はじめに
援助効果の向上と開発成果の実現に向けて、 途上国のキャパシティ・ディベロップメント(CD) をめぐる議論・取り組みが活発化している。CD は、2005 年に 100 以上のドナー・途上国により採 択された「援助効果に関するパリ宣言」(以下 「パリ宣言」)のコミットメントにも掲げられ注 1)、 経済協力開発機構(OECD)/ 開発援助委員会 (DAC)をはじめとする各種国際フォーラムにお ける主要議題の 1 つとなっている。また、各途上 国でも CD 戦略の策定などの取り組みが図られつ つある。こうしたなか、CD の重要支援手段であ る技術協力(TC)のあり方が改めて議論になっ ている注 2)。 本共同研究の目的は、CD のための効果的な TC に関する実証的な論拠を提示することによって、 以上のような議論・取り組みに寄与することにあ る。研究は、特に 2008 年 9 月の「援助効果ハイ レベル・フォーラム III」(以下、HLF-III)におけ る議論へのインプットに向けて、7 ドナー・ 11 途 上国参加による国際共同研究として進められてお り、日本がリーダーを務めている。 CDや TC に関しては多くの研究があるが、新 たな CD 概念のコンセンサス以降、同概念の具体 化に焦点を当てた実証研究はまだ少ない。また、 ①さまざまな形で TC を実施しているドナーが参 加して行う点や、②途上国の知識・見解の反映を 重視し、途上国主導アプローチで行う点も、これ までの研究にはない試みとなっており、国際的に も関心を集めている。同研究は 2008 年 1 月現在、 まだ中間段階にあるが、以上のような意義をふま え、その位置付け、論点等を整理しておきたい。 以下、第Ⅰ章で CD および TC をめぐる議論を背 景として概観したうえ、第Ⅱ章で共同研究の枠 組みと特徴を整理する。次いで第Ⅲ章で同枠組 みをふまえ、これまでの進捗について触れつつ、 今後の課題を考察する。I
背景・問題意識
1. 新たな CD 概念のコンセンサス 1990年代後半以降、援助効果向上と開発成果 達成に向けて途上国のオーナーシップが重視さ れるなか、途上国主導による持続的開発のカギ として CD が注目されるようになった。CD への 取り組み自体は新しいものではないが、過去の 取り組みが十分な成果を上げてこなかったとの 反省のもと、UNDP(国連開発計画)による一〔調査研究報告〕
Study Report
キャパシティ・ディベロップメントに向けた
知識共有と協調の試み
―国際共同研究「キャパシティ・ディベロップメントのための
効果的な技術協力」を事例として―
三
み輪
わ徳
さと子
こ*
* JICA国際協力総合研修所調査役(主任研究員) (2008 年 1 月現在)連の研究(Browne[2002]、Fukuda-Parr[2002]、 Morgan[2002])などを通じて、あり方の見直 しが行われた。そしてそれまでの問題(途上国 のオーナーシップに対する認識の不足、先進国 の知識・モデルのそのままの移転、CD を取り巻 く政治・社会・経済環境の不十分な考慮など) をふまえて、新たな CD 概念が導入された。同 概念は CD を、先進国から途上国への知識・技 術の単なる移転ではなく、途上国が目標を設定 しそれを達成していく能力(課題対処能力)が 強化されていくプロセスとした。また、① CD における途上国の内発性を強調するとともに、 ② CD を個人、組織に加え、社会(政策・制度、 規範)を含む 3 層の相互作用のシステムとして 包括的にとらえ、これらの課題対処能力が総体 として向上していくプロセスとしている(JICA [2006]、OECD[2006])。この概念のもと、途 上国主導の CD 戦略策定と同戦略へのアライン メント、各国固有のコンテクストの考慮、途上 国 の シ ス テ ム ・ 資 源 の 活 用 、 変 革 の 担 い 手 (Drivers of Change)やインセンティブの重要性、 CDにおける知識やネットワークの意義、南南協 力の活用など、CD 取り組みに向けたさまざまな 提案がなされてきている(Fukuda-Parr[2002]、 Lopes[2003])。 上記の概念や提案は、「パリ宣言」や DAC レ ファレンス・ドキュメント(OECD[2006])にも 反映され、国際コンセンサスを得てきている。し かし、その有効性はまだ十分には実証されてお らず、方向性も総論にとどまっている。概念を具 体化していくためにも、実証に基づく検証や、 どのようなコンテクストでどのような取り組み が効果的であるかの分析が必要となっている。 2. TC をめぐる議論とその展開 上記の CD 議論は、それまでの CD 取り組みの 主要手段であった、TC の見直し議論と表裏をな して進められてきた。新概念の CD には、より 包括的な取り組みが必要であり、支援手段は TC にとどまらない(OECD[2006])。しかし、TC は量の面でも機能の面でも依然として重要な位 置を占めており、財政支援など他の支援手段と の補完性の面でも役割が重視されている。この位 置付けのもと、TC は「パリ宣言」のコミットメ ントでも CD 支援の代替指標に使われており注 3)、 そのあり方が CD 取り組みの主要テーマの 1 つに なっている。 