*茨城キリスト教大学(Ibaraki Christian University)
2014年12月15日受付 2015年6月18日採用
原 著
勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援とその関連要因
Duty of midwives support to encourage the father role acquisition
and its related factors
礒 山 あけみ(Akemi ISOYAMA)
* 抄 録 目 的 勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援の実態とその関連要因を明らかにし,周産期における家族 ケアシステムの構築を検討するための示唆を得ることを目的とする。 対象と方法 病院・診療所に勤務している助産師を対象に,自記式質問紙調査を行った。父親役割獲得を促す支援 の項目について因子分析を行い,助産師の属性による得点の差をt検定および一元配置分散分析を用い て分析した。 結 果 研究協力者は422名(有効回答率93.6%)であった。因子分析の結果, 父親への支援に対する姿勢 分 娩時の父親役割準備 父親意識の促進 ピアサポート促進 妻へのサポート促進支援 アタッチメン ト促進 父親のニーズに応じた支援 夫婦間コミュニケーション促進 の8因子が抽出された。各因子 に対するCronbachのα係数は0.72∼0.95であった。実施率が高かった因子は 妻へのサポート促進支援 , アタッチメント促進 , 分娩時の父親役割準備 , 父親への支援に対する姿勢 , 夫婦間コミュニケー ション促進 であった。父親役割獲得を促す支援は,助産師経験年数や助産師数,両親学級や夫立ちあ い分娩および夫への育児指導の有無により有意な差が認められた。 結 論 勤務助産師の父親役割獲得を促す支援には助産師経験年数や助産師数が関連していた。父親役割獲得 を促すためには,まず助産師が父親自身も親移行の当事者であることを認識すること,そのうえでシス テマティックな父親同士の交流の場の提供や,父親になる夫に対するクラス運営・立ちあい出産の導入 が有用であることが示唆された。 キーワード:父親役割獲得,助産師,家族ケア,出産前教育 Abstract PurposeA purpose of this study was to determine the support to encourage the father role acquisition of duty midwives and to determine its relevant factors. And it is intended to obtain a suggestion to examine the construction of the
*茨城キリスト教大学(Ibaraki Christian University)
勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援とその関連要因
family care system in the perinatal period. Subjects and Methods
A self-administered questionnaire was used with midwives currently working in hospitals and clinics. The in-vestigation was given factor analysis about an item of the support to promote the acquisition of the role as father. And the investigation was given a t test and the one-way layout analysis of variance of the difference of the scores by the attribute of the nurse midwife.
Results
Four hundred and twenty-two midwives completed the survey (a valid response rate of 93.6%). Eight factors were extracted from the results of the factor analysis: having a supportive attitude toward fathers, preparing fathers for their role during delivery, encouraging awareness of being a father, encouraging peer support, encouraging and reinforcing the father's support of the mother, promoting attachment, supporting the father's needs, and facilitat-ing communication between both parents. Cronbach's alpha coefficients for each factor ranged from 0.72 to 0.95. Although the behaviors captured by the factors "encouraging and reinforcing the father's support of the mother", "promoting attachment", "preparing fathers for their role during delivery,! "having a supportive attitude toward fa-thers," and "facilitating communication between both parents," and were being performed comparatively well. The scores showed significant variances based on years of midwife experience, number of midwife, whether the couple attended parenting classes, whether the father was present at the delivery, and whether the father received child-care guidance.
Conclusions
