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富士山麓地域における観光行動の特徴

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Academic year: 2021

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富士山麓地域における観光行動の特徴

着地からの旅行距離に着目して

杉 本 興 運

小 池 拓 矢

Tourist Behaviors in the Region at the Foot of Mt. Fuji : An Analysis Focusing on the Effect of Travel Distance

Koun SUGIMOTO* and Takuya KOIKE

[Received 27 January, 2015; Accepted 16 November, 2015]

Abstract

  This study examines tourist behavior in the Mt. Fuji area in terms of distance traveled by tourists, and clarifies differences in types of tourist and their movements based on distance traveled. Moreover, it describes the social impact of the area's recognition as a UNESCO World Heritage site on the behavior of tourists. Tourism in the Mt. Fuji area began as Fuji Tohai, which means “climbing for worship” in the Edo era, and was popularized by subsequent tourism development. At present, the Fuji area is a tourism region that provides opportunities for sight-seeing, leisure, and recreational activities, such as exploring and staying in the Fuji Five Lakes region, to visitors who live in or near urban and metropolitan areas. By analyzing the results of a questionnaire survey given to domestic individual travelers who use private cars, we found that their behavior is characterized by differences related to travel distance, although most of them share the common purpose of experiencing natural landscapes during their travels. Neigh-borhood residents tend to visit for daily leisure activities, whereas visitors from distant places tend to make overnight trips and visit only major tourist attractions. This shows the nature of the concentric model, which means that travel distance influences the behavior of tourists, their perceptions, and frequency of trips, and vice versa. However, we simultaneously discovered a distortion in this model, which is caused by the locality of the Mt. Fuji area. Tourism in the Mt. Fuji area currently faces changes resulting from the significant social impact of the area's recognition as a World Heritage site: Tourism demand is increasing, especially among persons who live in more distant places, which means foreigners living abroad in this study, and local residents are working to develop tourist areas and touring routes, focusing on World Heritage. Tourist behavior, such as perception and movements, have gradually changed in parallel with social and environmental changes.

Key words:tourist behavior, travel distance, the foot of Mt. Fuji, World Heritage キーワード:観光行動,旅行距離,富士山麓,世界遺産登録

首都大学東京

Tokyo Metropolitan University, Hachioji, 192-0397, Japan

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I.は じ め に  1)研究の背景と目的  観光者の行動に関する理論的・実証的研究は, 観光という現象それ自体の解明や,地域の観光計 画(観光地の需要予測や市場分類など)に役立つ 基礎的知見の蓄積という,学術と実務の双方の立 場において重要なものとみなされてきた。空間現 象を扱う地理学的研究では,とりわけ移動や流動 といった観光者の空間行動の諸側面が関心の中心 であり,これまで観光者の行動パターンの探索や 類型および規定要因の解明などを通して,理論構 築や実証分析が積み重ねられてきた。例えば, Campbell(1967)は都市住民のレクリエーショ ンや休暇を目的とした観光旅行における行動パ ターンを,居住地と大都市近郊のレクリエーショ ン地との間の単純往復,居住地から出発し複数の レクリエーション拠点に立ち寄りながら順次巡る 広範囲の移動,居住地を出発してある地域への到 着後にその地域内を巡回する前者 2 つの中間的な 移動の 3 タイプに分類した。この研究を起点とし て,行動パターンの類型に関するさらなる検討が 進み,Lue et al.(1993)と Oppermann(1995) によって観光旅行における一般的な 7 つの行動 パターンが提示された。そこでは,単純往復や大 回遊移動に加えて,主要目的地へ向かうルート上 で副目的地に立ち寄る移動,到達した地域内での 回遊移動や拠点と観光対象との間の単純往復,複 数目的地を巡る移動などが提示されている。ま た,Mings and MacHugh(1992)や Flogenfeldt (1999)の研究においても,事例地域で収集され た観光者の旅行日程のデータから,居住地と目的 地との間の移動に関するいくつかのパターンが抽 出されている。これらの研究は,観光者の行動パ ターンを規定する要因として,社会属性や旅行形 態といった観光者自身に関する要素や,観光対象 の位置や分布といった空間的要素に着目してき た。後者に関する研究は,観光者(出発地)と観 光対象(目的地)双方の空間関係に着目し,両者 間の「距離」が観光行動に与える影響を分析する こともある。例えば,居住地から目的地までの距 離(以後,旅行距離と呼ぶ)によって,観光者の 特性や行動が変化するという同心円性の存在が 仮定・実証されている(Plog, 1974; 滝波, 1994, 1996)。また,旅行距離の増大によって移動範囲 が拡大し,訪問先が厳選されるという,観光者 の合理性嗜好が指摘されている(鈴木, 1966; Lue et al., 1993; 橋本, 2013)。加えて,先述した Campbell(1967)の研究においても,旅行距離 の遠近によって,観光者の行動パターンが異なる ことが示唆されている。  上述した研究は,居住地と目的地の関係に着目 した比較的マクロなスケールにおける観光者の空 間行動を扱ったものだが,目的地内部での拠点と 観光対象との関係を扱ったよりミクロなスケール における空間行動に関しても,観光者の行動パ ターンの探索とモデル化が進んでいる。Lew and McKercher(2006)は観光目的地内部での拠点 を中心とした観光者の一般的な行動パターンを, 移動軌跡や立ち寄り地の特徴から 3 タイプ(さら にサブタイプが計 7 つ存在)に整理した。杉本ほ か(2013)は,長野県安曇野市におけるレンタサ イクル利用者の回遊行動を,Lew and McKercher (2006)の行動パターンのタイプにあてはめ,そ の出現頻度を分析するとともに,それらを誘発す る地域的条件と知覚的条件を考察した。また,よ り探索的な分析によって,観光者の典型的な移動 軌跡や訪問先順序の抽出を試みた研究も存在する (橋本, 1994; Shoval and Isaacson, 2007; 矢部・

倉田, 2013)。さらに,Shoval et al.(2011)は 拠点からの距離に応じて観光者の活動時間が漸減 すること(距離逓減カーブの存在)を明らかにし ており,観光行動の分析において「距離」がもた らす時間的・空間的制約を考慮することの必要性 が示唆されている。  このように,観光者の空間行動に関しては, 「距離」が観光者の行動パターンを規定するもっ とも重要な要因の 1 つとして指摘されており (鈴木, 1966; 滝波, 1994, 1996; 小島, 2008),分 析においてとくに注目すべき視点であるといえ る。先行研究での分析では,「距離」は,観光行 動のパターン分類の指標として,また観光者の活

