Title
Study on Seismic Risk Evaluation of Stability of Agricultural
Reservoir Embankments( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
房 晨
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第724号
Issue Date
2020-03-13
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/79391
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。[7] 氏 名(本(国)籍) 房 晨(中華人民共和国) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博甲第724号 学 位 授 与 年 月 日 令和2年3月13日 研 究 科 及 び 専 攻 連合農学研究科 生物環境科学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学
学 位 論 文 題 目 Study on Seismic Risk Evaluation of Stability of Agricultural Reservoir Embankments
(農業用貯水池堤体の安定性の地震リスク評価に関 する研究) 審 査 委 員 会 主査 岐阜大学 教 授 西 村 眞 一 副査 岐阜大学 准教授 西 山 竜 朗 副査 静岡大学 准教授 今 泉 文 寿
論 文 の 内 容 の 要 旨
本論文は,農業用貯水池における安全性確保を背景として,土のため池堤体の安定解 析に関わる問題に対する検討を行った成果を示している。土のため池堤体の安定性評価 においては,地すべりの場合と同様の円弧すべりを対象とする安定解析が実施される。 この安定解析においては,概して,釣合のために必要な堤体内応力が得られるかどうか が材料の強さとの照合によって判定されるとともに,すべりが生じる場合にはその規模 の推定も行われる。昨今,構造物の安全性検討においては,従来の新規設計のみならず 長期間の供用に耐えるための維持管理,さらには大規模地震を経験した最近の日本にお いては特に,従来想定よりも格段に増して耐震性が強調されるようになっている。土の ため池堤体の安全性検討においては,新規設計,維持管理,耐震といういずれの観点か らも安定解析が評価手法の主要部をなし,その具体的手法の合理性向上と精緻化は各局 面で常に求められている。本論文に示された研究は,まさにこういった社会の要請に応 えようとしたものである。 本論文に示された研究成果は,大きく分けて二つある。一つは,実在の農業用貯水池 を対象とする堤体安定解析のケーススタディであり,特に耐震性評価により適した物性 値を自身で測定した上で採用し,大規模地震における危険性を指摘するに至っている。 もう一つは,この安定解析を通じて土の性状による材料物性値変化の重要性に着目して 実施された実験的解析である。特に粒度の相違に対する応答を幹としながら,安定解析 の入力たる土の強さそのものに加え,より簡易な実験から得られる各種指標に対する検 討を合わせて行ってこれらを照合し,傾向を整理している。 論文は全5 章で構成されている。第 1 章において研究の背景と目的を説明し,続く第2 章において安定解析および土の残留強さに関する既往研究をレビューしている。ここ に,特に土の残留強さについては,続く第3 章と第 4 章での検討に関わるその測定方法 ならびに測定値そのものの特性に対する知見を整理して示している。 第3 章では,実在する農業用貯水池 2 基を対象とする堤体安定解析のケーススタディ の成果が示されている。堤体はいずれも均一型の土堰堤であり,安定解析手法としては 既往事例や合理性,実用性に配慮した上で,上下流方向断面に対するニューマーク法を 採用している。解析においては最近の社会の要請に応えて大規模地震を想定した耐震性 を対象とし,堤体への地震動入力として最近の大規模地震 3 件における観測波を採用し ている。材料物性値には自身で材料を採取した上で測定したものを採用している。土の 強さは,一般的には連続体力学理論との整合性に優れる三軸圧縮試験から得られるが, 実のところ試験の機構上,その測定結果は無傷の材料の強さを基本とするものとならざ るを得ない。本論文では,地震における繰返し挙動,あるいは長い供用期間における進 行性のすべりを想定し,無傷材料の強さと比較してより低く現れる残留強さを厳密に測 定し採用している。その測定はリングせん断試験によっており,同試験法は考案時期こ そ古いものの現時点で普及しているとは言えない一方で,特に試験過程におけるすべり 面面積の変化が生じない機構を持つことから,こと特定面の残留強さの測定には合理性 を有する。解析の結果,2 基いずれの堤体についても,強震を受けた際には円弧すべりが 生じ,また強震直後においてはその変形は必ずしも大きくないものの,その後期間を経 てから変形が増大する危険性を指摘するに至っている。 第4 章では,前章における安定解析を通じて材料の残留強さを精確に把握する重要性 を鑑みた上で,残留強さとともに他の各種指標を照合した実験的解析の成果を示してい る。実事業においてため池堤体遮水材としての使用が想定された土質材料を採取し,粒 径による材料分級を行った上での調整によって試料粒度に変化を持たせながら,複数指 標間の関係を見出すとともに議論一般化の可能性を企図している。粒度調整は細粒分含 有率によっており,既往研究に見られるよりもその変化の幅を拡大させた検討を行って いる。これらの解析から,まず細粒分の増加に伴い,無傷の強さおよび残留強さがとも に減少すること,無傷の強さと残留強さの差が増大することとともに,その変化の程度 が細粒分含有率の規模によって異なることを見出している。また,残留強さの主成分で ある残留摩擦角が,細粒分含有率,液体限界,塑性限界および塑性指数のすべてと相関 を持つこと,これらのうちでも特に細粒分含有率,次いで液性限界,塑性限界との相関 が高いことを見出した上で,より簡便な手法から得られるこれらの値から残留摩擦角を 精確に予測し得ることを示唆している。 第5 章では,前章までの成果を要約し,総括している。
審 査 結 果 の 要 旨
申請者 房晨は,農業用貯水池における安全性確保を背景として,土のため池堤体の 安定解析に関わる問題に対する検討を行っている。その内容は,第一に実在の農業用貯 水池を対象とする堤体安定解析のケーススタディ,第二に土の性状による材料物性値変 化の実験的解析となっている。第一の検討では,従来より格段に増した耐震性への昨今の要求から,地震時の繰返し 挙動ならびに地震後の長期間におけるすべりの進行に配慮し,材料強さとして残留強さ を採用したニューマーク法によって,均一型土堰堤の安定解析を実施している。残留強 さの採用ならびにその精確な測定をもって従来手法の合理化を図り,従来は想定されて こなかった大地震における危険性を新たに指摘するに至っている。 第二の検討では,特に粒度の相違に対する応答を幹としながら,安定解析の入力たる 土の強さそのものに加え,より簡易な実験から得られる各種指標をも照合した上で,見 出された特性を整理している。その結果,粒度による強さの変化傾向を特定するととも に,強さと各種指標との相関を見出し,簡便な手法による強さの推定を提案するに至っ ている。 これらの知見は,水利施設工学における技術の進歩に時宜を得て貢献するものである とともに,土の力学として基本的な特性を新たに解明する可能性をも示唆するものであ り,基礎・応用の両面で学術的に寄与するものであることを認める。 基礎となる学術論文
1) Chen Fang, Hideyoshi Shimizu, Shin-Ichi Nishimura, Ken Hiramatsu, Takeo Onishi and Tatsuro Nishiyama: Seismic Risk Evaluation of Irrigation Tanks: A Case Study in Ibigawa-Cho, Gifu Prefecture, Japan. International Journal of GEOMATE, 14(41), 1–6, 2018.
2) Chen Fang, Hideyoshi Shimizu, Tatsuro Nishiyama and Shin-Ichi Nishimura: Predicting Residual Frictional Angle by Atterberg Limits for Reservoir Embankment Soils. International Journal of GEOMATE, 17(63), 111–118, 2019.
既発表学術論文 該当なし