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妊婦の孤独感:関連要因と母性役割の同一化およびマイナートラブルへの影響

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妊婦の孤独感:関連要因と母性役割の同一化および

マイナートラブルへの影響

Pregnant women

’s loneliness: Correlated factors and its impacts

on maternal role identification and common complaints during pregnancy

丸 山 菜穂子(Naoko MARUYAMA)

* 抄  録 目 的 妊婦の孤独感の程度と背景,社会的関係性から関連要因を探索することおよび,孤独感の母性役割の 同一化,マイナートラブルへの影響を探索することを目的とした。孤独感は「社会的関係性における願 望が量的,質的に満たされないときに生起する主観的な不快感情」と定義した。 対象と方法 2015年7月から10月に都内近郊の5周産期医療施設にて,妊娠34週以降の妊婦1,675名を対象に,改 訂版UCLA孤独感尺度(得点範囲は20点から80点で高いほど孤独感が高い),ソーシャルサポートの量 と満足度,女性に対する暴力スクリーニング尺度(DVスコア),母性役割の同一化,マイナートラブル を含む質問紙調査を行った。有効回答1,310部(78.2%)を統計的に分析した。 結 果 1. 孤独感得点の平均は33.1点であり,高い妊婦は平均42.3点の先天性胎児異常を指摘されている妊 婦,平均38.8点のシングルマザー,平均37.0点の中卒の妊婦であった。 2. 重 回 帰 分 析 の 結 果, サ ポ ー ト の 満 足 度 が 低 い ほ ど(β=−.331), サ ポ ー ト 量 が 少 な い ほ ど (β=−.161),世帯収入 600 万円以上を基準として 300 万円以上 600 万円未満(β=.104),300 万円未満 (β=.141)と低いほど,精神疾患の既往があり(β=.111),DV スコアが高いほど(β=.069)孤独感は高 かった(調整済R2 =.21)。 3.孤独感が高い妊婦は母性役割の同一化が低かった(β=−.428, p=.000)が,孤独感とマイナートラブ ルの発症頻度との関連は認められなかった。 結 論 孤独感の高い妊婦は胎児異常を指摘されている妊婦と社会的脆弱性をもつ妊婦であった。早期発見の ために精神状況とともにサポート・経済状況,DVについて情報収集する必要がある。孤独感の高い妊 婦の母親になる過程を支えるために,助産師の継続的個別的支援が必要である。 キーワード:孤独感,妊婦,ソーシャルサポート,ドメスティックバイオレンス,母性役割 2016年5月10日受付 2017年1月21日採用

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Abstract Purpose

To identify pregnant women's loneliness and its correlated factors such as demographic data and social relation-ships, and to explore those impacts on maternal role identification and common physical complaints during pregnancy. The definition of loneliness in this study was: the subjective and negative feeling of the experience that social needs are unmet or unsatisfied, in quantity, quality, or both.

Methods

A self-administered questionnaire survey including the revised UCLA loneliness scale (scores range from 20-80 points with higher points indicating higher loneliness), quantity of social support and its satisfaction, the Violence Against Women's Screen (DV score), maternal role identification and common physical complaints during pregnancy was distributed to 1,675 pregnant women after the 34th week of gestation in 5 perinatal care facility between July and October 2015. A total of 1,310 questionnaires (78.2% effective response rate) were statistically analyzed.

Results

The revised UCLA loneliness scale mean score of all pregnant women was 33.1. The highest mean score in pregnant women was 42.3 in those who were suspected of having fetal abnormality. Loneliness was more prevalent in those who were single (mean score=38.8), and having only a junior high-school education (mean score=37.0).

Multiple regression analysis indicated the loneliness score was higher in pregnant women with lower satisfaction with their social support (β=−.331), lower quantities of social support (β=−.161), lower annual household income with 6 million yen as a reference category (3 million yen to 6 million yen:β=.104, less than 3 million yen: β=.141), past history of mental disorder (β=.111), and higher score on DV (β=.069) (adjusted R2=.21). A higher loneliness score was associated with the lower score of identification with the maternal role (β=−.428, p=.000). The loneliness score was not associated with frequency of common complaints during pregnancy.

Conclusion

High loneliness was identified in pregnant women who were suspected of having a fetal abnormality or who were social vulnerable. To find highly lonely pregnant women early, it is important to assess their social support, economic situation and DV along with mental health. Continuous and individual midwifery care for them is required to support their process of becoming a mother.

