林業経営の物価変動会計
1き関す る研究
――「収支計算法」の検討 ――
栗村哲象
*昭和53年8月31日受付
Studies on Forestry AccOunting in Price Level Changes
―
Investigation of Earning and Outlay Calculation Method―
Tetsuzo KURIMURA
The results obtained by this investigation on ばEarning and Outlay Calculation MOthOd" (麒 Geldmよ
ssig bestinlmte Rechnung" based on
【tEinnahmen und
Ausgabenrechnung")are as foHows:l This accounting method is a very peculiar and non‐ generalized accounting method to be applied Only to the sustained yield forest management of strict sirnple reproduction ln this methOd)all accrued costs in a fixed period (One year)are considered as periodic costs,even if in the case Of expansive affOrestation carried out by conversion of tree species, or, identicaHy, any cost of refOrestation and tending costs are not considered as capital expenditure And all reali2ed revenues in the period are considered as periOdic revenue, even if in the case Of final cutting in a sma‖ er
quantity of v01ume than standard(prearranged)quantity Therefore,correct prOfit in forest management can not be calculated except in the case of strict simple reproduction
2 Generalized fOrstry accounting method ought to be in accordance n/ith the principle of rnatching cost MIith revenue,especiaHy lnatching as cost‐accounting.That is,ali cOsts of reforestation and tending costs Ought to be dealt M′ ith as capital expenditure_Only by this accOunting method,can cOrrect profit be calculated either in expanded reproduction Or in reproduction on a regressive scale in forest
management
緒言 物価 の一方的 な上昇の下 における林 業生産の超長期性 は立木資産会計 (林業会計
)を
して物価変動会計 の導入 を殊の他必要 な らしめ ることは明 らかである。 物価変動会計 とは一般に貨幣価値変動会計 とも言 われ るよ うに,或
一定時点における貨幣購買力尺度でもって 取得原価数値 を統一的に修正せんとする会計であり,そ
れ故それは購買力変動会計 とも言われ, また取得原価数 値 を一般物価水準変動分だけ,そ の変動指数 によって修 ※鳥取大学農学部林学科林業経済学研究室 物 ,力η¢ガ げ 島 熔 ナ鶴 脆 ひ夕rryげ 4g7ん″ 蕨 宅 駒 チん 万 」 ″ケυι容 わ林業経営の物価変動会計 に関す る研究 正す るところか ら
,一
般物価水準変動会計 とも言 われ る。 この ことから,物
価 変動会計は伝統的 な取 得原価主義会 計 に対 して修正原価主義会計で あるとも言 われ る。 このよ うな貨幣の一般購 買 力と しての貨幣価値 の変動 を取扱 う従来の物価変動会計 に対 して,非
貨幣資産 につ いて個別物価指数 を用いて個別物価 の変動分の修正 を行 わんとす る会計 もまた,物
価変動会計の1つである。 こ のよ うに一般企業会計 において物価変動の影響 を除去 し て真正 の利益 を算出す るための会計方法 が鋭意追求 されつつあるど
.動本来的に物価変動を考慮せぎるを得ない運
命にある林業会計において
,物
イ
面変動の影響を回避する
ことの可能性 が期待 され ると見 られ る1つの方法 として, ここ1こ「収支計算法」 と名付 けるべ き会計方 法 を見出す ことが出来 ると思 う。ここに「収支計算法」と言 うのは Ernst Walも,Erich Kosiolな どの となえる “貨幣計算 を主体 とす る収支計算 的思考"に影響 を受 けてい ると見 られ る林 業会計の方法 論である。 その方法 にあってはすべての費用 を期 間費用 とし
,実
現せ る期間収益 に対応せ しめて期 間利益 を算 出 せんとす るのであるか ら,一
見 した限 りでは物価 変動の 影響 を受けることの全 くない方法で あ り好 ま しい会計 で あると言 うことが出来 そ うに見 えるのである。 この よ うな方法 が林業経営 において問題 な く “一般的 に"成
立す るな らば,事
は極 めて簡単 であるが, しか し, “収支計算 としての会計構造"に
つ いて も各種 の問題点があることも従来から指摘されているξ
'0そのような問
題点をどのように解消せんとするのか極めて注目すべき
ものがあると言うことが出来る。
さて,我
国では林業会計 の研究は ご く最近 まで世界的 にみて も極 めて盛 んであった と言 うことが出来 る。特 に 昭和30年代後半 よ り昭和50年に至 る間 にあたかも櫛の歯 を引 くよ うに次 々 と論攻 が発表 され,それぞれ多 くの論 者 によって林業会計の諸方法 が提案 されたのである。昭 和50年代 に入 った現在では研究成果の出現 は一段落つ い たかの如 き状況 であるが,こ
れ ら一連 の諸論攻 の最後 を 飾 ることになったのが,本
稿 で研究の対象 とせ ん とす る ところのいわtゴ「収支計算法」 とも名付 け るべ き論攻 ° である。 その後, この説はあたかも一般 に承認 され,見
方 によっては通説の1つとして成立 した と見 られ るに至 ったとも解釈 され るべ き現象 も確 かに現 れてい る。 しか しなが ら果た してその理論構成 は充分 にな されているで あろ うか。筆者の見 るところ,残
念 なが らその詳細 な検 討はいまだ充分 には行 われていない とさえ思 われるので ある。 今 まで に提案 された諸方法 を比較 し,それぞれの特色・ 長短 を明 らかにす ることは今後 なされ るべ き課題 であろ う。 が,そのため に先ず本稿 では この通説 としての (特 定個人ので な く)「
収支計算法」 の もつ論理性 を仔細 に 検討 し,果
た して同法の 目指 したよ うに「従来の林業損 益計算論 の再点検 の上 に異 なる林業損益計算論への再編 の原理 が提 言 された もの」 となっているのか どうか,そ の原理 が「従来の 多 くの林業損益計算論 に見 られた森林 経理学 との非論理的 な融合 を整序 した もの」 となってい るか ど うか を検討 す ることが必要 である。 このことによ って何 よ りも今後の林業会計学研究 に資す ることをば本 稿 は 目的 とす るもの に他 な らないのである。 よ り正 しい合理 的 な林業会計理論確立のために,本
