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ブロック分解台を用いたケルダール法による大豆中の粗蛋白質の定量

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(1)

一36一 食 物 学 会 誌 ・第38号

ノ ー

プ ロ ツ ク 分 解 台 を 用 い た ケ ル ダ ー ル 法 に よ る

大 豆 中 の粗 蛋 白質 の 定 量

Kjeldahl Determination

of Soybean Protein,

Using a Block Digestor

Keiko Kushioka 1883年,Kjeldahlは,濃 硫 酸 の み で 穀 類 を 加 熱 し,穀 類 中 の 蛋 白質 を定 量 す る方 法 を 考 案 した 。 この 方 法 は, そ の後,色 々 な食 品 に応 用 さ れ,試 料 の完 全 な 分 解 お よ び 分 解 時 間 の 短 縮,蛋 白質 中 の窒 素 の定 量 的 なNH4+ へ の変 換,NH3の 遊 離 定 量 な ど に つ いて,接 触 剤 を は じめ 数 多 くの 改 良 が 加 え られ た 。 これ らの 変 遷 は, Bradstreet)), Kirke)な ど の 総 説 に詳 し く述 べ られ て い る 。 現 在 に お い て も,ケ ル ダ ー ル 法 は,食 品 中 の 粗 蛋 白質 定 量 の 中心 的 な 位 置を 占 め て い る が,基 本 的 に は, 1900年 代 初 期 の方 法 とな ん らか わ りが な い 。 食 品 中 の 蛋 白質 含 量 を 求 め る に は,窒 素 を 定 量 し,そ の 値 に窒 素 係 数 を 乗 じる 。 窒 素 係 数 は,6.25で 蛋 白質 の 構 成 ア ミノ酸 に よ り多 少 変 動 す る3)。 ケ ル ダ ー ル 法 は,周 知 の よ う に原 理 的 に は, (i>蛋 白質 中の窒素 騰 意舞機 塩 類一NH4+ (分 解) (ii)NH4+十 強 ア ル カ リ ー→NH3遊 離(蒸 留) qiD NH3(定 量) の 三 過 程 か らな り,正 確 な 窒 素 量 を 得 る に は ま ず(i)の 操 作 で,蛋 白質 中 の 窒 素 が 完 全 にNH4+の 形 に分 解 さ れ な け れ ば な らな い。 こ の 過 程 は,濃 硫 酸 の 量,濃 硫 酸 と無 機 塩 類 の 比,触 媒,酸 化 剤,還 元 剤,分 解 温 度, 分 解 時 間,装 置 な ど数 多 くの 要 因 に よ って 影 響 さ れ る 。 本 学 の 食 品化 学 実 験 に お い て は,今 年 度 よ り温 度 制 御 付 金 属 ブ ロ ッ ク分 解 装 置(以 下TCMD装 置 と略 す) 京都 女子大 学食物学 科食品学第2研 究室(食 品化 学) を,大 豆 中 の蛋 白 質 を 定 量 す る学 生 実 験 に,従 来 の 直 火 式 ケ ル ダ ー ル分 解 装 置 に か わ って 導 入 した 。 そ こで, こ の装 置 を 使 用 す る時 の分 解 条 件 を確 立 す る た め に, 色 々 な条 件 下 で 分 解 を 行 い,一 応 の結 論 を 得 た ので 報 告 す る。 実 験 に 先 立 ち,現 在,ケ ル ダ ー ル法 実 施 に 際 し,一 般 に用 い られ て い る試 薬 の 量 お よ び そ の 作 用 につ い て 比 較 検 討 を 行 った 。 試 薬 量 の 比 較 ケ ル ダ ー ル 法 に よ る食 品 中 の蛋 白 質 の分 解 は,金 属 あ る い は金 属 化 合 物 と無 機 塩 の存 在 下,濃 硫 酸 を 加 熱 沸 騰 させ て 行 わ れ る。 こ の過 程 は, 先 に も述 べ た よ う に色 々な 要 因 に よ って 左 右 さ れ る が, こ こで は,分 解 試 薬 量 に つ い て 検 討 す る 。 表1に は,AOACマ ク ロ 法 と 本 報 告 の 標 準 条 件,お よ び い くつ か の 実 験 書 に 記載 の 条 件 を,大 豆 粉 末19を 分 解 す る の に必 要 な 各 試 薬 の 量(換 算 値)と 共 に 記 した 。 表1に 記 され た 試 薬 の 種 類 を 比 べ る と,触 媒 に金 属 水 銀 あ るい は水 銀 化 合 物 を 用 い て い るの は,AOACで あ り,満 田 ・千 葉 は,水 銀 化合 物 と硫 酸 銅 を,そ の他 は 硫 酸 銅 だ けを 用 い て い る 。分 解 時 間 が 極 端 に 短 縮 され る 自 動 分 析 機 に よ る方 法 と,TCMD装 置使 用 の 場合 は, 酸 化 剤(H202)と 濃 硫 酸 が 併 用 され る。 ま た,無 機 塩 類 は,す べ て 硫 酸 カ リ ウム を用 い て い る。 各 試 薬 の 使 用 量 を 比 べ る と,非 常 に 大 きな違 い が あ る こ とが 注 目 され る 。比 較 しや す い よ う に 記 した 換 算 値 に っ い て 検 討 す る と,標 準 条 件,永 原 ・岩 尾 と稲