Key words: loneliness, pregnant women, social support, domestic violence, maternal role

Ⅰ.緒   言

女性にとって妊娠出産ほど,アイデンティティや関 係性の変化に富み,適応能力を問われることはない。 昨今少子化や核家族化等の社会的変化から,妊産婦が 孤立しやすいことが指摘されている(厚生労働省, 2014)。ではどのような妊婦が孤独を感じ,それには どのような要因が関係しているのだろうか。 孤独感とは「個人の社会的関係のネットワークにお いて,量的であれ,質的であれ重大な欠損が生じた 時に生起する不快な経験である」と定義されている (Peplau & Perlman, 1982/1988, p.5)。すなわち孤独感 とは主観的な感情であり,客観的に孤立した状態とは 必ずしも一致しない。Cacioppo & Hawkley(2009)は, 孤独感とは遺伝的特徴や幼少期の環境,文化的規範, 社会的ニーズ,身体的障害などから影響を受ける,社 会的関係性における個々の現実と願望の不一致である と述べている。このように孤独感とは,様々な個人的 社会的背景や社会的関係性と密接な関係があるといわ れている。 妊婦の背景と孤独感の関連については,これまで質 的研究の中で語られてきた。例えば,生殖補助医療を 受けて妊娠した女性は,妊娠中の不安に立ち向かう中 で孤独感から解放されていたという報告がある(林・ 佐山,2009)。一方,妊娠末期になっても他者への親 しみの回復と孤独の継続といったアンビバレンスな感 情をもっていたという報告もある(原田・森,2014)。 Cote-Arsenault and Denney-Koelsch(2011)は,出生前 診断により胎児に致命的な疾患を診断された後妊娠を 継続した女性は,医療者との隔たりや無理解な家族, 友人の存在によって孤独を感じていたと述べている。 また荒木(2011)は,異常を診断された胎児と生きる妊 婦は,他者との交流から自分や世間の価値観を知り, 孤独であることと居場所があることの両方を認識して いたと述べている。Keating-Lefler, Hudson, Campbell-Grossman, et al.(2004)は,低所得妊婦のシングルマ

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ザーになる体験について,出産に無理解な親やパート ナー・友人との関係性や,彼らによるサポートの喪失 と孤独感を報告している。このように,医学的,社会 経済的妊婦の背景が,間接的または直接的に孤独感の 要因となっていると考えられる。しかしこのような背 景の何が,どの程度孤独感と関連しているかについて の報告は皆無である。 妊婦の孤独感と社会的関係性については,孤独感が 低い妊婦は家族の関係性における問題が少なく, ソーシャルサポートのレベルが高いと報告されている (Sable, Washington, Schwartz, et al. 2007)。一方,孤 独感が高い妊婦は結婚の不満足度が高いと報告されて いる(Junttila, Ahlqvist-Bjorkroth, Aromaa, et al. 2015)。 また妊娠中にパートナーから暴力を受けた女性は, ソーシャルサポートが不足していること(Engnes, Liden, Lundgren, 2013;Levendosky, Bogat, Theran, et al., 2004;Ribeiro, Silva, Alves, et al. 2014),暴力被害 により引き起こされる心情の一つとして孤独感が報告 されている(Engnes, Liden, Lundgren, 2012)。孤独感 は,個々のコミュニティーとの個人的関係性の表出で あり,文化の違いや社会的関係の多様性は,孤独感の 経験や対処の仕方に違いをもたらす可能性がある (Rokach, 1999)。しかしこれまでに,日本の妊婦を対 象に,孤独感とこれらの社会的関係性が探索された報 告はない。 妊婦の孤独感に着目する意義は,心身の健康への影 響が指摘されていることにある。Junttila, Ahlqvist-Bjorkroth, Aromaa, et al.(2015)は,妊婦の孤独感と 抑うつ症状との正の相関を報告し,Kruse, Williams, Seng(2014)は,孤独感が産後鬱病の強力なリスク因 子であることを報告している。またGeller(2004)は, 孤独感の高い妊婦は産科的理由による予定外受診の回 数が有意に多いと報告している。しかしこれらの報告 は限られており,今後研究の蓄積が必要である。一 方,乳幼児をもつ母親の孤独感については,孤独感が 高い母親は育児感情の負担感が強いという報告(佐藤 ・田高・有本,2014)や,母親の健康状態が悪く母親 役割の肯定的意識が低いとの報告がある(馬場・村山 ・田口他,2013)。また幅広い対象において,孤独感 による嘔気,頭痛,睡眠障害など身体的健康への負の 影響が報告されている(Heinrich & Gullone, 2006)。

以上より本研究は,妊婦の孤独感の程度と背景,社 会的関係性から関連する要因を探索することおよび, 孤独感が母性役割の同一化とマイナートラブルに与え る影響について探索することを目的とする。 【用語の操作的定義】 孤独感:社会的関係性における願望が量的,質的に満 たされないときに生起する主観的な不快感情 社会的関係性:ソーシャルサポートの量および質(満 足度),パートナーからの暴力すなわち Domestic violence(以下DV) 母性役割の同一化:母親になることを自己の中にとり こんでいく内的過程 マイナートラブル:妊娠によって好発する妊婦が自覚 する不快症状

Ⅱ.研 究 方 法

1.研究デザイン 無記名自記式質問紙を用いた関連探索研究で行った。 2.研究対象者 1) 妊娠34週以降 2) 日本語の読み書き能力があり,質問紙への回答 が可能である 著しく心身に不調があり,質問紙への回答が困難と予 想される者は除外した。 1)の設定理由は一つ目に,「孤独感尺度」の使用によ り,回答者に心理的負担が生じることも予想されたた め,心身の状態が不安定になりやすい妊娠初期は除い た。二つ目に,調査項目の「女性に対する暴力スク リーニング尺度」は,過去 1 年間の暴力の実態を調査 するものであり,妊娠全期間の暴力の実態を反映させ るため妊娠後期が適切であると考えた。三つ目に「母 性役割の同一化」を測定するにあたり,日本では労働 基準法で産前6週間の休暇が定められており,多くの 妊婦がこの時期から出産や産後の生活に向けて準備を 始めると考えられることから妊娠34週以降とした。 3.対象者数の算出方法

