Ϩ はじめに
1990 年代半ば以降のわが国における地理情報 システム(GIS)の普及と平成 7 年国勢調査町丁・ 字等別集計の整備を契機に,小地域レベルでの人 口・ 世帯の分析は大きく進展した。 この分析で は,地域における人口・世帯の現状を精確に把握 するため,地域分類(regionalization)が行われる。 地域分類は,人口・社会・経済の特徴とその分布 を明らかにすることを目的としている。 地理学の分野においては,居住地区の常住人口 に着目し,居住地区分類が進められてきた。これ は,居住地区分類( geodemographics:ジオデモ グラフィックス)とよばれており,人口特性,経 済水準,家屋,就業状態などの側面から居住地区 を分類し,タイプ分けをしている(高阪・関根, 2008 )。ある居住地区における住民は,「 birds of a feather flock together:類は友をよぶ」という原 則に基づき,類似した生活を営むと考えられるた め,社会・経済的特徴を把握することが可能であ る。そのため,居住地区分類は,欧米ではマーケ ティングの分野で広く普及し,今日では,犯罪・ 教育などにおいても応用されている1)。ϩ 先行研究と研究目的
1.
居住構造の因子 都市の空間パターンに関する研究は, Burgess の同心円モデルや Hoyt のセクターモデル以降, 多くの成果が生み出され, Shevky や Bell などの 社会地区分析( social area analysis )によって,居 住構造が社会・経済的状況( socio-economic sta-tus ), 家族的状況( family stasta-tus ), 民族的状況 ( ethnic status )の 3 因子で成り立っていることが 明らかになり,因子生態研究( factorial ecology ) へと進展した(樋口,1979)。 ここでいう社会・経済的状況とは,学業や就業 上の状況,職種,収入などであり,また,家族的 状況とは,年齢や性別,世帯人数,出生率などが あげられる。3 因子のうち,社会・経済的状況と 家族的状況の 2 因子は,日本における都市の居住 構造においてもみられ(森川,1976;横山・森川, 1977 ),居住地区分類に大きく影響する普遍的な 因子とされており,近年の居住地区分類に関する 研究においても基本的な次元として抽出・利用さ れている。例えば,浅井・矢野 ( 2001 )は,平成 7 年の国勢調査町丁・字等別集計において人口・ 世帯・住宅・就業者・在学者の項目から 63 変数 を,高阪・関根(2005)では,平成 12 年国勢調査 町丁・字等別集計において人口・世帯・移動・住 宅・就業者・在学者・収入源の項目から 51 変数 をそれぞれ選択し,地区の類型化を行っており, 社会・経済的状況と家族的状況の 2 因子に関連す る指標が用いられている。 一方,桐村( 2006 )は,日本における民族的状距離を考慮した居住地区分類の一試論:
東京大都市圏を事例として
草野 邦明*
キーワード:居住地区分類,距離,同心円構造,セクター形成 * 日本大学大学院理工学研究科大学院,公益財団法人統計情報研究開発センター研究員況について分析を行い,1970 年時点の京都市にお いて民族的状況の次元がみられることを明らかに している。また,日本の都市研究において民族的 状況が否定されてきた理由として,外国人に関す る採用変数の少なさが起因していると指摘してい る。民族的状況に関しては,近年の東京都区部 (以下,都区部)においても,外国人人口の増加 と分布パターンの変化傾向(高阪, 2012;草野ほ か, 2012 ) や国籍別の外国人集住地区(桐村, 2013)が明らかになっており,コミュニティーが 形成されていることが推察されるとともに,居住 構造に一定の影響があると考えられる。
2.
居住地区分類に関する問題点と研究目的 地理的な原理による居住地区分類に関しては, 多くの議論がなされていない。例えば,従来の居 住地区分類では,地理的事象の重要な法則の一つ である距離減衰効果 (distance decay effect) が考慮 されておらず,隣接した地区間における空間的自 己相関 (spatial autocorrelation) は考察されていな い。Tobler( 1970 )は,「 Everything is related to everything else, but near things are more related than distant things:あらゆるものはほかのあらゆ るものと関係するが,近くに存在するものは,遠 くに存在するものよりも強く関係する」という地 理学の第 1 法則を提示しており, 空間的従属性 (spatial dependency )の重要性を説いている。こ の点からも,地区間の距離減衰効果を考慮した居 住地区分類の構築と検証が必要と考えられる。 以上より本研究では,東京大都市圏( 1 都 3 県) を対象地域として,従来の社会・経済的状況,家 族的状況に加えて,新たに地理的(空間的)状況 から居住地区分類を行うことを目的とする。 なお,民族的状況に関しては,依然として,外 国人に関する変数が量的,質的ともに制約がある ことから,本研究では考慮していない。3.
