2014年10月9日㊍ 大阪国際会議場 第1部 講演 「未来を生き抜く。 ∼自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ∼」 藤原和博 教育改革実践家 「2020年─日本。∼新たな地平線の創造∼」 松下東子 野村総合研究所主任コンサルタント 第2部 パネルディスカッション 「創り拓く私たちの未来」 モデレーター 蟹瀬誠一 国際ジャーナリスト パネリスト 浅谷治希 LOUPE代表 太田雄貴 フェンシング銀メダリスト 塚本昌彦 ウェアラブル伝道師 久世理恵子 野村総合研究所主任コンサルタント 2014年10月15日㊌ 東京国際フォーラム 第1部 講演 「未来を生き抜く。 ∼自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ∼」 藤原和博 教育改革実践家 「2020年─日本。∼新たな地平線の創造∼」 松下東子 野村総合研究所主任コンサルタント 第2部 パネルディスカッション 「創り拓く私たちの未来」 モデレーター 膳場貴子 ニュースキャスター パネリスト 石黒浩 ロボット学者 田中浩也 ファブラボジャパン発起人 古田敦也 野球解説者 金惺潤 野村総合研究所上級コンサルタント 2014年10月29日㊌ 名古屋国際会議場 第1部 講演 「未来を生き抜く。 ∼自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ∼」 藤原和博 教育改革実践家 「2020年─日本。∼新たな地平線の創造∼」 松下東子 野村総合研究所主任コンサルタント 第2部 パネルディスカッション 「創り拓く私たちの未来」 モデレーター 福島敦子 ジャーナリスト パネリスト 大平貴之 プラネタリウム・クリエーター 高橋智隆 ロボットクリエーター 古田敦也 野球解説者 松尾未亜 野村総合研究所上級コンサルタント
講演
こ
れからの未来がどうなるの か、その未来を開く鍵につい て、お話したいと思います。鍵とは 情報編集力です。これを理解し強 める方法を知れば、ビジネスや投 資、教育はもちろん、皆さんの人生 後半を豊かに過ごしていくのに役立「未来を生き抜く。
∼自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ∼
」
つと思います。 日本は1998 年から成熟社会に 入りました。高度成長が終わって 経済が沈滞すると、社会の本質が 変わります。例えば成長期の日本は 「みんな一緒」の時代でした。とこ ろが成熟社会になると、一人ひとり の個に分かれていきます。昔は電話 が一家に1台ありましたが、今は携 帯を一人が1台持っています。 「みんな一緒」の時代では、日本 人の幸福観は共通していました。し かし成熟社会では、幸せのあり方 は一人ひとり異なります。同様に「み 教育改革実践家藤原 和博
ふじはら・かずひろ ごあいさつ未来は私たち一人ひとりが
自ら切り拓くもの
野村総合研究所 代表取締役社長 嶋 本 正 NRIの企業理念は「未来創発」です。 「未来創発フォーラム」は、皆さまと 将 来のあり方について考えるため に、2003年から毎年開催しています。 未来は私たちが自ら切り拓くべきも のと考えて、今年は「創り拓く私た ちの未来」をテーマとしました。さ まざまな分野におけるパイオニアの 方々のお話や議論から、未来づくり につながるヒントを得ていただけれ ば幸いです。「2020 年
─
日本。
∼新たな地平線の創造∼
」
野村総合研究所 主任コンサルタント松下 東子
まつした・もとこ んな一緒」の時代では正解は一つで、 正解を早く導くために求められたの は情報処理力でした。しかしこれ からの時代は、正解はいくつもあり ます。一つの事象に対して、5人い れば5通りの解が生じます。 こうなると、自分が納得し、か つ関わる他者も納得できる納得解 を導くことが重要になります。それ が情報編集力です。言い換えれば、 相手の意識につながって自分を印 象づけたり、相手の知恵や技術を 自分にたぐりよせたりする「つなげる 力」が大切になります。 日本人の人生観はこれから大きく 変わっていくでしょう。これまでの日 本人は、仕事のピークを40 ∼50 代 で迎え、以降はなだらかに下降する 人生曲線をたどっていました。それ を図に例えて、私は「富士山型」の 人生と呼んでいます。しかし今後の 長寿社会では、いくつもの山が連な る「八ヶ岳連峰型」の生き方が大切 になります。ここで言う山とは、人 生の前半なら職場組織であり、後 半なら地域社会や趣味など、自分 が属するいくつものコミュニティにな るでしょう。 コミュニティの山は、育てていく のに時間がかかります。しかし私た ちは、およそ10 年で一つの仕事を 覚え、組織の中で役割を果たしてき ました。ですから現在60 代の方で も、まだまだ二つ、三つのコミュニ ティで活躍できます。そのとき情報 編集力、つなげる力が必要になりま す。皆さんが多くの山を築いて豊か な人生を送ることが、次の世代の 未来を拓くことにつながると信じて います。■幸
