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教員の一日行動からみる中学校職員室に関する建築計画的考察 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)教員の一日行動からみる中学校職員室に関する建築計画的考察 !. 藤原 直子 わが国の中学校では教科担任制をとりながらも、併せて学. 1.研究の背景と目的 2002 年 4 月、 さまざまな論議や批判を先送りする形で、 「教. 級担任制をとっている。そのため、小学校ではほとんど終日、. 育改革」はスタートした。教育が議論になって以降、生徒に. 学級教室において教科指導と生活指導を実施できるのに比. 視点を当てた研究は増加したが、もう一方の教育の担い手で. べて、中学校教員は担任クラスの授業は平均週3時間程度で. ある教員の視点はあまり取り上げられていない。学制の発布. あるため、クラスの生徒の把握には、他教科の教員からの情. 後、教員席(教員控所、教員詰所)は「教員教授ノ暇休息又ハ. 報は必須である。すなわち、生活指導は他の教員からの情報. 喫飯ノ席トス」(1)とある通り、職員室は本来、休息の場であ. などをもとに、始業前や放課後、休み時間を使って実施せざ. った。それが、学校規模の拡大とともに変容し、現在は、執. るを得ない。また、朝の会や帰りの会はクラス全体の指導に. 務や生活に関するさまざまな行為が営まれている。欧米の学. あてられることが多い。さらに、昼休みは、生徒会など定例. 校では、教師の主要な仕事を「教科指導」に限定しているの. の活動がはいることも多く、緊急を要する指導や個人的な指. に対して、わが国では人間としての全面的な成長を重視する. 導が、10 分休み時間に実施されることは日常的である(図2)。. ために、長年、 「生活指導」と「教科指導」を車の両輪のご [生徒の活動] [担任教員の活動]. とく基軸としてきた。近年は、教師が協働して指導に当る「生 徒指導」が、欧米でも注目されはじめている。本報では、教. 授業 (担任教員). 員の行動調査から中学校職員室について考察したい。 2.中学校教員の執務と生活. 教 科 指 導. が取りざたされるが、一般には、教員の日常生活に対する認 識はきわめて低いと推察される。本研究では、教員の執務を. [担任教員の活動]. 授業 情報伝達. (他の教員). 生 活 指 導. 朝の会 休み時間  5分休み  中休み  昼休み 帰りの会 放課後. 教育の見直しが問われる時、必ず教師の重要性や資質向上. [生徒の活動]. 授業 (担任の教員). 朝の会 休み時間 ※10分休み  昼休み 帰りの会 放課後. 教 科 指 導. 生 活 指 導. 図2 教科指導と生活指導. (ⅰ)生徒との関係、 (ⅱ)時間の制約という2つの軸で類型. 3.調査対象と調査概要. した(図1)。教員の週当たりの持ち時間数は、平均約 20 時間. 集中職員室で特別教室型のN中学校、T中学校と教科セン. で、一日の空き時間は平均約 1.5 時間となり、空き時間がな. ター方式で教科教室型の J 中学校において、下記の調査を実. い教員も珍しくない。つまり、中学校の教員は、50 分で授業. 施した。また、教科教室型で集中職員室を採用しているTm. を完結し、10 分間の休み時間に移動、連絡や打ち合わせ、印. 中学校と集中職員室・教科センター併用型のM中学校におい. 刷などの教材準備、生徒の指導、トイレ、喫茶、喫煙などを. て、補足的なヒアリング調査を実施した。なお、本研究にお. すまさなければならず、時間に対する制約・拘束感は大きい。. ける職員室とは、集中職員室、教務センター、教科センター、. 執務A. 