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生物の形態と人工物のかたち

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Academic year: 2021

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(1)

Japanese Society for the Science of Design

NII-Electronic Library Service Japanese  Sooiety  for  the  Soienoe  of  Design

と 人

か た ち

Biomimetics and 

Organic

 

Style

山 中 俊 治

ディング

デ ザイ ン

YAMANAKA

 

Shunji

Leading[≡dge Design

1

機 能 模 倣 と形 態 引用

 

ロボテ ィクスが

基 本 的に 生命 から学んだ

ある いは生 物に触発 さ れ た

技術

で あ る こと は問 違いな い

し か し

これ を社 会 化す る に あ たっ て

私た ち は 基礎 技 術と して の 生命 模 倣と文 化 的な価 値 創 造 (デ ザイ ン)のため の形態の引用 を慎 重に区別 する 必 要が あるよ うに思うn

 

デ ザインに お け る 生物のか た ちの 引用は

般 的な もので あ る

特 定の生 物 を意 図して いな くても

デ ザイナ

の基 礎 的な造形感 覚と し て

自 然の 形 態 は 模倣 さ れ る

例えば 「然 な曲 面の つな が り

1

い う よ うな記 述における 「自然

お お

物の形態に共通する有機 的 連 続 性を意図す る もの で ある

しか し言う までも な く

こ のよ う な造形 上の 引 用 は

いわ ゆ る 生物 模 倣工学に あ る よ う な機 能 的 な模 倣では ない

乗 川 申:の フェ ンダ

が 力強く見え た と しても と して も

そ れ を支え る サ ス ペ ン ショ ン の構 造と は関 係が ない

比 較 的 美 的 直 観有 効なエ アロダイナ ミ ク ス におい てさ え

有 機 的フ ォ ル ム と 低 ドラッ グ は必ず し も 致 しない

  逆に

生 物か ら学んだ技 術も

必ずし も生 物 的な イ メ

ジ を 生 み 出 す訳で は ない

え ば

言 葉を扱 うソ フ トウェ ア技 術の少 な くないものは 入工知 能 研 究の成果で あ り

人の思考を模倣 し た技 術で あ る

機 能 的には

人の持つ 認 知 や 学 習の構 造 が 反 映さ れ て い る

し か し

応用さ れ た成果物は

フ ィク ショ ン に登場 するような 人 と 対話する巨 大な電子 頭 脳で は な かっ た

。製

品 化 さ れ た検 索エ ン ジ ン や か な

漢字

変 換プロセ ッサ は優 秀な道 具であっ て

な ん ら 人間 臭さ を感じ る もの で は ない

  生 命模 倣 技 術とデザ イン の関係を 語る ときに

生 物の 機 能を学 びな が ら技 術を 発 展 さ せ るこ と と

美 的 観 点か ら 形 態 を 引用す ることの 差 は慎 重に意 識さ れな ければ な らない と考 える

特に 「機 能 美 1 とい うこと につ いて考え る と き

生物に あっ て は合理的 な か た ち が

人 工物に とっ て は しばしば 非 合理であ るこ と に留 意 すべ き で あ る

2 .

フ ィク ショ ン にお け るア ナロジ

 ロ ッ トは

既に

50

年 以 上フ ィク ションの 世 界の もの と してデ ザ インさ れ て き た

この ことが 今日の ロッ トの デ ザインに深く影 響を与えて い る

未 来 ロッ ト技 術 研 究セ ンタ

の古出 は 「ロ ッ トと は セ ン サ

と動 力とコ ンピュ

タ が組 合わ さっ たマ シ ンの こと」 と定 義す る が

こう した幅 広い視 野の定 義と

人々 の夢見る 「ロッ ト」 との乖 離は大きい

フ でク シ ョシの 中で

あ まりに も

多くの 「生物型マ シン 1 が 消費さ れてき た か らで あ る

図1 ヒュ

マ ノ イ ド

インス タレ

ショ ン

℃yclops

2〔l  SPEC]ALISSUEOFJSSDVel

12N 【)

4200S   テ ザ イ ン 学 研 究 特 集 号 N工 工

Eleotronio  Library  

(2)