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動や流動の逓減効果を表す関数として扱われてき た。これに関して,本研究ではとくに前者に関連 した課題として次の点を指摘したい。  マクロ視点の研究では,観光者の行動パターン の類型やモデル化を発地である都市居住者の目線 から行ってきた経緯があり,着地である観光目的 地の特性を十分に考慮していない。つまり,これ までは都市の居住地を基点とし,そこからの観光 者の行動を目的地までの旅行距離との関係から特 徴づけることが中心であって,特定の観光地を基 点とし,そこを来訪する観光者の行動の特徴を旅 行距離の視点から説明することにはあまり関心が 向けられていなかった。ただし小島(2008)は この点を指摘し,熊本市を中心とした圏域を事例 に,着地を基点とした距離に伴う観光行動の差 異,すなわち同心円性の検証を試みている。しか し,観光流動からみた観光地間の関係に議論の焦 点がおかれ,観光者特性や空間行動の特徴につい て,詳細な分析は行われていない。また,熊本市 のような都市は観光者の出発地と目的地双方の機 能をもつが,大都市周辺に立地する自然資源を基 盤とした観光地のように,観光目的地としての機 能により特化した場所において,旅行距離が観光 行動に及ぼす影響は検証されていない。着地を基 点とした観光行動の同心円性に関する特徴の適用 範囲や限界を確認するために,性質の異なる地域 での研究蓄積も必要である。  以上をふまえ,本研究は,2013 年 6 月の世界 遺産登録を受け,今や国際的な観光地としての認 知度が高まった富士山麓地域を事例として,その 地域内における観光者の特性や行動の特徴を,着 地を基点とした旅行距離の違いから明らかにす る。あわせて,今後の富士山麓地域の観光行動を 論じる上で重要なテーマである世界遺産登録の影 響についても検討する。こうした目的地に関連す る社会事象が観光行動に与える影響度も,観光者 の居住地の遠近によって異なると予想されるた め,ここでも旅行距離の視点を分析にとり入れ る。富士山麓地域を事例として選んだのは,この 地域内において,自然景観や名所・旧跡,登山 道,レジャー施設など多様な観光スポットが存在 し,かつ,それらが面的な広がりをもって分布し ているため,観光目的地内における観光者の特性 や行動の特徴を把握しやすいためである。また, 富士山麓地域は全国的に知名度の高い観光地域で あるため観光者の誘致圏が広く,近隣地域だけで なく遠隔地域からも観光者が多く訪れると予想で きることから,旅行距離による観光行動の違いを 検証するのに適していると考えた。  2)研究対象地域と研究方法  本研究のおもな対象地域である富士北麓は,東 京都心から約 100 km 離れた場所に位置する。河 口湖をはじめとする富士五湖や国の天然記念物に 指定されている忍野八海のほか,富士急ハイラン ドなどのレジャー施設がおもな観光資源である。 また,国内最大規模のアウトレットモールが立地 する御殿場や,白糸の滝や朝霧高原などの自然資 源をもつ富士宮などとのアクセスも良好であり, 富士山麓地域全体で観光の行動圏域が形成されて いるといえる。さらに,この地域は 2013 年に, 「富士山—信仰の対象と芸術の源泉」の名で世界 文化遺産登録されたことから,富士五湖や各史跡 などの世界遺産の構成資産が点在するこの地域は 日本を代表する観光地域の 1 つであるといえる。  本研究では,富士山麓地域における観光行動の 特徴を明らかにするにあたり,既存の調査報告書 と独自のアンケート調査結果を組み合わせた。前 者によって観光入込客数の変化や地域間の観光流 動など大量サンプルに基づく観光行動の量的特徴 を概観し,後者によって観光者の特性や空間行動 を詳細に把握する。前者については本章以降の各 章にて適宜参考資料を提示する。  アンケート調査は 2014 年 8 月 12 日,13 日, 14日のお盆休みの期間に,道の駅富士吉田で実 施された。富士山麓地域への来訪で多く選択され る交通手段である,自家用車1)を利用した個人 旅行者に調査対象を絞るため,調査地として道の 駅2)を選択した。そのため,本研究では鉄道や ツアーバスを利用して富士山麓地域まで訪れた観 光者の行動は分析対象としていない。調査当日は 午前 10 時から午後 5 時までの間,各日 5 人,5 人, 4人の調査員が道の駅富士吉田の観光案内所の前

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を中心に,観光者へのアンケート用紙の配布およ び回答の補助を行った。アンケートの内容には, 大きく観光者特性に関する質問項目(社会属性, 旅行形態,観光情報取得,世界遺産登録の影響) と空間行動に関する質問項目(訪問先や活動内容) が含まれる。アンケート調査によって取得した データは,質問項目ごとの特性を考慮して,2 種 類のデータ形式を採用した。まず,観光者特性の 項目はエクセル表データとし,空間行動に関する 項目は R 言語(ver. 3.1.0)で作成したプログラ ムによって観光者のトリップ3)を表す空間デー タに変換し,管理した。  これらのデータを次のように分析した。観光者 特性に関しては,各変数を旅行距離帯別にクロス 集計し,旅行距離による出現頻度の差をみた。本 研究では旅行距離を居住地から河口湖までの直線 距離とした。滝波(1994, 1996)や小島(2008) は,距離変数として観光者の出発地域名称(ダ ミー変数)を使用し,それらと観光行動に関する 変数との関係を,数量化理論Ⅲ類を使って明らか にしている。本研究の場合,実距離の帯域を距離 変数として使用しているため,変数同士の関係距 離を算出せずとも,旅行距離帯をもとにしたクロ ス集計と統計的検定によって傾向が十分に読みと れると判断した。空間行動に関しては,ⅰ)各旅 行距離帯におけるトリップの空間分布の可視化, ⅱ)トリップ数に関する基本統計量の算出,ⅲ) 代表的な周遊ルート事例の抽出,ⅳ)観光対象 分布の標準偏差楕円の可視化の,計 4 種類の分 析を行い,その結果を総合した。なお,分析 ⅳ) の標準偏差楕円の計算には ArcGIS(ver.10.2) の「分布志向性分析(Standard Deviational El-lipse)」ツールを使用した。楕円計算の際には, 各観光対象の訪問数による重み付けを行い,さら に対象とするフィーチャの約 95%が楕円ポリゴ ンに含まれるよう設定した。  最後に世界遺産登録が観光行動へ与える影響の 検討方法について説明する。世界遺産を対象とし た先行研究は,観光入込客数の推移や経済効果 (服藤, 2005),メディアの宣伝状況や旅行会社の ツアー内容など(ニ・ヌンガー, 2015)から世界 遺産登録の影響を明らかにしている。富士山麓地 域に関しては,山梨県が独自の調査結果をもとに 世界遺産登録の影響を受けた観光者の特性を報告 しているものの,具体的な訪問先や周遊ルートに ついて言及しておらず,実際の行動が不明であ る。本研究では,上述したアンケート調査のデー タによって構成資産への来訪動向を分析するとと もに,各種資料から旅行会社や現地事業者の対応 などを調べ,より多角的に世界遺産登録が観光行 動へ与える影響を検討する。 II.富士山麓地域における観光の進展  1)観光開発と周遊ルートの変遷  富士山麓地域の観光の中心である富士北麓は, いかにして現在のような集客力を誇る観光地域へ と発展していったのだろうか。表 1 に時代ごと のおもな観光形態と観光や交通に関わる開発,典 型的な周遊ルートの例を示した4)。富士山への登 山が盛んになったのは,富士講という富士山信仰 が成立した江戸時代にさかのぼる。これにより, 登山口をもつ上吉田や川口は富士登山の拠点とし て発展を遂げた。明治時代になると富士講は衰退 するが,観光としての富士登山が進展する。各馬 車鉄道や東海道線,中央線の開通などによって交 通網が整備されたことが背景にあり,富士北麓の 誘致圏は拡大した。また,1895 年に日本に帰化 したイギリス人のホイットウォーズによって精進 湖畔に「精進ホテル」が建設されると,外国人観 光者がこの地域を訪れるようになるとともに,富 士五湖を探勝する観光が行われるようになった。  その後,1929 年に富士山麓電気鉄道が開通す ると,富士北麓の観光の大衆化がはじまった。第 二次大戦後は富士急行によって,多くの観光者を 誘致するために観光開発が行われ,1961 年に開 園した富士急ハイランドはその象徴といえる。ま た,1964 年に開通した富士スバルラインによっ て,富士山五合目まで自動車でアクセスできるよ うになり,富士登山に関しても大衆化が進んだ。 図 1 は 1964 年から 1998 年までの富士北麓の年 間の観光入込客数の推移である5)。これによる と,1964 年には 550 万人ほどであった観光入込

