持株会社本社の統治力としての求心力とは何か
――その基盤としての MCS の考察―― 頼 より 誠* 淺 田 孝 幸** 塘 とも 誠*** 論文要旨:純粋持株会社(以下 HD と略す)制をとったものの業績の上がらない企業があ る。その原因は,本社の統治のための経営力としてのパワーが弱く事業会社が本社の意図 しない行動をとることに起因する可能性がある。本稿のテーマは,事例研究を通じて得ら れた結果をもとに,各事業会社がその事業内容に応じて自主的にかつ事業最適をねらって 行う事業力としての遠心力に対抗できるグループ全体を統治する力としての求心力をど のように強化すればよいかを提案することである。HD 制を採用している企業グループを 観察すると,事業間での関連性が少なく事業毎に別々の意思決定をする方が合理的な多角 化企業,M&A など組織再編を行う必要性の高い企業,さらにはグローバル企業で各地域 や国を単位に事業構造を切り分けている企業において採用している場合が多いように思 われる。しかし,それらのグループ全体を統括する HD は,一方では,人,モノ,カネ, 情報などの経営資源を,必要に応じて HD の支配下に置けるようなマネジメント・コント ロールの仕組み(戦略に対応した方針設定・業績モニター・業績評価・目標整合的動機づ け)が必要である。 本稿では,小売業の HD であるイオンとセブン&アイ HD の事例から,なぜ HD 化の必 要があったのかを明らかにすると共に,分権化の行きすぎが企業の業績に負の影響を与え る危険性のあることを説明したい。そして,その弊害を緩和するために,事業会社間に横 串を刺す仕組みや,管理機能の重複を共通化する仕組み等について検討する。さらに,「選 択と集中」のためには本社が統治能力をもつことや,人の異動と資金調達力を HD が握る ことが重要であること等,いくつかの事例から得られた知見をまとめることにしたい。 キーワード:純粋持株会社,マネジメント・コントロール,求心力,組織再編 1 はじめに 純粋持株会社の先行研究は,管理会計以外の分 野では多く見られる。たとえば,純粋持株会社制 の解禁までの経緯と法制度改革,HD 制をとるね らいと HD の役割(下谷 2009;高橋 2007),HD 化の手続きや HD 制がどう事業間でシナジーを 生み出すかに関する議論(武藤 2007),M&A に 伴う統合化の課題(宮島2007)などが研究テーマ とされてきた。だが,管理会計の観点からの HD 制の研究は,まだ十分ではない(淺田 2011)。と いうのは,これまでの事業部制・カンパニー制と 持株会社構造に根ざした分権制とにおける実質的 な意思決定・コントロールの仕組みの違いについ て,まだ十分な検討が行われていないからである (Itoh and Shishido 2001;青木・宮島2011, 272)1)。 そこで,我々は,ここ数年間インタビュー調査 に基づいた仮説発見型のケース研究を行ってき た。HD 制といっても実に多様であり,少なくと も欧米の文献に明確に記述されていないようなユ ニークな特徴をもつ事例もあった(淺田・頼・塘 * 兵庫県立大学大学院会計研究科教授 ** 立命館大学経営学部教授 *** 成城大学経済学部教授
2009;頼 2009)。 ともあれ,管理会計としての重要なテーマの1 つは,HD による子会社の効率的なマネジメン ト・コントロールの仕組みであり,いわゆる企業 統治の仕組みの一貫としてのマネジメント・コン トロール・システム(以下,MCS と略す)を検討 することであると考える。もっとも,企業統治と いうことばは多様な意味で使われている(宮島 2011)。本稿では,企業統治を本社組織としての HD が,自らの経営目的を達成するために一定の 管理権限を有効に行使して,子会社である事業会 社をコントロールすることにより,グループとし ての戦略的目的を達成するという意味で使用して いる。 ここでは,HD の経営目的は,それ自体の存続 と維持にあると考える2) 。しかし,HD 自体は,具 体的な事業を行っているのでなく,子会社の経営 権をもつことで,子会社に影響力を及ぼすことが できるとしている。しかし,HD が各事業会社の 業績が深刻な状態に陥った後に経営権を行使する のであれば,それは,HD による事業会社の売却・ 縮小あるいは清算でしかなくなる。企業グループ として成長・発展するためには,各事業体の問題 が深刻化する前に,それら課題のある事業への介 入を行い,様々な手段を講じて立て直しを図らな ければならない。同様に,各事業会社の戦略を精 査して,企業グループとしての全体の事業ポート フォリオをより望ましいとされる事業構成に組み 替えることが,HD の重要な役割である(山田他 2010)。 新制度学派による研究から,コース(Coase)は 取引コスト問題が組織から市場にとって代わるた めの重要な概念であることを指摘し,機会原価の 重 要 性 を 指 摘 し た。さ ら に,ウ ィ リ ア ム ソ ン (Williamson)は,企業統治の重要性を指摘し, HD 制を採用する M 型企業では,組織内の取引コ ストとしてのエージェンシーコストやインセン ティブコストの重要性を指摘した。いずれも, HD から見て,組織の均衡と発展のためには,管 理会計による,内部取引の単位コストを市場での 価格と同じレベルでどのように測定し,組織の見 えざるコストを見える化していくのか,企業が効 率的経営を維持するためにコスト測定がいかに重 要であるかを指摘したものであったと言えるだろ う(Richardson et al. 2009)。 本研究の目的は,従来の垂直的統合企業である メーカーに代わり,アメリカ,欧州,日本などで 巨大なサービス会社が出現しているなかで,彼ら が HD を通じて,どのようにその統治システムを 機能させているのか,すなわち,MCS の内部メカ ニズムの特徴とそこから見える新たな課題を検討 することにある。 2 本研究の背景と目的 2.1 なぜ純粋持株会社に注目するのか 日本では,1970 年代に日本独自の社内資本金制 度を基礎にした事業部制が電器・機械事業会社を 中心に多くの企業で採用され(西澤 1997),それ が,1990 年代には,事業本部制,事業グループ制 などを経て,ソニーの改革を初めとして,(米国企 業の投資センターとしての事業部をめざした)カ ンパニー制が採用された。これらの組織デザイン の変更なり進化は,日本の分権管理を考える上で は大きな流れであった。さらに,1990 年代のバブ ル崩壊に始まる銀行倒産,さらには,金融ビッグ バンを経て,2000 年初頭から,大手銀行の再編と 統合のために,国内市場における企業としての生 き残りをかけて,リストラクチャリング,M&A さらにはここでの関心である純粋持株会社が,実 務・研 究 両 面 に お い て 注 目 さ れ て き た(下 谷 2006)。その持株会社が設立されるケースには, 大きく分けて2つある。すなわち,1つの会社が 複数の会社に分社する場合(たとえば事業部を社 外分社して事業会社とする場合)と M&A の場 合(別会社との合併あるいは合併代替の場合)で ある。また,HD 制のねらいとしては,社外分社 により分権化を進め,迅速な意思決定を可能にす るという効果が期待された。今日,この純粋持株 会社(HD)が注目されているのは,特に HD でな ければできない「組織再編」が重視されているか らであろう(下谷 2009, 72)。そして,第1節で
