• 検索結果がありません。

せた栄養剤をまとめて 半固形化 と称するよう用語の統一が行われた 6) しかし 栄養剤の流体特性や胃内溶液モデル研究をもとに 寒天による固形化は増粘剤による半固形化とは同等の効果が得られないとする報告もある 7) 胃腸の各部位はそれぞれ異なる機能を持ち 食塊の粘度 胃の運動機能 栄養素の消化吸収等を

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "せた栄養剤をまとめて 半固形化 と称するよう用語の統一が行われた 6) しかし 栄養剤の流体特性や胃内溶液モデル研究をもとに 寒天による固形化は増粘剤による半固形化とは同等の効果が得られないとする報告もある 7) 胃腸の各部位はそれぞれ異なる機能を持ち 食塊の粘度 胃の運動機能 栄養素の消化吸収等を"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

 日本では胃瘻からの経腸栄養法として半固形化栄養法 (以下、半固形化法)が急速に普及している。一般的に、半 固形化法により胃食道逆流症、誤嚥性肺炎、下痢、褥瘡 の予防と改善、介護者の負担軽減などの効果が得られる と考えられている。半固形栄養剤は、液体栄養剤に半固 形化剤を添加して粘度調整されていたが、2005年以降 は既成の半固形栄養剤も市販されている1)2)  今回、筆者(A.I.)が勤務する米国において、日常業務 として経腸栄養に関わる登録栄養士(RD)15名に半固 形化法のプレゼンテーションを行ったところ、大きな反響 があった。彼らは、日本で実践されている半固形化法の 効果に大いに期待を示すと共に、残念ながらそのエビデ ンスが不十分であり、注入方法等にもコンセンサスが見ら れないと指摘した。  そこで、半固形化法のエビデンス、及び注入方法のコン センサス確立への一歩として、1)半固形化法の理論、2) 半固形化法の有効性に関するこれまでの研究をレビュー した。更に、半固形化法の実践例を紹介する。

半固形化法の理論

 「半固形栄養剤」とは、トマトペーストやマヨネーズのよ うな物性を持ち、液体栄養剤と比較して生理的な形態だ と述べられている3)。寒天などを使用し、重力に対してそ の形を維持できる栄養剤は、「固形化栄養剤」であるとさ れてきたが4)5)、栄養材形状機能研究会で、形状を変化さ *Review of Mechanism, Current Evidence and Practice of Enteral Semi-Solid Formula use to Prevent Gastroesophageal reflux,

総説

半固形化栄養法における、理論・論文のレビュー *

keywords:

半固形化栄養法、粘度、胃瘻

一政晶子1) Akiko ICHIMASA 一丸智美2) Satomi ICHIMARU ◆米国マリコパメディカルセンター 臨床栄養部1)

 神戸市立医療センター西市民病院 栄養管理室2) Maricopa Medical Center, Clinical Nutrition1)

Kobe City Hospital Organization Medical Center West Hospital, Nutrition Management2)

 近年日本では半固形化栄養法が急速に普及し、胃食道逆流症、誤嚥性肺炎、下痢 等の改善が報告されている。現在のところ、欧米では半固形化法は認知されていない が、今後エビデンスや投与法のコンセンサスが確立すれば、日本以外の胃瘻患者にも 推奨できる技術であると考えられる。そこで、今後のさらなる研究 ・ 実践に発展させる ために、半固形化法における1)理論、2)論文による有用性のレビューを行った。更に 半固形化法の実践例を紹介する。  結果 : 今回の論文レビューで、粘度 900 mPa・s 以上で胃食道逆流症、3000 mPa・s 以上で下痢を改善する可能性が示唆された。また、3000 mPa・s 以上では短時間投与 (15分以内)が可能であり、褥瘡の改善や QOL の向上に有効な可能性も示唆された。 しかし、半固形化法に関する論文総数は少なく小規模研究・症例報告が大半を占める ため、効果を結論付けるエビデンスは不十分である。今後、粘度以外の要因にも考慮 した大規模な比較研究が望まれる。

(2)

せた栄養剤をまとめて「半固形化」と称するよう用語の統 一が行われた6)。しかし、栄養剤の流体特性や胃内溶液モ デル研究をもとに、寒天による固形化は増粘剤による半 固形化とは同等の効果が得られないとする報告もある7)  胃腸の各部位はそれぞれ異なる機能を持ち、食塊の粘 度、胃の運動機能、栄養素の消化吸収等を操っている。胃 腸粘膜の受容体は、食塊の性質や管内伸展に敏感である など、消化器は多くの要因によって制御されている8)  食物摂取時には、嚥下による受容性弛緩と胃壁伸展に よる適応性弛緩によって胃近位部が弛緩するが、これら は迷走神経によって媒介される9)10)。胃内容物による胃壁 伸展は、胃内圧を上昇させることなく、胃近位部の弛緩・ 胃遠位部の収縮を促し9)11)、迷走神経を介して胃酸・ペプ シノゲン・ガストリン等の消化液分泌を促す9)。固形食品 摂取直後、胃内容物は近位胃に保持され、徐々に移動し ながら、遠位胃により排出される12)。液体食品の場合は、 摂取後速やかに胃全体に分配され、主に胃底部圧によっ て排出される12)  半固形・固形食品の摂取は、直ちに胃壁伸展と胃近位 部の弛緩を促すが13)〜15)、液体食品では迅速な伸展や弛 緩がみられないという報告がある13)15)。液体は、最初の15 -20分程度はスムーズに胃排出されるが、半固形食品と 比較して、その後の排出が抑制され逆流したという報告 もあり13)16)、十二指腸におけるグルコース、脂肪酸による コレシストキニン上昇が及ぼす遠位胃の収縮抑制を示唆 する文献もある16)  様々な研究報告やオピニオンが出ているが、現時点で は、半固形化法を裏付けるメカニズムは明らかにされてい ない。