(2)

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1 :文献記載の試料および試薬量 本〉例えば,

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とは,試料が窒素として,

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g

含んでいることを示す II :

1

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の窒素を含むものとして計算した大豆試料

1

9

につき必要な各試薬の換算値 較 比

量 薬 試 表

1

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5

1

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8

神 置ω 尾6)

本学の従来の方法

TCMD 満 田 ・ 千 葉5) (標準条件) (1)4a) 装 原・岩 立8) AOAC 方え じコ h司

(3)

- 3

8

ー 垣・岡崎の三方法は,他に比べ

3

...,

3

3

倍の試薬を用い ている。 AOACでは,試料量を 1",,--,3倍の範囲に,ま た,神立も試料量を

1

",,--,

7

倍の範囲に変化させている が,各試薬は同量用い,試薬量と分解される試料量を 比例的には関連づけていなし1。分解液の一部を定量す る方法においては,試薬量はすべて少なくして後述の 障害を避けている乙とが注目される。 各試薬の量と使用量一一一濃硫酸は,高温で脱水およ び酸化作用を行い,有機物をC,CO2, H201と分解する。 との時,アミノ窒素,アミド窒素,プリン塩基などの 窒素は,N H4+に変化する。分解時における濃硫酸の必 要量については, Bradstreetが詳細に検討している1J)。 硫酸カリウムあるいはその他の分解促進剤と反応する 量,分解時の蒸発量などはすべての場合に共通するの で,Bradstreetに従って乙れらの量を計算すると,本年 度の本学の分解条件下では,約

2

.

4

m

l

が消費される。 一方,炭水化物,蛋白質,脂肪の各

19

が分解される には,濃硫酸は,それぞれ

7

.3

g,

9

.

0

g,

1

7

.

8

g必要で あると,Selfにより報告されている12)。四訂日本食品成 分表の大豆の主要成分分析値,糖と繊維

28.2%

,蛋白 質

35.3%

,脂肪

19.0%

から大豆

19

を分解するのに必 要な濃硫酸の量を求めると,約

4

.

