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鉄コーティング湛水直播栽培における全量基肥施肥が飼料用米‘中生新千本’の収量に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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Ⅰ 緒   言  飼料用米の作付けが拡大しているなか,飼料用米 栽培に取り組む各経営体が所得を増大させるために は省力的で低コストである栽培技術を導入して安定 多収を得ることが重要である.近年,省力低コスト 栽培として鉄コーティング湛水直播栽培が注目さ れ,普及面積が拡大している10)  主食用米の栽培では,肥効調節型肥料を用いた全 量基肥施肥技術が省力化技術として移植栽培で広く 普及しており,湛水直播栽培においても技術が確立 されつつある4, 5, 7, 8, 9, 13).しかし,主食用米向けに 開発された肥効調節型肥料は概して,生育前半に窒 素が多く溶出することで分げつを促し,後半の溶出 を少なくすることで倒伏を軽減させるとともに,食 味を低下させないよう設計されている.そのため, 倒伏しない範囲で多収を目指すとともに,食味を考 慮する必要がない飼料用米の栽培に必ずしも適して いないと考えられる.  岡山県では多収性の‘中生新千本’を飼料用米の 現地特認品種として普及を進めている11).‘中生新 千本’は穂数型品種であり,分げつ期において旺盛 に分げつする特徴を有するが,飼料用米として‘中 生新千本’を鉄コーティング湛水直播栽培する場合 の安定多収を可能とする全量基肥施肥技術は明らか にされていない.  そこで,湛水直播栽培における飼料用米の全量基 肥施肥技術を確立することを目的に試験を行った. 試験では,主食用米中生品種の移植栽培用肥料とし て県内で広く利用されている LP 複合 D80(ジェイ カムアグリ社製)を供し,これを対照とした.また, 主食用米中晩生品種の直播栽培用肥料である直播専 用エムコート 002(同社製)は,湛水直播栽培用で はなく,岡山県で栽培面積が約 2,000ha と広く普及 している乾田直播栽培用の市販肥料であるが,これ も供した.試験は 2016 年から 2017 年の 2 か年で行 い,初年度は窒素溶出時期が異なるように被覆尿素 を組み合わせた試験を行った.そして,次年度は, 成果の普及を促すため,前年に明らかにした飼料用 米の湛水直播栽培に適すると考えられる窒素溶出パ ターンに類似した市販肥料を供し,生育・収量並び に所得に及ぼす影響について検討した. Ⅱ 材料および方法  栽培試験は岡山県赤磐市に位置する岡山県農林水 産総合センター農業研究所内の水田圃場(中粗粒質 普通灰色低地土)で 2 か年実施した.この水田圃場 2018 年 7 月 31 日受領 2018 年 12 月 25 日受理 Correspondence: [email protected] 〔原著論文〕

鉄コーティング湛水直播栽培における全量基肥施肥が飼料用米

‘中生新千本’の収量に及ぼす影響

大家理哉・山本章吾

岡山県農林水産総合センター農業研究所

Effects of Basal Fertilizer Application on Total Yields of a Feed Rice Variety,

‘Nakate-Shinsenbon’ in Direct Seeding to Paddy Fields with Iron-coated Seeds

Masaya Oya and Shogo Yamamoto

(2)