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客数は,5 年後の 1969 年には約 2 倍の 1,000 万 人に増加しており,富士スバルラインが集客には たした役割の大きさがうかがえる。1970 年以降 も観光入込客数は順調に増加し続け,現在この地 域は年間の観光入込客数約 1,700 万人が訪れる大 規模な観光地域として,その地位を不動のものに している。一方,山中湖畔では昭和初期に別荘地 開発が行われ,大衆化とは相反するかたちで,富 裕層を対象にしたリゾート地としての性格を帯び ることになった。高度経済成長期になると,山中 湖畔にはリゾートマンションや企業の保養所など が目立って立地するようになっていった。このよ 表 1  富士北麓における開発と観光の変遷.

Table 1 Change in development and tourism at the northern foot of Mt. Fuji.

時代 主な観光形態 観光・交通に関する開発 典型的な周遊ルートの例 江戸 富士登拝 ・富士登山 吉田 / 川口→富士山  (内藤(2002)より) 明治 富士登山富士五湖の探勝 ・1889 年:東海道線全線開通 ・1895 年:精進ホテル建設 ・1900 年:都留馬車鉄道  西桂-籠坂間開通 ・1901 年:富士馬車鉄道  大月-西桂間開通 ・1903 年:中央本線  八王子-甲府間開通 ・富士五湖探勝(主に外国人観光客)  横浜(ニューグランドホテル泊) →箱根(富士屋ホテル泊) →河口湖畔船津(中屋旅館泊) →精進湖畔(精進ホテル泊)  (内藤(2002)より) 大正・昭和初期 富士登山富士五湖の探勝 リゾート地滞在 ・1929 年:富士山麓電気鉄道  大月-富士吉田間開通 ・ 1934 年:富士山麓電気鉄道 新宿- 富士吉田間臨時列車「高嶺」直通 運転開始 ・1936 年:富士ビューホテル創業 ・富士北麓周遊  大月→吉田→河口湖→西湖→精進湖  (春野(1925, p.70)) ・富士登山  大月→吉田→馬返し→五合目→頂上 (富 士 急 行 50 年 史 編 纂 委 員 会(1977, p.116)より) 戦後 富士登山 富士五湖の探勝 レジャー リゾート地滞在 ・1950 年:富士急行線  河口湖-富士吉田間開通 ・1961 年:富士急ハイランド開業 ・1963 年:ホテルマウント富士創業 ・1964 年:富士スバルライン開通 ・ 1969 年:中 央 自 動 車 道  相 模 湖 IC-河口湖 IC 開通 ・定期観光バス「若ふじ」  河口湖→山中湖→富士急ハイランド →河口湖(遊覧船・ロープウェイ) →紅葉台→風穴→本栖湖→河口湖 (日本交通公社(1964)より) ・定期観光バス「赤富士」  富士→白糸の滝→養鱒場→本栖湖 →河口湖(遊覧船・ロープウェイ) →富士急ハイランド→山中湖→御殿場 →富士(日本交通公社(1964)より) 注 1:「主な観光形態」「観光・交通に関する開発」は内藤(2002)を参考に作成. 注 2:「典型的な周遊ルートの例」で参照した資料は表中に記載. 図 1 1990 年代までの富士北麓の観光入込客数の推移. Fig. 1  Change in the number of tourists at the northern

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うに,富士北麓は観光開発の歴史のなかで,個々 の場所ごとに異なるタイプの観光者を対象として 誘致を実施し,発展を遂げてきた。さらに,今後 は世界遺産登録の影響によって,構成資産を巡る ような観光行動が発生することが考えられる。  2)現在の観光行動の動向  既存の調査報告書から富士山麓地域における現 在の観光行動の動向を把握する。本研究と関連し てとりわけ参考になるものが,観光庁が組織した 「GPS を利用した観光行動の調査分析に関する ワーキンググループ」による,「GPS 機能による 位置情報等を活用した観光行動の調査分析報告 書6)」(観光庁, 2014a)である。以下では,本研 究と関連する重要な分析結果7)を述べる。  富士山周辺では 1 年のうち観光者の訪問数が もっとも多い時期が 8 月であり,そのうち 63% が宿泊旅行,37%が日帰り旅行である。夏季(6 月,7 月,8 月)の宿泊数は平均 1.98 泊だが,1 泊が全体の 79.1%を占める。また,休日の方が 平日よりも来訪者数が多い。来訪のために使用 した主要交通手段は道路(自動車)が 92%,鉄 道が 6%,飛行機が 2%となっている。調査で指 定された 11 か所の観光エリアのうち,河口湖・ 河口浅間神社エリアへの観光者訪問数が最多で 4,892,143人に達し,全体の 41.2%を占めてい た。2,3 番目に来訪が多いエリアは,それぞれ 山中湖エリア(13.3%),本栖湖・精進湖・西湖 エリア(11.7%)であった。次に,旅行距離に着 目した分析結果では,観光者の約 90%以上が首 都圏や中京圏が位置する 250 km 圏内から来訪し ており,そのうち旅行距離 100 km 未満の旅行が 69.2%,100 km 以上 250 km 未満が 23.8%であっ た。より遠方から来訪した観光者ほど 1 か所で の滞在時間が短く,「先を急ぐ」傾向にあり,な おかつ多くのエリアを巡っていた。また,訪問先 のエリアに着目すると,遠方居住者ほど「山頂の 信仰遺跡群エリア」への訪問比率が大きく,富士 登山への訪問意向が高いことが特徴的であった。  このように,富士山麓地域を訪れる観光者につ いて,旅行距離の違いによって行動が異なる傾向 にあることが言及されている。しかしこの調査結 果では,観光者の年齢や性別はもちろん,旅行目 的や同伴者の数など,観光者に直接聞きとること でしか把握できないことに関しては,当然ながら 不明のままである。また,集計されたデータの分 析が中心であり,個々人のデータ,つまり非集計 の行動データの分析結果は示されていない。 III.旅行距離による観光者特性と空間行動の差異  1)観光者特性  著者らが行ったアンケート調査の結果,234 グ ループ(回収率 100%)から回答を得た。ただし, 欠損値が含まれるデータを除外したところ,有効 回答は 194 グループ分となった。  表 2 は,各質問項目について,全体の結果と 旅行距離帯別のクロス集計結果を示している。本 研究のアンケート調査の結果では観光庁の調査報 告書と同様に,旅行距離 250 km 未満の観光者数 が全体の約 90%を占めており,以下に説明する 宿泊日数や旅行人数などを勘案して,旅行距離帯 を 50 km 未満,50 km 以上 100 km 未満,100 km 以上 250 km 未満,250 km 以上に分けた8)。ま た各質問項目において,選択肢の出現頻度が旅行 距離帯によって差があるか否かを,Fisher の直 接確率検定の p 値によって示した(表 2)。  まず,全体的な傾向としては,50 km 以上 100 km 未満からの来訪がもっとも多く(108 人),続い て 100 km 以上 250 km 未満からの来訪が多い (45 人)。質問項目別の集計結果をみると,旅行 目的ではどの旅行距離帯でも「自然景観」を楽し む目的の観光者の割合がもっとも高い。しかし, 「自然景観」以外の選択肢において出現頻度の特 徴が大きく異なる部分があるため,旅行距離帯間 に有意差が認められる。すなわち,50 km 未満 では「行楽(遊園地)」「ショッピング・グルメ」, 50 km以上 100 km 未満では「休養」「スポーツ・ レクリエーション」,100 km 以上 250 km 未満 では「行楽(遊園地)」「ショッピング・グルメ」, 250 km以上では「温泉浴」「ショッピング・グ ルメ」の割合がそれぞれ高い。  旅行人数に関しては,50 km 未満から訪れた観 光者では「2,3 人」が多く,100 km 以上 250 km