半固形化法の有効性に関する

これまでの研究・症例報告

Ⅰ.研究報告

1.頭蓋内病変における研究(1998年)  症例は異なる8施設に入院し、経管栄養時に胃食道逆 流がみられ、呼吸器感染を反復していた15名(脳血管障 害13名、頭部外傷2例、平均年齢72.5歳、平均試験期 間30.7日)を対象とした17)  胃瘻が半数以上で、残りは経鼻・経口にてREF-P1 (4.5%ペクチン液90g)を胃に投与、逆流が改善されな かった場合は、更にREF-P2 (1%塩化カルシウム液 35g)を追加投与した。投与速度は8名で60分以内、3名 で30分以内、投与時の体位は90度座位と上体30度挙 上が同数であった。  試験開始前に15名全員にみられていた胃食道逆流 は、9名で認められなくなった。半数以上にみられた呼吸 器感染も試験開始後1週間以降では4例(誤嚥性肺炎以 外の原因が示唆される症例1名)となった。800 〜 900 mPa・sの粘度があれば、胃食道逆流を十分予防できるこ とが示唆された。 2.頭蓋内病変における研究(2003年)  症例は、呼吸器感染を繰り返していた9施設の患者、 合計16名(脳血管障害 14名、頭部外傷2名、平均年齢 72.5歳)を対象とした 18)  胃瘻または経鼻胃管より粘度調整剤(REF-P1®)を一 気に注入した後、液体栄養剤(K-3S®)を30 〜 60分かけ て投与、さらに水約20mLでチューブ洗浄を行った。粘度 調整剤を加えると、栄養剤の粘度は900 mPa・sまで上昇 し安定すると報告している。栄養剤投与後は約1時間座 位が保たれた。追加水分は、栄養剤投与後1-2時間を 避けて投与した。その結果、液体栄養剤のみ(種類不明) の9名に呼吸器感染による熱発がみられたが、粘度調整 剤使用後には4名に減少した。胃食道逆流症が全くみら れない患者は4名から10名に増えた。  さらに平均年齢21歳の通常生活を営む健常人4名(う ち男性3名)のボランティアに対し、液体栄養剤(K-3S® の急速単独投与、および粘度調整剤(REF-P1®)との併 用投与を行ったところ、3時間の検査中に、液状栄養剤単 独投与では、逆流時間率の平均が2.1%だったのに対し、 粘度調整剤併用投与では0.3%だった。 3.認知症、 脳卒中症例での研究(2004年)  症例は、平均年齢80歳の患者17名(うち認知症8名、 脳卒中9名)。20mLのガストログラフィンを含む 400mLの液体栄養剤(種類不明)を15分で投与したとこ ろ、10名に胃食道逆流症が見られた19)。そこで同量の栄 養剤を寒天で固形化しボーラス投与したところ、胃食道 逆流がみられたのは4名に減り、液体栄養剤との有意差

(3)

報告している。粘度の異なるバリウム製剤400mLを30 度の半座位で5 〜15分かけて投与した。胃食道逆流の 有無は、注入後30分で咳反射を誘発することで判断し た。胃食道逆流が見られなかった症例は、20,000 mPa・s で14名、10,000 mPa・sで11名、2000 mPa・sで9名、 従来法(詳細明記無し)では9名であった。高粘度では、 胃内貯留時間が延びるが胃食道逆流は起こりにくかった と報告している。 6.87歳以上の女性患者での研究(2009年)  症例は、基礎疾患のため入院中の87〜 91歳の女性患 者4名21)。それまで使用していた液体栄養剤(CZ-Hi®)に 粘度調整食品(つるりんこQuickly®)を添加し、粘度を 約4100 mPa・sに調整、1回あたり4 〜 8分で投与した。 2名にみられた褥瘡は2 ヵ月後に改善した(P<0.05)。半 固形化法は短時間で投与可能であり、同一姿勢を保つ時 間が短縮されることにより、褥瘡の予防や改善に有用で あることを示唆している。