月 27 日,施肥並びに代かきは 6 月 10 日,移植は 6 月 16 日に行い,施肥は湛直区と同様に全面全層施 肥とした.栽植密度は条間 30cm,株間 18cm とした. 湛直区の除草は 5 月 26 日に初期剤(ブタクロール・ ペントキサゾン粒剤),6 月 20 日に初中期一発剤(オ キサジクロメホン・テフリルトリオン剤)を散布し た.移植区の除草は初期剤を除き,湛直区と同じと した.中干しは 7 月下旬に 1 週間程度行った.収穫 は湛直区で 10 月 4 日,移植区で 10 月 12 日に行った. 3)調査項目  再入水前に苗立ち本数を調査した.供した肥料の 窒素溶出量は,岡山県土壌施肥管理システム6)を用 い,深さ 5cm の地温を測定して得られた日平均地温 を,反応速度論的手法に基づく各肥料の溶出予測式 に入力して推定した.生育調査は 1 試験区当たり連 続した 10 株を対象とし,草丈,茎数,葉緑素計 (SPAD-502plus,コニカミノルタ株式会社製)によ り葉色(SPAD 値)を測定した.収量調査は坪刈り により行い,穂数,一穂モミ数,登熟歩合,千粒重 などの収量構成要素を調べた.また,各試験区の所 得は次により試算した.粗収入(A)は,粗玄米収 量について直接支払交付金による収量払い(下限 380kg,上限 680kg,kg 当たり単価 167 円)と,上 限を超える収量分は kg 当たり単価 25 円を乗じた金 額を合算して算出した.粗収入(A)から肥料費(B), 肥料費を除いた経営費(C)を減じ,所得とした. 2 試験 2:市販肥料の施用が生育・収量に及ぼす 影響(2017 年) 1)試験区の概要  湛直区では,試験成果の普及性を高めるため市販 肥料を供して計 5 試験区を設けた(第 2 表).前年 と同様に,移植用の全量基肥用肥料である LP 複合 D80 を施用する試験区Ⅰを対照とした.試験区の面 積は 1 区 50.85m2,2 反復とした.なお,窒素施用 量を 10a 当たり 8kg とした試験 1 では,粗玄米収量 が直接支払交付金による補助金の上限である同 680kg に達しなかったため,試験 2 では窒素施用量 を同 10kg に増施した. 2)耕種概要  施肥は 2017 年 5 月 23 日,代かきは翌 24 日に行っ た.播種は,乾モミ換算で 10a 当たり 4.5kg の種子を, 前地の土壌化学性について,土壌 100g 当たりの可 給態窒素量は 6.0mg 前後と地力はやや低いものの, 可給態リン酸は 18.9mg,カリウム飽和度は 2.7% で あり,岡山県におけるリン酸・カリウム減肥指針3) によると,リン酸は施肥基準量の 5 割減肥可能,カ リウムは減肥不可能と判断される圃場であった.  飼料用米品種として‘中生新千本’を供試し,鉄 コーティング湛水直播栽培を行う試験区を設けた. なお,種子の鉄コーティング重量比は 0.5 とした12) 1 試験 1:窒素溶出パターンの違いが生育・収量 に及ぼす影響(2016 年) 1)試験区の概要  湛直区では,主食用米の移植栽培用の市販肥料で ある LP 複合 D80 を施用する試験区Ⅰを対照とした. あわせて,主食用米の乾田直播栽培用の市販肥料で ある直播専用エムコート 002 を施用する試験区Ⅱを 設けた.そして,窒素溶出パターンが異なるよう被 覆尿素(LP コート S60,LP コート 100,LP コート S120,数字は 80%溶出日数の目安,いずれもジェ イカムアグリ社製)を組み合わせた 3 つの試験区Ⅲ, Ⅳ,Ⅴの計 5 試験区を設けた(第 1 表).また,同 一の圃場条件で移植栽培による収量性を確認するた め,圃場内の一部を波板で区切って通常の移植栽培 を行う移植区を設け,肥料は LP 複合 D80 を用いた. 試験区の面積は 1 区 50.85m2,2 反復とした. 2)耕種概要  湛直区の施肥並びに代かきは 2016 年 5 月 23 日に 行い,施肥は全面全層施肥とした.播種は乾モミ換 算で 10a 当たり 4.3kg の種子を,落水状態で 5 月 26 日に点播(条間 30cm,株間 20cm)し,再入水は 6 月 13 日に行った.対照区である移植区の播種は 5 区 肥料種類 1 N P2O5 K2O Ⅰ LP複合D80 湛直 8.0 8.0 8.0 Ⅱ 直播専用エムコート002 〃 8.0 4.0 5.0 Ⅲ LPS60(4)+LPS120(4) 〃 8.0 8.0 8.0 Ⅳ LPS60(3)+LPS120(5) 〃 8.0 8.0 8.0 Ⅴ LP100(2)+LPS120(6) 〃 8.0 8.0 8.0 Ⅵ LP複合D80 移植 8.0 8.0 8.0 栽培 方法 施肥量(kg/10a) 1 ( )内数値は N 施肥量(N kg/10a) 第 1 表 試験区の概要(試験Ⅰ,2016 年)