Japanese Society for the Science of Design

NII-Electronic Library Service Japanese  Sooiety  for  the  Soienoe  of  Design

  未 知の機 械の姿を生物の アナロジ

で想 像をめぐ らすこ と は

ロボッ ト以前に も

く見られ た

例え ば

ラ イ ト兄 弟が実 際の飛 行 機を 飛 ば す 以前には

空 を飛ぶ機 械の ほ と ん ど は 「」 の姿が そま ま 用さ れたe しか し

実 際に作っ てみる と

素 材

構 造

JJ

の 違い は

航 空 機の ザ イン と鳥の デザ インに 様 々な 相 違 を 生み出 し た

指の 骨 格か ら進化した鳥 の翼と

モ ノコ ック構 造で作られる翼の形状の違い

羽 ばたき翼 と固定 翼

筋 肉というボリュ

ムの代わ り に存 在す る巨 大な回 転 推 進 機

垂直 尾 翼な ど

  翼と胴 体からなる基 本形態を抽 象的に見 れ ば

鳥 も 航 空 機 も 大 き な 差 は ない と も言え る が

航 空機 技 術の 発展は

ま さ に鳥の ディ テ ィ

ルの 排 除で あっ た と言える

 回転 機 構を主 構 造 体とするヘ リコ

か た ちの上では

さら に生 物か ら離れ た ものである

そ も そ も プロ ペ ラや車 輪の よ うな回転 機 構 は 生 物 界に は ほ と んど存 在し ない

生化学を某 礎と し て

成長 という か た ち で 形 成 さ れ る 生物の に は

物 質の 送や 交

ができる連 続 性は 必須である

それ故に

物 理 的に途 切れ て しまう連 続 回 転 機 構 は

部の微 生 物をのぞい て は存 在で き な かっ た

人 工物 特 有の 技 術で あ る 回

機 構を 主

能と し たヘ リコ

に は模 範と な る 生物はいない

ス テル ス機の よ う に

生 物の感 知 しない領 域の電 磁

を 対

にす れ ば

と航空機の 共通 基 盤であった流 体 力 学 的 常 識を さ え 打ち破る形 態が生 ま れる。  ロ ボッ トのデ ザイン におい ても同様の こ と が言え る

フ でク ションの 中 に 登 場 す るロボッ トのデ ザイ ンに は

お お む ね 人の し さ が反 映さ れ ている

ア ニ メ

ショ ンに 登場する ロボ ッ トの デザインを よ く 見る と

機 械の様 式で覆わ れて い る もの の

ボ リュ

や プ

肉体 美

分 厚い胸

小さな 頭

た く ま しい肩と大腿

引 き

まった ウエ ス トな ど

、鍛

L

げられ た 人間の

姿

が テ フ ォ ル メさ れて い る。  しか し

実 際にロボッ トを製 作 する ときには

こ のようにデ ザインされるべ き で は

や エ ン ジ ン な ど既存ア クチュ エ

タ を基 礎と す る な ら ば

つ まり生 物 と 同 じ よ う な筋 肉 組 織を基礎 技 術と し て使うの でな け れば 引用さ れ る筋 肉美に工学 的 な

は ない

よ う や く 人の歩行を動 的にま ね ら れるよ うになっ たロ ボッ トが 人の機 能 か ら学 ぶ 段階 を 超えて、 「人の かた ち」か ら離れ は じ め るの はこ れ か らであ る

3 .