使用データと変数 本研究では,統計データとして,平成 17 年国 勢調査町丁・字等別集計データおよび同調査地図 (境域)データを用いた2 )。また,居住地区分類 にあたっては,①都市の居住構造において普遍的 な次元である社会・経済的状況および家族的状況 を考慮した上で,従来の研究を参考に,人口・世 帯・住宅・職業の指標から 35 変数,②地区間の 距離減衰効果を考慮するため, 距離に関連する 11 変数,の計 46 変数を取り上げた(表 1)。なお, ②の距離に関する変数では,各町丁目・字と各駅 (最寄り駅,都区部の鉄道結節点となるターミナ ル駅および各地域の中心駅)との二地点間のユー クリッド距離3)を用いた。 なお,研究では,主成分分析とクラスター分析 において統計ソフトウェアの SPSS11.5J (IBM) を 使用し,GIS ソフトウェアとして ArcGIS10 (ESRI) を用いた。Ϫ 分析方法・手順
本研究における分析は, 以下の順で進められ る。 ① 外れ値をもつ町丁目・字のスクリーニングと 地区データ行列の作成 ②データの標準化 ③主成分分析による主成分の抽出および解釈 ④ クラスター分析による地区の類型化(地域分 類) ⑤地域分類の解釈 ①外れ値をもつ町丁目・字のスクリーニングと 地区データ行列の作成では,居住地区分類が,経 済活動を把握することを一つの目的としているた め,人口の少ない(経済活動が見込めない)町丁 目・字を除いた。スクリーニングの対象として, ( 1 ) 町丁目・字のヘクタール( ha )当たりの人口 密度が 5 人以下,( 2 ) 町丁目・ 字の人口総数が 100 人以下,( 3 )町丁目・字の面積が 1ha 以下を それぞれ除いた4)。この結果, 18,266 町丁目・字 を分析の対象とした。 ②データの標準化では,人口密度および距離に 関する変数に関しては実数を使用し,それ以外の第 1 主成分は, 15.6 %の分散割合を説明し(表 2 ),関連する変数は表 3 の主成分負荷量行列から 正の単極構造で,「池袋駅への距離」,「上野駅へ の距離」,「新宿駅への距離」,「東京駅への距離」, 「渋谷駅への距離」,「品川駅への距離」を表して いる。このことから,第 1 主成分は,「都区部に おけるターミナル駅へのアクセス」を表したもの と考えられる。しかし,第 1 主成分の場合,変数 として用いた距離は,ターミナル駅への距離が近 い時に第 1 八分位値をとり,駅への距離が遠い時 に第 7 八分位値をとる。このことから,第 1 主成 変数においては算出した構成比を用いた。 そし て,各変数に対して八分位で標準化した値をデー タとした。 ③主成分分析は, 変数の集約から主成分の抽 出・解釈までの一連の処理からなる。本研究にお いては,主成分の抽出基準を固有値 1.0 とし,バ リマックス回転後に主成分に基づく抽出・解釈を 行った5)。 ④クラスター分析は,③の主成分分析によって 得られた主成分を非階層型の K-means 法を使用 して分類した。 ⑤地域分類の解釈では,分類されたクラスター (地域)に対し,主成分得点などから名称付けを 行った。
ϫ 多変量解析による地区類型
1.
主成分分析による主成分の抽出 表 2 は, 表 1 における 46 変数に対して主成分 分析を行い, 抽出された主成分のうち, 固有値 1.0 以上の 10 主成分の寄与率と累積寄与率を示し ており,これら 10 主成分で全分散の 78.2 %を説 明している。 表1
居住地区分類に用いた変数 指標 変数名 指標 変数名 人口 人口密度(人/ha) 男 10歳未満(%) 男 10歳代(%) 男 20歳代(%) 男 30歳代(%) 男 40歳代(%) 男 50歳代(%) 男 60歳代(%) 男 70歳代(%) 男 80歳代(%) 男 90歳以上(%) 女 10歳未満(%) 女 10歳代(%) 女 20歳代(%) 女 30歳代(%) 女 40歳代(%) 女 50歳代(%) 女 60歳代(%) 女 70歳代(%) 女 80歳代(%) 女 90歳以上(%) 世帯 世帯人員1人(%) 世帯人員2人(%) 世帯人員3人(%) 世帯人員4人以上(%) 住宅 一戸建(%) 共同住宅(%) 長屋建(%) 持ち家(%) 民営借家(%) 公営借家(%) 職業 専門的・技術的職業従事者(%) 事務従事者(%) 販売従事者(%) 生産工程・労務作業者(%) 距離 東京駅への距離(km) 新宿駅への距離(km) 池袋駅への距離(km) 上野駅への距離(km) 品川駅への距離(km) 渋谷駅への距離(km) 大宮駅への距離(km) 千葉駅への距離(km) 立川駅への距離(km) 横浜駅への距離(km) 最寄り駅への距離(km) 表2
上位 10 主成分の固有値および寄与率と累 積寄与率 主成分 固有値 寄与率(%) 累積寄与率(%) 1 7.2 15.6 15.6 2 6.1 13.3 28.9 3 5.2 11.2 40.1 4 3.7 8.1 48.2 5 3.4 7.4 55.6 6 3.1 6.7 62.3 7 3.0 6.4 68.8 8 1.7 3.8 72.5 9 1.3 2.9 75.4 10 1.2 2.7 78.2分が示す正の単極構造は,「都区部におけるター ミナル駅へのアクセスの悪さ」を意味する。一般 的に,「アクセスの悪さ」よりも「アクセスの良 さ」が重要であることから,第 1 主成分は,「都 区部におけるターミナル駅へのアクセスの良さ」 と解釈した。また,第 8 主成分,第 9 主成分にお いても,各地域の中心駅への距離が近い時に第 1 八分位値をとり,駅への距離が遠い時に第 7 八分 位値をとることから,解釈は主成分負荷量の符号 と逆となる。 表
3