Support to encourage the father role acquisition of duty midwives years of experience and the number of mid-wives was related. In order to encourage acceptance of fatherhood, midwife must first acknowledge that the father is also undergoing a transition into parenthood. Therefore, fathers should be provided with systematic networking opportunities with other fathers. In addition to benefits of the father's presence at the delivery, there are also po-tential benefits of conducting classes for men about becoming parents. Both of these should be taken into consider-ation when encouraging role acceptance.
Keywords: father's acceptance of the parental role, midwife, family care, prenatal education
Ⅰ.緒 言
昨今,女性の社会進出に伴い男女共同参画社会の 実現化に向け,「イクメンプロジェクト」と呼ばれる課 題が提示され,父親の育児が推奨されている(厚生労 働省,2009)。新たな家族の誕生は家族発達を遂げる ライフイベントであり,健やかな家族を育むためには, 母親と家族への役割獲得を促す支援は重要である。家 族員が増加するとともに家族が機能するように組織化, 調整されなければ家族機能は向上しない(法橋,2010, p.67)。家族の中でも特に父親は母子の身近に存在し, 母親と共に育児を担う存在として役割が期待されてい る。父親としての役割課題を認識し適応していくた めには,子どもの誕生後のみならず,新たな家族を迎 え入れる準備期である妊娠期からの支援が必要である。 谷野・小野・朝比奈他(2007, p.90)も,父親の育児参 加には産前からの継続的な受講が有効であるとしてい る。 家族の存在は,子どもの心身の発達や社会性の発達 にとって重要であり,子どもの人格形成には親の育 て方が影響を与える(Bowlby, 1993, pp.4-16)。助産師 は,家族が大きく変化し新たな家族成員を迎え入れる 準備期に最も接する機会が得られやすい立場である。 母性・助産学の観点からは,助産業務の範囲は女性 だけでなく,家族に対しての相談・教育が含まれてい る(ICM, 2010)。また,助産師のケアの対象は女性の みならず,家族も含めたケアの提供が求められている。 しかし,多くの父親が心理・社会的な孤立感や,妻や 子どもとの関係を形成することが困難であると感じて しまう要因に,助産師が父親を「母親を支える支援者」 という認識を抱いて援助を行っていることを挙げてい る(May, Fletcher, 2013, p.474)。助産師が父親を母親 のサポート役という認識に留まらず,発達を遂げる当 事者として認識し,ケアを提供できることが望ましい と考える。 父親に関する先行研究を概観すると,妊娠期の男 性の親としての変化や父性性に関すること(大浦・松 田・眞鍋,2007, pp.35-40;村上・内山・川越他,1995, pp.64-70),産後の父親役割に関すること(森田・森・ 石井,2010,pp.425-432)など,男性の父親になる契機 や意識変化に関して明らかにされている。村上・平澤 ・滝沢他(2002, p.68)によると,助産師は家族ケアのている。家族ケアに対する実践能力では,開業助産師 は高いと認識していたが,勤務助産師は経験年数に関 係なく実践能力が低いと認識していたことを明らかに している。このように助産師の家族ケアに対する必要 性や実践能力に対する認識について明らかになってい るが,勤務助産師による父親役割獲得を促す支援の実 態の評価は見当たらない。今後はさらに育児を担う家 族,特に父親に焦点を当てた助産師のケアが求められ る。そのため妊娠期から助産師による父親役割獲得を 促す支援の実態を明らかにする必要がある。本研究は、 勤務助産師の父親役割獲得を促す支援の実態と関連要 因を明らかにし,周産期における家族ケアシステム の構築を検討するための示唆を得ることを目的とする。 本研究で用いる父親役割獲得を促す支援とは,父親と なる男性が父親としての自己を形成し,父親役割に関 する知識や技術,態度を習得し父親としての準備を整 えるために助産師が実践している妊娠期から分娩・産 褥期にかけての関わりとする。
Ⅱ.研究方法
1.研究デザイン 本研究は、自記式質問紙による実態調査および観測 的研究デザインである。 2.調査施設および研究協力者 北海道,東北,北陸,関東甲信越にある産婦人科を 標榜する病院・診療所から無作為に選択し200カ所に 研究協力を依頼した。そのうち、研究の了承が得ら れた病院・診療所は59カ所(回収率29.5%)であった。 研究協力者は,上記の病院・診療所に勤務している助 産師とした。 3.調査方法 1 ) 調査の期間と方法 2013年8月∼10月に調査を行った。依頼する施設管 理者に対し研究依頼文書にて調査の趣旨・方法,倫理 的配慮について説明した。研究の協力が得られた施設 には,担当者を通して勤務している助産師数分の研究 協力依頼書と質問紙および返信用封筒を配布した。研 究協力者には本研究の目的や意義,方法・倫理的配慮 に関して説明し,研究協力が得られる場合質問紙に記 「父親役割獲得を促す支援」を測定するために,妊 娠期,分娩期および産褥期の父親役割獲得を促す支援 と思われる項目を,先行研究(森田・森・石井,2010, pp.425-432; 岩 田・ 森,2004, pp.49-55; 青 野,2009, pp.9-14;村上・内山・川越他,1995, pp.250-258;大 浦・松田・眞鍋,2007, pp.35-40)から50項目抽出した。 それらの項目が父親役割獲得を促す支援の内容の要素 を網羅しているかについて,助産学分野の専門家3名 と構成概念妥当性を検討し,助産師10名にプレテス トを行い,修正を加え作成した。回答形式を「1. 全く 実施していない」から「4. 常に実施している」の4段階 のリッカート尺度に設定した。 4.分析方法 各変数の基本統計量を算出し、父親役割獲得を促す 支援の項目について因子分析を行った。因子構造の信 頼性と妥当性を検証した。父親役割獲得を促す支援に 対する関連要因の検討のために抽出された各因子の得 点を算出し,研究協力者の属性による得点の差をt検 定および一元配置分散分析によって分析した。多重 比較には,Bonferroni testを使用した。分析にはSPSS ver.21.0を用いて行い,有意水準を5%とした。 5.倫理的配慮 研究依頼文書に,研究協力の任意性,匿名性の守秘, データは学術目的以外では利用しないことを明記した。 質問紙は無記名とし、個別郵送回収とした。協力者か らの返送をもって同意が得られたとした。なお,本研 究は茨城キリスト教大学倫理審査委員会の承認を得て 行った(承認番号12-21)。Ⅲ.結 果