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表 2  観光行動データのクロス集計表.

Table 2 Cross-tabulation tables of tourist data collected by questionnaires.

アイテム カテゴリー 0 km-50 km 50 km-100 km 100 km-250 km 250 km- 全体 Fisher確率検定直接 N 割合% N 割合% N 割合% N 割合% N 割合% 旅行目的※ (回答者のみ) 自然景観 11 37.9 41 24.3 20 28.2 12 34.3 84 27.6 p=0.01 温泉浴 1 3.5 21 12.4 6 8.5 5 14.3 33 10.9 名所・旧跡・歴史 1 3.5 8 4.7 6 8.5 3 8.6 18 5.9 行楽(遊園地など) 8 27.6 15 8.9 14 19.7 3 8.6 40 13.2 登山・トレッキング 0 0.0 4 2.4 5 7.0 1 2.9 10 3.3 スポーツ・レクリエーション 0 0.0 22 13.0 4 5.6 1 2.9 27 8.9 ショッピング・グルメ 5 17.2 13 7.7 8 11.3 5 14.3 31 10.2 休養 3 10.3 36 21.3 6 8.5 3 8.6 48 15.8 写真撮影 0 0.0 9 5.3 2 2.8 2 5.7 13 4.3   計 29 100 169 100 71 100 35 100 304 100.0 代表者の年齢 0-20 歳 2 9.5 4 3.7 3 6.7 2 10.0 11 5.7 p=0.74 21-40 歳 5 23.8 23 21.3 10 22.2 7 35.0 45 23.2 41-60 歳 9 42.9 52 48.1 23 51.1 8 40.0 92 47.4 61歳以上 5 23.8 29 26.9 9 20.0 3 15.0 46 23.7   計 21 100 108 100 45 100 20 100 194 100 同伴者との 関係※ 夫婦・恋人 7 29.2 21 19.4 5 10 4 22.2 37 18.5 p=0.08 家族 10 41.7 71 65.7 33 66 13 72.2 127 63.5 友人・知人 7 29.2 16 14.8 12 24 1 5.6 36 18.0   計 24 100 108 100 50 100 18 100 200 100.0 旅行人数 1人 2 9.5 4 3.7 1 2.2 2 10.0 9 4.6 p=0.07 2,3 人 8 38.1 44 40.7 10 22.2 7 35.0 69 35.6 4,5 人 5 23.8 44 40.7 26 57.8 10 50.0 85 43.8 6人以上 6 28.6 16 14.8 8 17.8 1 5.0 31 16.0   計 21 100 108 100 45 100 20 100 194 100.0 宿泊日数 日帰り 19 90.5 25 23.1 12 26.7 1 5 57 29.4 p=0.00 1泊 1 4.8 39 36.1 18 40 4 20 62 32.0 2,3 泊 0 0 33 30.6 14 31.1 8 40 55 28.4 4泊 - 1 4.8 11 10.2 1 2.2 7 35 20 10.3   計 21 100 108 100 45 100 20 100 194 100.0 来訪回数 初めて 3 14.3 9 8.3 9 20 13 65 34 17.5 p=0.00 2,3 回目 5 23.8 26 24.1 17 37.8 3 15 51 26.3 4,5 回目 3 14.3 20 18.5 8 17.8 3 15 34 17.5 6回目以上 10 47.6 53 49.1 11 24.4 1 5 75 38.7   計 21 100 108 100 45 100 20 100 194 100.0 観光情報利用※ 家族,友人の話 10 37 32 22.5 18 31.6 7 26.9 67 26.6 p=0.18 観光旅行産業従事者 3 11.1 9 6.3 3 5.3 0 0 15 6.0 インターネット・テレビ 4 14.8 56 39.4 24 42.1 11 42.3 95 37.7 ガイド・パンフ 5 18.5 33 23.2 9 15.8 7 26.9 54 21.4 情報利用なし 5 18.5 12 8.5 3 5.3 1 3.8 21 8.3   計 27 100 142 100 57 100 26 100 252 100.0 世界遺産登録 の影響 影響あり影響なし 183 14.385.7 1035 95.4 374.6 8 17.882.2 173 8515 17519 90.29.8 p0.03   計 21 100 108 100 45 100 20 100 194 100.0 過去に訪問した 構成遺産の数 訪問数 0 件 1 4.8 4 3.7 2 4.4 8 40 15 7.7 p=0.00 訪問数 1-5 件 11 52.4 46 42.6 30 66.7 7 35 94 48.5 訪問数 6-10 件 7 33.3 44 40.7 12 26.7 4 20 67 34.5 訪問数 11 件以上 2 9.5 14 13 1 2.2 1 5 18 9.3   計 21 100 108 100 45 100 20 100 194 100.0 注 1:「※」は複数回答の項目. 注 2:Fisher の直接確率検定は p 値 0.05 以下(5%有意水準)で有意差ありとみなす.