上位 10 主成分の主成分負荷量行列 変数 1 2 3 4 5主成分6 7 8 9 10 V38(池袋駅への距離) 0.94 0.20 0.11 0.12 V39(上野駅への距離) 0.93 0.20 0.12 -0.17 V37(新宿駅への距離) 0.93 0.26 0.10 0.10 0.14 V36(東京駅への距離) 0.93 0.24 0.14 -0.15 V41(渋谷駅への距離) 0.90 0.29 0.11 0.11 0.16 -0.15 V40(品川駅への距離) 0.87 0.31 0.17 -0.24 V42(大宮駅への距離) 0.64 0.11 0.33 0.61 V2(共同住宅) -0.33 -0.78 -0.18 -0.17 -0.15 -0.18 0.14 -0.13 V1(一戸建) 0.32 0.78 0.19 0.17 0.15 0.19 -0.15 0.11 V4(持ち家) 0.22 0.77 0.26 0.31 -0.13 V15(世帯人員4人以上) 0.23 0.75 -0.23 0.19 0.25 0.32 V12(世帯人員1人) -0.22 -0.74 0.23 -0.13 -0.45 -0.10 -0.10 V6(公営借家) -0.19 -0.62 -0.16 0.10 0.13 0.16 V14(世帯人員3人) 0.15 0.61 -0.38 0.41 V46(最寄り駅への距離) 0.13 0.56 -0.13 0.11 0.43 0.15 V11(人口密度) -0.41 -0.50 -0.26 V9(販売従事者) -0.14 -0.45 0.14 0.18 0.38 -0.17 0.17 V34(女80歳代) 0.87 0.12 V24(男80歳代) 0.84 0.11 0.10 V33(女70歳代) -0.15 0.82 0.17 0.25 -0.12 -0.12 V35(女90歳以上) 0.73 V23(男70歳代) 0.70 0.21 0.43 -0.21 -0.15 0.12 V25(男90歳以上) 0.64 0.14 V31(女50歳代) 0.14 0.29 -0.16 0.74 0.12 0.13 -0.17 V21(男50歳代) 0.11 0.18 0.72 0.18 0.12 -0.12 V29(女30歳代) -0.25 -0.27 -0.41 -0.68 -0.16 -0.14 0.11 V19(男30歳代) -0.25 -0.31 -0.33 -0.65 -0.22 -0.18 0.10 V26(女10歳未満) 0.12 -0.52 -0.61 0.19 0.22 V16(男10歳未満) 0.15 -0.47 -0.61 0.17 0.14 0.25 V22(男60歳代) 0.21 0.16 0.48 0.46 0.20 -0.47 0.16 V13(世帯人員2人) 0.20 0.75 -0.11 -0.27 0.11 V18(男20歳代) -0.17 -0.30 -0.13 0.14 -0.74 -0.11 -0.15 0.11 V28(女20歳代) -0.14 -0.27 -0.28 -0.71 -0.18 -0.15 V5(民営借家) -0.19 -0.51 -0.27 -0.53 0.37 V32(女60歳代) 0.24 0.38 0.50 0.17 -0.48 -0.15 0.22 V7(専門的・技術的職業従事者) -0.11 -0.14 -0.13 -0.84 -0.14 0.16 V10(生産工程・労務作業者) 0.26 0.28 0.82 V8(事務従事者) -0.30 -0.80 V30(女40歳代) -0.15 -0.25 0.80 V27(女10歳代) 0.17 0.25 -0.32 0.21 0.67 -0.10 0.13 V20(男40歳代) -0.19 -0.33 -0.23 0.66 V17(男10歳代) 0.19 0.30 -0.22 0.13 0.17 0.66 -0.12 0.15 V43(千葉駅への距離) 0.48 -0.80 V44(立川駅への距離) 0.46 0.17 0.11 0.11 0.78 V45(横浜駅への距離) 0.35 0.33 0.20 0.24 -0.71 -0.17 V3(長屋建) -0.12 0.10 0.88 注)絶対値 0.1 以上の主成分負荷量のみ示している。非常に良い。この地域を中心に外側に向かって同 心円状に主成分得点は高くなり,アクセスが悪く なる。なお,主成分得点が「− 1.49 ∼− 0.75 」の アクセスが比較的良い水色の地域は,都区部とそ の周辺地域でみられ,皇居を中心におよそ 20km 圏内まで広がる。これらの地域の大部分は,都心 3 区への移動が時間距離にして 1 時間以内のアク セスが良い地域である。 さらに, 主成分得点が 「− 0.74 ∼ 0.00 」の地域は,皇居を中心におよそ 20 ∼ 30km圏内に分布している。これらの地域は, 埼玉県さいたま市,千葉県柏市や船橋市,神奈川 県川崎市や横浜市の一部などであり,依然として 都心 3 区へのアクセスが良い地域である。一方, 主成分得点が「 0.76 ∼ 2.55 」の暖色系の地域は, 大部分が皇居から 30km 圏外に分布しており,都 区部へのアクセスは悪い。 次に, 図 1b の第 2 主成分は, 居住形態, 世帯 規模の次元を表しており,寒色系の主成分得点が 低い地域,すなわち,「共同住宅」 と 「世帯人員 1 人」 が多いと考えられる地区は,都心 3 区から鉄 道に沿ったセクター状の分布傾向を示している。 一方,暖色系の主成分得点の高い地域は,「一戸 建」,「持ち家」,「世帯人員 4 人以上」 であり,皇 居から 10km 圏を中心に同心円状の分布をとり, また,それらと鉄道沿線の間を埋めるように黄色 の漸移地域が分布している。一般的に,社会・経 次に,第 2 主成分は,寄与率が 13.3 %であり, 両極構造で,正が「一戸建」,「持ち家」,「世帯人 員 4 人以上」を表し,負が「共同住宅」,「世帯人 員 1 人」を表している。このことから,第 2 主成 分は,「居住形態」と「世帯規模」を示すものと考 えられる。さらに,第 3 主成分は,寄与率 11.2 % で正の単極構造をとり, 主成分負荷量行列から 「女 80 歳代」,「男 80 歳代」,「女 70 歳代」,「女 90 歳以上」,「男 70 歳代」,「男 90 歳以上」を表して いる。 以上から, この主成分は,「高齢者人口」 の次元と考えられる。また,第 4 主成分,第 5 主 成分および第 7 主成分においても,各年代の年齢 別人口が表れており,それらに基づいた解釈を得 ることができる。 表 4 は,以上の 10 主成分ごとの高い相関を示 す変数とその解釈をまとめたものであり,アクセ スの良さ,年齢構造,世帯規模と居住形態,職業 に関する次元が確認された。
2.