稿 におけ る「収 支計算法」の理解 とその検討の結果 が果た して当 を得 た ものか ど うかにつ き,諸
賢の忌悼 な き御批 判 を賜 るな らば真 に幸甚である。 考察の対象 と方法 まず初めに本稿 における考察の対象 となるべ きは「収 支計算法」 とも言 うべ き林業会計の方法論であ り,考
察 の方法 と しては主 として理論的方法 に重 きをお き応用的 も しくは実際的面 については最小 限 にとどめ ることとす る。 さて,「
J又支計算法」 の骨子 を初めに極 めて簡単 に 要約 してみれば次の通 りである。 まず基本的視点 と しては,「収支計算法」 にあっては, 従来の林業会計論 の 多 くは物量的 な森林経理 (保続概 念) を基軸 と して構成 されているとし,またそれ故物量 それ 自体 の維持 が基本命題 となってお り,物
量の なかに貨幣 が埋没 されてい る体系 であると見 る。 そ してそこでは林 業損益計算論 と森林経理学 との非論理的 な融合 が見 られ るが故 に,物
量 と貨幣 との関連 を明確 に峻別 し,林
業損 益 計算 と森林経理 との論理的 な分離 によって貨幣概 念 を 基礎 とした林 業損益計算原理 を示す必要 があるとす るも のである。 次 に維持 すべ き資本 については,従
来の多 くの林業損 益計算 においては維持 すべ き資本の概 念 として物 と して の実体資本 が措定 されているとし,そこに矛盾 があるが 故 にそれは否定 され るべ きであ り,新
たに貨幣資本 とし ての実体 資本 を措定す るべ きとす る (ただ しその具体 的 な詳細 は説明 されていない)。 次 に収益 の認識 について。収益 の認識基準 としては販 売基準 による実現主義 を適用すべ きであるとした。す な わち従来の林業会計のほ とん どの諸論の如 く成長価 を期 間収 益 として計上す ることは しないのである。 そ してただ売上 げた額だけ を期間収益 に計上せん とす るので ある。 費用の認識 につ いて。費用の認識基準 として発生主義 を適用す る。す なわち造林 費や保育費用等はすべて期間 費 用 とす る。 収益 と費用の対応関係 については
,収
益 と費用 とは個 別的・直接的 な対応,す
なわち価値の創造 と消滅 との対 応 をなすのではな く,期
間的対応 をのみ なす もの と して いる。換言すれば収益 と費用 との価値関係 に基づ く質的 な対応 を否定 し,相
互 に無縁独立の収益の流 れ と費用 の 流 れ とが単 に期間概 念 を媒体 として機械的 に結節す るも の としている。 それはいわゆ る対応慨念ではな く単 な る 対照或 は対比 とい う概 念だ としている。 林業損益計算構造 につ いて。林業損益計算の構造 は収 支計算 を母体 とした貨幣計算 と規定 した。 以上 が「収支計算法」 として展開 されているところの 林業損益計算法の極 めて簡単 な要約 である。 かかる方法 は果た して新たに理論的 にも確立 した もの とす ることが 出来,また実際的 にも難 な く通用 し得 るものであろ うか。 この方法 は如何 なる問題点 をも内包 していないのであ ろ うか。次 に詳細 に検討 してみたいと考 える。 考察 (1)問題点
I一
収益 と費用 との対応関係 につ いて 一 「収支計算法」 の特色 (柱)の
1つとして林業経営 に おける収益 と費用 とは生産物 の生産 (造林)と販売 (伐 採)の
個別的直接的対応す なわち,収
益 と費用 との価値 関係 に基づ く質的 な関連 とこれに基づ く量的 な関連 を否 定 した と言 う点 があげ られ る。 この点は一般 にいわれ る費用収益対応の原則 におけ る 2つの対応関係す なわち個別的対応 (原価計算的対応, プロ ダク ト的対応)と期間的対応 (財務会計的対応, ピ リオ ッ ド的対応)の
うち,「
収支計算法」 にあっては前 者の対応の存在 を否定 し,す
べての費用 についてもっぱ ら後者の対応関係 をのみ認 め ることを意味す るであろ う。 一般論 か らすればこの原貝Uにおけ る対応関係 はこの よ う に一応2つに分 け られてい るけれ ども, しか し両者は二 者択―の関係 にあるのではない。 と言 うのは例 えば収益・ 費用の主体 をなす ところの売上高 と売上原価 の対応 は個 別的対応関係の一種 である°とされてお り,こ
の関係 は 期間的対応関係 の中に繰 り込 まれているか らで ある。す なわち両者 は密接不離の関係 にあるのである。 それ故,一
般 に「 費用収益の対応は期間的対応 と見 るのが本質的である
f)とされながら
,「
原価配分の原則に
よって決定 された期間費用 は一期間の収益 を生 み出すた めに行 われた企業の努 力 を示 す ものであ り,企
業が生み 出 した成果 としての期間収益 に対応 され, こ うした費用 と収益 との期間的対応 によって企業の経営成果 が正 当に 確定 されることになる。 ここに費用収益対応 の原則 の重 要性 が認 め られ るf)と してい る。す なわち,期
間収益 た る売上高に対す る期間費用た る売上原価 につ いてみ ると, その売上高 とは無関連の もの と しての売上原価 が期間費 用 となるのではな く,その売上高 を生み出す基 となった 売上原価 が期間費用 となるのである。 これは正 に期間的 対応 に組 み込 まれた個別的女寸応 に他 な らない。 か くて個 別的対応関係 と期間的対応関係 は密接不離 な関係 にある ことは明白であ る。 それにもかかわ らず「J又支計算法」 にあってはこの通 説 に反 して「おのおの無縁独立 な収益の流 れ と費用の流 れとが,単
に期間概 念 を媒体 と して機械的 に結節す るも ので,収
益 と費用 との価値関係 に基づ く質的 な対応 が否 定 された ことを意味 す るf)もの としている。 これは一般 の費用収益対応の原則の通常の解釈 でない ことは明 らか である。一般 に期 間的 な収益 費用の対応 と言 われるもの は,「
価値概 念 を中心 と した価値の創造 と消滅 との対応 にもとずいているJの
であって,「
収支計算法」の如 く 「期間帰属 を課せ られた収益 と費用 とがその期間内 にお いて,それぞれ無縁独立 の系統の もの と して存 在 し,そ れぞれ独 自の計算基準 に基 づいて相互 に関連 な く把握 さ れるf)と言 うものでは決 して ないのである。 林業損益計算 においては何 故 この よ うなそれぞれ無縁 独立の収益 と費用の対応 か ら真正 の利益 が算出出来 るの かが説明 されなければな らない。 それは「収支計算法」 の新 たな解釈 もしくは理論構 成だ として も,こ
の点 につ いて充分説得 力を持つ ものでなければならず,そ こには 論理的矛盾 が見出 されない ものでなければな らないであ ろ う。 この ことにつ いては 多少の重複 をいとわず次 につ づいて検討 したいと考 える。 すでに見たよ うに,林
業経営 (立木生産経営)の
1会 計期間 におけ る収益 (期間収益)に
は1会計期 間におい て売上 げ られた立木の販売高 (実現収益)と,未
実現収 益 としての1会計期間 におけ る未販売立木の成長価 (増 価)と があるが,財
務会計の対象 となるのは前者で ある。 一方 において林業経営 の費用 には1会計期間 に売上 げ られた立木の育成原価 (すなわ ち立木の売上原価 であ り, 期間費用 となる)と,立
木成長価 の原因 となった (献貢 した)と考 えられ る1会計期 間当た りの育成原価 の費用 化部分 とがあるが,財