指摘したように,分権化を進めた結果としての1 つの最終形態とでも言える HD 制における内部 の企業統治をどう運営するのか,すなわち,MCS をどう設計するかが重大な課題となる。 2.2 古くて新しい問題:部分最適化の問題 そもそも,伝統的責任会計が前提としてきた職 能別組織では,部門別の部分最適化が問題とされ てきた。他方,連邦制事業部やカンパニー制では, 分社間での独立性が高くなるため,分社毎の業績 測定がやりやすくなる。つまり,分社毎の業績の 独立的測定(透明化・独立採算)はメリットの1 つである。だが,同時に分社間の壁の存在は,本 社の統治能力を一層強化しない限り,その求心力 が弱いと新たな意味での部分最適化を引き起こし 組織の崩壊を招く。そこで,2つの方策が一般的 にとられることになる。1つは,予算・財務管理 的にトップダウンで資源を配分することにより HD の戦略を実行しようとする方法である。もう 1つは,コントロール・システムから得た情報を お互いに利用して,分社の壁に「窓」を作り,分 社間あるいは分社と本社の間の相互作用(イン ターアクション)と情報の共有化を促し,本社が 調整機能を発揮して全体としての統一性と組織的 な均衡を維持しようとするものである。前者は, 伝統的な集権的な意思決定を前提にした MCS の 機能であり,HD の戦略なり方針を具体的に MCS で財務目標化して,各事業会社に振り分ける方法 である。また,後者は最近の研究によれば,ボト ムアップの事業部門からの新しいアイデアと本社 あるいは,研究機能分社のシーズを利用して HD を媒介(あるいは,HD を資金オーナー)にして, 新規事業や新規市場開拓へとつなげるための新た な方法であるとされている。ただし,多くの場合 に,MCS の機能は,戦略を分解して,詳細な目標 とそれの財務計画・業績基準を明らかにするもの で,事業会社の具体的な行動目標を財務指標によ り規定し,業績評価することで組織全体の目標へ の適合的な行動を促すためのものである。しか し,そこには,常に分権的組織自体の目標の達成 と全社的な組織目的の達成の間に不一致が起こる 可能性が指摘されてきた。たとえば,その事業が 成熟状態であれば,事業そのものに見切りをつけ るためではなく,何とか寿命を延ばすために事業 会社は自らの資金を元に新規の事業・製品開発と 投資を試みる。また,既存の事業会社が新規事業 を起こすときに,新規事業の事業収益は既存の事 業収益に合算されているので,一定の規模になる まで,HD は財務情報から新規事業の事業収益を 独立して観察できない。または,意図的に見えな くしている。管理会計的な仕組みとしては,事業 会社内の部門別本社費配賦を意図的に歪めること も行われる場合がある。たとえば,3M で有名な スカンクワークは新規事業を起こす仕組みの1つ でもあるが,多くの場合は芽が出ないか,本業に 吸収されてしまうケースが多いとされている。そ のことから,事業分社・部門は,多くの場合に現 業の成長と HD で開発された新たなシーズや M &A で獲得した新規事業を加えることで強化さ れた事業活動を展開する。しかし,環境変化が激 しいときには,HD から見た場合に転換の遅れ, あるいは,事業会社がそれに抵抗する方策を講じ ることすら起こる可能性がある(淺田・頼・塘 2009)。 2.3 求心力と遠心力のバランス 以上の問題を解決に導くヒントは,HD の求心 力と子会社の遠心力(後述)のバランスをうまく とることにあると考える。その根拠は,HD 制を 廃止してカンパニー制に移行し一社化した企業の 事例が散見されることにある。そこで,それらの 企業の一部をヒアリングした結果,子会社の経営 状態を見たときに,法人グループ全体との関係が 見えなくなっていることや,親会社の求心力が弱 すぎることにより,ある種の独立企業状態が子会 社に見られるとの知見を得た。これは,国際経営 論でしばしば日本企業によく見られる特徴である 「親会社の海外子会社に対する頻繁な干渉」や「頻 繁な報告書への要求」と逆の企業のケースである。 つまり,分社化,M&A により急激に企業集団の 範囲が拡大した企業においては,分権化の程度は 高いのにもかかわらず,それら子会社・関連会社
が新たな戦略的展開することで環境に適応する自 律的な動きを誘導する仕組みとそれに関連するコ ントロール・システムを,HD は十分整備してい ない可能性がある。 逆に,成功していると思われる HD を観察する と,子会社の強い遠心力にみあうだけの強い求心 力を HD が有しており,求心力と遠心力のバラン スをうまくとる仕組みが存在しているのではない かというのが,我々の仮説である。 そこで,HD 制における MCS をどのように構 築すればよいのかというのが,研究テーマの1つ となるだろう。それも,コントロール・パッケー ジとして,責任会計以外の MCS の下位システム との組み合わせや使い方についても考察すること が必要であろう。しかし,第一次接近としては, 求心力と遠心力を生み出している要素毎に考察す ることをここでは提唱する。 3 求心力と遠心力 3.1 HD 制がうまくいかない理由 HD 制がうまく機能しない理由は多様である が,ここでは,以下の点に注目する。 第1に,純粋持株会社の本社が機能を果たせて いないという問題である。第2に,社外分社では, 社内分社の場合以上に,事業会社間に高い壁がで き,事業会社から全体が見えなくなっていること である。第3に,業績評価システムの不備もあり, 全体業績よりも事業会社の業績を優先させる結果 となっていることである。ここでは,特に第1の 点に注目したい。 3.2 求心力と遠心力のバランス HD 制がうまく機能しない重要な理由の1つ は,HD の求心力と事業会社の遠心力がアンバラ ンスになっていることである。通常は,HD の求 心力が事業会社の遠心力よりも弱いケースが見ら れる。それは,それぞれの事業会社が一定の事業 目標を達成しているときには,詳細な内容につい て,HD が介入することはほとんどないこと,む しろ,事業部門トップと HD 経営陣との直接的協 議や財務・経理スタッフからの情報を通じて課題 や問題についての報告を求め,その対応を求める 程度で,直接的に事業内容やサプライチェーンの 潜在的課題を取り上げることはまれである。した がって,自律的な活動が事業会社で展開されるこ とになることで,HD は,株主あるいは配当に見 合うサービスを提供してくれる間接部門と事業会 社から見なされる傾向が強くなる。このように, 求心力と遠心力とは,様々な経営資源を HD と事 業会社とでどれだけ所有し,どう活用しているか, あるいは,それらの利用についてどちらがどの程 度の影響力をもっているかによって決まるだろ う。それらの求心力と遠心力の内容を列挙したの が表1である。 したがって,この表1で指摘されるように, HD の求心力と事業会社の遠心力とは,ある資源 についてのそれぞれの相対的なパワーあるいは影 響力の程度ということになる。このことから, HD と事業会社の関係は,その生成の出発時点で の関係,経営トップの方針・基本戦略,外部利害 関係者(主要債権者や主要株主,さらには企業組 合)からの要請とその強さに左右されるだろう。 しかし,その関係についての考察とは別に,この 2つのバランス関係については,投資資金のソー スへのアクセス力,役員人事の決定・配置方法の 方針,それに,HD との比較で事業会社の規模と その分布,ならびに,全社戦略についての HD の デザイン力が決め手ではないかと考えられる。 3.3 持株会社の求心力を強化する必要性 ① HD が弱い理由 HD の求心力が弱いと言われる理由はどこにあ るのだろうか。 第1に,「コーポレートセンターとしての機能」 と「サービスセンターとしての機能」を区別せず に,前者の機能までも HD から分離してしまって いる点にある(山田他 2010)。これは,求心力の 弱い HD では,戦略的機能と共通的機能との峻別 が,不十分なことを示唆しており,結果的に,必 要以上の機能分社の政策をとっている企業に見ら れ る。た と え ば,日 立 グ ル ー プ3) や 富 士 電 機