主成分得点の分布傾向 本節では 10 主成分のうち,とくに顕著な分布 傾向を示す6 主成分の主成分得点について述べる。 図 1a は, 第 1 主成分の主成分得点の分布を表 したものであり,都区部におけるターミナル駅へ のアクセスの良さを示す(表 4)。分布傾向として は都区部の東部で主成分得点が低く,アクセスが 表4
主成分ごとの高い相関を示す変数とその解釈 主成分 正 負 解釈 1 池袋駅,上野駅,新宿駅,東京駅, 渋谷駅,品川駅への距離 都区部における主要ターミナル駅へのアクセスの良さ 2 一戸建,持ち家,世帯人員4人以上 共同住宅,世帯人員1人 居住形態,世帯規模 (一戸建,世帯人員4人以上 VS 共同住宅,世帯人員1人) 3 男女70歳代,80歳代,90歳以上 高齢者人口 4 男女50歳代 男女30歳代 後期生産年齢人口 VS 前期生産年齢人口 5 世帯人員2人,男女60歳代 男女20歳代,民営借家 高齢者世帯 VS 若年者世帯 6 生産工程・労務作業者 専門的・技術的職業従事者, 事務従事者 ブルーカラー VS ホワイトカラー 7 男女10歳代,40歳代 一般的なファミリー世帯 8 立川駅への距離 千葉駅への距離 東部郊外 VS 西部郊外 9 大宮駅への距離 横浜駅への距離 南部郊外 VS 北部郊外 10 長屋建 長屋建期生産年齢人口は,川崎市宮前区や中原区,浦安 市など都区部に隣接した地域から郊外までの広い 範囲でみられる一方,後期生産年齢人口は,郊外 を中心にみられる。小池( 2010 )によると,「団 塊の世代」6)は, 1980 ∼ 2000 年頃までの間,都心 から郊外へ流出超過であったと指摘しており,後 期生産年齢人口の分布に,「団塊の世代」を中心 とした特定のコーホートの居住指向が少なからず 反映されていると考えられる。 第 5 主成分は「高齢者世帯」対「若年者世帯」の 次元を表している。寒色系の若年者世帯が中心の 地域は,山の手を中心とした都区部西部と郊外に おいて局所的にみられる(図 1e )。また, JR 中央 線をはじめとした鉄道に沿ったセクター状の分布 傾向を示している。一方,暖色系の高齢者世帯が 中心の地域は,南西方向では 15km 圏より外側の 横浜市南西部や鎌倉市などの地域,北部から東部 では練馬区北部,足立区西部および北東部,千葉 県松戸市の縁辺部でみられる。 これらの地域で 済的状況の因子はセクター状の分布を示し,家族 的状況の因子は同心円状の分布を示すことから (森川,1975),第 2 主成分は,住宅の所有関係や 形態などの社会・経済的状況と,世帯人員を中心 とした家族的状況が合わさった次元のため,セク ター状の分布と同心円状の分布の両方が現れたも のと推察される。 図 1c は,「高齢者人口」の次元を表しており, 都区部および逗子市,九十九里周辺などの郊外地 域で分布がみられる。これらを詳しくみると,主 成分得点が「 1.51 ∼ 2.25 」,「 2.26 ∼ 2.78 」の高齢 者人口が卓越した地域は,都区部では点分布に近 い傾向を示しているのに対して,郊外では連坦し て面的に分布している。 さらに, 第 4 主成分は,「後期生産年齢人口」 対「前期生産年齢人口」の次元を表しており,図 1d で分布傾向をみると寒色系の前期生産年齢人 口が卓越した地域は,暖色系の後期生産年齢人口 が卓越した地域よりも都心側に分布している。前 図
1a
第 1 主成分得点の分布パターン(都区部における主要ターミナル駅へのアクセスの良さ)図
1b
第 2 主成分得点の分布パターン(一戸建,世帯人員 4 人以上 VS 共同住宅,世帯人員 1 人)図
1d
第 4 主成分得点の分布パターン(後期生産年齢人口 VS 前期生産年齢人口)状の分布パターンを示すとされてきたが,第 6 主 成分では異なった分布傾向を示す。 すわわち, 2005 年時点における東京大都市圏では, 社会・ 経済的状況がセクター型,家族的状況が同心円構 造といった明確な分布パターンはみられない。
3.