1.質問紙の回収結果 研究協力の得られた59カ所の病院・診療所において, 946名に質問紙を配布した結果,返信は451名(47.2%) であった。そのうち,分析に使用したデータは属性や 質問項目の回答の欠損が認められた対象者29名を除 いた助産師422名(有効回答率93.6%)であった。 2.研究協力者の属性 助産師の年齢は20代114名(27%),30代141名(33.4勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援とその関連要因 %),40代121名(28.7%),50代以上46名(10.9%)であ った。助産師経験年数は10年未満195名(47.1%),10 年以上219名(52.9%)であった。分娩介助経験数は1 ∼100件が128名(33.6%),101∼300件が136名(35.7%), 301∼500件が57名(15.0%),501∼1000件が51名(13.4 %),1000件以上が9名(2.4%)であった。勤務施設の 助産師数は1∼9名が44名(10.7%),10∼19名が149 名(36.1%),20名以上は220名(53.3%)であった。母 親学級を実施しているは338名(80.1%),父親学級を 実施しているは5名(1.2%),両親学級を実施している は263名(62.3%),育児クラスを実施しているは35名 (8.3%),父親への育児指導を実施しているは131名(31 %),助産師外来を実施しているは307名(72.7%),夫 立ち会いを実施しているは405名(96%)であった(表1)。 3.父親役割獲得を促す支援の共通因子について 父親役割獲得を促す支援の50項目を因子分析(最尤 法,プロマックス回転)した結果,8つの因子が抽出さ れた(表2)。1回目の因子分析では,累積寄与率を考慮 して固有値が1以上の8因子を抽出し,プロマックス 回転を行った。2回目以降の因子分析では,因子負荷 量が0.40未満のものは削除する基準を設けた。最終的 に37項目を因子的に意味のある項目として決定した。 父親役割獲得を促す支援の回転後負荷量平方和は6.37 ∼11.39であった。 第1因子は「サポーター・パートナーなど様々な父 親としてのあり方があるということを認識したうえで 援助している」「父親になる男性も援助の対象とみな している」などの8項目に対して因子負荷が高く, 父 親への支援に対する姿勢 に関する因子とした。第2 因子は「分娩時に女性が経験する不快な状況につい て前もって説明している」「陣痛に対する女性の反応, 陣痛による疲労・硬膜外麻酔の影響などを前もって 説明している」などの6項目に対して因子負荷が高く, 分娩時の父親役割準備 に関する因子とした。第3因 子は「様々な父親像について考える時間を設けている」 「父親になった時の役割について考える時間を設けて いる」などの8項目に対して因子負荷が高く, 父親意 識の促進 に関する因子とした。第4因子は「前もっ てピアの父親と話し合う機会を設けている」「母乳栄 養の経験のある父親に母乳育児中の父親の心理を語 ってもらっている」などの5項目に対して因子負荷が 高く, ピアサポート促進 に関する因子とした。第5 因子は「妻に対する身体的サポートを提供する必要性 を説明している」「妻に対する精神的サポートを提供 する必要性を説明している」の2項目に対して因子負 荷が高く, 妻へのサポート促進支援 に関する因子と した。第6因子は「父親に対して胎児について想像す ることを促している」「子どものイメージが高まるよ うな言葉をかけている」の2項目に対して因子負荷が 高く, アタッチメント促進 に関する因子とした。第 7因子は「立ちあい分娩の父親の関わり度,ストレス レベル,ニーズを頻回にアセスメントしている」「父 表1 研究協力者(助産師)の属性 項 目 n % 年齢 n=422 20代(∼29) 114 (27.0) 30代(30∼39) 141 (33.4) 40代(40∼49) 121 (28.7) 50代以上(50∼) 46 (10.9) 助産師経験年数 n=414 ∼5年 105 (25.4) 6∼10年 90 (21.7) 11年∼20年 131 (31.6) 21年以上 88 (21.3) 分娩介助経験数 n=381 1∼100 128 (33.6) 101∼300 136 (35.7) 301∼500 57 (15.0) 501∼1000 51 (13.4) 1000以上 9 (2.4) 助産師数 n=413 1∼9 44 (10.7) 10∼19 149 (36.1) 20以上 220 (53.3) 月間分娩件数 n=408 1∼49 198 (48.5) 50∼99 174 (42.6) 100以上 36 (8.8) 母親学級 n=422 実施している 338 (80.1) 実施していない 84 (19.9) 父親学級 n=422 実施している 5 (1.2) 実施していない 417 (98.8) 両親学級 n=422 実施している 263 (62.3) 実施していない 159 (37.7) 夫への育児指導 n=422 実施している 131 (31.0) 実施していない 291 (69.0) 助産師外来 n=422 実施している 307 (72.7) 実施していない 115 (27.3) 夫立ちあい分娩 n=422 実施している 405 (96.0) 実施していない 17 (4.0)
