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自転車事故の実態と安全な乗り方

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自転車事故の実態と安全な乗り方

御子神 正己

Mikogami Masami 自動車リスクコンサルティング本部 企画開発部 部長 はじめに 健康志向、環境問題、東日本大震災による交通インフラの混乱等を背景に、自転車を交通手段とする人が 増加している状況にある。 一方、直近の警察庁の統計によると、交通事故のうち自転車が関連する事故の占める割合が 20%を超えて いる実態にある。また、自転車と歩行者とのトラブルも発生しており、信号無視の自転車が歩行者をはね死 亡させたケースやピスト(ブレーキが装備されていない競技用自転車)による事故等が報道されている。そ うしたなか、各警察署は自転車の正しい交通ルールを徹底するため、自転車走行について指導・取締りを強 化しており、テレビ、新聞などのマスコミも自転車の交通事故を大きく取り上げている。 自転車は子供から高齢者まで幅広い年齢層で使用されているが、自動車とは異なり運転免許が必要ではな いため、交通ルールがあまり浸透していない。その結果、自転車の乗車ルールを知らない、知っていても守 らない人を数多く見かける。傘をさしたまま自転車に乗り携帯を使用していたり、アーケード街を自転車に 乗り猛スピードで走行していたり、夜間、ライトをつけずに走行したりしている人もいる。これでは、自転 車による交通事故が発生するのも当然である。 そこで、本レポートでは、自転車事故の実態と安全な乗り方についてまとめた。 1. 自転車事故の実態 1.1. 自転車乗用中の死傷者数の動向 平成 22 年(2010 年)の自転車乗用中の死傷者数(図 1)は前年に比べ 5,000 人弱減少したものの、15 万 人台と高止まりにある。交通事故の死傷者数に占める自転車乗用中の死傷者の割合は、10 年前の平成 12 年 (2000 年)には 15.1%、交通事故の発生件数が最も多かった平成 16 年(2004 年)には 16.0%であったが、 直近の警察庁の統計ではその割合が 16.8%となっている。また、平成 12 年と平成 22 年の交通事故死傷者数 を減少率で見ると、自転車乗用中を除く交通事故では 24%に対し、自転車乗用中は 14%にとどまっており、 実に 10 ポイントの差がある。 自転車事故による死傷者数は、自転車以外の交通事故ほど顕著に減少していないため、全交通事故に占め る自転車事故による死傷者数の構成割合は増加となるのである。

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図 1 状態別死傷者数の推移(各年 12 月末)1 1.2. 死傷者数の年齢層 自転車乗車中の死傷者を年齢層別(図 2)に見ると、「15 歳以下」は平成 16 年からの 6 年間で 11,379 人減 少したものの、平成 22 年は 27,548 人で依然として最多となっている。これに次いで「16∼19 歳」が多く、 平成 22 年は平成 21 年(2009 年)より 253 人増加し 21,543 人であった。こうした未成年者の割合が、平成 22 年は合計 49,091 人と自転車乗車中の死傷者全体の 32%を占めている。 図 2 自転車乗用中の年齢層別死傷者数(各年 12 月末)2 1 警察庁 交通局. 平成 22 年の交通事故の発生状況. 2011, 46p. p.9 表「状態別死傷者数の推移(各年 12 月末)」のデータ より当社作成。(本資料は、警察庁ホームページ「安全快適な交通の確保」(http://www.npa.go.jp/koutsuu/index.htm)より 入手することができる。) 2 同上, p.13 表「自転車乗用中の年齢層別死傷者数(各年 12 月末)」のデータより当社作成。 36,152 36,747 36,775 37,832 38,927 37,831 34,489 34,024 31,849 29,659 27,548 26,699 26,481 25,865 25,956 26,060 25,968 24,519 23,804 22,370 21,290 21,543 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 15歳以下 16∼19歳 20∼24歳 25∼29歳 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼64歳 65∼74歳 75歳以上 712,598 737,577 724,575 741,306 738,905 725,611 694,661 643,920 581,711 564,211 560,862 176,163 177,811 180,573 184,206 190,251 185,532 175,453 171,923 162,967 156,308 151,631 15.1% 14.9% 15.4% 15.5% 16.0% 15.9% 15.9% 16.5% 17.1% 17.1% 16.8% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 自動車乗車中 自動二輪車 その他 原付 歩行中 自転車 自転車事故の占有割合 (人) (人)