7

m

l

になった。多量 の濃硫酸は,分解を効率良く行い,消泡作用にも役立 つという報告13)もあるが,大豆

19

に対して,最低約

7ml

が必要というζとになる。 無機塩類は,硫酸の沸点を高め,分解過程を促進さ せるために用いられlJd4一山,最も効果的な塩として, 硫酸カリウムが広く使われている。酸に対する無機塩 の割合が高くなると,分解液の突沸や固化がおこり, 窒素含量の測定値が小さくなるlJd4d9)。また,分解液 が硫酸水素カリウムの組成に近づくととも,測定値が 小さくなるlJtl6)原因につながるので,酸に対する塩の 割合は考慮されなければならない。 Nelsonらは,硫酸

1ml

に対し最も望ましい硫酸カリウムの量は,

0

.

3

3

",,--,

0

.

5

gと報告している

ω

。 触媒としては,金属水銀および水銀化合物が,分解 時間を短縮し,かつ,最も精度の高い結果を与えるた め,これまで広く利用されてきた。しかし,その強い 毒性による環境汚染のため,他の金属および金属化合 物,すなわち, CUS04, Se, SeOCb, Ti02,あるいは,

乙れらの組み合わされたものが利用されている。これ らの触媒の作用は,明らかでなく,使用量についても 色々と検討されている2

最後に,酸化剤の作用であるが,ケノレダールの分解 系においては,極端に強い酸化剤(KMn04,HCl04な 食物学会誌・第

3

8

号 ど)が使用されると,生成したNH3までも酸化される。 H202は,従来,酸化剤として広く使われ,分解を促進 するといわれてきたカ113,2P,最近では, H202添加によ る激しい発泡のため,試料の損失を伴うなど,その効 果については否定的である 14,26.27)

結果と考案

1

.

各分解条件下における結果の比較 本報告の標準条件のほか,従来本学で実施していた 条件と, TCMD装置使用条件下での実験結果を比較す る。 標準条件には, ~諸国・千葉によるセミミクロ法を選 んだが,この方法は,標準方法として認められている AOACケノレダーノレマクロ法と比べて,操作時間や試薬 が節約され, しかも正確度は劣らないと報告されてい る5)

(1) 標準条件 文 献5)記載の方法に従い,大豆粉末に接触剤と濃硫 酸を加え,加熱沸騰させると,

5

0

分後に分解液は淡緑 色になった。さらに続けて1時間加熱し分解を完了さ せた。その後,所定の処理をし常法により定量した結 果は,次の通りである。窒素係数は,

5

.

7

1

を用いた。 回

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1 1 2

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3

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I平均 蛋白質含量(%) I

3

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3

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54¥ 35.2

(2) 本学で従来実施していた条件 表1に記載の条件により,試料および、試薬を分解フ ラスコに入れ, 8時間加熱沸騰させた。分解液は,水 で希釈後,その一部を蒸留し定量した。結果は,次の 通りである。 回

t

l

J

1

7

l

平均 (3)

TCMD

装置使用 表1に記載の試料および試薬を分解フラスコに入れ, 本装置を用いて分解を行った。但し,酸化剤(H202)は, 後述の理由により,使用しなかった。分解液は,試料 1, 2ともに黄緑色であった。その後の操作は, (2) に準じた。結果は,次の通りである。

(4)

試 料 番 号 1 2 一一一寸一一一:--,

-

-

-

-

1

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I

34. 3

(

4

)