T Cに 関 し て は 、 こ れ ま で さ ま ざ ま な 問 題 (ギャップ・フィリング、アウトプット・レベル の目標設定、供給主導、フラグメンテーション、 調整コスト、パラレル・システムの形成、ド ナーによる過度のコントロール、途上国側依存 度増加、高コスト、タイド援助、専門家の質、 途上国の政策環境など)が指摘されてきた。そ して改善策として、短期的な状況改善ではなく 長期的な CD の戦略目標化、途上国主導による TCの計画・管理、プログラム・アプローチの重 視、途上国の既存システムの活用、長期専門家 のあり方の見直しと途上国人材の活用、コスト 効率性の考慮、援助のアンタイド化の促進、な どが提案されてきた(Berg[1993]、Browne [2002]、Fukuda-Parr[2002]、JICA[2006])。 これらについては、近年、アラインメントや調 和化が進むなかでその一環として取り組みが行 われ、一定の改善が図られてきている。しかし、 全体としては進展の遅さが指摘されており、CD 取り組みに向けての課題となっている。 こうしたなか、TC に関する評価や研究が、こ こ数年で改めて活発化している注 4 )。表− 1 は、 これらのおもな論点をまとめたものである。そ れまでの研究が、総じて TC に批判的、かつ TC や改善策を一律に議論する傾向があったのに対 して、最近の研究では、① TC の効果・状況の多 様性の認識、②改善策に関する、長所・短所を 含むより具体的な議論、③ TC の問題のみでなく CD取り組み全体における TC の位置付けやコン テクストの問題の重視、が特徴として挙げられ る。この背景には、①アジアほかの途上国での 課題対処能力向上など、途上国をめぐる状況の 変化や多様化注 5)、②いくつかの改善策の実際の
取り組みに基づく議論の前進、③ CD 議論を通 じた TC の効果の認識の深まり、などがあると考 えられる。 上記のような議論の進展は、TC の取り組みを さらに進めるうえで有益なものである。しかし、 問題や提案は以前より具体化してはいるが、総 論または個別事例に基づく議論がまだ多い。TC 改善に関する万能薬の不在や、TC の効果・状況 表ー1 TC に関する最近の研究の論点 区 分 TCの効果 TCの状況の 多様性 TCの効果に 関する要因 改善策の 長所・短所 TC改革の進展 論 点 TCは全体的には組織・制度の改革等に寄与している. TCは過度な要求に基づき批判されてきた傾向がある.何を基準に何 と比較して,効果の有無を議論するかが問題. 地域・国,セクター,対象(中央/地方政府等)によって異なる *. TCの計画・管理:デザインの適切性,マネジメント(調達,管理) における途上国のオーナーシップの確保,専門家の質,成果の適切な モニタリング・評価. ドナーの国別援助戦略への CD の盛り込みと,同戦略に沿った長期的 な視点での支援. TCを取り巻く環境:政治的コミットメント,途上国側の政策やニー ズの明確化,変革に向けたリーダーシップやインセンティブ. CDは TC のみで達成されるものではなく,TCが CD に寄与するためには, CD取り組み全体の中での TC の適切な位置付けと良好な環境が必須. TCプール(TC のためのプール基金)設置は途上国に権限を移管する 方法として有益. ただし途上国側の能力の問題もあり,完全に途上国 が主導している事例は少なく,実際はドナーとの共同管理やドナーに よる代行管理が多い. TCプールはアラインメントや調和化の進展ほか,協議メカニズムを 通じた途上国意見の反映の面で利点があるが,ドナーが結束して主導 するようなリスクもある.メカニズムよりもプロセスが重要. 可能な限り途上国の人材活用が望ましいが,国際専門家と現地専門家 それぞれの特徴を生かした適切な組み合せが重要. マーケット志向は重要だが,コスト効率性への偏重は質の低下を招き, CDへのインセンティブにならない. PRSP(貧困削減戦略文書),SWAP(セクター・ワイド・アプローチ) などの進展に伴い一定の進展があるが,TC 改革は全体として遅い. 改革の遅れの要因:途上国側における受け入れキャパシティの不足, 政策環境の問題,TC における利害関係の複雑さ,ドナー側における インセンティブの問題や(短期間で結果が求められる)成果主義のプ レッシャー,ドナーと途上国の力関係の非対称性. 出 所 ADB[2007] DFID[2006a] Land[2007] Lopes[2003] Morgan[2002] Morton[2003] Browne[2002] Hauck[2007] Watson[2007] World Bank[2005b] ADB[2007] DFID[2006a][2006b] IMF[2005] Land[2007] Morgan[2002] Baser[2007] DFID[2006b] Land[2007] Lopes[2003] DFID[2006b] Land[2007] Morton[2003] Land[2007] Danielson[2002] Morgan[2002] Morton[2003] Williams[2003] 注)*世界銀行[2005b]は,アフリカでの TC プロジェクトの評価が全地域でのそれより低いこと,道路セクターに比べて保健や教育セク ター,公共財管理の CD はより難しいとの結果を示している. (出典)筆者作成.