HD4) などにも見られた。 第2に,小さな本社にしようと HD をスリム化 しすぎて(たとえば人員を減らしすぎて),HD が その本来の機能を十分に果たすことができない場 合である。これは,住生活グループ5) や新日鉱 HD(現在の JX グループ)などに見られる。また, 事業会社に分散するよりも HD に集中しておい た方がよい機能もある。たとえば,HD に R&D 機能を集中し,様々な事業に横展開可能な技術を 開発することにより,無形資産を獲得できれば, HD はより一層の戦略的なパワーをもつことがで きる。もちろん,事業会社にこの機能を分散しな い理由としては,同じ研究を複数の事業会社で重 複して行うという無駄をなくすという効果もある だろう。多くの HD では,もちろん,このことを 謳っているが,例えば,コニカ・ミノルタ HD で は,これまでの両社の事業部に分散していた中核 的な研究開発組織を研究開発分社に集約したが, 開発領域の多様性と開発組織の地理的分散状態に 手をつけなかったことから,合併前の2つの会社 の開発・研究機能の集約・統合化に至らなかった ことで,その本来の役割を十分に果たせていない 可能性もある。更に,リクルート活動は HD で集 中的に行い6) 事業会社のニーズも勘案して配属や 配置転換を決定する権限をもつことで HD はブ ランドに裏打ちされたパワーをもつことができ る。 事業会社間の壁を越えた配置転換も,HD に人 事権を集中しなければ不可能であろう。なぜな ら,異なった事業会社間の交流は抵抗を伴うし, 各事業会社も優秀な人材ほど離したがらないだろ うからである。また,納得のいくキャリアプラン を作るために,1人1人の希望を含めた家族情報 などの個人情報をデータとして HD がもってい なければならない。 ともあれ,以上のような意味で,HD に人事権 を集中するのは合理的であるといえるだろう。 第3に,中核的な人や資金規模を HD が戦略に 沿って自由に配置・配分できなければ,資源配分 の非効率化が起こり部分最適になる可能性は高い だろう。たとえば,DOWA ホールディングスで は,HD に事業会社の中核的人材を併任役員とし 表1 求心力と遠心力の具体的内容 HDの求心力 事業会社の遠心力 事業会社のトップの人事権 人事 事業会社の人事権 資金の調達と配分の権限 資金の調達 単独で資金の借入ができる程度 投資を決定する権限 投資決定の金額 投資を単独で決定できる権限(投資金額の上限) 事業会社から配当,HDが提供するサービ スに対する対価の支払い(収入が多いほど HDは強くなる) HDの収入 配当,サービスの対価の金額の大きさ,利 益留保の許容範囲 全社戦略の策定,および事業戦略の策定お よび実行への介入 戦略策定と実行 事業戦略の策定と実行 事業会社を監督する機能確保の程度 監査 親会社による監査に対する参加・協力の程度 HDのメンバーが事業会社に出向している 程度 役員の兼任と情報共有 事業会社の社長がHDの役員を兼任しているか否か HDのスタッフの数,HDに集中している機 能の数,不動産の所有 HDと事業会社の規模 事業会社の規模,不動産や無形資産の所有 全社的経営理念の浸透やカリスマ的トップ の存在 経営理念と経営者 事業会社独自の経営理念やトップの存在 (頼作成)
て集めており,コミュニケーション問題や迅速な 戦略的意思決定のための合意形成に注力してい る。 ②純粋持株会社の強化方法と廃止事例 純粋持株会社を事業持株会社にする,さらに事 業会社を廃止して社内分社化するのは,HD の解 体という理解でなく,むしろ本社機能の強化とし て捉えることができる。たとえば,富士電機 HD (現:富士電機)は,2003 年に HD 化したが,事業 間の連携や人材交流が進まず,営業効率が悪化し た。そのため,グループ求心力を高める必要が生 じた。そこで,連結売上高の約5割を占める富士 電機システムズを HD に取り込み,エネルギー・ 環境事業を中核事業とした事業持株会社制に移行 した(社名を富士電機に改称)。 もっとも,純粋持株会社を廃止する事例には, それぞれ企業により異なった理由があり,必ずし も HD の失敗例とはいえないと考えられる。多 角化戦略をとっていた企業が「選択と集中」を進 めた結果,HD 制をとる意味がなくなったケース は,「組織は戦略に従う」という命題に沿った転換 である可能性を示唆している。 たとえば,オークマホールディングス(現:オー クマ)が,全額出資子会社のオークマ,大隈豊和 機械,大隈エンジニアリングを吸収合併して一社 化した。このケースはグループ企業の再編のため の一時的な HD であった解釈できる。前川製作 所が一社化したのは,環境に適応して戦略的に組 織を変えた7) と解釈することもできる。また,日 商岩井とニチメンが合併した双日のケースは, HD 設立当初より,合併時の企業文化等のコンフ リクトを一定期間処理しその後に HD を解消す ることを予定していた可能性がある。 これらに対し,組織再編を繰り返すことを前提 として HD を設置したケースは,HD 制をいかに してうまく継続するかが課題となる。そのポイン トが HD の強化であると言えるだろう。 そこで,第4節では,イオンとセブン&アイの 事例を紹介して,HD 制に移行した理由が,事業 再編の必要性にあったこと,換言すれば,人,モ ノ,カネ,情報(知識)などの経営資源を HD の コントロール下に置き,機動的に価値創造できる ようにすること,さまざまなシナジー効果をね らったものであったことを,具体的に説明するこ とにしよう。 4 イオンとセブン&アイ HD の事例からの HD 制の検討 イオンとセブン&アイ HD は,なぜ純粋持株会 社制を採用したのであろうか。両社の戦略あるい はビジネスモデルについても触れると共に,HD 制の特徴と求心力の強化について具体的に説明し たい。イオンやセブン&アイ HD では,様々な業 態の小売業を行っていることから事業毎に独立し て意思決定をする方が迅速で合理的な経営ができ る。そのためには,HD には事業会社を適時にし かも正確にモニターするシステムが必要であり, HD から事業会社に,財務データの頻繁な報告が 要求される。 4.1 疑わしい HD 制の効果 イオンとセブン&アイ HD は,国内市場の成熟 という理由から海外市場への進出を意図している 可能性がある8) 。強いて言うならば,積極的な M &A で組織を拡大し,様々な商圏に応じた小売業 を展開していくという点で,イオンは成長志向, 海外展開の傾向が強いといえる。彼らの本業であ る小売では,専門店,スーパーマーケット,コン ビニ,百貨店など多様な形態をもち,それらと関 連して金融,デベロッパー,IT などの業務あるい は事業を担う子会社を HD の下に配置している。 HD 制をとることにより,より多くの企業を傘下 に入れることで,ポートフォリオ経営を行えるよ うになることが,HD 制の特徴である。 純粋持株会社の機能は,人事,資金,情報など についての求心力を強化することにより生かされ る(日経ヴェリタス 2010, 14)。だが,イオンの 財務データの観察からは,2010 年2月段階では, この機能のうちで財務面での求心力が発揮されて いるとはいえなかった。一方で,セブン&アイ