操作および結果の検討 i) 実験操作の比較 標準条件および本学の従来の条件においては,どち らも直火式ケノレダーノレの分解装置を用いた。乙の場合, 分解時の硫酸の飛散による窒素含量の誤差をなくすた め,必要以上の強い加熱を避けたが,周辺への熱の伝 達は激しく,コンクリートブロックや石綿板により, 実験台を保護する必要があった。加熱初期には,発泡 するので絶えず分解フラスコを回転させ,そして,分 解状況に応じて,加熱の仕方を調節するなどの注意が 必要であった。 学生実験では, 20班同時に行うので,分解台 (6本 組)は, 4台が必要であり,発生するS02の排気も十 分には行えなかった。また,濃硫酸の取り扱い,加熱 の強さ,発泡など,指導する側では目を離すことがで きない。分解時間も, 8時間を要した。 標準条件では,試料の量が少ないので,約2時間で 分解は完了した。触媒に加えたHgS04が,分解時間を 短縮したとも考えられるが,確かではない。 次に ,TCMD装置は, 20個の試料を同時に一台で分 解でき, しかも,小型であらかじめ4200 Cに温度を設 定しておけば,約40分という短時間で分解は完了する。 分解時の発泡および加熱の強さに気を付ける必要もな く,非常に順調に進行する。 蒸留については,標準条件の場合,分解フラスコを そのまま使用するので,パノレナスの装置を使用する時 に比べ,洗浄操作がなく円滑に進められた。 ii) 実験結果の比較 前述のように,各条件下で得られた蛋白質含量測定 値は,標準条件では, 35.2%,本学の従来の方法では, 34.5%, TCMD装置を用いた方法では, 34.3~ちであっ た。四訂日本食品成分表の国産全粒大互の蛋白質含量 の35.3%は,硫酸銅と硫酸カリウムを接触剤として, 標準的なマクロ改良ケノレダ-)レ法で定量された値であ る。食品成分表の値と,実験で得た結果を,直ちに, 比較するととはできないが,両者の値が,ほぼ等しい ととから,今回,使用した大豆は,国産の平均的なも のであると判断できる。 各条件下での実験結果を比べると,標準条件のセミ ミクロ法が,最も高い値を示している。乙の条件では, 触媒には,最も効率が良いといわれているHgS04を加 え,蒸留時には,分解フラスコをそのまま用いている。 本学の従来の方法と ,TCMD装置を用いた方法での結 果はほぼ等しく,共にやや低い値を示している。 TCMD装置付属の説明書10)には,標準操作として H202を添加しているので,次に,H20Zの効果について 検討した。

2

.

分解に及ぼすHZ02の効果 TCMD装置を用いて, H202および、接触剤

(

K

2S049: CUS04

5H20 1)が,試料の分解にいかなる影響を及 ぼすかを調べるため,学生実験において, 20班を6組 に分け, 4200 Cで40分間異なる条件下で,大豆粉末19 を分解させた。結果ば,表

2

~ζ 記す。濃硫酸は,すべ て10ml用いた。 H20zは,加熱する前に,試料,接触剤,および濃硫 酸が入っている分解フラスコに加えられるが,添加と 同時に,激しい反応と発熱を伴い危険である。そ乙で, H202は,指導者の監視のもと,少量づっ反応状況を みながら学生に加えさせたが,添加を要した13斑すべ てが入れ終わるのに, 1時間30分以上もかかった。分 解時間より前処理に,かなりの時聞を要した。 接触剤が3gの場合,H20Zの添加量がふえるに従って, 蛋白質含量測定値も増加した。 HzOzは,分解時間を短 縮することがわかる。これは,各分解液の色からも判 断できる。 一方,5gの接触剤を用いた場合にも,H20Zは同様の 作用をすると思われるが,乙の場合には,接触剤の増 加に伴う効果の方が大きく ,H202の添加量を4mlから 8ml にふやしても影響しなかった。ただ, 8ml添加し た方が,データにばらつきがなく,分解は完全である。 私達が用いた条件下では, HZ02が,分解促進に寄与す ることは明白である。また,接触剤を5g用いた方が, 表

2

分解に及ぼすH2

0

2と接触剤の影響a) 接触剤 IHzOzl 苧 空 質 含 量 ( 町 二 分 解 液 ( g) 1 I ¥(ml) ,U < ) I 1 1 1 2 1 I 2 3 1 4 13 I 4 1平均!:llZ:lSrI

133. 51 34. 01 34. 61 31. 01 33. 3 1褐 色 3 1 4 1 34. 61 34. 41 33. 91 33. 51 34. 1 1黄緑色 34.9iは 8!34. 71 - 1 34. 8 1淡緑色 35. 01 35. 01 34. 31 - 1 34. 8 1黄縁色 5 1 4 1 33. 21 36. 51 36. 21 - 1 35. 3 1緑 色 35. 21 35. 21 35. 21 - 1 35. 2 1淡青色 a)濃硫酸:10ml, 接触剤:K2S04 9: CUS04

