 A 中 央 島 環 道 ゼブ ラ 帯 エ プ ロ ン 環 道 エ プ ロ ン 仮 設 の構 造 物 やエプロン(ゼブラ) により、走 行 位 置 を明 確 に 乗 用 車 の 通 行 に 必 要 な 幅 員 と し て 、幅 員 を 5.0m に 。 大 型 車 の 内 輪 差 を 考 慮 し て 、ゼ ブ ラ 標 示 の エ プ ロ ン を 設 置 正 円 の 外 径 40m に 。 不 要 な ス ペ ー ス は ゼ ブ ラ 標 示 と 仮 設 の 構 造 物 を 設 置 写 真 ① 写 真 ②

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23 (2)流入部が鋭角に接続する場合の外径を小さくする工夫 吾妻 町交 差 点は ,十 字 の交 差点 に さら に1流入部が接続している形であり,とくに西側と南西 側流 入 部 の 接続 角 度 が45°以下と小さい.接続角度が小さい場合,設計車両の左折に対応する ため の大 き な外 径が 必 要と なり , さら に隅 角 部の 面積 も 大き くな り 安全 上好 ま しく ない と考え られ た. 現地 を確 認 した とこ ろ ,南 西か ら 西側 へ向 か う普 通自 動 車は 極め て 少な いこ と が確 認された ため ,南 西 から 西側 へ 向か う普 通 自動 車は 環 道を5/4周させることとした.これにより外径を小 さく する こ とが 可能 と なり ,正 円 のラ ウン ド アバ ウト の 設計 が可 能 とな った . 表-C1.3.2 外径を小さくするための工夫 軌跡 の検 討 結果 小型 自 動 車 等 (L=6.0m) 普通 自動 車 (L=12m) 普 通 自 動 車 ( 12m) は 環 道 を 5/4 周 す る こ と で 通 行 可

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24 (3)流入部の1車線化と流入部形状の変更 (課題②・③に対応) 北側 流入 部 から は2車線でかつ直進的な流入が可能となっていたが,1車線化するとともに流 入部 手前 の 線形 がラ ウ ンド アバ ウ トの 中心 に 向く よう に 変更 した . 表-C1.3.3 流入部における課題と対応 図-C1.3.2 流入部形状の変更図 社 会 実 験 前 社 会 実 験 後 課 題 と 対 応 事 項  環道が1車線であるのに対し,流入部が2車 線 で あ っ た た め ,並 列 で 流 入 し た 車 両 が 環 道 内 で 交 錯 ・ 錯 綜 す る 危 険 性 が あ っ た .  流入部から環道に進入する際に直線的に 通 行 が 可 能 で ,幅 員 も 広 か っ た た め 速 度 が 高 か っ た .  1車線化することで,車両が並列して流入 す る こ と を 不 可 能 と し ,流 入 時 の 車 両 の 交 錯 機 会 が 減 る よ う に 配 慮 し た .  流入部手前にR=30の線形を設け,ラウン ド ア バ ウ ト の 中 心 に 向 か っ て 流 入 す る よ う な 形 状 と し た .こ れ に よ り ,物 理 的 に 直 進 的 な 流 入 が 不 可 能 と な り ,流 入 時 の 速 度 超 過 や 無 理 な 流 入 を 抑 制 し た . 現 地 写 真 北 側 流 入 部 ・ 南 側 流 出 部 の 線 形 を 中 心 に 向 く よ う 変 更 さ ら に 、 2 車 線 か ら 1 車 線 に 中 央 島 側 に線 形 を向 ける ことで速 度 抑 制 を促 す R=30m

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25 (4)流出部の1車線化と流出部形状の変更 (課題②に対応) 南側 流出 部 は2車線でかつ直進的な流出が可能となっていたため,環道内で加速し,速度が上 がっ た状 態 で横 断歩 道 を通 過し て いた .流 入 部の 形状 と 同様 に, 流 出部 にお い ても 線形 を与え るこ とで , 速度 抑止 を 促す こと と した . 表-C1.3.4 流出部における課題と対応 図-C1.3.3 流出部形状の変更図 社 会 実 験 前 社 会 実 験 後 課 題 と 対 応 事 項  環道内から直進的に流出が可能であり,加 速 し た 状 態 で 流 出 し ,横 断 歩 道 を 通 過 す る 際 の 速 度 上 昇 が 懸 念 さ れ る .  流出部の線形を変更し,ハンドル操作を伴 っ て 流 出 さ せ る こ と で ,流 出 時 の 速 度 を 抑 制 す る . 現 地 写 真 流 出 する際 にハンドルの操 作 が伴 うよう、隅 角 部 に線 形 を入 れることで形 状 を変 更 流 出 部 にも線 形 を入 れて 速 度 抑 制 を促 す