HD の利益については,その傘下にあるセブン-イレブンの売上のおかげであることがわかる。 もっとも,グループ全体では,両者は似たような 程度の差しかないともいえる。しかも両社とも今 後の生き残りを図る上で重要な国際的事業展開に ついては未だ不十分である。 そこで,両社が HD 制をとった意図とその成果 が十分に出ていない原因について検討することに する。そもそも,セブン&アイが HD 制へ移行し たのは 2006 年2月,イオンが HD 制へ移行した のは 2008 年6月である。たとえば,売上高につ いてみればセブン&アイ HD では 2007 年から 2008 年にかけて若干増加したものの,その後減少 しているのに対し,イオンでは,2006 年から 2008 年まで売上高は伸び,2010 年度にわずかに下落し ている。営業利益については,セブン&アイ HD では減少ないし横ばいであり,イオンでも 2007 年に若干増加したものの,その後減少ないし横ば いである。 これらのうち,2008 年から 2009 年の2月まで の1年間の期間については,原材料価格の高騰と それに伴う物価上昇,米国における金融の混乱が 欧州・アジアへと波及し,内外の経済も景気後退 していたことが相当に反映していると推測され る。 また,総資本利益率については,セブン&アイ HD では 2007 年から減少する一方,イオンでは 2007 年に増加,2008 年 2009 年と減少して 2010 年に増加していることから,HD 制への移行効果 が明確に現れているとはいえない。セブン&アイ HD の EV/EBITDA 倍率(簡易買収倍率)では, 小売業の平均値を下回っている。すなわち,事業 の多角化による規模の拡大は,企業価値の向上に 役立たず,株価が低くコングロマリット・ディス 表2 イオンとセブン&アイHDの財務概要 イオンの財務概要 平成19年2月 平成20年2月 平成21年2月 平成22年2月 平成23年2月 売上高(百万円) 4,345,308 4,650,088 4,706,069 4,542,599 4,561,748 経常利益 188,303 166,326 126,030 130,198 182,080 当期純利益 57,656 43,932 −2,760 31,123 59,688 純資産額 1,200,783 1,167,477 1,105,712 1,144,434 1,219,236 総資産額 3,534,346 3,591,406 3,741,447 3,785,288 3,774,628 1株当たり当期純利益額(円) 77.31 55.75 −3.61 40.68 78.01 自己資本利益率(%) 7.3 4.9 −0.3 3.7 6.9 (有価証券報告書より作成) セブン&アイHDの財務概要 平成19年2月 平成20年2月 平成21年2月 平成22年2月 平成23年2月 売上高(百万円) 5,337,806 5,752,392 5,649,948 5,111,297 5,119,739 経常利益 282,016 278,262 279,306 226,950 242,907 当期純利益 133,419 130,657 92,336 44,875 111,961 純資産額 1,969,149 2,058,038 1,860,672 1,793,940 1,776,512 総資産額 3,809,192 3,886,680 3,727,060 3,673,605 3,732,111 1株当たり当期純利益額(円) 142.90 137.03 100.54 49.67 126.21 自己資本利益率(%) 7.6 6.7 4.9 2.6 6.5 (有価証券報告書より作成)
カウントを招いている。ROE についても,セブ ン&アイ HD もイオンも 10%未満であり,海外 の小売業(コスコやテスコなど)に比較して低す ぎるとの指摘がある(Nikkei Business 2008.2.18, 18)9) 。 4.2 純粋持株会社制への経緯と組織再編 ①イオンの HD 化への経緯 イオンのビジネスモデルは,店舗を全国展開で 増やし成長し続けることを前提としていた。ま た,不動産開発事業と金融事業の収益で小売の収 益を補完してきた。すなわち,小売自体の利益は それほど大きくなく,テナントとして,収益性の 高い「専門店」を誘致して賃貸料を稼いできた。 専門店は,食品よりも客単価が上がり,クレジッ ト事業で儲かる可能性も高いように思われる。し かし,専門店事業については営業損失(平成 22 年 業績)が発生している。 店舗の拡大で資産・負債が膨らんだが景気の悪 化で国内市場では売上が伸びにくい状況となり, 2006 年に床面積1万m2 以上の出店を規制する法 律ができ郊外型ショッピング・センター(SC)の 出店が鈍ったこと,貸金業法の改正により金利が 18%に引き下げられ収入が減少したこと等が業績 に影響したようである。減益になった 2007 年か ら出店の抑制と不採算店を閉店することにより, キャッシュを生み出すことはできたが,直接金融 は 困 難 に な っ た と 指 摘 さ れ て い る(Nikkei Business 2008.12.8, 34-39)。以上のような事態 から生じる危機感は HD 化の一因になっている とも考えられる。そして,国内市場でのこれ以上 の成長が望めないことから,海外展開を考えるの は自然なことであろう。 ヒアリングによれば,HD 化により,「集中すべ きところは集中し,事業会社に分権化すべきとこ ろは分権化する」10) ということであった。ここで 集中とは,HD への権限の集中,あるいはシェアー ドサービス会社を設立するという意味である。こ れも含め,組織再編が容易になることも HD 化の 理由であろう。たとえば,HD 化前のイオンは, イオンリテールと一体で事業持株会社として経営 してきた。HD 化により,イオンリテールも他の 事業と並列に扱われるようになったといえる。 ②イオンにおける中核子会社の 100%子会社化の 難しさ 求心力を高める組織再編としては,中核子会社 の上場を廃止し完全子会社にするという手もあ る。だが,それは容易ではないと思われる。たと えばイオンモールを完全子会社にするには,TOB (株式公開買い付け)をする必要があり,そのため には,プレミアムも上乗せしなければならないこ とから,多額の資金が必要となる。それでは,株 式交換という方法はどうか。株式交換にしても, 交換比率について合意が得られない可能性が残っ ている。 ③セブン&アイ・グループが HD 化に至ったプロ セスと組織再編 セブン&アイ HD は,セブン-イレブンとデ ニーズジャパンが共同で設立した(2005 年9月) 純粋持株会社である。ヒアリング11) によれば,こ の会社は,もともと企業文化としては,自前主義 であったが,百貨店の買収などを起点として M& A を行うようになったという。以下のような事 情から,M&A あるいは組織再編のために HD 化 したと考えられよう。 1990 年代のバブル崩壊後,親会社イトーヨーカ 堂の業績が悪化していたこともあり,当時,株の 時価総額は親子で逆転していた。イトーヨーカ堂 がセブン-イレブンの株の7割を所有する親会社 であったので,イトーヨーカ堂を手に入れること でセブン-イレブンも手に入る状況にあった。そ こで,この状態を是正するためは HD 化が必要で あった。また,傘下になかった百貨店を買収する ためということもあったという(2009 年 11 月調 査による)。 組織再編により,イトーヨーカ堂と他の事業会 社とは横並びの関係になり,イトーヨーカ堂の赤 字店舗が廃止された。この組織再編に際しては, 2005 年当時,スーパー事業ではグループ全体の4 %しか稼いでいないのにもかかわらず設備投資で