福な未来社会をつくる準 備をしていただくために、 2020 年を区切りの年とする提案を したいと思います。 日本の人口は今後急激に減少し ます。支える人と支えられる人のバ ランスも変わり、社会保障費の負担 も増大します。東京一極集中が進 み、地方自治体の数は滅っていくで しょう。こうなると日本の経済規模 は縮小し、国際的な投資先として の魅力を失います。ヒト・モノ・カネ が集まらなくなり、イノベーションも 起きなくなります。これが、2020 年 に区切りをつけなかった場合の日 本の姿だと思います。 そこで未来への処方箋として「女 性の活躍」「地方創生」「グローバ ル化」「技術革新」などのキーワー ドが挙がっています。「女性の活 躍」については、女性の登用を促 す制度や施設の整備より、女性に 限らず誰もがライフステージに合わ せて自由に働ける社会に変えていく ことが重要だと思います。「地方創 生」では、地域ごとの特色を活かし た産業のてこ入れを行って、活性 化のスパイラルをつくっていく。ド イツの地方都市レーゲンスブルグな どは参考になります。「グローバル 化」では、日本の市場を海外に魅 力的に見せるために、法人減税や 規制緩和、国際金融センターとして の競争力強化、国民意識のグロー バル化などを行っていくべきでしょ う。「技術革新」では、ネットワー クを介してあらゆるものがつながる IoT(Internet of Things)によって、 新しい価値が生み出せるようになり ます。こうした技術を活用し、産業 のモデル自体を日本品質のサービ ス産業として輸出する。それが日本 経済の再生につながると思います。 日本は戦後の成長期の姿勢のま ま20 年ほど余分に走り続けてきま した。今の日本は縮み方を模索す る時期に来ています。2020 年に区 切りを置き、その先の新たな地平 線を見ながら、私たち一人ひとりが 幸福な未来社会をつくる準備を始 めることが、これからは重要です。 ■ 2 3パネルディスカッション
「創り拓く 私たちの未来」
[モデレーター] 蟹瀬誠一 │国際ジャーナリスト [パネリスト] 浅谷治希 │ LOUPE代表 太田雄貴 │フェンシング銀メダリスト 塚本昌彦 │ウェアラブル伝道師 久世理恵子│野村総合研究所 主任コンサルタント新井
紀子
パ
ネルディスカッションでは、 さまざまな分野で挑戦し、ブ レークスルーを経験しているパネリ ストらが、未来を創り拓くための議 論を行いました。自己紹介と、チャ レンジへのきっかけを話したあと、 モデレーターの蟹瀬氏は「日本は曲 り角に来ている。何が課題でどんな ことに取り組めばよいか」と問いか けました。10 年以上前からウェアラ ブルコンピューティングの研究を続 けてきた塚本氏は「日本社会は、リ スクがあることに踏み切らない。し かし失敗のデメリットも踏まえてチャ レンジしていくことは大切」と話し ました。教員同士が支え合う情報 共有サービスを提供する株式会社 LOUPE代表の浅谷氏は「日本人に は自信もないと思う。やればできる ことを、できないと思い込んで諦め てしまう」と指摘しました。それに対 しフェンシング五輪メダリストである 太田氏は、自分の体験を振り返り ながら、成功体験があれば自信を 得られることを説明しました。 「特に若い人に成功体験が乏しい、 彼らと創発するために何を心がけれ ばよいか」という会場からの質問に、 塚本氏は「大学では学生の話をよく 聞き、本人が好きと実感するテーマ に取り組むよう勧めている。すると 自主的に取り組むようになる」と述べ ました。NRIのコンサルタントであ る久世は「目立つ人をたたく風潮が 日本にあるのが残念。人と違うこと を面白いと思える社会にしていきた い」と発言しました。 未来を担う若者世代に求められ私