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26 (5)分離島設置不可能な場合の対応 (課題④に対応) 既存 用地 内 での 改良 で ある ため , 新た に分 離 島を 設置 す るこ とが 不 可能 であ っ た. 分離島は 嵩上 げし た 構造 物を 設 置す るこ と でそ の機 能 を最 大限 発 揮で きる が ,用 地制 約 があ るた め今回 は止 むを 得 ず区 画線 の 標示 のみ で の対 応と し た. 表-C1.3.5 分離島設置に関する課題と対応 ※ 環 状 交 差 点 の 指 定 後 は ,「 止 ま れ 」 を 「 ゆ ず れ 」 に 変 更 一 時 停 止 標 識 は , 環 状 交 差 点 を 指 定 す る 標 識 に 変 更 図-C1.3.4 簡易な分離標示の設置箇所 社 会 実 験 前 社 会 実 験 後 課 題 と 対 応 事 項  分離島がなく,さらに路面標示による誘導 も 少 な い た め ,慣 れ て い な い ド ラ イ バ ー は 逆 走 し て し ま う 懸 念 が あ る .  走行位置も不明確で,車両の通行位置が不 規 則 に な る と 考 え ら れ る .  流入部手前にゼブラ帯を設置することで, 走 行 位 置 が 明 確 に な り ,逆 走 し に く い 形 状 と す る .  流入車と流出車を分離し,車両の交錯を防 ぎ , ス ム ー ズ な 流 入 を 促 す . 北 側 か ら の 流 入 路 面 標 示 により、 流 入 部 ・流 出 部 を分 離 ゼブラにより、走 行 位 置 を明 確 にし、流 入 ・流 出 車 を分 離 西 側 流 入 部 西 側 流 入 部

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27 3.2.2 幾何構造の改良案のまとめ 社会 実験 実 施前 と社 会 実験 実施 時 にお ける 幾 何構 造を 比 較し たも の が, 図-C1.3.5である. <社 会実 験 前> <社 会実 験 中> 図-C1.3.5 社会実験前後での幾何構造の変化(右写真提供:(株)道路計画) <社 会実 験 中> <社 会実 験 前> 環 道 内 の 幅 員 を 狭 め る こ と で 車 両 軌 跡 の ば ら つ き を 抑 制 環 道 内 の 幅 員 を 狭 め る こ と で 車 両 軌 跡 の ば ら つ き を 抑 制

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Chapter4 安全対策

4.1 各種安全対策の概要 幾何 構造 の 改良 にあ た って は, 社 会実 験後 に 現状 復帰 す る前 提で あ った こと か ら, 路面標示 や仮 設物 等 を用 いて 形 状の 変更 を 実施 した . また ,環 道 が優 先で あ るこ とを 示 す法 定外 看 板の 設置 や 歩行 者に 対 する 安全 対 策も 実施した. 主な 実施 対 策は 以下 に 示す とお り であ る. 図-C1.4.1 各種安全対策の設置位置図 4.1.1 ラバーポール・歩車道境界ブロックによる整流化 流入 部・ 環 道の 整流 化 を目 的と し て, ラウ ン ドア バウ ト の形 状の 変 更を 実施 し た. なお,社 会実 験と し ての 実施 で あっ たた め ,一 時的 な 形状 の変 更 とす る必 要 があ った こ とか ら, 取り外 し可 能な デ バイ スと し て, ラバ ー ポー ルと 歩 車道 境界 ブ ロッ クを 設 置す るこ と とし た. 当初 はラ バ ーポ ール の みの 設置 を 検討 して い たが ,南 北 方向 の流 出 入部 では , 車線 数の絞り 込み によ り 歩行 者の 溜 りス ペー ス が車 道上 と なっ たこ と から ,車 両 が誤 って 歩 行者 に突 っ込む こと を防 止 する ため に ,歩 車道 境 界ブ ロッ ク を使 用す る こと とし た(図-C1.4.2). なお ,夜 間 の視 認性 を 確保 する た めに ,歩 車 道境 界ブ ロ ック には 反 射シ ート を 貼り つけた. 図-C1.4.2 ラバーポール・歩車道境界ブロックの設置例 歩 行 者 注 意 喚 起 のた めの路 面 標 示 シート (各 横 断 歩 道 に設 置 ) 法 定 外 看 板 (各 流 入 部 に設 置 ) 単 管 バリケード ラバーポール・歩 車 道 境 界 ブロック による整 流 化 写 真 ① 写 真 ②

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29 4.1.1.1 横断歩行者用注意喚起シート 歩行 者に 対 する 安全 対 策と して , 車両 のみ な らず 歩行 者 に対 して も 注意 喚起 を 行う こととし た . 注 意 喚 起 の 方 法 と し て , 歩 行 者(とくに子供)の目にもとまりやすいよう,路面標示シール を貼 り付 け るこ とと し た. なお ,南 北 方向 の桜 並 木通 りに は 中央 分離 帯 があ るた め2段階横断が可能であり,流入車また は流 出車 い ずれ かの1方向のみを注意すればよいことから,設置箇所に合わせて「みぎをみよう」 「ひ だり を みよ う」 と 表示 する こ とと した . 図-C1.4.3 横断歩行者用注意喚起のための路面標示シートの設置例 4.1.1.2 社会実験の実施に関する看板 社会 実験 の 周知 ・流 入 車両 に対 す る注 意喚 起 を目 的と し て, 各流 入 部の 手前 に 社会 実験の実 施に 関す る 看板 を設 置 した . 図-C1.4.4 社会実験の周知に関する法定外看板の例 写 真 ③ 写 真 ④