の多様性が明らかになるなか、何がどのような ときに機能するか機能しないか、その要因は何 か、についての体系的な検証がいっそう求めら れる状況にある。また、CD 取り組み全体におい ての、TC の位置付けやコンテクストの重要性が 強調される一方で、先行研究では専ら TC を単独 で取り上げており、位置付けなどを分析したも のはあまりない。さらに、効果的な TC のあり方 の検証には、CD の主体である途上国の視点の反 映や、多様な TC 経験の共有が必要である。しか し、先行研究の大半はドナーまたは先進国研究 機関によるものであり、(先進国在住の途上国出 身研究者を除けば)途上国が参画したものはき わめて限られている。また、ドナーの研究もほと んどが単独によるもので共同研究は少ない注 6)。 3. TC をめぐる議論と日本 TC議論、特に TC の見直し議論をリードして きたのは欧米ドナー(国際機関や英国・北欧等 の欧州ドナー)である。また、これらドナーの アフリカでの TC 経験が議論のベースとなってい る。前述のような TC の問題は、日本の TC とも 無関係ではない。特に、戦略的・包括的な視点 の不足や、政策・制度面の取り組みの弱さによ る持続的インパクトの限定は、近年の日本の TC における CD 概念やプログラム・アプローチ導 入前の、主要な問題の 1 つといえる。その一方 で、自身の開発経験に基づき途上国の自助努力 を重視してきた日本の TC は、途上国のオーナー シップの尊重、フェーズアウト・メカニズムの 設定、途上国の既存組織の活用と組織・制度づ くりの重視などの点で、欧米ドナーのような長 期専門家による途上国人材の代替やパラレル・ システムの設置等の問題はあまり惹起してきて いない。また、現場重視アプローチのもと、対 象国の固有のコンテクストや既存の知識の尊重 等の点でも、CD 概念に沿った TC を展開してき ている(国際開発センター他[2003]、JICA [2006][2007]、三好他[2005])。 TC議論において、日本は以上のような点を一 貫して主張してきている。特に近年の CD 議論 では、日本の TC と CD の概念の共通性をふまえ、 早い段階から積極的に議論に参画し、日本の経 験・知識を発信している注 7)。TC の改善策に関し ても、各国固有の状況をふまえた議論が必要な こと、多様な CD ニーズに応えるためにはさま ざまな手段(モダリティ、国際/現地リソース、 南南協力など)の特徴を活かした組み合わせが 重要であることを強調している。 以上のような日本の論点は、「CD 学習ネット ワーク(Learning Network on CD : LenCD)」 (CD に関するドナーのコミュニティ・オブ・プ ラクティス)などの国際的なネットワークへの 参画・発信や、発信にあたっての途上国との連 携なども功を奏し、国際的に一定の理解を得て きている。また、最近の TC 議論の進展は、欧米 ドナーと日本の議論の接近や、前者による日本 の TC 経験・知識への関心にもつながっている。 しかし、両者の TC の歴史的・文化的な違いをは じめ注 8)、国際開発コンサルタントが契約ベース で TC を行う欧米ドナーの制度と、自身の経験の 共有の観点から、協力分野の業務に国内で従事 してきた官民機関・関係者が伝統的に TC を担っ てきた日本の制度との違いなどもあり、相互の 経験・知識の理解は必ずしも十分には図られて いない。また、日本自身による経験・知識の普 遍化の不足もあり、日本の経験・知識が TC 議論 全体に影響を与えるには至っていない。
II
共同研究の枠組み
1. 目的、アプローチ 本研究は、以上のような背景のもと、国際共 同研究を通じてさまざまなドナー・途上国の経 験・知識の共有と総合化を図り、効果的な TC の あり方に関して、より体系的な実証・分析と具 体策の提言を行おうとするものである。特に日 本にとっては、そのなかで日本の経験・知識を 普遍化するとともに、HLF-III をはじめとする国 際的な場での議論へのインプットに重要なネットワークを形成する意味も持つ。 研究は、複数途上国における国別研究と、こ れらの総合分析から成る。そして前章のような 先行研究の課題をふまえ、次の 4 点を本研究の 基本アプローチ(付加価値)として打ち出して いる。 ① 包括的な CD 取り組みに位置付けての、TC の貢献やあり方の分析。 ② 効果的な TC への具体的取り組み方(how) を、実例に基づき提示。 ③ 途上国の経験・知識の尊重。 ④ 途上国間相互学習の促進。 ①については、単発の TC 案件ではなく、特定 セクター/分野レベルを分析対象とし、CD の課 題や戦略、途上国自身の取り組み、他の援助形 態による支援との補完性、TC 間の協調などを含 め、分析を行うものである。次の②に関しては、 対象セクター/分野のグッド・プラクティスや バッド・プラクティスの詳細分析とこれらに関 する各国の比較分析を行うこととしている。③ では、研究全体の計画、運営、結果取りまとめ の全プロセスに、ドナーとともに途上国の参加 を得る形で進めているほか、国別研究は各途上 国が中心となって進める途上国主導アプローチ をとっている。このうち前者に関しては、計画 および結果取りまとめの両段階での全メンバー 参加のワークショップ開催や、途上国・ドナー 双方参加の運営体制の構築を図っている。また、 後者に関しては、途上国がリーダーとなった現 地ドナー参加のチームを作り、同チームが協力 して現地レベルで国別研究を進める分権型の体 制をとっている注 9)。④は、CD における南南協 力の有用性の議論を反映している。具体的には 上記のワークショップを、この機会と位置付け て、途上国の経験・知識交流をプログラムに盛 り込んで行っている。 全メンバー参加の第 1 回ワークショップは、 2007年 10 月に開催(於バンコク)した。