生徒の教育・指導にかかわる行為で、時間の制約が非常に強い行為. 学年職員室などの教員の執務空間を総称することにする。.  (授業、テスト、朝の会、帰りの会など). 執務B. 生徒の指導にかかわる行為であるが、時間の制約はAほど強くない行為. 表1 学校概要.  (生徒会活動、個人指導、部活の指導など). 執務C. 特別教室型 N中学校 T中学校 2棟:並列型 (4F:片廊下) 1棟:L字型 (4F:片廊下) 集中職員室 (北棟1F) 集中職員室 (1F). 複数の教員同士の教育的行為で、時間の制約はかなり強い行為  (職員朝礼、会議、研修会など). 執務D. 教員と保護者にかかわる行為で、時間の制約は強い行為  (保護者会、個人面談、PTA役員会など). 執務E. 教員の個人の裁量で活動できる行為. (学年職員室:南棟3F).  (教材研究、試験問題作成、帳簿類の記載など). 執務 C   執務 E  . 17クラス+ 特殊学級1 教員数 33 (男19 女14). 19クラス+ 特殊学級1 教員数 36 (男21 女15). 17クラス+ 特殊学級1 教員数 33 (男17 女16). *校長・教頭・養護を含む. *校長・教頭・養護を含む. *校長・教頭・養護を含む. 表2 調査概要. 執務 E  . N中学校. 教科指導 執務 A. 執務 B. 生徒の指導. T中学校. J中学校. ①教員の行動記録調査                                                                  ①教員の行動記録調査 ①教員の行動記録調査 [各学年担任男女各1名+校長・教頭 [各学年担任男女各1名計6名] [各学年担任各1名+副任1名計4名]  各1名計8名](2000/12∼2001/02)  (2001/07∼2001/09)  (2001/10) ②関係諸室の使われ方調査 ②関係諸室の使われ方調査 ②関係諸室の使われ方調査  (2001/06/28、2001/12/05)  (2001/07/04)  (2001/10/09) ③アンケート調査 ③アンケート調査 ③アンケート調査 (回答数33[男19女14]:2001/02∼03) (回答数27[男15女12]:2001/07∼10) (回答数24[男12女12]:2001/10∼11) ④インタビュー調査 (調査数20[男12女8]:2001/11/28) ①教員の行動記録調査                                                                    出勤から退勤までの教員の一日行動を追尾して観察記述し、時間・場所・行為で記録し、併せて、写真記録も行った。 ②関係諸室の使われ方調査   執務行為の場である事務室・印刷室・職員室・教務センター、生活行為の場である更衣室・喫煙室・トイレ・   ラウンジ・湯沸し室などの使われ方を観察し、時間・場所で記録した。 ③アンケート調査   下記7項目に関して、記述式の留め置き調査とした。(ⅰ)職員室(ⅱ)印刷室(ⅲ)更衣室   (ⅳ)トイレ(ⅴ)駐車場(ⅵ)学校を生活する場と考えた時の一番強い希望(ⅶ)その他 ④インタビュー調査   下記5項目に関して、1∼数名単位の聞き取り調査をし、メモとテープで記録した。なお、調査対象者には質問項目を   示さず、自由に発言できるよう留意した。  (ⅰ)職員室(ⅱ)校長室・事務室・印刷室・更衣室・トイレ(ⅲ)学年職員室(ⅳ)他校例(ⅴ)学校内で一番落ち着く場. 校務分掌. 執務 B. 教科教室型 J中学校 1棟:ロの字型 (3F) 教務センター (2F) 教科センター (2F). 執務 D  . 生活行為 執務 E  . 図1 教員の執務の類型化. −.