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30 4.2 横断歩行者注意喚起システムの実証実験について 社会 実験 の 実施 後, 歩 行者 のさ ら なる 安全 対 策の 一環 と して ,横 断 歩行 者感 知 式の 注意喚起 シス テム の 実証 実験 が 実施 され た . 4.2.1 実証実験期間 平成23年11月7日~平成24年1月12日(67日間) 4.2.2 横断歩行者注意喚起システムの概要 横断 歩行 者 注意 喚起 シ ステ ムと は ,横 断歩 道 両端 付近 に設 置さ れ た歩 行者 感 知セ ンサ ー によ り, 歩 行者 が横 断 歩道 を渡 ろ うと する と ,車 両が 接近す る側 の横 断 歩道 手前 に 埋め 込ま れ た発 光鋲 が 一定 時間 点 滅し ,ド ラ イバ ーに 注 意喚 起を 行うも ので ある . また ,横 断 者が 横断 を 完了 し, 反 対側 の歩 行 者感 知セ ン サー を通 過 する と発 光鋲が 消灯 する 仕 組み とな っ てい る. こ のよ うに , 横断 歩行 者 が通 過し て いる とき の みに 発光 するこ とで ,ド ラ イバ ーが 注 意喚 起に 慣 れな いよ う にし ,必 要 な際 に確 実 に注 意喚 起 を行 うこ とを目 的と した も ので ある . 図-C1.4.6 横断歩行者注意喚起システムの実施箇所と状況 4.2.3 実証実験の結果 ビデ オ映 像 によ る観 測 やア ンケ ー ト調 査の 結 果, 安全 確 認動 作が 早 まる こと や ,歩 行者の安 心感 が増 す など ,ラ ウ ンド アバ ウ トで の歩 行 者の 安全 対 策と して 効 果が ある こ とが 確認 さ れた. 実証 実験 後 は,本 シス テム は撤 去 され てい る が,歩 行者 の安 全対 策 が課 題と な って いる 場 合に, 有用 な手 段 の一 つで あ ると 考え ら れる . 図-C1.4.5 横断歩行者注意喚起 システムの概要

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Chapter5 施工計画と施工実施上の工夫

5.1 手順 社会 実験 の 幾何 構造 改 良に おけ る 施工 につ い ては ,既 存 の道 路用 地 が広 いこ と ,路 面標示や 仮設 の構 造 物設 置の み であ るこ と から ,交 通 規制 等は 実 施せ ず, ガ ード マン に よる 誘導 のみで 施工 を実 施 した . 区画 線施 工 時の 状況 は 以下 の通 り であ る. 図-C1.5.1 施工時の状況 5.2 現場施工上の工夫 社会 実験 の 実施 前に ラ ウン ドア バ ウト の環 道 部分 や流 出 入部 分付 近 では ,舗 装 を全 面的にオ ーバ ーレ イ した .そ の ため ,路 面 標示 が消 え るこ とと な るが ,簡 易 なシ ール を 貼り つけ ,路面 標示 の施 工 に入 るま で の対 応と し た. また 路面 標 示に つい て は,全 天候 型溶 融式 路 面標 示材 を 用い,夜間 の視 認性 確 保に も努 め た. 図-C1.5.2 施工上の工夫点 <簡 易 なシールの設 置 > <夜 間 の視 認 性 について>