以上の アプローチを含む共同研究の枠組みは、同ワー クショップで議論し、メンバー合意を得たもの である。このうちアプローチに関しては、特に ③および④を本研究の重要な付加価値の 1 つと する意見が、ドナー・途上国ともに多かった。 2. 参加メンバー 参加メンバーは、次の 7 ドナー・11 途上国で ある。 ・ドナー ADB、BMZ、DFID、GTZ、JICA、UNDP、世 界銀行 ・途上国 〔アジア〕カンボジア、ラオス、マレーシア、 パキスタン、タイ、ベトナム 〔アフリカ〕ガーナ、ケニア、マラウイ、ザン ビア、タンザニア ドナー・メンバーは、CD/TC 議論に中核的な 役割を担ってきた主要ドナーである。TC に関す る経験・見解は多様であるが、いずれも LenCD などでの活動を通じて協力関係にある。 途上国メンバーに関しては、アジア・アフリ カを対象地域とし、途上国の多様性や事例とし ての有用性の視点から、まず候補国をリスト・ アップした。そしてオーナーシップ尊重の観点 から、対象国の主体的参加意向を確認したうえ で、最終的にメンバーを選んだ。地域選択にあ たっては、ドナーの経験・知識の共有、CD/TC の多様性とそのなかでの両地域の位置付け、ア ジア・アフリカ協力の視点などを勘案した。対 象国は、地域ごとに、CD や TC にさまざまな問 題を抱える国と、比較的成果を上げている国の 双方が入るようにした。特にアジアに関しては、 他の途上国(アフリカを含む)に TC を行ってい る国を、TC 受入国・供与国の双方の経験・知識 を反映するという観点から加えている。 第 1 回ワークショップ等を通じて示された、 参加メンバーの関心としては、欧米ドナーは、 ①効果的な TC に関するさらなる実証、②多様な ドナーの経験・知識(特に日本のアジアでの経 験・知識)の共有と今後の取り組みにおける協 調、③「パリ宣言」の実行に向けた HLF-III の議
論、とりわけ CD に関する指標 4(協調した TC 支援による CD 強化)に関する議論への貢献、 が挙げられる。また、途上国は、①自国の CD 戦略や TC 政策・指針策定にあたっての活用、② そのための自らの経験・知識の体系化(同プロ セスを通じた国内での知識共有を含む)、③多様 なドナーや途上国との経験・知識の交流、④国 際的な CD/TC 議論への貢献(HLF-III を含む)、 が関心の高い順に挙げられる。このうち①に関 しては、共同研究のみに終わらせず、CD 戦略策 定後の具体的取り組みにおける協力にもつなげ ていきたいとする意見も示された。 3. 実施体制 本研究では、上記1 の目的のもと、研究結果 そのものに加えて、基本アプローチに基づく研 究のプロセスも重要視している。そのため、実 施体制は、途上国参加の運営体制を構築してい る。 (1)研究全体 ①ステアリング・コミッティー(SC :研究全 体の戦略的方向性を議論。全メンバー)、②マネ ジメント・グループ(MG :研究全体の進捗の 管理・調整。ドナー代表 4 機関、途上国代表ア フリカ・アジア各 2 カ国注 10))、③事務局(SC お よび MG の業務の支援。JICA) (2)国別研究 ①国別研究マネジメント・チーム(CSMT:国 別研究の計画、実施、取りまとめ。途上国総括 機関をリーダーに、同関係省庁、現地ドナー代 表 が 参 加 )、 ② 事 務 局 ( C S M T の 支 援 。 各 国 JICA事務所) このうち SC についてはワークショップを通じ て、MG については定期的な TV 会議を通じて、 メンバー間の緊密な対話、ならびに、一連のプ ロセスおよび意思決定への途上国の十分な参加 を図ってきている。国別研究に関しては CSMT のもと、途上国のリーダーシップの尊重、途上 国内の関係機関間の連携促進、現地ドナーとの 協調、の 3 点を重視して進めている。また、国 別研究は、CD/TC に関する現地レベルでの既存 取り組みとの調和化やシナジー効果に配慮して 実施している。CSMT についても、既存の協力 メカニズム(現地 CD タスクフォースなど)が ある場合には、同メカニズムを活用している。 このほか実施体制面では、分権型での国別研 究実施もふまえ、メンバー間の情報共有と一体 感を醸成するために共同研究のウエブサイトを 設置している注 11)。同サイトは、今後の国際的な 議論・取り組みへの研究結果の反映に向けたコ ミュニケーション戦略の 1 つとして、より幅広 い援助コミュニティ関係者にも公開している。 4. 研究枠組み・手法 共同研究では、国別研究の基本枠組みを設け、 各国の経験・知識の体系的な分析と総合分析を 行う。枠組みの概要は表− 2 のとおりである。 国別研究は、「Ⅰ. 国レベルの TC 概況」「Ⅱ. 対象 セクター/分野の概況」「Ⅲ. 当該セクター/分野の 事例の詳細分析」「Ⅳ. 結論・提言」等の4セク ションから成る。ⅠおよびⅡは、Ⅱ章1 で挙げ た基本アプローチの「①包括的な CD 取り組み に位置付けての、TC の貢献やあり方の分析」を 行うものである。Ⅲは「②効果的な TC への具体 的取り組み方(how)を、実例に基づき提示」 にあたる。 このうち、Ⅲについては、TC が CD のために 効果的に機能する条件についての仮説に基づき、 A. 途上国主導の計画、B. 柔軟でニーズに合った デザイン、C. 途上国主導の実施・管理、D. TC 間の協調および他の CD 支援手段との補完性、E. チェンジ・マネジメント、F. 学習と持続的変化、 の 6 つのテーマに沿って事例の分析を行う。こ れらは、これまでの CD/TC に関する先行研究の 主要な結果・提言をふまえたうえで、第 1 回 ワークショップでの議論、とりわけ途上国の問 題意識・関心もふまえて設定した。具体的には、 第 1 回ワークショップで途上国間の相互学習の 促進の一環として、各国の CD/TC 経験・知識の 発表(CD 戦略、TC 概況、これまでの TC に関す