Ⅱ.症例報告

1.脳梗塞後遺症による嚥下困難の症例(2002年)  症例は85歳女性、脳梗塞後遺症のため嚥下困難とな り、液体栄養剤(種類不明)を投与していたが、胃瘻造設 後慢性期に栄養剤の流涎、胃瘻挿入部からの栄養剤リー ク、嘔吐、発熱、栄養剤注入時の呼吸困難様症状、肺炎な どがみられていた22)。固形化法に変更し、水分200mLに 対し粉末状寒天1gの割合で調整した固形化栄養剤 500mLを1日3回投与したところ、発熱以外の症状は直 ちに消失し発熱も2週間で消失した。 2.脳梗塞後遺症による嚥下困難の症例(2005年)  症例は、脳梗塞後遺症のため嚥下困難となり、誤嚥性 肺炎を繰り返していた87歳と91歳の女性23)。経鼻胃管よ り粘度調整剤(REF-P1®、50mL)を投与後、直ちに液体 栄養剤(CZ-Hi®とMA-8 1.5®の組み合わせ400mL)を 1時間以内で注入、その後、白湯20mLでチューブ洗浄と いう方法で、朝夕1日2回投与した。胃食道逆流や流涎が 減少したと報告している。 が認められた(p = 0.014)。胃食道逆流は食道のコン ピューター断層撮影装置(CT) で栄養剤投与30分後に 診断した。 4.人工胃液内溶解試験の研究(2006年)  人工胃液内溶解試験では、ペクチンで固形化した栄養 剤は注入60分後も形状が保持され、残存率90%以上 だった20)。ゼラチンによる固形化では、注入後速やかに溶 解した。寒天による固形化では、60分間で60%以上の残 存率だったが、注入時の形状は確認されなかった。人工 腸液内溶解試験では、ペクチン及びゼラチンにて固形化 した栄養剤は、速やかに溶解した。寒天による固形化で は、60分後で40%程度が残存した。  ラットへの投与試験では、ペクチンにて固形化した液 体栄養剤(EN大塚製薬、製品名明記無し)は、胃内滞留 時間が延び、液体栄養剤と比較して30分で胃内容物の 残存量に有意差がみられた。小腸内移行後は有意差は認 められなかった。  ラット(n=15)による研究では、液体栄養剤を投与した ところ、8匹に口腔内逆流、6匹に嘔吐、2匹に誤嚥、14匹 に食道内逆流が確認された。一方、ペクチンを主成分とし たゲル化剤(イージーゲル®)を使用した固形化栄養剤で は、口腔内逆流、嘔吐、及び誤嚥はみられず、胃食道逆流 は5匹であり、液体栄養 剤に比し有意に減少した (p<0.01)。この結果は胃内での栄養剤の保形性によるも のと述べている。また、液体栄養剤では投与2日以降に軟 便及び下痢が発生したが、固形化栄養剤ではそれらは発 生せず、特に投与5日、6日目では有意差がみられた(それ 以降の報告はなし)。固形化して胃排泄を遅延させる物理 的な作用と、水溶性食物繊維であるペクチンの作用で下 痢を予防する可能性があると述べている。 5.誤嚥の既往がある胃瘻症例での研究(2006年)  症例は誤嚥の既往がある胃瘻患者7名(平均年齢76.9 歳、男性4名、女性3名)13)。粘度の異なるバリウム製剤 200mLを仰臥位で5分間で投与し、X線透視下で観察 した。低粘度(5 mPa・s)では3名に胃食道逆流を認め、 そのうち2名は、中粘度(1000 mPa・s)で、残り1名は高 粘度(50,000 mPa・s)で胃食道逆流は見られなくなった。  また、胃瘻で誤嚥性肺炎の既往がある15名の症例も

(4)

3.右不全麻痺の症例(2006年)   症例は、左視床出血により意識レベル低下及び右不全 麻痺になった87歳男性7)  経鼻経管栄養により、下痢、湿性咳嗽、栄養剤の口腔 内逆流、咳・痰の増加がみられていた。繰り返す誤嚥性 肺炎のため胃瘻を施行したが、液体栄養剤使用時(種類 明記無し)は、胃食道逆流が発生し誤嚥性肺炎は改善し なかった。半固形化法(ジェビティー®300mL+白湯 50mL+トロメイク®4包(6g)を15分間)で投与したとこ ろ、口腔内逆流は消失し、下痢は改善され、リハビリ効果 が向上し、QOLも改善した。  またpHの異なる胃内溶液モデル(pH2.0、pH7.0)に、 固形栄養剤(ジェビティー®350mL、蒸留水50mL、寒天 クック®1g)、半固形栄養剤(ジェビティー®350mL、蒸留 水50mL、トロメイク®10g)を投与し、いずれのpHにお いても半固形栄養剤は固形栄養剤と比較して投与時の 形状を保持し、胃食道逆流予防に有用と述べている。 4.小脳出血後遺症による嚥下機能障害の症例(2006年)  症例は、高血圧、糖尿病のある57歳男性。小脳出血後 遺症による嚥下機能障害により胃瘻を使用していた24)。液 体栄養剤(1日1500kcal、メディエフボトル®)の投与で下 痢が続いたため、半固形栄養剤(メディエフボトル®+2% 増粘剤)の使用を開始し、1日3回のボーラス投与を行っ たところ、3日で下痢が解消した。筆者らは、胃内滞留時間 の延長に伴う吸収速度の緩徐化、増粘剤に含まれる食物 繊維が下痢の解消に寄与した可能性があるとしている。  上記の研究・症例報告の結果を表1にまとめた。

考察

 経鼻胃管や胃瘻を介した液体栄養剤投与では、胃近位 部の嚥下による受容性弛緩が起こらず、胃壁伸展の遅延 や欠如により十分な適応性弛緩も誘発されない可能性が ある8)〜13)15)16)。半固形化法では、迅速な胃壁の伸展が胃 近位部の弛緩を促し、さらには消化液の分泌を促すと考 本文中の 報告番号 研究者 効果 研究開始前の栄養剤 / コントロール 栄養剤 /1回 半固形化剤 /1回 調整法 効果のみられた粘度 投与時間 体位

研究 1 稲田ら(17) n=15 胃食道逆流 - K-3S(400kcal/400ml) + 白湯 20ml. 食物繊維量不明 . REF-P1(4.5% ペクチン液 90g)で逆流がみられる場合は、REF-P2(1%塩化カルシ ウム液 35g) を追加投与 . 食物繊維 2.25g.

栄養剤投与後に、REF-P1 を注入 .