36% も 使 っ て い た と 示 唆 さ れ て い る(Nikkei Business 2005.8.8, 43)。したがって,この組織 再編は,利益の出ていないスーパー事業を切り離 し,セブンイレブンから配当をもらってイトー ヨーカ堂が使うという「もたれあい関係」の解消 をねらったものであった(Nikkei Business 2005. 5.16, 20)。セブン&アイ HD は 2005 年末,ミレ ニアムと統合し,百貨店を傘下に収めた。ミレニ アムとしては「安定株主の確保」,セブン&アイ HD としては「新しいものを作りたい」という思 惑があったといえる。単に売上規模を大きくする という理由から百貨店を傘下に取り込んだわけで はない。消費の低迷により売上が落ちる中で,利 益を確保するために,異なった業態間で情報共有 を行い,新しいビジネスを創造する可能性が高ま ると考えたのである(Nikkei Business 2006.1.9, 6-9)。その後,2010 年度上半期の赤字を受け,イ トーヨーカ堂の本業であった衣料品から撤退する と共に,店舗の半分を閉店した(Nikkei Business 2010.12.20)。 4.3 経営資源の集約と価値創造:モノと情報:PB による商品の共通化,情報の共有化 ①イオンの多角化経営と連邦制経営 イオンは,多角化経営で成長してきた経緯があ り,購買力の向上,メーカーに対して価格交渉力 をもつことや規模の経済をねらいとして組織を拡 大してきたといえる。そこで,2011 年2月期の決 算短信によれば,イオンの総合小売事業の売上高 は売上全体の約 69%であるが,営業利益は約 48% である。一方,デベロッパー事業の営業利益は約 23%,サービス事業等の営業利益は約 25%となっ ており,利益の半分近くは,総合小売事業以外で 稼いでいることになる。 多角化経営や M&A ということも一因であろ うが,イオンは,資本関係があっても子会社のや り方を尊重してきたと言われる。このような経営 は,「ゆるやかな連帯」あるいは「連邦制経営」と 呼ばれていた。他方,非連結子会社と関連会社も いくつか存在する。たとえば,傘下の「マルエツ」 (スーパーマーケットの1つ)は持分法適用の上 場会社である。また,2011 年2月段階でのイオン の上場子会社は 18 社,持分法適用会社は 23 社, 主な海外子会社4社である。上場会社は資金調達 能力があるという意味で遠心力が大きい。また, 小売業の各店舗は商品構成の決定権が事業現場に あるという意味で自律性が高い。そのため,イオ ンとしては,プライベートブランド(PB)である トップバリュの製品比率を上げるのが望ましい が,各社・各店舗の商圏,ターゲットとなる顧客 層にとっての最適な商品構成が優先され,必ずし もトップバリュブランドが選択されない状態で あった。以上のような状況から,イオンは遠心力 が比較的強い会社であるといえるだろう(日経 ヴェリタス 2010, 15)。 ②セブン&アイ HD の強い求心力とコントロー ル セブン&アイ HD は,イオンとは対照的に求心 力が強く,HD によるトップダウン経営が行われ ている。財務・予算について HD が一元管理して いる。HD,セブン銀行以外,ほとんどの子会社 が上場していなかったことも,子会社がその HD の強いコントロール下にあることを意味する。そ の HD でも,イオンと同様なブランド強化の戦略 から「セブンプレミアム」が立ち上げられた(2007 年5月)。この PB は,グループ各社が培ってき た商品開発ノウハウやインフラをグループ横断的 に結集した結果であり,セブン-イレブン,イトー ヨーカ堂,ヨークベニマルなど業態を超えて展開 している。 セブンプレミアムの開発にあたっては,2009 年 時点で,74 のチームが商品を開発している。各 チームには,セブン-イレブンの他に,イトーヨー カ堂,ヨークベニマル,ヨークマートのバイヤー が参加することにより,商品開発だけでなく,需 要予測,販売計画等,セブンイレブンの仕事の手 法を学び,仕入先メーカー情報,物流など,ネッ トワークを活用してきた。すなわち,セブン&ア イ HD は,コンビニエンス事業のセブンイレブン を中心に,そのノウハウを他の業態にも普及させ ていることになる。また,中間持株会社のミレニ
アム HD はヨークベニマルに池袋西武の改革に あたって協力を要請してきた。他方,対面販売を 原則とする百貨店が顧客のトレンド情報をフィー ドバックすることに関心をもったとされている (Nikkei Business 2009.2.2, 34-36)。これは,業 態の壁を越えた情報・物流などの資源の利用,知 識移転を行っている具体的事例といえよう。 4.4 コントロールの組織:人的要素と組織管理の 側面 ①イオンのトップ組織の特徴 HD の求心力に影響する1つの要素は HD と事 業会社の役員の兼任である。ヒアリングによれ ば,イオンでは HD 専任の人間はおらず,本社の メンバーは事業会社に籍がある事業会社からの出 向者である。HD から事業会社に出向するという 形をとっていない理由の1つは,事業会社間に賃 金格差があるせいであるという。子会社の事業に 精通した人を HD に集めることにより情報共有 化をねらっているとも考えられる。しかし,その 一方で HD が事業会社を監督する機能と事業会 社の業務の執行機能とが分離していない可能性が あり,これは HD の企業統治としては,負の作用 も考えられる。なお,HD 専任の者がいないとし ても,グループ全体を見渡しマネジメントできる 人材が必要なことから,HD の中で経験を積むこ とで養成している。しかし,人事異動は同じ事業 の中での異動が多いということで経営幹部として の養成に課題があることを示唆している。 企業統治の仕組みとしては,イオンは,取締役 会の他に監査委員会,報酬委員会,指名委員会を 設置している。取締役会においては,社外取締役 が半数以上を占めている(2011 年4月現在,取締 役9人中5人が社外取締役である)。取締役の数 を減らすことで機動性の高い意思決定が可能にな る。これは,多角化戦略,そして「緩やかな連邦 制」をとっているために生じる意思決定の遅れを 緩和する意味があるのかもしれない。その一方 で,社外取締役を入れることにより,企業統治を 強めている意図が示唆されている。 ②セブン&アイ HD によるトップ組織の特徴 セブン&アイ HD は,執行役員制度と監査役制 度により企業統治をしている。2010 年5月現在, 取締役会は 15 名の取締役(うち2名は社外取締 役)で構成されていた。また,意思決定と業務執 行の迅速化のため,執行役員制度を導入している (執行役員 13 人)。 執行役員制度では,取締役会は「経営戦略の立 案」と「業務執行の監督」に専念できる。取締役 は経営執行者と重複することがないので,経営執 行者を監督できる。また,監査役(5人)は取締 役の職務の執行を監査する。また,監査室は,主 要事業会社の内部監査を確認・指導する「統括機 能」,HD 自体の「内部監査機能」を果たす。さら に,グループ全体の「内部統制評価」を実施する 「内部統制評価担当」が設置されている(セブン& アイ HD の『CSR Report』,20)。 4.5 国際戦略とシナジー ①イオンの海外展開によるシナジー効果 イオンは,東南アジアおよび中国に海外展開し ている。海外展開の理由には,国内市場の閉塞感, 円高,安い労働市場といった理由があろう。中国, アセアン,日本をひとつのマーケットと捉え,地 域密着,高い品質の店舗や商品,金融などのサー ビスも提供している。アセアン諸国では,マレー シア,タイ,ベトナム,インドネシアに「金融サー ビス事業」,また,中国,タイ,ベトナムなどにお いて,プライベートブランド「トップバリュ商品 の生産」を行っている。 国内・国外を問わず,グループとしてのシナジー は,グループ企業に共通する機能やインフラの活 用によって生じる。シェアードサービスの導入に より,事業会社を連結し管理職能の重複を共通化 することが可能になる。すなわち,イオンではグ ループ各社や店舗における経理・人事などの業務 をまとめ,IT を利用した販促や顧客管理など,事 業の枠を超えた業務の効率化を推進している。 具体的なシェアードサービス会社としては, 2008 年には「トップバリュ」の開発,原材料の仕 入,製造からマーケティングまで統括するイオン
トップバリュ㈱を設立した12) 。この会社により職 能横断的な調整関係を築き,組織の壁に窓をつけ るという意味がある。また,グループ内の商品の 需要集約を担うイオン商品調達㈱を設立し,全国 的な物流ネットワークをもつグローバル SCM ㈱ を設立した(Aeon 2010 group profile)。