クラスター分析による地区類型 次に,地区の主成分得点を用いてクラスター分 析により地区の類型化を行った。類型化にあたっ ては,前述の主成分分析で得られた主成分得点に 対して非階層型の k-means 法によるクラスター 分析を行い,2 分類から 50 分類の範囲で地区類型 の変化を考察し,地域性が最も現れる 35 分類で 類型化を止めた。 クラスターあたりの地区数をみると,地区数が 最大のクラスターは 1,364 地区,地区数が最小の クラスターは 191 地区であり,これらの地区数の 差は, 1,173 地区と大きく偏りがみられる。しか し,都心のオフィス街や郊外の農村地域などで は,高島平団地,光が丘団地,花畑団地や常盤平 団地といった 1960 年代∼ 80 年代前半に建設され た住宅団地が立地する特徴がみられる。そして, 第 5 主成分は,年齢別人口と世帯人員を中心とし た家族的状況の次元であることから,同心円分布 をとると考えられたが,上述のように,セクター 状の分布を示している。 最後に,図 1f は,「ブルーカラー」対「ホワイ トカラー」の次元を表している。これらの分布か ら,都区部東部から埼玉県東部にかけて暖色系の ブルーカラーが卓越している。 一方, 都区部西 部,神奈川県南東部および鉄道沿線では寒色系の ホワイトカラーが卓越している。 これは, 浅川 (2006)などによって指摘されている,「ブルーカ ラーベルト」および「ホワイトカラーベルト」と 一致しており,同心円分布とセクター状の分布が 合わさったパターンである。また,千葉県北西部 や神奈川県南部では,鉄道沿線でホワイトカラー が卓越している。従来,職業の次元は,セクター 図1f
第 6 主成分得点の分布パターン(ブルーカラー VS ホワイトカラー)性では,若年者世帯や 1 人世帯が多く,共同住宅 が卓越している。その分布は,都心 3 区をはじめ, 新宿区や渋谷区などの副都心,中野区や墨田区な ど全方角に広がっており,セクター状の分布パ ターンを示している。この地域タイプは,アクセ スの良い地域である。 A1 の外側には, A2, A3 や A4 といった地域タ イプが分布している。A2 は,事業所や商業施設 のほか,住宅地によって形成され,業務機能と居 住機能の両側面をもつと考えられる。また,居住 者属性では,高齢者人口と若年者世帯が多く,高 齢者と若年者が卓越した混合地域と推察される。 分布は,皇居を中心に 10km 圏の外側から都区部 の間に多くの地区が分布しており, A1 と同様に ほぼすべての方角でみられるが,特に,世田谷区 北東部と南東部,目黒区,大田区北西部,豊島区 で多い。 A3 は,ブルーカラーが卓越しているタイプで ある。分布をみると, A1 と A2 の外側の台東区東 部や 飾区中央部と南部などの北東の方角と,大 田区の南東部,川崎市幸区東部や川崎区東部など 南西の方角に分布している。A4 は,年齢層では 高齢者,世帯タイプでは一般ファミリーが中心で あり,職業ではホワイトカラーが多い。分布傾向 としては, 都区部西部や埼玉県西部を中心に, A1 と A2 の外側を囲む形で分布している。A4 は, 同じ圏域に分布する A3 と職業や分布で対照的な 特徴を示している。 以上から,都心の圏域では,高齢者人口や若年 者世帯,世帯人員 1 人や共同住宅が卓越した地域 タイプがみられる。その分布は, A1 でみられる セクター状の分布パターンのほかに, A2 では南 西部を中心とした同心円分布パターン,さらに, A3 は北東部と南西部,A4 は西部と北西部である。 次に,近郊の地域タイプとして,B1 は,ブルー カラーが卓越しており,その分布は,埼玉県北部 と北西部を中心に分布し,これらは,さいたま市 や川口市,川越市,所沢市といった中核都市とそ れに準ずる都市地域である。B2,B3 は,B1 と同 は,ほかの地域と比較して人口が少なく,また, 都市機能によっては居住者属性が類似し,一定の 規模の等質地域になり得る点,高級住宅街,住宅 団地などのホットスポットと言われる地理的にユ ニークな地域が都市においては認められる点など を総合的に判断し,本分析では 35 分類が適当で あると考えた。
Ϭ 居住地域タイプとその特徴
1.
地域タイプの設定 居住地区の特徴を考察するにあたっては,初め に,第 1 主成分の「都区部におけるターミナル駅 へのアクセスの良さ」に着目し,地域を都心,近 郊,郊外,遠郊の 4 つの圏域に分けた7 )。皇居を 中心に, 都心を 15km 圏, 近郊を 15 ∼ 30km 圏, 郊外を 30 ∼ 50km 圏, 遠郊を 50 ∼ 80km 圏と設 定し, 各地域がおもにどの圏域に分布するかに よって,それぞれ地域タイプ A ∼D とした(Harris, et al, 2005)。次に,同一のタイプにおいて,より 都心の近くに分布する地域を上位として設定し, さらに,都心を中心に神奈川県から時計回りで千 葉県までを順に並べた。そして,残りの第 2 主成 分から第 10 主成分の解釈をもとに,各地域の特 徴を人口・世帯・住宅・職業・方角の側面から考 察した。その結果,都心 6 タイプ,近郊 11 タイ プ,郊外 11 タイプ,遠郊 7 タイプの 35 地域タイ プとそれらの特性が得られた(表 5)。2.