先行研究(Keating-Lefler, Hudson, Campbell-Gross-man, et al., 2004)より孤独感が高いと予想され,母集 団から割合を算出できた小集団はシングルマザーであ り, 国 勢 調 査(2010)お よ び 全 国 母 子 世 帯 等 調 査 (2011)より,シングルマザーの割合は全妊婦の 3.5% と推計された。そこでシングルマザーを 30 名以上と し,全妊婦860名以上とした。回収率を70%とし,配

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布人数は1230名以上とした。 4.調査施設と調査期間 対象施設は,都内近郊の産科医療施設のうち,研究 協力に同意が得られた施設とした。6 施設に依頼し 5 施設で協力が得られた。5施設のうち4施設が病院,1 施設が診療所であった。病院 4 施設の内訳は,1 施設 が地域周産期母子医療センター,3施設が地域周産期 医療関連施設であった。質問紙の配布は2015年7月1 日から10月27日まで行い,回収は同年10月31日まで 行った。 5.データ収集 1)収集方法 研究者または研究補助者が,産科外来にて対象者へ の協力依頼および質問紙の配布を行った。または,施 設の看護スタッフに対象者への質問紙の配布を依頼し た。質問紙は妊娠中の記入を依頼し,留置きまたは郵 送により回収した。 2)調査項目 (1)孤独感

Russell, Peplau, Cutrona(1980)によって作成され, 国際的に孤独感の研究で幅広い対象に最も使用されて いる改訂版UCLA孤独感尺度を用いた。「私には頼りに できる人が誰もいない」「私は他の人たちから孤立して いる」等,全20項目を日頃どの程度感じているかにつ いて4件法で測定する。得点範囲は20~80点で,高い ほど孤独感が高いことを示す。日本語版は信頼性妥当 性が確認され(諸井,1985;諸井,1987),全 20 項目 が弁別力をもち,その合計点を孤独感得点とすること が妥当であるとする単一次元性が確認されている(諸 井,1992)。本研究の信頼性係数αは.896であった。 (2)背景(デモグラフィックス・既往歴・産科的背景) 妊婦を対象とした質的研究の中から,孤独感に言及 されているものを選択した。具体的には不妊治療歴, 先天性胎児異常指摘の有無,シングルマザーになる妊 婦である。シングルマザーになる妊婦か否かを判断す る質問項目は,「今回の妊娠出産において,出産後近 い将来にシングルマザーになる,もしくはなる可能性 はありますか」とした。 その他は,年齢,同居者,入籍,仕事,雇用形態, 世帯収入,最終学歴,精神疾患既往歴,産科歴,流産 死産中絶歴,妊娠中の入院治療歴とした。 (3)ソーシャルサポート House(1981)の分類に基づき,手段・情報・情緒 ・評価の 4 種のサポートについて,現在各種のサ ポートを提供してくれる人がいるか,いる場合にはそ の提供内容の満足度を「まったく満足していない」か ら「十分満足している」の5段階で聞いた。4種全ての サポート提供者がいる場合には,妊娠中サポート満足 度として合計点を算出した。この得点範囲は4~20点 であり,高いほど満足度が高いことを示す。それぞれ のサポートについて提供者がいる場合を 25 点,いな い場合を0点として妊娠中サポート量を合計した。こ の得点範囲は 0~100 点であり,高いほどサポート量 が多いことを示す。出産後のサポート状況について は,同様の4種のサポートについて提供者がいると予 想されるかどうかを聞いた。いると予想される場合を 25点,いないと予想される場合を0点とし,妊娠中サ ポート量と同様の方法で出産後サポート予測量を算出 した。 (4)DV 周産期女性に対する使用で信頼性妥当性が確認され た女性に対する暴力スクリーニング尺度(Violence Against Women Screen;以下 VAWS)の改訂版を使用 した。片岡(2005)によって開発され,身体的・精神 的・性的暴力を含んだ必要最低限の4項目尺度に改訂 された。過去 1 年間の暴力について「まったくない」 「たまにある」「よくある」の 3 段階で回答を求める。 身体的暴力1項目については重み付けし,得点範囲は 0~9 点である。日本語版 Index of Spouse Abuse を至 適基準としてカットオフポイントは 2 点が最適解で, 感度100%,特異度97.6%である(今関・片岡,2013)。 本研究の信頼性係数αは.684であった。本研究では改 訂版 VAWS を「DV スコア」と表記し,2 点以上を DV 陽性とした。 (5)母性役割の同一化