る教訓など)を行い、同発表および意見交換で 出された共通の重要イシューを反映している。 このうち、テーマ A から D については TC の直 接的な計画・管理に関係したものであるが、E と F は途上国主導の持続的変化のプロセスとし ての CD との関わりを、より広い角度から見る テーマとなっている。これは途上国側から TC の 効果を活かすためのチェンジ・マネジメントや ネットワーク形成の大切さが提起され、関心が 高かったことによる。E や F のようなテーマは 先行 TC 研究ではあまりカバーされていない。途 上国の経験・知識を反映すればこそ抽出された テーマといえ、本共同研究の付加価値の 1 つと なることが期待される。 6つのテーマによる事例分析は、テーマごと に分析アウトラインの 7 項目(テーマが CD 結果 に与えた影響の実証、その要因、事例における 同テーマの具体的アレンジメント・プロセス、 ドナーが果たした役割、他のケースへの適用可 能性など)を検証する形で行う。これらの 7 項 目は、6 テーマの仮説が CD に有効かどうかの実 証と、有効な場合の今後の具体的取り組み方 表ー2 国別研究基本枠組み 構 成 事 例 詳 細 分 析 Ⅰ.国別レベルの TC 概況:援助動向・パターン(規模,形態,配分等),政策環境(開発政策,CD/TC 戦略・ プライオリティ),実施環境(調整メカニズム),TC の効果に関する経験の概観 Ⅱ.対象セクター/分野の全体状況分析:政策・戦略環境(当該セクター/分野および同 CD/TC の戦略・プライオ リティ),TC の動向・パターン,TC 調整メカニズム(CD ギャップと TC ニーズの特定化・調整メカニズム), 他の CD 手段との補完性 Ⅲ.上記セクター/分野の具体的事例の詳細分析およびセクター/課題レベルの教訓:下記の A ∼ F の 6 つのテー マに基づき,おのおのが効果的に機能する要因(政策・戦略,組織,マネジメント,途上国・ドナーの役割 等)を分析のうえ,参考となるプラクティスと CD のための効果的な TC の貢献・阻害要因を抽出 Ⅳ.結論,課題,提言
(出典)“Joint Study on Effective Cooperation for Capacity Development: Conceptual Framework, Methodology and Analytical Approach” (HRDC, November, 2007)に基づき筆者作成. 分析テーマ A.途上国主導の計 画 B.柔軟でニーズに 合ったデザイン C.途上国主導の実 施・管理 D.TC 間の協調,他 の CD 支援手段と の補完性 E.チェンジ・マネ ジメント F.学習と持続的 変化 CDのための効果的 TC が機能する 条件についての仮説 (ワークショップでの議論) TCが途上国の現実的なセクター/課 題別 CD 戦略・優先度のもとに位置 付けられ,同優先度に基づいて実施 されるとき TCが期待される結果の確保に向け て,ニーズに対して柔軟に計画・供 与されるとき 途上国主導による TC の計画,管理, モニタリングが確保されるとき TCが他のさまざまな TC や CD のた めの他の支援手段が補完し合う形で 組み合わされて実施されるとき CDに向けたチェンジ・マネジメン トへの取り組みが行われ,TC がプ ロセスに結び付き,同プロセスに応 える形で行われるとき TCが学習プロセスとアクター間の ネットワーク化を促す役割を果たす とき 分析のアウトライン 1.事例の概観:対象 TC の経緯,目的,形態,関 係機関・ドナー等 2.C D 結 果 に 関 す る 実 証 的 根 拠 : 対 象 キ ャ パ シティの種類・レベル(個人・組織)・変化, 同変化に対する TC の効果,分析テーマが変化 にもたらした貢献/非貢献 3.実施アレンジメントとプロセス:分析テーマ がどのように実施されたかの詳細 4.環 境 : 分 析 テ ー マ の C D へ の 貢 献 / 非 貢 献 の 要因 5.ドナーの役割:分析テーマの CD への貢献/非 貢献におけるドナーと途上国の対話や計画・ 実施段階での支援 6.事例のアプローチがより広範な適用に適さな い場合の条件と要因:プライオリティ,リー ダーシップとコミットメント,ドナーの支援 状況等 7.事例に関する主要イシューと教訓
(how)の提示を図るためのものである。ちなみ に事例は、取り組みの参考となる実例を提示す るとの観点から、当初はグッド・プラクティス を中心に行う予定であったが、バッド・プラク ティスから学ぶことも多いとの途上国の意見を ふまえ、建設的なアプローチを基本として、両 者を対象としている。 以上の基本枠組みのもと、実際の国別研究は、 各途上国の固有の状況や優先関心事項をふまえ て柔軟に行うこととしており、6 テーマの中か ら当該国が特に関心を有する 2、3 のテーマに フォーカスして行うことも可としている。また、 方法論としては、調査・分析手法はさまざまに あり得るが、途上国の実際の声を十分に反映し 得る手法を重視している。この手法の 1 つとし て途上国内のさまざまな利害関係者が参加する ワークショップを複数回開催することとしてい る。特に上記の 7 項目の分析は、ワークショッ プで議論し、幅広い関係者の意見を反映するこ ととなっている。これによって、途上国内関係 者による経験・知識の共有を図ることも企図し ている。 表ー 3 国別研究実施体制・対象セクター/分野 ア ジ ア ア フ リ カ 注)マレーシア,ベトナム,タイ,ケニアに関しては,ドナー参加の CSMT は設置していないが,JICA は事務局として研究実施を支援して いる.
(出典)“Joint Study on Effective Technical Cooperation for Capacity Development: Progress Report”(HRDC,January,2008)に基づき筆者作成.