地域タイプの特徴と分布 図 2a は, 表 5 の地域タイプの中から主要な地 域タイプと 4 つの圏域に対応した距離圏を表して いる。バッファの最も内側が本研究における都心 を示し,外側に向かって近郊,郊外,遠郊と続 く。また,図 2b は都区部とその周辺を拡大した 図であり,都心と近郊の一部地域を示す。 まず最初に都心の地域タイプの特徴と分布につ いて説明する。地域タイプ A1 は,最も内側の皇 居周辺であり,オフィスをはじめとした事業所や 商業施設が集積する都市的機能をもち,居住者属対して, B3 では後期生産年齢人口と高齢者世帯 が多く,対照的な傾向を示す。一方, B4, B5, B6 などの地域タイプは方角別の分布傾向を成し ておらず,全方角で分布している。 以上から,近郊の圏域では, B1 や B2, B3 にみ 様に,中核都市およびそれに準ずる都市の地域に おいてみられ, B2 が千葉県北東部と東部, B3 が 千葉県北東部で B2 の外側に隣接して分布する傾 向を示している。 しかし, 居住者属性において は, B2 は前期生産年齢人口が卓越しているのに 表
5
クラスター分析結果による 35 地域タイプとその特性 圏域 地域 タイプ 年齢層 世帯タイプ 世帯 人員 住宅 職業 方角 地区数 都心 A1 ― 若年者世帯 1人 共同住宅 ― 西部 1364 A2 高齢者人口 若年者世帯 ― ― ― 南西部 976 A3 ― ― 1人 共同住宅 ブルーカラー 北東部,南西部 661 A4 高齢者人口 一般ファミリー ― ― ホワイトカラー 西部,北西部 960 A5 ― ― ― ― ― 北西部 636 A6 ― ― ― 長屋建 ブルーカラー 北東部 522 近郊 B1 ― ― ― ― ブルーカラー 北西部 733 B2 前期生産年齢人口 ― ― ― ― 北東部 461 B3 後期生産年齢人口 高齢者世帯 ― ― ― 北東部 295 B4 ― 高齢者世帯, 一般ファミリー ― ― ― 全域(南東部を除く) 489 B5 前期生産年齢人口 ― 1人 共同住宅 ホワイトカラー 全域(南東部を除く) 492 B6 ― 高齢者世帯 1人 共同住宅 ブルーカラー 全域(南東部を除く) 470 B7 後期生産年齢人口 ― ― ― ― 全域(南東部を除く) 423 B8 前期生産年齢人口 一般ファミリー ― 長屋建 ― 南西部,北東部 481 B9 高齢者人口, 前期生産年齢人口 ― 4人 以上 一戸建 ― 全域(南東部を除く) 392 B10 ― 高齢者世帯 ― 長屋建 ホワイトカラー 北東部 267 B11 後期生産年齢人口 ― ― 長屋建 ― 北東部 323 郊外 C1 ― 若年者世帯 1人 共同住宅 ― 東北東部 288 C2 ― ― 1人 共同住宅 ― 南部 283 C3 ― 高齢者世帯 4人 以上 一戸建 ホワイトカラー 南西部,東北東部 409 C4 後期生産年齢人口 ― 4人 以上 一戸建 ホワイトカラー 全域 255 C5 前期生産年齢人口 一般ファミリー 4人 以上 一戸建 ホワイトカラー 北東 191 C6 後期生産年齢人口 若年者世帯, 一般ファミリー 4人 以上 一戸建 ホワイトカラー 全域 262 C7 ― ― ― 長屋建 ― 南西部 943 C8 ― ― ― ― ― 北西部 662 C9 前期生産年齢人口 ― ― ― ― 全域 341 C10 前期生産年齢人口 若年者世帯 1人 共同住宅 ― 全域 514 C11 後期生産年齢人口 若年者世帯 ― ― ― 全域 323 遠郊 D1 高齢者人口 高齢者世帯 ― 長屋建 ― 南部,北西部 832 D2 ― ― ― ― ― 北西部 960 D3 高齢者人口 一般ファミリー 4人 以上 一戸建 ブルーカラー 北西部 676 D4 高齢者人口 ― 4人 以上 一戸建 ブルーカラー 全域 304 D5 後期生産年齢人口 若年者世帯 ― 長屋建 ― 全域 288 D6 ― 一般ファミリー ― ― ブルーカラー 南東部 418 D7 高齢者人口 高齢者世帯 ― ― ― 全域 372図
2a
東京大都市圏における居住地区分類で,A4,B9,D1,D3 の高齢者人口や高齢者世帯 など年齢が高い層がみられる。第 3 に北東部では, 近郊の圏域において地域タイプ B3, B11 の後期 生産年齢人口や B10 の高齢者世帯と, B2, B8 の 前期生産年齢人口がみられ,高齢者と若年者の属 性が同一の圏域で卓越している。 以上に記した,都心から遠郊までの特徴と分布 をまとめると,居住者属性では,地域タイプ別の 特徴に加えて,圏域別・セクター別の特徴が一部 でみられている。分布においては,都心の圏域で 同心円分布とセクター状の分布パターン,近郊か ら遠郊までの圏域においては,中核都市を中心と したパターンと都心からの距離に基づいたパター ンがみられ,東京大都市圏の都市圏構造が現れて いる。分布パターンは,居住者属性と中核都市, 都心からの距離などによって規定されると言える。
ϭ 本研究のまとめと今後の課題