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1.3. 相手当事者 自転車が関連する交通事故の相手当事者(図 3)を見てみると、「自動車」との事故件数は平成 16 年を境 に減少傾向に転じているものの、平成 22 年の発生件数は 127,419 件と全体の 84%を占めている。また、「二 輪車」「自転車相互」「自転車単独」「その他」についても同様の傾向を示しており、なかでも「二輪車」との 事故件数は 10 年前と比較して 25%減少している。その一方で、「歩行者」との事故は年々増加する傾向にあ り、平成 22 年には 2,760 件と 10 年前に比べ 1.5 倍を超える水準となっている。歩行者にとって自転車の存在 は脅威となりつつある。 図 3 自転車関連事故の相手当事者別交通事故件数の推移(各年 12 月末)3 1.4. 自転車事故の発生原因 自転車関連事故の発生状況を事故類型別(図 4)に見ると、その半数以上が「車両相互の出会い頭衝突」 により発生しており、この比率は年々増加する傾向にある。これに次いで「車両相互の右折時衝突」「車両相 互の左折時衝突」の順となり、この 3 類型で自転車事故全体の原因の約 80%を占めている。自転車の移動速 度は意外に速く、自動車のドライバーがその行動を捉えきれていないケースも多い。このため、自転車の利 用者は交差点や駐車場の出入口付近など車両と交錯する可能性のある場所では十分注意を払って走行する必 要がある。また、自動車の運転者は交差点を通過する際に 2 段階停止や右左折時の安全確認の徹底を図る必 要がある。 3 同上, p.29 表「自動車関連事故の相手当事者別交通事故件数の推移(各年 12 月末)」のデータより当社作成。 12,704 12,835 12,981 12,436 12,793 12,706 11,339 11,642 10,639 9,973 9,496 1,827 1,807 1,941 2,243 2,496 2,576 2,767 2,856 2,942 2,934 2,760 150,471 150,309 151,160 153,336 156,558 152,287 144,503 141,345 134,300 130,747 127,419 0 50,000 100,000 150,000 0 10,000 20,000 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 二輪車 その他 自転車単独 自転車相互 歩行者 自動車 (件)

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図 4 自転車関連事故の事故類型別交通事故発生件数(各年 12 月末)4 次に第 1 当事者5別交通事故件数の推移(図 5)を見てみると、自転車が第 1 当事者となった交通事故の発 生件数は、平成 16 年から減少傾向にあるものの、平成 22 年には 23,609 件発生しており、全体に占める割合 も減少する傾向を見せていない。さらに、自転車が直接人と衝突した事故を見ると、発生件数と割合のいず れも増加傾向を示しており、平成 22 年には全体の 3.9%に当たる 2,687 件と、10 年前に比べ約 900 件以上も 増加している。 図 5 第 1 当事者別交通事故件数の推移(各年 12 月末)6 また、自転車乗用者が第 1 当事者となった交通事故件数を法令の違反別・年齢別(図 6)に見てみると、「∼ 15 歳」の年齢層が最も多く発生しており、次いで「16 歳∼19 歳」「20 歳∼29 歳」の順となっている。法令 4 同上, p.29 表「自転車関連事故の事故類型別交通事故件数(各年 12 月末)」のデータより当社作成。 5 第 1 当事者とは、最初に交通事故に関与した車両等(列車を含む)の運転者又は歩行者のうち、当該交通事故における 過失が重い者をいい、また過失が同程度の場合には人身損傷程度の軽い者をいう。 6 財団法人 交通事故総合分析センターが発行している冊子『交通統計』(平成 12 年版∼平成 22 年版)に掲載されてい る「事故類型別・第 1 当事者別交通事故件数」のデータより当社作成。 92,211 91,642 92,538 94,929 99,469 97,816 92,087 91,052 87,442 84,525 81,412 20,029 20,653 20,750 21,253 20,898 20,413 19,943 19,896 19,027 18,424 18,445 17,187 17,276 18,214 18,549 19,109 18,648 18,036 18,181 17,481 17,597 17,564 53.0% 52.3% 51.9% 52.2% 52.9% 53.3% 52.8% 53.2% 53.8% 54.0% 53.7% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 車両相互/出会い頭衝突 車両相互/右折時衝突 車両相互/左折時衝突 車両相互/追越・追抜時衝突 車両相互/正面衝突 車両相互/横断時衝突 車両相互/その他 車両単独/その他 人対車両 車両相互/出会い頭衝突の割合 26,680 24,845 25,500 25,779 28,235 27,963 27,250 27,073 25,884 24,627 23,609 1,718 1,681 1,807 2,116 2,376 2,435 2,636 2,743 2,834 2,846 2,687 2.9% 2.6% 2.7% 2.7% 3.0% 3.0% 3.1% 3.3% 3.4% 3.3% 3.3% 2.0% 2.0% 2.1% 2.5% 2.9% 3.0% 3.4% 3.7% 4.0% 4.1% 3.9% 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 5.0% 6.0% 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 自転車 自転車(人対車両事故) 自転車(割合) 自転車割合(人対車両事故) (件) (件)

