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作成日 : 2016 年 1 月 28 日 作成者 : 吉澤清 Remez ガウシアン FIR フィルタ 目次 概要 Remez ガウシアンFIRフィルタの特徴 一般的なFIRフィルタはオーバーシュートを生じる オーバーシュートを生じないFIRフィルタ.

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作成日 : 2016年 1月 28日 作成者 : 吉澤 清

Remez‐ガウシアンFIRフィルタ

【目次】 ■ 概要 ........ 3 1.Remez‐ガウシアンFIRフィルタの特徴 ........ 4 2.一般的なFIRフィルタはオーバーシュートを生じる ........ 7 3.オーバーシュートを生じないFIRフィルタ ........ 8 4.ガウシアンFIRフィルタ ........10 5.Remez-ガウシアンFIRフィルタ ........13 6.Remez-ガウシアンFIRフィルタの係数設計 ........16 7.応用 ........18 8.参考文献 ........18 HDL Design Yoshizawa

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■概要 従来は、波形歪みを抑えて信号の帯域制限を行おうとする場合には、アナログ ベッセル フィルタやアナログ ガウシアンフィルタが使用されてきました。 ディジタルフィルタが必要とされる場合には、ベッセル特性を持ったIIRフィルタの 使用が可能でしたし、エクスポネンシャル関数に基づくガウス関数を利用した、ガウシア ンFIRフィルタを選択することも可能でした。 本稿では、ガウシアンFIRフィルタをベースに、Remez法を適用することにより 遷移特性を改善した、Remez-ガウシアンFIRフィルタについて解説します。 Remez-ガウシアンFIRフィルタは、急峻な変化を持った信号を与えてもオーバー シュートを全く生じることがなく、かつ、周波数選択特性がアナログ ベッセルフィルタ並 みであることから、従来、使われてきたアナログフィルタを置き換えようとする場合に、 第一の選択肢とすることができます。 これにより、波形歪みを極力嫌う応用に関しても、帯域制限処理にディジタルフィルタ 技術を適用することが可能となります。 オーバーサンプリングAD変換に、Remez-ガウシアンFIRフィルタを適用すると、 波形歪みを生じることが無く、安定かつ高性能な帯域制限付AD変換を、大量の高精度C, Rを必要とせずに、実現することができます。

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1.Remez‐ガウシアンFIRフィルタの特徴 ここでは、51タップのRemez‐ガウシアンFIRフィルタを例にとって、このフ ィルタの特徴を見てゆきます。 (1).機能 Remez‐ガウシアンFIRフィルタは、波形歪みの少ない、帯域制限用LPFと して機能します。その周波数特性は、(3)で示すようなブロードなものであり、使途とし ては、アナログ ベッセル/ガウシアンフィルタの置き替えを想定しています。 (2).急峻な変化を伴う信号に対する応答にオーバーシュートを生じない。 Remez‐ガウシアンFIRフィルタは、急峻な変化を伴う信号を与えても、決し てオーバーシュートを生じることはありません。このため、波形歪みの少ない帯域制限が 可能となります。 図1-1 方形波に対する応答(シミュレーション結果) [備考]黒:入力信号(方形波) 赤:Remez‐ガウシアンFIRフィルタの応答 (3)周波数特性 次頁の図1-2に示すのは、Remez‐ガウシアンFIRフィルタの周波数特性で す。過渡応答を良好なものとするために、周波数特性はブロードなものに止まっており、 周波数特性カーブはカットオフ点より緩やかに減衰してゆきます。また、阻止域において は、等リプル特性を示します。 図1-2のグラフ上の赤いラインは、比較用の、12次ベッセル特性IIRフィルタ(L PF)の周波数特性です。一部の領域で、12次ベッセル特性IIRフィルタの減衰量の ほうがが上廻るものの、全体的に見て、Remez‐ガウシアンFIRフィルタの特性の ほうが、周波数選択性の面で優れていることがわかります。