第1因子:父親への支援に対する姿勢(α=0.91) 2.08 0.86 サポーター・パートナーなど様々な父親としてのあり方があるというこ とを認識したうえで援助している 2.46 0.94 .945 -.018 .020 -.066 -.069 -.019 -.050 -.119 .765 父親になる男性も援助の対象者とみなしている 2.42 0.93 .905 -.028 -.084 -.034 -.040 .059 .024 .014 .736 父親になる男性の心理過程を十分理解したうえで援助している 2.01 0.84 .847 .055 .217 -.047 -.126 -.018 .044 -.172 .713 父親個々の出産・育児に対する関わりのレベルを尊重してサポートしている 1.99 0.84 .690 -.032 -.166 .148 .042 .069 .079 .071 .647 父親が子育てに関われるように情報提供(育児休業法,父親に対する地 域の子育て支援など)をしている 1.63 0.73 .481 -.082 .265 .134 -.037 -.020 .048 -.006 .477 育児について父親にも教育している 2.09 0.77 .440 .111 -.117 .145 .059 .024 -.075 .180 .444 夫婦間のコミュニケーションの大切さ説明を説明している 2.01 0.98 .438 -.032 .061 .017 .039 -.010 -.077 .312 .477 妻の妊娠・出産および育児について問題意識を持たない夫に対して,関 心を持つような声かけや教育を行っている 2.05 0.81 .409 .313 .002 .009 .115 -.040 -.003 .026 .538 第2因子:分娩時の父親役割準備(α=0.89) 2.16 0.94 分娩時に女性が経験する不快な状況についても前もって説明している 2.18 0.99 -.021 .863 .016 -.013 -.016 .038 .037 -.043 .731 立ちあい分娩する場合には,前もってその時に経験するであろう男性の 感情について話している 2.04 0.98 -.059 .822 .092 .008 -.123 .004 .037 -.026 .612 陣痛に対する女性の反応の変化・陣痛による疲労・硬膜外麻酔の影響な どを前もって説明している 2.27 1.01 .115 .812 -.130 -.031 .026 .016 -.051 .034 .671 立ちあい分娩する際には,夫がとる役割について説明している 2.86 0.99 .051 .775 -.038 -.093 .098 -.006 .000 -.049 .599 出産への準備として呼吸法やリラクゼーションの練習を行うよう勧めている 2.22 0.98 -.045 .663 .031 -.035 .040 .065 .016 .070 .583 父親が立ちあう分娩の経験のある男性と話し合いの機会を持つことを勧 めている 1.40 0.72 -.126 .475 .151 .346 -.040 -.107 .031 .027 .496 第3因子:父親意識の促進(α=0.90) 1.59 0.69 様々な父親像について考える時間を設けている 1.42 0.64 -.046 .004 .831 .154 -.146 -.015 .008 .001 .682 父親役割について想像することを勧めている 1.75 0.76 -.080 -.017 .759 -.110 .033 .078 .143 .040 .658 父親になった時の役割について考える時間を設けている 1.54 0.73 .144 .112 .713 .109 -.030 -.038 -.070 -.106 .648 育児に関する両親相互の役割について説明している 1.93 0.87 .109 -.009 .655 -.110 .144 .006 .030 .067 .687 妊娠や子育てについての本を読むことを勧めている 1.59 0.72 -.028 -.019 .560 -.005 .044 .026 -.082 .165 .432 夫婦間で役割調整に関して話し合ってもらうことをしている 2.20 0.90 .040 .077 .552 -.116 .317 -.043 -.041 .054 .650 夫から父親への役割変化について説明している 1.15 0.43 -.013 -.074 .542 .006 .266 .109 .051 -.043 .551 公園などで父子相互作用を観察する機会を作ることを勧めている 1.15 0.43 -.037 -.062 .535 .335 -.119 -.051 -.039 -.036 .382 第4因子:ピアサポート促進(α=0.72) 1.20 0.49 前もってピアの父親と話し合う機会を設けている 1.20 0.48 -.012 -.084 -.041 .690 .033 .126 .144 -.022 .524 母乳栄養の経験のある父親に母乳育児中の父親の心理を語ってもらっている 1.08 0.31 -.002 -.121 -.058 .648 .083 -.092 .041 .006 .345 母乳栄養に対する父親の考えや期待,価値観,ゴールなどについて父親 と話し合いの場を設けている 1.14 0.38 .073 -.023 .024 .638 .062 -.061 -.083 -.015 .407 父親がパパ友を作るための情報提供をしている 1.21 0.51 .000 .052 .163 .489 .008 .131 -.072 -.012 .426 出産前教育において父親同士互いに知り合い,ピアサポートを促進する ために男女別のグループディスカッションを行っている 1.38 0.75 .016 .183 -.061 .467 .041 .010 -.003 .029 .336 第5因子:妻へのサポート促進(α=0.95) 2.60 0.90 妻に対する身体的サポートを提供する必要性を説明している 2.59 0.89 -.088 .026 .023 .097 .996 -.011 -.008 -.052 .923 妻に対する精神的サポートを提供する必要性を説明している 2.61 0.91 -.017 .008 .107 .030 .917 .014 -.015 -.082 .878 第6因子:アタッチメント促進(α=0.87) 2.17 0.77 父親に対して,胎児について想像することを促している 2.12 0.77 -.045 .052 .050 .001 -.047 .880 .017 .038 .837 子どものイメージが高まるような言葉をかけている 2.23 0.77 .114 .019 .076 -.041 .095 .705 -.027 -.022 .728 第7因子:父親のニーズに応じた支援(α=0.80) 2.04 0.86 立ちあい分娩の父親の関わり度,ストレスレベル,ニーズを頻回にアセ スメントしている 1.93 0.84 .066 .029 -.010 .012 -.022 .039 .897 -.053 .871 父親にも焦点を当てたケアプランを計画している 1.79 0.83 .048 .014 .121 .056 -.080 -.014 .488 .110 .426 父親の疲労度や空腹度など個々の父親のニーズを把握した上で妊婦のサ ポートの仕方をアドバイスしている 2.41 0.91 .316 .059 -.088 -.040 .154 -.132 .458 .087 .587 第8因子:夫婦間コミュニケーション促進(α=0.86) 2.08 0.89 夫婦間で感情を共有する機会をつくるよう説明している 2.04 0.88 -.074 .014 .082 -.033 -.123 .031 .048 .936 .821 出産前教育クラスでは,夫婦間のコミュニケーションに重点を置いている 2.01 0.90 .060 .090 .013 .088 .011 -.005 -.031 .643 .635 夫婦間で役割調整に関して話し合ってもらうことをしている 2.20 0.90 .111 .068 .216 -.066 .023 -.032 -.008 .561 .668 回転後の負荷量平方和 11.05 11.39 11.26 6.37 8.53 7.17 6.89 11.04 因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ 第1因子 .638 .586 .436 .521 .449 .618 .682 第2因子 .632 .448 .614 .519 .537 .730 第3因子 .539 .578 .582 .415 .661 第4因子 .175 .262 .350 .466 第5因子 .619 .369 .619 第6因子 .351 .517 第7因子 .534 第8因子
勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援とその関連要因 親にも焦点をあてたケアプランを計画している」など の3項目に対して因子負荷が高く, 父親のニーズに 応じた支援 に関する因子とした。第8因子は「夫婦 間で感情を共有する機会をつくるよう説明している」 「出産前クラスでは夫婦間のコミュニケーションに重 点を置いている」などの3項目に対して因子負荷が高 く, 夫婦間コミュニケーション促進 に関する因子と した。各因子に対するCronbachのα係数は第1因子 がα=0.91,第2因子がα=0.89,第3因子がα=0.90,第 4因子がα=0.72,第5因子がα=0.95,第6因子がα=0.87, 第7因子がα=0.80,第8因子がα=0.86と内的整合性が 確認された。父親役割獲得を促す支援のうち,平均点 が高かった因子は, 妻へのサポート促進支援 (2.60), アタッチメント促進 (2.17), 分娩時の父親役割準 備 (2.16), 父親への支援に対する姿勢 (2.08), 夫 婦間コミュニケーション促進(2.08)であった。 4.父親役割獲得を促す支援の得点と助産師の属性と の関連について 「父親役割獲得を促す支援」から抽出した8つの因子 の得点を算出し,助産師の属性との差を検定した(表 3)。助産師の年齢では,第2因子の 分娩時の父親役 割準備 (p=0.040),第4因子の ピアサポート促進 で 有意な差が認められた(p=0.020)。多重比較では,50代 に対して30代の得点が有意に高かった。助産師経験年 数では,第3因子の 父親意識の促進 以外の因子にお いて有意な差が認められた。多重比較では 21年以上 に対して1∼5年未満の得点が有意に高かった因子は, 第2因子の 分娩時の父親役割準備 (p=0.005)であっ た。21年以上に対して6∼10年の得点が有意に高かっ た因子は,第1因子の 父親への支援に対する姿勢 (p=0.013),第2因子の 分娩時の父親役割準備(p< 0.001),第4因子の ピアサポート促進(p=0.013),第7 因子の 父親のニーズに応じた支援 (p<0.001),第8 因子の 夫婦間コミュニケーション促進 (p=0.037)で あり,21年以上に対して11∼20年の得点が有意に高 かった因子は,第2因子 分娩時の父親役割準備 (p< 0.001),第4因子 ピアサポート促進(p=0.009),第5因 子の 妻へのサポート促進支援 (p=0.01),第6因子の アタッチメント促進 (p=0.049),第8因子の 夫婦間 コミュニケーション促進(p=0.019)であった。 助産師数ではすべての因子で有意な差が認められ, 多重比較では20人以上の得点が高かった。第1因子の 父親への支援に対する姿勢 は1∼9人(p=0.042),10 ∼19人(p=0.014),第2因子の 分娩時の父親役割準備 は10∼19人(p<0.001)、第3因子の 父親意識の促進 は10∼19人(p<0.001),第4因子の ピアサポート促 進 は1∼9人(p=0.018),第5因子の 妻へのサポート 促進支援 は10∼19人(p=0.011),第6因子の アタッ チメント促進 は10∼19人(p<0.014),第7因子の 父親のニーズに応じた支援 は1∼9人(p=0.003),10 ∼19人(p=0.008),第8因子の 夫婦間コミュニケー シ ョ ン 促 進 は10∼19人(p<0.002)で20人 以 上 の 得点が高かった。月間分娩件数では,第7因子の 父 親のニーズに応じた支援 で有意な差が認められた (p=0.006)。多重比較では,50件未満に対して,100件 以上(p=0.020)の得点が有意に高かった。 母親学級の実施では,第2因子の 分娩時の父親役 割準備 (p=0.009),第5因子の 妻へのサポート促進 (p=0.022),第6因子の アタッチメント促進(p=0.024) で有意差が認められ,実施群に対し非実施群の得点 が有意に高かった。両親学級の実施および父親への 育児指導の実施ではすべての因子で有意差が認めら れ,非実施群に対し実施群の得点が有意に高かった。 助産師外来の実施では,第5因子の 妻へのサポート 促進 (p=0.043),第6因子の アタッチメント促進 (p=0.028),第7因子の 父親のニーズに応じた支援 (p=0.009),で有意な差が認められ,非実施群に対し 実施群の得点が有意に高かった。夫立ちあいの実施で は第1因子の 父親への支援に対する姿勢 (p=0.005), 第2因子の 分娩時の父親役割準備 (p<0.001),第3 因子の 父親意識の促進 (p=0.024),第5因子の 妻へ のサポート促進支援 (p=0.041)で有意な差が認めら れ,非実施群に対し,実施群の得点が有意に高かった。
Ⅳ.考 察
1.勤務助産師による父親役割獲得を促す支援におけ る各因子の実施状況について 勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援のうち, 実施率が高かった因子は, 妻へのサポート促進支援 (2.60), アタッチメント促進 (2.17), 分娩時の父親 役割準備(2.16), 父親への支援に対する姿勢(2.08), 夫婦間コミュニケーション促進 (2.08)であった。こ れらは妊婦健康診査や両親学級においてケアの提供 がしやすい因子である。父親が妊婦健診に付き添っ た経験があるとの回答は74.6%に上ること,父親学級 や両親学級への参加は50.6%,父親の出産への立ち表 3 父親役割獲得を促す支援と助産師の属性による比較 属 性 n 因 子 第 1因 子 第 2因 子 第 3因 子 第 4因 子 第 5因 子 第 6因 子 第 7因 子 第 8因 年 齢 20 代( ∼ 29 ) 11 4 18 .3 4 5. 71 13 .0 4 4. 