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D80 に比べて生育前半の溶出が抑えられ,生育後半 の溶出が増大することが示された.  湛水直播栽培した試験区Ⅰ~Ⅴの苗立本数に大き な差は無く,平均の苗立本数は 1㎡当たり 88.5 本(一 株当たり 5.3 本)であった.苗立本数の目標は 100 本とされており12),やや不足した.  LP 複合 D80 を施用した湛直区(試験区Ⅰ)と移 植区(試験区Ⅵ)の生育を比較すると,分げつは湛 直区で旺盛で,最高分げつ期の 1㎡当たり茎数は湛 直区で 833 本と,移植区の 655 本を有意に上回った (第 4 表).しかし,生育初期を除き葉色は移植区に 比べて,湛直区で低く推移した(第 5 表).収穫期 の穂数は湛直区で 1㎡当たり 480 本程度と移植区と 同程度であった(第 4 表).10a 当たりのワラ重は湛 直区で 956kg と,移植区の 896kg を有意に上回り, 逆にモミ重は湛直区で 738kg,移植区で 778kg であ り,モミ / ワラ比は湛直区で低かった(第 6 表).そ の結果,有意な差は認められないものの湛直区のモ ミ重及び粗玄米収量は,移植区に比べて約 5%少な かった.  湛水直播栽培した試験区Ⅰ~Ⅴの生育並びに収量 落水状態で 5 月 26 日に点播した.対照区である移 植区の播種は 5 月 19 日,施肥並びに代かきは 6 月 8 日,移植は 6 月 12 日に行った.施肥方法や栽植密 度は前年度試験と同じとした.湛直区の除草は 5 月 26 日に初期剤(試験Ⅰに同じ),6 月 16 日に初中期 一発剤(試験Ⅰに同じ),7 月 7 日に中期剤(ベンタ ゾン粒剤)を散布した.移植区の除草は初期剤を除 き,湛直区と同じとした.中干しは 7 月下旬に 1 週 間程度行った.収穫は湛直区で 10 月 5 日,移植区 で 10 月 18 日に行った. 3)調査項目  調査項目は前年度の試験と同じとした. Ⅲ 結   果 1 試験 1:窒素溶出パターンの違いが生育・収量 に及ぼす影響(2016 年)  推定した窒素溶出量を生育期間別に示した(第 3 表).LP 複合 D80 の窒素溶出量は,栽培方法に関わ らず播種から最高分げつ期までの生育前半に多いこ とが示された.一方,試験区Ⅱ~Ⅴでは LP 複合 P N 類 種 料 肥 区 2O5 K2O Ⅰ LP複合D80 湛直 10.0 10.0 10.0 Ⅱ きぬむすめ湛直一発V582 〃 10.0 3.2 4.8 Ⅲ 直播一発004中晩生 〃 10.0 5.0 7.0 Ⅳ 苗箱まかせNK301-120B30 〃 10.0 0.0 3.3 Ⅴ 直播専用エムコート002 〃 10.0 5.0 6.0 Ⅵ LP複合D80 移植 10.0 10.0 10.0 栽培 方法 施肥量(成分kg/10a) 第 2 表 試験区の概要(試験Ⅱ,2017 年) 区 肥料種類 施肥~ 再入水 (移植) 再入水 (移植)~ 最高分げつ期 生育前半 (小計) 最高分げつ~出穂期 出穂~ 収穫期 生育後半 (小計) 合計 Ⅰ LP複合D80 湛直 2.6 2.6 5.2 1.7 0.6 2.3 7.5 Ⅱ 直播専用エムコート002 〃 1.2 1.2 2.4 4.2 1.2 5.4 7.8 Ⅲ LPS60(4)+LPS120(4) 〃 0.0 2.9 2.9 4.1 0.9 5.0 7.9 Ⅳ LPS60(3)+LPS120(5) 〃 0.0 2.2 2.2 4.6 1.1 5.7 7.9 Ⅴ LP100(2)+LPS120(6) 〃 0.3 0.8 1.1 5.1 1.4 6.5 7.6 Ⅵ LP複合D80 移植 1.6 3.4 5.0 1.6 0.9 2.5 7.5 栽培 方法 期間別の窒素溶出量(N kg/10a) 1 1  実測(深さ 5cm)した地温データにより溶出量を推定 施肥(5/26),再入水(6/13),移植(6/16),最高分げつ期(7/14),出穂期(8/22),収穫期(10/4) 第 3 表 供試肥料の窒素溶出量の推定値(試験Ⅰ,2016 年)

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ならない程度であった(第 4 表).また,出穂後の 日照不足によって登熟歩合は 71.9~82.0% と低かっ た.  粗収入は粗玄米収量が高かった移植栽培の試験区 Ⅵで最も高く,肥料費及び肥料費を除く経営費を差 し引いた所得は 10a 当たり 27,351 円と試算された(第 7 表).低コストとされる鉄コーティング湛水直播栽 培であるが,肥料費を除く経営費は移植栽培と比べ て 2,310 円しか低減しないため,移植栽培を上回る 所得が得られたのは試験区Ⅱ並びに試験区Ⅵであっ た. を比較した.その結果,生育後半の窒素肥効が高い 試験区Ⅱ~Ⅴでは試験区Ⅰに比べて,生育後半の葉 色(SPAD 値)は高く推移する傾向を示し,特に試 験区Ⅳでは出穂後の 9 月 1 日時点の葉色(SPAD 値) が試験区Ⅰより有意に高かった(第 5 表).また, 最高分げつ期の茎数や穂数も試験区Ⅱ~Ⅴで少ない 傾向にあり,特に試験区Ⅴで試験区Ⅰに比べて有意 に少なかった(第 4 表).粗玄米収量は試験区Ⅳで 移植栽培の試験区Ⅵと同程度の 10a 当たり 629kg で あった(第 6 表).  なお,いずれの試験区においても,倒伏は問題に 最高分げつ期 茎数 稈長 穂長 穂数 有効茎歩合 % ㎡ / 本 ㎡ / 本 類 種 料 肥 区 Ⅰ LP複合D80 湛直 833 a 81.4 a 18.5 a 479ab 57.5 1.0 Ⅱ 直播専用エムコート002 〃 744ab 80.7 a 19.1 a 434bc 58.3 0.0 Ⅲ LPS60(4)+LPS120(4) 〃 716ab 81.5 a 19.1 a 448ab 62.5 0.0 Ⅳ LPS60(3)+LPS120(5) 〃 705ab 80.8 a 19.1 a 449ab 63.7 0.0 Ⅴ LP100(2)+LPS120(6) 〃 654 b 78.3 a 18.9 a 393 c 60.1 0.0 Ⅵ LP複合D80 移植 655 b 85.9 a 18.5 a 487 a 74.4 1.0 栽培 方法 cm 倒伏 程度 2 収穫期 1 表中数値右の異なる文字間に 5%水準で有意差有(Tukey の多重検定) 2 倒伏程度(0 無~5 甚) 第 4 表 生育調査結果1(試験Ⅰ,2016 年) 区 肥料種類 7/1 7/14 7/22 8/1 8/8 8/18 8/25 9/1 9/15 Ⅰ LP複合D80 湛直 40.2 a 38.5ab 32.7 b 33.3 a 31.4 b 32.2 a 32.0 a 32.9 b 26.4 a Ⅱ 直播専用エムコート002 〃 39.2 a 37.5 b 32.7 b 33.2 a 33.4ab 32.7 a 34.8 a 35.6ab 30.8 a Ⅲ LPS60(4)+LPS120(4) 〃 39.8 a 38.2 b 33.8 b 33.3 a 33.3ab 32.0 a 33.8 a 35.8ab 30.7 a Ⅳ LPS60(3)+LPS120(5) 〃 39.3 a 37.2 b 34.3 b 32.8 a 32.9ab 33.9 a 35.1 a 36.7 a 31.3 a Ⅴ LP100(2)+LPS120(6) 〃 39.0 a 36.5 b 31.7 b 32.6 a 33.2ab 32.9 a 35.1 a 35.5ab 30.0 a Ⅵ LP複合D80 移植 31.6 b 42.5 a 39.2 a 36.0 a 34.2 a 29.8 a 32.4 a 33.6ab 29.2 a 栽培 方法 葉色(SPAD値) 1 表中数値右の異なる文字間に 5%水準で有意差有(Tukey の多重検定) 第 5 表 葉色1の推移(試験Ⅰ,2016 年) 栽培 ワラ モミ モミ数 登熟歩合 千粒重 区 肥料種類 方法 kg/10a 指数 ×1000/㎡ % g Ⅰ LP複合D80 湛直 956 a 738 a 0.77 603 a 95 32.2ab 67.1 a 77.2 23.6 b Ⅱ 直播専用エムコート002 〃 849ab 748 a 0.88 610 a 96 30.4 b 70.0 a 81.3 24.1ab Ⅲ LPS60(4)+LPS120(4) 〃 849ab 754 a 0.89 613 a 97 31.9ab 71.5 a 78.7 23.8ab Ⅳ LPS60(3)+LPS120(5) 〃 847ab 772 a 0.91 629 a 99 32.3ab 71.2 a 80.3 23.8ab Ⅴ LP100(2)+LPS120(6) 〃 801 c 751 a 0.94 613 a 97 30.0 b 76.2 a 82.0 24.5 a Ⅵ LP複合D80 移植 896 b 778 a 0.87 632 a 100 35.5 a 72.9 a 71.9 23.4 b kg/10a 粗玄米 一穂 モミ数 モミ/ ワラ比 1 表中数値右の異なる文字間に 5%水準で有意差有(Tukey の多重検定) 第 6 表 収量調査結果1(試験Ⅰ,2016 年)