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図1-2 Remez‐ガウシアンFIRフィルタの周波数特性 [備考]赤:12次ベッセル特性IIRフィルタの特性(比較用) 黒:51タップRemez-ガウシアンFIRフィルタの特性 いずれのフィルタもカットオフ周波数(-3dB点)を0.0208333fs (48KHzサンプリング時にカットオフ周波数が1KHzとなる)としています。 (4)遅延特性 図1-3 Remez‐ガウシアンFIRフィルタの遅延特性 [備考]赤:12次ベッセル特性IIRフィルタの特性(比較用) 黒:51タップRemez-ガウシアンFIRフィルタの特性 いずれのフィルタもカットオフ周波数(-3dB点)を0.0208333fs (48KHzサンプリング時にカットオフ周波数が1KHzとなる)としています。

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前頁の図1-3は、Remez‐ガウシアンFIRフィルタの遅延特性です。FIRフ ィルタは、通常、大きな遅延を伴いますが、51タップのRemez‐ガウシアンFIR フィルタも例外ではなく、帯域の全域に渡り25サンプリング周期(一定)の遅延を持ち ます。 図1-3のグラフ上の赤いラインは、比較用の、12次ベッセル特性IIRフィルタ(L PF)の遅延特性です。ベッセル特性IIRフィルタの場合には、遅延特性が平坦性を保 つのは、通過域の範囲に限られており、高域では遅延時間が減少してゆく傾向にあります。 この、遅延特性の不均一性が、ベッセルフィルタにおいて、オーバーシュートを皆無とす ることができない要因であると考えられます。 (5)それ以外の特徴 以上、Remez‐ガウシアンFIRフィルタの特性上の特徴について見てきました。 しかし、ある意味、Remez‐ガウシアンFIRフィルタの最大の特徴は、それがディ ジタルフィルタであるところにあります。 以下に、波形歪みを生じないフィルタをディジタルフィルタにより実現できることによ るメリットを示します。 ①高価な、高精度のC,Rが不要 Remez‐ガウシアンFIRフィルタは、数値演算によりフィルタ特性を得るため、 アナログフィルタを構成する際に必要となった、高価な高精度のC,Rが不要となります。 また、このため、C,R素子の経年変化の影響を受けず、安定した動作が期待できます。 ②フィルタの特性の切り換えが容易 アナログフィルタの場合、その特性を切り換えようとすると、時定数用の高精度C,R すべてを切り換える必要が生じ、大事になります。しかし、ディジタルフィルタの場合に は、特性の切り換えはフィルタ係数の切り換えにより対応できるため、容易に実現できま す。 ③オーバーサンプリングAD変換への応用が可能 Remez‐ガウシアンFIRフィルタはディジタルフィルタなので、オーバーサンプ リングAD変換への適用が可能です。 オーバーサンプリングAD変換の特徴としては、 ・オーバーサンプリング倍数を大きく取ることにより、前置アンチエリアシング フィルタ に要求される周波数特性上の条件を緩和できる。 ・オーバーサンプリング倍数を大きく取ることによる、取得データの分解能の向上。 などが挙げられます。

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2.一般的なFIRフィルタはオーバーシュートを生じる 一般的に、FIRフィルタの特徴としては、周波数特性図上において(リプルは伴うも のの)通過域と阻止域における特性を平坦にすることができ、かつ、遷移特性を急峻にで きることが挙げられます。実際に、Remez法を使って設計されたFIRフィルタは、 例えば図2-1に示すような周波数特性を持ちます。 図2-1 FIRフィルタの周波数特性例(25タップFIRフィルタ) しかしその反面、これらの特徴を備えたFIRフィルタは、急峻な変化を伴う信号に対 して、大きなオーバーシュートを生じることも、また良く知られています。 図2-2に、このFIRフィルタのインパルスと方形波に対する応答を示します。 いずれの場合も、応答波形にリプル(振動)が生じていることがわかります。 参考までに、図2-3に、このFIRフィルタのフィルタ係数を示します。