日本語版 Prenatal Self-Evaluation Questionnaire(以 下J-PSEQ)の下位スケールの1つである母性役割の同 一化を使用した。PSEQ は Lederman(1984)によって 開発された妊娠時の心理・社会的側面の適応状態を評 価するスケールであり,岡山・高橋(2002)により日 本語版が作成され,信頼性妥当性が確認されている。 J-PSEQは 7 つの下位スケールから構成されるが,必 要時下位スケールのみの使用が可能であることを岡山 に確認した(2015/4/20 確認)。母性役割の同一化は, 母親役割の受容に関する期待感や児への愛着等に関す

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る 13 項目で構成され,4 件法で得点範囲は 13~52 点 であり,本研究では高いほうが母性役割の同一化が進 行しているように点数化し使用した。本研究の信頼性 係数αは.828であった。 (6)マイナートラブル 妊娠初期から現在までのマイナートラブルの頻度を 問う質問を作成した。症状は,新川・島田・早瀬他 (2009)の研究を参考に「肩こり」「腰背部痛」「頭痛」 「嘔気」「易疲労感」とした。これらの症状の発症頻度 を 5 段階で聞き,5 症状の合計をマイナートラブルの 得点とした。得点範囲は5~25点で,高いほど発症頻 度が高いことを示す。 作成した質問紙は,助産学の研究者や妊婦,出産経 験のある一般女性など計 28 名にプレテストを行い, 表面妥当性の確保に努めた。 6.分析方法 各変数の単純集計を行ったのち,孤独感と背景因 子,社会的関係性因子について対応のないt検定,一 元配置分散分析,単回帰分析を行った。有意な関連を 認めた因子について,孤独感を従属変数とする強制投 入法による重回帰分析を行った。また孤独感と母性役 割の同一化,マイナートラブルとの関連を探索するに あたり,各々単回帰分析を行った。統計ソフトは SPSS version 22を使用し,検定は両側検定で有意水 準は5%とした。 7.倫理的配慮 回答は自由意思に基づき,拒否しても不利益を生じ ることはないことを説明した。施設スタッフに配布を 依頼するにあたり,倫理的配慮に重点をおいた説明会 を行った。また社会的支援を必要とする妊婦に対する 協力施設の支援・連携状況を確認し,必要時相談窓口 等の社会資源の共有を行った。さらに質問紙への回答 によって心の健康を害された対象者がいた場合に備え て,専門家のケアが受けられるように体制を整えた。 対象者に協力への圧力がかからないよう配慮し,回収 箱は配布場所と異なる場所に設置した。質問紙の回収 をもって研究協力への同意とした。本研究は聖路加国 際大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:15-017)を得て行った。

Ⅲ.結   果

1.対象者の背景 質問紙は 1,675 部配布し,1,402 部を回収した(回収 率 83.7%)。孤独感尺度全 20 項目の回答を満たした 1,310部を有効回答とした(有効回答率78.2%)。 対象者の年齢は 17 歳から 46 歳の範囲で,平均 31.9 歳(SD=4.9)であった。初産婦 680 名,経産婦 621 名 であり,平均妊娠週数は35.7週(SD=1.6)であった。 2.対象者の社会的関係性 ソーシャルサポートについてサポート種別では,妊 娠中に手段的サポートがある妊婦は1,256名(95.9%), 情報的サポートがある妊婦は 1,211 名(92.4%),情緒 的サポートがある妊婦は 1,282 名(97.9%),評価的サ ポートがある妊婦は 1,223 名(93.4%)であった。これ ら4種全てのサポートを受けている妊婦のサポート満 足度の得点範囲は4点から20点で,平均17.5点(SD= 2.5)であった。各種サポート提供者の有無を合計し, サポート量を算出したところ,妊娠中サポート量の得 点範囲は0点から100点で平均97.2点(SD=10.6)であ り,出産後予測されるサポート量の得点範囲は0点か ら 100 点で平均 97.1 点(SD=11.3)であった。「妊娠中 のサポート量」と「出産後サポート予測量」には強い 相関があった(r=.7, p=.000)。 DVスコアの得点範囲は0点から9点で,平均0.57点 (SD=1.2)であった。DV 陽性の妊婦は 170 名(13.0%) であった。 3.孤独感の程度と背景,社会的関係性との関連 1)孤独感の程度 孤独感尺度の得点は20 点から 70 点の範囲で,平均 33.1点(SD=8.2),中央値31点であった。最頻値が24 点,28点,30点と複数あり,分布は左に傾いていた。 この尺度は 4 件法で 1 点,2 点が孤独を「感じない」, 「どちらかといえば感じない」とする得点であるが,項 目別平均点は全て1,2点代であった。背景別にみて孤 独感が最も高かったのは,先天性胎児異常を指摘され ている妊婦の平均 42.3 点(SD=8.1),次いでシングル マザーになる妊婦で平均 38.8 点(SD=9.2),最終学歴 が中学校の妊婦で平均37.0点(SD=9.5)であった。 2)孤独感と背景,社会的関係性との関連 (1)背景との関連(表1) 孤独感と有意な関連が認められたのは「シングルマ