カンボジア開発評議会が取りまとめ機関とな り,関係省庁および既存の協力メカニズム (パートナーシップ・調和化技術作業グルー プ)のドナー・メンバー(JICA,UNDP, DFID等)が参加. ラオス計画協力委員会が取りまとめ機関とな り,関係省庁,UNDP,JICA が参加. 首相府計画庁が中心となって実施. タイ国際協力庁が中心となって実施. 計画投資省と財務省が共同で実施. 財務省が中心となって関係省庁参加で実施. 財務省が取りまとめ機関となり,関係省庁お よび既存の協力メカニズム(CD 作業グルー プ)のドナー(JICA,GTZ,UNDP)が参加. 教育省が中心となって実施. 大統領府が取りまとめ機関となり,関係省庁 およびドナー(JICA,UNDP)が参加. 大統領府が取りまとめ機関となり,関係省庁 および既存の協力メカニズム(TC 政策グル ープ)のドナー(JICA,GTZ,UNDP,DFID, 世界銀行ほか)が参加. 大統領府・財務省が取りまとめ機関となり, 関係省庁および JICA,BMZ,GTZ,UNDP が 参加. カンボジア ラオス マレーシア タイ ベトナム パキスタン ガーナ ケニア マラウイ タンザニア ザンビア 保健 公共財政管理 TC受入れ・供与経験 TC受入れ・供与経験 公共財政管理 各種セクター 教育,公共財政管理 教育 教育,保健 保健,農業 水・衛生 既存の現地レベル TC 研究 と統合する形で調和化を 図って実施. UNDPが別途実施中の CD 調査のインプットを得つ つ実施. ADBの支援により実施中 の CD 研究の結果を活用す る形で実施. 既存の調査研究結果を活 用する形で実施. UNDPによる CD アセスメ ント・戦略策定プロジェ クトに統合して実施. 国 国別研究実施体制 対象セクター/分野 備考
III
共同研究の進捗
共同研究は、2008 年 1 月現在、各国において CSMTの設置、対象セクター/分野の選定、国別 研究 TOR(Terms of Reference)の策定、コンサ ルタントの現地調達をほぼ終了し、現地調査を 開始した段階にある。各国の実施体制、対象セ クター/分野は表− 3 のとおりである。研究結果 そのものの議論は時期尚早であるが、TC 議論を はじめ、共同研究で重視している途上国主導ア プローチやネットワーク形成に関し、いくつか の興味深い点が見られるところとなっている。 1. TC 議論 TC議論に関しては、第 1 回ワークショップで の議論を通じ、途上国側の次のような認識や問 題意識が明らかになってきている(おもな論点 は表− 4 のとおり)。大半の途上国が、CD 支援 手段としての TC の有用性や他の支援手段との補 完性を認識している。それと同時に、多様な TC の管理の難しさ、途上国の開発戦略にアライン した、より需要主導で包括的なアプローチの必 要性、専門家の活動内容・質などに問題意識を 抱いている。また、南南協力を含む多様なリ ソースの活用を有用とするとともに、ディアス ポラ(国外居住自国民)の活用等を課題と認識 している。さらに、TC 効果の持続のための制度 化や効果活用のためのインセンティブ(雇用・ 給与政策を含む)の重要性を指摘している。 以上のような点に関する問題意識は各国の状 況によって異なっている。たとえば TC が ODA 総額の 5 割を占め、その多くが専門家による TC のカンボジアでは、専門家の問題が専らの関心 となっている。また、マラウイの関心がキャパシ 表ー4 TC および CD に関する途上国側認識・問題意識:第 1 回ワークショップにおけるおもな論点 (出典)第 1 回ワークショップでの議論に基づき筆者作成. ① CD 手段は多様化しているが,TC は大きな比重を占める重要かつ有益な手段. ② さまざまなモダリティの補完性が大切.ただし異なるドナーによる多様な TC 実施は,途上国にとって TC 管理・調整の難しさの一因.どのようなときにどのような TC がより効果的かについて途上国側としてい っそうの理解が必要.手続きの調和化も管理・調整の円滑化の課題. ③ CD に向けた効果的な TC のためには包括的なアプローチが必要.そのためには,ドナーの供給主導ではな く途上国開発戦略やプログラムと一貫性を有する需要主導の TC が重要.ただし途上国側もニーズを明確 化したうえで,優先度をつけて受入れの選択を行っていく必要あり.外部からの資金のみでなく自己資金 による取り組みも必須. ④ 効果的な TC には,利害関係者のプロセス参加,効果の制度化,効果活用のインセンティブ(雇用・給与 政策等)の確保. ⑤ 専門家については,CD を省みず短期現地滞在で報告文書のみ作成して離任するような者も少なくない. 質も問題の 1 つ.TC の効果向上にはモニタリング・評価の強化が必要. ⑥ TC のリソースとしては,国際的なリソースのみでなく,現地リソースや南南協力の活用も有効.自国の人 的資源の活用・帰還促進の観点からディアスポラの活用は検討課題. ① おもにセクター開発の一環として行われており,CD に焦点を当てた取り組みは限定的. 国全体としての優先度に基づく戦略的な CD 取り組みのためには CD 計画の策定が必要. ② 計画策定のためには CD のアセスメントが必要.CD 結果のモニタリング・評価が現在は不足. これらの方法論の確立も課題. ③ キャパシティが全体的に不足したなか,公共セクター(特に社会サービスや財政管理分野)の CD がまず は優先事項. 社会サービス分野では中央のみでなく現場の CD,分権化に伴う地方政府の CD も課題. ④ CD にはチェンジ・マネジメントの促進やキャパシティの活用のためのインセンティブが重要. それには政策的コミットメントとリーダーシップが不可欠. TC CDティの全体的な強化への取り組みとそのための TC活用であるのに対し、一定のキャパシティを 有するベトナムやタンザニアは自国リーダー シップに基づく援助管理の促進が主たる関心と なっている。こうした違いを反映して、各国の国 別研究はかなりバラエティに富む注 12)。これは、 今後の総合分析の難易度を高めることが想定さ れる。