白湯 20ml でフラッシュ . 800 ~ 900mPa・s

60分以内 8名

30分以内 3名 90度座位、上体 30度挙上が同数 研究 2 田部井ら(18) n=16 胃食道逆流 - K-3S(400ml, 遊離型カルシウム60mg/ml). 食物繊維 4g. 粘度調整剤(REF-P1(2.8% ペクチン液 90g). 食物繊維 1.4g. REF-P1注入後に栄養剤を投与 .フラッシュ水 20ml. 900mPa・s 30 ~ 60分 投与後、1時間ほど座位 研究 3 蟹江ら(19) n=17 胃食道逆流 誤嚥性肺炎 液状栄養剤 400ml(種類不明). ガストログラフィン 20ml を含む . コントロールと同じ 400ml 寒天 液体栄養剤 500ml +水 500ml に対し、寒天 5g. ― 15分 ― 研究 4 田代(20) n=15(ラット)胃食道逆流下痢、嘔吐など 液体栄養剤(種類不明).食物繊維 0g. 液体栄養剤(種類不明).食物繊維 0g. 栄養剤 200ml あたりイージーゲル54g、食物繊維 2.6g. ― 岡田ら (26) の研究より推定20,000mPa・s 程度 ― ― 研究 5 合田(13) n=7 胃食道逆流 ― バリウム製剤 200ml ― ― 1,000mPa・s 2名 50,000mPa・s 1名 5分 仰臥位 n=15 バリウム製剤 400ml 2,000mPa・s 9名 10,000mPa・s 11名 20,000mPa・s 14名 ** 5 ~ 15分 30度の半座位

研究 6 宮元(21) n=2 褥瘡 ― CZ-Hi (800ml 又は 1,000ml/ 日、食物繊維 20g/L)+水(1回当たりの投与量は不明). つるりんこ Quickly(量不明).食物繊維 21.9g/100g. スプーンで 15秒攪拌し、15分間静止 . 約 4,100mPa・s 4 ~ 8分 30度半座位 . 注入後も15分体位保持 症例 1 蟹江ら(22) n=1 胃食道逆流 栄養剤リークなど ― 半消化体栄養剤+必要水分(計 500ml、各量不明). 食物繊維 0g. 粉末状寒天 . 食物繊維 0.8g/g. 水分 200ml に対して粉末状寒天1g. 杏仁豆腐程度の硬さ 数分程度 座位保持施行なし

症例 2 金岡ら(23) n=2 胃食道逆流 誤嚥性肺炎 ― CZ-Hi と MA-8 1.5 の組合せ 400ml.CZ-Hi 食物繊維 20g/L.MA-81.5 食物繊 維(難消化性デキストリン)1g/100kcal. 粘度調整剤 (REF-P1、50ml、ペクチ ンが主成分). 食物繊維 1.4g. REF-P1注入後に栄養剤を投与 . 白湯 20ml でフラッシュ . 190 ~ 600mPa・s 以内 1時間 ― 症例 3 伊藤ら(7) n=1 口腔内逆流 下痢など ― ジェビティー(300ml)+白湯(50ml) ボーラス投与 . 食物繊維 3g. トロメイク 4包(6g). 食物繊維 3.2g. 全量をシェイカーにて 2 ~ 3分混和 後、2時間放置安定 . 推定 3,000mPa・s 前後(粘度の経 時変化報告より(7)) 15分 ― 症例 4 村林ら(24) n=1 下痢 メディエフボトル 1500kcal/ 日 . 食物繊維 15g. メディエフボトル 1500kcal/ 日 . 食物繊維 15g. 2%増粘剤(ソフティア ENS). 食物繊維 8.4g/ 日 . 増粘剤を加え、バーミックスで 2分 攪拌 . 7,920mPa・s* 短時間(15分程度と推定) ― 表 1 :各研究・症例報告のまとめ 研究報告 1 ~ 6、症例報告 1 ~ 4をまとめた。

(5)

えられるため、胃食道逆流症や下痢を抑制できるのかも しれない8)〜15)  今回のレビューでは、胃食道逆流に対し、900 mPa・s以 上の粘度で効果があることが強く示唆された7)17)18)20)23) しかし、粘度が低い寒天25)を使用した固形化栄養剤で も、胃食道逆流改善の効果が報告されていることから19)22) 粘度のみの問題ではなく、栄養剤の胃内残存率や、 400mL 〜 500mLのボーラス投与による胃の伸展も関与 している可能性もある。比較的低粘度(190 〜 600 mPa・s)でも胃食道逆流や流涎の減少は報告されている が23)、この粘度範囲では、胃食道逆流の消失は見込みに くいと判断した。また、2000 mPa・s程度の粘度では胃食 道逆流防止効果がないと報告されたが13)、この研究では バリウム製剤が使用されているため、消化管に与える影 響が栄養剤とは異なる可能性もある。現時点では効果的 な粘度は明確ではなく、今後、粘度を重視した比較研究 が望まれる。  下痢に関しては、粘度が3000 mPa・s以上の栄養剤に は、改善効果7)20)24)がある可能性が症例報告とラット研 究により示唆された。しかし、食物繊維との関連性が考え られるため、コントロールと食物繊維を同量とした比較研 究が望まれる。  さらに、3000 mPa・s 以上では15分以内という短時 間投与が可能であったケースが報告7)13)19)21)22)24)されて おり、同一姿勢を保つ時間短縮の観点から、褥瘡予防に 効果がある可能性21)が考えられる。投与時間の短縮は、 リハビリ時間の確保、介護の負担軽減に有効なことが報 告されており7)18)19)22)23)、患者ケアや患者のQOLの改善 が示唆される。  現時点での理論や研究・症例報告を基にすると、半固 形化法は、患者ケアに大変有用である可能性が高い。し かしながら、使用する栄養剤の成分等が、比較検討され ていないケースもあるため、半固形化による粘度の効果 なのか、食物繊維の量など、その他の要因によるものか 明確ではない。よって、投与量、食物繊維量、投与に要した 時間、投与回数、粘度などを明らかにした規模の大きい比 本文中の 報告番号 研究者 効果 研究開始前の栄養剤 / コントロール 栄養剤 /1回 半固形化剤 /1回 調整法 効果のみられた粘度 投与時間 体位

研究 1 稲田ら(17) n=15 胃食道逆流 - K-3S(400kcal/400ml) + 白湯 20ml. 食物繊維量不明 . REF-P1(4.5% ペクチン液 90g)で逆流がみられる場合は、REF-P2(1%塩化カルシ ウム液 35g) を追加投与 . 食物繊維 2.25g.