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Chapter6 住民説明

6.1 地元説明,指摘事項 社会 実験 の 実施 にあ た り, 地元 住 民と の合 意 形成 を図 る ため ,複 数 回に わた っ て意 見交換会 や住 民説 明 会の 場を 設 けた .ま た ,社 会実 験 終了 後も , 本設 施工 に 向け た協 議 も実 施し た . その 開催 ス ケジ ュー ル と指 摘事 項 等は ,表-C1.6.1の通りである. 表-C1.6.1 住民説明・意見交換会の開催状況 時 期 開 催 内 容 主 な 指 摘 事 項 等 H22.8.5 自 治 会 意 見 交 換 会 < 社 会 実 験 に 関 す る 意 見 交 換 >  社 会 実 験 の 趣 旨 と 内 容 に は 理 解 を 得 ら れ た .  地 域 で も 安 全 教 育 な ど の 方 向 か ら 協 力 を し て い く .  車 線 を 絞 る こ と に つ い て , 渋 滞 が 心 配 .  物 理 的 な 速 度 抑 制 が で き な い か . H22.9.2-3 住 民 説 明 会 < 社 会 実 験 の 趣 旨 と 内 容 の 説 明 >  批 判 的 な 意 見 は 無 く ,実 験 の 趣 旨・内 容 に つ い て 理 解 を 得 ら れ た .  南 西 側 の ポ ケ ッ ト パ ー ク や 植 栽 ・ 噴 水 に よ り 視 認 性 が 悪 い た め , 実 験 に 含 め て 検 証 し て ほ し い .  ウ イ ン カ ー や 進 入 時 の ル ー ル の 指 導 を し て ほ し い .  実 験 の 周 知 を 数 多 く し て も ら い た い . (植 栽 に よ る 視 認 性 の 問 題 , 横 断 歩 道 の 設 置 な ど ) H23.6.17 自 治 会 役 員 意 見 交 換 会 (@東 野 自 治 会 館 ) < 社 会 実 験 を 踏 ま え た 改 修(本 格 施 工 )に つ い て >  社 会 実 験 は 全 体 的 に 高 評 価 で あ り , 改 修 は 了 承 を 得 ら れ た .  見 通 し の 悪 い 箇 所 が あ る た め ,植 栽 を 移 植 し ,芝 桜 な ど に 変 え る 方 針 で 了 承 を 得 た . 図-C1.6.1 住民説明会・意見交換会の状況 <社 会 実 験 の住 民 説 明 会 (H22.9.2) > <社 会 実 験 を踏 まえた意 見 交 換 会 (H22.12.1)>

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33 6.2 広報 社会 実験 実 施の 周知 の ため に,飯 田市 を通 じ て各 種メ デ ィア によ っ て広 く情 報 提供 を行った. 平成22年8月27日(金)には,飯田市役所にて牧野光朗飯田市長との合同記者会見により社会実験 の趣 旨と 内 容を 公表 し た.こ の記 者会 見の 模 様は 地元 ケ ーブ ルテ レ ビ,新 聞社 によ り報 道 され, 広範 囲へ の 周知 が行 わ れた . また ,飯 田 市が 発行 す る「 広報 い いだ 」(11月1日号)には,社会実験の情報が掲載されるとと もに ,周 辺 住民 に対 し ては 地元 自 治会 の協 力 の下 ,社 会 実験 告知 の チラ シが 回 覧さ れ, 社会実 験実 施に 関 する 周知 の 徹底 が行 わ れた . 図-C1.6.2 記者発表(H22.8.27)の様子 6.3 教育 社会 実験 の 実施 に当 た り, 社会 実 験の 趣旨 や 幾何 構造 改 良の 概要 に つい て説 明 を行 い,事前 の周 知を 図 った.説明 にお いて は ,VR(バーチャルリアリティ)ソフトウェアを用いて,視覚的 に通 行方 法 や改 良後 の イメ ージ を 説明 した . なお ,当 該 箇所 は以 前 から 環道 優 先で 機能 し てお り, 社 会実 験前 と 交通 規制 は 変わ らなかっ たこ とも あ り, 通行 方 法に つい て は十 分に 理 解が 得ら れ た. 図-C1.6.3 住民説明会の状況(右の写真では,VRソフトを用いて通行方法等を説明)

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Chapter7 観測調査

7.1 ビデオ調査 社会 実験 に おけ る幾 何 構造 の改 良 ポイ ント を 踏ま え, 幾 何構 造の 改 良が 車両 挙 動に 与える影 響や それ に 伴う 安全 性 の変 化を 把 握す るた め ,ビ デオ 調 査に より 社 会実 験前 ・ 社会 実験 中の走 行挙 動を 観 測し た. ビデ オ調 査 によ る分 析 項目 は, 表-C1.7.1の通りである. 表-C1.7.1 ビデオ調査による分析項目 観 測 項 目 関 連 す る 幾 何 構 造 の 改 良 ポ イ ン ト 調 査 の 概 要 交 錯 点 の 分 布 に 関 す る 分 析 南 北 流 入 部 の1車 線 化 環 道 の エ プ ロ ン 設 置 流 入 車 両 と 環 道 車 両 の 走 行 軌 跡 が 交 錯 す る 箇 所 の 分 布 を 比 較 流 入 速 度 北 側 流 入 部 の 線 形 の 変 更 流 入 車 両 の 速 度 変 化 を 取 得 し , 流 入 部 の 線 形 変 更 に よ る 速 度 の 分 布 を 比 較 流 入 ギ ャ ッ プ 各 流 入 部 の 流 入 形 状 の 変 更 流 入 部 の 形 状 変 更 に よ る 流 入 の し や す さ へ の 影 響 に つ い て , 流 入 ギ ャ ッ プ 値 か ら 変 化 を 比 較 環 道 走 行 位 置 環 道 の 正 円 化(外 径 40mに 縮 小 ) 環 道 の エ プ ロ ン 設 置 環 道 内 の エ プ ロ ン 設 置 等 に よ る 車 両 動 線 の 変 化 に つ い て , 走 行 位 置 の ば ら つ き を 比 較 流 出 部 横 断 歩 道 通 過 速 度 流 出 部 形 状 の 変 更 流 出 部 の 形 状 の 変 更 に よ る , 横 断 歩 道 位 置 で の 安 全 性 を 比 較 す る た め , 横 断 歩 道 部 で の 通 過 速 度 を 比 較 なお ,ビ デ オ調 査は 上 空に 設置 し たカ メラ か ら撮 影す る こと とし た .カ メラ の アン グル,設 置例 を, 図-C1.7.1に示す. 図-C1.7.1 調査で設置したカメラ

