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走査型電顕による数種アブラナ科蔬菜の花芽発育段階の分類-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川大学農学部学術報告 第44巻 第1号 47∼54,1992

走査型電顕による数種アブラナ科読菜の

花芽発育段階の分類*

藤目幸境・垣渕和正

CLASSIFICATION OF FLORAL STAGES

IN SOME CRUCIFEROUS VEGETABLES

BY SCANNING ELECTRON MICROSCOPE*

Yukihiro FuJIME and KazumasaKAKIBUCHI

Floralstages of eight cruciferous vegatables,tSaトhsin,Chinese kale,hong−tSai−tai, kohlrabi,kale,pak−Choi,J?paneSeradishand cabbage were observed and classified by

SCanning electron microscope

1.Floralstages of each cultivars were commonly dividedinto7stages:the vegetative stage;the dome−forming stage;the flower bud−forming stage;the

sepaトformingstage;thestamenand pistil−forming stage;theearlypetal−elongat−

ion stage and thelate petal−elongation stage

2.,Petalprimordiaweresotinyandstoppedtheirdevelopment tillthestamenand

pistildeveloped well

3..In some cultivars thereis anindication of notch even at theleaf primordia

サイシソ,カイラン,コウサイタイ,コー・ルラビ,ケー・ル,バクチョイ,ダイコン, キャベツの8種20品種を供試し,花芽の発達過程を走査型電子顕微鏡を用いて観察し,花 芽発達段階を分類した 1.供試したすべての種煩について,花芽発達段階は共通して未分化期,膨大期,花芽 原基分化期,がく片分化期,雄ずい・雌ずい分化期,花弁伸長前期,花弁伸長後期の 7段階に分けられ,各発育段階の形態的特徴もほぼ共通していた 2..形成直後の花弁原基は極めて微細であり,発育にも停滞が認められ,雄ずい・雌ず いの発達後に伸長した 3..薬に欠刻がある種燐では,薬原基の形成直後から欠刻の徽供が認められたが,包菓 や小包菓に欠刻は認められなかった 緒

疏薬類の花芽形成並びに花芽発育過程に関して,多くの種類についてその形態的観察が行なわれ

ている..アブラナ科疏菜では,キャベツ(3・8),ダイコン(11)

,タイサイ(2),ナタネ(12)の花芽発育段階が

分顕されているしかし,これらの分類は統一・されておらず,各花芽発育段階の形態的特徴も明ら

かでないものが多い.そこで,カリフラワ・−,ブロッコリ・一について調査して先に報告した(4)

アブラナ科疏菜が栄養生長から生殖生長へ移行する際,まず頂端分裂組織の肥大が形態的特徴と

*数種疏菜の花芽形成並びに花芽発育過程に関する研究(第2報) 本研究の一部は平成2年度園芸学会春季 大会で発表した,

(2)

香川大学農学部学術報告 第44巻 第1号(1992) 48 して現れ,その後に花芽原基が分化する.著者らは前報(5)において,側花序原基あるいは頂花序の 花芽原基が分化した時を,花芽分化の形態的な開始としたい また,花芽発育段階を分類する場合, 頂花序と花芽の発育を一・緒にするのでほ/なく,分けて考える力がよいと考えた これまでの花芽発育の形態的観察をまり その多くが実体顕微鏡を用いて行なわれてきたい しかし, 実体顕微鏡は焦点深度が浅いため,花芽の立体的な形態を詳細に観察することほ.困難であったい こ れに対し,走査型電子顕微鏡は焦点深度が深く,容易に高倍率が得られる.このことより,花芽の 形態を立体的に,また表面の微細構造を詳細に観察することが可能となった‖ 現在までにカリフラ ワ・−,ブロッコリ・−(4),ナタネ(10),ダイコン(11) ,コリアンダ・−(13),トマト(l′9)ペピ・−ノ(6)などにつ , いて,花芽の形態が走査型電子顕微鏡で観察され,報告されている アグラナ科には多くの重要疏菜があり,それらの花芽発育が種類ごとに異なるのか,あるいは共 通の発育段階にまとめられるのか,明らかにしておく必要性が考え.られた ここには8種のアブラナ科疏菜について,花芽発育過程を走査型電子顕微鏡を用いて観察し,分 類した結果について報告する 材料及び方法 供試材料には,第1表に示したサイシソ3品種,カイラン4品種,コウサイタイ3品種,コ・−ル ラビ3品種,ケ・−ル2品種,キャベツ1品種,バクチョイ2品種,ダイコン2品種の合計8種,20