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違反の内容は、何れの年齢層においても、「安全運転義務違反」にあたる「安全不確認」が最も多い。安全不 確認以外では、若年層では「一時不停止」「信号無視」といった違反が多く、基本的な交通ルール遵守の徹底 を促す必要があるが、高齢者層においては「ハンドル操作」が多く、前かごに重たい荷物を乗せない、危険 を感じたら停車して待つ、または早めに回避するなどといった乗車方法に対して注意を促す必要がある。 図 6 自転車乗用者の違反別・年齢層別交通事故件数(第 1 当事者)7 (参考)「自転車事故と責任について」 自転車は道路交通法において「軽車両」とされている。このため、法律違反により事故が生じると刑事責 任を問われることとなる。実際、平成 23 年(2011 年)5 月には、国道を自転車で強引に横断した自転車の運 転者が、死亡事故を誘発させたとして重過失致死の疑いで起訴されている。また、相手にケガを負わせたり 死亡させたりした場合には民事上の責任も問われることとなる。歩行者と自転車の事故では、自転車側が第 1 当事者(過失割合が高い)になるケースが多い。これは、歩行者は軽車両である自転車との比較では交通 弱者になるためである。自転車と歩行者の事故であっても軽微な事故ばかりではなく、死亡事故、重傷事故 となる場合もある。実際に、高額賠償事例も発生している(表 1)。 表 1 自転車での加害事故例8 被害者(歩行者) 被害程度 賠償額 事故の状況 55 歳女性 死亡 5,438 万円 信号を無視して走行してきた自転車が青信号の横断 歩道を進行中の歩行者と衝突 57 歳女性 重大な障害 5,000 万円 無点灯で携帯電話を走行中の自転車が歩行者と衝突 75 歳女性 重大な障害 3,124 万円 無点灯で走行中の自転車が歩行者と衝突 7 財団法人 交通事故総合分析センター. 交通統計. 平成 22 年版, 2011, 244p. p.52-53 表「自転車乗用者の違反別・年齢層 別交通事故件数(第 1 当事者)」のデータより当社作成。 8 社団法人 日本損害保険協会. 知っていますか自転車の事故∼安全な乗り方と事故への備え∼ (http://www.sonpo.or.jp/archive/publish/traffic/pdf/0002/book_bicycle.pdf) 8p., p.6 表「自転車での加害事故例」より当社に て一部編集・加筆。 安全運転義務違反内訳 2,524 1,871 1,612 1,261 1,069 960 1,371 1,285 606 1,367 986 568 279 241 228 373 355 450 419 391 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 ∼15歳 16∼19歳 20∼29歳 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼69歳 70∼79歳 80歳以上 安全運転義務違反 一時不停止 信号無視 交差点進行義務違反 優先通行妨害 その他 ∼15歳 16∼19歳 20∼29歳 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼69歳 70∼79歳 80歳以上 ハンドル操作 279 90 107 118 155 205 407 480 235 ブレーキ操作 96 37 36 51 61 57 84 64 37 前方不注意 296 340 281 183 148 151 150 104 33 動静不注視 127 156 230 187 139 94 103 59 26 安全不確認 1,573 1,151 876 646 484 393 548 506 237 安全速度 46 26 12 9 19 11 10 6 1 その他 107 71 70 67 63 49 69 66 37 (件) (件)

