「ミラクルチタン光触媒コートの展開」
(一社)中国地域ニュービジネス協議会 チーフコーディネーター 竹内 善幸 大気中には、自然界で舞い上がった土壌粒子、工場や自動車などからの排煙など、多くの 浮遊粒子状物質があり、これらが建造物などに付着して大気汚染物質となっています。こ れらの汚染物質のなかで、有機系の物質を太陽光などの「光」により分解する「光触媒」 技術があります。 今回は、広島県呉市に展示してある「てつのくじら館」(潜水艦)の外壁に、「光触媒」 を適用した(株)大野石油店(広島市)の技術についてご紹介致します。◆光触媒の事業規模
21世紀に入り「環境」、「エコ」と言った言葉を見たり聞いたりすることが多くなり、省 エネルギー性の高い自動車や家電製品が増えてきました。また新型インフルエンザなど発 生して抗菌など衛生面への関心も高まってきました。 このような状況の中、日本で生まれた技術の光触媒、消臭抗菌効果もあり環境にもやさ しい材料として関心が高まってきました。タイルやガラスなどの建材や空気清浄機のフィ ルターなどの家電製品として身の回りに多くの製品があります。光触媒の事業規模も増加 傾向にあり、成長産業のひとつとなっています。地球を笑顔に!(第 37 回)
図1.「てつのくじら館」 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 00 01 02 03 04 05 06 07 08 08 10 11 年度 事業規模 (億円)◆光触媒の原理・働き
光触媒の材料としては酸化チタン(TiO2)が一般的に使用されています。酸化チタン の中でもその結晶系がアナターゼ型のものが光触媒として使われています。またルチル型 は白色の顔料として使われています。 光触媒の酸化チタンが紫外線を受けると、その表面で活性酸素が発生して、ニオイや雑菌 類を酸化分解して、消臭抗菌効果を発揮します。また水となじみやすい親水性を発現して、 この性質によって雨が降れば汚れが雨と一緒に流れ落ちて美観を維持してくれます。 分解性の原理 親水性の原理 この性質を利用することにより、屋外で雨がかかれば汚れが流されて防汚効果を発揮して 美観維持、清掃コストの削減を可能にします。このような原理で光触媒が効果を発揮する ため、太陽光や蛍光灯の紫外線があれば作用し、また消耗することがないので効果が永続 的に続きます。このことで近年注目されるようになりました。 一方で、原料の酸化チタンは白色の固体粉末であるため、製品にするための薄膜化技術が 課題になります。例えば酸化チタンを担持するバインダーが分解されて耐久性が不足した り、表面仕上りの状態が劣化していく問題がありました。 図3.光触媒「酸化チタン」の原理◆「ミラクルチタン光触媒コート」の特徴
大野石油店は1999年から事業部を立ち上げ、独自に水溶性光触媒の開発を進めて、 商品名「ミラクルチタン光触媒コート」として提供してきました。 製品展開の狙いとしては、建築物や建材など対象に消臭抗菌や防汚などが必要な場所や 必要な部分へ施工が出来るコーティング技術の開発でした。昨今は建築物リニューアル需 要が拡大していますが、本技術は改修工事などにも応用が可能です。現在では全国各地の 代理店へ溶液を供給しており、多くの施工実績ができています。 ミラクルチタンの特長を以下に示します。 表1.ミラクルチタンの特長 高い光触媒効果 1)酸化チタンをゾル化した独自開発の原料 2)バインダーを含まない 3)アナターゼ型酸化チタンに加え高性能な ブルッカイト型酸化チタンを配合 耐久性 1)専用の特殊ノズルで微噴化した施工方法 であるため ・均一で平滑な薄膜を形成し、熱応力の影 響を受けにくく耐久性に優れる ・薄膜のため、下地の色やデザインを損な わない 薄膜構造 安全性 1)有害物質を含んでいない 2)溶剤を使用しない 3)溶液の pH はほぼ中性である ・作業者にも環境にも悪影響を与えない◆防汚用途のミラクルチタンの施工例
サイン(マツダズームズームスタジアム) 建築物外壁(広島女学院中学高等学校) 基材 保護層 光触媒層◆ミラクルチタンの応用
●ソーラーパネルへの応用 ソーラーパネル設置工事は、国や自治体からの補助金制度や発電した電力の買取制度な どを背景として、近年その設置件数が急激に増加しています。 しかしソーラーパネルは、経年とともに発電素子の性能低下、ガラスの劣化、さらにパ ネル表面の汚れの堆積などによって発電量の維持が困難になります。特に煤煙、黄砂、鳥 糞など付着した堆積物の除去には膨大なコストが必要で、設置状況によってはメインテナ ンスが不可能な場合もあります。 そこで、パネル表面にミラクルチタンをコーティング 降雨時のパネル表面の写真を図7.および8に示す。施工パネルは親水性が発現してい ることが分かります。 図5.施工工事(1) 図6.施工工事(2) 図7.ミラクルチタン施工パネル 図8.未施工パネル次にそのパネルの年間発電量の推移の状況を図9.に示します。 ミラクルチタン施工パネルと未施工パネル各々10kW容量の発電量を図9.に示します。 4~5年経過すると約5%の発電量の差が出ています。またこの発電量の差は経年とと もに拡がる傾向があり、これは未施工パネルでは汚れが徐々に堆積しているためと考えら れます。 