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越前・能登・佐渡の河川で採集されたコエビ類

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報告

越前・能登・佐渡の河川で採集されたコエビ類

Caridean shrimps collected from rivers in Echizen, Noto and Sado, Japan

丸山智朗

1

Tomoaki Maruyama

はじめに 筆者は,山口県から福井県若狭までの本州日本海 側の両側回遊性コエビ類の分布について昨年報告し た(丸山,2016).2016年に福井県越前および石川 県能登において同様の調査を行ったところ,さらな る知見が得られたため,これまでの調査記録が少な い新潟県佐渡で2014年に行った調査の結果ととも に,分布記録としてここに報告する. 材料と方法 2016年8月31日に福井県越前(Fig. 1)の4河川 (大味川,一光川,三本木川,高須川)(Fig. 2)で, 同年9月1日から2日に石川県能登(Fig. 1)の9河 川(七海川,西二又川,谷坂川,塚田川,渋田川, 珠洲大谷川,笹波川,折戸川,狼煙川)(Fig. 3)で, 2014年8月18日から20日に新潟県佐渡(Fig. 1)の 12河川(矢柄川,黒姫川,梅津川,久知川,河崎 川,荒町川,石田川,真野川,小川内川,西三川 川,小比叡川,羽茂川)(Fig. 4)で,エビ類の採集 調査を行った.なお,谷坂川は今井(2012)では桶 滝川とされているが,国土数値情報に従い,本報で は谷坂川とした.これらの河川は,両側回遊性コエ ビ類が高密度に生息する場合が多い,中小規模の河 川であり,その中流域や下流域の,河岸に植物が繁 茂する場所で調査を行った. 採集には主にD型フレームネット(網目3 mm) を用い,植物が水流中に浸漬している部分から足で 網中へと追い込んだり,浸漬している植物を網で掬 い上げたりして採集した.定量性よりも,多数生息 する種を漏らさず確認することを優先し,河川の規 模や植物の浸漬状況に応じて各河川に15~90分程 度を費やした.また,能登の一部の河川では,夜行 性であるテナガエビ類が活発になる夜間に川面をラ イトで照らし,成体のテナガエビ類を探した.これ らの調査は筆者1名または筆者を含む2名で行った. 採集した甲殻十脚類は浜野ら(2000)に従って現地 で種を同定した.採集されたエビの一部は,70% エタノール液浸標本とし,頭胸甲長(CL)や額角

歯式(Rostral teeth formula, RTF)を計測した.頭胸

甲長は,浜野ら(2000)と同様に,眼窩後縁から頭 胸甲後端までとした.額角歯式は,ミゾレヌマエビ とスジエビでは「頭胸甲上+額角上縁基部+額角上 縁先端部/額角下縁」,これら以外の種では「頭胸 甲上+額角上縁/額角下縁」と表した.頭胸甲上と 額角上縁の境界については,鋸歯の付け根の前側が 眼窩後縁直上より後ろにあれば頭胸甲上,前にあれ ば額角上縁とした.今回採集された標本および前報 「本州日本海側における両側回遊性コエビ類の分布 について」において扱った標本は,神奈川県立生命 の星・地球博物館に登録した(KPM-NH 2677–2779). 結果と考察 越前で4種,能登で7種,佐渡で2種のコエビ類 1 東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学 専攻 〒113–8657 東京都文京区弥生1–1–1

Department of Ecosystem Studies, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo, 1–1–1 Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo 113–8657, Japan E-mail: [email protected]

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が採集されたほか,能登と佐渡では外来種であるア

メリカザリガニが採集された(Table 1).また,夜

間観察によりテナガエビ類の成体を見つけることは できなかった.

