Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved
『仮説検証型調査成功マニュアル』
Facebook エイザスページ(http://www.facebook.com/a.zas.inc)にて連載の 『簡単なマーケティングの3 分講座』Vol. 2 – Vol. 5 より編集
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved 1.仮説思考 「仮説思考」、一言でいうと色々アイディア出しをし続けるなら、1つのアイディアを 仮説として試してみる、そこで出た反応から次を考えるという方法である。 例えば、男性が好意のある女性を食事に誘いたいという状況があったとする。仮説思考 でない人だと色々と良い感じのレストランなどをピックアップして探していく。これだと 最終決定した案が外れている可能性が高い。仮説思考の人だと「和食は好き?」と女性に 仮説を投げかけ、回答がYES なら和食ジャンルで探せば良く、NO なら洋中に絞って探せ ば良く、お店を喜んでもらえる可能性は前者より格段に上がる。 何かを決める場合に、とりあえず1つの回答らしき案をピックアップして、それを試し てみる、それが仮説思考の考え方である。医師が患者さんを診断するプロセスなどは正に 仮説思考で、今ある状況から答えらしいもの=仮説(疑わしい疾患)を検証(検査で確認 する)し、決定する(診断する)というお手本のような例である。 では、なぜ出来ていない人、勘違いしている人が多いのだろうか。 この点について色々と考えて、探ってきたのだが、今現在で考えは、「仮説思考」に基 づいた「仮説検証型調査」を行う時に、「仮説思考」がなくなり「限定質問」、または「選 択肢の質問」を仮説思考と勘違いしている人がいるという事である。 「限定質問」は、答えを限定する、YES か NO の回答しか得られない。また「選択肢の 質問」も選択肢から選んでもらうのである意味、限定的な質問である。 『答えを限定して確認する』≠『仮説思考』、これが違う事に気が付いていない人が「選 択肢の質問」を調査で行う事で、「自分は仮説思考」だと思っているケースを見かける事 が少なからずあった。 実際、仮説思考は答えを見せて、確認するので限定質問の一種ではあるが、そこから得 られた答えで物事が決められるかが重要なポイントである。例を挙げてみよう。 <仮説思考でない例> Q. あなたのお持ちの携帯電話はどこのキャリアですか? A. docomo 60% Softbank 25% au 10% その他 5% これは現状がどうなっているかを知るだけで、何をすべきかが分からない。最大キャリ アがdocomo だ、と正解を予想しても何も生まれないのである。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved <仮説思考の例> Q. 以下のどの薬剤を処方したいと思われますか? A. ①24 時間の安定した効果持続 25% ②高齢者への投与でも高い安全性が確保されている 20% ③重症例にも高い効果 15% ④初期から継続して処方しても効果が減弱しない 40% ④が処方される可能性が圧倒的に一番高く、その結果、「これをキーメッセージにす る」という意思決定が可能となる。 大切なのは、結果を見れば何をすべきかが数値比較で定量的に分かるという事(実行す べきアクションが明確になる事)である。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved 2.仮説検証型調査 ここでは「仮説検証型調査」について紹介する。 「仮説検証型調査」を行う上で大切な事は以下の2点である。 (1)「何をするべきかのアクションの選択肢を並べて、定量的に数字で判断する」 (2)「市場を構成している構造が計算式になっている(骨組設計が出来ている)」 まず、今回は1 点目の「何をするべきかのアクションの選択肢を並べて、定量的に数字 で判断する」から詳しく説明していきたい。 「1.仮説思考」でも書いたが、仮説検証は結果を見れば、何をするかの答えが出てい なければならない。つまりこの時点で出来そうなアクションや使えそうなキーメッセージ を出来る限り並べて、どれが有効なのかを試す必要があるという事だ。 キーメッセージを例に取って紹介してみよう(注:ここでは仮説検証型調査について説 明する事を主眼としているので、メッセージがプロモーションコードに適合するかは無視 して頂きたい)。 例として扱うのは、効果と安全性がバランス良い、有用性に優れる薬剤とする。 まず製品について伝達できそうなキーメッセージを出来る限り並べてみる。 