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未満および 250 km 以上で「4,5 人」の割合が 高いが,50 km 以上 100 km 未満で「2,3 人」 「4,5 人」の双方が多く,全体として旅行距離帯 間に有意な差はない。同伴者との関係では,どの 旅行距離帯でも「家族」がもっとも多く,ここで も旅行距離帯間に有意差はなかった。  代表者の年齢層は,どの旅行距離帯でも「41– 60歳」が多く,年齢層の割合も類似しており, 旅行距離による差異はみられない。  宿泊日数は旅行距離帯によって傾向が異な り(有意差あり),50 km 未満では「日帰り」が 約 90%を占め,50 km 以上 100 km 未満および 100 km以上 250 km 未満では「1 泊」がもっとも 多く,250 km 以上では「2,3 泊」や「4 泊以上」 の割合が大きい。  来訪回数は旅行距離帯によって差がみられ, 100 km未満に「6 回目以上」が多く,100 km 以 上 250 km 未満に「2,3 回目」,250 km 以上に 「初めて」がもっとも多くなる。このことから, 旅行距離が長い観光者ほど来訪経験が少なくなる という傾向が読みとれる。  観光情報利用に関しては旅行距離帯による有意 差はないという結果だった。しかし,個々の選択 肢では部分的に違いがみられた。50 km 未満では 「家族・友人の話」,つまり口コミが多いが,50 km 以上になると「インターネット・テレビ」といった メディア情報の利用が多くなる。また,50 km 未 満では「情報利用なし」が比較的多いが,50 km 以上になるとその割合が小さくなり,何らかの手 段で地域の観光情報を取得する傾向にある。  2)空間行動  続いて,観光者の空間行動の特徴をみていく。 ただし,活動データに関しては,目的地やそこで の活動をすべて尋ねる形式であったために,回答 者の記憶が曖昧で欠損部分が生じる場合が多く, 有効回答数は 93 となった。  旅行距離帯別に観光者のトリップ分布を可視化 したものを図 2 に示す。そして,活動データの 旅行距離帯別トリップ数をまとめたものを表 3 に,各旅行距離帯における典型的な周遊ルートの 事例を図 3 に,観光対象の分布指向性を標準偏 差楕円によって可視化したものを図 4 に示す。な お,各旅行距離帯における周遊ルートの典型例抽 出では,旅行人数と宿泊日数の各質問項目内にお ける出現頻度の高い選択肢とトリップ数平均を参 照し,それらに限りなく合致する観光者グループ のデータを選出するという方法をとった。  まず,旅行距離 50 km 未満から来訪した観光 者の場合,旅行人数と宿泊日数の最頻選択肢は, それぞれ「2,3 人」「日帰り」である。トリップ 数の平均は 4.1 で最頻値は 3 と 4,つまり 2,3 か所の訪問が多い(表 3)。観光者の居住地や目 的地の分布および周遊ルート事例をみると,富士 山麓近隣から出発し,山梨県側の観光対象をおも に訪問している(図 3a)。具体的な周遊ルート事 例として,まず,No. 147,No. 183 のように 1 つの道の駅または複数の道の駅を巡るタイプが多 い。道の駅は,一般に観光スポットとしてよりも 土産物や地元農産物を購入する場所あるいは休憩 所として認識されることが多く,この旅行距離帯 の観光者にとっては,日常生活の延長として道の 駅に買い物にきていると想定される。加えて, No. 175や No. 220 のように,道の駅への来訪に 加えて,忍野八海や冨士浅間神社などの定番観光 スポットを訪れるタイプがある。これらは,道の 駅における買い物と移動ルート上の観光スポット における行楽を組み合わせた行動といえ,この場 合,訪問可能な観光スポットの数は限定される。 観光者の訪問先の分布に関しては,4 つの旅行距 離帯のなかで標準偏差楕円の面積がもっとも小さ く,全体として分布に偏りがみられる(図 4)。 このことから,観光者の行動範囲がもっとも狭い と推察される。  次に,旅行距離 50 km 以上 100 km 未満の場 合,旅行人数と宿泊日数の最頻選択肢は,それぞ れ「2,3 人」「4,5 人」と「1 泊」である。トリッ プ数の最頻値は 4 だが平均は 5.6,中央値は 5.5 であるため,トリップ数 4 以上にも分布が多く 広がっている(表 3)。そこで,トリップ数 4 以 上で頻度の高いトリップ数 6 の観光者の周遊ルー トも代表例として図 3b に示した。図 2 をみると, 大部分が東京都,神奈川県,埼玉県の都市部から

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訪れていることがわかる。周遊ルート事例にみら れるように(図 3b),富士山五合目9),河口湖, 山中湖など,旅程のなかで 1 か所以上の定番観 光スポットを訪れる傾向にあり,訪問観光スポッ トも複数にわたる。加えて,旅程の行き帰りのな かで,昇仙峡や御殿場プレミアムアウトレット, リニア見学センターなど比較的広範囲に分布する 観光スポットに立ち寄ることも特徴である。宿泊 地もまた,富士山麓地域の内部だけではなく石和 温泉など広範囲に及んでいる。すなわち,この旅 行距離帯にあたる観光者は,出発地から主要目的 地までのルート上においても観光スポットを訪 れ,主要目的地に到着した後は,定番の観光ス ポットを複数訪問するという行動をとっている。 さらに,50 km 未満の旅行距離帯の観光者より も,道の駅訪問の位置づけは低い。観光対象分 布の標準偏差楕円は 2 番目に大きく,河口湖付 近を中心として北西から南東にかけて長径が伸び る楕円形となっており,静岡県側の観光対象につ いては,静岡県北東部の御殿場付近の対象は包含 されるが,静岡県北西部の田貫湖や白糸の滝など は含まれていない(図 4)。  旅行距離 100 km 以上 250 km 未満の場合,旅 行人数と宿泊日数の最頻選択肢はそれぞれ「4, 5人」「1 泊」で,トリップ数平均は 4.3 である。 図 2 をみると,観光者の居住地は千葉県西部や 中京都市圏に分布している。周遊ルートの事例で は富士急ハイランドへの訪問が目立つが,実際に この旅行距離帯から訪れた観光者の旅行目的は 「行楽(遊園地など)」が「自然景観」の次に多く 19.7%を占めている。図 3c によると,この旅行 距離帯の観光者は,旅行距離 50 km 以上 100 km 未満にあたる観光者と同様,居住地からのルート 上で昇仙峡など,目的地である富士山麓地域から 比較的離れた観光スポットに立ち寄る傾向に ある。前述のように,この旅行距離帯の観光者の 平均トリップ数は 4.3 と,旅行距離 50 km 以上 100 km未満の観光者の 5.6 よりも小さい。実際, 目的地内においては,道の駅以外に河口湖や忍野 八海など 2 つ程度の観光スポットが組み合わさ れているのみである。その背景として,この旅行 距離帯の観光者は 1 泊が主体であるが,同様に 1 泊が卓越する旅行距離 50 km 以上 100 km 未満 の観光者よりも,移動時間が長いために富士山麓 地域での旅程に時間的余裕がないことがあげられ よう。また,富士急ハイランドが組み合わされる ことで,そこでの滞在時間が長くなることも考え られる。標準偏差楕円に関しては,中心傾向と 指向性傾向が旅行距離 50 km 以上 100 km 未満 の場合とほぼ同じであるが,楕円面積,つまり 観光者全体からみた訪問先の範囲はそれと比較 して狭い。さらに,巡り方に関しても 50 km 以上 100 km未満の場合と似ているが,100 km 以上 250 km未満の方がより定番の観光スポットへの 訪問を選択している傾向が読みとれた。  最後に,旅行距離 250 km 以上から来訪した観 光者の場合,旅行人数は「4,5 人」,宿泊日数は 「2,3 泊」がもっとも多い。図 2 をみると,観光 者の居住地は京阪神大都市圏に多く分布している が,ほかに東北・中国・四国・九州地方からの訪 問も確認できた。これら観光者のトリップ数平均 は 7.1 とほかよりも多い。周遊ルート事例をみる と(図 3d),旅行距離 50 km 以上 100 km 未満 や旅行距離 100 km 以上 250 km 未満の観光者と 同様,富士宮や御殿場プレミアムアウトレットな ど広範にわたる観光スポットを訪れている。4 泊 と少し長めの宿泊旅行ではあるが,トリップ数平 均は 7.1 と宿泊日数に比例して大きく増加するわ けでもない。No. 15 や No. 125 の事例をみても, 1日の間に訪問する観光スポットは 2 か所程度に 収まっており,1 か所あたりの滞在時間が長くな る傾向にある。そして,世界遺産の構成資産への 訪問が旅程に多く組み込まれていることも特色で ある。標準偏差楕円において面積が最大で,全体 的な訪問先の範囲はどの旅行距離帯の場合よりも 広い。さらに,河口湖の約 10 km 南部を中心に 円に限りなく近い楕円(扁平率 0.097)を描いて おり,その範囲には山梨県側の大部分の観光対象 はもちろん,御殿場や白糸の滝のある静岡県北部 全域が包含されている。  3)観光行動の同心円性  II 章から前項までの内容から富士山麓地域に