5HzO 1 b) 1...4は,学生実験時の測定値を示す。

(5)

- 40ー 一般に蛋白質合量測定値は高くなっており,完全な分 解には,多量の接触剤が必要であることがわかる。 とれらの結果から,精度の高い蛋白質含量測定値が 必要な場合には, TCMD装置では,接触剤 5g,濃硫酸 10mlとH2028mlの存在下,分解すれば良い.しかし, 学生実験においては, H202添加時の危険性,添加に要 する時間など考慮すれば,H202を加えず,接触剤5gと 濃硫酸10mlのみで,十分であると思われる。この条件 でも,分解時聞をもう少し長くすれば,良い結果が得 られるととは,分解液の色から推定できる。

3

.

触媒の効果 H202を用いない場合,触媒の種類が分解にどのよう

な影響を及ぼすかを,HgO, CUS04, Se, CUS04・Ti02

の組み合わせの計4種類について調べた。先の CUS04 を用いた実験では,K2S04 9: CUS04・5H20 1の組成 の接触剤を5g使用した時,良い結果が得られたので, 接触剤は,すべてほぼ5g用いた。まず,それぞれの組 成及び添加した量を,表3!と示す。 約 19を精秤した大豆粉末と,接触期UI,日,

m

, N をそれぞれ別の分解フラスコに入れ,濃硫酸10mlを 加えて,常法通りTCMD装置で分解した。分解液は, 水で希釈後,蒸留し,定量した。結果は,表 4!乙記す。 表4の結果から,乙の条件下でも, HgOが最も効果 的な触媒であるととがわかる。これは,分解液の色か らも推定できたが, Seの場合,分解液を清澄にする効 果が大きいので,分解の程度を色でのみ判断するのは, 危 険 で あ る28,2ヘ続いて,触媒効果は, CUS04, Se, CUS04・Ti02のI}買に減少する。 Ti02を含む触媒は,希

釈時,不溶J性のTi02水和物をつくるため,定容に際し, ろ過の操作が加わり,めんどうであった。測定値が低 いのも,ろ過時lと生ずる誤差に起因しているのかもし 表

3

接触剤の組成および量 十 弁 触 接

K

Z

S

0

4

(g) 題虫 媒 (mg) ) a T ' E A HgO CUS04

5HzO 5 4.5 5 5 233 500 5 150 150 IIb)

m

b) Nb) Se CUS04

5HzO Ti02 a) AOACマクロケノレダーノレ法に準じている。 b) 日本ゼネラノレ株式会社製ケノレダーノレ用分解促 進剤に準じている。 II-ケノレタプC

m-

ケノレタブS N-ケノレタブCT 食物学会誌・第38号 表

4

触媒の種類による蛋白質含量測定値 │ 実 験 1 実 験 2 触 媒 分の解色液

p)

I 2 a) 1 a) I 2 a) 平均 HgO 無 色 34. 7 i 35. 3 : 34. 7 34.9 34.9 CUS04 黄緑色 34.4 34.4 34.3 34. 2 34.3 Se 黄 色 33.9 34.0 34.3 34.0 34.1 CUS04・ 淡黄色 33. 7 34.0 33.6 33.4 33.7 Ti02 a)分解後の滴定をそれぞれの実験で2回行った。 れない。

触媒として用いる,HgO,CUS04' Se, Ti02は,いず れも毒性をもつが,特に,水銀の毒性は強く,水俣病 にみられるような,大きな社会問題にさえなった。精 度の高い結果が必要な場合には,HgOの使用が望まし いが,環境汚染を考慮して,それにかわる触媒の研究 は,最近,特に盛んである22-24,叫3D。 学生実験では,毒性の少ないCUS04の使用で十分で あると思われる。

4

.