例--- A. 強い血圧降下作用を持つ B. 24 時間、安定して血圧をコントロール C. 臓器保護作用に優れる D. 降圧効果に優れた薬剤 E. 長期治療においてイベントリスクを軽減する --- 上記を見て何かを感じられるだろうか?「何か変だなぁ…」と感じる方が居たら、それ は正解。 これにはモレとダブりがある。 ビジネス書などをよく読まれる方は気づかれたかもしれないが、ここで所謂、MECE (漏れなくダブりなく)という考えが必要になるのである。 ビジネス書だといきなり「MECE とは?」、「MECE に考えろ」などと書いている事が あるが、「何に使うの?」がないと理解できても腹に落ちない事があると思う。それは使 うシチュエーションが見えないからだと思う。 ここでMECE(漏れなくダブりなく)でないとダメなのは、以下を見てもらうと分かると
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved 思う。 例--- A. 強い血圧降下作用を持つ(効果) B. 24 時間、安定して血圧をコントロール(持続性) C. 臓器保護作用に優れる(臓器保護) D. 降圧効果に優れた薬剤(効果)→A と同じ効果についてダブっている E. 長期治療においてイベントリスクを軽減する(イベントリスク) F. *******(安全性)→モレ。安全性があるのに選択肢にない --- つまり、上記で調査を実施したとすると、効果については、A と D に票が分かれてしま い判断できないし、安全性でプロモーションした場合に市場がどれくらい取れるかがつか めない事になる。これは戦略を誤った方向に導き、場合によれば製品を破壊してしまう。 MECE については、ここで紹介し始めると大変な量になるので避けるが、一度はどこか で本などで見てみると良いと思う。 ここでは簡単に考えるコツだけを紹介する。 MECE に選択肢を並べるコツは、大きなカテゴリーから分断していき、そこから1つず つをまた分断していく形で進め、出来上がった細かいものを並べると出来上がる。 例 左から徐々に細かくして、最終的に数字の振られたものだけを並べるとMECE に見え る。この並びに正解はない。ただ漏れなくダブりなく作るアクションやメッセージの選択 肢を並べる事は戦略を誤らない為には、非常に重要な事である。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved 3.仮説検証型調査での注意点 「仮説検証型調査」について引き続き解説していくが、ここを間違えると同じ仮説でも 結果に大きなズレが出てくる注意点について紹介していく。 以下のような質問で検証結果を出した例を置く。これだと間違った答えである可能性が ある。どこがおかしいか考えてから、解説を見てもらいたい。 例1--- Q. 以下のどの薬剤を処方してみたいと思いますか? 回答率 A. 強い血圧降下作用を持つ 15% B. 24 時間、安定して血圧をコントロール 10% C. 臓器保護作用に優れる 10% D. 長期治療においてイベントリスクを軽減する 25% E. 高い安全性を持つ 40% --- この質問は、医師に1つどれを処方したいかを聞いているので、仮説検証型調査ではあ る。しかし、これは市場から取れるシェアを表していない。単に一人一人の医師が処方し たくなるメッセージを1つ選んだに過ぎない。では、1 医師が複数選ぶのが良いか?い や、それだともっと市場を表さない。そこで1 医師が何をどれくらい処方するかの比率を 聞いてみた例にしてみよう。 例2--- Q. 以下の各薬剤をどの程度処方してみたいと思いますか?比率をお教え下さい。 平均処方比率 A. 強い血圧降下作用を持つ 20% B. 24 時間、安定して血圧をコントロール 25% C. 臓器保護作用に優れる 20% D. 長期治療においてイベントリスクを軽減する 20% E. 高い安全性を持つ 15% --- 実は、これも問題がある。これだと各医師の処方全体からどれくらい処方を取れるかが 分からない。つまり既存に処方している薬剤を100%やめて、A から E の 5 剤に切り替え