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35 7.2 意識調査 通行 の利 便 性や 交通 安 全, まち づ くり への 貢 献の 観点 か ら, 利用 者 の意 見を 把 握す るため, 以下 の要 領 でア ンケ ー ト調 査を 実 施し た. 配布 日時 : 平成22年11月24日(水)の朝ピーク時7:00~8:45と午後閑散時14:00~16:00 (利用者の経験を考慮して,社会実験開始から約3週間後) 配布 場所 : 北・ 東・ 南 流入 部 回収 状況 : 配布 総数 は1,901票,回収数は688票,回収率は36.2% 図-C1.7.2 アンケートの配布状況と配布場所 図-C1.7.3 アンケート用紙

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36 <調 査 日 > 事 前 :H22.9/28-30 事 後 1:H22.11/10-11 事 後 2:H22.12/1-2

Chapter8 評価結果とそれに対応した措置

8.1 挙動調査の評価結果 8.1.1 交錯点の分布に関する分析 流入 車両 と 環道 車両 の 走行 軌跡 が 交わ る箇 所を 交錯 点と 定 義し ,社 会 実験 前後 で その 分布 状 況の 違い を比 較 した . 社会 実験 前 は流 入部 が2車線で,かつ環道内にエ プロ ンが 設 置さ れて い なか った た め, 交錯 点 が広 範囲 に分 布 して いた . しか し社 会 実験 後で は ,交 錯点 の分 布 が社 会実 験 前と 比較 し て集 約さ れ てい るこ とが わ かる . 交錯 点が 集 約さ れる こ とで ,衝 突 の可 能性 が低 減さ れる こ とや ,流 入 車両 が注 意 を払 うポ イ ント が限 定さ れ 安全 確認 の しや すさ に 繋が ると 考 えら れる . 図-C1.8.1 対策前後における交錯点分布の比較 8.1.2 流入速度に関する分析 北側 流入 部 から の流 入 時の 速度 プ ロフ ァイ ル につ いて , 社会 実験 前 後で の変 化 を比 較した. その 結果 , 社会 実験 後 は停 止線 を 通過 して か らラ ウン ド アバ ウト に 進入 する 際 に速 度が低下 して いる こ とが 確認 さ れた .こ れ は, 流入 部 の線 形を 中 央島 に向 く よう に変 更 した こと による 速度 抑制 効 果で ある と 考え られ る . 図-C1.8.2 社会実験前後での流入時の速度プロファイルの比較 <調 査 日 > 事 前 :H22.9/28-30 事 後 1:H22.11/10-11 事 後 2:H22.12/1-2

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37 8.1.3 流入ギャップに関する分析 社会 実験 前 後に おい て ,北 ・南 ・ 南西 流入 部 で流 入ギ ャ ップ を取 得 した .ク リ ティ カルギャ ップ につ い ては ,社 会 実験 前後 で 明確 な変 化 はな い. 北側 流入 部 のフ ォロ ー アッ プタ イ ムに つい て は,社会 実 験後 はば ら つき が小 さ くな っており, 流入 部の 形 状の 変更 に より 流入 し やす くな っ たも のと 考 えら れる . 図-C1.8.3 社会実験前後での流入ギャップの比較 8.1.4 環道走行位置に関する分析 ビデ オ映 像 から 各車 両 の右 前輪 の 位置 座標 を 読み 取り , 社会 実験 前 後で 走行 位 置の 分布を比 較し た. 社 会実 験前 は 走行 位置 の 分布 が内 側 に寄 って い るが ,社 会 実験 後で は 分布 が外 側へ広 がっ た. エ プロ ンの 設 置に より , 環道 内を 直 線的 にシ ョ ート カッ ト しよ うと す る車 両が 減少し たた めで あ ると 考え ら れる . 図-C1.8.4 環道走行位置の観測結果 <流 入 ギャップ値 の比 較 > <北 側 流 入 部 のフォローアップタイム分 布 の比 較 > <調 査 日 > 事 前 :H22.9/28-30 事 後 1:H22.11/10-11 事 後 2:H22.12/1-2 <代 表 断 面 における走 行 位 置 の分 布 比 較 > 分 布 比 較 断 面 分 布 比 較 断 面 <社 会 実 験 前 > <社 会 実 験 後 > <調 査 日 > 事 前 :H22.9/28-30 事 後 1:H22.11/10-11 事 後 2:H22.12/1-2