栄養剤投与後に、REF-P1 を注入 .

白湯 20ml でフラッシュ . 800 ~ 900mPa・s

60分以内 8名

30分以内 3名 90度座位、上体 30度挙上が同数 研究 2 田部井ら(18) n=16 胃食道逆流 - K-3S(400ml, 遊離型カルシウム60mg/ml). 食物繊維 4g. 粘度調整剤(REF-P1(2.8% ペクチン液 90g). 食物繊維 1.4g. REF-P1注入後に栄養剤を投与 .フラッシュ水 20ml. 900mPa・s 30 ~ 60分 投与後、1時間ほど座位 研究 3 蟹江ら(19) n=17 胃食道逆流 誤嚥性肺炎 液状栄養剤 400ml(種類不明). ガストログラフィン 20ml を含む . コントロールと同じ 400ml 寒天 液体栄養剤 500ml +水 500ml に対し、寒天 5g. ― 15分 ― 研究 4 田代(20) n=15(ラット) 胃食道逆流下痢、嘔吐など 液体栄養剤(種類不明).食物繊維 0g. 液体栄養剤(種類不明).食物繊維 0g. 栄養剤 200ml あたりイージーゲル54g、食物繊維 2.6g. ― 岡田ら (26) の研究より推定20,000mPa・s 程度 ― ― 研究 5 合田(13) n=7 胃食道逆流 ― バリウム製剤 200ml ― ― 1,000mPa・s 2名 50,000mPa・s 1名 5分 仰臥位 n=15 バリウム製剤 400ml 2,000mPa・s 9名 10,000mPa・s 11名 20,000mPa・s 14名 ** 5 ~ 15分 30度の半座位

研究 6 宮元(21) n=2 褥瘡 ― CZ-Hi (800ml 又は 1,000ml/ 日、食物繊維 20g/L)+水(1回当たりの投与量は不明). つるりんこ Quickly(量不明).食物繊維 21.9g/100g. スプーンで 15秒攪拌し、15分間静止 . 約 4,100mPa・s 4 ~ 8分 30度半座位 . 注入後も15分体位保持 症例 1 蟹江ら(22) n=1 胃食道逆流 栄養剤リークなど ― 半消化体栄養剤+必要水分(計 500ml、各量不明). 食物繊維 0g. 粉末状寒天 . 食物繊維 0.8g/g. 水分 200ml に対して粉末状寒天1g. 杏仁豆腐程度の硬さ 数分程度 座位保持施行なし

症例 2 金岡ら(23) n=2 胃食道逆流 誤嚥性肺炎 ― CZ-Hi と MA-8 1.5 の組合せ 400ml.CZ-Hi 食物繊維 20g/L.MA-81.5 食物繊 維(難消化性デキストリン)1g/100kcal. 粘度調整剤 (REF-P1、50ml、ペクチ ンが主成分). 食物繊維 1.4g. REF-P1注入後に栄養剤を投与 . 白湯 20ml でフラッシュ . 190 ~ 600mPa・s 以内 1時間 ― 症例 3 伊藤ら(7) n=1 口腔内逆流 下痢など ― ジェビティー(300ml)+白湯(50ml) ボーラス投与 . 食物繊維 3g. トロメイク 4包(6g). 食物繊維 3.2g. 全量をシェイカーにて 2 ~ 3分混和 後、2時間放置安定 . 推定 3,000mPa・s 前後(粘度の経 時変化報告より(7)) 15分 ― 症例 4 村林ら(24) n=1 下痢 メディエフボトル 1500kcal/ 日 . 食物繊維 15g. メディエフボトル 1500kcal/ 日 . 食物繊維 15g. 2%増粘剤(ソフティア ENS). 食物繊維 8.4g/ 日 . 増粘剤を加え、バーミックスで 2分 攪拌 . 7,920mPa・s* 短時間(15分程度と推定) ― * ニュートリー株式会社の情報提供:ソフティア ENS7gを70ml の熱湯に溶解させたものに、25℃のメディエフバッグの内溶液を250mlを攪拌しながら投 入し、均一になるまで攪拌し、50ml のシリンジ6本に吸い取り、25℃にて 60分間保管。シリンジから300ml のトールビーカーへ排出し、B型粘度計にて粘度 を測定したもの。 ** 胃食道逆流が見られなかった人数

(6)
(7)

図2:半固形化剤「つるりんこ 流動食用」について 神戸市立医療センター西市民病院NSTにおける半固形化栄養法(ボーラス法)のプロトコール

液体栄養剤の半固形化の例 (mPa・S)粘 度  200kcal 相当 の価格(円) 1200kcal 相当 の価格(円) 100kcal 当り の水分(ml) 1200kcal 当り の水分(ml) CZ-Hi200ml に対し、つるりんこ流動食用 6g 約 5,200 230 1,375 84 1,008 ラコール 200ml に対し、つるりんこ流動食用 6g 約 4,200 ※ 91  ※ 545   85 1,020 CZ-Hi200ml+ 水 50ml に対し、つるりんこ流動食用 8g 約 5,000 230 1,375 109 1,308 ラコール 200ml +水 50ml に対し、つるりんこ流動食用 8g 約 4,500 ※ 91  ※ 545   110 1,320 表4 :液体栄養剤の半固形化 液体栄養剤を半固形化した場合の粘度、コスト、水分などの例を示した。 資料提供:㈱クリニコ、イーエヌ大塚製薬㈱ ※ラコールの患者負担額を3割として計算 2009年7月現在

(8)