ヒュ

マ ノ イ ド のデザ イン   鳥を模 倣 した 飛行機と

類 似 する生物の いないヘ リ コ

ヴィ ンチ はスケッチ と し て

i

年 き残した

ど ち らか が正 しい訳ではない

私たちも

生 物に似た ものを作り

生物に学 びな が ら

、一

方で 生 物の形態か らの脱 却を試み る ことになるだろ う。   研 究 用ヒュ

マ ノイ ドは人の骨 格 構 造を模 倣して い る

こ れ は 「び」 と し て必 要 な こ と で ある

私 た ち は 人の歩 行を 再 現 するこ とによっ て

動 的に姿 勢を

制御

する

法を学んだ

。ZMP

((ゼ ロ

メ ン ト

ポイ ン ト)という よ う な動 的 制

のた めの某 本 概念 もこう し た模 倣か ら得ら れ た もの である

同 様に多モ

協 調 制 御

高 トル クの リ アル タ イ ム制 御

画像 処埋 と認知

人とマ シ ン のインタ ラク ションな ど

ヒュ

マ ノ イ ドか ら得られ た 研究 成 果 は枚挙 にいと ま が ない

  美 的 観点か ら も ヒュ

マ ノイドは 弔 要である

生命 の動 作 をマ シ ン で再 現する ことによっ て

私たちが美 しい と

じる も の のエ レ メ ン トを

し い アプロ

チで 探る こと ができる。 芸術 家達はこれまで も彫刻や絵画 のよ うな 静 的な 世

で人のか た ちのし さ を研 究 し

近代に 入って か ら は

でダ イナミズム を 追 求して き た

そ して今や物 理 的な実 体と して生 命の 反応 や 動作を再現し

美しい仕 苧:や リア ク ションを抽 出する ことが可能になっ たの である。  し か し研究や芸 術に お い て ヒュ

マ ノ イ ドが 有 用 である と し て も

生 活空間におい て ロボッ トに仕 事 や

家事

f

わ せ よ う とす る な ら

人のかたち は適 切で は な い

合 目的 的に考え れば

と金属 や プラ ス チッ ク に ふ さ わ しい関 節

造は

、筋

肉と活 性 組 織のた め に自然が採用 し た もの と は まっ た く異 な る もの に な る

さ ら に情 報 技 術の視 点で見れ ば ネ ッ トワ

クに接 続 されたロ ッ トは

のよ う に 個 体と し て制御可 能 領 域 を 限 定 す る 必要も ない

デ ザ イ ン 学 研 究 特 集 号  SPECiALI ∬UEC )卜亅SSDVし}LI2N 〔〕420〔,5  21

(3)

Japanese Society for the Science of Design

NII-Electronic Library Service Japanese  Sooiety  for  the  Soienoe  of  Design

j59

ロ ボティ ク ス を 応 用した 美しい空 間 を作るため に は

既 存の生 物の

念か ら離れ ること も重

であ る

  今の所

ヒュ

マ ノイ ドが 人のか たちのま ま 製 品 化され る機 能 的な可 能 性が ある とすれば

人の話し

手と して で あ る

実用

語対 話 を可 能に する 人

Il

能技

術が完 成し てい ない現 状で は

鳥を 見て 飛 行 機 械を想 像 する以上の議 論はむ ず かしい が

少な く と も

現 状のコ ンピュ

タ 周 りのイ ン タ フェ

スに おいて は

対 話型 な どの擬人化され た操 作 系は決 して高効 率 とは言 えない。 そのため

イン ス ト

イ ドな ど

  部さ れ て い る

4

3

つ のロボッ ト

プロジェク ト

 

以 下に私 自身が携わっ てい るロ ボッ トに関するプ ロ ジェ ク トを紹 介 する

いず れ も生 物 模 倣であると 同 時に

生物の形

か ら

脱却

する

み で もある

Cyclops

睥 睨 する 巨 人

1

よ び

2

 

東 京 大 学の

報シ ス テ ム研

室に よ る 「背 骨 つ ロボ ッ トの研 究」をベ

スに作られ た展 覧 会用の作 品。 元の研 究が純粋に機 能と して の背 骨の研 究で あ る の に対 し

こ こ で は

脊椎 と視 線と言う知 的 生 物の エ レ メン トが 人 に も た らす心 理効果に注目し て い る

 

球 体 関 節を 重 ね た背 骨の周り に は

圧 で駆 動 図2 来 場 者 と視 線を交わ すCyclops

    2002年 か ら オ

ス トリ ア のArs Electronica Centerに常 設 展     示さ れ

2005年 愛 知 万博に も出品 さ れ ている

22  SPEC【ALISSUE  OFJSSD  VoLt2No

42005

  デザ イン学 研 究 特 集 号

さ れ るエ ア

マ ッスルが 約

30

本 配 置さ れて い る

頭 部に搭 載 され た

CCD

カメ ラの画 像を解 析 して

人の サ イズのく物を抽出 し

ゆっ た り と 滑 ら か な 動 き で来 場 者 を 目で追う

 画像 処理技 術と して は追 尾 型の 監 視カメ ラ程 度の 認識が行 われて い る に過ぎ ないが

来 場 者はそ こ に

知 性のイ リュ

ジョ ン を見て

身 振 り手振 りで語り かける

将 来のロボ ッ ト と 人の交流 を考え る時

微 妙 な 姿 勢の変 化や視 線 が 知 性のインディケ

ショ ン と な る 可能 性を 示 し ている

形態は き わ めて生 物 的 では あ るが

か た ち を見せ かけよ う と して い るの で はな く

エ レ メ ン トの抽出によっ て人 ら し さ を際 立 たせ て い る

ヒュ

マ ノイド

デ ザ インに お け る 「 図3 小 型ヒュ

マ ノイ ドロボッ トmorph3     人工知 能研 究のプ ラットフ ォ

ム と し て 開 発 さ れ た身長約     38センチ

2

4kgの 小 型 ヒュ

マ ノイ ド

高い 運 動 性と可     動 範囲の広い関 節を特 徴と する。 象」 の実 践で あ る

小 型ヒュ

マノイドmorph3

3

N工 工

Eleotronio  Library  

(4)

Japanese Society for the Science of Design

NII-Electronic Library Service Japanese  Sooiety  for  the  Soienoe  of  Design

 

科 学 技 術 振 興 機 構の北 野

未 来ロッ ト技 術研究 センタ

田 ら との 共同研 究、 人工知 能 研 究の プラ ッ トフ ォ

ム と し て開発 さ れ た身 長 約

38

セ ン チ

、2.