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図2-2 FIRフィルタのインパルス/方形波応答(シミュレーション結果) 図2-3 FIRフィルタのフィルタ係数プロフィール(25タップLPF) 3.オーバーシュートを生じないFIRフィルタ そんな中、限られた一握りのFIRフィルタ(次ページの図3-1参照)では、たとえ 急峻な変化を伴った波形を与えても、全くオーバーシュートを生じることがありません。 これらのFIRフィルタに共通することは、 ・フィルタの周波数特性において、通過域もしくは、通過域と阻止域の双方が平坦でない。 ・フィルタ係数が振動を伴わない(すべてのフィルタ係数の符号が正である)。 という2つの点です。これら2つが、FIRフィルタがオーバーシュートを生じない条件 であると言うことができるでしょう。 ちなみに、フィルタ係数を左右端に近づくにつれて小さくすることができれば、インパ ルス応答と、その前後の波形とのつながりがスムーズなものとなる傾向があります。 移動平均フィルタが、方形波に対する応答にオーバーシュートを生じないことは、意外 に思われるかもしれません。しかし、応答波形が角ばった台形波とはなるものの、移動平 均フィルタがオーバーシュートを生じないことは明らかです。

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4.ガウシアンFIRフィルタ これらオーバーシュートを生じないFIRフィルタの中でも、阻止域の特性が平坦に近 く、最も実用性が高いと思われるのがガウシアンFIRフィルタです。ガウシアンFIR フィルタは、図4-1に示すようなガウス関数を、フィルタ係数として使用するものです。 図4-1 ガウス関数 フィルタ係数として使用する場合には、この関数を基に等間隔のデータ列を作成します。 本来は、ガウス関数は左右両方向に無限に続いてゆきますが、FIRフィルタのタップ数 を無限に大きくすることはできませんので、適当と思われるところで打ち切ります。 データのサンプリングピッチを粗くすると、フィルタのカットオフ周波数は上昇し、デ ータのサンプリングピッチを細かくすると、フィルタのカットオフ周波数は低下します。 こうして得られたフィルタ係数の総和を取ると、そのフィルタ係数のDCゲインが得ら れます。そして、すべてのフィルタ係数をこのDCゲインで割ると、フィルタ係数のDC ゲインを1に合わせこむことができます。図4-2に、このようにして得られたFIRフ ィルタ用のフィルタ係数(51タップの例)を示します。 図4-2 ガウシアンFIRフィルタのフィルタ係数プロフィール(51タップ)

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得られたフィルタ係数(ガウス関数)を用いた、ガウシアンFIRフィルタの周波数特 性を図4-3に示します。 図4-3 ガウシアンFIRフィルタの周波数特性 [備考]赤:12次のベッセル特性IIRフィルタの周波数特性(比較用) 黒:51タップガウシアンFIRフィルタ いずれのフィルタもカットオフ周波数(-3dB点)を0.0208333fs (48KHzサンプリング時にカットオフ周波数が1KHzとなる)としています。 ガウシアンFIRフィルタの周波数特性は、12次のベッセル特性IIRフィルタのそ れに比べてややブロードなものとなります。尚、ガウシアンFIRフィルタの阻止域減衰 量は、フィルタのタップ数を増やすことにより更に大きくすることができます。 ガウシアンFIRフィルタの特性は、単純な関数を基に生成したフィルタ係数を使った ものとしては、阻止域減衰量が大きく、阻止域のリプルも比較的揃っていて(阻止域の特 性がほぼ平坦)、かなり良好な特性であると言えます。

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図4-4にガウシアンFIRフィルタの方形波応答を示します。 図4-4 ガウシアンFIRフィルタの方形波応答(シミュレーション結果) [備考]青:入力信号(方形波/振幅:1V) 赤:12次ベッセル特性IIRフィルタの応答(比較用) 黒:ガウシアンFIRフィルタの応答 ガウシアンFIRフィルタの方形波に対する応答は、12次ベッセル特性IIRフィル タの応答と比べ、遅延時間が若干異なる程度で大きい違いは認められません。 垂直軸方向に拡大してみると、比較用のベッセルIIRフィルタの応答には僅かなオー バーシュートが生じているのに対し、ガウシアンFIRフィルタの応答には全くオーバー シュートが見られないことがわかります。