(2) 表3 調査対象教員 特別教室型 N中学校 教員ID 性別 年齢 教科 学年. ①. ②. ③. ④. ⑤. ⑥. ⑦. ⑧. ⑨. ⑩. ⑪. ⑫. ⑬. ⑭. ⑮. 男 44 社 1. 女 34 美 1. 男 29 数 2. 女 47 国 2. 男 37 数 3. 女 37 国 3. 男 37 国 1. 女 50 音 1. 男 42 音 2. 女 30 数 2. 男 44 英 3. 女 49 体 3. 女 32 英 1. 男 41 数 2. 男 40 国 3. 分. 一 900 日 800 の 700 滞 600 在 500 時 400 間 300 ︵ 200 分 100 ︶ 0. 一 6000 日 の 5000 移 4000 動 3000 距 離 2000 ︵ 1000 m 0 ︶. N中. T中. 2,700m の距離を移動している(図4)。これらA・B・C・Dの執 執務の時間を差し引いた滞在時間が移動可能な時間となる。 この移動距離の個人差は大きく、執務Eの中で空間の移動を. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ N中. T中. J中. 特別教室型. 教科教室型. 必要とする事務室・印刷室の入室数(図5)や、生活行為の頻. 教科教室型. 執務(A・B・C・D)を除く滞在時間. 回 一 日 50 の 40 生 活 30 行 為 20 数 ︵ 10 回 0 ︶. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ N中. T中. さらにプランなどの学校差もあると考えられる。 この移動距離を、一日の滞在時間(図7)、一日の執務A・B・ N中 更衣室. 印刷室. 図5 事務室・印刷室の入室数. C・D以外の時間(図8)、一日の授業時間数(図9)、一日の職員. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮. J中. T中. 教科教室型. 事務室. 度(図6)による個人差、行事の有無などの調査日による差、. 図4 一日の移動距離. 図3 一日の執務時間と校内滞在時間 回. 特別教室型. トイレ. 特別教室型. 喫茶. 喫煙. J中. 室の滞在時間(図 10)から比較した。J中学校の、図中、○で. 教科教室型. ラウンジ. 湯沸し室. 図6 生活行為数 喫茶は行為数、他は入室数. m. 示す⑬の教員、△で示す⑭の教員、□で示す⑮の教員を比較. m. 6000. 6000. 一 日 5000 の 移 4000 動 3000 距 離 2000 ︵ m 1000 ︶. すると、⑭、⑮はいずれの関係においても大きい値を示して. 一 日 5000 の 移 4000 動 3000 距 離 2000 ︵ m 1000 ︶. 0 0. 200. 400. 600. 800. いる。ここで、執務Aの典型である授業数の増加は移動距離 の増大につながり(図9)、また、職員室の滞在時間の増加は. 0. 1000. 0. 校内滞在時間(分). 100. 200. 300. 400. 500. 通常、机での執務の増加につながり、移動距離は小さくなる. 執務(A・B・C・D)を除いた滞在時間(分). 図7 校内滞在時間と移動距離 6000. 分を、図 1 に示す執務A・B・C・Dにあて(図3)、平均約 務は通常、1 つの空間でなされるため移動はなく、それらの. J中. 特別教室型. 執務(A+B+C+D)時間. 教員は一日平均 643 分を学校で過ごし、そのうち平均 342. m. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮. 一 日 の 16 事 務 14 室 12 ・ 10 印 刷 8 室 6 の 4 入 室 2 数 0 ︵ 回 ︶. 4.調査結果. 教科教室型 J中学校. T中学校. 図8 執務 ・ ・ ・ 以外の時間と移動距離. m. 6000. と考えられる。しかしながら、⑭、⑮の教員が示す大きな移. m. 一 日 5000 の 移 4000 動 3000 距 離 2000 ︵ m 1000 ︶. 一 日5000 の 移4000 動 3000 距 離2000 ︵ m1000 ︶. 0. 動距離は、いずれも生徒問題が発生したことに起因する、連 絡や打ち合わせのための移動であると考えられ、執務場所が. 0 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 執 生 0 務 活. (時). 7. 0. 