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図 2 Fig. 2

図 3 Fig. 3

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おける観光行動の特徴をまとめ,その同心円性に ついて考察する。まず,観光者特性について,旅 行目的と旅行距離との関係では,近隣地域から訪 れた観光者ほど日常的な余暇活動を目的に,遠隔 地域から訪れた観光者ほど非日常的な余暇活動を 目的としていた。ただし,すべての旅行距離帯で 「自然景観」を楽しむことが旅行目的として最多 であったように,自然景観の体験は富士山麓地域 を訪れる観光者の多くにとって,共通する目的と なっていた。旅行人数と同伴者タイプについて は,近隣地域から来訪する観光者は「2,3 人」で の来訪が比較的多い傾向にあるが,遠隔地域から の来訪は「4,5 人」の「家族」あるいは「友人・ 知人」のグループが特に多い傾向にあった。た だし,すべての旅行距離帯で「家族」「4,5 人」 「41–60 歳」の出現頻度が高いことから,家族連 れや中高年に該当する観光者が富士山麓地域で主 要な顧客層でありながらも,旅行距離の観点から 詳細にみれば,近隣地域と遠隔地域とで訪れる可 能性の高い観光者のタイプは若干異なるといえ る。過去の来訪回数と観光情報利用に関しては, 旅行距離が長い観光者ほど来訪経験が乏しく,何 らかの観光情報を利用するという一般的な傾向が みられた。  次に,空間行動について,観光庁(2014a)の 調査報告書では,観光者の流動からみて河口湖と その周辺エリアが観光行動の中心であり,かつ富 士五湖や忍野八海といった富士北麓内部の他エリ アとの結びつきが強いこと,富士山麓地域を訪れ た観光者には大都市居住者が多く,首都圏,中京 圏,関西圏と旅行距離が長くなるにつれて訪問エ リア 1 か所あたりの滞在時間は短くなり,訪問 エリア数が増加することが示されている。しか し,本研究の調査結果では,必ずしも旅行距離に よって個々の訪問先での滞在時間が大きく異なる 傾向にあるわけではなかった。これは,本研究の 結果が特定の休日期間に基づいていること,エリ アではなく個々の観光スポットを分析対象とした ことで,異なる結果が導き出されたものと考えら れる。さらに,本研究の調査結果より,旅行距離 が長い観光者ほど宿泊をする人の割合が高いこ と,定番の観光スポットを中心に巡ること,訪問 先の分布が広く分散することが明らかとなった。  これらの結果より,富士山麓地域における観光 者の行動は,鈴木(1966)の説明した,一般に 旅行距離が長くなると移動する範囲が拡大し,魅 表 3  観光者のトリップ数に関する基本統計量. Table 3 Basic statistics on the number of trips made by tourists.

  0 km-50 km 50 km-100 km 100 km-250 km 250 km- 全体 サンプル数 17 50 15 10 93 平均 4.1 5.6 4.3 7.1 5.2 中央値 4 5.5 4 7 5 最大値 6 10 7 14 14 最小値 2 2 2 3 2 標準偏差 1.1 2.0 1.3 2.6 2.0 注 1:Kruskal-Wallis 検定 p 値< 0.05 となり,平均値に有意差あり. 図 2  観 光 者 の ト リッ プ 分 布. Fig. 2 Trip distribution of tourists. 図 3  典 型 的 な 観 光 周 遊 ルー ト の 事 例. Fig. 3 Cases of typical touring routes.

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力度の高い観光対象のみを選択するという理論と ほぼ合致し,なおかつ着地を基点とした同心円性 を有しているといえる。したがって,特定の地域 における観光行動を理解する際には,社会属性や 旅行形態といった観光者特性に加え,旅行距離と いう空間的要素を含めた視点が重要な意味をもつ といえる。このことから,橋本(2013)の言うよ うに,観光者特性だけでなく,旅行距離を考慮し た観光者の市場細分化を行い,それぞれに適切な 情報提供を行うことが,訪日外国人観光者だけで なく国内の個人観光者に対しても必要だと考えら れる。  ただし,旅行距離による訪問先の分布範囲の差 異に関しては,発地の位置や方向も関係してい る。例えば,旅行距離 250 km 以上の場合,大部 分の観光者が関西以西からの来訪であるため,周 遊を開始する地点は富士山麓南西部とされ,そこ に位置する観光スポット(白糸の滝など)が訪問 されやすい。逆に,それ以外の旅行距離帯では東 京都市圏がおもな発地のため,富士山麓地域東部 の観光スポット(山中湖や御殿場など)に訪れや すい。つまり,富士山麓地域の場合,旅行距離に 加え,居住地と目的地の位置関係も訪問先選択に 少なからず影響しており,それが訪問先の分布範 囲に差異を形成する一つの要因ともなっている。 また,本研究では,旅行目的の「自然景観」のよ うに質問項目によって旅行距離に関係なく多く頻 出する選択肢があったことや,旅行人数や同伴者 が旅行距離に必ずしも影響されるわけではなかっ たことが示された。したがって,特定地域の観光行 動を解明するにあたり,旅行距離だけでは説明でき ない要素も存在する。観光施策を進める上では,観 光者の観光地に対する共通認識や各市場の特性を 考慮することも重要だという点が示唆される。 IV.観光行動に与える世界遺産登録の影響  ここでは,世界遺産登録が観光行動へ与えた影 響について考察する。山梨県の平成 25 年観光入 図 4  観 光 対 象 分 布 の 標 準 偏 差 楕 円.