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ザー」「仕事」「世帯収入」「最終学歴」「精神疾患既往 歴」「産科歴」「妊娠中の入院治療歴」であった。 「シングルマザー」では,シングルマザーになる, もしくはなる可能性がある妊婦の平均は38.8点(SD= 9.2)であり,そうでない妊婦の平均 32.9 点(SD=8.1) より有意に高かった(t=4.1, p=.000, d=0.72)。「仕事」 では,仕事をしていない妊婦の平均 33.7 点(SD=8.2) は仕事をしている妊婦の平均32.4点(SD=8.1)より有 意に高かった(t=−2.7, p=.007, d=0.15)。「世帯収入」 については,世帯収入が低いグループほど孤独感が高 かった(F=36.6, p=.000, η2 =.03)。「最終学歴」につい ても,低学歴であるほど孤独感が高かった(F=12.9, p=.000,η2=.03)。「精神疾患既往歴」は,既往がある妊 婦の平均 36.7 点(SD=9.4)が既往のない妊婦の平均 32.6点(SD=7.9)より有意に高かった(t=4.8, p=.000, d=0.5)。「産科歴」については,初産婦の平均 32.5 点 (SD=8.0),経産婦の平均33.7点(SD=8.3)であり,経 産婦が有意に高かった(t=−2.8, p=.005, d=0.16)。「妊 娠中の入院治療歴」は,入院治療を受けていない妊婦 の平均33.1点(SD=8.2)が入院治療を受けた妊婦の平 均 30.5 点(SD=8.3)より有意に高かった(t=−2.1, p= .035, d=0.32)。「先天性胎児異常指摘」については,分 布の偏りが大きいため検定を実施していないが,指摘 をされている妊婦の平均は 42.3 点(SD=8.1)であり, 指摘をされていない妊婦の平均33.0点(SD=8.2)より 著しく高かった。これらの変数のうち,「シングルマ ザー」と「精神疾患既往歴」については中程度以上の 効果量を認めた。 (2)社会的関係性との関連(表2) 孤独感と「妊娠中サポート満足度」「妊娠中サポート 量」「出産後サポート予測量」「DVスコア」は,それぞ れ有意な関連を認めた。 「妊娠中サポート満足度」「妊娠中サポート量」「出産 後サポート予測量」については孤独感と負の関連があ り(β=−.349, p=.000;β=−.345, p=.000;β=−.412, p=.000),サポート満足度が低いほど,サポート量が 少ないほど孤独感が高かった。 「DV スコア」については孤独感と正の関連があり, DVスコアが高いほど孤独感が高かった(β=.239, p= .000)。DV陽性群と陰性群で孤独感の比較を行ったと ころ,DV 陽性群の孤独感の平均は 37.6 点(SD=8.9) であり,陰性群の平均32.4点(SD=7.9)より有意に高 く,中程度の効果量が認められた(t=−7.2, p=.000, d=0.66)。 表1 孤独感と背景との関連 N=1310* n 孤独感点M ±SD ap b効果量 【デモグラフィックスと既往歴】 年齢  10代 10 35.7 ±5.2  20代 377 33.2 ±7.8 .180  30代 826 32.8 ±8.2  40代 69 34.7 ±9.2 同居者  パートナー  あり 1244 33.0 ±8.2 .184  なし 58 34.5 ±8.3  実父母または義父母  あり 140 33.8 ±8.8 .250  なし 1162 33.0 ±8.1  祖父母または義祖父母  あり 17 33.7 ±7.5 .747  なし 1285 33.1 ±8.2 入籍  既婚 1274 33.0 ±8.2 .064  未婚または非婚 27 36.0 ±8.5 シングルマザー  はい 33 38.8 ±9.2 .000 0.72  いいえ 1267 32.9 ±8.1 仕事  あり 619 32.4 ±8.1 .007 0.15  なし 683 33.7 ±8.2 雇用形態  正規職員 443 32.0 ±8.0 .115  非正規職員 134 33.5 ±8.1  自営業 39 33.6 ±9.1 世帯収入  300万円未満 128 36.2 ±8.9  i .000 0.03  300万円以上600万未満 567 33.5 ±8.2  600万以上 570 31.7 ±7.7 最終学歴  中学校 45 37.0 ±9.5 #  .000 0.03  高等学校 263 35.1 ±8.5  専修学校または短大 444 32.7 ±7.7  大学以上 553 32.0 ±8.0 過去1年間の死別体験の有無  あり 237 33.1 ±8.2 .943  なし 1068 33.0 ±8.2 精神疾患既往歴  あり 134 36.7 ±9.4 .000 0.5  なし 1174 32.6 ±7.9 【産科的背景】 産科歴  初産 680 32.5 ±8.0 .005 0.16  経産 621 33.7 ±8.3 流産死産中絶歴  あり 414 33.6 ±8.3 .113  なし 892 32.8 ±8.1 不妊治療歴  あり 176 33.2 ±8.6 .778  なし 1125 33.0 ±8.1 妊娠中の入院治療歴  あり 44 30.5 ±8.3 .035 0.32  なし 1257 33.1 ±8.2 先天性胎児異常指摘の有無  あり 3 42.3 ±8.1 ―  なし 1298 33.0 ±8.2 *:各項目に無回答の者は表示していない ap:t検定または一元配置分散分析における有意確率 多重比較は世帯収入については DunnetC,最終学歴につい ては Tukey の HSD 法。]:グループの平均の差が 5% 水準で 有意。 b効果量:t検定はCohenのdの式から算出,分散分析はη2