しかし、本研究では、途上国のオーナー シップと同経験・知識を重視するという観点か ら、可能な限り多様性を尊重して総合分析作業 を進めることとしている。 ちなみに関心の違いという点では、「パリ宣 言」の指標 4 に関する議論への貢献は多くのド ナー・メンバーの主要関心事項になっている。 しかし、途上国側では国別研究の主要関心事項 にはなっておらず、ドナーと途上国の間の関心 の違いも見られる。 2. 途上国主導アプローチ 途上国主導アプローチに関しては、途上国の キャパシティの問題もあり、総論は賛成として も実際問題としてどの程度可能であるか議論が あった。しかし、これまでのところ予想以上に 途上国がリーダーシップをとる形で進んでいる。 実務的には各国 JICA 事務所が事務局としてかな り支えているという面はあるが、CSMT 構築に あたっての関係省庁との調整、CSMT での意思 決定(対象セクター/分野選択、国別研究 TOR な ど)は途上国側がオーナーシップをもってリー ドをとっている注 13)。本研究に対する途上国側が オーナーシップを持つ要因の 1 つとしては、ド ナー側として途上国主導を徹底して進めている ことに加え、第 1 回ワークショップにおける途上 国間の交流を通じてのモチベーションのアップ が考えられる。たとえば、ワークショップの後 に対象セクター/分野を増やした国や、当初は文 献レビューを中心とする簡略な研究を検討して いたものの現地調査を含む本格的な研究にス コープを広げた国が 11 カ国中 4 カ国に上ってい る。また、ワークショップへの参加メンバーのコ ミットメントも高く、各国 CSMT の中核的なメ ンバーとなり、国別研究の推進に貢献している。 国別研究の進捗は現段階では国によって異な り、立ち上げがスムーズに進んだ国と時間を要 した国とに分かれる。前者については、①ワー クショップに参加した次官や局長といった幹部 キーパーソンが国別研究の取りまとめ役になり、 強いリーダーシップを発揮して推進している ケース、②以前から現地 CD/TC 作業グループ等 として緊密に協力してきたドナーが CSMT のメ ンバーになり、協調して作業を支援している ケース、が挙げられる(ただし②は①の要件を 満たしていない場合には進んでいない)。また、 後者については、①対象途上国内の関係省庁等 の協調が進まないケース、②取りまとめ機関の キーパーソンとなるポストに在する幹部の非協 力やリーダーシップの欠如が阻害要因となって いるケース、③現地ドナー間の十分な協力関係 が確保できず、ドナー間の意見調整や利害対立 に調整を要するケース、が挙げられる。本研究 は、プロセスに CD や援助協調の要素を盛り込 んでいるが、これらの貢献・阻害要因が共同研 究の進捗にも反映している。 3. ネットワーク 最後にネットワークに関しては、ドナー間、 途上国内、ドナー・途上国間の 3 つのレベルで、 注目される動きが見受けられる。ドナー間につ いては、TC に関して多様な見解を有するドナー もメンバー参加していることから、当初は意見 調整の困難性も懸念された。しかし研究枠組み の議論を含め、予想を上回る良好なサポートが 得られている。途上国の経験・見解を尊重する ことを基本に進めてきているため、ドナー間の 意見の違いが顕在化しにくいとの点もあろうが、 以上は共通の目的のもとでの共同作業が利害の 調整と協調に有益との示唆を与えるものともい える。 この関連では、国別研究を通じ、それほど緊 密な協力関係になかった他ドナーとの協力関係
が進展したケースも複数見られる。同様に、途 上国内でも、国別研究をきっかけに、取りまと め機関(おもに CD や TC の調整を所管する計画 官庁)と、対象セクター/分野所管のセクター省 庁とのコミュニケーションが活発化・緊密化し たケースも少なくない。これは当該国における 今後の CD 取り組みや、TC を通じた CD 支援に おいても有益な方向性といえる。 また、ドナー・途上国間では、途上国側が国 別研究のみでなく、研究全体にオーナーシップ をもって関わってくるようになりつつある。そ の一例として、2007 年 11 月に行われた DAC 援 助 効 果 作 業 部 会 ( H L F - I I I を 所 管 ) で は 、 ド ナー・メンバーに加えて同部会参加の途上国メ ンバー複数国が本研究の重要性について自発的 に発言し、国際会議の場でのアピールに協力し た。また、MG においても、時差等の問題もあ るなかで、途上国メンバーがそろって参加のう え、全体の進捗や第 2 回ワークショップの開催 等について、積極的な発言を行い研究全体のマ ネジメントに貢献してきている。
結 び
共同研究は、いくつかの新たな試みにもかか わらず、これまでのところ総じて良好に進んで いる。その最大の要因は途上国メンバーのモチ ベーションの高さと積極的な参画にある。これ は、研究参加にあたっての関心事項に示される ように、多くの途上国が「ドナーへのお付き合 い」にとどまらず、自国の CD 戦略や TC 政策・ 指針策定に活用したいという目的意識があるこ とによる。こうした途上国の期待にいかに応え ていくかは、本共同研究の成功、そして共同研 究を通じた国際的な CD/TC 議論・取り組みへの 貢献という目的の達成の重要なカギになる。 そのためには、共同研究を単発の研究に終わ らせるのではなく、途上国の戦略・政策への反 映およびこれら戦略・政策の実施に対するド ナーの協調した支援につなげていくことが肝要 である。前者については、各途上国にて CD/TC 戦略・政策の策定・実施を所管する機関が国別 研究の中核を担っていることから、一定の実現 が想定される。ただし後者については今後の大 きな課題であり、本研究のリード・ドナーであ る日本がこれらに引き続き中心的役割を果たし ていくことが求められる。また、そうすること が、国際的な CD/TC 議論・取り組みにおいて日 本の影響力を確保していくうえでも欠かせない。 付 記 筆者は研究コーディネーターとして国際共同研究に携 わってきている。ただし本稿の見解は筆者個人のもので あり、JICA あるいは国際共同研究チームの統一的見解を 示すものではない。なお、本共同研究の実施は、参加メ ンバー、そして国別研究の事務局を務める各国 JICA 事務 所の協力がなければ困難であった。この場を借りて感謝 申し上げる。注 釈