100. 200. 調査日の授業時間数(時間). 300. 400. 500. 職員室の滞在時間. 図9 一日の授業数と移動距離. 7. 図10 職員室滞在時間と移動距離. (注)図7∼図10において、○は⑬の教員を、△は⑭の教員を、□は⑮の教員を示す 8 朝会. 自 習 5分休み. 9. 1 限 授 業. 10分休み. 10. 2 限 授 業. 10分休み. 11. 3 限 授 業. 10分休み. 図11 J中学校の平面プラン(2F) 12. ⑨. 教員の行動記録 T中-2年担任 男(42歳)音楽 . 01/07/06(金)授業(3)空き時間(1) 生徒総会 地域懇談会 <校務分掌>○生徒指導部:主任(生徒指導主任) ○音楽科主任 ○運営委員会 <生徒会>○安全風紀委員会 <部活>○器楽隊部 【持ち時間】19(含会議) 教室. 職員室 周辺. 8:08− 8:30− 8:56−. (HR). ←朝の会. 13. ←挨拶指導    (校門). 11:01−. (第1音学室). ←3限授業 (第1音学室). ←更・タ ←茶 ←4限授業. 11:42−. (第1音学室). 13:11− 13:34−. ←更 (2) ・タ (2). 15:29−. ←更・タ. ←更・タ. 15:55− ←授業準備 ←ト 16:15− 16:50− 17:25−. ←更・タ ←茶 ←更・タ. (分). 35 194 80. 194 11 173. ←T ←帰りの会. N中 計. ←地域懇談会   準備    (校長室). T中. ←生徒指導 (校長室で  保護者同席). 計  地域懇談会→ (地域複合施設). J中 計. 凡例 周辺-職員室周辺 更-更衣室     印-印刷 T-電話    タ-喫煙 茶-喫茶 ト-トイレ. 執務 事務作業. ←生徒指導(第1美術室). ←ト ←更・タ. ←更・タ (2). (分). 昼休み. 14. 表5 10 分休み時間の行動(①∼⑮)  行為. ←更・タ 〕←給食指導. ←生徒総会   (体育館). 14:36− 15:00−. 教科センター 内滞在時間. 5 限 授 業. 10分休み. ←T ←更・タ ←T ←茶. 12:30−. 教務センター 内滞在時間. ⑬ ⑭ ⑮. ←1限授業. 9:45− ←更・タ ←茶 9:59− ←更・タ (2) ←パソコン ←ト ←印 10:36− ←更・タ ←茶. 給 食. 表4 J中教員の職員室滞在時間. 教室 その他 校外. (他). ←茶 ←更・タ ←更・タ. 4 限 授 業. 授業 生徒指導 その他. (準備など). (TELなど). ◇◇◇ ◆◆◆ ◆ ◇ ◇◇◇ ◇◇. 4. 8. ◇◇. 1. 打ち合せ 情報交換. ◆◆ ◇◇. 2. 4 19. ◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◇◇ ◇◇◇ ◆◆◆ ◆◆ ◆ ◆◆◆ ◇◇◇ ◇◇ ◆◆ ◇. 5. 11. 15. 会話. 9. 6. 2 33. ◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆ ◇◇◇ ◆ ◇◇ ◆◆ ◇◇◇ ◇◇ ◇. 会話 ( 教員と). ◇◇. 生活. 会話 (生徒と). 喫茶. 喫煙. ◆ ◆ ◇◇◇ ◇◇. 2. 4 6. ◆◆◆ ◆◆ ◆◆◆ ◇◇◇ ◇◇. 11. 2 13. トイレ. ◆ ◇. 3. 2. 5分休み. 帰 会. 1. 6. ◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆ ◇◇. 16. 0 6 ◆◆◆ ◇. 1 ◆◆ ◇◇. 17. 4 19 ◆◆◆ ◇◇. 7. 6. 5. 6. 1 25. 4. 7 11. 4. 0. 4. 6 14. 16. 25. 15. 14. 7 77. 17. 13 30. 15. 8. 6. 10 39 146. 計. 清 掃. (手洗・休憩). ◆. ◆◆◆ ◆◆◆ ◇ ◆ ◆ ◇◇◇ ◇◇ ◇. 8. その他. 6 限 授 業. 18. 0 0 0 0 0 0 5 1 1 1 3 3 2 2 3 2 0 1 1 1 4 1 0 0 1 2 0 0 4 0 0 4 2 0 0 1 2 6 3 2 0 1 3 0 2 0 2 0 0 1 2 0 1 3 3 3 3 3 4 1 0 1 0 1 1 3 3 1 2 2 1 1 0 2 0 2 4 3 3 1 0 1 3 0 2 2 0 1 6 3 2 1 1 1 0 0 3 2 1 0 1 0 4 0 0 0 0 1 0 2 1 3 2 1 2 1 1 0 1 6 2 2 1 0 1 2 0 4 3 4 0 4. 