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4.重回帰分析による孤独感に関連する要因の探索 (表3) 孤独感を従属変数として重回帰分析を行った(強制 投入法)。多重共線性を避けるためサポート量につい ては「出産後サポート予測量」を投入した。この結果, 孤独感に関連する要因は「妊娠中サポート満足度」「出 産後サポート予測量」「世帯収入」「精神疾患既往歴」 「DV スコア」が選ばれた(調整済 R2 =.21, F=47.2, p= .000)。すなわち妊娠中のサポート満足度が低く,出 産後予測されるサポート量が少なく,DVスコアが高 く,世帯収入が600万円より低く,精神疾患の既往が ある場合に,妊婦の孤独感が高いことが示された。 5.孤独感の母性役割の同一化およびマイナートラブ ルへの影響 「母性役割の同一化」について,対象者の得点範囲 は 19 点から 52 点で平均 41.2 点(SD=5.6)であった。 「マイナートラブル」については 5 点から 25 点の得点 範囲で平均14.4点(SD=3.8)であり,症状別では肩こ りの平均2.6点(SD=1.3;たびたびある),腰背部痛の 平均 3.2 点(SD=1.4;たびたびある),嘔気の平均 2.7 点(SD=1.2;たびたびある),頭痛の平均2.0点(SD= 1.1;少しある),易疲労感の平均 3.9 点(SD=1.0;よ くある)であった。 「母性役割の同一化」を従属変数,孤独感を独立変 数として単回帰分析を行った結果,有意な関連が認め られた(β=−.428, p=.000)。すなわち孤独感が高いほ ど, 母性役 割の 同一化 が低か った。同様に「マイ ナートラブル」を従属変数,孤独感を独立変数として 単回帰分析を行った結果,2変数の関連は認められな かった(β=.097, p=.000)。

Ⅳ.考   察

1.妊婦の孤独感の程度 妊婦の孤独感は 20点から80 点を得点範囲とする改 訂版UCLA孤独感尺度において,平均は33.1点,中央 値 31 点であり,低い者が多い結果であった。背景別 にみると,先天性胎児異常を指摘されている妊婦の平 均42.3点,シングルマザーの平均38.8点,中卒の妊婦 の平均37.0点等が高かった。 同尺度を使用した研究では,Klein(1998)が10代の 初産婦 57 名について調査し,平均が 36.0 点から 39.7 点であったと報告している。この対象者の 86% は未 婚,84% が無職,88% は中卒であった。また Geller (2004)は,10 代の妊娠が多い貧困地域において 53名 の妊婦を調査した結果,孤独感の平均は 41 点であっ たと報告している。Sable, Washington, Schwartz, et al. (2007)によると,72 名の妊婦のうち,望まなかった 妊娠の妊婦の平均は35.1点であった。この対象者の平 均年齢は 23.8 歳で,58% が未(非)婚,46% が高卒以 下,75% は低所得者向け医療費補助制度の受給者で あった。 このように,本研究で孤独感が高かった先天性胎児 異常を指摘されている妊婦やシングルマザー,中卒の 妊婦の点数は,アメリカの若年,未(非)婚,低学歴, 低収入を背景にもつ妊婦の平均点と類似していた。し たがって着目すべきは,胎児異常を指摘されている妊 婦と社会的脆弱性をもつ妊婦である。 Wool(2013)は 1995 年から 2012 年までに発表され た,致命的な胎児診断を受けたあと妊娠を継続した女 性への周産期緩和ケアに関する 20 の研究のレビュー を行っている。この結果周産期緩和ケアは,身体的精 神的側面,妊婦と胎児の社会的孤立や社会的無効化に 対する社会的側面,霊的宗教的文化的側面等のケアを 表3 妊婦の孤独感の重回帰分析 n=1042 独立変数 β p r VIF 妊娠中サポート満足度 −.331 .000 −.375 1.060 出産後サポート予測量 −.161 .000 −.239 1.042 低収入(300万円未満) .141 .000 .130 1.134 精神疾患既往歴 .111 .000 .138 1.009 中収入(300~600万円) .104 .000 .080 1.103 DVスコア .069 .015 .147 1.065 調整済R2 =.21,F=47.2,p=.000 孤独感を従属変数とし強制投入法で行った重回帰分析 質的変数の世帯収入は「高収入(600 万円以上)」を精神疾患 既往歴は「なし」をそれぞれ基準カテゴリとした。 表2 孤独感と社会的関係性との関連 N=1310* n M ±SD 孤独感点M ±SD aβ p 妊娠中サポート満足度 1099 17.5 ±2.5 32.1 ±7.4 −.349 .000 妊娠中サポート量 1233 97.2 ±10.5 32.9 ±8.1 −.345 .000 出産後サポート予測量 1276 97.1 ±11.6 33.0 ±8.1 −.412 .000 DVスコア 1276 0.57 ±1.2 33.0 ±8.2 .239 .000  DV陰性 1106 ― 32.4 ±7.9 ― .000b  DV陽性 170 ― 37.6 ±8.9 * :各項目に無回答の者は表示していない 得点範囲は妊娠中サポート満足度:4~20 点,妊娠中サ ポート量および出産後サポート予測量:0~100 点,DV ス コア:0~9点,2点以上がDV陽性 aβ:孤独感を従属変数とした単回帰分析の標準化回帰係数 b:孤独感とDV陰性群,陽性群で行ったt検定の有意確率