ミラクルチタンの光の透過率、耐候性、耐薬品性などのデータを表2.に示します。 表2.ミラクルチタンの光の透過率、耐候性、耐薬品性 項目 試験条件 性能 透過率 紫外可視分光光度測定 95%以上 初期親水性 水滴滴下法(BLB1.0mW/cm2・30 分) 接触角 5°以下 耐アルカリ性 JIS K 5600(5 重量%の炭酸ナトリウム液に 24 時間浸漬) 異常なし 耐酸性 JIS K 5600(5 重量%の硫酸に 24 時間浸漬) 異常なし 耐塩水性 JIS K 5600(3 重量%の塩化ナトリウム液に 24 時間浸漬) 異常なし 耐付着性 JIS K 5600(碁盤目テープ剥離試験) 異常なし 促進耐候性 JIS K 5600(サンシャインウェザーメーター2000 時間) 異常なし 上記に示すように、ミラクルチタンは酸やアルカリに侵されることがなく、密着性耐候性 に優れており、これらの特性から長期間効果が発揮できると考えられます。 現地で施工する場合の懸念点として、作業者の技量による品質バラツキが考えられるが、 大野石油店は施工者の資格制度を設けており作業者の技量の維持向上に努めています。こ 図9.パネル容量:各 10kW、設置時期:2006 年 12 月 設置場所:独立行政法人大学先端研究施設屋上 1399 1368 1275 1394 1425 1476 12600 12240 11564 11723 11637 12010 12280 11810 11549 11045 11182 11137 10000 10500 11000 11500 12000 12500 13000 13500 14000 14500 15000 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 発 電 量 ( k W h ) 1000 1050 1100 1150 1200 1250 1300 1350 1400 1450 1500 日 射 量 ( k W h / ㎡ ) ミラクルチタン施工 未施工
のような取り組みの結果、大手パネルメーカーからミラクルチタンを施工してもパネル本 来の出力性能に悪影響を与えることはない保証を取り付けています。
●超耐候性塗料とのハイブリッド
ミラクルチタンはこれまでに全国で多くの施工実績がありますが、建設現場でいろいろな 要望を受けています。 ミラクルチタンそのものは高い耐久性がありますが、下地が有機塗料の場合には塗料の耐 用年数、種類によって、5~15年程度で塗り替えが必要になってきます。さらに海に近 いところでは塩害による腐食の問題がありますが、ミラクルチタンは薄膜のため防錆力を 上げることはできません。特に橋梁、電力設備、看板などでは高い防錆力があり塗り替え サイクルが長く、尚且つメインテナンスフリーのニーズが高い状況です。 そこで、ミラクルチタンの下地材として耐候性の高い塗料を検討しました。耐候性の高い 塗料としてフッ素塗料がありますが、ミラクルチタンとの密着性、耐久性など評価して下 地塗料として無機質塗料とハイブリッド化し防錆・防汚両面を兼ね備えた工法を開発しま した。 下地がコンクリートの場合の塗膜構造を示す。本工法をSSS-IP 工法(図10.参照)と して提供しています。 また、下地が塗装鋼板や金属板の場合には熱膨張に追従できるように柔軟性を高くして います。下地材質に応じては、材料工法を規定しています。無機質塗料としては、シリコン (ケイ素)を使った結合エネルギーの高いシロキサン結合を持つ樹脂です。 図10.SSS-IP 工法Self-cleaning Super-durability Solvent-free Inorganic-matter Protection-film-painting
●寿命と塗り替えサイクル
塗膜の寿命は表面の劣化、即ち光沢度と相関があり、促進試験で光沢度を評価すると耐 候性が高いと言われているフッ素塗料より高い光沢保持率を示すことが分かりました(図 12.参照)。 光沢度80%を塗装塗り替えのサイクルとすると SSS-IP 工法は25~30年と極めて 長い塗り替え期間が期待できます。さらにトップコートのミラクルチタンによって美観も 維持でき、メインテナンスフリーでランニングコスト、ライフサイクルコストを大幅に低 減することができます。 表3.に無機質塗料の基本性能を示します。 表3.無機質塗料の基本性能 項目 試験条件 性能 発火・着火試験 防耐火性能試験・業務評価方法書 合格 延焼試験 防耐火性能試験・業務評価方法書 合格 耐アルカリ性 JIS K 5600(5 重量%の水酸化カルシウム液に 24 時間浸漬) 異常なし 耐酸性 JIS K 5600(5 重量%の硝酸に 24 時間浸漬) 異常なし 耐塩水性 JIS K 5600(3 重量%の塩化ナトリウム液に 24 時間浸漬) 異常なし 耐付着性 JIS K 5600(碁盤目テープ剥離試験) 異常なし 促進耐候性 JIS K 5600(サンシャインウェザーメーター1000 時間) 異常なし 図12.寿命と塗り替えサイクル 図13.施工例また、本工法は建築分野だけでなく土木分野への応用も期待でき、広く活用されるように国 土交通省の新技術登録(NETIS)への登録がされています。 登録番号:SK-120010