品種を用いた−カイラン,コウサイタイは1988年3月7日と9月9日に,サイシソは1988年3月14

日と10月3日に,コ・−ルラビ,ケ・−・ル,バクチョイ,ダイコン,キャベツは1989年9月25日に播種 をした−各品種とも直径5cmの黒色ポリポッt・に播種した. 播種後は各品種とも最低夜温を20℃以上に保ったガラス温室内で育苗したい カイラン,コウサイ

タイでは本葉が5∼8枚になった1988年4月27日と10月15日に,サイシソでは1988年4月27日と10

月26日に,コ・−ルラビ,ケ1−ル,バクチョイ,ダイコン,キャベツでは1989年10月24日に,それぞ れ株間30cm,条間30cmの3条植えで圃場に定植した小 栽培管理は慣行に従った 調査のため,各品種とも定植時より5∼10日おきに5∼10個体のサンプリングを行った‖ サンプ リングした個体について茎長,茎径,展開乗数,未展開英数を調べると共に,菓頂部及び花芽を FAAで仮固定した..その後,茎頂部を実体顕微鏡下で解剖し,未展開菓数及び茎頂部の直径を測定 した. 解剖した茎頂部及び花芽ほ,藤目によるGouge修正法(4)に従い,4%ダルク・−ルアルデヒドと

1..6%オスミウム酸によって2重固定し,エタノ・−ルシリーズによる脱水と,酢酸イソアミルへの

置換を行なった..その後,試料を臨界点乾燥器(日立HCP−1)に移し,20℃で酢酸イソアミルと液 化炭酸ガスを置換し,43℃で臨界点乾燥を行ったい乾燥後,蒸着装置(Eiko社製)でPtもしくは

TablelPlants and cultivars usedin the experiment

‘Kakiba−kanran’(Takii)

‘Kairan’,A(Takii),‘Kairan’−B(Takii),‘Kairan’(Sakata),‘Kairan’(Known−Youn) ‘Kousaitai’−A(Takii),‘Kousaitai’rB(Takii),‘Kousaitai’(Sakata)

‘Tenshin−koushin−daikon’(Sakata),‘Kouto−aOnaga−daikon’(Sakata) ‘AojiruyouLkale’(Takii),‘High clop corard’(Takii)

‘Grand duke’(Takii),‘Kohlrabi’(Sakata),‘Purple bird’(Sakata) ‘pak−Choi’(Sakata),‘Aojiku−Pak−Choi’(Sakata) ‘Wasekeirsaishin’(Takii),‘saishin’(Takii),‘Saishin’(Sakata) Cabbage Chinese kale hong−tSai−tai Japanese radish kale kohlrabi pak−Choi tsai,hsin

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藤日章披・垣渕和正:SEMによるアグラナ科疏菜の花芽発育段階の分類 Pt・Pd蒸着を行ない,走査型電子顕微鏡(日立S−800型)を用いて観察した 49 結 果 供試したすべてのアブラナ科疏菜について,花芽発育段階は共通して0:未分化期,1:膨大