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 4 7 2 0 8 2 0 2 5 9 3 2 4 7 1 5 3 1 0 3 13 5 1 4 1 0 2 2 3 3 2 2 8 3 4 0 4 1 2 3 2 0 0 3 16 0 1 3 3 1 2 0 0 2 3 1 9 8 16 7 8 3 11 7 5 8 5 1 1 0 0 1 1 1 2 0 0 6 8 2 1 0 0 1 1 0 0 1 1 4 5 0 2 4 2 2 0 3 3 2 8 4 3 0 3 3 3 0 5 5 2 1 0 2 3 0 4 2 1 4 1. 5. 10. 15   (人). に分離している影響が大きい と考えられる。一方、調査日 始業. 凡例 ◆−授業と授業の間の. 分休み時間 ◇―その他の. に生徒問題が発生しなかった J中学校⑬の教員の移動距離 ◆a. 校の⑨の教員の一日行動記録. ◆b. を示した。生徒問題が生じ、 生活行為が多いが、同じく生. ◆c. 徒問題が発生し、生活行為も 多い⑭の教員と比較しても、 移動距離は小さい。ここで、 ◆は授業と授業に挟まれた10 分休み時間を、◇はその他の. ◆d. 10 分休み時間を表している。 さらに、①∼⑮の教員の 10 分 放課. 計 199 367 計 566(人). 生活関係諸室 (更衣室・ラウンジ・湯沸し室・トイレ) の入室延べ人数. 図13 関係諸室の使われ方−J 中. −. 休み時間の行為を、執務・会 話・生活に大別し、表5のよ. 終業. 執務関係諸室 (事務室・印刷室) の入室述べ人数. 分休み時間. は、いずれも大きな値を示し ていない。図 12 には、T中学. *7:00から18:00の観察数を5分ごとに集計した. 図12 一日行動記録−T中⑨. 教科センターと教務センター. うに細分類した。調査した① ∼⑮の教員の 10 分休み時間 中の移動距離の平均は、◆で 約 201m、◇では約 111m であ った。つぎに、J中学校にお.

(3) ける職員関係諸室の使われ方を示した(図 13)。昼休み以外. らを 10 分休み時間中に処理せねばならぬ状況は多い。⑨の. では、10 分休み時間に執務関係諸室、生活関係諸室の使用が. ◇b(図 12)がその例である。クラスの生徒が2限目に怪我を. 集中している。その集中度を一日の平均と比較すると、N中. し、その処理に 26 分(2限目の空き時間中に報告を受けてから33 分). 学校で約 2.3 倍、 T中学校では約 2.1 倍、 J中学校では約 2.3. を要した。さらに、帰りの会の直前に、生徒が教室の窓ガラ. 倍であり、10 分休み時間に集中していることが確認できた。. スを破損し、帰りの会終了後に廊下で生徒の指導を行った。. 5.考察. 続 ●執務の分割的継続. 10 分休み時間の行動をもとに、教員の行動を考察する。. これは、不連続複線型の一部とも考えられるが、<5>の. (1)個人の行動特性. 中の執務E-a(図 14)にみられるように、長い時間が必要. ①多様性. な執務を細切れに継続的に行うという特徴をもつ。N中学校. 教員はこの短い休み時間中に、さまざまな行為をする。1. の①、T中学校の⑫の教員は、空き時間も 10 分休み時間も. 回の 10 分休み時間に、平均して 1.6 回の執務行為と、0.6. 通知表の作成を継続していた。まとまった執務時間がとりに. 回の会話をし、0.8 回の生活行為を行う。合計すると平均約. くい教員にとっては、ごく一般的に見られる行動である。. 3回の行為をするが、5回以上の事例が9例あり、最高は 10. これらの行動特性はインタビュー調査にも表われた。N中. 回であった。表3から、◇の休み時間に事務作業が多く、◆. 学校での調査では、執務や時間に関する直接的な質問項目は. の休み時間には、授業に関する行為が多いのは当然であるが、. なかったにもかかわらず、 10 分休み時間に関するコメントが. 生徒指導も多い。このような短い時間中に、生徒指導がなさ. 目立った(8/20 名)。これは、10 分休み時間が、教員の[行動. れるのは、時機を得た指導が必要なことを示していると考え. を規定する尺度]であることの表われとみなすことができる。. られる。その他には、執務の種類・数ともに、◆と◇の差は. ■事例【女性 40 歳 理科 1 年担任 勤務年数 18 年 N中学校 5年】. 明確ではない。