なお,2011 年からの新中期経営計画では,地域 本社(中国・東南アジア・日本)の3極本社体制 をとり,金融,専門店などを一体とした事業展開 を予定している。また,一方では,「分散」すべき ところは「分散」している。たとえば,現地人材 を登用し,ほぼすべての経営判断を委ねるという 点で,国際戦略においても,連邦制経営をとって いる。 ②セブン&アイ HD の海外展開 インタビューによれば13) ,まだ,海外へ進出す る体制は十分できておらず,今のところ現地法人 もほとんどない。中国にある企業は,現地資本が 入り,管理は日本人,オペレーションは現地人が 行っているとのことであった。 しかし,資料によれば,北欧,東南アジア,オー ストラリア,中国・韓国,北米大陸など世界中に コンビニ事業を展開している(Nikkei Business 2006.9.4, 28)。平成 22 年時点において,コンビ ニエンスストア事業については,中国では,平成 22 年9月末においてセブン-イレブン北京有限会 社 が 91 店 舗 を 展 開 し て お り,北 米 で は, 7-Eleven, Inc が 6,505 店 舗 展 開 し て い る。 ファーストフードや PB 商品の開発・販売により, 売上は堅調であったが,円高の影響で,前年度に 比較し,やや減少している。また,スーパースト ア事業については,中国において 13 店舗を展開 しているが,平成 22 年9月末の段階では営業損 失を出している。これは,新規出店による費用増 が影響しているようである(平成 22 年第3四半 期有価証券報告書)。 鈴木敏文社長のインタビュー記事によれば,コ ンビニエンスストア事業を海外展開するにあたっ て,基本的に「小売業はドメスティック(国内的) なもの」であり,「消費のレベルが上がるほど地域 性が強くなる」という。時代の流れと,その国の 消費レベルにどう合わせていくかを考えた店作り が必要であるという。日本国内,米国においても, 単に店舗数を拡大することは意味がなく,質を伴 わない店舗は閉店し,狭い商圏で常に新しいあり 方を考えて新店を出している。店舗毎に店のオー ナーが自分の店の商圏を分析して仕入れ,商品構 成を変えていくのである(Nikkei Business 2006. 9.4, 46-48)。 中国北京のセブン-イレブンにおいては,日本 では行っていない「弁当の店内調理」で成功を収 めた。イトーヨーカ堂においては,「個店主義」と いう理念に基づき,総合スーパーや準百貨店とい う異なった位置づけの店を出し,品揃え,食品売 場の面積など大幅に変えている。また,「変化対 応」という理念に基づき,絶えずテナントの見直 しを行う。不振店では,好立地のフロアの位置へ 動かし,それでもだめな場合は退店となる。商品, サービス,接客について,日本以上に現場の自律 的 な 変 化 対 応 努 力 を し て い る と い う(Nikkei Business 2009.2.2, 32-36)。 出店戦略については,全国展開するイオンとは 対照的に特定の地域に集中出店している。商品を 供給してくれる取引相手の効率性の点で,あるい は顧客にとっての利便性からみて,店舗を一定の 地域に集中するのが特徴である。北京でも,比較 的所得水準の高い地域に集中出店しているという (Nikkei Business 2006.9.4, 33, 47)。 米国にヨークセブンを設立したのは 1973 年と 古いが,中国に合弁会社セブン-イレブン北京有 限会社を設立したのは 2004 年で,その翌年 2005 年に HD を設立し,7-Eleven, Inc. を完全子会社 とした。ここから海外展開が本格的に始まったと 考えれば,HD の設立が「海外展開」と関係があっ た可能性があるが,確認はできていない。国内に おいても,HD 化によりすべての事業を並列的に 並べ,業績の悪化している事業を廃止することが 容易になることや,連邦制経営により事業毎,狭 い商圏毎に最適な商品やサービスを提供するため には,組織の壁を越えた知識その他の資源の交換 と価値創造が必要であり,そのために HD 制があ
る程度機能したといえるだろう。 5 HD の求心力の強化とマネジメント・コ ントロール・システム 以上の事例の検討から,HD における求心力を 高めるための組織とマネジメント・コントロー ル・システムについての特徴をまとめると次のよ うになるだろう。 5.1 組織,人事管理システム,価値観の共有 HD の求心力を高める方法としては,前節の考 察から以下のような方法が考えられる。 a.事業分社横断的組織の構築,b.各種会議体 の開催,c.HD と事業会社,事業会社間の定期的 な人事異動,d.HD と事業会社間の役員の兼任 (HD から事業会社への出向・転籍。あるいは事 業会社の社長が HD の役員を構成する場合),e. フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーション の場の設置,f.ビジネス・ユニットに横串を刺す ゼネラリストの育成,g.主要経営幹部について の専門家の養成と設置(たとえば,チーフ・ファ イナンシャル・オフィサーの設置),h.自部門重 視になる部門業績に連動した成果主義の悪影響の 除去,i.HD への人事の一元化等。 これらは,いずれも,人的資源の分社と HD 間 あるいは,分社間での相互交流を促すことで,情 報交換だけでなく,お互いの問題や考え方につい ての共通基盤を形成する上で必要なことであり, 同じ視点をもつことや,考え方・価値観を共有す る上でも必要である。これらにより経営陣である 部門長以上がグループの全体観を共有することか らトップチームの理念・価値・境界の共有化を期 待されていることを示唆している。 これらの仕組みが不十分な HD においては求 心力が弱い可能性がある。たとえば,異なる事業 会社間での人事異動は困難かもしれない。これら がどれくらい行われているかは実態調査をしてみ ないとわからない。たとえ,これらがすべて実現 されていたとしても,表1に示されていたその他 の側面における遠心力の方が大きいならば,HD はうまく機能していないことも考えられる。 5.2 資金の調達主体とその配分 HD の求心力を高める方法の2つめは,資金の 調達および配分の権限を HD が握ることである。 HD の収入は,通常,事業会社からの配当,HD が 提供しているサービスに対して支払われるものく らいである。他方,子会社は,上場すれば株式市 場から直接資金を調達できる。HD が事業会社に 独立して資金調達し外部の顧客を得て事業を拡張 することを望む場合は,それを許すであろう。し かし,HD に戦略的な意味で,求心力をつける必 要性がある場合には,100%子会社にすることや, さらに子会社に内部留保を認めないで高めの配当 金をとるようになる。つまり HD は資金を吸い 上げる仕組みをもてば,子会社の必要以上の力を 弱めることができる。だが一方で,子会社の社長 の自律的な経営機会の確保とそれに結びつく経営 者としての動機づけを維持するための仕組みなし では分権的な経営が行われない可能性もあること から,個別の経営問題には関与せず,むしろ,資 本の出資権や借入権を HD に留保することで,短 期的な EVA あるいは ROI による資本利益利率 管理を徹底させることができる。また,資産・負 債・資本の投資残高効率性と負債・資本の比率を 一定の基準との目標として明らかにさせること で,資本効率性(ROE)への意識をもたせること や,借入額の一定比率以上(D/E ratio)の上昇に よる財務リスクの上昇を損益レベルで示すことも 同時に行っていることになる。以上のことは,い わゆる外科的なフィードバック管理を財務データ (B/S レベルと P/L レベルの同時活用)でコント ロールすることである。 6 結び 日本企業では,権限を委譲したと言いながら本 社が海外子会社の意思決定にいちいち介入し,子 会社が真に自律的に意思決定をしていないという 特徴が指摘されてきた。これは,本社が実質的に 権限を握っている「強い本社」を意味している。