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5.Remez-ガウシアンFIRフィルタ ベッセルフィルタに近い応答を示す、FIRフィルタ用のフィルタ係数を実現しようと 模索する試行錯誤の過程で、Remez法を使用することにより、偶然、ガウス関数に極 めて近いフィルタ係数を得ることができました。 図5-1に示すのは、前項の図4-1で示したガウス関数(黒の線)に、Remez法 を使って作成したフィルタ係数を赤の線で重ねたものです。これを見ると、このフィルタ 係数が99パーセント以上の割り合いでガウス関数に符合していることがわかります。 便宜上、本稿では、この係数(関数)をRemez-ガウシアン係数(関数)と呼びます。 図5-2に51タップの場合のRemez-ガウシアン係数のプロフィールを示します。 図5-1 Remez-ガウシアン係数(関数)...ガウス関数上にオーバーラップ [備考]黒:ガウス関数 赤:Remez-ガウシアン関数 図5-2 Remez-ガウシアンフィルタ係数のプロフィール(51タップ) 図5-3に、Remez-ガウシアンFIRフィルタの周波数特性を示します。 図5-3より、51タップのRemez-ガウシアンFIRフィルタの特性が、12次の ベッセル特性IIRフィルタを置き換えるのに十分使えそうであることがうかがえます。

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図5-3 Remez-ガウシアンFIRフィルタの周波数特性 [備考]赤:12次ベッセル特性IIRフィルタの特性(比較用) 青:51タップガウシアンFIRフィルタの特性(参考) 黒:51タップRemez-ガウシアンFIRフィルタの特性 いずれのフィルタもカットオフ周波数(-3dB点)を0.0208333fs (48KHzサンプリング時にカットオフ周波数が1KHzとなる)としています。 同じ51タップの場合の比較ですが、ガウシアンFIRフィルタの特性に較べて、Re mez-ガウシアンFIRフィルタの遷移特性はよりシャープで、減衰量も大きく、阻止 域のリプルも完全に等リプルとなっていることがわかります。 Remez法は、阻止域を(このケースでは通過域に関しては等リプル化を摘要してい ない)等リプルとした上で、阻止域減衰量の大きさと遷移域の幅とのバランスを取って最 適化するプロセスであると考えられます。従って、Remez法により作成されたフィル タ係数による特性以上のものを、特定の関数をサンプリングして得られたフィルタ係数(例 えばガウシアンFIRフィルタ)により実現することは、困難であると考えられます。

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図5-4にRemez-ガウシアンFIRフィルタの方形波応答を示します。 図5-4 Remez-ガウシアンFIRフィルタの方形波応答(シミュレーション結果) [備考]青:入力信号(方形波/振幅:1V) 赤:12次ベッセル特性IIRフィルタの応答(比較用) 黒:Remez-ガウシアンFIRフィルタの応答 方形波応答に関しては、ガウシアンFIRフィルタの場合と大きな相違は認められませ ん。 ベッセルIIRフィルタの応答には僅かではあるもののオーバーシュートが生じている のに対し、Remez-ガウシアンFIRフィルタの応答には、まったくオーバーシュー トが生じていないことがわかります。

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6.Remez-ガウシアンFIRフィルタの係数設計 ここで、Remez-ガウシアン係数の生成方法について触れておきます。 例えば、Remez法により、通常のLPFのフィルタ係数を求めようとする場合の、 設計パラメータは図6-1のようなものとなります。 この図のように通過域と阻止域の周波数ポイント(ω0~ω9)を設定して、Remez 法を適用することにより、LPFの周波数特性カーブを設計することができます。 この場合は、ω0,ω4,ω5,ω9の周波数を固定し、ω1~ω3,ω6~ω8の周波 数を加減して、通過域リプルおよび阻止域リプルの振幅を揃えてゆくことになります。 図6-1 通常のFIRフィルタのフィルタ係数を求める場合の設定 これに対して、Remez-ガウシアンFIRフィルタのフィルタ係数を求めようとす る場合には、次頁の図6-2のようになります。 阻止域側の設定は通常のLPFの場合と変わりませんが、通過域側の設定をω0(周波数 =0,ゲイン=1)の1点のみとします。 このように周波数ポイントを設定してRemez法を適用することにより、Remez -ガウシアンFIRフィルタの周波数特性カーブが得られます。 この場合には、ω0,ω1,ω5の周波数を固定し、ω2~ω4の周波数を加減して阻止 域リプルの振幅を揃えてゆきます。 こうして周波数特性カーブのデータが得られたら、それを離散逆フーリエ変換すること によりフィルタ係数(与えられた周波数特性カーブに従った周波数成分より成る、インパ ルス性の信号)が得られます。