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半と生育後半の窒素溶出量が概ね同程度の中間型の 肥効を,試験区Ⅳ,Ⅴは生育後半の溶出量が多い後 半型の肥効を示した.  試験区Ⅰ~Ⅴの苗立本数に大きな差は無く,平均 の苗立本数は 1㎡当たり 103.3 本(一株当たり 6.2 本) 2 試験 2:市販肥料の施用が生育・収量に及ぼす 影響(2017 年)  前年と同様に,推定した窒素溶出量を生育期間別 に示した(第 8 表).試験区Ⅰは生育前半の窒素溶 出量が多い前半型の肥効を,試験区Ⅱ,Ⅲは生育前 入 収 粗 類 種 料 肥 区 1 肥料費 2 肥料費除く 経営費 3 所得 移植区(Ⅵ) との所得差 (A) (B) (C) (A-B-C) Ⅰ LP複合D80 湛直 603 104,241 11,142 68,281 24,818 -2,533 Ⅱ 直播専用エムコート002 〃 610 105,343 9,200 68,281 27,862 511 Ⅲ LPS60(4)+LPS120(4) 〃 613 105,829 10,590 68,281 26,958 -393 Ⅳ LPS60(3)+LPS120(5) 〃 629 108,543 10,590 68,281 29,672 2,321 Ⅴ LP100(2)+LPS120(6) 〃 613 105,861 10,590 68,281 26,990 -361 Ⅵ LP複合D80 移植 632 109,084 11,142 70,591 27,351 栽培 方法 粗玄米 収量 (kg/10a) 経営収支の試算(円/10a) 1 粗収入は直接支払交付金(収量払い+多収性専用品種の上乗せ)により算出 2 肥料費は JA 購入価格をもとに算出 3  岡山県農業経営指導指標(H27)の中苗移植栽培による.また,湛直では移植栽培の経営費から育苗費(育苗 培土等,4,210 円)を減じ,鉄コーティング用資材費(鉄粉等,1,900 円)を加えた金額 第 7 表 経営収支の試算(試験Ⅰ,2016 年) 区 肥料種類 施肥~ 再入水 (移植) 再入水 (移植)~ 最高分げつ期 生育前半 (小計) 最高分げつ~出穂期 出穂~ 収穫期 生育後半 (小計) 合計 Ⅰ LP複合D80 湛直 2.6 3.9 6.5 2.0 0.7 2.7 9.2 Ⅱ きぬむすめ湛直一発V582 〃 1.6 3.5 5.1 3.6 0.7 4.3 9.4 Ⅲ 直播一発004中晩生 〃 2.5 2.7 5.2 3.5 0.7 4.2 9.4 Ⅳ 苗箱まかせNK301-120B30 〃 0.0 2.6 2.6 5.6 1.3 6.9 9.5 Ⅴ 直播専用エムコート002 〃 1.3 1.7 3.0 5.0 1.4 6.4 9.4 Ⅵ LP複合D80 移植 2.0 3.8 5.8 2.4 0.9 3.3 9.1 栽培 方法 期間別の窒素溶出量(N kg/10a) 1 1  実測(深さ 5cm)した地温データにより溶出量を推定 施肥(5/26),再入水(6/16),移植(6/12),最高分げつ期(7/20),出穂期(8/24),収穫期(10/4) 第 8 表 供試肥料の窒素溶出量の推定値(試験Ⅱ,2017 年) 最高分げつ期 茎数 稈長 穂長 穂数 有効茎歩合 % ㎡ / 本 ㎡ / 本 類 種 料 肥 区