務会計の対象 となるのは前者 であ る。さて,この よ うな財務会計の対象 となる期 間収益 とそ の期 間費用 とか ら財務会計上の期間利益 が算出 される。 この場合は費用 と収益 が期間的 に対応関係 にあると一般 に言 われるのである。 また上の場合
,立
木育成原価 は立木販売高 と言 う収益 を生み出すために直接貢献 したもの としての費消価値 と しての費用で あ り,原
価 と収益 が因果の関係 にある。 こ の関係は立木 と言 う生産物 を媒介 とす る原価 計算的対応 もしくは個別的対応の関係 と言 われ る。従 って この場合 は期間的対応 と個別的対応 が完全 に合致 していることに なる。 ところが,期
間費用の中 に含め られる費用 には, 売上 げ られた立木の育成原価 の他 に,簡
単 には その原価 に配賦 出来 ないよ うな費用 (例えば一般 に言 われ る中性 費用 に属す る費用 など)が
あると,期
間的対応部分 と個 別的対応部分 とが完全 には一致 しな くなる。つ ま り期間 費用の中にはそこで主要 なウエ イ トを持 つ ところの個別 的対応関係 にあるもの (売上原価)と附随的 なウエ イ ト しか持 たぬ非個別的対応関係 にあるもの (中性費用 な ど) とがあることになる。 この関係 を更 に明確 にす るな らば,実
現 した収益 が期 間的 に限定 され, その期間収益 と個別的対応関係 にある 費用 が選び出 されて,期
間費用の主要部分 を構成 (これ が本来的なものである)し,更
に個別的対応関係 を明確 に把握 しがたい ところの期間的 に限定 された費用 が残余 の期間費用 となるのである。 それ故「収益」 と「費用の主要部分」 との間 には期間 的対応関係 と個別的対応関係 とが密接不可分の もの と し て有 ると言 わねばな らない。 ところがも しも,育
林経営 の会計 において「収支計算法」の よ うにこの個別的対応 関係 を認めず,収
益 の流 れ と費用の流 れとは無縁独立 な 流 れであるとし価値関係 にもとず く質的及量的関連 もな いもの とみな して,期
間的対応関係 によってのみ収益・ 費用 が捕捉 されるとなれば如何 なる結果 となるで あろ う か。 その場合,同
法 では収益 を実現収益 に限定 されてい るか ら,収
益 は一般 の方法 と比較 して不変であるが,費 用は大 いに変 わ り得 る。すなわち,期
間内 に発生 したす べての費用が期間費用 となることになるのであるか ら, た とえば林種転換 を行 い或は造林面積 を拡大 した ときは 不当 に大 きな費用 となって利益 は過4ヽとな り,逆
に,造
林面積 を縮少 した時 は不当に過小の費用 となって利益 は 過大 となる。 これは正 に会計機能の末 だ充分 な らざるこ とを直 さいに意味 す るであろ う。 それでは何故「収 支計算法」はこの よ うな結果 を招来 す る計算法 に甘 んず ることとなったのであろ うか。 その 林業経営 の物価変動会計 に関す る研究 217 原因 としては費用 と収益の対応 における個別的女↓応の理 解 そのものに在ると考 えられるのである。すなわち「収 支計算法」 にあっては,一
定期間における造林作業と保 育作業について,そ の一定期間における「成長量の増大」 に対 して直接的・個別的な対応関係 を否定 し,こ
のこと から直ちに一般的に収益 と費用とは価値概念に基づく対 応や,金
額的な対応 もないと結論ずけられているが,こ
こに問題があると考えられる。たしかに一定期間の造林 作業 (造林費)や
保育作業 (保育費)は
同 じ一定期間中 の成長量 (成長価)と は直接的な関係は有 しないと言 う べ きであるが,そ のことから直ちに期間収益 と期間費用 の個別的対応の関係およびその存在そのものをすべて否 定することは極めて早計である。そもそも「費用収益の 期間的対応や個別的対応」 と言われるものにあっては, 既 に見たように,そ の期間収益なるものは一定期間の生 産額 (成長価)で
なく,一
定期間において実現 した売上 収益 (立木売上高)で
あ り,そ の実体 をなす収穫林本は 数十年の成長量の累積 によるものであって,ま たその費 用はその収益 を生み出すために直接貢献 し費消 された価 値 (当該育成原価=売
上原価)の
累計額 を意味 している のであって,決
して今後将来にわたって育成せんとする 林分 もしくは育成中の他の林分のための■定期間の造林 費や保育費などをもって個別的対応 なき期間的費用 とす るべ きものではないはずである。又「収支計算法」にお ける期間収益なるものの理解 にも問題 があるよ うに見 ら れる。一般の理解 としては「一定期間の収益の大 きさは 当該期間に実現 した収益 を確認することによって決定す るr)ものである。 実現 した収益 とはもとより売上収益のことであって, 生産過程 に発生 した収益ではない。 ここにおける収益の 認識は販売基準 によるのであって決 して生産基準や工事 進行基準 によるのではない。 一定期間 (1会 計期間で 1年 とする)以
上 にわたる生 産期間 (ここでは例 えば 2年 とする)を
要す るところの 林業以外の或 る生産物 についてみると,そ
れが契約 によ って生産 されるもの以外 にあっては,そ
の売上高たる期 間収益は当然その生産期間 (2年)を
通 じて積算 された 生産原価 を売上原価 とす る売上高 とならざるを得 ないの である。更 に生産期間が一定期間 (1年)以
内の一般の 生産物 にあっても,期
首に仕掛品であったものが期間 ( 1年)内
に完成 し売上げられて期間収益 となることも多 く,従
って期間内に生産 が始められて期間内に完成 し売 上げられたもののみが期間収益 となるのではない。同様 に林業経営においても,そ れが保続経営であろうと間断経営 で あろ うと,その期 間収益 とは
,一
定期間 (1年) において生産 されたいわば生長量 にもとず く生長価 では な く,長
期 間 にわたって生産 された林木 (いわば仕掛品) が一定期 間 (1年)に
完成成熟 して収穫 され売上 げ られ 実現 した収益 をのみ意味す るものなのである。 (そ して その売上 られた林本の多年 にわた る育成原価 (修正原価 もしくは再調達原価)が
売上 原価 と言 う費用 となってそ の期 間収益 に直接的・個別的 に対応 す るのである。) 「収支計算法」 はこの よ うに,一
般 に見 られる期 間収 益 の実態 とその概 念 をば さて置 いて,考
察 の過程 におい て期 間収益 をば「J又支計算法」 自 らがその基礎 と した と ころの「販売基準 による収益」 か ら,無
意識 の うちに何 時の間 にか「成長基準 による収益」 に肩 がわ りされて し まったのではないか と思 われる。す なわち,保
続経営 に つい ては その期間収益 を「成長価」 とし,期
間費用 をば 一定期 間 (1年間)に
おけ る各林分の造林費や保育費の 総計 と し,この期間収 益 と期間費用 には,造
林作業 と保 育作業の分析 の結果 か ら,直
接的個別的対応 はない とし (これは当然の ことで この点は正 しいが),ま
た他方 に おいて間断経営 は損益計算理論の対象 にな り得 ない とし て切捨 て,結
局の ところ期間収益 と期間費用 とは直接的 個別的女寸応 な しと し単 なる期間的対 比あるの みと断定 さ れることになって しまったよ うである。 この間の事情 を原文 によって手短 かにフオロー してみ よ う。期 間収益 について は次の よ うに言 われている。「私 は成 長 量 を収 益 として認識す る見解 に対 しては否定的 である。別言すれば伐採 され売上 げ られた もの を収益 と して容認 す る立場 をとる。 この見解 をとるに至 った基本 的 な思考の一つ と して林業損益計算 といえども収支計算 を土台 と した貨幣計算で あると言 うことによるr)とされ, 成長価 でな く実現収益計上 の立場 をとられた (これは筆 者の立場 と同 じである)。 この ことは何回 も明言 されて いる。 一方,期