49 12 .9 3 4. 12 6. 34 1. 76 5. 15 1. 78 4. 24 1. 25 6. 33 2. 21 6. 26 2. 11 30 代( 30 ∼ 39 ) 14 1 19 .0 2 6. 29 13 .8 2 4. 37 13 .2 4 4. 36 6. 90 2. 04 * 5. 27 1. 67 4. 39 1. 52 6. 37 2. 19 6. 36 2. 28 40 代( 40 ∼ 49 ) 12 1 18 .5 2 6. 16 12 .6 5 4. 92 * * 13 .9 3 5. 07 6. 47 1. 86 5. 22 1. 77 4. 47 1. 46 5. 91 2. 20 6. 31 2. 44 50 代 以 上( 50 ∼ ) 4 6 16 .9 1 5. 80 11 .0 7 3. 88 13 .3 3 4. 43 6. 04 1. 60 5. 09 1. 92 4. 17 1. 62 5. 46 1. 87 5. 74 2. 05 F 値 1. 42 5 4. 58 4 * * 1. 00 8 3. 30 7 * 0. 17 5 0. 78 0 2. 80 4 * 0. 93 分 娩 介 助 件 数 1∼ 10 0 12 8 5. 80 0. 51 4. 45 0. 39 4. 24 0. 37 1. 81 0. 16 1. 86 0. 16 1. 30 0. 11 2. 19 0. 19 2. 20 0. 19 10 1∼ 30 0 13 6 6. 30 0. 54 4. 60 0. 39 4. 69 0. 40 2. 06 0. 18 1. 59 0. 14 1. 56 0. 13 2. 29 0. 20 2. 42 0. 21 30 1∼ 50 0 5 7 6. 21 0. 82 4. 29 0. 57 4. 34 0. 58 2. 20 0. 29 1. 50 0. 20 1. 28 0. 17 2. 17 0. 29 2. 02 0. 27 50 1∼ 10 00 5 1 5. 28 0. 74 4. 63 0. 65 4. 60 0. 64 1. 34 0. 19 1. 94 0. 27 1. 48 0. 21 1. 74 0. 24 1. 92 0. 27 10 00 以 上 9 7. 37 2. 46 5. 73 1. 91 6. 05 2. 02 2. 49 0. 83 2. 03 0. 68 1. 48 0. 49 2. 37 0. 79 2. 92 0. 97 F 値 0. 95 4 1. 60 9 1. 19 4 2. 00 3 1. 77 2. 43 3 * 1. 86 1 1. 61 助 産 師 経 験 年 数 1∼ 5年 10 5 18 .4 6 5. 66 12 .9 7 4. 65 ** 12 .9 8 3. 99 6. 47 1. 83 5. 30 1. 78 4. 29 1. 21 6. 23 2. 06 6. 16 2. 02 6∼ 10 年 9 0 19 .6 2 6. 20 13 .9 2 4. 03 13 .5 2 4. 51 6. 83 2. 03 5. 24 1. 64 4. 43 1. 61 6. 80 2. 32 6. 57 2. 16 11 ∼ 20 年 13 1 18 .8 6 6. 36 * 13 .8 1 4. 83 ** * 14 .1 8 4. 98 6. 79 2. 00 * 5. 45 1. 63 4. 57 1. 48 6. 05 2. 11 * ** 6. 57 2. 49 21 年 ∼ 8 8 16 .8 4 5. 66 10 .8 1 4. 09 ** * 12 .5 9 4. 40 5. 97 1. 50 * * 4. 69 1. 91 * 4. 05 1. 45 * 5. 47 2. 05 5. 65 2. 17 F 値 3. 43 9 * 9. 78 9 * ** 2. 54 9 4. 30 8 * * 3. 56 3 * 2. 52 3 5. 94 * * 3. 66 助 産 師 数 1∼ 9人 4 4 17 .0 5 4. 56 12 .2 3 3. 98 12 .7 3 3. 15 5. 93 1. 23 5. 09 1. 58 4. 07 1. 45 5. 34 2. 01 5. 82 1. 77 10 ∼ 19 人 14 9 17 .6 1 5. 93 * 11 .9 5 4. 27 12 .3 3 4. 20 6. 38 1. 86 * 4. 90 1. 82 4. 12 1. 44 5. 82 2. 13 * * 5. 82 2. 25 20 人 以 上 21 9 19 .4 2 6. 30 13 .8 4 4. 72 * ** 14 .1 9 4. 85 * ** 6. 79 1. 99 5. 43 1. 69 * 4. 55 1. 41 * 6. 51 2. 20 * * 6. 63 2. 29 F 値 5. 51 5 ** 8. 56 5 ** * 8. 20 9 * ** 4. 72 2 * 4. 33 3 * 4. 93 6 * * 7. 99 1 ** * 6. 87 月 間 分 娩 件 数 1∼ 49 19 8 17 .9 2 6. 12 12 .4 9 4. 64 12 .9 1 4. 39 6. 49 1. 97 5. 08 1. 82 4. 25 1. 40 5. 82 2. 25 6. 04 2. 25 50 ∼ 99 17 4 18 .8 4 5. 90 13 .4 4 4. 47 13 .7 5 4. 54 6. 52 1. 82 5. 36 1. 63 4. 53 1. 46 6. 36 2. 10 * 6. 37 2. 23 10 0以 上 3 6 20 .0 3 6. 66 13 .6 7 4. 56 13 .6 1 4. 95 6. 89 1. 89 5. 22 1. 85 4. 03 1. 48 6. 89 1. 95 6. 61 2. 31 F 値 2. 29 8 2. 39 2 1. 67 9 .6 70 1. 19 6 2. 86 1 5. 19 7 ** 1. 62 母 親 学 級 実 施 し て い る 33 8 18 .2 0 5. 97 12 .6 8 4. 53 13 .1 5 4. 54 6. 57 1. 94 5. 11 1. 75 4. 27 1. 45 6. 05 2. 19 6. 17 2. 25 実 施 し て い な い 8 4 19 .5 2 6. 34 14 .1 4 4. 58 14 .2 0 4. 38 6. 40 1. 67 5. 60 1. 72 4. 67 1. 38 6. 45 2. 12 6. 60 2. 27 t値 1. 79 5 2. 63 6 * * 1. 90 7 -.6 97 2. 30 1 * 2. 26 9* 1. 52 6 1. 55 父 親 学 級 実 施 し て い る 5 15 .2 0 6. 53 11 .4 0 5. 41 10 .8 0 4. 66 6. 