半固形栄養剤 メーカー 1本当たりの容量 ・エネルギー (mPa・S)粘 度  1200kcal 相当 の価格(円) 1200kcal 当りの水分(ml)りの食物繊維 (g)1200kcal 当た 食物繊維 %(kcal 比)栄養組成 テルミール PG ソフト EJ テルモ 200g,300kcal 20,000 1,260 528 4.5 ペクチン(安定剤)寒天 C: 64 P: 16 F: 20  267g,400kcal 1,260 カームソリッド 300 ニュートリー 400ml,300kcal 10,000 オープン価格 1,396 15 ゲル化剤(増粘多糖類) グァーガム分解物 安定剤(加工でん粉) C: 65 P: 15 F: 20 カームソリッド 400 400ml,400kcal オープン価格 999 ハイネゼリー 大塚製薬工場 300g,300kcal 6,000 1,260 912 12 グァーガム分解物 ゲル化剤(寒天) C: 60 P: 20 F: 20 リカバリー・ ニュートリート 三和化学研究所 200g,300kcal 5,000 1,260 504 18 難消化性デキストリン 寒天 C: 58.3 P: 20 F: 21.6 267g,400kcal 1,197 マステル 5000 クリニコ 150g,300kcal 5,000 1,260 312 24 難消化性デキストリン セルロース C: 約 55 P: 20 F: 25.2 200g,400kcal 1,200 アキュア VF-5 旭化成ファーマ 200g,300kcal 5,000 オープン価格 494.6 27.6 難消化性デキストリン 結晶セルロース 寒天 C: 57 P: 20 F: 23 F2ショット EJ テルモ 200g,200kcal 4,000 1,512 924 18 食物繊維(大豆ふすま) タピオカデキストリン C: 約 64 P: 16 F: 19.8 300g,300kcal 1,260 メディエフ・ プッシュケア 味の素ファルマ 150g,300kcal 2,000 オープン価格 325 14.4 ガラクトマンナン C: 56 P: 18.8 F: 25.2 200g,400kcal オープン価格 アキュア VF-1 旭化成ファーマ 200g,300kcal 1,000 オープン価格 494.6 27.6 難消化性デキストリン結晶セルロース C: 57 P: 20 F: 23 表2:半固形栄養剤比較 市販の半固形栄養剤の粘度、水分量、コスト、食物繊維の種類や量、栄養組成等をまとめた。 ※価格は購入店により異なることがある 2009年7月現在 C:炭水化物、P:蛋白質、F:脂質 表3:半固形化剤比較 市販の半固形化剤の粘度、コスト、表現、調整方法、食物繊維量等をまとめた。 ※価格は購入店により異なることがある 2009年7月現在 商品名 メーカー 市販 価格 (税込) 形 態 栄養剤200ml に対する 使用量 1200kcal 分の 半固形化剤のコスト (200ml に対する 使用量×市販価格) 粘度(mPa・s) 表 現 調整方法 所要時間 食物繊維 原材料 ソフティア ENS ニュー トリー 63円 粉末 1包=7g 0.8包 302.4円 8,000± 2,000 プリン状 ソフティア ENS を 75ml の湯に溶かし た後、室温の栄養剤 250ml と混合 常温 20分 (冷蔵すると 早く固形化) 100g あたり 27g デキストリン 寒天 増粘多糖類 イージーゲル 大塚製薬 79円(1液、 液体 2液) 1液+ 2液= 54g 1包 474円 約 5,000 約 26,000 ヨーグルト状 プリン状 室温の栄養 剤に 1液→ 2 液の順に混合 常温 20分 (1時間冷蔵で さらに固形化) 1個(54g) あたり 2.6g デキストリン ペクチンクエン酸 Na メタリン酸 Na p H 調整剤 乳酸 Ca リフラノン ヘルシー フード 49円 液体 1包=25g 1.3包 (CZ-Hi の場合) 382.2円 588円 平均 3,570 (1,750 ~ 5,800) 平均 15,600 (8,900 ~ 35,000) ヨーグルト状 プリン状 室温の栄養 剤に混合する のみ 常温 5分 100g あたり 1g デキストリン 増粘多糖類 つるりんこ 流動用(分包) クリニ コ 24.15 円 粉末 1包= 3g 5 ~ 6g 4g 7g (CZ-Hi の 場合) 99.54円 124.4~ 149.3円 174.1円 (袋使用の 場合) 2,000 ~ 2,500 3,000 ~ 5,000 6,000 ~ 6,500 ポタージュ スープ状 ヨーグルト状 マヨネーズ状 室温の 栄養剤に 混合する のみ 常温 5分 100gあたり 12.9g デキストリン キサンタンガム カラギーナン クエン酸三 Na つるりんこ 流動用(袋) 3,318円 1袋 = 800 g ファセット パウダー (分包) フード ケア オー プン 価格 粉末 1包= 3g 2 ~ 3g 3 ~ 4g オープン 価格 約 5,000約 500 ポタージュ状ヨーグルト状 室温の 栄養剤に 混合する のみ 常温 5 ~ 10分 100g あたり 10.8g デキストリン 増粘多糖類 pH調整剤 ファセット パウダー(袋) 1袋= 500 g トロメイク SP (分包) 明治 乳業 29.5 円 粉末 1包= 2.5g 3 ~ 4g 2g 5g (お茶 200ml の場合) 56.7円 85 ~113.4円 141.75円 (お茶 1200ml、 袋使用の場合) 粘度非公開 ポタージュ状 シロップ状 ジャム状 冷温に 関係なく、 混合する のみ 2 ~ 3分 100gあたり 32g デキストリン 増粘多糖類 塩化カリウム トロメイク SP (袋) 3,780円 1袋= 800 g REF-P1 ジャネフ 199.5 液体 1袋=90g 400ml 300ml 200ml (REF-P1、1袋あた りの栄養剤の量) 598.5円 798円 1,197円 約1,000(栄養剤 400ml) 約1,500強 ( 栄養剤 300ml) 約 2,500強(栄養剤 200ml) (K-4S 使用の場合) ― 1袋摂取後→ カルシウム含有 量の多い液状食 品を摂取 ― 1袋(90g)あたり 1.4g ゲル化剤 (ペクチン) pH 調整剤