1)「パリ宣言」パラグラフ 22-24.開発成果達成に向 けた CD の重要性,CD の主体者としての途上国と 支援者としてのドナーの位置付け,社会・政策・ 経済環境を含む包括的な視点での CD 取り組みの必 要性が明記され,開発計画への CD の盛り込みや CD戦略の策定が途上国側のコミットメントとし て,途上国の CD 戦略へのアラインメント,支援の 調和化,途上国の既存キャパシティの活用が,ド ナー側のコミットメントとしてそれぞれ掲げられ た. 2) TC の定義は使用者によって必ずしも同一ではな い が , 本 稿 で は , D A C に よ る T C 定 義 〔 D A C Statistical Reporting Directives,OCD/DAC/2007/34〕 の free-standing TC(知識,技術,ノウハウ等の向 上を目的とする人の派遣,トレーニング,研究等. investment-related TCと区別)の意味で用いている. なお,国際開発金融機関を中心に technical assis-tance(TA)の用語もしばしば用いられるが,基本 的 に は T C と 同 義 語 で 使 わ れ て い る こ と が 多 い (DFID[2006b]). 3)「パリ宣言」の進捗を測るために設置された 12 指標 のうち,アラインメントに関する指標 4「協調した TC支援による CD 強化」では,「途上国の国家開発 戦略と一貫性を有する協調プログラムを通じて供 与された TC の割合」を具体的なモニタリング対象 とし,5 割達成を 2010 年までのターゲットとして いる.4) たとえば主要ドナーでは,2005 年以降,ADB(ア ジア開発銀行),AusAID(オーストラリア国際開 発庁),BMZ/GTZ(経済協力省/ドイツ技術協力公 社),DANIDA(デンマーク国際開発庁),DFID (英国国際開発省),IMF(国際通貨基金),世界銀 行で TC のテーマ評価や研究が相次いで行われ, 2007年からノルウェー等が新たな TC 手段を,SPA (Strategic Partnership with Africa)が TC に焦点を当 てた援助管理 CD に関する研究を開始している. 5) たとえば Browne[2002]は,1990 年代前半の TC 批判は 1980 年代の途上国の厳しい経済・社会状況 の影響を多分に受けていたが,1990 年代における 多くの国での経済成長やキャパシティの向上,ま た途上国での改革取り組みに伴う制度づくり TC の 増加により,TC をめぐる議論のコンテクストは変 わったと指摘している. 6) 途上国参加の研究は Browne[2002],ドナーの共同 研究は豪,独,デンマークによる合同評価(Land [2007])など,一部に限られている. 7) 日本(JICA)は,CD 概念および同取り組みの議論 に向けた「CD と援助効果に関する国際シンポジ ウム」(2003 年,於マニラ),「東京 CD シンポジウ ム」(2004 年,於東京)を他ドナー(UNDP,世界 銀行,GTZ,CIDA〈カナダ国際開発庁〉)ととも に共催し,同シンポジウムをフォローアップす る 形 で 2005 年 に 設 置 さ れ た Learning Network on CD( LenCD)に 中 心 メ ン バ ー と し て 設 立 から関わってきている.また,上記シンポジウム にあたり,日本の TC 経験を『プロジェクト研究・ 日本型技術協力の有効性と課題』(国際開発センタ ー他[2003])にまとめて発信したほか,LenCD な ど C D 関 係 の 国 際 会 議 で も C D 事 例 研 究 ( J I C A [2007])などに基づき経験を発信してきている. 8) これに関連して,Morton[2003]は,TC 問題の要 因の 1 つとして,(欧米ドナーの)合理思想に基づ く啓蒙主義の歴史的側面を指摘している. 9) 同分権型体制のもと,研究全体の技術的支援に当 たる国際コンサルタントとは別に,国別研究を支 援するコンサルタントを,①当該国に経験を有す る人材の活用,および②選定プロセスへの途上国 側の参加確保という観点から,国ごとに雇上して いる. 10)ドナーは,ドナー間の互選で JICA,DFID,GTZ, 世界銀行が,途上国メンバーは,地域ごとの途上 国メンバーの互選により,ガーナ,マラウイ,カ ンボジア,ベトナムがメンバーとなっている. 11)JICA 英語ホームページ. 〈http://www.jica.go.jp/cdstudy/index.html〉 12)同様に,TC の定義・認識も各国で異なることが明 らかになりつつあり,アジア諸国が総じて広い活 動(研修/留学,関係機関交流〈twinning〉など) を含めて TC を認識しているのに対し,アフリカ諸 国では主として専門家派遣を指していることなど が指摘されている. 13)途上国主導アプローチは,合同評価などで近年, 導入されてきているが,途上国のキャパシティの 問題から必ずしも進んでいない.また,実態的に はドナーが主導し,途上国は全体の運営委員会に 出席するのみ,現地調査もドナーが雇上した国際 コンサルタントが短期間行うのみといったケース も少なくない.国際レベルの合同評価において途 上国がリードをとる形で各国において評価を行う 体制をとっているのは,HLF-III に向けて実施中の DAC開発評価ネットワークによる「パリ宣言合同 評価」などの限られたケースとなっている.また, その場合も,比較的キャパシティを有する途上国 をパートナーに実施されており,多様なキャパシ ティの途上国を対象にそのオーナーシップ・リー ダーシップを尊重しながら適用する試みは本研究 が初めてに近い.
参考文献
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