間費用 については費用収益の対応 に関連 して 次の如 く言 われてい る。 「直接的・個別的対応 といって も,超
期間的 な条件 の もとにおけ るそれではな くて期 間 による限定 を うけたそれで ある」「 ある期間 において実 施 された造林作業,保
育作業 が,当
該期間 における収益 一 成長量 一 とどのよ うな対応関係 にあるか と言 うことが問題となるのであるξ
)「当期において支出せられたる
造林費や保育費は数十年……後における林木収益のため に消費せ られたるものであって当期にID・ける林木収益 と は何等直接の関連性がないと言えるのである」「その結 果は収益 と費用 との直接的個別的な対応の関係 を成立 さ せ る……基礎 的要因の実体 を全 く満 た さない もので ある ことが示 されたのであ る。 とすれば ここで必然的 に先 に 掲 げた2つの前提 は 自滅 す ることになるよ)とされ る。 と ころで先 に掲 げた2つの前提 とは「 その1つは林 業経営 における収益 と費用 とが経営態様 の相違 にもかかわ らず, す なわち,保
続経営 か,間
断経営 か とい う問題 を無 視 し て相互 に個別的・直接的 な対応の関係 におかれているこ と,他
の1つとして林 業経営 における収益 と費用 との対 応 力Ч面値の創造 とそれに関与す る価値の費消 とい う関係におかれていること
r)でぁる。かくして「一定期間にお
ける収益 と費用 との個別的直接的な対応は否定 された。 とすれば,こ
れに代 わり得 る概念として期間的対応 という形態を考えることが出来るよ
】
そして結論として「造林
費の性格 につ いて論ずれば,それは 一 林種転換 の場 合 におけ るものであろ うと,単
なる再造林 の場合 におけ る もの であろ うと 一 収益 に対比 される費用 と して認識 さ れ るのである。 そ してこの よ うな基本的 な性格 をもつ造 林 費 を,立
論の基点 としては じめて,保
続経営 を総体 と して把握 した場合 に,収
益 に対応す る費用 と しての造 林 費の存在 を容認 し得 る」)とされ る。 結局,収
益 は初 めの段階では実現収益 と しなが ら,途
中 か ら未実現収益 と しての成長価 に変 わ り,期
間収益 と しての成長価 と期間費用 としての造林 ・保 育費 との間 に 直接的個別的対応関係 がないこと (これはその通 り)や
, 造林保育費の資本的支出の性格 を否定す る立場 に立 った と言 うこと,並
びに保続経営 を有機的統一体 と観 念 した ことな どによって期 間収益 としての実現収益 た る立木売 上高 とその育成原価 た る期 間費用 としての立木売上原価 との個別的対応関係 まで を無意識の うちに否定 され るこ ととなって しまったよ うである。 しか しなが ら, これは もちろん誤 まった論理 の展開 に過 ぎないもので あると言 わなければな らない。 (2)問題点 Ⅱ ―一 造林費の性格 について 一 造林費 なるものはそもそも収益的支出 なの か或 は資本 的支 出なの かと言 う問題 については,「
収支計算法」 に よれば,結
論 として造林 費は資本的支出 とす ることは出 来 ない と言 うことにあ るよ うである。 その理 由 としては,まず保続経営 において造林 支出 を 資本的支出 と認 め ると,保
続経営 なるもの を有機 的一体 をなす もの と見ず してそれ を構成す る複合的林 分 の単 な る機械的集合 とみ ることになって しま うとい う見方 をと った こと,お
よび一定期 間 における収益 と費用 との間 に は直接的個別的 な対応関係 が認 め られない ことな どが あ げ られてい る。 そ して次 のよ うに言 われてい る。「J又益林業経営の物価変動会計 に関す る研究 の流 れと費用の流 れ とを単 に機械的 に結節す る媒体 とし て期間概念が登場 す るのである。従 って収益 と費用 との 価値関係 に基づ く質的 な関連
,こ
れに基づ く量的 な関連 とい う理解 は解消 され,い
わゆ る文↓応 ではな く,単
なる 対照 あるいは対lヒとい う概念 と して認識 出来 る。 されば この よ うな基本的 な性格 を示す造林費が,収
益 と期間的 な対応 を,す
なわ ち期間概 念 とい う制約 を課せ られた相 互 に関連の ない収益 と単 に対比 され ることによって,貨
幣 としての実体 をもつ利益 が算 出 され るのであるPと し, そ して「造林費の性格 は,資
本的支出 と対比 され る意味 での収益的支出ではないこと,そ して造林 費は,林
種転 換の場合で あろ うと,単
なる再造林の場合 であろ うと,収益に対比される費用として認識されることである
f)と している。 しか しなが らこの よ うな認識 は林業損益計算 に限った として も果た して常 に妥当す るものであるかが吟味 され ねば ならない。 ①「収支計算法」の前提 の1つとして挙 げ られているよ うに,保
続経営 において造林支出 を資本的支出 と見 るな らば,保
続経営 をその構成林分の単 なる機械的集合 と見 ることにな り,保
続経営 を総体 として把握す る見方 に反 す ることになると言 う点 については次の よ うに言 わなけ ればな らない。 一般 の現実の林業経営 においては,そ
れ を構成す る林 分群は果た して総体 と して把握 され るべ き実態す なわち 有機的一体 をなす状態 にあるかと言 うな らば,物
量的 ( 生物的)観
点 においても,また金額的 (価値的)観
点 に おいて もその答 としては まさしく否 と言 うべ きであろ う。 民有林 において も又国有林 にあって さえ場所的 にもまた 林令の構成,林
木蓄積 の構造等 において もまずはすべて の要因 について有機 的一体 をな していると言 えるよ うな ものではない。む しろ各林分は単 なる機械的集合 と見 な ければ ならないであろ う。 これが現実の多 くの林 業経営 の真の姿 であ り,一
応,保
続的経営 と言 われ るものにあ って も決 して例外ではない。有機的構成 をなす保続経営 すなわち法正林 の如 きものは我国では正 に観 念的存在 に 過 ぎない。 この よ うに見 て来 ると,造
林費 を資本的支出 と見 ることは出来 ない とす る根拠 の1つは な くなること となる。 この点 につ いてなお補足す るな らば,林
業経営 は他 の 工企業経営 と比較 してみて もむ しろ,生
産 が場所的 に明 瞭 に規定 され,林
分毎 の造林支出が資本的支出たること の認識 は極 めて容易であるとさえ言 えるのではなかろ う か。 なる,造
林 費 を資本的支出 とすべ きでな く,期
間費用 とすべ きとす るその他 の理 由 としては,野
村進行博士 は 次 の よ うに言 われている。即 ち「造林費は,例
えそれが 林種転換 の造林 で あって も,それは どこまで も費用 (損 費)で
あ り,投
資 と見徹 さるべ きものではない。 とい う のは造林 した ものは,その まま十分成林す るもの とは限 らず,成
林 して林業生産 に役立つ かど うかの見境 いのつ かない もの を資産 として計上……すべ きものではない。 造林地 は成育 して十分 な閉鎖 度 を保 ち,成
林 の見込 が十 分 になってか ら,初
めて資産 に計上 して も決 して遅す ぎ ることはない。]0)と。 かかる見方 に対 しては次の よ うに言 わなければな らな い。造林 して も成林す るか ど うか分 らないのに何故造林 す るのか と反論 しなければな らないであろ う。実際 にお いては,普
通 は成林す る可能性 がある (と言 うよ りは極 めて大 きい)が
