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「カール・ロジャーズの人間関係論の研究」—学校におけるエンカウンター・グループへの適用を中心に— [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)「カール・ロジャーズの人間関係論の研究」 ―学校におけるエンカウンター・グループへの適用を中心に― キーワード:ロジャーズ、受容・共感、エンカウンター・グループ、人間関係、学級づくり 発達・社会システム専攻 永江 序章 現代の子ども達をとりまく問題として、不登校、いじ め、ひきこもりなどが大きくとりあげられている。これ. 英俊. 第1節 ここでは、ロジャーズ(注1)の主な貢献と心理学に 傾倒していった理由を記述している。. らの問題は、まわりのさまざまな人との人間関係をうま. ロジャーズの主な貢献は次の5つである。. くつくることができないところからきていると考えられ. ①カウンセラーとクライエントの間の受容的・共感的. る。特に、いじめにみられる人間関係はたいへんひずん. な“関係”は、単なるカウンセリングの前提ではな. でおり、その改善に必要を要する。. く、それ自体で大きな人格変容の力をもつことを理. そこで、人間関係やコミュニケーション・スキル不足. 論化し実証的に検証したこと. を改善するために、集団に対して能動的にかかわる必要. ②1940年代に、当時まだ発明されたばかりであっ. 性があると考える。また地域での教育力が低下してきて. た録音機を駆使して、はじめてカウンセリングの逐. いる今、学校においてその不足を補う必要性が高い。 (注. 語記録を公開し、カウンセリングのプロセスの実証. 1)(注2). 研究への道を開いたこと。. カール・ロジャーズ(Rogers,Carl R.1902-1987)はク. ③医師、特に精神科医との格闘の末に、医師免許をも. ライエント中心療法(client-centered therapy)または、. たない者でもカウンセリングや心理療法を行いうる. パーソン・センタード・アプローチ(person)と呼ばれ. という道を開いたこと。. るカウンセリングの一大潮流の創始者である。 と同時に、 現代カウンセリングの基礎をつくった人物として位置づ. ④エンカウンター・グループを用いて、世界平和の問 題に取り組んだこと。. けられている。そのロジャーズが受容的・共感的な態度. ⑤人間性開発運動のリーダーとして学位や資格をもた. が大きな人格の変容の力をもつことを理論化し、実証的. ない一般の人々にカウンセリングを普及させたこと. に検証したことや、エンカウンター・グループの創始者. ロジャーズは以上のような業績を残し、現代にも、そ. といわれ、その活用を図った業績は大きい。わが国でも. の理論は活かされている。. エンカウンター・グループの教育、看護、産業、地域の. 第2節. さまざまな場面で活用され急速に広がっていった。(注 3)(注4) そこで、 本研究では、 ロジャーズの人間関係の理論と、 人間関係やコミュニケーション・スキルを意図的に深め. ここでは、ロジャーズの人間関係論の効力と内容を記 述している。特にカウンセラーとクライエントの間の受 容的・共感的な関係が、人間変容の力をもっていること について取り上げている。. るために、先行研究で、エンカウンター・グループを学. ロジャーズにはカウンセリングの3つの条件がある。. 校教育において適用した事例をとりあげ考察していく。. 「受容」 「共感」 「自己一致」である。諸富(注2)は、. エンカウンター・グループをおこなった時の子供の変容. ①条件の肯定的配慮=心の空間を自由に漂ってもらうこ. やその後の子どもの変容などを通して、エンカウンタ. と. ー・グループの有効性や限界、課題、留意点。その適用. ②共感的理解=理解できなくてもいい、実感として伝わ. 範囲やこれからの可能性をまとめとし、その効果を明ら. ってきたことを「∼ということですか」とていねいに. かにすることを目的としている。. 確認しながら進んでいくこと ③自己一致=相手の話を聴きながら、自分が何を感じて. 第1章. いるかに気づいていること.