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38 8.1.5 流出部横断歩道通過速度に関する分析 図-C1.8.5に,左折流出時の流出部横断歩道通過速度の85パーセンタイル値と50パーセンタイ ル 値 を 示 し た .N流出部では,車線数を減らしたことにより,事後で速度が低下したと考えら れる . S流出部,SW流出部,W流出部に関して,事後で速度が増加したが,路面標示の設置により スム ーズ な 通行 が可 能 とな った こ とと ,流 出 位置 から 横 断歩 道ま で の直 線走 行 距離 が長 くなっ たた めだ と 考え られ る . 図-C1.8.5 流出部横断歩道通過速度の比較 8.2 アンケートによる主観評価結果 8.2.1 社会実験に対する全体的な印象 図-C1.8.6に示すように,回答者の過半数が,「良くなった」「少し良くなった」と回答してい る. 一方,「悪 くな っ た」「 少し 悪く なっ た 」と いう 回 答も 約20%あることがわかる. 図-C1.8.6 社会実験に対する全体的な印象に関するアンケート結果 <調 査 日 > 事 前 :H22.9/28-30 事 後 1:H22.11/10-11 事 後 2:H22.12/1-2

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39 8.2.2 具体的な印象について 具体 的な 印 象に つい て ,概 ね肯 定 的な 意見 が 多い 中, 通 行の しや す さに つい て は「 通行しや すく なっ た 」「通 行し に くく なっ た 」の意 見が 分か れ,受 ける 印象 に 差が 見受 け られ る.こ れは , 流入 部の 形 状を 変更 し たこ とや 環 道を 狭め た こと で,直 線的 な走 行 がで きな く なっ たこ と で「通 行し にく く なっ た」 と 感じ たた め であ ると 考 えら れる . これ は, 幾 何構 造の 改 良に おい て意図 した もの で あり ,安 全 性に 繋が る 結果 であ る と考 えら れ る. また,「車 両同 士の 鉢 合わ せ」 が 少な くな っ た,「 流入 時の 速度 」 が遅 くな っ たと の回 答 に比 べて,「車 両の 安全 性 」につ いて「安全 にな った」とい う意 見が 多 く,安 全性 の向 上に つ なが る 別の 要因 が ある 可能 性 も考 えら れ る. 図-C1.8.7 社会実験に対する各種アンケート結果 8.2.3 歩行者の評価について 「横 断歩 道 の渡 りや す さ」「 歩行 者の 安全 性 」に つい て ,ほ とん ど 変わ らな い との 回答 が過半 数で ある が ,否 定的 な 意見 の割 合 は10%以下と少ない. 図-C1.8.8 社会実験に対する歩行者のアンケート結果 <車 両 の通 行 のしやすさ> <車 両 同 士 の鉢 合 わせ機 会 > <流 入 時 の速 度 > <全 体 的 な車 両 の安 全 性 > <横 断 歩 道 の渡 りやすさ> <歩 行 者 の安 全 性 >

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40 8.2 本設への反映 当初 社会 実 験と して の 取り 組み で あっ たが , 社会 実験 の 評価 にお い て安 全性 の 効果 が確認さ れた こと と 地元 住民 か らの 要望 を 受け ,社 会 実験 後も 社 会実 験中 の 形を 残し て 運用 を継 続する こと とな っ た. 8.2.1 社会実験後の本施工および改良 本施 工時 に おけ る改 良 事項 は, 図-C1.8.9の通りである. 図-C1.8.9 本施工時の改良内容 8.2.1.1 仮設構造物の本設置 社会 実験 中 は現 状復 帰 を想 定し , ラバ ーポ ー ルや 歩車 道 境界 ブロ ッ クに より 構 造を 変更して いた が, 継 続運 用に あ たり 構造 物 で本 設置 し た. 図-C1.8.10 構造物の本設置 2)横 断 歩 道 位 置 の調 整 環 道 と横 断 歩 道 の距 離 を 5m に 1)構 造 物 による 本 施 工 1 0 構 造 物 による 本 施 工 構 造 物 により、 隅 角 部 の形 状 を変 更 流 出 部 の 1 車 線 化 により、 歩 道 の滞 留 スペースを確 保 写 真 ① 写 真 ②

