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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 経済学 ) 氏名 蔡美芳 論文題目 観光開発のあり方と地域の持続可能性に関する研究 台湾を中心に ( 論文内容の要旨 ) 本論文の目的は 著者によれば (1) 観光開発を行なう際に 地域における持続可能性を実現するための基本的支柱である 観光開発 社会開発 及び

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Academic year: 2021

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(1)

Title 観光開発のあり方と地域の持続可能性に関する研究 -台湾を中心に-( Abstract_要旨 )

Author(s) 蔡, 美芳

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2014-07-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k18493

Right 許諾条件により本文は2015-07-23に公開(2015/10/22)

Type Thesis or Dissertation

Textversion ETD

(2)

(続紙 1 ) 京都大学 博士(経済学) 氏名 蔡 美芳 論文題目 観光開発のあり方と地域の持続可能性に関する研究― 台湾を中心に ― (論文内容の要旨) 本論文の目的は、著者によれば、(1)観光開発を行なう際に、地域における持続可能 性を実現するための基本的支柱である「観光開発」、「社会開発」及び「環境保護」の 間の政策的補完関係を確認したうえで、(2)観光開発の担い手として、上述した3つの支 柱に関わる経済主体が如何にそれを推進し、強化するかを実証的に考察し、観光開発の あり方と、地域の持続可能性との関係を明らかにすることによって、台湾における持続 可能な観光開発の枠組みを明確にすることにある。 このため著者は、「メディア誘発型観光」、「温泉観光」及び「エコツーリズム」と いった3つの観光形態を採りあげ、中央政府、地方自治体の政策を検証していく手法を とる。本論文は、課題設定と分析方法を説明した序章に続く4章と終章から構成されて いる。 第Ⅰ章「台湾の国際観光の位置づけ」では、世界と台湾の国際観光の現状について考 察し、「持続可能な観光開発」の発展の重要性を概説している。また、行論で採り上げ る「メディア誘発型観光」、「温泉観光」及び「エコツーリズム」という3つの観光形 態が、いかなる社会経済的背景のなかで展開してきたかを、台湾の観光開発政策史を追 う中で明らかにしている。 第Ⅱ章「台湾における人文観光資源とメディア誘発型観光」では、台湾が保有する文 化資産の地理的分布と、これらが人文観光資源として活用されている現状について考察 している。著者は、台湾において人文観光資源の活用が遅れている原因を、日本統治時 代から戦後の国民党独裁時代にかけての台湾独自の歴史的特徴に求めるとともに、近年 における地方政府による人文観光資源を活用したメディア誘発型観光開発の意義と課題 について述べている。 第Ⅲ章「台湾の温泉観光における文化的要素」では、まず台湾における温泉観光の歴 史的変遷を概観したうえで、観光統計によって台湾の温泉観光地の地域別分析を行う。 次に、地方政府による温泉区開発計画と台湾政府による温泉法の制定に注目し、その実 施にあたって地方政府主導でインフラ整備中心に開発がなされた第一段階と、中央政府 主導で原住民文化の保護を重視した第二段階に区分できることを明らかにしている。さ らに、GIS(Geographic Information System)を利用して、主要温泉区周辺の文化観光 資源の分布状況を分析し、台湾における文化資源の保護と活用が未だ不十分であると指 摘する。

(3)

第Ⅳ章「台湾のエコツーリズム推進主体の課題」では、日本の「エコツーリズム推進 法」で定められているエコツーリズムの推進主体をモデルにして、環境保護の原点から 見る推進主体のあり方を論じている。その際、日本をはじめアジア地域におけるエコツ ーリズムの先進的取組みを考察するなかで、地域がエコツーリズムを環境保護と地域振 興の手段として実施するようになった経緯、要因を分析し、台湾におけるエコツーリズ ム推進主体の課題及び役割についての政策的含意を抽出している。 終章では、本論文の総括と今後の研究の展望について述べている。