(2) とロジャーズのカウンセリングの条件を示している。. 市川(注3)は、学校教育では特に開発的(発達的). ロジャーズのカウンセリングの実際として、カウンセ. カウンセリングによる援助活動が大切である。例えばエ. リングの事例を紹介し、具体的にロジャーズがどのよう. ンカウンター・グループなどである、こうした援助は個. にカウンセリングをおこなってきたかを考察している。. 人適応だけでなく、集団での学習適応を促すねらいがあ. 第3節. る。個の尊重とともに集団での助け合い、協同が大切で. ここでは、ロジャーズが提唱したといわれる、エンカ ウンター・グループについて、そのエンカウンター・グ ループの教育への実践や欠点や可能性について記述して いる。. あり、こうした体験がいじめや学級崩壊の予防にもつな がっていく。 河村(注4) (注5)は、学級経営を、教師が学級集団 のもつ学習集団と生活集団の2つの側面を統合し、児. ロジャーズ(注3)は、 「ベーシック・エンカウンター・. 童・生徒が学校教育のカリキュラムを通して獲得される. グループは、自分を開いたり、危険をおかしたり、正直. 教育課題と、人間としての発達上の課題である発達課題. になったりできる雰囲気があり、 そこから信頼が生まれ、. を、総合的に達成できるように計画・運営することであ. 参加者は、自分の自己防衛的な態度を知ってそれを変え. ること。そして、集団のメンバーである教師と児童・生. たり、もっと革新的で建設的な行動を吟味して取り入れ. 徒、児童・生徒同士の人間関係、共同生活をするための. たりします。その結果、日常生活においても、他の人と. マナーともいうべきルールを確立しつつ、メンバー間の. より適切かつ効果的にかかわれるようになっていくので. リレーションを確立していくことが大切であると指摘し、. す。 」 と参加者一人ひとりの自発性と主体性にもとづく自. そこで、グループ・アプローチの一つである、構成的エ. 由なかかわりあいを最大限に尊重するグループのことで. ンカウンター・グループが有効である。ポイントは次の. あると述べている。. 2点である。 ①学級内の教師と児童・生徒、児童・生徒同士間に、. 第2章. 率直さ、受容的、共感的、援助的な人間関係が左右. 第1節. されるような対応. ここでは、現代の子ども達の人間関係を、いじめを中 心に記述している。 現代の子ども達をとりまく問題として、不登校、家庭 内暴力、いじめ、ひきこもり、学力の低下等が大きくと. ②自己表現するなど、友人と積極的にかかわれる方法 の確立とその場面の設定。 これはロジャーズの人間関係論の代表でもある受容・ 共感と共通している。. りあげられている。これらの問題は、まわりのさまざま. 小学校・中学校・高校での構成的エンカウンター・グ. な人との人間関係をうまくつくることができないところ. ループの活用では、やはり発達段階や教育課程に準じた. からきていると考える。. 活用の仕方が大切である。岡田(注6)は、小学校で有. 森田・清永(注1)は、いじめとは、一般に強い者が. 効なエンカウンター・グループは、動きのあるものはや. 弱い立場の者に対して、心理的・身体的な苦痛を与える. りやすく、ゲーム性が強く、言葉を使わず(非言語的). ことを意図した攻撃的な行動のことだと指摘している。. に行うエクササイズであると指摘している。 また國分 (注. また、國分・大友(注2)らは、いじめが起きる要因と. 7)は、中学校では、教師個々人が構成的エンカウンタ. して、人間関係やコミュニケーションスキル不足が考え. ー・グループを活用した教育活動を展開するのではなく. られるので、集団に対して能動的にかかわる具体的な手. 「学校ぐるみ」で展開するということに留意してほしい. 立てが考えられる。そこで、構成的エンカウンター・グ. と指摘している。高校でも、 「進路指導」や「総合的な学. ループの実施によるリレーションづくりで、 学校などで、. 習の時間」 での活用が十分に活用できると指摘している。. 小・中・高の発達段階に合ったエクササイズを選び、コ. 第3節. ミュニケーション・スキルを育成すると効果的であると. ここでは、学校教育のエンカウンター・グループの適. 述べている。. 用事例を3つ取り上げている。実際にエンカウンターを. 第2節. 行った学級や子ども達の変容を考察していきたい。特に. ここでは、学校教育におけるロジャーズの人間関係論. 演習後の子ども達の振り返りの感想やその後の様子、各. の適用を記述している。次の2つ、学校教育とカウンセ. テストに着目していく。 また、 エンカウンターにおける、. リング、学校教育とエンカウンター・グループである。. その有効性や課題・限界について先行研究について記述.