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41 8.2.1.2 横断歩道位置の調整 社会 実験 実 施中 は,横 断歩 道位 置 の調 整を 検 討し た. 当該 交差 点 では ,環 道 と横 断歩 道 まで の距 離 が各 流入 部で 一致 し てい なか っ た. 環道 か ら横 断歩 道 まで の距 離は 車両1台分が溜まることができるスペースとして, 5.0mとすることを基本とした. ただ し, 西 側・ 南西 側 流入 部で は ,ポ ケッ ト パーク の移 設が 困 難な ため 横 断歩 道の 位 置は やむ を 得ず 現状 のま まと し てい る. 今 後の 桜並 木 の整 備に 際 して ,適 正化 が図 ら れる 予定 で ある . 表-C1.8.1 横断歩道位置に関する課題と対応 社 会 実 験 中 社 会 実 験 後 課 題 と 対 応 事 項  西側・南西側の流出入部・南側の流出部で は ,環 道 か ら 横 断 歩 道 ま で の 距 離 が 長 い た め ,横 断 歩 道 を 通 過 す る 際 の 速 度 が 高 く な っ て い る 状 況 で あ っ た .  北側流出部・東側流出入部では,環道から 横 断 歩 道 ま で の 距 離 が 短 く ,流 出 車 が 歩 行 者 待 ち の た め に 環 道 内 で 停 止 す る こ と が 考 え ら れ る .  また流入車は,流入判断のために横断歩道 上 で 停 止 し て し ま う .  環道から横断歩道までの距離は,車両1台 が 滞 留 で き る ス ペ ー ス と し て ,5.0m離すこ と を 基 本 と し た . 北 側 か ら の 流 入 写 真 ③ 図-C1.8.11 移設困難な ポケットパーク 移 設 が 困 難 環 道 から 5.0m 離 して横 断 歩 道 を設 置 環 道 から横 断 歩 道 まで の間 隔 は約 1.0m 写 真 ④ : 社 会 実 験 中 写 真 ④ : 社 会 実 験 後

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42 8.2.2 現状の運用形態(平成27年3月時点) 平成26年9月には,改正道路交通法の施行により環状交差点の指定を受け,環状交差点を示す 標識 が設 置 され ると と もに ,一 時 停止 の標 識 が撤 去さ れ た代 わり に 「ゆ ずれ 」 を示 す立 て看板 の設 置と 路 面標 示が 設 置さ れた . 図-C1.8.12に,平成27年3月時点の平面図を示す. 図-C1.8.12 現状の平面図(H27.3月時点) 現在 のラ ウ ンド アバ ウ トは ,以 前 より は安 全 性が 向上 し たと 考え ら れる が, 完 全に 理想的 な形 状で は なく 構造 上 の課 題も 残 って いる . 飯田 市で は 平成28年度から桜並木通りの整備事 業が 予定 さ れて おり , あわ せて 吾 妻町 ラウ ン ドア バウ ト の安 全性 を 高め るた め の改 修も検討 され てい る とこ ろで あ る. 環 状 交 差 点 指 定 の 標 識 と 「 ゆ ず れ 」 表 示 の 看 板

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Chapter9 反省

9.1 社会実験としての評価 吾妻 町ロ ー タリ ーに お ける 社会 実 験は ,多 く の近 隣住 民 や利 用者 か ら高 評価 を 得る ことがで きた ほか , 安全 性の 向 上も 客観 的 に示 され た .ま た, 今 回の 社会 実 験を 通し て ,最 新の 技術的 知見 に基 づ く設 計に よ り, ラウ ン ドア バウ ト が安 全に 機 能す るこ と も実 証す る こと がで き,東 和町 ラウ ン ドア バウ ト の導 入に も 繋が った . 以上 から , 吾妻 町ロ ー タリ ーの 幾 何構 造改 良は, 社会 実験 と して 大き な 効果 があ っ たと 考え ら れる . 反省 点と し ては ,こ れ まで に例 の ない 取り 組 みだ った 故 に, 協議 や 設計 に多 大 な時 間や労力 を要 した こ とが 挙げ ら れる .当 時 はラ ウン ド アバ ウト の 幾何 構造 に 関す る知 見 も乏 しく ,通行 ルー ルも 明 確に 規定 さ れて いな い 中で ,幾 何 構造 に関 す る検 討や 運 用方 法等 に つい て, 度重な る協 議が 必 要と なっ た . 吾妻 町ロ ー タリ ーの よ うに ,旧 来 より 円形 の 交差 点と し て残 って い る交 差点 は ,日 本各地に も多 数存 在 して いる . 今回 の知 見 や経 験は , この よう な 交差 点に お ける 幾何 構 造改 良や ,ラウ ンド アバ ウ トと して の 運用 によ る 安全 性や 機 能向 上を 検 討す る際 に ,大 いに 参 考に でき るもの と考 えら れ る. 9.2 構造的な問題点として残っている課題 社会 実験 に おい て一 定 の成 果が 見 られ たこ と から ,一 部 の改 良を 施 しつ つ, 社 会実 験の形状 でそ のま ま 本格 運用 す るこ とと な った . しか し, 地 元住 民の 意 見等 から , 依然 とし て 以下 の課 題 が挙 げら れ てい る.  ゼブラ標示によりエプロン相当の幅員を取っているので,エプロンを踏んで内側を通行する 車両 が多 い .当 該箇 所 につ いて は ,桜 並木 の 改修 整備 ま での 暫定 的 運用 であ る ため ,エプロ ンを ゼブ ラ 標示 のま ま とし てい る が, 今後 は 段差 付き の 構造 とす る こと が望 ま れる .  南北流入部を除き,分離島が路面標示のみとなっている.本来であれば分離島構造物を設置 する こと が 望ま しい が ,設 置不 可 の場 合の 対 応と して チ ャッ ター バ ーの 設置 な ども 考えられ る.  環道から横断歩道までの距離が長い箇所が存在し,横断歩道部を通過するときの速度上昇が 懸念 され る .ま た ,花 壇が 存在 す る隅 角部 で は,子供 が 通行 する 際 に陰 にな る ので 見にくく なっ てい る .桜 並木 通 りの 改修 整 備事 業に あ わせ て,隅 角部 のポ ケ ット パー ク の改 修を行う とと もに , あわ せて 横 断歩 道位 置 の変 更も 検 討が 必要 で ある .