60 2. 51 4. 40 2. 61 4. 00 2. 45 5. 60 2. 88 4. 60 1. 82 実 施 し て い な い 41 7 18 .5 0 6. 05 12 .9 9 4. 57 13 .3 9 4. 52 6. 53 1. 88 5. 21 1. 74 4. 35 1. 43 6. 13 2. 18 6. 27 2. 26 t値 1. 21 2 .7 74 1. 27 5 -.0 80 1. 03 3 .5 42 .5 44 1. 65 両 親 学 級 実 施 し て い る 26 3 19 .8 3 5. 96 14 .5 6 4. 30 14 .4 1 4. 57 6. 95 1. 99 5. 68 1. 60 4. 67 1. 38 6. 67 2. 15 6. 98 2. 19 実 施 し て い な い 15 9 16 .2 0 5. 55 10 .3 6 3. 75 11 .6 4 3. 89 5. 85 1. 48 4. 41 1. 71 3. 81 1. 39 5. 24 1. 93 5. 04 1. 81 t値 -6 .2 27 * ** -1 0. 18 8 ** * -6 .3 81 * ** -6 .0 33 * ** -7 .7 44 * ** -6 .1 99 ** * -6 .8 56 * ** -9 .3 夫 へ の 育 児 指 導 実 施 し て い る 13 1 20 .9 4 5. 67 14 .2 8 4. 38 14 .7 9 4. 64 7. 21 2. 20 5. 69 1. 70 4. 69 1. 47 6. 65 2. 08 7. 25 2. 24 実 施 し て い な い 29 1 17 .3 5 5. 91 12 .3 8 4. 55 12 .7 2 4. 33 6. 23 1. 64 4. 99 1. 73 4. 20 1. 41 5. 89 2. 19 5. 80 2. 12 t値 5. 84 5 * ** 4. 01 3 ** * 4. 45 8 * ** 5. 12 1 * ** 3. 86 7 * ** 3. 27 0 ** 3. 33 1 ** 6. 37 助 産 師 外 来 実 施 し て い る 30 7 18 .7 6. 4 13 .2 4. 6 13 .6 4. 6 6. 6 1. 9 5. 3 1. 7 4. 4 1. 4 6. 3 2. 2 6. 4 2. 3 実 施 し て い な い 11 5 17 .9 5. 2 12 .4 4. 4 12 .8 4. 1 6. 4 1. 8 4. 9 1. 8 4. 1 1. 5 5. 7 2. 0 5. 9 2. 1 t値 1. 27 1 1. 53 2 1. 66 4 1. 06 2 2. 03 3 * 2. 21 0 * 2. 66 1 ** 1. 75 夫 立 ち あ い 分 娩 実 施 し て い る 40 5 18 .6 3 6. 00 13 .1 8 4. 50 13 .4 6 4. 55 6. 57 1. 88 5. 24 1. 74 4. 36 1. 44 6. 17 2. 16 6. 29 2. 25 実 施 し て い な い 1 7 14 .4 1 6. 35 8. 00 3. 55 10 .9 4 3. 13 5. 71 1. 99 4. 35 1. 84 4. 00 1. 62 5. 12 2. 57 5. 29 2. 34 t値 2. 83 8 * * 4. 69 0 ** * 2. 26 4 * 1. 85 2 2. 05 3 * 1. 01 5 1. 95 6 1. 79 ** *: p< 0. 00 1, * *: p< 0. 01 , * : p< 0. 05 , 多 重 比 較 : B on fe rr on i
勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援とその関連要因 あい経験は74.6%であることから(高石・穂狩・中里 他,2011, pp.7-8),妊婦健康診査に付き添う父親や両 親学級に参加する父親の増加,夫立ちあい出産の増加 により,助産師が父親と接する機会が増えている。よ って,助産師が父親に接する機会が増加することに より,父親役割獲得を促す支援を実施しやすくなった のではないかと言える。出産準備教育に参加した父親 は,育児や家事の実施意欲が有意に高い(塩澤・石田 ・萩,2007, p.585)ことや,永森・堀内・伊藤(2005, pp.28-38)が男性から父親になるための出産準備クラ スの有効性を述べていることからも,出産準備教育に 参加を促す意義は高いといえる。また,社会的にも父 親の育児参加が推奨され(厚生労働省,2009)たことや、 Family-Centered Care(FCC)の考え方が浸透してきて いることも、周産期にケアを提供する助産師自身の家 族ケアへの意識が高まった要因といえる。 一方,父親役割獲得を促す支援のうち比較的実施が 低かった因子は, ピアサポート促進 , 父親意識の促 進 であった。中でも実施率が低かった項目は「母乳 栄養の経験のある父親に母乳育児中の父親の心理を語 ってもらっている」「母乳栄養に対する父親の考えや 期待,価値観,ゴール等について父親と話し合いの 場を設けている」「前もってピアの父親と話し合う機 会を設けている」「父親がパパ友を作るための情報提 供をしている」であった。母親が母乳育児を円滑に行 っていくためには,家族をはじめとする周囲のサポー トが重要である(枡本・梅野・軽部,2011, pp.735-736)。 また,多くの父親が母乳育児を支えることが自分の勤 めだと認識しており,両親学級などで助産師の指導を 受けることによって深まっていたことから(枡本・梅 野・軽部,2011, pp.735-736),母乳育児に関する知識 や方法などは母親のみならず,父親も対象として実施 することが,母親へのサポートや育児の協力に対する 意識を高めることに繋がるといえる。父親に対し,積 極的に母乳育児に関する知識や方法について実施して いく必要性が示唆された。 森田・森・石井(2010, p.429)は,親となる男性が 産後の父親役割行動を考える契機となった妻の妊娠期 における体験は,父親役割モデルとの出会いや想起に より自分なりの理想的な父親像について考えることが 明らかになっている。その体験を持つためには,今回 実施率が低かった,前もってピアの父親と話し合う機 会の設定やパパ友を作るための情報提供を行うことが 父親役割適応を促すことに繋がると言える。近年の家 族形態の中では育児支援における中心的存在は夫であ り,育児困難感を軽減させるために重要なキーパーソ ンである。しかし,出産後父親になったという事実に ついて肯定的に捉えているものはストレスが低く,父 親役割遂行に対して消極的な態度をとっている者は ストレスが高い傾向にある(岩田・森・前原,1998, p.32)。