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込客統計調査報告書によると,富士北麓では世界 遺産登録の効果によって登録年の観光入込客数が 前年と比べて約147万人も増加(前年比14.6%増) した10)。本研究の調査結果(表 2)では,世界遺 産登録の影響がきっかけで今回の旅行を決めた 国内観光者の割合は 10%ほどであり,残りの約 90%は旅行に直接的な影響はないと回答してい る。とくに旅行距離 50 km 以上 100 km 未満の 首都圏在住の観光者で,「影響なし」という回答 の割合がもっとも多かった。富士山麓地域は世界 遺産登録以前から有名な観光地域であったため, 国内の主要市場に住む観光者の富士山旅行に対す る意識を大きく変えるほどの影響はなかったとい える。しかし一方で,より遠方に住む観光者では 世界遺産登録の影響で旅行を決定した人々の割合 が,富士山麓近隣に住む観光者の場合と比べて大 きく,かつ構成資産を中心に巡る宿泊旅行を行っ ていたことから,世界遺産登録という社会事象 は,遠隔地域の市場に対してより強い訴求効果を 有している可能性がある。過去に訪れた構成資産 の数に関しても旅行距離による影響がみられ(有 意差あり),250 km 未満では「訪問数 1–5 件」の 割合が大きいものの,250 km 以上では「訪問数 0件」の割合がとくに大きい。これらのことを加 味すると,上述した富士北麓の観光入込客数増加 の大きな要因が,遠方からの新規来訪増であると いう可能性も十分に考えられる。  次に,構成資産への来訪動向から世界遺産登録 の影響を分析するために,観光者の訪問先を 7 つ のカテゴリに分け,それぞれの訪問箇所数の平均 比率を旅行距離帯別に算出した(図 5)。旅行距 離帯別の比較では,構成資産訪問数の平均比率 はいずれの距離帯も 25%以上と高い割合を占め ている。観光者のおもな訪問先である構成資産 は,河口湖,山中湖,忍野八海である。旅行距離 250 km以上がほかよりも若干値が高いものの, 統計的検定(Kruskal-Wallis 検定で p 値 0.94)に よる有意差はみられなかった。したがって,構成 資産への訪問は,旅行距離に関係なく富士山観光 において中心をなしている。しかし,構成資産に は河口湖など観光スポットとして元来有名であっ た場所が複数含まれているため,構成資産を訪問 した観光者の動機が世界遺産登録と必ずしも関連 しているわけではない。つまり,現在の富士山麓 地域では,伝統的観光地域としての富士山を強く 認識している顧客層と,世界遺産登録を旅行の契 機とする顧客層が混在しているものの,中心的な 訪問先は共通しており,訪問先の種類や構成から は両者を明確に判別しにくい状態にあるといえ る。これはトリップ数の少ない,旅行距離の短い 観光者において顕著であろう。一方,旅行距離 が長いほどトリップ数も多いため,図 3d の No. 125の周遊ルートのように,構成資産を多く巡る ようなパターン(構成資産巡り)が生じやすい。 ただし,これは本研究の対象とする個人旅行者の 分析結果であり,旅行会社の主催する団体ツアー ではより単純な構図となるであろう。  最後に,より遠距離から訪れた観光者,つまり 日本国外に居住する訪日外国人観光者に関して, 各種資料から世界遺産登録の影響を読みとる。山 梨県(2014)の観光地点等パラメータ調査では, 海外から訪れた観光者の 43.5%が富士山の世界 遺産登録をきっかけに旅行を決めたと回答してお り,この数値は国内観光者のそれよりも圧倒的に 高い。これは,世界遺産という国際的なブランド 価値が付加されたことで,訪日外国人観光者が富 士山麓地域を主要な目的地として選択する傾向が 強まったためといえる。また,フジヤマ NAVI レポートが実施した観光者の意識調査では(フジ ヤマ NAVI, 2013),訪日旅行者数の多い韓国人・ 図 5  観 光 者 の 訪 問 箇 所 数 の 平 均 比 率. Fig. 5 Average ratio of the number of places visited.

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台湾人・中国人観光者による富士山の世界遺産登 録の認知率は,2013 年の時点でそれぞれ 66%, 60%,86%とすべて半数を超えており,今後は 彼らによる富士山関連の旅行がさらに促進される 可能性がある。とくに今後の訪日観光において重 要視されている中国人観光者にとって,世界遺産 登録後の富士山は観光目的地としてより一層存在 感を増すだろう。なぜなら,富士山麓地域は中国 人向け団体ツアーにおいて,箱根とともにゴール デンルートの一部に組み込まれてきた歴史があり (金, 2009),訪日観光旅行における重要目的地と しての認識が定着しているからである。また,個 人旅行が主体の欧米人観光者については,富士山 登山や富士山の観賞を目的に訪れる人々が多いた め(富士河口湖町, 2010),旅行商品や観光関連 情報のさらなる充実および観光関連施設の言語対 応などによって,来訪数の増加や周遊ルートの多 様化が見込まれる。株式会社 JTB グローバル マーケティング & トラベルや株式会社はとバス など,複数の旅行会社は訪日外国人向けに富士山 関連の新たなツアー商品の開発・提供をすでには じめており11),構成資産を巡るツアーのような, 富士山麓地域における新たな周遊ルートが開拓さ れている。また目的地側の対応として,富士五湖 連盟や日本富士山協会などの観光振興協会を中心 に,富士山の世界遺産に関するガイドマップの作 成やイベント企画および着地型ツアーの提供が実 施されているほか,世界遺産以外の地域資源を活 かした観光振興の取り組みも強化されようとして いる(中小企業診断協会, 2013)。  このように,世界遺産登録という社会事象に よって,富士山麓地域における観光が変容の兆し をみせている。観光者の行動的側面に着目する と,そうした傾向は観光入込客数の増加や誘致圏 の拡大および周遊ルートの多様化というかたちで 表面化している。 V.お わ り に  本研究では,富士山麓地域における観光行動を 着地からの旅行距離という観点から分析し,その 特徴を明らかにした。あわせて,世界遺産登録と いう社会事象が,富士山麓地域での観光行動に与 える影響についても検討した。  富士山麓地域での観光は,江戸時代の富士登拝 から盛んになり,その後の交通整備や観光開発の 進展によって大衆化した。現在では,富士五湖を 中心とした回遊・滞在型観光や観光施設でのレ ジャー活動など,おもに首都圏の大都市居住者の 多様なニーズに応える観光地域として機能してい る。現在の顧客層の中心であるマイカーを利用し た国内個人旅行者は,自然景観の体験を富士山麓 地域での観光における共通の目的としながらも, 旅行距離によって観光者特性や空間行動が特徴づ けられている。例えば,近隣地域居住者では日常 的余暇活動を目的とした日帰り旅行が多く,遠隔 地域から来訪した観光者においては定番の観光ス ポットを巡る宿泊型の旅行が卓越する。さらに, 最近では世界遺産登録によって,より遠方の地 域,つまり国外に住む外国人からの観光需要が一 層高まるとともに,構成資産を中心とした周遊 ルートの開発などが行われ,富士山麓地域におけ る観光者の行動がさらなる変容の兆しをみせてい る。  以上より,本研究によって富士山麓地域のよ うな有名観光地でも旅行距離によって観光行動 の特徴が説明できた。また,着地を基点とした観 光行動の同心円性が確認されたと同時に,部分 的な歪みも発見された。ただし,観光行動の一般 的傾向を説明することができたものの,そのすべ てを解明できたわけではない。例えば,前述した 鉄道やツアーバスを利用した観光旅行,富士急ハ イランドなど特定の大型レジャー施設のみに長 時間滞在する日帰り観光旅行,訪日外国人の観 光旅行については,分析データを取得できていな い。また,富士山麓地域以外の観光地に立ち寄る ような周遊旅行についても,取得できたサンプル が少なく,十分に傾向を読みとることができな かった。より大量かつ網羅的なデータによって, これらすべてを含んだ分析を行うことが今後の課 題である。  そして,世界遺産登録の観光行動に与える影響 については,独自に取得したデータと他のさまざ