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2. 自転車乗車のルール 安全に自転車を利用するためには、基本ルールを理解することが大事である。次のクイズで自転車の交通 ルールを再確認していただければと思う。 【問題】(○×形式で解答してください。) 問1. 自転車は道路の左右どちらのサイドを走行してもかまわない。 問2. 通常、自転車が走行する場所は歩道である。 問3. 13 歳未満は自転車に乗る時はヘルメットを着用しなければならない。 問4. 2 台以上の自転車で横に並んで走ってはいけない。 問5. 自転車は前輪または後輪のいずれかのブレーキが効けば運転してもかまわない。 問6. 携帯電話を使用しながら自転車に乗ってもかまわない。 問7. 雨が降っている時は傘を差して自転車に乗ってもかまわない。 問8. 交差点に自転車横断帯がある場合、自転車は自転車横断帯を通行しなければならない。 問9. 夜間、自転車に乗る場合はライトを点灯しなければならない。 問10. 自転車の飲酒運転は禁止されている。 問11. 自転車は常に歩行者用信号に従って通行すればよい。 問12. 自転車は横断歩道を通行できない。 問13. 自転車が歩道を走行する場合、通行指定部分がない限り、車道よりを走行しなければならない。 問14. 自転車道が設置されている道路では、止むを得ない場合を除いて自転車道を走行しなければな らない。

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【解答】 問 1. × 自転車は道路交通法上軽車両であり、歩車道の区別のある道路では、 車道の左端に沿って通行しなければならない。 (道路交通法第 17 条第 1 項、第 18 条第 1 項) 問 2. × 自転車は次の場合を除いて車道を走らなければならない。  「歩道通行可」の標識のある歩道を通行するとき  児童(6 歳以上 13 歳未満)や幼児(6 歳未満)が運転するとき  70 歳以上の高齢者が運転するとき  内閣府令で定める障害のある身体障害者  駐車車両等のため車道の左側端の通行が困難な場合や交通量が 著しく多く、道路幅が狭いため自動車と接触の危険があるなど、 やむを得ないと認められるとき 歩道を走行する際には「普通自転車通行指定部分」があるときはその部分を徐行する。歩道通行部分が指 定されていないときは、歩道の車道寄りの部分を徐行して進行しなければならない。 (道路交通法第 63 条の 4 第 2 項) 問 3. ○ 子供の自転車事故では、頭部へのケガが多いと言われており、ヘルメットの着用は必須である。 (道路交通法第 63 条の 10) 問 4. ○ 「並進可」の道路標識がある場所以外は、自転車の並進は禁止である。 (道路交通法第 19 条) 問 5. × 自転車は前輪および後輪のいずれも制御するためのブレーキを備えていない場合は運転することはできな い。(道路交通法第 63 条の 9 第 1 項 、道路交通法施行規則第 9 条の 3) 問 6. × 携帯を使用しながら自転車を運転すると、前方注視が不十分になり、安全走行に支障をきたすため禁止で ある。(道路交通法第 71 条の 6 ) 問 7. × 問 6 の解答と同様、視界が不十分になり、安全走行に支障をきたすため禁止である。 (道路交通法第 71 条の 6 ) 「並進可」 「自転車および歩行者専用」 写真 1 道路標識「逆送 禁止」(当社撮影)

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問 8. ○ 自転車は、交差点に自転車横断帯が設けられているときは、そこを通行 しなければならない。 (道路交通法第 63 条の 7 ) 問 9. ○ 夜間にライトを点灯させるのは、自分の視界を確保するだけでなく、自動車や歩行者に自分の存在を気付 かせるためでもある。(道路交通法第 52 条) 問 10. ○ 自転車も軽車両であるため、当然飲酒運転は禁止である。(道路交通法第 65 条の 1 ) 問 11. × 信号機がある場合は信号機に従い、自転車用信号がある場合にはその信号に従っていただきたい。 (道路交通法 7 条) 問 12. × 普通自転車は歩行者用信号機のある横断歩道を通行できる。しかし、自転車横断帯があるときは、従来 どおり自転車横断帯を通行しなければならない。 (道路交通法施行令第 2 条第 1 項) 問 13. ○ 自転車の歩道通行方法「普通自転車通行指定部分」があるときはその部分を徐行する。歩道通行部分が指 定されていないときは,歩道の車道寄りの部分を徐行して進行しなければならない。 (道路交通法第 63 条の 4 第 2 項) 問 14. ○ (道路交通法第 63 条の 3) 写真 2 「自転車横断 帯」(当社撮影) 写真 3 「専用信号機」(当社撮影)