Ⅰ LP複合D80 湛直 919ab 90.4 a 19.2ab 432ab 46.8 3.0

Ⅱ きぬむすめ湛直一発V582 〃 972 a 90.6 a 19.7ab 428ab 44.0 1.0

Ⅲ 直播一発004中晩生 〃 927ab 89.2 a 19.8ab 408ab 44.3 1.5

Ⅳ 苗箱まかせNK301-120B30 〃 844ab 87.5 a 20.4 a 374 b 45.7 1.0 Ⅴ 直播専用エムコート002 〃 893ab 90.5 a 20.2ab 363 b 42.7 1.5 Ⅵ LP複合D80 移植 604 b 90.2 a 18.8 b 550 a 90.9 4.0 栽培 方法 収穫期 倒伏 程度 2 cm 1 表中数値右の異なる文字間に 5%水準で有意差有(Tukey の多重検定) 2 倒伏程度(0 無~5 甚) 第 9 表 生育調査結果1(試験Ⅱ,2017 年)

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半型の試験区Ⅱ~Ⅴで 9 月 14 日並びに 10 月 3 日時 点の葉色は有意な差は認められないものの高い傾向 にあったが,中間型の試験区Ⅱ及びⅢと後半型の試 験区Ⅳ及びⅤの差は判然としなかった(第 10 表). 穂数は,前半型の試験区Ⅰで 1㎡当たり 432 本と最 も多く,次いで中間型,後半型の順に,有意な差は 認められないものの少なくなる傾向を示した(第 9 であり,目標12)とする苗立本数 100 本が確保され ていた.  移植用の肥料 LP 複合 D80 を施用した湛直区(試 験区Ⅰ)と移植区(試験区Ⅵ)を比較すると,前年 と同様に,分げつは湛直区で旺盛で,最高分げつ期 の茎数は湛直区で 1㎡当たり 919 本と,移植区の 604 本を有意に上回った(第 9 表).しかし,最高分 げつ期頃の葉色は移植区に比べて,湛直区で有意に 低かった(第 10 表).収穫期の稈長は,湛直区と移 植区で同等で,穂数は湛直区で 1㎡当たり 432 本と 移植区の 550 本に比べて,有意な差は認められない ものの少なかった(第 9 表).倒伏程度は湛直区で 少なく,1㎡当たりのモミ数は同等であったが,1 穂 モミ数や登熟歩合,千粒重は湛直区で有意な差は認 められないものの上回ったため,粗玄米収量は約 8% 増収した(第 11 表).  湛水直播栽培した試験区Ⅰ~Ⅴの生育,収量を比 較した.前半型の試験区Ⅰに比べて,中間型及び後 3 / 0 1 4 1 / 9 0 2 / 7 類 種 料 肥 区 Ⅰ LP複合D80 湛直 34.4 b 31.8 a 24.5 a Ⅱ きぬむすめ湛直一発V582 〃 36.4ab 35.1 a 28.2 a Ⅲ 直播一発004中晩生 〃 34.2 b 33.3 a 25.2 a Ⅳ 苗箱まかせNK301-120B30 〃 34.4 b 36.7 a 29.5 a Ⅴ 直播専用エムコート002 〃 35.2 b 34.0 a 27.2 a Ⅵ LP複合D80 移植 39.4 a 35.3 a 29.7 a 栽培 方法 葉色(SPAD値) 2 1  表中数値右の異なる文字間に 5%水準で有意差有(Tukey の多 重検定) 2  9/14,10/3 は止葉を測定 第 10 表 葉色 1の推移(試験Ⅱ,2017 年) 栽培 ワラ モミ モミ数 登熟歩合 千粒重 区 肥料種類 方法 kg/10a 指数 ×1000/㎡ % g Ⅰ LP複合D80 湛直 977 a 953 a 0.98 776 a 108 34.3 a 79.7ab 89.9 24.1 a Ⅱ きぬむすめ湛直一発V582 〃 914 a 965 a 1.06 786 a 109 35.8 a 84.2ab 86.2 24.1 a Ⅲ 直播一発004中晩生 〃 946 a 907 a 0.96 742 a 103 32.9 a 80.7ab 89.0 24.4 a Ⅳ 苗箱まかせNK301-120B30 〃 830 a 957 a 1.15 781 a 108 33.9 a 90.5 a 89.3 24.7 a Ⅴ 直播専用エムコート002 〃 903 a 928 a 1.03 753 a 104 33.5 a 92.4 a 87.6 24.4 a Ⅵ LP複合D80 移植 868 a 897 a 1.03 721 a 100 34.1 a 61.9 b 82.1 23.9 a 粗玄米 一穂 モミ数 kg/10a モミ/ ワラ比 1  表中数値右の異なる文字間に 5%水準で有意差有(Tukey の多重検定) 第 11 表 収量調査結果(試験Ⅱ,2017 年) 入 収 粗 類 種 料 肥 区 1 肥料費 2 肥料費除く 経営費 3 所得 移植区(Ⅵ) との所得差 (A) (B) (C) (A-B-C) Ⅰ LP複合D80 湛直 776 119,490 12,653 68,281 38,556 3,684 Ⅱ きぬむすめ湛直一発V582 〃 786 119,751 10,188 68,281 41,282 6,409 Ⅲ 直播一発004中晩生 〃 742 118,652 8,700 68,281 41,671 6,798 Ⅳ 苗箱まかせNK301-120B30 〃 781 119,631 9,514 68,281 41,836 6,963 Ⅴ 直播専用エムコート002 〃 753 118,913 10,585 68,281 40,047 5,174 Ⅵ LP複合D80 移植 721 118,116 12,653 70,591 34,873 栽培 方法 粗玄米 収量 (kg/10a) 経営収支の試算(円/10a) 1  粗収入は直接支払交付金(収量払い+多収性専用品種の上乗せ)により算出 2  肥料費は JA 購入価格をもとに算出 3  岡山県農業経営指導指標(H27)の中苗移植栽培による.また,湛直では移植栽培の経営費から育苗費(育苗 培土等,4,210 円)を減じ,鉄コーティング用資材費(鉄粉等,1,900 円)を加えた金額 第 12 表 経営収支の試算(試験Ⅱ,2017 年)