(3) している。 小学校事例(1)「友達づくり」タイプの事例 水上(注8) 小学校事例(2)「開発的・治療的」タイプの事例 村久保(注9) 小学校事例(9) 「自己評価・他者評価」タイプの事例 半田(注10). 実施したエクササイズの効果が実証されたと考えられる。 それは、かなりの学級での子ども達同士の仲が親密によ くなっていたことがわかる。また、自己肯定度テストで は、個人的にも、プラスの方向に変化が見られた。 以上のようなことから、小学校のエンカウンター・グ ループの活用は、下記のようなことが考えられる。 ・発達段階を考慮することで、遊びなどゲーム性の強い エクササイズが低年齢の集団には必要である。なぜな. 第3章 ここでは、第2章の第3節の学校教育のエンカウンタ ー・グループの適用事例を受けて、エンカウンター・グ ループの有効性や限界・課題、適用範囲・可能性を記述 している。 事例(1)では、5年生の女子の感想から、しゃべっ たことのない友達と話すことができ、人間関係の広がり を見せていた。そして、振り返りのプリントの中に「自 分がしゃべる時、恥ずかしがらずに相手に話すことがで きた」という問いに、 「たいへんよくできた」 「すこしで. ら子ども達は関心を持ち、熱中し、円滑に実施するこ とができる。 ・身体接触を含むものは、自然に非言語的交流を包含し つつ、実施することができる。 ・知的理解を求めるのでなく、感情や、感性レベルに焦 点をあてた指導を行うことにより、学級内の子どもの 人間関係は向上する。 ・話す機会が増え、自分のことや相手のことを知ること ができるようになった。 ・ 「振り返り」を行うことより、相手が話すことを聞き、. きた」が71%を占めている。このことはたくさんの友. 自然と相手のことがわかるようになった。. だちと話すことができ、また自分のこともしっかり話せ. 小学校事例(1)∼(3)での、限界・課題を含め、. たことと考えられる。. 國分(注3)は、仲間に触発されることを望むのではな. A児は、友達と協力できずに、自分勝手な行動を取る. く、自分のパーソナル・アイデンティティを確認するこ. ことが多い。これまで、学級で排斥されがちな子が、こ. とや、人間の原点にふれることが大切であることを指摘. のエクササイズでは楽しく活動していた。そして、なか. している。また、塩田ら(注4)は、エンカウンター(出. のよい友達B男ができた。エクササイズから離れても、. 会い)の場を、國分・菅沼(注5)は、中立で受動的な. なかよくできているのは、この効果が非常に大きかった. 役割が大切であることも指摘している。矢幡(注6)は、. ことのように思う。. ファシリテーターは参加者の様子を常に把握して、進め. 事例(2)では、子ども達の振り返りの感想から、友 達とかかわりあうことにより、子ども達の感情が、とて もすがすがしい気持ちになっていることがわかる。 また、. なければいけないこと、山本(注7)は、プロセスが重 要であることを指摘している。 子どもの個性は大切にしたいが、1つの学級としてま. 田中ソシオメトリックテストを実施し、友達のよさを認. とめていくには、思うように進まないときもある。次の. めたり、受け入れたりしている。このよい変化は演習で. ような、学級にエンカウンター・グループを適用すると. の積極的な友達とのかかわりから生まれたものであると. 効果があがると考えられる。. 思う。実際に、4人いた周辺児は減り、1人いた孤立児. ・リーダー格の子に振り回されて、言いたいことが言え. もいなくなっていた。 國分(注1)や真仁田(注2)は、 「心の「癒し」には 人とのつながりが鍵を握るのである。人間関係を開発し. ないでいるような集団。 ・対立するグループが、ちょっとしたことでののしりあ う集団。. 知り合いをふやし、また、つながりを深くすることは、. ・見かけは仲がよさそうに見えるが、助け合ったり、協. 育てるカウンセリングとしてのいぎだけでなく、癒すカ. 力し合ったり場面では、進んで行動できない集団。. ウンセリングとしても意義も併せ持つのである。 」 と述べ. ・本音で話し合うことができない集団。. ている。. ・人の意見に耳を傾けるのが苦手で「聞く・話す」姿勢. 事例(3)では、2回のソシオメトリックテストの結 果から、ふだん親しくない者同士が、自然にかかわるよ うにと配慮し、他者評価を通して自己評価を高めようと. が育っていない集団。 ・教師と子どもの距離が感じられ、 「このクラスが合わな い」と感じる集団。.