(9)

較研究が望まれる。半固形化剤と液体栄養剤の組み合わ せにより、粘度と硬さに相関関係が見られない場合も報 告されている点は認識する必要がある26)  追加水分に関して言及している報告も少なく、半固形栄 養剤投与直後の少量投与や空腹時の低速投与が行われ ていると推測される。追加水分の性質やタイミング等を明 記することで、半固形化法の実践に役立つと考えられる。  半固形化法は比較的歴史が浅く、論文総数が少ない。 現在発表されている論文の大半は、症例報告やエキス パートオピニオンであり、効果について結論付けるには不 十分である。今後は、半固形化法に関するエビデンスやコ ンセンサスのミーティング等が積極的に行われていくと思 われるが、その基盤になる臨床家による研究発表は不可 欠である。医師、管理栄養士、看護師などによる臨床研究 が増え、エビデンスが明らかになりコンセンサスが確立す れば、日本国外でも半固形化法が普及し、より多くの患者 ケアの改善につながる可能性があると考えられる。

実践例の紹介

 筆者(S.I.)は、日常業務で半固形化法を実践する上で、 より効果的な栄養療法を行うには、症状に対する粘度レベ ルのガイドラインが必要だと感じている。適切な粘度のコ ンセンサスが存在しなければ、担当スタッフの変更や転院 の都度、各症例に適した投与方法を試行錯誤することにな りかねず、誤嚥性肺炎等のリスクを高める可能性がある。  S.I.の勤務する施設では、在庫管理上、粘度の異なる 半固形栄養剤を複数採用することが難しいため、最も粘 度の高い製品を採用している。また、導入例(図1)を作成 し、手技の統一を図っている。半固形栄養剤は水分含有 量が少ないため、栄養剤投与の30分前に追加水分を投 与することにしている。現時点では、水分投与と逆流予防 を重視した報告は見受けられず、水分投与方法のコンセン サスはないが、S.I.は、コスト、作業効率、投薬とのタイミ ング、胃排出の機能などを総合的に検討し、栄養剤投与 前の水分投与を実施している。食前の水分投与は、リハビ リや検査等に左右されることなく確実な投与が行いやす く、外出、入浴後など、状況に合わせた更なる水分投与も 行いやすいと考える。今後、水分投与と併せて投薬を行っ た後、栄養剤を注入するという一連の作業がスムーズに行 えるよう、食前投与禁忌薬一覧表の作成を検討中である。  在宅療養に移行する際には、コストや介護能力等の問 題で栄養剤を変更する場合がある。適切な栄養剤や半固 形化剤を選択するためには、粘度や食物繊維の原料等に 関する詳細な情報が必要になる。  一般的な半固形栄養剤、及び半固形化剤を表2、表3 で比較した。表2の半固形栄養剤では、同カロリー当た りの価格には大きな差がなく、粘度、水分量、食物繊維 の種類や量、栄養組成などに差がみられる。各症例に適 する半固形栄養剤を選択できる幅が出てきたようであ る。表3の半固形化剤では、粘度や食物繊維、同カロリー 当たりのコスト、調整方法などに大きな差が見られる。製 品の選択は、液体栄養剤との相性も考慮し、総合的に検 討する必要がある。粘度と、粘度の表現(ヨーグルト状、プ リン状など)は、メーカーにより異なっているようだ(表3)。  栄養剤の形状の表現の仕方、捉え方には個人差がある と考えられ、適切な粘度調整には、液体栄養剤と半固形 化剤の正確な分量を指示する必要がある。液体栄養剤の 半固形化による粘度やコストの例は表4に示した。 S.I.の勤務する施設では、半固形化剤使用方法のマニュ アルを作成し、粘度の再現性を保っている(図2)。  

まとめ

 日本で普及している半固形化栄養法は、現時点ではエ ビデンスが不十分であるが、胃食道逆流症・誤嚥性肺炎・ 下痢を改善する可能性があり、リハビリ時間の確保・介 護負担軽減・褥瘡予防など、患者ケアに有用である可能 性が大変高い。  今後、半固形化栄養法のエビデンスや投与法のコンセ ンサス確立には、粘度以外の要因や、水分量と投与タイミ ングなどを含めた検討が必要であり、臨床家による活発 な研究発表が強く望まれる。

謝辞

 本論文作成に当たりご指導を頂きました、武庫川女子大 学教授雨海照祥先生、ピッツバーグ大学メディカルセンター 外科准教授、及び、同胃腸リハビリ・移植センター栄養部 ディレクター Laura E. Matarese先生に深謝致します。

(10)

参考文献 1) 高齢者の栄養補給に使用可能な流動性食品テルモ、高カロリー栄養食品「テルミールPGソフト」を販売開始. Terumo テルモプレスリリース.2005. http://www.terumo.co.jp/press/2005/032.html. 2009年2月2日. 2) 濃厚流動食品 「ハイネゼリー」6月18日 新発売. 大塚製薬 ニュースリリース. http://www.otsuka.co.jp/company/ release/2007/0611_01.html. 2009年2月10日. 3) 蟹江治郎. PEGの基本と栄養管理.ケアトモ.http://www.caretomo.com/peg02. 2009年4月2日. 4) 蟹江治郎. 経管栄養(おもにPEG)による下痢. 消化器外科NURSING11(8):791-798、2006. 5) 蟹江治郎、鈴木裕介. PEGの今とこれから. 消化器内視鏡 20(1):65-70、2008. 6) 合田文則. 胃瘻からの半固形化栄養材をめぐる問題点とその解決法. 静脈経腸栄養23(2):37-43、2008. 7) 伊藤由紀、今高多佳子、小林一信ほか.とろみ剤を用いた半固形経腸栄養剤と寒天を用いた固形経腸栄養剤の物性比較. 静 脈経腸栄養21(3):77-83、2006.