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(続紙 2 ) (論文審査の結果の要旨) 近年、国際観光が一国の経済成長戦略のなかで重視されるようになる一方で、観光 形態もかつての発地型の「マスツーリズム」から着地型の「ニューツーリズム」へと 大きく変化しつつある。後者の観光形態においては、自然資源や歴史文化資源を活か したエコツーリズム、文化観光、さらにメディア誘発型観光が重視されつつある。そ れは必然的に、国や地方自治体が、地域の経済開発だけではなく、自然・文化資源を 含む地域の持続可能性を追求する一手段として、観光開発を政策として位置付ける過 程を伴う。 だが、近年におけるこのような観光開発政策についての本格的研究は緒に就いたば かりである。観光学や経営学、社会学、都市計画学の分野においては観光行動や観光 業、観光施設経営、観光マネジメント等の個別研究は蓄積されているが、観光政策論 としての研究は立ち遅れているといえる。とりわけ、台湾における観光政策の展開と その評価については台湾においても研究は希薄であり、本論文が初めて本格的なメス を入れたといってよい。本論文の学術的貢献は、以下のとおりである。 第一に、台湾における観光開発のあり方を、地域の持続可能性という視点から一貫 して追究することにより、台湾の統治構造の歴史的変化と照応させて、観光開発政策 の展開過程を政治経済学的に解明している点である。確かに、マスツーリズムからニ ューツーリズムへのシフトは、国際的傾向であり、そこに普遍性が存在しているが、 政策の内容や実施体制については国ごとの特殊性が存在する。それらを区別しながら 台湾の特殊性を浮きだたせた点は、経済政策論の方法として注目される成果である。 第二に、上記の特殊性を説明する媒介環として、また台湾における歴史文化資源を 活用した近年の観光開発政策の核をなすものとして、「台湾意識」の台頭がある点を 明らかにしたことである。台湾の観光開発は、日本の統治時代に開始されたが、戦後 は大陸から逃れてきた国民党政権の下にあって「中国文化」が前面に押し出され、独 自の「台湾文化」は封じ込まれていた。中国が国際社会に復帰し、台湾の民主化と 「台湾意識」の高まりのなかで、観光開発における重要な資源として原住民の人文資 源が注目されるようになったと著者は明快に論証する。このことは、台湾近現代史研 究に対して少なからぬ示唆を与えるであろう。 第三に、観光政策論の分野においては、どの国においても資料・統計の未整備や不 十分性が目立ち、資料の収集と分析自体が困難な場合が多い。著者は、台湾政府や地 方政府への訪問調査やアンケート、さらに地理情報システム(GIS)を活用した分析 方法も取り入れて、客観的な分析に耐えうるように工夫するとともに、各章において 台湾政府や地方政府による観光開発政策の課題を抽出し、政策的提起を行っている。 これにより、本論文は、政策担当者に対して政策的含意を広く提供するものとなって おり、この面でも評価に値する。

(5)

他方、本論文には、いくつかの課題も残されている。第一に、「台湾文化」に注目 して論じてはいるものの、台湾の「持続可能性」というメインの概念のなかに内在す ると考えられる「文化の持続可能性」については方法論的に掘り下げが不十分であ り、この点を豊富化する必要がある。第二に、近年における「台湾文化」なり「台湾 意識」の強調は、経済開発の側面だけでなく、台湾の存在を対外的に発信する外交的 な目的もあると考えられ、その点での追究が求められる。第三に、温泉区開発及びエ コツーリズムの台湾での政策展開の内容と帰結については、住民の生活や意識の変化 を含む具体的な観光地レベルでのケーススタディが不可欠であり、この点での補強が 望まれる。第四に、本論文では、観光開発政策を対象にしている関係で、分析対象を 台湾政府及び地方政府に限定するとしている。だが、観光業の主体である観光産業の 実態分析も併せて行わなければ、例えばエコツーリズムにおける調整組織の不在とい う問題の解決策も説得力を欠くことになろう。今後の補充が求められる。 とはいえ、以上に挙げた諸課題は、将来に向けた研究の発展のための方向性を示唆 するものでもあり、本論文が解明した貴重な学術的貢献をなんら損なうものではな い。 よって、本論文は博士(経済学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお、平成26年6月5日、論文内容とそれに関連した口頭試問を行った結果、合格と 認めた。

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