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44 参考文献 1) (財)国際交 通安全学会:安全でエコなラウンドアバウトの実用展開に関する研究 報告書, 2010. 2) (財 )国 際 交 通安 全学 会 :安 全で エ コな ラウ ン ドア バウ ト の実 用展 開 に関 する 研 究 (II) 報告 書,2011. 3) (公財)国際交通安全学会:安全でエコなラウンドアバウトの実用展開に関する研究(III) 報 告書 ,2012. 4) 飯田市地域計画課:ラウンドアバウトに関する取り組み 5) 飯田市役所ホームページ,http://www.city.iida.lg.jp/ 6) 中村英樹・菅沼良収:飯田市におけるラウンドアバウト社会実験,道路,2011年5月号.

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カルテ2 長野県飯田市東和町

「信号機を撤去し完成した日本初のラウンドアバウト」

本事例は,飯田市東和町の既存の平面交差点から信号機を撤去しラウンドアバウトとしたものである.対象交 差点に隣接する5枝の円形交差点(通称,吾妻町ロータリー)で旧来の構造から近代的なラウンドアバウトに改良 した実道社会実験を行い,安全性と機能向上の評価を得られたことにより,改良に取り組んだ日本初のラウンド アバウトの事例である. ・ 既存の平面交差点から信号機を撤去しラウンドアバウトとした日本初の事例 ・ 街路の整備と一体となったまちづくりとしてのラウンドアバウトの設計 ・ 流出入車両分離と2段階横断による横断歩道短縮で歩行者の安全性を向上させるため,分離島を設置 ・ 大型車の走行性を担保するためのエプロンに,カラー舗装と段差(2cm)を設置 ・ 環道から横断歩道までの設置距離は,横断歩行者の存在に配慮し,車両1台が滞留できる5mを確保 ・ 外径を小さくするため,左折導流路(左折バイパス)を設置 ・ 市街地であることから,歩行者に配慮した照明を設置 ・ 現交通を確保した上で,信号機からラウンドアバウトへの交通運用を切り替えた事例 図-C2.0.1 東和町ラウンドアバウト(写真提供:飯田市)

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Chapter1 検討の経緯

1.1 何が問題だったのか? 東和 町交 差 点は ,JR飯田駅の東約300mの中心市街地にあり,市道と県道とが交差する多枝の 信号 交差 点 であ った(図-C2.1.1).飯田市は,市街地の外縁部に位置する幹線道路(羽場大瀬木線) の 開 通 に 伴 い , 将 来 の 交 通 需 要 に 対 応 し た 中 心 市 街 地 へ の 安 全 で 円 滑 な ア ク セ ス を 検 討 し て い た . そ こ で ,JR軌道下を通過する道路を延長し,市道に挟まれた中央公園や東和町交差点など 一体 的に 整 備し ,ア ク セス 道路 を 整備 する こ とと した . 課 題 と し て は , 変 則 な 多 枝 交 差 点 形 状 の 他 に , 中 央 公 園 が 市 道 に 挟 ま れ て い る こ と に よ る 公 園 利 用 者 の 安 全 性 や , 公 園 の 避 難 地 と し て の 機 能 , 公 園 の 中 央 部 を 流 れ る 谷 川 の 排 水 能 力 不 足 など があ っ た. そこ で, ア クセ ス道 路 を含 む東 和 町周 辺整 備 によ り, 交 差点 改良 が 必要 とな っ たが ,周辺に は郵 便局 や 高層 マン シ ョン が立 地 し, 地域 か らは 現状 機 能の 存続(5枝交差点)を求められた. 図-C2.1.1 東和町交差点の位置(出典:飯田市資料をもとに作成):事業前 図-C2.1.2 事業前の東和町交差点 (中央の緑の箇所が中央公園と谷川) 中 央 公 園 と 谷 川

図 -2.2   須坂市野辺町交差点(左:事前,右:事後)(写真提供:須坂市)
図 -2.8   軽井沢町六本辻ラウンドアバウト  本格改良工事後の様子
図 -C3.3.3    自転 車走 行 空間
図 -C3.3.9   路線 バス の 走行 軌跡 図

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