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に低く推移したことは,湛直区で窒素利用率が低下 したことに加えて,茎数が増加したために,茎当た りの窒素量が相対的に低下したと考えられた.そし て,移植用の肥料では生育後半の窒素溶出量が少な いために,茎の充実が不足して軟弱な生育となりや すいと考えられた.湛水直播栽培では,過去の報告5) にあるように,生育後半の窒素溶出量が多い全量基 肥用肥料を用いることが安定的に多収を得るために は重要と考えられた.  試験 1 で窒素溶出パターンの違いが生育,収量に 及ぼす影響について検討した結果,LP コート S60 と LP コート S120 を 10a 当たりの施肥窒素量でそれ ぞれ 3kg,5kg となるよう施肥した試験区Ⅳで,移 植栽培と同等の収量が得られた.しかし,これより も生育後半の窒素溶出量が多くなるよう施肥した試 験区Ⅴでは,茎数が不足して収量が減じたことから, 試験区Ⅳの設計が最も適していると考えられた(第 6 表).  試験 2 で供した肥料の窒素溶出パターンについ て,試験 1 で移植栽培と同等の収量が得られた試験 区Ⅳの組み合わせを対照として,比較検討した(第 1 図).播種から最高分げつ期までの生育前半に窒素 溶出量が多かったのは試験区Ⅰ>Ⅱ=Ⅲ>Ⅳ≒Ⅴの 順であった.対照の窒素溶出パターンに類似したの は試験区Ⅳ,Ⅴであり,試験区Ⅱ,Ⅲの供試肥料は 乾田直播用あるいは湛水直播用であるが,生育前半 と後半の窒素溶出量が概ね同程度の中間型の溶出パ ターンであった.試験区Ⅳの肥料は育苗箱施肥用の 肥料であるが,本田施用も十分可能と考えられた. しかし,試験 2 では登熟期の気象条件が良好であっ たためか,いずれの試験区においても移植区の収量 を上回った.  2 か年の結果をもとに,生育前半の窒素溶出量と 最高分げつ期の茎数,モミ数との関係を第 2 図に示 した.最高分げつ期の茎数は,生育前半の窒素溶出 量が多いほど増加した.窒素溶出量が同程度であっ ても茎数は湛直区で移植区よりも多かったことは, 移植栽培に比べ湛水直播栽培では茎数が増えやすい こと12)を裏付けるものと考えられた.また,モミ 数についても生育前半の窒素溶出量が多いほど増加 する傾向を示したが,倒伏程度は増大する傾向にあ り(第 4,9 表),安定的に多収を目指すためには過 表).また,倒伏程度は試験区Ⅰに比べて試験区Ⅱ ~Ⅴで低い傾向を示した.しかし,一穂モミ数や千 粒重は後半型,次いで中間型の順に有意な差は認め られないものの増大する傾向を示し,粗玄米収量は いずれの試験区においても,直接支払交付金の上限 である 10a 当たり 680kg を大きく上回り多収であっ た(第 11 表).  所得を試算したところ,湛水直播栽培した試験区 Ⅰ~Ⅴの所得は移植栽培を上回ったほか,肥料費が 低い試験区Ⅲ,Ⅳでより高い所得が得られた(第 12 表). Ⅳ 考   察  飼料用米栽培では専用品種の導入が進められてい るが,高い収量性を持つ主食用米品種の一部が現地 特認品種として認定され,需要が望まれる飼料用米 の栽培面積拡大に寄与している.本県では‘中生新 千本’が現地特認品種として認定されたが,食味を 考慮せずに収量を最重要視した施肥技術,なかでも, 省力低コストを目的とした湛水直播栽培での全量基 肥施肥技術はこれまで検討されていなかった.そこ で,本研究では省力低コスト化が求められる飼料用 米栽培において,‘中生新千本’を鉄コーティング 湛水直播栽培する際に,全量基肥用肥料の種類の違 いが収量並びに所得に及ぼす影響を検討した.  中生品種の移植栽培に適した全量基肥用肥料であ る LP 複合 D80 は速効性窒素と緩効性の LP コート 100 を窒素成分比で 14:86 の割合で含んでいる.こ の肥料の施用効果を‘中生新千本’の移植栽培と湛 水直播栽培で検討した結果,2 か年ともに最高分げ つ期の茎数は湛直区で上回ったものの,生育期間中 の葉色は生育初期を除いて湛直区で明らかに低く推 移した.湛水直播栽培では種子が地表面近傍にある ため,移植栽培に比べて分げつが増えやすく,細茎 化しやすいことが指摘されている12).また,湛水直 播栽培では播種後の落水処理によって,肥料中の速 効性窒素が硝化され,施肥窒素の利用率が低下する ことが報告13)されている.実際に,第 3,8 表に示 したように,施肥から再入水(移植区では移植期) までの窒素溶出量は湛直区で移植区よりも多いにも 関わらず,生育初期を除いて葉色は湛直区で明らか