8) Gottschlich MM. Basic of nutrition and metabolism. American Society of Parenteral and Enteral Nutrition. The ASPEN Nutrition Support Core Curriculum. 5-8, 2007.

9) Shils ME, Shike M, Ross, AC, Caballero B, Cousins RJ. Modern Nutrition in Health and Disease. 10th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins: 1180-1181, 1544, 2006.

10) Wang GJ, Tomasi D, Backus W, Wang R, Telang F, Geliebter A, Korner J, Bauman A, Fowler JS, Thanos PK, Volkow ND. Gastric distention activates satiety circuitry in the human brain. Neuroimage 39(4):1824-31, 2008.

11) Marciani L,Gowland AP,Spiller CR,Manoj P,Moore JR,Young P,Fillery-travis3 JA. Effect of meal viscosity and nutrients on satiety,intragastric dilution, and emptying assessed by MRI. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 280:1227-1233, 2001.

12) Kong F, Singh RP. Disintegration of solid foods in human stomach.Related Articles J Food Sci 73(5):67-80,2008.

13) 合田文則. 胃瘻からの半固形短時間摂取法ガイドブック. Ⅲ胃瘻からの半固形短時間注入法の手技とそのエビデンス. 医 歯薬出版、東京、2006、p19-26.

14) Tack J, Piessevaux H, Coulie B, Caenepeel P, and Jans-sens J. Role of impaired gastric accommodation to a meal in functional dyspepsia. Gastroenterology 115:1346-1352, 1998.

15) Simonian HP, Maurer AH, Knight LC, Kantor S, Kontos D, Megalooikonomou V, Fisher RS, Parkman HP. Simultaneous assessment of gastric accommodation and emptying: studies with liquid and solid meals. J Nucl Med 45(7):1155-60, 2004.

16) Shimoyama Y, Kusano M, Kawamura O, Zai H, Kuribayashi S, Higuchi T, Nagoshi A, Maeda M, Mori M. High-viscosity liquid meal accelerates gastric emptying. Neurogastroenterol Motil 19(11):879-86, 2007. 17) 稲田晴生、金田一彦、山形徳光.胃食道逆流による誤嚥性肺炎に対する粘度調整食品REF-P1の予防効果.静脈経腸栄養

20(10):1031-1036、1998.

18) 田部井功、久保宏隆、矢野文章ほか. 粘度調整ゲル化剤を用いた経腸栄養剤投与法の胃食道逆流に対する予防効果と臨床 使用経験.日消外会誌36(2):71-77、2003.

19) Kanie J et al. Prevention of gastro-esophageal reflux by an application of half-solid nutrients in patients with percutaneous endoscopic gastrostomy feeding. Journal of the American Geriatrics Society 52(3):466-467, 2004. 20) 田代勝文、東口高志、武田悠子ほか. 固形化栄養剤の消化管内形状変化と移行に関する研究ーラットを用いた基礎的検 討ー . 静脈経腸栄養21(2):115-125、2006. 21) 宮本英典. 半固形化栄養法を用いた超高齢経腸栄養患者の栄養状態改善に向けての取り組み. 静脈経腸栄養24(3):65-67、2009. 22) 蟹江治郎、各務千鶴子、山本孝之ほか. 固形化経腸栄養剤の投与により胃瘻栄養の慢性期合併症を改善し得た1例.日本 老年医学会雑誌39(4):448-451、2002. 23) 金岡俊治、小松健次、溝渕健介ほか. 粘度調整食品を用いた経腸栄養の胃食道逆流に伴う誤嚥性肺炎の予防と患者のQOL に対する長期的影響. 静脈経腸栄養20(1):65-69、2005. 24) 村林由紀、清水敦哉、佐久間隆幸ほか.市販の経腸栄養剤への粘度調整の試み.静脈経腸栄養21(1):85-89、2006. 25) 寒天の粘度. 伊那食品工業 かんてんぱぱ. http://www.kantenpp.co.jp/kanten/science/0210.html. 2009年7月23日 26) 岡田晋吾. ゼリー用食品“イージーゲル”を用いた各種経腸栄養剤・流動食の固形化特性. 静脈経腸栄養22(1):41-51、 2007.

参照

関連したドキュメント

1.4.2 流れの条件を変えるもの

直腸,結腸癌あるいは乳癌などに比し難治で手術治癒

突然そのようなところに現れたことに驚いたので す。しかも、密教儀礼であればマンダラ制作儀礼

攻撃者は安定して攻撃を成功させるためにメモリ空間 の固定領域に配置された ROPgadget コードを用いようとす る.2.4 節で示した ASLR が機能している場合は困難とな

前章 / 節からの流れで、計算可能な関数のもつ性質を抽象的に捉えることから始めよう。話を 単純にするために、以下では次のような型のプログラム を考える。 は部分関数 (

が作成したものである。ICDが病気や外傷を詳しく分類するものであるのに対し、ICFはそうした病 気等 の 状 態 に あ る人 の精 神機 能や 運動 機能 、歩 行や 家事 等の

Google マップ上で誰もがその情報を閲覧することが可能となる。Google マイマップは、Google マップの情報を基に作成されるため、Google

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