期,2:花芽原基分化期,3:がく片分化期,4:雄ずい・雌ずい分化期,5:花弁伸長前期,

6::花弁伸長後期の7段階に分けられた 第1囲に,コ・−ルラビの花芽発育段階の走査型電子顕微鏡像を示した 未分化期の茎頂の直径は.0い05∼0.20皿で,微細な突起状または平坦状をしていた(1−0).前 報(5)でも示したように,未分化時の茎頂部の直径は,糞尿基の分化直後に大きく,その後菓原基の 発達に伴い小さくなった 膨大期では∴茎頂の大きさは未分化期の2∼3倍に肥大・肥厚し,その直径が約0い20∼0.50mの ドーム状となっていた(1−1)..また,菓原基の分化角度ほ,水平面に対して900以上になってい た 花芽原基分化期では,肥大したドームの基部にある包菓原基の内側から側花序,あるいは頂花序 の花芽原基が分化していた(1−2)‖この菓原基と側花序あるいは頂花序の花芽原基は,外輪のも のが包菓と側花序になり,内輪のものが小包菓と頂花序の花芽となって発育するv しかし,この時 点ではそれぞれの花芽原基がどちらに発育するのかを区別するのは困難であった.その後,花芽原 基の数は増加したが,最も外輪の花芽原基が小包菓をともなっていたのに対して,内輪の花芽原基 は小包菓をともなっていなかった 前報(5)に従い,花芽発育段階は,この花芽原基分化期までを主茎の花序について分類し,これ以 降は個々の花芽について分類したい また,主茎の茎頂部がこの花芽原基分化期に達した時点で,花 芽が分化したと判断した がく片分化期では,向軸側の1本と背軸側の1本,側面の2本の合計4個のがく片原基が分化し た(1−3)い雄ずい・雌ずい分化期では,まず側面の2本のがく片が伸長し,次に背軸側の1本と 向軸側の1本のがく片が伸長して,花芽原基全体を覆うように発達した、.そして,がく片の内側で は中央部に心皮の原基が分化し,その周囲に4個,さらにその外側に2個,合計6個の雄ずい原基 が分化した(1−4)..この時,花弁も外輪の2本の雄ずいの両側で分化を始めたい しかし,形成初 期の花弁原基は非常に微細であり,またその後しばらく発達せず,その確認も困難であったため, 花弁形成は花芽発育段階の分類基準から除外した 花弁伸長前期では,雄ずいが薪と花糸に分かれて伸長を始めた..花弁も突起状からディスク状に なって伸長を始めた(1−5) 花弁伸長後期では花弁が著しく伸長し,雄ずいよりも長くなったぃ また雌ずいは柱頭,花柱と子 房に分かれ,花柱が著しく伸長して雄ずいよりも長くなった(1−6) 各花芽発育段階の分頬は,供試したすべての種類に適用でき,またその外部形態もほぼ同じで あった“第2図にパクチョイの各花芽発育段階を,第3図にダイコンの各花芽発育段階を示した ダイコンでは実の欠刻が,菓原基の暗から現れていた(3−1).コウサイタイやケ・−ルなど,薬の 欠刻の大きなものでは,ダイコンと同じように菓原基の形成初期から欠刻の徽侯が認められたい し かし包菓や,小包菓には欠刻が認められなかった(3−2)..また,各花芽発育段階において,ダイ コンの花芽は他の種類のものより大きぐなり,サイシソ,バクチョイ,コウサイタイでほ逆に小さ くなる傾向が認められた

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藤目事績・垣渕和正:SEMによるアブラナ科疏菜の花芽発育段階の分頬 53 考 察 ァブラナ科疏菜ではキャベツ,ダイコン,タイサイの花序(2且川,キャベツの小花(8)及びナタネの 小花(12)について,花芽発育段階が分類されている.しかし,これらは同じアブラナ科疏菜であるの に,未分化状態から開花までの−・貫した分頬はなされておらず,また各花芽発育段階の形態的特徴 には不明な部分がある. そこで,藤目(4)ほカリフラワ・−,ブロッコリー一について花芽発育を走査型電子顕微鏡を用いて観 察し,その発育段階を未分化期,膨大期,花らい形成前期,花らい形成中期,花らい形成後期,が く片形成期,雄ずい・雌ずい形成期,花弁形成期と花弁伸長期の9段階に分け報告したい しかし, 同じアブラナ科であっても,カリフラワー・とブロッコリ・−は花芽原基が増加する間,花芽の発達が 停滞するという特異性を持っているため,他のアブラナ科疏菜にこの花芽発育段階を適用すること は適当ではない 本実験では,供試したアブラナ科疏菜の花芽発育段階を,外部形態の特徴から7段階に分けるこ とができたい これらは,未分化期,膨大期,花芽原基分化期,がく片分化期,雄ずい・雌ずい分化