ヌマエビ科 Atyidae De Haan, 1849

ヌマエビ Paratya compressa (De Haan, 1844) 1. 大味川(4個体,5.6–10.6 mm CL, KPM-NH 2752– 2755) 2. 一光川(1個体,3.1 mm CL, KPM-NH 2751) 19. 荒町川(2個体,3.4, 6.7 mm CL, KPM-NH 2756–2757) 今回の調査では,3地域13河川で確認された.個 体数は多く,抱卵個体も含まれており,これらの地 域では再生産していると考えられる.北陸地域のヌ マエビの形態については今井(2012)によって議論 されており,今回採集された個体の額角歯式は記載 しないが,今井(2012)と矛盾する点はなかった. 新潟県(2015)によれば,佐渡島に生息するヌマエ ビ属エビ類は池田(1999)の「北陸型」(大卵型) であるとされているが,筆者の調査により実際に採

Fig. 1. Locations of sampling areas.

Fig. 2. Rivers surveyed in Echizen, Fukui Prefecture,

Japan. 1 Ohmi River; 2 Ikari River; 3 Sanbongi River; 4 Takasu River.

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集されたのは小卵型であるヌマエビのみであり,大 卵型であるヌカエビParatya improvisaは採集されな かった.なお,新潟県(2015)の口絵にミゾレヌマ エビとして掲載されている写真は,頭胸甲に前方上 から後方下へ向かう斜行暗色斑があることから明ら かにヌマエビであり(ミゾレヌマエビでは,逆さ 「ハ」の字状暗色斑がある)(番匠おさかな館の図 鑑;http://michinoeki-yayoi.com/osakanakan/zukan/top/ zukantop.htm),このレッドリストの編集にあたって は両種が混同されている可能性が高く,内容の正確 性には疑問がある.本種の分布については,東北大 学大学院農学研究科の池田実准教授らが,集団遺伝 構造とともに詳細な検討を行うことを予定している (池田,私信)ため,本報では扱わないこととする.

ミゾレヌマエビ Caridina leucosticta Stimpson, 1860 3. 三本木川(3個体,3.2–4.5 mm CL, RTF 2–3+ 16–20+1–2/8–10, KPM-NH 2758–2760) 19. 荒町川(3個体,4.7–8.1 mm CL, RTF 2–3+ 18–24+1–2/9–17, KPM-NH 2761–2763) 今回の調査では,3地域14河川で確認された.個 体数は多く,抱卵個体も含まれており,これらの地 域 で は 再 生 産 し て い る と 考 え ら れ る. 今 井 ら (2015)は本種とツノナガヌマエビが酷似しており, 同定するには肛門前棘の有無を確認する必要がある

Fig. 4. Rivers surveyed in Sado, Niigata Prefecture,

Japan. 14 Yagara River; 15 Kurohime River; 16 Umezu River; 17 Kuchi River; 18 Kawasaki River; 19 Aramachi River; 20 Ishida River; 21 Mano River; 22 Ogohchi River; 23 Nishimikawa River; 24 Kobie River; 25 Hamochi River.

Fig. 3. Rivers surveyed in Noto, Ishikawa Prefecture, Japan. 5 Hitsumi River; 6 Nishifutamata River; 7 Tanzaka River; 8

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ことを指摘したが,今回標本とした6個体について は,肛門前棘はなかった.

トゲナシヌマエビ 

Caridina typus H. Milne Edwards, 1837

5. 七海川(1個体,8.0 mm CL, RTF 0+0/2, KPM-NH 2765) 7. 谷坂川(11個体,2.9–8.8 mm CL, RTF 0+0/0– 2, KPM-NH 2767–2777) 11. 笹波川(1個体,2.7 mm CL, RTF 0+0/1, KPM-NH 2766) 今回の調査では,能登の3河川で採集された.七 海川と笹波川からは1個体のみ採集され,谷坂川から は数十個体が確認された.笹波川は本種の新たな北 限記録地となる.今井(2012)が今回とほぼ同じ方 法で2012年7月に能登の28河川を調査した際は,谷 坂川から1個体のみが採集されたのみであり,個体 数・確認河川数ともに今回の方が多いことから,能 登地域においてはここ4年で増加した可能性がある.