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved る等あり得ないから、この結果が全市場のどの程度を100%としているかが分からず読み 違える可能性が高い。そこを改善したものならどうだろう。 例3--- Q. 以下の各薬剤が発売された場合、どの程度処方してみたいと思いますか?比率をお教 え下さい。先生の持たれている対象患者さん全体を100%として考えて頂き、既存の薬剤 を継続される割合もお答え下さい。 平均処方比率 A. 強い血圧降下作用を持つ 6% B. 24 時間、安定して血圧をコントロール 7% C. 臓器保護作用に優れる 3% D. 長期治療においてイベントリスクを軽減する 8% E. 高い安全性を持つ 6% F. 既存治療薬を継続する 70% --- これで市場を表しているだろうか?残念ながらもう1つ足らない。1 医師あたりの平均 患者数の結果への反映が必要である。つまり回答する医師の1 票は同じ重さでなく、平均 患者数が10 名の X 医師と 20 名の Y 医師では、Y 医師の1票の重さに 2 倍にしなければ 市場を反映していない事になる。市場を表している理想に近い例が以下である。 例4--- Q1. 現在、先生が 1 ヶ月間に治療されている高血圧の患者数をお教え下さい。 ( )例/月* ( )内は自由記入 Q2. 以下の各薬剤が発売された場合、どの程度処方してみたいと思いますか?比率をお 教え下さい。先生の持たれている対象患者さん全体を100%として考えて頂き、既存の薬 剤を継続されえる割合もお答え下さい。 平均処方比率* A. 強い血圧降下作用を持つ 8% B. 24 時間、安定して血圧をコントロール 7% C. 臓器保護作用に優れる 2% D. 長期治療においてイベントリスクを軽減する 15% E. 高い安全性を持つ 3%
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved F. 既存治療薬を継続する 65% *Q1 の各医師の患者数を反映させて算出 --- これだとかなり市場に近い。この場合、ある製品のキーメッセージになりそうなA から E の仮説を検証した結果、もっとも市場が取れそうなメッセージは D の「長期治療におい てイベントリスクを軽減する」である事が正しい数字から判断される事になる。 やり方は面倒だが、 Step1:一度、各医師の Q2 の回答とその医師の Q1 患者数を掛け算する Step2:全医師の回答を A から F までの項目ごとに患者数換算で集計する Step3:A から F で出た総患者数を足す事で、回答医師の全患者数(Q1 の回答の合計) になり、これが全市場=100%を示すものとする Step4:最後に A から F の各患者数を市場全体の患者数で割って比率に変換する これは数値化したもので意思決定を行うので、市場本来を反映していないもので決めて しまうと大きな間違いを起こす可能性があるので、細かい話だが重要な点なので紹介して みた。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved 4.仮説検証型調査の全体構造 ここでは「仮説検証型調査」の総まとめ、「全体構造を考える」をテーマとする。 これまでで仮説検証型調査の実施について大切であると挙げたポイントは以下である。 (1)「何をするべきかのアクションの選択肢を並べて、定量的に数字で判断する」 (2)「市場を構成している構造が計算式になっている(骨組設計が出来ている)」 ここまでは(1)をどうするかについて説明してきたが、今回は(2)がテーマである。 表現が適切かどうか悩むが仮説検証型調査を木に例えると「(1)=枝」、「(2)=木全体の 形」のイメージである。 つまり、(2)の全体構造が分かって初めて今まで説明した(1)の部分に取りかかれる のである。 では、(2)でいう市場を構成している構造(全体構造)とは何を示すのであろうかを説 明していきたい。 まず理解してもらいたいのは、全体構造は製品毎に異なる事、そして同じ製品でもライ フサイクルで異なる。更にプロダクトマネジャーやチームの課題認識の違いによっても異 なるのである。 何が正解かは無いのだが、よく使われる事例を以下に挙げてみるので参考にしてもらい たい。 ■事例:重症度で市場を構造化する場合 ここでは、軽症、中等症、重症の重症度別で市場の大きさを出して市場を構造化する。 そして、第4 回で使ったキーメッセージの仮説やキーになるデータの仮説を並べて、どの メッセージだと市場がどの程度取れるかを軽症・中等症・重症で出して、その合計数字か ら戦略を決める。 例--- Q1. 現在、先生が 1 ヶ月間に治療されている高血圧の患者数をお教え下さい。 ( 200 )例/月* ( )内は自由記入 Q2. 先生のお手持ちの高血圧患者の重症度の比率をお教え下さい。 ・軽症 ( 50 )% →この医師の 100 例が軽症 ・中等症 ( 30 )% ・重症 ( 20 )%
