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[巻頭言]先を見る

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Academic year: 2021

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(1)1. ■巻. 頭. 言■. 先. を. 見. る. 国立環境研究所理事長. 研究のあり方について議論するとき,だれしも 「先を見なければならない」という。環境問題は, 試行錯誤というわけにいかないことがほとんどで ある。したがって,とりわけ先を見ることが重要 である。 しかし,これが容易ではない。環境問題の行く 先を考え,適切な研究課題を設定し,研究を先行 先導的に進める必要は自明でも,何をどうすべき かを見きわめるのは至難で,多くの研究者の悩み である。幸い,過去の経験と反省から教訓ともい うべきものをあげることはできる。 第一は,基礎研究の中の将来のカギである。環 境ホルモン問題が取り上げられることとなったの はそれほど古いことではない。しかし,ホルモン の研究者は,外部からホルモンを投与するとラッ ト胎児に異常が現われることを1 930年代(米国) に 認 め て い た。ヒ ト の 場 合 の 危 険 性 は,米 国 (1963),日本(19 64)で警告されていた。しか し,この問題が環境ホルモンとして議論され出し たのは1991年のウイングスプレッド宣言からであ る。短く見て20余年,長く見れば50年以上この問 題は見逃され、放置されていたことになる。地球 温暖化でも似たようなことがある。地球の気温は どう決まるかを論じたのはアレニウスで1800年代 の末である。すでに炭酸ガスがカギであることを 指摘していたという。 次の深刻な教訓は水俣病である。1956年に人間 における発症例が報告されたが,その5∼6年前 から水俣湾で,またチッソ工場排水口付近で,さ まざまな生態系の異常が気づかれていた。また最 初の発症例報告後,有機水銀化合物による中毒症 と正式に認定されるまでに,さらに12年かかって いる。この期間を短くすることが課題である。 基礎研究をサーベイし,モニタリング・自然観. Vol. 29. No. 1(2004). 合. 志. 陽. 一. 察を綿密に行うことは,たいへん地味な仕事であ る。しかしその中に将来の,あるいは水面下の環 境問題が潜んでいるといえよう。 それでは今後は何が重要となろうか。容量型の 環境問題の典型である温暖化をめぐっては,とに かく予測の精度向上が重要である。このとき人間 活動の大きさの基礎である人口の将来予測が不可 欠である。その次に,人間の活動様式の変化を環 境負荷の観点からどう考えるかが重要であろう。 水,砂漠化においても同じことが問題となろう。 汚染型の環境問題は,様相が著しく変化するで あろう。物質による汚染については,異性体の問 題が登場してくるであろう。代謝中間体や自然の 中での分解物の問題も注意する必要がある。物質 による汚染以外に物理的汚染ともいうべきものも 登場するであろう。とりわけ視覚に係わる問題は, 速やかな対応が必要である。光の人体影響はさま ざまな面から指摘されている。省エネルギー型の 新光源(LED など)が登場しつつある現在,われ われは重要な岐路に立っている。省エネルギー (CO2削減)でサーカディアンリズム(体内時計) を乱さないすばらしい光を手に入れるか,低コス トだが不快で生体のリズムを乱す光にがまんしな ければならないかである。総合的な見地から本当 に健やかで環境に優しい光源のあり方を見きわめ なければならない。 さらに総合的な問題として免疫系や脳神経系へ の環境影響も比重が増してこよう。大量の情報に さらされている人間がどうなっていくか,情報環 境という見方も必要となるかもしれない。高速グ ローバル化する人間活動を考えると,微生物との 共存の問題も新たな局面となろう。課題は多いが, その困難さ複雑さにたじろぐことなく取り組みた いものである。 (ごうし よういち). ─ 1.

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