故 に造林 す るはずである。 それで もなお 成林 し得 なかった場合は,い
ったん造林資産 (も しくは 育成資産)と
して計上 した額 の中か らそれに該当す る金 額 を損失 に振 替 えることにすればよいのであ り,それで 何 の差支 えもないはずで ある。 その場合,その造林資産 額 に対す る成林 し得 ない額の割合は経験等 によって知 り 得 よ うか ら,一
般 に売掛債権額 に対 して貸倒引当金 が計 上 され ると同様 な経理 を行 うことも可能 であ り,その様 な方法 をとれば造林 費の資本的支出の取扱 いに対す る博 士 の懸念は不要 となろ う。 か くして野村博士の説は容易 に容認 され得 ないであろ う。 なID・ついでなが ら,博
士の 言 われ る「成林 の見込 が十分 になってか ら,資
産 に計上 上す る」方法 とは如何 なる方法 であろ うか。 いつたん既 に過年度 の費用 として落 して しまった金額 をあとか ら数 年 ない し十数年後 にどのよ うな方法 で資産 に計上す るこ とが出来 ると言 うのであろ うか。博士 は「以前 か ら物 の 流 れ を中心 とす る森林経理 か ら価値の流 れ を中心 とす る 森林経理へ の転換 を念顧」)と され,そ
して「林業 は成長 価 を収益 となすべ きことを主張y)してぃ るとすれば なお さらそれは経理 技術的 にみて困難 と言 うべ きであろ う。②
T呆続経営における一定期間に実現・発生する収益と費
用には林業生産技術の観点から見て直接的・個別的な対
応関係 が認 め られないとし,その ことか ら「収支計算法」 にあっては直 ちに相互 に無 関連 な収益 と費用 とを期 間概 念 を媒体 と して対比す ることによって,その差額 をもっ て貨幣 としての実体 をもつ利益 が算出 されると言 う点 に つ いては次 の よ うに言 われなければな らない。 この よ うな計算構造 は会計理論 としては一般性 を欠 く 極 めて特殊 な もので あって,一
般 には論理的 な らざるもの と見 られるで あろ うことは既 にみた ところか ら明 らか であろ う。 しか し,そのよ うな計算構造 による場合 で も, 物価 に変動 がな く完全 に単純再生産 を事 とす る保続経営 に限 ってみるな らば実際上 はほ とん ど支障はな く問題 が 表面化 す ることはないであろ う。 けれ ども単純再生産 を事 とす る保統経営 では伐採 と造 林は長期的 には面積的 に均衡す るとして も短期的 には必 ず しも均衡す るとは限 らないであろ う。す なわち
,再
造 林 の場合 について例 えば或年度の伐採面積10haに対 し造 林 は7 haと 言 う場合 があった と し,次
年度 には同 じ伐採 10haに対 し造林13haとす るなら,上
記の計算構造 の もと では或年度の利益 は大 きく現 れ,次
年度 は小 さく現 れ る と言 うことになる。 これでは利益の期 間比較 を当然不可 能 にす ることになる (収益 と費用 に直接的・個別的対応 関係 を認 めるべ きとす る立場 では当然両年度等 しい利益 となる)。 この ことは また利益操作の原因 ともな り得 る。 しか し平均的・長期的 には利益 は等 しくなるか ら問題 は それ程表面化 す ることはないであろ う。 けれ ども現実の林業経営す なわち大 多数の間断的経営 や一握 りの保続的経営の場合,更
に保続経営 の場合 で あ って も,ひ
と度経営面積 の増減 (従って植伐面積 の長期 的不均衡),林
種の転換,経
営方式の転換 など弾 力的 な 経営 を行 わん とす る時,そ
の よ うな「J又支計算法」 によ っては,少
なか らざる問題点 が表面 に現 れ ざるを得 ない であろ う。 す なわち例 えば拡大造林の場合は,「
収支計算法」 に あってはそのための支出増は期間費用 と見 なされ ること になるのであろ うか ら,それだけその年度の利益 は減少 となる。 (造林 費 を資本的支出 と見 るな らば,利
益 は妥 当な額 として算 出 され得 るで あろ う)。 拡大造林 の規模 が相対的に大 に して長期 にわた る時は,その損益計算 に よっては無視 し得 ない許 容限度 を超す ところの過小 の利 益 (も しくは損失)を
示 す結果 とな り,こ
の ことは利益 操作の原因 ともな るで あろ うことな どを考慮す ると,こ
の方法 は全 く粗雑 な損益計算 とな り得 る可能性 を内包 し ていることになろ う。 これと同 じことは再造林 の場合であっても生起 し得 る。 例 えばスギの伐採跡地 にヒノキ を再造林す ると言 うよ う な林種転換 において もこれ を見 ることが出来 る。具体的 数値で説明す るな らば, l haのスギ林 の伐期収入300万 円 としてその伐採跡地 にスギ を造林す るとすれば造林 費 50万円 (再取得原価 とす る)を
要す るはずの ところ, ヒ ノキの造林 を80万円 (取得原価)で
行 な うと仮定す ると 300万 円-50万円=250万円の利益 と300万 円-80万
円=
220万円 の2種類 の利益 が考 えられ るが,い
ずれ を真正 の利益 と見 るべ きだろ うか。「収支計算法」 によれば後 者 とす るもの と解 され る (しか し一般的見方 によれば理 論的 に も実際的 にも前者 とされるのが当然で あろ う)。 この よ うに見 ると,「
1又支計算法」 にあっては,従
来 の林業損益計算法 が森林経理 と結 びつ くために設 け られ る調整肋定 におけ る収益 と費用の認識基準 や測定基準の 統一性 について細 い検討 がな され,その結果,林
業経営 計画 における物量基準 による調整勘定 にもとず く損益計 算 を,それによって算出 され る利益 に一貫 した尺度性 が 認 め られない と して,否
定 された よ うに,会
計計算 にお ける精密 さ 。統一性・斉合性 な どを精 力的 に追求せ られ, 真正 の利益 を求めてや まなかった「収支計算法」はここ に至 って急 にその追求 を断念 したかのよ うに見 られるの である。すなわ ち理 論的 にも実際的 にも精密性や統一性 や斉合性 を追求せ んとす るな ら一貫 して追求せ られるべ きもの と思 われ るのである。 ところで上述 の問題点 を回避せ ん とす るな らば造林費 はこれ を当然造林投 資 と しての資本支出 (たとえば造林 資産)とす る必要 があろ う。林種転換 における造林費 も 規模拡大 における造林 費 もすべて一般管理 費の如 き期間 費用 とす ることは会計理 論的 にも妥当 な方法 であるとは 言いがたいで あろ う。思 うに造林 費 (のみ な らず保育費 も)の発生は場所的 にも明 らかであ り,造
林 ・保育 にお ける原価 の把握は相対的 にむ しろ容易な方 に属す る。造 林費 を資本的支出 とす るところに造林 なるものの基本的 本来的性格 を見 ることが出来 るとしなければな らないの である。具体的 に説明すれば造林 費 を資本的支 出 とし育 成資産勘定 を立 てて計上 し,伐
採時 に伐採売上勘定 に対 して売上原価勘定 を設 けてそれに振替 えるので ある。 ただ,次
項 に検討せ ん とす る貨幣資本維持 の観点 に立 つ場合は育林生産 は長 い生産期間 を要 し,そ
の期間中に はいちぢる しい物価変動 (騰貴)が
あるため,原
価 を修 正す ることによってのみ,真
正 なる資産価値 (造林投資 による資産 の価値)を
表明 し得,またその ことによって 真正の費用 を把握 し得 るので ある。 しか しその故 をもっ てすべての造林 費 をばそ してあ らゆ る場合 に期間費用 と す るのは会計理論 の放棄 を意味す ると言 わな くてはな ら ない。 もしも金額的 に少額 に止 る場合,造