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おわりに 自転車事故の削減には、ハード面の交通環境を整備することが重要であり、自転車道や自転車専用通行帯 の拡充・整備を進めていく必要がある。また、駐停車している車両により自転車が安全通行できないなどの 問題について、改善に向けた取組が必要である。 しかし、何よりも重要なのは自転車の安全な乗り方に対する教育である。自転車の安全利用に向け、クイ ズで取り上げた自転車ルール以外にも、「走行中にヘッドホン等の装着による音楽プレーヤーの使用」「二人 乗りの禁止」などの重大な事故に結びつく行為も道路交通法や各都道府県公安規則などに定められており、 交通規則の正しい理解や周知徹底が必要である。幼児や児童については、学校、自治体などが交通安全教育 を一定行っているものの、未だ普及不足と言わざるを得ない。また、幼児や児童を指導する保護者について も交通規則、マナーに関する知識が十分とは言えない。自転車乗用者へ「自転車安全利用五則」(表 2)など の交通規則とマナーを身につけてもらうため、一層の指導・教育の場を増やすことがこれからの課題である。 警察庁は、交通事故における自転車関連事故の比率の増加を受け、平成23年10月25日、「良好な自転車交 通秩序の実現のための総合対策の推進について」を各管区警察局長、各都道府県の長などに通達した。この なかで、「自転車の通行環境の整備や交通規制の実施場所の見直し」「基本ルールの周知」「学校を始めと した様々な場面での交通安全教育の充実や地方公共団体、自転車関係事業者等との連携・協働」「街頭での 指導・警告活動の強化」「違反を繰り返す利用者、ブレーキのないピスト自転車利用者等悪質な利用者の検 挙」などの具体的な対策を掲げており、今後の推進に期待したい。 表 2 自転車安全利用五則(平成 19 年 7 月 10 日交通対策本部決定より)9 9 警察庁, “自転車はルールを守って安全運転∼自転車は「車のなかま」∼”, http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/index.htm , (アクセス日:2011-12-15) 1.自転車は、車道が原則、歩道は例外 2.車道は左側を通行 3.歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行 4.安全ルールを守る ・飲酒運転・二人乗り・並進の禁止 ・夜間はライトを点灯 ・交差点での信号遵守と一時停止・安全確認 5.子どもはヘルメットを着用

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執筆者紹介 御子神 正己 Masami Mikogami 自動車リスクコンサルティング本部 企画開発部 部長 NKSJ リスクマネジメントについて NKSJ リスクマネジメント株式会社は、株式会社損害保険ジャパンと日本興亜損害保険株式会社を中核会社とする NKSJ グループのリスクコンサルティング会社です。全社的リスクマネジメント(ERM)、事業継続(BCM・BCP)、火災・爆 発事故、自然災害、CSR・環境、セキュリティ、製造物責任(PL)、労働災害、医療・介護安全および自動車事故防止な どに関するコンサルティング・サービスを提供しています。詳しくは、NKSJ リスクマネジメントのウェブサイト (http://www.nksj-rm.co.jp/)をご覧ください。 本レポートに関するお問い合わせ先 NKSJ リスクマネジメント株式会社 自動車リスクコンサルティング本部 企画開発部 〒160-0023 東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル TEL:03-3349-5436(直通)

図 1 状態別死傷者数の推移(各年 12 月末) 1 1.2. 死傷者数の年齢層 自転車乗車中の死傷者を年齢層別(図 2)に見ると、 「15 歳以下」は平成 16 年からの 6 年間で 11,379 人減 少したものの、平成 22 年は 27,548 人で依然として最多となっている。これに次いで「16〜19 歳」が多く、 平成 22 年は平成 21 年(2009 年)より 253 人増加し 21,543 人であった。こうした未成年者の割合が、平成 22 年は合計 49,091 人と自転車乗車中の死傷者全体の
図 4 自転車関連事故の事故類型別交通事故発生件数(各年 12 月末) 4 次に第 1 当事者 5 別交通事故件数の推移(図 5)を見てみると、自転車が第 1 当事者となった交通事故の発 生件数は、平成 16 年から減少傾向にあるものの、平成 22 年には 23,609 件発生しており、全体に占める割合 も減少する傾向を見せていない。さらに、自転車が直接人と衝突した事故を見ると、発生件数と割合のいず れも増加傾向を示しており、平成 22 年には全体の 3.9%に当たる 2,687 件と、10 年前に比べ約

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