だが,海外事業の伸展,組織規模の拡大,多角 化の程度が高まるにつれて,分権的組織の採用と, 実質的な分権化が不可欠である。その際,問題に なるのが,事業会社間,事業会社と HD との間に できた壁の存在である。したがって,この壁に 「窓」をあける,すなわち,子会社を適時にモニター し,子会社の多様性を勘案しつつも,子会社別で の財務成果とそれぞれの環境変化から,個々の事 業将来性について,すばやい HD の経営者の判断 を通じて,HD が組織を再編し,経営資源(人,モ ノ,カネ,情報)を調達・移動・活用できる仕組 みが十分に整備されていることが肝要となる。そ こで,組織の壁に「窓」をあける仕組みと,本社 の求心力を高める方法について事例をあげて説明 した。もちろん,HD を採用している多くの企業 グループにおいては,求心力の強化のための仕組 みはすでに用意されている。しかし,求心力を効 かせる手段を活用するタイミングにおいて,企業 間には大きな差異があるように推測される。 そもそも,HD 化する目的は多様であるとして も,HD 化して規模を大きくすることにより,そ の企業は,資金調達,人事権,情報の HD への集 中化がより重要な要件であることは確かであろ う。青木・宮島(2011)の指摘には,事業ガバナ ンスと企業ガバナンス14) とは,補完関係をなすと の指摘がある。しかし,現実には,事業単位が親 企業の内部組織である場合には,事業ガバナンス は発揮されるが,事業単位が分社して HD の傘下 になる場合には,現実には,その関係は極めて脆 弱であり,ここに日本企業のグローバル化におけ る大きな課題があると思われる。それは,逆説的 に指摘されており,「多角化と同様,事業ポート フォリオの地理的多様性を増加させることで,経 営者と事業部門間の情報の非対称性を大きくし, エイジェンシー問題やコーディネーション問題を 深刻化させるグローバル化の進展は,分権化を促 進する要因として確認できなかった。むしろ,海 外売上高比率が高いと言う意味で,グローバル化 が進展している企業ほど,子会社に対する戦略的 意思決定の分権度は有意に低かった」と指摘され ている(青木・宮島2011, 285)。 本稿との関係で解釈すれば,グローバル化の急 速な進展により,より多様な環境に迅速に対応で きる HD 制が有効であるように思われる。しか し,子会社のモニターの仕組みが十分でなく,実 質的な分権化を前提にコーディネーションするこ とが困難なため,親会社の子会社に対する頻繁な 干渉が行われ,分権化の意味のない,むしろ HD が現場の状況をよくわからずに戦略を立てて命令 する,集権化に近い状態になっているのではない だろうか。 以上のことから,HD の経営者のための分社に 対するモニタリング装置としての管理会計の仕組 み,すなわち,分社別のキャッシュフロー会計, B/S 月次管理会計,P/L 月次管理会計に関する一 層の精緻な仕組みの強化と先行指標としての非財 務指標との連動を意識した管理会計システムの構 築,そして,それらをどのようにデザインして MCS の下位システムと組み合わせるべきなのか, 以上の合理的な説明を今後の課題としたい。 参考文献 青木英孝・宮島英昭.2011.「多角化・グローバル 化・グループ化の進展と事業組織のガバナンス」 宮島英昭編『日本の企業統治』東洋経済新報社。 淺田孝幸・塘 誠・頼 誠.2008.「純粋持株会社に おけるマネジメントコントロールの現状と課題」 『会計』174(3)。 淺田孝幸・頼 誠・塘 誠.2009.「日本企業の純粋 持株会社制の特徴と課題」『企業会計』61(12)。 淺田孝幸.2011.「グループ企業の業績管理」谷武 幸・小林啓孝・小倉昇編『現代会計学体系第 10 巻 業績管理会計』中央経済社。 伊藤秀史・菊谷達弥・林田修.2003.「親子会社間の 多面的関係と子会社ガバナンス」花崎正晴・寺西 重郎編『コーポレートガバナンスの経済分析』東 京大学出版会。 稲上毅.2003.『企業グループ経営と出向転籍慣行』 東京大学出版会。 下谷政弘.2006.『持株会社の時代』有斐閣。 下谷政弘.2009.『持株会社と日本経済』岩波書店。 園田智昭.2007.「シェアードサービスの管理会計」
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Williamson, O. E. 1985. The Economic Institutes of Capitalisms : Firms, Markets, Relational Contracting, Free Press. 注 1)内部組織のガバナンスに関する,青木・宮島調査では,「外 部からの資金調達の決定に関しては,純粋持株会社の子会社 の分権度が有意に低く,持株会社が一括して調達した資金を 傘下子会社に融通するグループファイナンスがより活発な可 能性が高い。実際,グループファイナンスが『活発に行われ ている』と回答した企業の割合は,事業会社の 63.4%(90/143 ケース)に対して,純粋持株会社は 81.8%(9/11 ケース)で あった(青木・宮島.2011.273)」。 2)欧米の企業においては,エイジェンシー理論に沿って,企 業は株主所有を前提にした考察が一般的であるが,Drucker, Anthony,Ouchi などの企業理論,あるいはマネジメント・ コントロール理論では,むしろ多元的な利害関係者への継続 的サービスの提供,あるいはニーズ充足にこそ,企業存続の 根拠がある,との指摘がある。 3)日立製作所については,2010 年4月 26 日に原子力事業部 事業統轄本部でヒアリングした。同社は,HD 制をとってい ないものの,非常に多くの子会社・関連会社からなる企業集 団を構成し,実質的に HD 制と変わるところはない。 4)2003 年 10 月に純粋持株会社制に移行した。富士電機につ いては,2005 年9月,HD でヒアリングを行った。中核子会 社の部長人事は事業会社にあり,子会社は独自の資金調達を 行っている。また,事業会社間の人事異動や交流がないこと により製品開発などにおいて支障が出ていた。これらは,事 業会社間の壁の存在と,HD の求心力の弱さを意味している。 5)住生活グループについては,2006 年2月 10 日にヒアリン グを行った。この HD は,INAX と TOSTEM が HD の下に ぶら下がった形で,社風の異なる両社の自律性は高く,HD の構成メンバーも役員は HD 専属で他は事業会社からの出 向者であった。取締役は 2006 年度は社外取締役2名を含む 10 名,2007 年度は社外取締役2名を含む8名から成る。 6)HD ないし本社で新規採用をするのは,知名度の低い子会 社で新規採用をするよりも優秀な人材を採用し易くなるから である。HD が配属や配置転換を決定する権限を維持するこ とも,HD の求心力の源泉の1つとなるからである。 7)前川製作所は,1970 年代から職能別の独立法人の組織,独