林 費の期 間費 用的処理 を仮 りに是認 す るとして も,それは あ くまで便 宜上 に基 づ くことと理 解 すべ きであって,便
宜的 なこと と本質的 なこととは本来峻別すべ きもの と思 われ るので ある。 (3)問題点 Ⅲ ―― 資本維持 について 一林業経営 の物価変動会計 に関す る研究 「収支計算法」 においては
,維
持すべ き資本 として「 貨幣資本」 もしくは「貨幣 として規定 された資本」が措 定 されていると解 される。 しかし貨幣資本およびその維持 とは何かについての説 明は余 りなされていないが,「
再生産力実体資本 として の貨幣資本」すなれち「金額的実体資本 としての貨幣資 本」 と結論づけ られている。 これを一般通説 としての貨 幣資本維持説 と比較することによってその特質を明瞭 な らしめてみよう。 通説としての貨幣資本維持説は「企業に投資 した貨幣 額の維持 を主張す る」0ものである。この立場では「期間 損益計算上,収
益 に賦課すべ き費用を歴史的原価 をもっ て計上 しなければならない」6めでぁり,こ
の場合歴史的 原価 を名目歴史的原価 とする時は,名
目資本維持説 とい われ,歴
史的原価 を一般物価指数 による修正歴史的原価 とす る時は,購
買力資本維持説 (個別物価指数 による修 正原価 とするときは実質資本維持説)と いわれることは 通説の通 りである。 ちなみに費用 となる財の再調達原価 (取替時価)に
よる評価 額 を費用 とする場合は,物
財そ のものの維持 をはかる考え方であり,実
体資本維持説 と 言われているc 「収支計算法」はこのような貨幣資本維持説の うち, 最後の説,即
ち再調達価格 による評価額 を費用 とす る実 体資本維持説に相応 しているものと解すべ きであろう。 何故なら,こ
の場合は再生産 を可能 とする実体の維持が はかられていることになるからである。 それでは「収支計算法」によって「金額的実体資本 と しての貨幣資本」の額は現実においてどのように具体的 に把握 されるのであろうか。或る時点において,既
に存 在 している保続経営 に対 して「収支計算法」なる会計の 実施 によってその時点以降,貨
幣資本の維持 をはかって 行 こうとすれば,必
然的に先ずその時点 (期首)で
蓄積 をどのように如何 なる額に評価す るかが問題 となるはず である。言 うまでもなく一般の貨幣資本維持説における 貨幣資本額なるものは投資された貨幣額即 ち取得原価 ( もしくは修正原価又は再調達原価)に
よって評価 される のであり,従
ってそれは,明
らかに資本的支出概 念に支 えられているのであって,そ れ故貨幣資本維持概念と資 本的支出概念 とは表裏一体 をなしているとも言 えるので ある。ところが「収支計算法」は造林費について資本的 支出概念を否定 しつつなお且つ貨幣資本維持説 をとられ るのであるが果たしてそれは会計理論的に可能なのであ ろうか。 しかしこの点についての説明は全 く行われてお らないものの如 くであり,そ れを見出すことは出来ない のである。 保続経営 をば,相
続 もしくは贈与 された もの として も, その時点 における評価 を林木蓄積 の伐採価 とす るか,或
は蓄積 を可能 ならしめた育成原価 とす るか,育
成原価 と して も取得原価 (歴史的原価)の
見積 額 とす るか又は再 調達原価 とす るか,或
はいずれに して もそれ ぞれ元利合 計額 としてのいわゆ る費用価 とす るか或 は また期望価 と す るかなど,方
法 (考え方)は
多数 あ り,い
ずれによる かによって維持すべ き貨幣資本の額 に甚だ しい差 が生ず るのは言 うまで もない。 この評価の観 点 か らの検討 によ って も貨幣資本維持 の妥当性 が吟味 されねばな らない と 考 える。 この ことが行 われず してただ貨幣資本維持 と言 って も 内容は必ず しも明 らかでない。 貨幣資本維持 は既 に見たよ うに基本的 には販売財の取 得価額 による売上原価 を期間費用 と して収益 か ら控除 す ることによって投資 された貨幣資本 を維持 せ ん とす るも のであ り,そ しても しも企業 が現金以外 の財産 の賭 与 を 他 か ら受 けた時及 び会社組織等 に移行 す る時 の現物 出資 な どの場合は,公
正 な評価 額 にもとずいた価額 を取得価 額 とす るとされている。 しか しそれでは公正 な評価額 とは如何 な る観点で,如
何 なる方法 によって詔 面され るもので あるかが問題 であ るが,通
常,公
正 な評価額 とは時価等 を基準 とす ると言 うことになってい る。す なわち贈 与 によって取得 された 有形固定資産の評価 につ いては一般 に時価等 を基準 に し て公正 な評価額 をもって取得価額 と してい る。企業会計 原則 の貸借文↓照表原則 には「贈与 によって固定資産 を取 得 した場合 には,時
価等 を基準 に して公正 に評価 した額 をもって取 得イ面額 とす る」 としてお り,また連続意見書 は「固定資産 を贈与 された場合 には,時
価等 を基準 に し て公正 に評価 した額 をもって取得価額 とす る」 としてい る。 この場合の固定資産 は工場用地,建
物・機械 設備 な どの生産財 を指 してい ると解 され,何
れ に して も生産 に 役立 て る物 であ り,売
るための ものでは ない。 要す るに贈 与 によって取 得 した有形 固定 資産 について は,そ
の資産 をその時点で正常 な市場 を通 じて購入 した とすれば支払 わなければな らない価格 をもって取得原価 とす ると言 うのである。 ところで ここで問題 なのは,立
本 はこの よ うな意味 での固定資産 か どうか と言 うことで ある。確 かに幼令林木 につ いては育成原価 にもとず く国 定資産 その もの と見 られるけれ ども伐期近 い林木 につい てみ るとそれは流動資産 としての生産物 の性格 を大 きく 持 っている。さて この ことか ら保続経営 の蓄積の時価 とは林業 にお け る通常の解 釈 で は伐 期 に近 い林 木 については伐 採 価, 幼令林 については費用価
,中
間令林 についてはGlaser 価 (又は造 林 利 回価)と い うことになろ う。 そこで今, 仮 りにその よ うな時価 による蓄積価相 当額 としての貨幣 額 が維持 され るべ き貨幣資本であるとした場合,
“森林 経理"と切 り離 された「収支計算法」 によって果 た して 貨幣資本 が維持 され るであろ うかを簡単 な例 を用 いて具 体 的 に検討 してみよ う。 今1年生 よ り50年生 に至 る各l haの林分 か ら成 る林分 No lよ り林分No50までの計50haの連年保続経営 を前提 と し,その維持 さるべ き貨幣資本 を初年度 (基準年)始
め の上記の よ うな評価額(=取得価額)と して1.0億 円 を仮 定す る。「収支計算法」 によれば,今
伐期林分N050の立 木売上収入 を430万 円 とす ると,それが実現収益 であ り, またその再造林費支出額 を70万円 とす ると,それが発生 費用 で あ り,従
って430万 円-70万円=360万円が処分可 能利益 とな り処分 され ることとなる。 しか し実際は林分 N050の評価 額 (=取得価額)を
400万円 とす ると,林
分 No50の 1年間の価値増加額 は430-400=30万円 に過 ぎな いのであるか ら,360万円 を処 分 す ると資本維持 が出来 な くなるはずで ある。 しか る1こ「収支計算法」 が,その場合 になお且つ資本 維持 が可能 であると主張 す るな ら,次
のよ うな事情 に基 づいていることになろ う。すなわちこの場合,維
持 され るべ き貨幣資本1億円 が維持されないで10,000万 円-430
万円=9,570万円 に減 少 してい るかのよ うに見 えるが, そ うではな くNo50(l ha)の伐期林分の材積 (林木価) は保続経営50haの1年間の成長量 (成長価)の