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved *合計を100%になるようにする ★Q1 と Q2 を掛け合わせると市場サイズが導き出せる Q3-1. <軽症>以下の各薬剤が発売された場合、軽症患者さんにどの程度処方してみた いと思いますか?比率をお教え下さい。先生の持たれている軽症患者さん全体を100%と して考えて頂き、既存の薬剤を継続される割合もお答え下さい。 平均処方比率*(軽症市場を 100%として回 答) 回答 取れる患者数(シェア) A. 強い血圧降下作用を持つ 2% → 2 例(1%) B. 24 時間、安定して血圧をコントロール 6% → 6 例(3%) C. 臓器保護作用に優れる 2% → 2 例(1%) D. 長期治療においてイベントリスクを軽減する 10% → 10 例(5%) E. 高い安全性を持つ 15% → 15 例(7.5%) F. 既存治療薬を継続する 65% → 65 例(32.5%) ★解説★ 取れる患者数=(Q1 の患者数×Q2 の軽症シェア×Q3 の回答):症例数にしてい るのは最終段階で全医師の回答から各メッセージでどれくらい患者数が取れるかの合計を 算出する為である。 Q3-2. <中等症>以下の各薬剤が発売された場合、中等症患者さんにどの程度処方して みたいと思いますか?比率をお教え下さい。先生の持たれている中等症患者さん全体を 100%として考えて頂き、既存の薬剤を継続される割合もお答え下さい。 中等症も重症も軽症と質問を行い各症状レベルでの取れるシェアを出す。 そして最後に軽症、中等症、重症の取れるシェアをメッセージ毎に足し上げ、全体から取 れるシェアを導く。こうする事で、漠然と全体に対して質問するよりも市場構造が把握で き、どこから症例を取る事ができるのかを事前に把握できる。 最終で積み上げた数字のイメージは以下の表だ。この例だとメッセージのE「高い安全性 を持つ」が12%の市場シェアを取れる可能性があるので最も効果的だという事が分かる。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved ★解説★ 算出するにあたり注意して頂きたいのは、全ての医師の重症度比率で計算するの ではなく、医師毎で出して、それを積み上げる事である。そうしなければ症例の多い医師 の処方への影響度が反映されない。意外と忘れてしまう事なので覚えておいてほしい。 この例のパターンが使われるケースは、市場が一番大きくなる軽症などでは勝てない が、重症に絞れば市場を占領できるかもしれない薬剤などが、全体を狙うか、重症セグメ ントだけを狙うか等の意思決定を行う場合に利用する事が多い。 【その他に一般的に使われる市場構造】 ■新患・既存で市場を構造化する場合 ここでは、市場を新患・既存で構造化する。多くの場合、新患市場は10~20%程度で、 既存が市場の大半を占める。ここで悩まれるのが、市場は小さいが新患をおさえないと既 存市場も大きくはならないし、既存患者の処方を自社製品にスイッチさせないと売上に直 ぐに大きく反映してこないので、どちらを中心に狙うかである。ここでも新患、既存市場 の両方に第4 回で使ったキーメッセージの仮説やデータを並べて、どれが各市場からどれ くらいシェアを取る事になるのか検証していく。検証結果をみて、新患、既存の両方から 大きくシェアを奪えるものを戦略としていく事になる。 ■競合など製品シェアで市場を構造化する場合 これは単独でも使う場合と先述した「重症度で市場を構造化する場合」、「新患・既存で 市場を構造化する場合」に掛け合わせて使うケースもある。掛け合わせるとかなり細かい 話になるが、「重症度で市場を構造化する場合」だと重症度別での各薬剤のシェアを出 し、競合からどれだけ症例を奪う事が可能かをも算出する方法である。競合からシェアを 奪う事が大きな課題になっているケースに向く。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved 5.終わりに Facebook ページで連載してきた「簡単なマーケティングの 3 分講座」の中から「仮説 検証型調査」について解説してきたものをまとめてみた。 マーケティング戦略で何をすべきかを科学的に導き出すためには、「仮説検証型調査」 は必須である。「仮説検証の方法」を知り、利用できると戦略はかなり強化される。考え 方から実施方法まで直ぐには習得できないかもしれないが、繰り返し実践する事で自らの 技にしてもらいたい。
Copyright © 2013 A-zas, Inc. All rights reserved エイザス株式会社 〒105-0011 東京都港区芝公園1-7-15 池田ビル 3 階 TEL 03-6435-8250 FAX 03-6435-8252 [email protected] www.a-zas.co.jp