法制をとっていた。地域別に分かれた営業独法がとってきた 仕事を,食品加工・産業用冷熱などの事業分野毎に分かれた 独法と協力して必要な技術者を集め,現場に合わせて顧客と 相談しながら機械装置を作りあげ,メンテナンスまで一貫し て請け負うというやり方をとっていた。しかし,各独法は自 らの業績を優先し,少人数のため人を貸したがらないなど縦 割り組織の部分最適化の問題が起こり,本社も弱いため独法 間の調整機能を果たせなくなっていた。2007 年6月,顧客の 高度な要求に応えたり,海外進出するために,40 社から,1 社化し,事業毎に自己充足性の高い3つのカンパニーに分割 した(2010 年3月 29 日,前川本社にてヒアリング(頼・塘))。 8)イオンの 2011 年度からの3年間の中期経営計画では,ア ジアを1つのマーケットと捉え,日本本社,中国本社,アセ アン本社という3本社体制を確立することをうたっている。 投資計画としては,① 2007 年度∼ 2009 年度と② 2011 年 度∼ 2013 年度の比較をすれば,①では,総額 9,600 億円の 8%(768 億円)を中国・アセアンに投資してきたのに対し, ②では総額 8,300 億円の 25%(2,075 億円)を投資する予定 である。すなわち,国内への投資が減少し,その分,中国・ アセアンへの投資を増加させる予定である。アジアマーケッ トの著しい成長を見越し,2009 年度の営業利益 1,300 億円を 2013 年度には 2,500 億円まで増加させ,ROE も 3.6%から 7%までのばす計画である(AEON MAGAZINE Vol. 32., 14-15)。 他方,全事業一体となって事業を展開することを明言して いるイオンに対し,セブン&アイ HD は,基本的にコンビニ 事業によって利益をあげている。それでも,2011 年度2月期 の有価証券報告書によれば,国内外の合計で売上高営業利益 率は 9.6%に過ぎない。コンビニ事業の北米における店舗数 は 6,610 店舗で,2010 年 12 月末で前年同月末比 221 店舗増, 中国では 100 店舗(同8店舗増)で,2010 年には世界 16 カ国 のセブン-イレブン店舗数は 40,000 店舗を突破した。スー パーストアについては,北京市に総合スーパー8店舗(前年 より1店舗減),成都市に4店舗,北京市に食品スーパー1店 舗あるだけである。利益は 15,708 百万円で,売上高営業利 益率は 0.8%にすぎない。 9)業績の良し悪しには,当然様々な理由があり,HD 化の成 功も業績に影響する一要因に過ぎない。しかし,コスト以上 のベネフィットがあると考えるから HD 制をとるはずであ るから,明らかな業績悪化の要因,円高等の影響を割り引い て考えても業績が良くないとすれば,HD 制がうまくいって いない可能性が高いと考えられる。また,HD の求心力が弱 いことは HD 制がうまく機能しない要因の1つであるが,も ちろんそれ以外にも HD 制の失敗理由はいくつか存在する。 10)2010 年3月4日,淺田,塘,頼,山根の4名でイオンを訪 問し,戦略部部長,戦略部マネージャー,戦略部・戦略企画 チームの方よりお話をうかがった。 11)2009 年 11 月 27 日 13:30 ∼ 15:00,セブン&アイ HD を 淺田・塘・頼が訪問し,経営企画部・海外企画部シニアオフィ サー・取締役執行役員,および,取締役兼 CEO・常務執行役 員にヒアリングした。 12)園田(2007,19)によれば,シェアードサービスの対象と する業務としては,経理・人事・総務などの間接業務と共に, 物流・購買など直接業務と間接業務の境界に位置づけられる 業務も含む。イオントップバリュ㈱は PB であるトップバ リュの製造メーカーの製品開発(広義での生産)にまで関与 する点では通常のシェアードサービス会社とは異なるが, PB に関わる企業グループ内で行われている間接業務を統括 している点で,ここではシェアードサービス会社の一種とし て位置づけている。 13)2009 年 11 月 27 日(前掲) 14)外部投資家と企業経営者との関係は,伝統的エージェン シー問題とされ,企業ガバナンス問題とされる,その一方で, 経営者と事業部門長との間のエージェンシー関係の重要性か ら,これは事業組織のガバナンス問題として捉えられている (青木・宮島.2011.246)。
Analysis of the Management Control System in Holding Companies : Its Integrative Functions in Corporate Governance
Makoto Yori(Professor of Hyogo Prefectural University) Takayuki Asada(Professor of Ritsumeikan University) Makoto Tomo(Professor of Seijo University)
Abstract : Significant numbers of companies have failed to improve their performance after
transforming into holding company systems. One of its possible reasons is that the holding company does not exert its management control over its subsidiaries strongly enough to restrict their autonomies that may lead to the directions deviated from the holding company’s aim. In this article, based on case studies, we propose how the holding company can reinforce its integrative functions to balance against the decentralization. Our examination of corporate groups in pure holding company systems indicates that a majority of these groups are either groups whose subsidiaries’ business is so
diversified that their individual decision-makings are more efficient for performance, groups that need to restructure their organizations through M&A etc., or global corporates whose businesses are divided by area/state. The pure holding company of such a corporate group should require a management control system that allows the holding company to bring the corporate resources, such as personnel, materiel, capital, and information, under its own control as needed. Case studies of Aeon Co. Ltd. and Seven & I Holdings indicate that an excess decentralization of the corporate governance would possibly have a negative impact on their performances. We discuss several aspects of the management strategies that could reduce those harmful effects.