期,花弁伸長前期,花弁伸長後期である.これは前報(5)に従い,花芽原基分化期までは茎頂部の形態

的変化について,花芽原基分化期以降は小花の発育について分類したものである.このことより, 花芽原基分化期までは茎頂部の膨大などの顕著な形態的変化について,また花芽原基分化期以降 は,各小花中の花器の発達などを基準として分類することができた.これら各花芽発育段階の特徴 は以下のようになる 未分化期:主茎の茎頂部の直径が0い1皿程度で,微細な突起状または平坦状である 膨大期:主茎の茎頂部の直径が未分化期の場合と比べ2∼3倍程度となり,肥大・肥厚してド・− ム状となる 花芽原基分化期:肥大・肥厚した茎頂の基部より,包菓をともなった側花序の原基,もしくは小 包菓をともなった花芽原基が分化する.前報(5)に従い,茎頂部がこの花芽原基分化期に達した時に 花芽が分化したとし,植物体全体が栄養生長から生殖生長に移行したと判断した. がく片分化期:花芽原基の周囲に4枚のがく片が分化する 雄ずい・雌ずい分化期:がく片の内部において,雄ずいと雌ずいが分化する.花弁もこの時に分 化すると考えられたが,花弁原基は非常に微細で,その後発育が停滞するため確認が困難であっ た. 花弁伸長前期:花弁原基がディスク状になって伸長を開始するい雄ずいは蔚と花糸に分かれ,著 しく伸長する.雌ずいもこの頃伸長を始める 花弁伸長後期:花弁と雌ずいが伸長し,雄ずいより長くなる,.雌ずいはこの時,柱頭,花柱と子 房にはっきりと分かれる この分類は,実体顕微鏡で十分確認できる形態的変化を基にしている.また,それぞれの花芽発 育段階を走査型電子顕微鏡で観察することによって,各発育段階あるいは花器の外部形態の特徴を 詳細にすることが可儲であった また,今回供試した8種頬20品種の疏菜すべてについて,花芽発育段階は共通しており,他のア ブラナ科植物についても,この花芽発育段階が適用出来るものと考えているい なお,花芽原基分化 期以降の植物体全体の発達段階を調べる場合は,頂花序の外輪にある2∼3個の花芽について,そ の発育段階を調査するのが適当ではないかと考えている

(8)

香川大学農学部学術報告 第44巻 第1号(1992) 54

引 用 文 献

(8)香川 彰:2.花芽分化・抽台,p253−265,措 水 茂監修,野菜園芸大事典,東京,養賢堂, (1977) (9)金浜耕基,斎藤 隆,金 英華:†マトとトウガ ラシの果実における花菓と維管束の配列,園学 雑,58(4),945−950(1990)

㈹ PoLOWICK,P Land VK SAWTINEY:A scanning electron microscopic study on the initiation and development of Bras5ica

(cvWestar),AmerJBot73(2),254p263

(1986)

㈹ SAGWANSUPYAKORN,C,YSHINOHARA and YSuzuKI:A study on the stage of flower initiation ofJapanese radishusingthescanning electronmicroscope,JJapSocHortSci54, 344−350(1985)

q2)SMITH,LJand DHScARISBRIC:Raproducト ive developmentin oilseed rape(BrasISi■ca naタusCVBienvenu),AnnBot65,205−212 (1990) ㈹ 富高弥−平,市村匡史,木村正典:コリアンダー の花芽分化に及ぼす日長の影響,園学雑,58(別 2),326・−327(1989) (1991年11月30日受理) (1) CHANDRA,KNand VKSAWHNEY:A scannning electron micr・OSCOpe Study of the

development and surface of floralorgans of

tomato(んγC・0♪♂rSよco′‡e.SC祝Je花王祝∽),Cα花ノ βof62,2403−2413(1984) (2)江口庸雄,西垣明義:体菜,山東菜の播種期と花 芽分化期との関係に就いて,園学雑,6(1),71− 83(1935) (3)江口庸雄,香川 彰:甘藍の採種に関する研究 (第1報),頂花序の分化並に発育に就いて,農 技研報,E4,217−224(1955) (4)藤日章挨:ハナ・ヤサイ類の花らい形成並びに発 育の湿度条件に関する研究,香川大学農学部紀 要,第40号,1−102(1983) (5)藤日章挨,垣渕和正:数種疏菜の花芽形成並び に花芽発育過程に関する研究(第1報),数種ア ブラナ・科疏菜の花芽並びに花序形成に関する走 査電顕像,香川大農学報,44(1),39−46(1992) (6)井上弘明,高橋文次郎,北 宜裕:走査電顕によ るペピ−ノの花芽分化の形態観察,園学雑,58 (別2),294−295(1989) (7)岩見直明:玉レタスの生態的研究(第1報),花 芽の発育過程について,園学雑,28(1),35−38 (1959)

参照

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