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が可能な技術とされている.しかし,所得の試算で 明らかなように,鉄コーティング湛水直播栽培にお いて,収量が移植栽培に劣る場合,所得は移植栽培 を上回らなかった(第 7 表).今回の所得の試算では, 鉄コーティング湛水直播栽培導入によって軽減が期 待される育苗に係る労働時間並びに労働費を考慮し ていないものの,鉄コーティング湛水直播栽培を導 入することでより所得を高めるためには,少なくと も移植栽培と同等の収量を得る必要があると考えら 剰な分げつを抑制して,1㎡当たり 32,000~34,000 粒を目標とすることが望ましいと考えられた.そし て,生育期後半の窒素溶出量を高めることにより, 一穂モミ数並びに千粒重を増大させることが,飼料 用米としての‘中生新千本’の湛水直播栽培で安定 多収を得るために効果的と考えられた.  湛水直播栽培は移植栽培に比べて,育苗に係る経 費が不要であることに加え,種子を鉄コーティング することでカルパーコーティングよりも低コスト化 2.9 0 2 4 6 8 10 5/20 6/19 7/19 8/18 9/17 10/17 窒 素 溶 出 量 ( N kg / 1 0 a) Ⅰ LPD80 LPS60+LPS120 Ⅰ 6.5 7/20 2.9 0 2 4 6 8 10 5/20 6/19 7/19 8/18 9/17 10/17 窒 素 溶 出 量 ( N kg / 1 0 a) Ⅱ きぬ湛直一発 LPS60+LPS120 Ⅱ 5.2 7/20 2.9 0 2 4 6 8 10 5/20 6/19 7/19 8/18 9/17 10/17 窒 素 溶 出 量 ( N kg / 1 0 a) Ⅲ 直播一発 LPS60+LPS120 Ⅲ 5.2 7/20 2.9 0 2 4 6 8 10 5/20 6/19 7/19 8/18 9/17 10/17 窒 素 溶 出 量 ( N kg / 1 0 a) Ⅳ 苗箱まかせ LPS60+LPS120 Ⅳ 2.6 7/20 2.9 Ⅴ 3.0 0 2 4 6 8 10 5/20 6/19 7/19 8/18 9/17 10/17 窒 素 溶 出 量 ( N kg / 1 0 a) Ⅴ 直播エムコート LPS60+LPS120 7/20 第 1 図 生育期間中の地温をもとに推定した供試肥料の窒素溶出量の推移(試験Ⅱ,2017 年) 試験Ⅰで多収であった設計(LPS60 + LPS120)の溶出経過を比較のため図示(破線) 図中縦破線は最高分げつ期(7/20)を示し,白抜き矢印・数値は最高分げつ期までの窒素溶出量を,黒 矢印は出穂期(8/24)を示す