(4) 今後も学校領域におけるこのアプローチの量的拡大と 質的変化が進むことだろう。それとともに、いろんな対 象に対しても貢献ができるように思われる。. 訳1996「学校での問題行動をいかに解決するか: 短期戦略的アプローチの実際」 (注4)河村茂雄 1998 「崩壊しない学級経営を めざして」. 終章. 学事出版. (注5)河村茂雄 1999 「学級崩壊に学ぶ」 学. 本研究では、カール・ロジャーズの人間関係論をもと に、学校でのエンカウンター・グループの適用を中心に 考察してきた。 エンカウンター・グループは、子ども達に自己理解や 他者理解を深め、人間関係やコミュニケーション・スキ. 事出版 (注6)國分康孝・國分久子・岡田弘 1997 「エ ンカウンターで学級が変わる」. 厚徳社. (注7)國分康孝(監修) 1997 「エンカウンタ ーで学級が変わる:中学校編パート1. 図書文化. ルを意図的に深めるために、エンカウンター・グループ. (注8)水上和夫 1987 「小学校の構成的グルー. を学校教育において適用した事例をとりあげ考察してい. プ・エンカウンター・プログラムとその効果に関する. き、エンカウンター・グループの効果が見られた。. 研究」. 自費出版. しかし、 エンカウンター・グループ実施後の子どもの変. (注9)村久保雅孝 1988 「学習等不適応児童生. 容は見られたが、それ以降の子どもの変容がわかってい. 徒の指導に関する調査研究(第6報) 」富山県総合教育. ない。. センター『研究紀要』第7号. そのため、このエンカウンター・グループを継続的に 行い、子どもの変容をしっかり見取っていき、そして、. (注10)半田美智子 1988 長期研修生研究発表 より. 千葉県総合教育センター. 子どもの変容の測定方法の吟味も考えなければならない。 第3章 (注1)國分康孝 1979 「心とこころのふれあう 主要引用文献 序章. 黎明書房. (注2)真仁田昭 1985 「つながりを求める子ど. (注1)小林正幸 2000 「実践入門教育カウンセ リング」川島書店 (注2)國分康孝・片野智治 2001 「構成的グル ープ・エンカウンターの原理と進め方」 誠信書房 (注3)國分康孝・大友秀人 2001 「授業に生か すカウンセリング」誠信書房 (注4)諸富祥彦 1997 「カール・ロジャーズ入 門. とき」. 自分が“自分”になるということ」星雲社. もたち」. 図書文化. (注3)國分康孝 1992 「構成的グループ・エン カウンター」. 誠信書房. (注4)塩田良宏・中山勝子・笠井則男・柴田ゆかり・ 石川和弘 1987 「学校教育相談活動と宿泊研修 における構成的エンカウンター・グループ(仲間づく り) 『第26回香川県高等学校教育研究集会発表資料』 」 (注5)國分康孝・菅沼憲治 1979 「大学生の人. 第1章. 間開発のプログラムとその効果に関するパイロット・. (注1)カール・ロジャーズ 1967 「ロジャーズ. スタディ」『相談学研究』19(2). 全集」 友田不二男・伊藤博・堀淑昭・佐治守夫・畠 瀬稔・村山正治編集 岩崎学術出版社 (注2)諸富祥彦 1997 「カール・ロジャーズ入 門. 自分が“自分”になるということ」 星雲社. (注3)畠瀬稔 1990 「エンカウンター・グルー. (注6)矢幡洋 1990 「構成的エンカウンター・ グループの実際問題」人間関係研究会「ENCOUN TER. 出会いの広場」11. (注7)山本銀次 1984 「持ち味活用のステップ 構成」『東海大学学生生活研究所紀要』15. プと心理的成長」創元社 第2章 (注1)森田洋司・清永賢二 1994 「新訂版いじ め−教室の病ー」 金子書房 (注2)國分康孝・大友秀人 2001 「授業に生か すカウンセリング」 誠信書房 (注3)エレン・S・アマティー著 市川千秋、宇田光. 主要参考文献 久能徹・末武康弘・保坂亨・諸富祥彦 1997 「ロ ジャーズを読む」. 岩崎学術出版社. 國分康孝・片野智治 2001 「構成的グループ・ エンカウンターの原理と進め方―リーダーためのガイド ―」. 誠信書房.

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参照

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