ヒメヌマエビ Caridina serratirostris de Man, 1892 5. 七海川(1個体,4.8 mm CL, RTF 7+14/4, KPM-NH 2764) 今回の調査では,能登の七海川と塚田川から1個 体ずつ採集された.紛失したため標本は残っていな いが,塚田川は本種の新たな北限生息地となる.今 井(2012)が今回とほぼ同じ方法で2012年7月に能 登の28河川を調査した際は,仁岸川においてのみ 6個体採集され,塚田川では採集されず,七海川は 調査されていない.確認された河川数は今回の調査 の方が多いが,個体数は少なかったことから,今井 (2012)との比較は難しい. Sasanami R. Sep. 2 ○ ○ △ ○ Orito R. Sep. 2 ● ● ○ △ △ Noroshi R. Sep. 2 ○ ● △ Sado, Niigata (2014) Yagara R. Aug. 18 Kurohime R. Aug. 18 Umezu R. Aug. 19 Kuchi R. Aug. 19 ○ Kawasaki R. Aug. 19 ● Aramachi R. Aug. 18 ● ● ○ Ishida R. Aug. 19 Mano R. Aug. 19 ● Ogohchi R. Aug. 19 ● ● Nishimikawa R. Aug. 20 ● ● Kobie R. Aug. 20 ○ Hamochi R. Aug. 20

●=including ovigerous females; ○=including adults; △=juveniles only; P. c.=Paratya compressa; C. l.=Caridina leucosticta; C.s.=C. serratirostris; C. t.=C. typus; P. p.=Palaemon paucidens; M. f.=Macrobrachium formosense; M. j.=M. japonicum; P. c.=Procambarus clarkii.

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テナガエビ科 Palaemonidae Rafinesque, 1815

ミナミテナガエビ 

Macrobrachium formosense Bate, 1868

1. 大味川(2個体,4.6, 5.4 mm CL, RTF 2+ 9–10/3, KPM-NH 2735–2736) 2. 一光川(5個体,3.8–5.8 mm CL, RTF 2+8–10/2– 3, KPM-NH 2730–2734) 3. 三本木川(4個体,5.4–7.0 mm CL, RTF 2+ 9–10/2–3, KPM-NH 2737–2740) 5. 七海川(3個体,7.0–8.8 mm CL, RTF 2–3+9/3, KPM-NH 2747–2749) 10. 珠 洲 大 谷 川(1個体,7.7 mm CL, RTF 3+8/3, KPM-NH 2741) 12. 折戸川(1個体,6.0 mm CL, RTF 2+10/3, KPM-NH 2750) 13. 狼煙川(5個体,6.2–9.0 mm CL, RTF 2+ 9–10/3, KPM-NH 2742–2746)(Fig. 5) 今回の調査では,越前と能登の9河川で確認され た.いずれも未成体のみであったが,個体数は少な くなく,30個体ほど確認された河川も複数あった. これらは,第3腹節背部に明瞭な暗色橫帯がなく, 頭胸甲側面に明瞭な2列の太い横縞(Fig. 5の矢印) があることから,本種であると同定された.ヒラテ テナガエビと比較すると,流れの緩いところに多 く,体サイズが大きい傾向があった. これまで本種の北限は隠岐島後(佐藤・加藤, 1996),日本海側東限は福井県菅浜川(丸山,2016) であったが,能登半島はこれらよりも北東に位置す るため,未成体の記録としては,折戸川が新たな北 限,狼煙川(Fig. 5)が新たな日本海側東限となる. ヒラテテナガエビ 

Macrobrachium japonicum (De Haan, 1849)