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図6-2 Remez-ガウシアン関数を求める場合 尚、この場合、フィルタのカットオフ周波数(fc)は、阻止域の周波数ポイント数/ 阻止域エッジ周波数/阻止域リプルの振幅(δs)などのパラメータの影響を受け、成り 行きで決まります。 このため、現状では、任意のカットオフ周波数のフィルタ係数を得るために、これらのパ ラメータを変化させて、カットオフ周波数の値を追い込むという作業を行っています。 また現状では、Remez法で収束したかどうかの判定も自動化できておらず、収束の 過程を観察したり、得られたフィルタ係数により周波数特性を描かせてみるなどして、人 手で判断しています。

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7.応用 Remez-ガウシアンFIRフィルタは、極力波形歪みの発生を抑える必要のある、 計測用のAD変換回路用の帯域制限に使用することができます。オーバーサンプリング技 術を併用すれば、前置アナログ アンチエリアシングフィルタに低次のものを使用すること も可能となります。 ディジタルフィルタの実現コストが下がる一方の今日では、Remez-ガウシアンF IRフィルタを、オーバーサンプリング技術と併せて、ハイエンドオーディオ用のAD変 換に適用することができるかもしれません。アナログ アンチエリアシング フィルタにベ ッセル特性のものをチョイスすれば、すべての帯域制限フィルタを波形歪が少ないもので 構成することもできます。 但し、Remez-ガウシアンFIRフィルタの周波数特性はブロードなので、所要の 帯域に対してサンプリング周波数をかなり高く設定する必要があるでしょう。 Remez‐ガウシアンFIRフィルタのフィルタ係数は、帯域制限インパルスや帯域 制限ステップ関数,帯域制限方形波などの生成にも応用できます。 Remez法を使って生成されたガウス関数は、データポイント数が有限の値となるた め、データ打ち切り処理の必要がなく、また、通常のガウス関数に比べて特性も良好であ ることから、通常のガウス関数をおきかえるといった用途もあるでしょう。 8.参考文献 魚田隆:群遅延が平坦な音響測定用ロー・パス・フィルタの製作(前編),トランジスタ技 術2007年3月号,CQ出版株式会社. 魚田隆:群遅延が平坦な音響測定用ロー・パス・フィルタの製作(後編),トランジスタ技 術2007年4月号,CQ出版株式会社.

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(注.本文5頁で、位相特性ではなく遅延特性を示していることの補足説明です。) コラム:直線位相特性とは FIRフィルタの教科書には、FIRフィルタは「直線位相特性」を持つと書かれてい ます。いったい、「直線位相特性」とは何を意味しているのでしょうか? 図1に「直線位相特性」と呼ばれる、位相特性の比較的単純な例を示します。 この図では、表現を平易なものとするため、位相遅れをプラスの値として示しています。 図1 直線位相特性の意味 周知の通り、位相特性とは、ある系(表現しようとする対象)が、どの周波数でどれだ けの位相の遅れ(または進み)を生じるかをプロットしたグラフです。 それでは、この特性(図1)が何を意味しているかを見てゆきましょう。 特性図より、周波数が1KHzのポイントにおける移相量は360°(1周期)である ことがわかります。1周期が1mSである1KHzの正弦波において、1周期分位相が遅 れるということは、時間に換算すると、1mS信号が遅れることになります。 特性図からは、周波数2KHzのポイントにおける移相量は720°(2周期)である ことが読み取れます。1周期が0.5mSである2KHzの正弦波において、2周期分位 相が遅れるということは、時間に換算すると、1mS信号が遅れることになります。