たちが望む未来を実現する ために、どんな行動を積み 重ねていけばよいのか。東京のパ ネルディスカッションではモデレー ターの膳場氏が、パネリストそれぞ れが描く未来について問いかけまし た。人型ロボットを研究する石黒氏 は「未来はクリエーターがつくるもの。 あらゆる技術はこれから人間らしく なっていく。あと数年後にロボットが 人の生活を支える社会が来ると信じ ている」と答えました。「ファブラボ」 ることは何かという会場からの質問 に、浅谷氏は「それは自分で考える こと。自分のやりたいことに取り組 み続ける。それが社会に求められる ことにつながっていくと思う」と話し、 太田氏も、何をしたいかを考えるこ とがとても重要と指摘しました。 2020 年の東京オリンピックに登 場する画期的なツールは何かという 会場からの質問に、壇上では、す べての人がウェアラブル端末をつけ てスポーツ競技を楽しむようになる のではという話で盛り上がりました。 最後に、未来を創るための先駆者 からのメッセージとして、浅谷氏は 「毎日を積み上げていった結果、明 るい未来があると信じている。予測 不可能性を楽しんでいきたい」、塚 本氏は「私は50歳だがまだまだチャ レンジを続けたい。ウェアラブル端 末を皆がつける社会になると信じ ている」と述べ、久世は「自分がど んな人であり何ができるかを考えて ほしい。それがはっきりしていれば、 機会が訪れたときにチャレンジしや すい」と話しました。太田氏も、自 分は何者であるかを説明できるコン テンツ、言い換えれば軸を持つ必 要性を強調しました。最後に蟹瀬氏 は「未来をつくるのは今である。危 機感を共有して明日への一歩を踏み 出してほしい。熱意のこもったパネ リストのメッセージを周囲にも伝えて いただきたい」と締めくくりました。■蟹瀬 誠一
かにせ せいいち 国際ジャーナリスト 明治大学国際日本学部 教授太田 雄貴
おおた ゆうき フェンシング 北京・ロンドン五輪 銀メダリスト FIE(国際フェンシング連盟)選手委員長浅谷 治希
あさたに はるき 株式会社 LOUPE 代表取締役社長塚本 昌彦
つかもと まさひこ 神戸大学大学院工学研究科教授 NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構 理事長久世 理恵子
くぜ りえこ 野村総合研究所 主任コンサルタント [モデレーター] 膳場貴子 │ニュースキャスター [パネリスト] 石黒浩 │ロボット学者 田中浩也│ファブラボジャパン発起人 古田敦也 │野球解説者 金惺潤 │野村総合研究所 上級コンサルタントという、3Dプリンターを使った市民 工房のネットワークを展開する田中 氏は「私たちの身の周りにある道具 は、旧石器時代から続く人間の営 みの中で生まれ進化したもの。私も、 未来の人が道具をつくるときに役立 つ道具をつくりたい」と話しました。 元野球選手でスポーツキャスター の古田氏は「子どもや若い人たちに、 自分が描く未来は実現できると伝え ることが仕事だと思っている」と述べ、 大学時代に眼鏡をかけていたことで ドラフト入りできず、悔しさから努力 を続けて2年後にプロ入りを果たし た経緯を語り「少し無理と思うことで もやってみることが大切。そんなこと を若い世代に伝えたい」と発言しま した。NRIの金は「問題解決が自 分の生き様と思って仕事をしている。
三
冨査雄
パネルディスカッション
「創り拓く 私たちの未来」
責任ある投資行動を働きかけること で、社会を良くしていきたい」と述べ ました。 未来に向けてどんな教育をして いけばよいかという会場からの質問 に、田中氏は「僕は大学の教員だ が、学生にあまり教えない。かわり に失敗を多く経験してもらっている。 失敗をとがめない空気をつくること が必要」と回答。古田氏は「困難に 陥ったときに、最初から諦めてしま う若い人が最近多くなったと感じる。 とにかくやってみる。それで失敗し ても、また次の方法も見えてくる」と 述べました。石黒氏は「夢を持たな い。言い換えると自分の可能性を柔 軟に広げられるいくつもの目標を持 つ。それと自分の命に価値がないこ とを適度に認めて、その価値を探し 続ける生き方をすることが大事」と指 摘しました。 未来を切り拓くとき、直面する 困難にどう向き合えばよいか、また、 未来に向けてどんな行動をとってい けばよいかという質問に「逆境に向 き合ういくつものアプローチを持つ。 いろいろな手段をもって試すと、あ るときすっと越えられることがある。 そして何歳であろうと、積極的に動 いていくのが一番」と古田氏。田中 氏は「困難をどう解決するかが醍醐 味になる」、石黒氏は「人間により深 い興味を持って生きてほしい。それ が新しい技術を正しく受け入れるこ とにつながる」と述べ、最後に金が 「迷ったときは難しいほうを選択して ほしい」というメッセージで締めくくり ました。■名