1. 大味川(5個体,2.5–3.8 mm CL, RTF 1–2+ 9–10/2–3, KPM-NH 2719–2723) 2. 一光川(3個体,3.7–5.0 mm CL, RTF 2–3+9/2– 3, KPM-NH 2716–2718) 3. 三本木川(1個体,3.5 mm CL, RTF2+8/2, KPM-NH 2724) 8. 塚田川(2個体,4.3, 4.4 mm CL, RTF2–3+ 8–9/2–3, KPM-NH 2726–2727) 10. 珠洲大谷川(1個体,4.2 mm CL, RTF3+9/2, KPM-NH 2725) 12. 折戸川(2個体,3.5–4.2 mm CL, RTF2–3+ 8–9/2–3, KPM-NH 2728–2729)(Fig. 6) 今回の調査では,越前と能登の6河川で採集され たが,いずれも未成体のみであった.越前の河川で は多く,高須川を除いて各河川数十個体ずつ採集さ れたが,能登の河川では少なく,各河川0~2個体 ずつ採集された.これらは,第3腹節背部に明瞭な 暗色橫帯(Fig. 6の矢印)があり,頭胸甲側面に暗 色の横縞がないことから,浜野ら(2000)に従い本 種であると同定された.ミナミテナガエビと比較す ると,流れの速いところに多く,体サイズが小さい 傾向があった. これまで本種の北限は隠岐島前(桑原,2014),

Fig. 5. Juvenile Macrobrachium formosense, collected from Noroshi River, Ishikawa Prefecture, Japan. The black arrows represent two dark transverse bands, which are the basis of identification.

(6)

日本海側東限は京都府野原川(丸山,2016)であっ たが,能登半島はこれらよりも北東に位置するた め,未成体の記録としては,折戸川(Fig. 6)が新 たな北限・日本海側東限となる. 本種の額角歯式は,上田(1961)や林(2000)に よると,3–5+?(合計10–13)/1–3であるが,今回採 集された14個体(すべて未成体)については頭胸 甲眼窩後方の歯数が1–3であり,明らかに異なって いる.一方,全てが成体である丸山(2016)の6個 体では,眼窩後方の歯数が3–5の範囲にある.両地 域は隣接しているため,地域変異とは考えにくく, 大きく異なるのは体サイズのみであることを考慮す ると,ヒラテテナガエビでは成長に伴って額角上縁 歯が眼窩後方へと移動するものと考えられる. また,丸山(2017)は多数のコンジンテナガエビ M. larやザラテテナガエビM. australeの未成体を報 告したが,これらの眼窩後方歯数についても,既往 文献よりも少ないことを述べている.さらに,丸山 (2016) の 野 原 川 産 ミナミテ ナ ガ エ ビ 最 小 個 体 (2.7 mm CL)の眼窩後方歯数は1であり,通常より 少ない.以上から,未成体においては眼窩後方の歯 数が少なく,成長に伴って額角上縁歯が眼窩後方へ と移動するのは,テナガエビ属に共通する特徴であ る可能性がある.テナガエビ属エビ類の同定におい て額角歯式は重視されているが,今後はこのような 傾向を念頭に置く必要があると考えられる.ただし, 合計歯数は未成体でも成体でも変わらないため,未 成体の同定にも使いやすい形質であるといえる. なお,豊田・関(2014)では本種の額角歯式が 4–5+5–7/2–4とされているが,これは既往研究や実 態と合わないため,誤植であると思われる. スジエビ Palaemon paucidens De Haan, 1844

能登の3河川から確認されたが,今井(2012)が 詳述しているため標本は作製しなかった.これらは 今井(2012)と同様,両側回遊性であるBタイプと 考えられた.なお,河川調査の合間に佐渡島の溜池 (佐渡市栗野江830番地の真南)で調査を行った際, 陸封性であるAタイプと考えられるスジエビが採集 された(2個体,7.2, 12.4 mm CL, RTF 1+4+1/1–2, KPM-NH 2778–2779). アメリカザリガニ科 Cambaridae Hobbs, 1942 アメリカザリガニ 

Procambarus clarkii (Girard, 1852)