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特性図からは、周波数3KHzのポイントにおける移相量は1080°(3周期)であ ることが読み取れます。1周期が0.333mSである3KHzの正弦波において、3周 期分位相が遅れるということは、時間に換算すると、1mS信号が遅れることになります。 以上、3つのポイントにおいて、特性図より読み取った位相の遅れを、時間的な遅延に 換算してみた訳ですが、いずれの点における遅延も1mSという結果となりました。 この結果からすると、どうやら、「直線位相特性」というのは、位相特性のグラフ上に、 遅延時間=一定のラインを引いたものであることがわかります。 以上のことより、図1の位相特性(「直線位相特性」)により表現されている内容を、遅 延特性として描くと、図2のようになります。 ここでは、表現を平易なものとするため、信号の遅延をプラスの値として表現しています。 図2 遅延特性(図1の位相特性と同じ内容を遅延特性としてプロットしたもの) 両者を比較した場合、どう考えても、遅延時間が一定であるという事実を示したいので あれば、位相特性表示(いわゆる「直線位相特性」)を使うよりも、遅延特性表示を使った ほうが単純であり、理解し易いものと思われます。

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●FIRフィルタの時間的応答(遅延/位相特性を指す)の表現方法 「直線位相特性」が示すのが「周波数に依らず遅延時間が一定」であることなのならば、 「直線位相特性」などという婉曲な表現よりは、ズバリ「遅延が一定」と書いたほうが直 截的ですし、FIRフィルタの時間的応答も「遅延特性」で表現することが望ましいこと になります。それに、ある系が位相歪みを生じるかどうかを判断しようとする場合に参照 するグラフとしては、直感的に判断できる「遅延特性」のほうが優れていると言えます(す べての周波数で遅延時間が一定ならば、位相歪が生じないのはあたりまえのことです)。 ●51タップFIRフィルタの遅延特性 本文においては、51タップのRemez‐ガウシアンFIRフィルタについて述べて いますが、この場合ももちろん例外ではありません。 51タップのFIRフィルタ(フィルタ係数が左右対称の場合)の位相特性は、図3の ように表すことができます(フィルタ特性がLPFであろうと、HPFであろうと、BP Fであろうと、51タップのFIRフィルタであれば、この特性は変わりません)。 図3 フィルタ係数が左右対称な51タップFIRフィルタの位相特性(「直線位相特性」) この図の垂直軸は2π(1周期/360°)フルスケールで、鋸歯特性が12.5周期 分繰り返しているので、移相傾度は、0.5fsあたり12.5周期であることがわかり ます。これを2π(1周期)あたりの周波数の変化に直すと、0.04fsとなります。 直線位相特性を示す系の遅延時間は、移相傾度の2πあたりの周波数の逆数を取ったも のとなるため、td=1/0.04(fs) = 25(Ts)となります。 従って、51タップのFIRフィルタの遅延特性は、次頁の図4のように表現できます。

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図4 フィルタ係数が左右対称な51タップFIRフィルタの遅延特性(25Ts一定) ●FIRフィルタの遅延時間(フィルタ係数が左右対称の場合)の計算方法 いちいち、直線位相特性のグラフを読むのは面倒ですし、タップ数が増えると、必ずし も、グラフより移相傾度を正確に読み取れるとも限りません。もし、もっと簡単な方法で FIRフィルタの遅延時間が求められるのであれば便利であるに違いありません。 フィルタ係数が左右対称のFIRフィルタの遅延時間は、そのタップ数をもとに、次の 式により、直接求めることができます。 遅延時間 = (FIRフィルタのタップ数 - 1)/ 2 [サンプリング周期] 尚、タップ数が偶数の場合には、0.5サンプリング周期単位の端数を伴った、信号の遅 延を生じることになります。 ●参考文献 ・伊藤整一先生の著書、「アースと位相」(日刊工業新聞社刊)の76頁の図5‐5を御覧 下さい。この図において、伊藤先生は、「直線位相特性」と「周波数に依らず遅延時間が 一定の特性」とが同じ内容を表現していることを示しておられます。 ・西村芳一先生の著書、「ディジタル信号処理による通信システム設計」(CQ出版社刊) の第5章を御参照下さい。西村先生は、この章で「直線位相のフィルタは周波数に関わ らず遅延が一定の波形歪がないフィルタといえます。」と述べておられます。

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