総計 を示 す もの となってお り,年
間の成果 と見 ることが出来 るも のであって,こ
れ を伐採 して も年度始 めの蓄積 (従って 評価額1.0億円)は
維持 されてい るか ら上記の損益計算 430万 円-70万円=360万円は正 しいと主張す るか も知 れ ない。 も しそ うであるとす ると,ここに2つの問題 が生 ず る。1つはNo50の林分l haが伐期林分であ り, 1年間 の成長量総計であ り,そ れ を伐採す ることによって元の 蓄積価 にもどることなどは,上
記のよ うに収支計算法の 基礎 として物量計算が必須 であ り,従
って森林経理 が密 着 して存在 しなければならないことを意味 し,「
収支計 算法」の主張 とは反対 に「林業損益計算 において物量計 算 と分離 した形 での貨幣計算 としての論理 が貫 かれ る」 と言 うことにはな り得 ないと言 うことになる。今1つは, その よ うな論法 においてはその360万円なる利益 は,一
見実現利益 の如 く見 えて,実
はほとん ど大部分は未 実現 利益 の総額 だ と言 うことである。何故 な ら林 分NIo50の実 現利益 は現実 に30万 円 に過 ぎぬか らであ る。 ところで今 この よ うな矛盾 をさて置 いて も,収
支計算 法 には次の よ うな問題 もある。すなわちもしも上記 の よ うな標準的 な伐採 では なく, 1年間 に2年間分 の2 haす なわ ちNo50と No49の 2林分 を伐採 し,830万円 の実 現 収 益 を挙 げ,再
造林 はl haのみ とし70万 円の造林 費支出 を 行 つた とすれば,「
収支計算法」 によれば当期処分可能 利益 は830万 円-70万円=760万円 と言 うことになるで あ ろ う。 しか しこの計算は貨幣資本維持 を柱 とす る損益 計 算 としては満足すべ きものであるとは思 われ ない。何 故 な ら維持すべ き貨幣資本は利益(760万円)をすべ て外部 処分 した とすれば,次
年度の1年間は伐採収穫 を全 くせ ず に更 に1年経過 した後 によ うや く元 に復す ることにな るに過 ぎないか らで ある。すなわち,こ
の場合1年間 は 貨幣資本 が維持 されなかったことを意味す る。 (貨幣資 本 を維持 せん とすれば,過
伐分 (林分Nlo49)の 収益 400 万円 を今年度の収益 か ら控除 して次年度以降 の収益 のた め に一時的 に積立 ておかな くてはな らないで あろう。) また再造林未済地 については次年度行 うと して次年度 の費用 とす るとして も,次
年度は伐採 な く,従
つて期間 収益 がない とす れば次年度の再造林 費相 当額 だけ期間損 失 と言 うことになる。 そ うす ると次年度 はその額だけ更 に貨幣資本 の維持 が出来 な くなることを意味 す るで あろ う。以上の ことか ら次の2つの ことが認 め られ る。 1つは,「
収 支計算法」の指示す るよ うに森林経理 ( 標準伐採量や標準造林量)に
従 わず に伐採 や造林 を行 う 場合,収
益 を販売基準 によって,費
用 を発生主義 によっ て計上 し, またその1又益 と費用 とは個別的・ 直接的対応 関係 を有 しない もの とすれば,同
法の意図す る貨幣資本 の維持 は必ず しも保証出来 ないことにな り貨幣資本維持 を犠牲 とした伐採 などを統制す ることは出来 ないことに なると言 うことである。 2つは,逆
に貨幣資本 を常時維持せん とすれば,す
な わち貨幣資本 を厳重 に維持 せん とすれば,伐
採,造
林舒 は森林経理 に従 う必要 がある。 しか し各種 の理 由か ら, それに従 うことが出来 ない場合 があ り, その場 合は収益 の計上は販売基準 によ り費用 も又発生主義 によ ると して も,期
間収益 と期間費用は個別的直接的対応関係 にある もの とす る計算構造 とすれば,少
な くとも正 当 な投下資 本 の回収 を通 じて収支計算法 の 目的 とす る貨 幣資本 と し ての実体維持 が可能 となると言 うことで ある。 要す るに,貨
幣的実体 資本維持 と,個
別的・直接的対 応関係 な き無関連流列 としての実現期間収益 。発 生期 間費用の計上 とは
,端
的 に言 えば背反関係 にあると言 うこ とである。す なわち前者 を重 視せん とすれば後者は成立 せず (修正 を要 す ることとな り),後
者の関係 に従 えば 前者は成立 しない と言 う関係 にあると言 うことである。 貨幣資本維持 とは本来投下資本回収 計算 であ り,個
々 の実現 した収益の中 か ら,それ を生 むため に直接寄与 し 費消 された価値額 と しての投下資本額 が費用 (名目的 に か実質的 には別 として)と して控除 され回収 され ると言 う計算構造 であ るか ら,収
益 と費用 とは個別的・直接的 対応関係 を厳格 に持 たせ ることによって始 めて貨幣資本 維持 が可能 となるわけである。す なわちその関係 の もと においては伐採面積 が過 伐の場合 と してた とえばl haの 予定 の ところ実際の伐採 は2 haであって も, 2 ha分の育 成原価 (取得原価又は再調達原価)が
自動的 に費用 とな つて控除 され貨幣資本 (原価)が
回収 され るからである。 以上 に述べて来 た ことを保続経営 の場合 について以下 にもっと具体的 に述 べ ることによって理解 を深める必要 があろ う。既 に見 たよ うに「収支計算法」 は貨幣資本維 持の立場 に立 と うとしているのであるが, しか し同法 の 前提 たる費用・収益 の個別的・直接的対応関係 の否定の もとでは貨幣資本維持 が成立 しない と言 うことにな り, 結局,極
めて残念 なことであるが「J又支計算法」は論理 的 に成立 し得 ないと言 わぎるを得 ないのである。 そもそ も貨幣資本維持 とは それが名 目的 なもので あれ,修
正 さ れた ものであれ過去 に投資支出 された額 を基 とす る原価 を費用 として収益 よ り回収 せん とす るものである。 それ 故,保
続経営の森林 が一括購入 され取得 された場合 は勿 論の こと,贈
与や相続 によって受入 れた ものであって も その評価額 は取得価額 とみ なされるので あ り,その取 得 資産 と しての森林 の評価 が,通
常は個 々の森林 を構成す る林木 が各林分毎 に個別的 に幼令林 は費用価,その他 は 伐採価 などを主体 に してその積算 によって行 われるもの であるか らには,個
別林分の個別的評価額 (又は購入価 額)を
費用 として収益 よ り回収 しなければ貨幣資本維持 の立場 に立つ ことにはな らないのである。 このことを具 体的 に説明 しよ う。 ある年の始 め に一括購 入 しも しくは贈 与,相
続 を受 け た ときのN101∼ No50の 50個林分 か ら成 る各林分の取得原 価の合計は10,000万 円 とす る。 そ して開始貸借対照表 は 次の よ うであるとす る。 開始貸 購 入立 木 林 地 現金 資 本 金 111000 11,000 10,000 500 500 林業経営の物価変動会計 に関す る研究 223 年末 に陥50の林 分 (取得原価400万円
)が
伐期 に達 し 430万 円 で売 上 げ られ ると,次
の よ うな仕訳 となる。 (借方)現
金430万
円 (貸方)立木売上430万 円 (1年方)立木売上原価400万 円 (貸方)購入立木400万 円 次 に伐採跡地 に70万 円で再造林 した時 は,造
林費 を林 木 育成資産 γcに振 替 える。 (借方)造 林 費70万
円 (貸方)現 金70万
円 (仕方)林 木育成資産70万
円 (貸方)造林費70万
円 そこで決算 した とす ると,次