行動の個人差なども無視はできないが、[授. (ⅲ)学年職員室(職員控え室)に関して  いや、行ったことがないんですよ。5年もいるのに。不便だろうな と思います。私とか、とくに不便と思います。2つあるってことは、 仕事のメインをどっちかに置くでしょうね。だから、空き時間ぬって 仕事してるから、あの、できなくなる。ほんとに10分休み、昼休み、 全部何かしてますもんね。だから、そのとき、できることやってるか ら、そこの道具がないとできない。. 業(45 分・50 分)−休み時間(10 分)]が、教員の行動のリズム や単位となっていることを示していると考えられる。 ②複線性(同時進行性) 教員は、多種多様な行為を状況に応じて瞬時にそれらの優. N中学校は2棟に分かれていて、1つの学年が南棟にまと. 先順位を決定しながら行動している(2)。さらには、それらを. まっており、3F に教室を転用した学年職員室がある。その. 複線的に、同時進行的に行うという行動特性を持つ。この行. 学年の教員は職員室と学年職員室に、それぞれ個人用の執務. 為の複線性を、執務行為を中心に5種類に分類した(図 14)。. 机を持つ。事例は執務の多様性を述べ、さらに学年職員室が. <1>から<4>までは連続複線型と考えられるもので、. 執務の複線性を妨げるという立場から、その問題性を指摘し. <5>は不連続複線型である。<5>には、<1>∼<4>. ている。つまり、職員室の分離・分割は、教員の複線的な行. との併合・複合型も考えられる。連続型は短い時間帯の中で、. 為を妨げ、大きな移動を強いる結果になると考えられる。さ. 一日などの長いスパンでは不連続型が見られることが多い. らに、教員間のまとまりを危惧する回答も多かった。. が、10 分休み時間には、すべての型が確認できた。. (2)教師集団としての行動特性−「協働性」 ・ 「同僚性」. <1>1−E型(連続複線型). 教科内容に重点を置く欧米の学校に対して、人格的な発. <例>パソコンのプリントアウトと、印刷やコピーなどを同時に行 うなど。印刷機とコピー機が別の部屋にあることは珍しくない(T 中・J中)。. 執務E 執務E <2>Ⅰ−B型(連続複線型). 達を目標とするわが国の学校では、 教科は学年の下位集団(3). <例>個人指導が必要な生徒を、職員室やその他の部屋に呼び、作 業をさせたり、指導をしながら、執務も同時に行う。⑩の教員は、 印刷しながら、生徒指導を行っていた。. 執務E 執務B. と考えられており、教員は主として学年教師集団が単位と. <3>1−C型(連続複線型) <例>自分の机で作業をしながらも、教員同士の会話や情報交換に 耳だけで参加し、時には相づちを打ったり、コメントを挟んだりす る。職員室では一般的にみられる光景である。. 執務E 会話など. なって生徒の指導を行う。これらの特性は「協働性」. <4>1−L型(連続複線型) <例>コーヒーやお茶を飲みながら、事務作業をすることはごく一 般的であるが、N中では、職員室−印刷室−トイレと並んでおり、 トイレが棟の端で離れていたため、印刷しながらトイレに行くなど の行為も観察された。. 執務E 生活行為. (collaboration)・ (collegiality)と呼ばれている。そ 「同僚性」. <5>Ⅱ型(不連続複線型). のため、従来から、教員が学年ごとに集合した「島」型の. 執務E−a 執務E−b. <例>ごく日常的に行われている行為で、いくつかの執務や生活行 為を不連続的に複線的に行う。空き時間などはさらに分節すること もある。連続型と併合することも多い。. 執務E−c 生活行為. 配置をとってきた。そのなかでは、フォーマルな情報交換. 凡例     執務E      執務B      会話など      生活行為. や打ち合わせはもちろん、インフォーマルな会話がコミュ. 図 14 執務の複線性. ③その他の特性. ニケーションの手段として欠かすことが出来なくなる。し. 事 ●突発的出来事. かも、久富が行った調査(4)が示すように、インフォーマルな. 学校内では、突発的出来事は日常的に起こる。それは、校. 会話の多くが生徒の問題であり、この両者は区別がしにく. 内での怪我や急病など生徒に関するものがほとんどではあ. く、 “重層・混在した”状況を示しており、校長、教頭も含. るが、校外からの生徒の問題行動の連絡や不審者や動物の侵. めて、職員室全体に情報を共有する雰囲気である「情報冗. 入、火災や授業中の事故などさまざまである。しかも、それ. 長性」や「相補性」(3)が重要であると考えられている。. −.