古屋のパネルディスカッショ ンは、モデレーターの福島 氏による問いかけから始まりました。 新たな価値を生む挑戦へのきっか けや、どんな未来を描いているかと いう質問に、驚異的な数の星を投 影するプラネタリウムを個人で開発 した大平氏は「ただ好きだから続け てきた。環境に縛られず個人で作っ てきたことで、極端な商品を生み出 せたと思う」と回答。ロボットクリ エーターの高橋氏も「私も好きだか ら作っている。誰もやらない、ユニー クなことに取り組みたい。そのほう がリスクは少ない」と述べました。元 プロ野球選手の古田氏は「若いとき は試合で活躍したい、監督から文句 を言われない選手になりたいと、一 生懸命だった。野球で多くの人を幸 せにできると気づいてからは、野球 を通じて地域を盛り上げていけたら膳場 貴子
ぜんば たかこ TBS「ニュース23」キャスター田中 浩也
たなか ひろや 慶應義塾大学環境情報学部 准教授石黒 浩
いしぐろ ひろし 大阪大学特別教授 ATR 石黒浩特別研究所客員所長古田 敦也
ふるた あつや スポーツキャスター 元ヤクルトスワローズ選手金 惺潤
きん せいじゅん 野村総合研究所 上級コンサルタント [モデレーター] 福島敦子 │ジャーナリスト [パネリスト] 大平貴之│プラネタリウム・クリエーター 高橋智隆 │ロボットクリエーター 古田敦也 │野球解説者 松尾未亜 │野村総合研究所 上級コンサルタント福島 敦子
ふくしま あつこ ジャーナリスト高橋 智隆
たかはし ともたか 株式会社ロボ・ガレージ 代表取締役社長 東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授大平 貴之
おおひら たかゆき プラネタリウム・クリエーター 有限会社大平技研 代表取締役古田 敦也
ふるた あつや スポーツキャスター 元ヤクルトスワローズ選手松尾 未亜
まつお みあ 野村総合研究所 上級コンサルタント 6 7株式会社 野村総合研究所 〒100 - 0005 東京都千代田区丸の内1- 6- 5 丸の内北口ビル Tel. 03- 5533 -2111 http://www.nri.com/jp/ 今回のフォーラムでは、登壇 者と来場 者とのやりとりや、 来場 者 同 士 のコミュニケー ションなどもあり、会場は賑 わいました。今年も各会場ロ ビーでは、未来への予測や提 言をまとめたNRIの 書 籍 や 刊行物を展示しました。 http://www.facebook.com/nriforum.jp 「NRI 未来創発フォーラム」公式 facebookページはこちら と考えている」と話しました。NRIの コンサルタントである松尾は、組織 課題を扱う専門家になった経緯を述 べ、「経営者に夢や想いがあっても、 会社業務に落としていくのが難しい。 その支援をすることで企業に価値を 生み出したい」と発言しました。 新たな価値を生む取り組みを社 会にどう広めていくかという問いに、 ロボット開発をすべて自身で行う高 橋氏は「自分が欲しいものを作り続 ける。すると同じ感性を持つ人が 集まり、受け入れられていく」と語 り、大平氏も同意してから「しかし、 とがった人間は孤立しがち。ところ がチームを組むと最強になる。プロ 野球はまさにとがった人間の集まり。 そのマネジメント方法は産業にも活 かせるのではないか」と提案しました。 古田氏は「状況や人によっていろい ろな方法がある。私の場合は、チー ムが勝つために自分はどんな貢献が できるかを考えた」と語りました。松 尾は「とがったアイデアや技術を持 つ人は、企業の中でも孤立しがち。 その人の能力発揮にとって妨げにな る人を排除し、経営陣につないでい く、プロモーターという存在があると うまくいく」と述べました。 よりよい未来を創るために私たち 自身がやることは何かという会場か らの質問に、古田氏は「困難に直 面したとき、できるかどうか考えるの ではなく、やり抜く気概を持って臨 む」、松尾は「日々の生活に流されず、 自分の理想に目を向けてみる」と答 えました。高橋氏は「選択肢がある ときはユニークなほう、リスクがある ものを選ぶ」と答え、大平氏は「人や 組織には、それぞれ立場や考え方が ある。だから対立が起きるが、それ ぞれの強み・弱みを補い合えるので、 力を合わせようとしてほしい。すると 世の中は平和で豊かになる」と発言 しました。最後に福島氏は「好きな ことを躊躇せずにやってみる。そし て一つひとつ重ねていく。それが未 来を築く道につながっていくと実感 した」と、パネルディスカッションを 締めくくりました。■