4kg

の小型ヒュ

マ ノ イ ドで あ る

主構 造

に は ジュ ラ ル ミ ンを使用 し

、30

個の モ

138

個の セ ンサを内 蔵

に ない 高い 機 動 性と広 範 な 口働 範囲 を実 現して い る

  プロ ジェ ク トはロ ボッ トの重 要 な 構 成 要 素で ある モ

機 能と美 的 観 点か らモジュ

ル と し て 設 計す る ところ か ら ス タ

トして い る。 セ ンサ

と ギ ヤ を組み込ん だモ

モ ジュ

ル を

構 造 体と して 繰 り返 し使用するこ と により

テ ィクス上 の構 造 美を模 索してい る

プラス チッ クの シ ェル は 某 本 的に サ テ ライ ト

CPU

の保 護カバ

で あ る と 同時 に触 覚センサ

にもなっ て い る

 

[学 的な研 究目 的 と し て は 人体の運 動 制 御 機 能の 模 倣で あるが

デ ザ イン の視 点か ら は筋 肉 美の 引 用 か らの 脱

が 目標であっ た

Hallucigenia

 

Ol (

4

お よび図

5 )

 ハ ル キゲニ ア

プロ ジェ ク トは臼動 中:技 術とロ ボ テ でクス の融 合を目指すプロ ジェ ク トである

小径 のホ イ

ルにセンサとモ

とコ ンピュ

タ を組 み込ん で脚モジュ

ル とする

脚モ ジュ

ル は

そ れ臼体が

4

つ の モ

を持つ 自 由度の高い小 さ な ロボ ッ トで あ る

そ れ ら を ネッ ト ワ

クでつ ない で 協調動 作させ る こと に よ り

多 数の ロッ トに 支 え ら れ た

つ の 乗 用車がで き あ がる

8

輪の

1

5

ス ケ

ル の実 験 試 作ill:を

作し

その 場で回転する

真 横や斜め に滑るよ うに動く

歩 く

車 体を傾けず に段差 や 坂 を

E

る などの動き を実 現 して い る。

 

実用 的 な 囗標と しては

既 存の

4

乗 用 中:が う ま く 機能で き な くなっ て し ま た都 市 内を自由に動 き 回れ る 中:を想定している が

プロジェ クトの ベ

シックな 動機は技 術コン セ プ トの提 示であ り

組み込 まれ た 小 さ なロボッ ト群の 協調 と冗

R

b

k

が もたらす トラ ン スポ

ン の可能

1

生を模索す る こ とで あ る

 乗 用車のデ ザイ ン は

20

世 紀に最も発達し

既に成 熟し た文化で あ る が

、一方

で 近年は や や閉塞 感があ る

ロボテ ィ ク スが トラ ン スポ

シ ョ ンに まっ 【参 考文 献 】 1) 山中俊治:11フユ

チ ャ

ー・

スタ イル

ア ス キ

出 版

1998 2) 古田貴 之:

morph3 :全 身 運 動が生成 可 能な小型ロッ トシス   テム

日本 機械 学 会ロボテ ィクス

メカ トロニ クス講 演 会 論 文   集

2003 3) 山中俊 治 :IIロボッ トのい る風 景

季 干lldtSIGN

 No

7

 p85

太   田出 版

2004 4) 山中俊治:

の か たちの人工物

日本ロボ ン ト学会 誌228巻8   号

2004   写真 撮 影 :清 水 行 雄 (2を除 く) 図4お よび図5 実 験試作車 Hallucigenia Ol そ れ ぞ れに セ ンサ

と制御コ ンピュ

タ を持つ 脚モ ジュ

ルが協 調 動 作を す る 事によって

多 彩 で 柔 軟 な 移 動 を 可 能 に す る

デ ザ イン学 研 究 特集号 SPECIAL 【SSUE OF JSSD Vol

12Ne

42〔)05  23

参照

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