の よ うになる。 損 益 計算 書 立木売上原価400 利 益 30 430 そ して利益 はすべ て経営外 に処分(配分)するもの とする。 この よ うな過程 が年々継続す るもの として伐採 と造林 が1回転 (50年経過)す
ると,す
ぐ分 るよ うに,最
初の 10,000万 円は現金 と林木育成資産 (造林資産)の
形 で経 営 内 に維持 され ることになるのである。 この方法 においては,一
般物価不変の もとに個別物価 と しての立木単価 が下 った と して も,投
下資本 を費用 と して回収 してゆ く方法で あ り貨幣資本維持 が可能 となる のである。 このよ うな方法 をここで「一般法」 と名付 け て置 くことにす る。 ところで一方 において,も しも「収支計算法」の よ うに 費用 と収益 の間 に個別的・直接的対応関係 な しと して, 実現収益 とすべての発生費用 との差額 にようて期間利益 を算 出す るとすれば, (借方)現 金 430万 円(貸
方)立木売上 430万 円 (借方)造林 費70万
円(貸
方)現金
70万
円 とな り利益 は差引 き360万円 となる。 これ を全部経営外 に処分 し, このよ うな伐採 と造林 が1回転す ると, ど う なるであろ うかを考 えてみ よ う。 従来保続経営 (法正林)に
つ いて言 われて来た よ うに,N01∼
N050の 各林分の1年間の成長量の合計 が経営 全体 の1年間の成長量 であ り,それは丁度林分No50の材積 に 等 しく,そ
の伐採価 としての林木価(この場合430万 円) を期間収益 として期間費用 と しての造林費 (70万円)と
の差360万円 をすべて経営外 に処分す るとす る。 しか し この360万円 なる期間利益 は真 に名実共 に実現利益 と言 えるであろ うか。上述 の「一般法」 か ら言 えば実現利益 は30万円 (売上収益430万円 と取得原価 による売上原価 400万 円 との差)1こ過 ぎないはずである。それにもかかわ 決算貸借対照表 入立木 9,6001資 本金 H,000 林本育成資た 70 (造林資産) 現金 860 林
地 500 11,000
らず360万 円 を期間利益 とす るな らば「ll又支計算法」にお ける期間利益 なるものの大部分は未実現利益 だ とも言 わ ねばな らないことになる。 この ことは法正林的 な保続経 営 におけ る伐期林分の林木価 は各林分の成長価 の合計 に 等 しいと一般 に言 われ ることか らも端的 に知 ることが出 来 よ う。 さて
,こ
の よ うな未実現利益 を経営外 に処 分す ることを年 々繰 りかえして行 くと,た
しかに立本の蓄積 量 は存在 しま した個別物価 と しての立木単価 が変 わ らな ければ貨幣資本維持=実
体維持 は結果的 には可能 で ある けれども, しか した とえば一般物価水準 が不変で あって も個別物価 と しての立木単価 が下 れば,材
積 (実体)は
存在 して も投下 された貨幣資本額の回収維持 は不可能 と 言 うことになろ う。 つ まり「収支計算法」 なるものは投下資本 としての原 価 (この場合立木購入価額 と しての原価)を
回収せず, したがつて貨幣資本維持 を可能 とす るもので なく単 に物 量維持 にとどまるものであ り,そ こでは同法 自らが しり ぞけたはずの森林経理 (物量計算=給
付費消計算)と損 益計算 との正 に非論理的 な融合 こそがその基盤 となって いることとが明 らかとなる。 とすればかか る自己矛盾の 上 にのみ「収支計算法」 が成立 ってい ると言 わなければ な らないのである。 結語 (1以上の考察 によって明 らかなよ うに「J又支計算法」 は次の理 由 か ら一般的 な林業会計の方法 とは言 えない。 またそれは理論構成 にないて未 だ完結 していないもので あ ると判断 された。
1)同
法 は保続経営のみ を考察 の対象 と し,更
に保続 経営 は有機的一体 をなす もの とす る “保統経営 を総体 と してみ る見方"と言 う非現実的仮定 にもとづ いている。 何故 なら,現
実の林業経営の圧倒的大 多数 は保続経営 と 問断経営 の中間的存 在であることはここではあえて問わ ない として,仮
りに保続経営 と言 われ るもの に限定 して も,経
営 を構成す る森林 は物的 にも価額的 にも有機的一 体 をな してい るどころか,それ を構成す る林分単位毎 に それ らの条件 もそれぞれ異 な り経営体 として切 り離 し難 き一体 をな してい るとは到底言 いがたいのが動 かす こと の出来 ない事実 だか らである。林業生産は場所的 にも林 分毎 にそれぞれ独立 的 に生産 が行 われ,他
の業種 と比較 してむ しろ原価 も場所的 に極 めて把握 しやす い生産形態 に属す ると言 うべ きであろ う。林業経営 なるものは,仮
りに或時点 において保続経営 の状況 にあったと して も, そ して一般 の企業経営程 にはないに しても,常
に一定不 変の状況 に止 まると言 うことは有 り得ない。経済の外的 な諸与件の変化 につれて,林
業経営の規模拡大 (成長) や又,逆
に規模縮少も見 られるのであり,ま た,面
積的 には同 じ規模の如 くに見えても,経
営の内容は除々にで も変化 しつつあるものである。従って林業会計の理論 と 言 えども単純再生産 を事 とする法正林的 な保続経営のみ を前提 として構成 されることは理論的にも実際的にも一 般性 を持 ち得ないもの とならぎるを得ない。 なる林業会計の対象 としての保続経営 もしくはそれを 構成 している “森林全体 を統一的な有機的構成体 と見 る 見方"或
は “保続経営 を総体 として把握する見方"と 言 うものはどこからどう言 う理由で生 じて来たかについて は「収支計算法」は何 も説明をしていない。 しかしその ような見方は実は「収支 計算法」が しりぞけたはずの 森林経理 (学)(も
しくは法正林思考)に
見 られるので ある。すなわち「作業級 とは合目的々たる質並に量を具 うべ き永続的蓄積の範囲と規定 し,そ の内容 を造成 し従 って又収穫予定 を行 う基礎 を得るために綜合 されたとこ ろの樹種・作 業法 ・伐期 令を等 しくする林分集団を言 ぅ」13)「林木は森林生産の目的物たる収穫の源泉として の一定の質と量 とを有す る永続的全体即 ち蓄積」1つ であ るとする。これらは要するに法正令級分配,法
正蓄積, 法正生産量等 を内容 とす る法正林の考え方より出たもの であると言い得 よ う。なおかかる見方は,会
計 と森林経 理の接合 をはからんとする林業会計論 を主張 した岡和夫 博士の所論に明瞭 にみ られる。すなわち「保続経営 を間 断経営の集合 とみ るのではなく,森
林全体 を統一的な有 機的構成体 とみ, 自然増価 も個々の林分 について認識す るのではなく,統
一体 としての森林 を単位 として認識す る考え方である。」15)「森林全体 を統一的 な有機的構成 体 としてとらえる限 り,そ こでは個別林分における生産 期間の長期性 は止揚 されて しまう」「モデルとしていま 法正林 を考 えることにする。そこでは個々の林分の合計 に等 しい材積の伐採が最老令林分について行われ,ま た 伐採跡地 には造林 が行 われ,か
くして森林蓄積は一定 に 維持 されて生産 が継続するのであるが,森
林全体 を統一 的な有機的構成体 としてみる立場のもとでは個 々の林分 の成長量 という観念は止揚 され,代
わって統一的な有機 的構成体 としての森林の成長量 としてそれは把握 される。 しかもその統一的な有機的構成体 としての森林の成長量 は,法
正林 にあっては伐採可能材積 を意味 し, これが最 老令林分に置換 されて伐採 されるのである。 したがって 自然増価の会計的認識は,成
長量 を置換 した最老令林分 について行 うという考え方が生ずるわけである。」15)これらの引用文から明 らかな如 く