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焼法(スミグラフ NC-220F,株式会社住化分析セン ター社製)により測定した玄米中窒素含量に係数 6.25 を乗じて算出したところ,8.1~8.9% の範囲に あった(データ省略).高い粗タンパク含量は飼料 としては適当であるが,主食用米の施肥には適さな いため注意が必要である. Ⅴ 摘   要  全量基肥用肥料を用いた飼料用米‘中生新千本’ の鉄コーティング湛水直播栽培において,窒素溶出 パターンの違いが収量並びに所得に及ぼす影響を検 討した.  その結果,主食用米の移植栽培用肥料を用いて湛 水直播栽培した場合,最高分げつ期までの生育前半 に窒素溶出量が多いため,茎数が多いものの葉色は 薄く経過し,粗玄米収量は同じ肥料を用いた移植栽 培よりも劣った.しかし,生育後半に窒素溶出量が 多い肥料を用いた場合,穂数は少ないものの一穂モ ミ数や千粒重が増大することで,移植栽培と同等以 上の粗玄米収量が得られ,粗収入から経営費を減じ た所得は移植栽培より増大した.以上より,飼料用 米の湛水直播栽培で全量基肥施肥技術を現場で導入 する際には,生育後半の窒素溶出量が多い肥料を選 択し,さらに,リン酸やカリウムの減肥が可能であ れば,これらの含量が相対的に低い安価な肥料を選 択することで,所得が向上すると考えられた. れる.  水田土壌の可給態リン酸が 10mg(乾土 100g 当た り)以上,カリウム飽和度が 2.8%以上ある場合には, リン酸やカリウムの減肥が可能とされている3).岡 山県内の水田土壌の化学性を調査したところ,34% の水田でリン酸の 5 割減肥,60% の水田でリン酸の 無施肥栽培が可能2)で県南部の水田では 82% の水 田でカリウムの無施肥栽培が可能と判断されたこ と1)が報告されている.試験圃場前地について,リ ン酸は施肥基準量の 5 割減肥可能,カリウムは減肥 不可能と判断された.試験 2 ではリン酸並びにカリ ウム含量が相対的に低い市販肥料を供し,不足分は 補てんせず試験を実施したが,生育期間中のこれら 成分の含量や吸収量で不足することはなかった (データ省略).既報1)においても,カリウム無施肥 を継続すると,最高分げつ期の茎葉中カリウム含量 が低下したものの,5 か年の試験期間に収量に及ぼ す影響は認められなかったとしている.窒素に比べ て,リン酸やカリウム含量が相対的に少ない肥料の 価格は低い.そのため,飼料用米の湛水直播栽培で 全量基肥施肥技術を現場で導入する際には,生育後 半の窒素溶出量が多い肥料を選択し,さらに,土壌 診断をもとにリン酸やカリウムの減肥が可能であれ ば,リン酸やカリウム含量が相対的に低い安価な肥 料を選択することで,所得が向上すると考えられた.  また,一連の試験は食味を考慮しない飼料用米の 施肥について検討したものである.試験 2 において, 玄米中の粗タンパク含量(水分 15%換算)を乾式燃 r = 0.859*** 200 400 600 800 1,000 1,200 0 2 4 6 8 茎 数 ( 本 / ㎡ , 最高 分 げ つ 期 ) 窒素溶出量(播種~最高分げつ期) (Nkg/10a) 2017湛直 2016湛直 2017移植 2016移植 r = 0.642* 15 20 25 30 35 40 0 2 4 6 8 モ ミ 数 ( × 1 0 0 0 粒 / ㎡ ) 窒素溶出量(播種~最高分げつ期) (Nkg/10a) 2017湛直 2016湛直 2017移植 2016移植 第 2 図 生育前半の窒素溶出量と茎数(左),モミ数(右)との関係 図中線分は湛直区データ(2 か年)の回帰直線,***0.1%,5%水準で有意

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尿素肥料を主体とした側条施肥による生育制 御,東北農業研究,64,27-28,2011 8) 三浦恒子・進藤勇人・松本眞一:水稲湛水直播 あきたこまちにおけるシグモイド溶出型被覆尿 素肥料を主体とした側条施肥による高品質安定 生産,東北農業研究,68,41-42,2015 9) 森田弘彦・吉永悟志・古畑昌巳・山下 浩:代 かき同時土中点播直播における播種同時打込み 施肥技術,九州沖縄農業研究センター編,九州 沖縄農研研究資料,91,43-49,2005 10) 農林水産省 : 水稲直播栽培の現状について, http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/zikamaki/z_ genzyo/index.html 11) 岡山県農林水産部農産課:「中生新千本」技術 資 料,http://www.pref.okayama.jp/page/457113. html 12) 山内 稔・塩見 峻・樋口 亮・山川紳哉・村 岡賢一・中西一泰・阿部浩人・東野裕広・田中 達也・山本晋弘ら:鉄コーティング種子を用い た水稲の直播栽培,全国農業協同組合連合会, 2018 13) 吉永悟志・西田瑞彦・脇本賢三・田坂幸平・松 島憲一・富樫辰志・下坪訓次:湛水直播栽培に おける播種後の落水管理が施肥窒素の動態およ び水稲の生育・収量に及ぼす影響,日作紀,69 (4),481-486,2000 引 用 文 献 1) 赤井直彦・鷲尾建紀・田淵 恵:水稲栽培にお けるカリウム減肥基準の設定,岡山県農林水産 総合センター農業研究所平成 23 年度試験研究 主要成果,9-10,2012 2) 赤井直彦・鷲尾建紀・芝 宏子・石井 恵・山 中基恵:水稲栽培のリン酸減肥指針,岡山県農 林水産総合センター農業研究所平成 25 年度試 験研究主要成果,11-12,2014a 3) 赤井直彦・鷲尾建紀・芝 宏子・石井 恵・山 中基恵:県内水田のリン酸・カリウム減肥区分 とそれに適した低コスト肥料の選定,岡山県農 林水産総合センター農業研究所平成 25 年度試 験研究主要成果,13-14,2014b 4) 荒木雅登・兼子 明・井上恵子・末信真二:暖 地における水稲早生品種の湛水直播栽培での被 覆尿素による一回全量施肥法の適応性,福岡農 総試研報,18,13-16,1999 5) 今井克彦・今泉諒俊:水稲湛水直播栽培におけ る全量基肥施肥法に関する研究(第 1 報),愛 知農総誌研報,22,41-50,1990 6) 石橋英二:土壌施肥管理システムの開発,岡山 県農総セ農試研報,23,33-41,2005 7) 三浦恒子・進藤勇人・松波寿典・佐藤雄幸:水 稲湛水直播栽培におけるシグモイド溶出型被覆

参照

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