能登の塚田川と佐渡の荒町川から採集されたが, 採集された個体数は10以下であり,コエビ類と比 較して少なかった.本種は緊急対策外来種に指定さ れており,今後増加する可能性もあることから,推 移を見守る必要がある. 総合考察 ミ ナ ミ テ ナ ガ エ ビ と ヒ ラ テ テ ナ ガ エ ビ は 今 井

Fig. 6. Juvenile Macrobrachium japonicum, collected from Orito River, Ishikawa Prefecture, Japan. The white arrow

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(2012)が能登の28河川を調査した際には採集され ていないため,ここ4年間で新たに出現した種と考 えられる.今井(2012)はこれら2種が出現する可 能性に言及していたが,事実その通りになった.成 体が確認されなかった理由は不明であるが,丸山 (2016)の調査時には夜間に容易に成体が確認され たことから,能登には成体が生息していなかった可 能性が高い.それでも未成体が多数確認されたの は,対馬海流によって西方から幼生が運ばれてきた ためであると考えられる.本種の低温耐性は知られ ていないが,福井県菅浜川では越冬個体が確認され た(丸山,2016)ため,気候条件が近いと考えられ る越前や能登地域においても今後成体が確認される 可能性は高い.トゲナシヌマエビやヒメヌマエビも 含め,最近北陸において確認されるようになった種 は多いため,今後も調査を行うことで,両側回遊種 が生息域を拡大する過程を追えるかもしれない.こ れらの生息域拡大には,近年の地球温暖化による水 温上昇が影響している可能性があるが,それについ て検証するためには,各種の低水温耐性を明らかに する必要がある. 今回の調査や今井(2012)の調査は7月下旬~ 9月初旬の夏季に行われたものである.今井(2012) は出現したトゲナシヌマエビやヒメヌマエビを,そ の体長と抱卵個体の出現から越冬個体と考えた.し かし,ヌカエビParatya improvisa(今井,2014)や ミ ナ ミ ヌ マ エ ビNeocaridina denticulata(丹羽・浜 野,1990)では5月や6月に着底した当年群が8月 には成熟し抱卵すること,少なくともトゲナシヌマ エビでは幼生分散が盛んであること(Fujita et al., 2016),琉球列島では3月からヒメヌマエビ・トゲ ナシヌマエビの抱卵個体が見られること(諸喜田, 1979)から,3月に南方で孵化した幼生が分散して 能登に至り,4月頃着底して成長し,7月下旬には 20 mm前後に達して抱卵したという可能性も考えら れる.トゲナシヌマエビ・ヒメヌマエビは水温3℃ 程度では死滅する(丸山,未発表)ため,積雪の多 い能登半島では越冬できない可能性が高いことも考 慮すると,能登半島の個体は死滅回遊によるもので はないかと考えられる. 対馬海流によって沿岸生物や両側回遊生物の卵稚 仔や幼生が分散し,分布を拡大したり死滅回遊した りする例は多数知られている(例えばYamano et al., 2011; 本尾,2011など).越前や佐渡も対馬海流の 流路沿いにあり,能登と同様に多くの両側回遊種の 生息が期待されたが,その種数は能登と比較し少な かった.越前での確認種数が少なかった理由として は,調査河川数が少なかったことに加え,日本海に 突き出た半島である能登と比較し対馬海流の影響が 弱いことが考えられる.一方佐渡での種数が少な かった理由としては,より北方にあるため分散幼生 が辿り着きにくいことや,調査年が異なっていたこ とが考えられる. 能登の5河川(西二又川,谷坂川,塚田川,珠洲

Table 2. Comparison of caridean shrimps collected by Imai (2012) and the present survey.