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まな資料を組み合わせ,年間観光入込客数の増加 や周遊ルートの多様化といった外的側面から議論 した。しかし,世界遺産登録後の富士山麓地域に 対して観光者がもつ認識やイメージの変化に関し ては,検証が不十分である。一般的に観光者の目 的地への認識やイメージは旅行先での行動に大き く影響するため,観光地での大きな社会事象の発 生前後における観光者の地域への認識やイメージ の変化を,個々人のレベルで詳細に分析し,それ と現地での移動や活動との関係を深く分析するこ とも重要であろう。  Butler(1980)は,停滞期に入った観光地が さらに発達するための条件として,新たな観光施 設の建設や未開拓な自然資源の観光利用が考えら れると予測した。昨今の富士山麓地域において は,世界遺産登録とそれに関連する観光振興や観 光開発が,誘致圏の拡大や新たな市場の形成に寄 与しており,観光事業の継続によって今後さらな る飛躍を遂げる可能性がある。それを実現するた めには,各市場に対する適切な観光プロモーショ ンや現地の観光基盤整備に加え,観光地の環境悪 化や資源消失を防ぐための社会的・環境的許容限 界の予測と適切な資源管理を,同時的に実行して いく必要がある。本研究はあくまで観光者特性や 空間行動に焦点をあてたが,観光行動データは観 光地に対する負荷を測るための指標として活用す ることもできる。今後は,観光行動に関する客観 的データを,いかに観光計画や資源管理といった 応用面に役立てていくか,という点を深く検討し ていくことが必要であろう。 謝 辞  アンケート調査の際にご協力いただいた道の駅富士 吉田の皆様,調査員としてご協力いただいた首都大学 東京の学生の方々に,感謝の意を表します。  本研究は日本学術振興会科学研究費補助金特別研究 員奨励費(課題番号 26-1325)の助成の一部を受けて 行われた。 1)山梨県(2014)によると,富士急ハイランドを訪 れた観光者の 77.3%,カチカチ山ロープウェイ(河 口湖畔)では 65.8%が「自家用車,社用・公用車」 を利用している。また,観光庁の報告書では,目的 地の富士山麓地域から 100 km 圏内は自動車利用率 が 90%以上と高く,250 km を超えると新幹線等の 鉄道利用率が上がると報告されている。 2)道の駅富士吉田は富士山麓地域における中心的な 観光スポットである河口湖(観光庁, 2014a)の近く に位置し,観光案内施設や土産物販売店舗およびご 当地グルメの飲食店等を備え,拠点としての機能が 充実しているほか,近接する敷地内に富士山レー ダードーム館などの観光施設があり,富士山麓地域 にある道の駅のなかでも観光者の来訪が多いと推察 される。 3)トリップとは,人がある目的である地点からある 地点へ移動する単位である。本研究の場合,居住地 から目的地の観光スポットを 1 か所訪れて再び居住 地に帰った場合,訪問先は 1 つだが,トリップは 2 つとなる。 4)以降の本節の記述は,おもに内藤(2002)を参考 にした。 5)山梨県は 1999 年から 2009 年までは「山梨県観光 者動態調査」,2009 年から現在までは「山梨県観光 入込客統計調査」を実施している。しかし,両者の 調査内容および調査方法は異なり,単純な経年比較 は不可能であるため,ここでは 1998 年までのデータ のみを示した。 6)「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促 進に関する法律」(観光圏整備法)に基づき,2014 年までに全国 11 地域が観光圏整備実施計画認定地域 に指定され,観光庁(2014a)の観光行動調査の対象 地域となった(観光庁, 2014b)。富士山周辺地区に は認定地域はないが,他の観光圏とともに調査が行 われた。その際,富士山とその周辺の地域に関して, 世界遺産登録された資産地域とその緩衝地帯,保全 管理区域を含めて圏域設定がされた。さらに,圏域 内部に 11 の交流エリアが設定され,このエリアを基 準とした分析も行われている。 7)観光者の行動分析には株式会社ゼンリンデータコ ムの「混雑統計」が使われた。「混雑統計」は,地域 に流出入する人口を把握できるデータであり,時間 ごとに推移する地域の人口を可視化することができ る。株式会社 NTT ドコモが,自社で提供する地図ア プリ等のサービスにおいて,オート GPS 機能を利用 しているユーザより利用許諾を得た上で蓄積した位 置情報データがもとになっている。株式会社ゼンリ ンデータコムによる秘匿処理や通過客・ビジネス客 のデータ除去作業および集計加工を通し,観光者分 析用データベースが作成され,提供された(観光庁, 2014a)。 8)なお,観光庁(2014a)の報告書では,「観光旅行 全行程で日帰りだった観光者のなかで,出発地から 観光圏までの片道の移動距離が 80 km 以上,または, 所要時間(移動時間と滞在時間の合計)が 8 時間以 上の観光者」を日帰り観光者と定義し,80 km 以下 は分析対象から除外しているが,本研究ではそうし た処理は行わず,片道の移動距離が 80 km 未満の場 合であっても観光目的の旅行であれば分析対象とみ なしている。

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9)アンケート調査の時期は,富士スバルラインのマ イカー規制が行われていた。そのため,富士山五合 目(吉田口)まで訪れた観光者のほとんどが,山梨 県立富士北麓駐車場などにマイカーを置き,シャト ルバスやタクシーを利用したと考えられる。 10)世界遺産登録のあった 2013 年では,富士北麓に おける年間観光入込客数は各地域で 10%以上増加し ている(山梨県, 2014)。具体的には,「富士山五合目」 は 15.8%(約 37 万人増),「富士吉田・河口湖・三 つ峠周辺」では 11.7%(約 60 万人増),「本栖湖・ 精進湖・西湖周辺」では 21.7%(約 40 万人増),「山 中湖・忍野周辺」では 13.3%(約 11 万人増)の増 加であった。 11)株式会社 JTB グローバルマーケティング & トラ ベルの情報に関しては,株式会社ジェイティービー の 2013 年ニュースリリース第 58 号(http://www. jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news& id=00001&news_no=1715 [Cited 2015/1/22])を 参照した。また,株式会社はとバスの情報に関して は,同社 Web サイト内の「世界遺産を見に行こう」 (http://www.hatobus.co.jp/feature/heritage/index. html#box_fuji [Cited 2015/1/22])を参照した。

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Table 1 Change in development and tourism at the northern foot of Mt. Fuji.
表 2  観光行動データのクロス集計表.
図 2 Fig. 2
Table 3 Basic statistics on the number of trips made by tourists.
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参照

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