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含んだ,妊娠期から産後まで継続的包括的モデルの構 築が必要であると述べている。本研究では胎児異常を 診断されている妊婦は3名と少なかったが,妊婦が孤 独を強く感じることは容易に想像でき,助産師は今 後,社会的孤立,孤独感を考慮した包括的ケアを構築 していく必要がある。また低学歴や貧困といった社会 的脆弱性は,日本のシングルマザーにおいて顕著であ ると報告されている(周,2014)。今後妊娠期シング ルマザーの対象理解と彼女たちに対するケアを発展さ せていく必要も高いと考える。 2.妊婦の孤独感と関連要因 妊婦の孤独感は「ソーシャルサポートの満足度と 量」「DVスコア」「世帯収入」「精神疾患の既往」と関連 が認められ,ソーシャルサポートに対する満足度が低 いほど,サポート量が少ないほど,DVスコアが高い ほど,世帯収入が600万円より低いほど,また精神疾 患の既往がある場合に孤独感が高かった。 孤独感とソーシャルサポートの負の関連は,先行研 究と同じであった(Hudson, Elek, Campbell-Grossman, 2000;Sable, Washington, Schwartz, et al. 2007)。孤独 感と DV スコアの正の関連については,DV の性質か らこの理由が考察される。DVは,蹴る,殴るなどの 身体的暴力,セックスやその他性的強要といった性的 暴力,侮辱や軽視,継続的な屈辱,脅迫を与えると いった精神的暴力に加えて,家族や友人から孤立させ る,行動を監視する,財政的資源や仕事,教育,医療 へのアクセスを制限するといった行動支配も含む (WHO, 2012)。日本でも,DV 被害妊婦の救急外来受 診や妊婦健診の不定期受診といった症例が報告されて いる(水主川・定月・中西他,2010)。さらにDV被害 妊婦の状況として,周産期は家族を維持させなくては ならないという思いが強く,パートナーの態度が変わ ることを期待しやすいためにDV被害の認識を意識下 におしこめやすく(藤田,2014),また加害者と離別 しないことに対する非難や自己への羞恥心を抱きやす い(Engnes, Liden, Lundgren, 2012)。このように DV は,物理的精神的に社会的孤立と強い孤独感を抱く状 況を形成すると考えられる。また本研究では,世帯収 入も独立して孤独感に影響を与えていた。児童のいる 世帯の平均世帯収入は近年600 万円後半から700 万円 前半で推移しており(厚生労働省,2015),平均を下 回る経済状況,特に年収300万円未満の低収入は孤独 感 の 要 因 と な る 可 能 性 が 示 さ れ た。 Bloom, Glass, Curry et al.(2013)は,都市部在住の低所得女性の妊 娠中の体験について 24 名に調査を行った結果,対象 者 の 54.2% に 抑 う つ 症 状 を, 83% に 中 程 度 以 上 の PTSD症状を認め,性的暴力の被害者は38%,身体的 暴力の被害者は 75% であった。妊娠中のストレスと して共通に語られたものは,「経済的負担」「暴力被害」 「非常に強い孤立した感覚や孤独感」であったと報告 している。 このように,妊婦の孤独感に「ソーシャルサポート の満足度と量」「DV スコア」「世帯収入」「精神疾患の 既往」が関連していたという本結果は,先行研究を支 持するものと考えられ,妊婦健診でこれらの項目の情 報収集が必要である。Yelland & Brown(2014)が,出 産後の女性4,366 名に妊娠中に医療者から精神的社会 的問題について質問されたかどうかを調査した結果, 約半数が抑うつや不安などの精神的状況について聞か れていたのに対し,経済的問題については16.6%,暴 力については14.1%の女性しか聞かれていなかったと 報告している。日本で同様の調査報告は見当たらない が,関東の74周産期医療施設において,潜在的なDV 被害者をみつけるためのスクリーニング実施率はわず か5%であったとの報告がある(片岡・櫻井・江藤他, 2010)。精神的状況に加え,経済状況や DV に関して 共に情報収集する必要性を強調したい。 3.孤独感の母性役割の同一化およびマイナートラブ ルへの影響 本研究において,孤独感と母性役割の同一化に負の 関連が認められ,孤独感が高い妊婦は母性役割の同一 化の状態が低いことが明らかとなった。 同尺度を用いた先行研究で,母性役割の同一化は妊 婦の母親やパートナーとの関係が良いほど適応状態が 高く,母性役割の同一化の適応状態が高いほど,胎児 への愛着も高いと報告されている(岡山,2002)。また Mercer(1981)は,母親になる過程には年齢や出産体 験の受容,早期母子分離,社会的ストレス,サポート システム,社会経済的状況,女性の個人特性や疾患, 児の気質や疾患等が相互に影響すると述べている。本 研究はこれらの先行研究を支持するものである。母親 になる過程は妊娠期にはじまり(Mercer, 2004),サ ポートが乏しい低所得妊婦や若年妊婦といった脆弱な 妊婦においては特に,助産師と妊婦における妊娠期か ら産後までの長期的相互的関係性が,積極的な母親の 成長にとって重要である(Mercer & Walker, 2006)。