River Year P. c. C. l. C. s. C. t. P. p. M. n. M. f. M. j. Nishifutamata R. 20162012 ● △ Tanzaka R. 20162012 △ Tsukada R. 20162012 △ ● △ △ △ Suzuohtani R. 20162012 ● △ △ Orito R. 20162012 ● ○ △ △

●=including ovigerous females; ○=including adults; △=juveniles only; P. c.=Paratya compressa; C. l.=Caridina leucosticta; C.s.=C. serratirostris; C. t.=C. typus; P. p.=Palaemon paucidens; M. n.=Macrobrachium nipponense; M. f.= M. formosense; M. j.=M. japonicum.

(8)

し,日本海側の両側回遊性コエビ類には分布拡大の 傾向がみられる(丸山,2016)ことから,能登半島 各河川における種数の増加もこれに伴うものかもし れない.このような議論をさらに深めるためには, 能登半島をはじめ周辺地域における今後のさらなる 調査が必要である. 謝 辞 標本の登録にあたりお世話になった神奈川県立生 命の星・地球博物館の佐藤武宏氏,現地調査に同 行・協力してくれた東京大学大学院農学生命科学研 究科応用動物科学専攻の迫野貴大氏,本報告をまと めるにあたり助言をいただいた東京大学大学院農学 生命科学研究科生圏システム学専攻の岡本研准教授 に深く感謝申し上げる.また,大変有意義なご指摘 を頂いた2名の匿名の査読者様と,編集委員の吉野 健児氏に厚く御礼申し上げる. 文 献

Fujita, J., Zenimoto, K., Iguchi, A., Kai, Y., Ueno, M., & Yamashita, Y., 2016. Comparative phylogeography to test for predictions of marine dispersal in three amphi-dromous shrimps. Marine Ecology Progress Series, 560: 105–120. 浜野龍夫・鎌田正幸・田辺 力,2000.徳島県におけ 本生物地理学会会報,70: 159–171. 上田常一,1961.日本淡水エビ類の研究.園山書店, 松江,186 pp. 桑原友春,2014.甲殻類(十脚目).改定しまねレッ ドデータブック2014動物編(島根県編集).島根 県,松江,pp. 231–237. 丸山智朗,2016.本州日本海側における両側回遊性コ エビ類の分布について.Cancer, 25: 55–60. 丸山智朗,2017.神奈川県および伊豆半島の河川から 採集された注目すべき熱帯性コエビ類5種.神奈 川自然誌資料,38: 29–35. 本尾 洋,2011.日本海産カニ類―IV.石川県から初 記録のヨツメコブシ.石川県立自然史資料館研究 報告,1: 31–34. 新潟県,2015.3選定種の解説(2)大型水生甲殻類. 新潟県第2次レッドリスト淡水魚類・大型水生甲 殻類編.新潟県,新潟,pp. 23–26. 丹羽信彰・浜野龍夫,1990.兵庫県菅生川におけるミ ナミヌマエビの個体群生態.Researches on Crustacea, 19: 43–54. 佐藤仁志・加藤琢矛,1996.上田常一動物標本コレク ション目録―甲殻類―.島根県立三瓶自然館収蔵 資料目録,1: 1–138 諸喜田茂充,1979.琉球列島の陸水エビ類の分布と種 分化について―II.琉球大学理学部紀要,28: 193– 278. 豊田幸詞・関慎太郎,2014.日本の淡水性エビ・カニ 102種.誠文堂新光社,東京,255 pp.

Yamano, H., Sugihara, K., & Nomura, K., 2011. Rapid pole-ward range expansion of tropical reef corals in response to rising sea surface temperatures. Geophysical Re-search Letters, 38(L04601): 1–6.

Fig. 2.  Rivers surveyed in Echizen, Fukui Prefecture,  Japan. 1 Ohmi River; 2 Ikari River; 3 Sanbongi  River; 4 Takasu River .
Fig. 3.  Rivers surveyed in Noto, Ishikawa Prefecture, Japan. 5 Hitsumi River; 6 Nishifutamata River; 7 Tanzaka River; 8  Tsukada River; 9 Shibuta River; 10 Suzuohtani River; 11 Sasanami River; 12 Orito River; 13 Noroshi River .

参照

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