居住地区分類による居住地域構造の分析は,都 市構造モデルを起源に,社会地区分析や因子生態 研究を経て,発展・体系化され,以降,多くの研 究者によって分析や改良がなされてきた。本研究 では,議論が十分になされてこなかった地理的な 原理への問題意識のもと,新たな試みとして地区 間の空間的従属性を考慮した居住地区分類の構築 を目的とした。分析では,東京大都市圏を対象地 域として,従来の社会・経済的側面,家族的側面 に加えて,新たに地理的(空間的)側面を加えて 居住地区分類を行った。 その結果,分析の過程では,距離の変数に基づ いた主成分が抽出されるとともに,それらの主成 分得点の分布傾向から,都区部と郊外の圏域が抽 出された。また,分類結果から,従来の居住地区 分類の特性のほかに,①都心と近郊,郊外などの 同心円構造,②鉄道沿線におけるセクター状の分 布パターン,③中核都市を中心とした東京大都市 圏の都市圏構造が明らかとなった。そしてこれら は,居住者属性の差異のほかに,都区内における ターミナル駅への距離と中核都市における主要駅 られるように方角別の分布傾向を示し中核都市を 中心とした地域タイプと,B4 や B5 などのように 方角別の分布傾向を示さない皇居を中心とした都 心からの距離に基づく地域タイプが現れている。 郊外の地域タイプでは, C1 は若年者世帯,世 帯人員 1 人および共同住宅が卓越しており,分布 としては,千葉市中央区や稲毛区などの千葉県を 中心にみられる。また, C7 は,横浜市,川崎市 や相模原市などを中心とした神奈川県の広範囲に 分布し, さらに, C8 は, ふじみ野市をはじめ, 上尾市や北本市などの埼玉県を中心に分布してい る。 一方で C6 や C9 などの地域タイプは, 全方 角に分布している。このことから,郊外の地域タ イプにおいても,近郊でみられた中核都市を中心 とした地域タイプと皇居を中心とした都心からの 距離に基づく地域タイプの双方が現れている。な お,郊外の地域タイプの居住者属性としては,相 対的にホワイトカラーが卓越している特徴を示す。 遠郊の地域タイプ D2 と D6 は, 分布の方角が 集中するとともに,前述の中核都市を中心とした 地域タイプの外側に分布する傾向がみられる。一 方, D4 や D5, D7 は, 全方角に分布している。 D1 は,最も外側に分布しており,居住者属性で は,高齢者人口や高齢者世帯のような高年齢層が みられるとともに,住宅では長屋建が卓越してい る。その分布は,銚子市や小田原市などの東京大 都市圏の縁辺部の地域で顕著ある。遠郊の圏域の 地域タイプでは,高齢者人口や後期生産年齢人口 などの年齢が高い層やブルーカラーが卓越してい るといった特徴をもっている。 最後に,都心から遠郊までの地域タイプの特徴 を方角別にまとめると,第 1 に南西部では,近郊 の圏域において地域タイプ B8 や B9 の前期生産 年齢人口がみられる一方,近郊および郊外の圏域 では B9, C3 の高齢者人口や高齢者世帯など高年 齢の属性がみられ, 30km 圏を境に人口・世帯の 属性が変化する。 また, 世帯人員および住宅で は,B9,C3 の 4 人以上世帯や一戸建がみられる。 第 2 に北西部では,都心,近郊および遠郊の圏域りは, 精度が向上したとまでは結論付けられな い。また,二点目の居住構造の成立要因の分析と は,時系列な観点を含めた一連の分析を意味して おり,本研究では,平成 17 年時点における東京 大都市圏の居住構造を明らかにしたが,一方で, 過去から現在までの居住構造の変化については考 察できていない。とくに,本研究地域は,戦後の 高度経済成長期や, 1980 年代後半から 90 年代前 半のバブル期において,ニュータウンなどの住宅 の建設ラッシュや人口移動などがみられ,近年の 都心回帰など社会的なイベントを契機に,居住構 造も大きく変化した。このことからも,時系列的 な分析を行うとともに,居住構造がどのように形 成され,またそれらが何に起因するかを明らかに する必要があると考える。 謝辞 本研究を進めるにあたっては,職場である,公益財 団法人統計情報研究開発センターの統計データによる 都市地域分類研究会において,委員の方々からご指導 を賜りました。また,研究環境を提供してくださる小 玉正任会長(元沖縄開発庁事務次官)および日頃より 有益なご意見を頂いている研究員諸兄諸姉をはじめと した方々に,ここに記して御礼申し上げます。 (2014 年 7 月 19 日受付) (2015 年 6 月 22 日受理) への距離を考慮したことにより,都区部と周辺の 都市圏から成る圏域構造がみられるようになった と推察される。また,最寄り駅への距離を考慮し たことによって,従来,世帯人員,住居形態およ び職業の因子によって生じる鉄道沿線におけるセ クター状の分布パターンに,駅からの移動という 側面が新たに含まれ,結果として,セクター分布 がより強調されたと言える。このことからも,距 離の変数を加えることによって地区間の空間的従 属性が考慮されるとともに,空間的な位置関係が 強調されたより現実に適合する居住地区分類が構 築できたものと考えられる。 最後に,今後の課題として,実データなどによ る検証と,居住構造の成立要因の分析の二点があ げられる。 一点目の実データなどによる検証と は,居住地区分類を行うにあたっては避けて通れ ない問題であり,居住地区分類が適正か否かを検 証するものである。本来,居住地区分類は,目的 に応じて構築されるものであり,組み込まれる変 数も目的に応じて選択される。本研究では,東京 大都市圏を社会・経済的側面,家族的側面,地理 的側面の三つの側面から居住地区分類を行い,空 間的従属性を考慮した居住地区分類を構築するこ とで空間的な位置関係が強調された分類となった が,従来の 2 因子をもとにした居住地区分類とと もに,実データなどによって比較・検証しない限 注 1) 例えば,イギリスにおいては,ACORN, MOSAIC などのシステムが構築・普及している(Birkin, 1995)。 2) この地図(境域)データは,データの性質上,境 界データであるため,海岸線は含まれていない。 3) 距離の概念として,①地理的距離,②経済的距 離,③時間的距離,④心理的距離などが存在す る。本研究では,地理的(空間的)な側面に着目 したため,地理的距離(ユークリッド距離)を用 いた。地点は町丁目・字,駅ともにセントロイド を算出し,地点間の最短距離を計測した。 4) このスクリーニングの方法は,特定非営利活動法 人地理情報技術研究所の 「GITI-2005」 を参考と した。 5) 主成分分析は因子分析と異なり軸の回転はないが (村山・駒木,2013),主成分構造を単純構造に変 換する目的で回転を行う例もある(例えば,神頭 2000)。ただし,主成分の分散を 1 となるように 基準化した主成分分析では,回転を行った場合で も主成分間の無相関は保たれるが,主成分の分散