(4) 6.教員の一日行動からみた職員室の計画. (3)教科教室型運営と集中職員室. (1)クローズな空間と出入り口 −「楽屋性」. 教科教室型学校運営でありながら、集中職員室をもつM中. 試験期間中にはほとんどの中学校では職員室を入室禁止. 学校(6クラス)とTm 中学校(16 クラス)において、職員室・. としている。成績書類などが多いことと、成績や評価に関. 教科センターの長所をたずねた質問に対する回答をみると、. する打ち合わせが頻繁に行われるからである。これはとり. M中学校では、集中職員室と教科センターを併設している. もなおさず、本来、職員室は生徒の入室を前提としていな. ため、教科センターに対しては「教員のまとまり」を危惧. い空間であることを示している。調査校においても、生徒. する回答がある反面、 “生徒入室禁止”としている集中職員. の指導は可能な限り廊下などで行われていたことにも表わ. 室に対する評価が高い。また、Tm 中学校の回答では、集中. れている。また、教員は生徒の前では、教師を“演じて”. 職員室の島型に配置した学年のまとまりを評価する回答や、. いる。学校内のほとんどの場はステージであると考えられ. 教室近くの学年フロアに対する高い評価があった。いずれ. るため、自分自身に戻る場、つまり、 “楽屋”としての機能. も、集中職員室の有用性と、学年教師集団の教科教師集団. が必要であると考えられる。すなわち、職員室は執務Eや. に対する優先性を述べていると考えられる。 表7 ヒアリング調査結果 −M中(2名以上の回答を示す). 執務Cを中心に、 公的私的な会話を交わしながら、 「協働性」. 回答(9名中:複数回答あり) 職員室に生徒が入らないのがいい  ・書類や成績などの資料が自由に出せる    . の基礎となる人間関係を深め、さらに、生活行為を行う場. (理由). でもあるため、クローズな空間が要求される。そのため、. 男 女 計 3 3 6 [2]. [2]. [4].  ・くつろぐ                            [2] [2]  ・会議や打ち合わせができる [1]  ・いろんな話が自由にできる. [1]. [3]. [0]. [2]. [0]. [1]. 2 2 0. 6 4 2. 教科センターは生徒と接しやすい(時間が長くなる:質問しやすい) 教科センターには荷物が置ける 教科教室型は、子どもが荒れたらとんでもないことになる . 各学年の生徒指導用に来訪者用を加えた、4ヶ所の出入り. 4 2 2. 7.まとめ. 口が必要であると考えられる。表6は学校を生活する場と 考えたとき、もっとも強い要望に対する回答である。喫煙. 教員の行動調査によって、執務の「多様性」や「複線性」. 室と休憩室に対する要. が 10 分休み時間に顕著に観察され、インタビュー調査にお. 望は、各校とも共通して. いても、 10 分休み時間が行動の基準であることが判明した。. 非常に強く、 “楽屋”の. また、職員関係諸室の使われ方調査においても、10 分休み. 必要性を裏づけている. 時間に執務や生活行為が集中していることが確認された。ま. と考えられる。また、表. た、アンケート調査の結果からは、職員室に「楽屋性」を求. 5のT中学校の結果に. めていることと、 教員間の「協働性」の重要性が抽出された。. みられるように、喫茶や. そして、教科センター型の教員の行動からは、職員室の分離・. 喫煙は会話や情報交換. 分割が教員の執務の「複線性」を妨げ、さらには、教員同士. を促進する。さらに、. の「協働性」を阻害していることが明らかになった。すなわ. 