夫が精神的に不調,夫がいらいらしていると 感じている母親はうつ得点も高かったという報告もあ る(藤岡・亀崎・河本他,2014, p.568)。また,父親は 疎外感や戸惑いを感じながらも,妻を支える強い自分 しか出すことができなくなってしまうとの報告もある (Longworth, kingdon, 2011, pp588-594)。夫も父親役 割獲得過程に心身の葛藤が生じる可能性や母親の心理 にも影響を及ぼす可能性がある。父親役割適応を促す ためには,まず助産師が父親を母親のサポート役と捉 えるのではなく,父親自身も親移行の当事者であると 認識することが必要である。そのうえで,父親が子供 の誕生や父親役割をどのように捉えているかを査定し, 支援することが重要である。 2.勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援におけ る各因子の関連要因について 助産師経験年数が21年以上に比べ,それ以下の経 験年数の助産師が父親役割獲得へのケアを実施してい た。本研究では職位を調査していない。21年以上には 管理職の助産師も混在していると考えられる。 勤務する施設の助産師数が20名以上の助産師は, 父親に対する支援を実施している傾向にあったことか ら,父親役割獲得を促す支援の実施には助産師数も関 連していることが明らかになった。現在,助産師を取 り巻く課題として助産師の偏在が挙げられている。福 井(2012, pp.236-239)は助産師の偏在により,助産実 践の対象者や提供の場の多様化を及ぼし,助産ケアの 提供を難しくさせていると述べている。また,本来な ら健康モデルであるべき妊娠・出産・育児が医学モデ ルに組み込まれ,医師の指示のもとに助産業務を展開 しているという場の環境にも課題がある(福井,2012, pp.236-239)。そのため,助産師を取り巻く環境により 本来助産師の義務である健康教育ともいうべき妊娠期 から育児期にかけての家族役割獲得を促す支援を行う ことが困難な状況が考えられる。助産師数は,助産ケ アにも影響を与えている可能性が示唆された。 両親学級や父親への育児指導を実施していると回答 した助産師は,父親役割獲得を促す支援を実施してい
のは31.0%に留まったことから,父親役割獲得を促す ためには,まず助産師が父親自身も親移行の当事者で あることを認識すること,そのうえで父親同士の交流 の場の提供や,父親になる夫に対するクラス運営・立 ち会い出産についてシステマティックに導入していく ことが有用であることが示唆された。
Ⅴ.本研究の限界と今後の課題
研究協力者の助産師の年齢は20代が27%,30代が 33.4%,40代が28.7%,50代以上が10.9%であった。研 究協力者の集団は,全国の年齢階層別助産師就業者 数の20代が22.5%、30代が30.1%、40代が26.3%、50 代が15.2%と比較すると近似している。しかしなが ら,対象は北海道,東北,北陸,関東甲信越に勤務す る助産師であり、地域に偏りがあるという限界がある。 また,本研究における有効回答数は422であることか ら,全国の病院・診療所に勤務している助産師数のう ち,1.7%のデータに過ぎない。しかし,勤務助産師に よる父親役割獲得を促す支援の実態と関連要因につい ての調査は初めてであるため,助産師の基礎教育およ び専門職教育における教育の必要性や家族ケアの視点 でのケアの充実のための発展に寄与することができた のではないかと考える。Ⅵ.結 論
勤務助産師による父親の役割獲得を促す支援につ いては 父親への支援に対する姿勢 分娩時の父親役 割準備 父親意識の促進 ピアサポート促進 妻へ のサポート促進支援 アタッチメント促進 父親の ニーズに応じた支援 夫婦間コミュニケーション促 進 の8因子が抽出された。各因子に対するCronbach のα係数は0.72∼0.95であった。実施率が高かった 因子は 妻へのサポート促進支援 , アタッチメント 促進 , 分娩時の父親役割準備 , 父親への支援に対 する姿勢 , 夫婦間コミュニケーション促進 であっ た。父親役割獲得を促す支援は,助産師経験年数や助 産師数,両親学級,夫立ちあい分娩,父親への育児指 導の有無により有意な差が認められた。父親役割獲得 を促すためには,まず助産師が父親自身も親移行の当 事者であることを認識すること,そのうえでシステマ あることが示唆された。 謝 辞 本研究にご協力いただきました病院看護部長はじめ 助産師の皆様に深く感謝致します。 文 献 青野篤子(2009).「男性の子育て」支援の現状と課題.福山 大学こころの健康相談室紀要,3,9-14. Bowlby J. (1988)/二木武監訳(1993).母と子のアタッチ メント 心の安全地帯.pp.4-16.東京:医歯薬出版社. 藤岡奈美,亀崎明子,河本恵理,塩道敦子,坪井陽子,藤 井陽子(2014).初産婦が産褥早期に育児困難感を抱 く要因―出産後から5日間の短期縦断調査より―.母 性衛生,54(4),563-570. 福井トシ子(2012).助産師業務要覧.pp.236-239,東京: 日本看護協会出版会. 法橋尚宏(2010).新しい家族看護学.理論・実践・研究. pp.67-71,東京:メジカルフレンド社. イクメンプロジェクト http://ikumen-project.jp/project/ about.php [2013-4-15] 岩田裕子,森恵美(2004).父親役割への適応を促す看護 援助に関する文献研究.千葉看護学会誌,10(1),49-55. 岩田裕子,森恵美,前原澄子(1998).父親役割への適応 における父親のストレスとその関連要因.日本看護科 学会誌,18(3),21-33. 国際助産師連盟 http://www.nurse.or.jp/nursing/international/icm/ definition/pdf/kihon/kj-02.pdf [2013-4-15]Longworth, H.L., and Kingdon, C.K. (2011). Fathers in the birth room: What are they expecting and experiencing?. A phenomenological study. Midwifery, 27(5), 588-594. 村上由希子,内山忍,川越展美,山本聖子,平塚志保,良 村貞子他(1995).妻の妊娠期における父性性(第1報). 母性衛生,36(2),250-258. 森田亜希子,森恵美,石井邦子(2010).親となる男性が 産後の父親役割行動を考える契機となった妻の妊娠期 における体験.母性衛生,51(2),425-432. 村上明美,平澤美恵子,滝沢美津子,新田真弓,村上睦子 (2002).「日本の助産婦が持つべき実践能力と責任範 囲」に関する助産婦の認識(中)「産褥期の母子のケア
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