結 論 前述のように本学の従来の方法と,TCMD装置を用 いた方法による蛋白質合量測定値は,ほぼ等しかった。 しかし,前者の条件では,非常に分解時間が長くなり, また,分解時における発泡,加熱の仕方などの注意が 必要であった。 TCMD装置の使用によって,これらの 問題点が解決されており,極めて有益である。 この装置を学生実験に用いて,大立を分解する時は, 「大豆粉末 1邑に対し,接触剤 (KZS049: CUS04・ 5HzO 1) 5昌と濃硫酸 10mlを加えて, 4200 Cで40分間 分解すれば良い。」但し,精度の高い結呆が必要な場 合には,HzOzを加えたり,あるいは,毒性は強いが金 属水銀または,水銀化合物を添加したり,分解時間を 多少延長するなどの考慮が必要となる。 実 験 試料は,市販の昭和56年産,丹波産の鶴の子大立を, Tecator社製の高速粉砕機サイクロテック (16メッシ ュ)によって粉末にして用いた。濃硫酸,硫酸カリウ ム,各種触媒などは,市販品 (1級あるいは特級〉を 使用した。 HzOz(特級)は,三徳化学工業株式会社か ら購入し用いた。 標 準 条 件 文献

(6)

して約 4mgを含有する)を精秤し,接触剤 (HgS04 3: CUS04

5H20 4: K2S04 40) 1.5g,濃硫酸 5mlとと もに分解フラスコに入れ,直火式ケノレダ-}レ分解台を 用いて,約2時間加熱した。放冷後,無機塩類が析出 しないうちに水で肴釈し, 30;;ぢー水酸化ナトリウム, 硫化カリウムー水酸化ナトリウム溶液,硫酸銅を分解 フラスコに順次加え,そのまま窒素蒸留装置(マクロ〉 に接続して, N H3を遊離させ,常法により定量した。 本学で従来用いていた条件 条件は,表1に記載の通りで,試料および試薬を分 解フラスコに入れ,直火式ケノレ夕、、ーノレ分解台を用いて, 8時間加熱沸騰させた。分解液は,100 mlに水で定容 後,その一部をノ"!)レナスの装置を用いて蒸留し,常法 通り定量した。

TCMD

装置使用の条件 装置は, Tecator社製, 1015型 DigestionSystem 20 を用いた。一般分解条件は,表1に記載の条件を設定 し,試料および試薬を分解フラスコに入れ, 4200 Cで 40分間分解を行った。但し,酸化剤(H

2

0

2

)

は,使用し なかった。分解液のその後の操作は,上記,本学で従 来用いていた条件に準じた。 H202添加の効果を調べた実験では,表 2に記載した 試料および試薬を分解フラスコに入れ,加熱する前に, 4mlまたは 8mlの H202を,少量ずつ加えた。 また,触媒の効果の検討では,

H

2

02

を添加せず接触 剤を除いては,一般分析条件を用いた。この時の接触 剤は, HgO, CUS04, Se, CUS04・Ti02の組み合わせの

4種類を用いたが,触媒の組成及び量は,表3に記し た。 本研究にあたり,多大な御指導を賜わりました本学 家政学部谷本岩夫教授に深く感謝いたします。 参考文献および注 1)R.B. Bradstreet, Chem. Rev., 27, 331, (1940). 2) P.L. Kirk,“The Chemical Determination of Proteins

"

in“Advances in Protein Chemistry

"

ed by M.L. Anson and

J

.

T. EdsaU, Academic Press, N ew York (1947,) vol 3, p. 139.

3)医歯薬出版株式会社編,“四訂 日本食品成分表"

医歯薬出版株式会社 (1981)p. 14.

4) (a) W. Horwitz, ed.,“Official methods of Anal -ysis of the Association of

o

ffi cial Analytical Chemists" 13th edition

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参照

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