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Rayment-Jones, Murrells, Sandall(2015)は,複雑な社 会的問題を有する妊婦に対し,妊娠期から産後まで継 続的個別的な助産師のケアを受けた群と通常ケアを受 けた群を比較分析している。この結果,助産師による ケアを受けた群は有意に精神科やDV擁護団体等の関 連機関と協力した学際的援助を受け,自然分娩の増加 や良好な周産期アウトカムが認められたと報告してい る。したがって孤独感が高い妊婦を早期に発見し,助 産師による産後まで継続的個別的ケアの対象にする必 要がある。 一方本研究では,孤独感とマイナートラブルの関連 は認められなかった。新川・島田・早瀬他(2009)は, 無作為に抽出した全国の11医療施設にて,妊婦623名 のマイナートラブルの発症率および発症頻度を調査し ている。この結果,発症頻度は本結果と同様であり, 発症率については肩こり 76.4%,腰背部痛 74.1%,嘔 気 68.1%,後頭部痛 18.2%,易疲労感 94.5% と報告さ れている。このようにマイナートラブルは多くの妊婦 に経験されているため,孤独感による身体的影響の指 標として適切ではなかったとも考えられる。Geller (2004)によると,孤独感の高い妊婦は分娩の可能性 への懸念,腹痛,悪阻や脱水,胎動減少,膀胱炎や細 菌性腟炎などの感染症,出血等の理由で予定外受診の 回数が有意に多かった。したがって今後,妊婦の孤独 感と身体的健康の関連を調べる際には,受診行動やそ の理由等を調査に組み込む必要があるだろう。 4.研究の限界と今後の課題 本研究の限界は,第一に調査対象施設が都内近郊に 限られていることである。孤独感と関連していた要因 は地域差が予想されることから,今後全国調査を行う 必要がある。第二に孤独感を説明する重回帰分析の決 定係数はR2 =.21と低く,モデルの再考が必要である。 また孤独感の身体への影響指標をマイナートラブルの 発症頻度としたことにも再考の余地があった。した がって今後は,使用する変数について再検討が必要で ある。しかし今回明らかとなった孤独感の高い妊婦の 背景や関連する要因は,助産師が現状のケアを再検 討,新構築するために重要な資料であり,社会的背景 や関係性を周産期において注視し,孤独感の高い妊婦 の早期発見と継続的個別的ケアに向けた具体的方法に つなげることが課題である。

Ⅴ.結   論

妊娠34週以降の妊婦1,310名を対象に,孤独感の程 度と関連する背景,社会的関係性の探索,および孤独 感の母性役割の同一化,マイナートラブルに対する影 響を探索した結果,以下の結果を得た。 ・妊婦の孤独感は,改訂版 UCLA 孤独感尺度で平均 33.1点,中央値 31 点であり,孤独感の高い妊婦は 平均 42.3 点の先天性胎児異常を指摘されている妊 婦,平均 38.8 点のシングルマザー,平均 37.0 点の 中卒の妊婦であった。 ・重回帰分析の結果,ソーシャルサポートの満足度 が低いほど,サポート量が少ないほど,世帯収入 が 600 万円より低いほど,精神疾患の既往があり, DVスコアが高いほど孤独感は高かった。 ・孤独感が高い妊婦は母性役割の同一化が低かった。 ・孤独感とマイナートラブルの発症頻度に,関連は 認められなかった。 謝 辞 ご協力いただいた対象者の皆様ならびに研究協力施 設の皆様,研究計画段階から論文作成に至るまで,手 厚いご指導をして下さった聖路加国際大学大学院の堀 内成子教授に心より感謝申し上げます。またカウンセ リング体制を整えていただいた聖路加国際大学研究セ ンター PCC 研究開発部客員研究員の石井慶子氏と, 英語抄録をご指導いただいた米国オレゴンヘルス大学 の Sarah Porter 名誉教授に心より感謝申し上げます。 本研究は聖路加国際大学大学院に提出した修士論文を 修正加筆したものであり,平成 27 年度聖路加国際大 学青木奨学金の援助を受けて実施した。 文 献 荒木奈緒(2011).異常を診断された胎児と生きる妊婦の 経験.日本看護科学会誌,31(2),3-12. 馬場千恵,村山洋史,田口敦子,村嶋幸代(2013).乳児 を持つ母親の孤独感と社会との関連について 家族 や友達とのソーシャルネットワークとソーシャルサ ポート.日本公衆衛生雑誌,60(12),727-737. Bloom, T., Glass, N., Curry, M. A., Hernandez, R., & Houck,

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