表6 アンケート調査結果. N 中 学 校. T 中 学 校. J 中 学 校. -N中・T中・J中-(2名以上の回答を示す) 回答(33名中:複数回答あり) 男 女 計 休憩室・リラックススペースの設置 1 4 5 喫煙室の設置、禁煙に 1 3 4 収納・ロッカーの設置 2 1 3 トイレの改善(明るく、さっぱり) 0 2 2 教科別教官室 2 0 2 時間の余裕がほしい 1 1 2 ソファがほしい 1 1 2 大きな机がほしい 1 1 2 回答(27名中:複数回答あり) 男 女 計 休憩室の設置(分煙) 6 2 8 喫煙室の設置 2 0 2 更衣室の設置 1 1 2 生活する場とは考えられない 1 1 2 回答(24名中:複数回答あり) 男 女 計 生徒と落ち着いて話す場(相談室など) 3 2 5 休憩室の設置 3 1 4 職員の会議やコミュニケーションの場 2 1 3 職員室がほしい 0 2 2 人間関係が希薄、学年集団がまとまりにくい 1 1 2 オープンすぎる 2 0 2 空調が必要 1 1 2. 印刷室は職員室に近接する必要があると考えられる。. ち、職員室の計画においては、生活指導の基盤となる学年教. (2)教科センター方式の問題点. 師集団を単位とした、クローズな空間である「集中職員室」. 建築主導で計画されることが多い教科センター方式につ. が有用であると考えられる。また、生徒指導のための出入り. いて考察する。表4に示すように、J 中学校の⑬の教員は教. 口の必要性、印刷室・事務室との関連も重要であると考えら. 科センターに、⑭の教員は教務センターに基点を置いている。. れる。. 執務エリア.  . 指導    2 年生徒. ⑬の教員は禁止されている飲食を教科センターで行い、⑭の. 印刷室. 教員は会議用テーブルを執務机として使用し、執務の基点を. 会議 コーナー. 1ヶ所にしていた。一方、⑮の教員は、教科センターに基点 指  導. を置きながらも、教務センターも使用するという、計画通り. フォーマルな  打ち合わせ. 2年. 1年 生徒. インフォーマル   な会話. 主任 主任. 1年. 主任. 3年 生徒. 指 導. 3年. の使い方をしたため、教務センターへの往復が多くなり、移 教務 主任. 動距離が極めて大きくなっている。さらに、表6のアンケー トの結果では、コミュニケーションの場がないこと、人間関. 休 憩 エ リ ア. 係が希薄で学年のまとまりを懸念する回答があり、 「職員室. 喫茶. 休息. 教頭. 来訪者. 喫煙. 校長室. がほしい」という回答が2名あった。さらに、 「成績処理な.  管理職の  打ち合わせ. 校長. 応接エリア 接客コーナー. 凡例     会話・打ち合わせ. 図15 職員室の概念図. どをする場がない」という回答もあり、職員室を分離・分割. <おもな参考文献> (1) 青木正夫 建築計画学8 学校Ⅰ (丸善 1976). して、教科の教師集団を中心に、オープンな教員スペースを. (2) 藤田英典ほか「教師の仕事と教師文化に関するエスノグラフィ的研究」. 計画することは、個人の執務の「複線性」を妨げ、さらには. −その研究枠組みと若干の実証的考察− (東京大学大学院教育学研究科紀要 第35 巻 1995). (3) 油布佐和子編 教師の現在・教職の未来 (教育出版1999). 学年教師集団の「協働性」をも阻害していると考えられる。. (4) 稲垣忠彦・久富善之編 日本の教師文化 (東京大学出版会 1994). −.

(5)

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