C A N C E R 4 (1995), p. 27-29 27
タスマニアキングクラブついて
安 原 健 允
世界の二大巨蟹は, タカア シガニとタス マニア キングクラブである . クモガニ科 ( M ajidae) の タカアシガ ニMαcrocheira kaem p feriは, Japa-nese giant crab または, giant spider crab と呼 ばれている. タカアシガニは主として日本の東北 地方, 岩手県の釜石から 九州地方の西海岸沖合い までの太平洋沿岸 のおおよそ 北緯40度から30度に かかる聞が生息域である . 近年,わが国の研究者 によってその研究成果が多く報告され,台湾の東 方沖からも雌のタカアシカーニが
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個体漁獲された ので分布域が広がった. また,沖縄県の海洋公園 水族館をはじめ各地の水族館で タカアシガ ニの飼 育展示がなされていることから,比較的よく知 ら れて いる. オウギガニ科 (Xanthidae) のタスマニアキン グクラブTasmanian giant crab (以下キン グク ラブ〉は,オーストラリアオオガニ Australian giant crab と も 呼 ば れ Pseudocarcinus gigas (Lamarck) の学名をもっこのカニついては, そ の存在を含めて日本ではあまり知られていない. 筆者は,1994
年3 月6
日から13
日までオースト ラリアの南の島タスマニア島の南極海に面した街 ・ ホパート( 図 1 ,2) に滞在する機会を得た. ホ パートでは, ノノレウェ ーから親魚や卵を輸入 し醇 化させて,企業化に成功しているアトランチ ック サーモン (Sαlmo salar) の養殖の現状と, この キングクラブについての情報を収集することが目 的であった. ホパートは, タスマニア島の南に位置する人口18
万人のきれいな町で, ヨーロッパの町がそのま ま移ってきたかの錯覚を起こさせるような建物がTakenobu Y ASUHARA: Notes on the Tasmanian giant crab, Pseudocαrcinus gigαs, CXanthidae, Crustacea) in Tasumania. 並ぶ観光地でもある. ホパートの港は,南極観測 の基地として, またオーストラリア海軍の基地と しての役割も担 って おり,日本の漁船の基地とし てその事務所もある . 港の桟橋には,小型漁船も 係留され( 図
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) ,その多くが篭を積んだ漁船で あった( 図3 ). この漁船はおもに大形のイセ エ ビ類の漁獲を目的にしているが,時にはキンクク ラブも漁獲する . しかし,港周辺の土産物庖とレ ストランが並ぶサラマンカ街でこのカニについて 尋 ねてみても,これを知 って いる人がいなか った のには驚いた. ホパートの港湾周辺には魚市場は 無 く,マーケ ッ トシップが桟橋に係留されていて 市民や観光客に魚や海老を商っていたが,この売 庖の商品にはキ ングクラブ は含まれてはいなか っ た. 出発前に東京 の鋼管鉱業社長・友田八郎氏に ご無理をお願いし, タスマニアでアトランチック サーモンの養殖を行 っている,現地法人アクアタ ス社 (AQ U A T A S T A S M A N I A ) の 八 広 良 太 社 長,中村達也部長に事前に連絡をと っていただい てあった. 中村部長のお手配で,エビ類の集荷と 販売をしている会社のQ U A L I T Y T A S M A N I A N ロー ンセストン…
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図1 . オーストラリア・タスマニアの位置・略図28 タスマニアキングクラブに ついて
ABALONE PTY L
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のタ ー ナ 一 社 長(Mr
C H RISTINE TUTNER)
の水 槽 に は 大 形 のl
個 体( 図4 ) ,他の1
社に は中形の2
個 体 の キ ン グ クラブが確保されていて,現地で直接触れること が出来た. しかし ,最近 はなかなか手に入らない とのことで,数週間も前から漁業者に手配してい 図2 ホパート港 図3. 蟹篭漁船 図4. M r. C. Turner とキングクラブ ただいてあ った. キング クラブは,甲幅が60cm, 体 重13kg を越 えるほどの大きさになる個体もある. オーストラ リア東南部から南部に分布し , オーストラリア東 南部では水深100 - 200
m ,南部 で は 水 深20
m ほ どでも見られると 言 われている . キングクラブは,中華料理に用い ており , メル ボルン空港の売! 苫では水槽に 中形の2
個体が,ま た,市内の中華街の中華料理屈のウインドウの水 槽にはイセエビ類と 一緒に入れて( 図5) ,客の 注文によって水槽から取り出しその場で調理して いた. シーフ ー ドとして1人前50 - 70オー ス 卜ラ リアドルであ った . ま た , オ ス (2
個体) , メス 図5. 中華料理庖の水槽の キング クラブ 図6. ホパート博物館のキングクラブ (雄雌)安 原 健 允 29
図7. シーワールドのキングクラブ説明文 Giant Crab
Pseudocarcinus gigas This is one of the larg-est species of crabs in the world. It can grow to 40cm across the body and weigh over 13kg. T he m a le's larger cla w m ay be over 45cm long. T hey are trawled commercially from water 100-190m deep. ( 1 個体) の大形の乾燥標本がホパートの博物館 で展示( 図6 ) されていた. シドニ ーの水族館シー ワールドでも 1 個体が飼育展示されており図 7 の ような説明文があった. キングクラブについては, アクアタス社のクイ ンタナ博士( Dr.R O D O L F O Q I N T A N A ) のお 世話で, タスマニア州立水産研究所 (Depart-ment of Primary Industry and Fisheries Tasumania) の ザ カ リ ン 氏 ( Mr.W ILLIA M Z A C H A R I N ) に会うことができた . この研究所 には大形の乾燥標本