が固有値に等しくなる主成分分析では,回転を 行った場合,固有値の差が大きいほど相関が生じ ることが指摘されている(林ほか,2006)。本研 究では,①主成分間で一部の主成分負荷量が重複 し,主成分の解釈が困難である点,②回転前と後 の主成分間の相関係数が,前者は平均 0.02,最大 0.08 に対して,後者は平均 0.12,最大 0.40 と上昇 するものの依然として相関がほぼみられない点, ③回転前と後の主成分得点の空間分布に差が生じ ない点,以上を総合的に判断し,回転を行った。 6) 1947 年∼1949 年生まれを示しており,本分析時 点の 55∼59 歳人口に該当する。 7) 近郊と郊外は,ともにsuburb という用語が当て はめられるが,日本地誌研究所(1996)の定義に よれば,近郊とは,「都市の外側にあり,都市と 村落との漸移地帯であり,中間地域で,郊外とも よばれる」としている。このことから本研究で は,都心の外側の地域として近郊,さらにその外 側の地域として郊外という定義をした。 文 献 浅井泰之・矢野桂司(2001)1995 年国勢調査による ジオデモグラフィックスの構築.地理情報システ ム学会講演論文集,10, 279-284. 浅川達人(2006)東京圏の構造変容―変化の方向とそ の論理―.日本都市社会学年報,24 号,57-71. 桐村 喬(2006)居住地域構造研究に対する自己組織 化マップの適用可能性―1970 年の京都市におい て民族的状況次元は存在するのか?―.立命館地 理学,18 号,55-67. 桐村 喬(2013)居住地域構造との関係からみた東京 23 区における国籍別外国人集住地区の社会経済 的特徴 . 人文地理,65(1),29-46. 草野邦明・関根智子・高阪宏行(2012)都区部におけ る人口と世帯の諸特性の分布とその変化―1995 年から 2010 年までの 4 時点による分析―. 地理情 報システム学会講演論文集,21,F-5-6, 1-4. 倉沢 進・浅川達人編(2004)『新編 東京圏の社会地 図 1975-90』東京大学出版会,1-46. 小池司朗(2010)地域メッシュ統計にみる世帯別人口 の動き―「段階の世代」・「団塊ジュニア世代」の 25 年―.統計,61(6),16-23. 高阪宏行(2012)都区部における人口と世帯の諸特性 の分布とその変化の分析 . 日本大学自然科学研究 所研究紀要,47 号,23-39. 高阪宏行(2014).『ジオビジネス GIS による小売店の 立地評価と集客予測』古今書院,127-145. 高阪宏行・関根智子(2005)『GIS を利用した社会・ 経済の空間分析』古今書院,33-39. 高阪宏行・関根智子(2008)地理情報技術のビジネス への応用 . 地学雑誌,117, 455-463. 神頭広好(2000)『駅の空間経済分析―3 大都市圏の 主要鉄道を対象にして―』古今書院,215-227. 日本地誌研究所編(1996)『地理学辞典改訂版』二宮 書店,157-158. 林 邦好・冨田 誠・田中 豊(2006)主成分分析に お け る 軸 の 回 転 に つ い て. 計 算 機 統 計 学,19 (2),89-101. 樋口忠成(1979)デトロイト大都市地域の居住分化と その空間パターン―因子生態研究からみた 1960 年 1970 年の比較―.人文地理,31, 5-27. 森川 洋(1975)都市社会地理研究の進展―社会地区 分析から因子生態研究へ―.人文地理,27, 638-666. 森川 洋(1976)広島・福岡両市内における因子生態 (Factorial Ecology)の比較研究 . 地理学評論,49, 300-313. 横山和典・森川 洋(1977)広島市の都市因子生態分 析 . 地理科学,27, 25-39.
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An Attempt of Residential Area Classification Considering Distance
:A Case Study for the Tokyo Metropolitan Area
Kuniaki KUSANO*
Key words: residential area classification, distance, concentric structure, sector formation
* Graduate student, Graduate School of Science and Technology, Nihon University. Researcher, Statistical Information Institute for Consulting and Analysis (Sinfonica)