岐阜大学医学部看護学科における卒業生の動向と本学科に対する要望
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(2) 岐阜大学医学部看護学科における卒業生の動向と本学科に対する要望. 護基礎教育を終えた後も継続した学習を行い自己の能力を高めていく必要があり 2),その継 続教育については大半を各病院や各施設に任されている 3)~4)。しかし, 「大学における看護 系人材養成の在り方に関する検討会最終報告」によると,今後の大学教育における課題と して,卒業生が生涯を通じて看護専門職としての能力を向上させ,発揮し続けることを組 織的に支援するための体制づくりや,卒業生以外にも門戸を広げ,看護師などに多様なリ カレント教育を提供する体制づくりの必要性が指摘されている 5)。 これまでいくつかの大学において,おおむね 10 期生を輩出する時期に動向調査が実施さ れており,卒業生が大学にどのような要望を持っているかが明らかになっている。川原ら 6)は,卒業生が描くキャリアを実現するために求める支援として, 「同年代,同職者との情. 報交換」 「キャリアデザインへの理解とアドバイス」 「能力やスキルの向上に向けた学習の 機会」 「在学中から保健師の働き方をイメージ化すること」を挙げている。竹内ら 7)も,卒 業生がキャリアアップ時に求める支援として,「進学や資格取得の相談窓口」 「興味ある講 義の受講」「大学院の情報提供」「研究指導」 「図書館の利用配慮」「給付型の奨学金」を挙 げている。その他にも卒業生が大学に求める支援について研究がされており,それらにお いても, 「同年代,同職者との情報交換」 「キャリアデザインへの理解とアドバイス」 「能力・ スキル向上に向けた学習会」 「研究支援」「未就業者への再就職支援」 「卒業生ネットワーク の構築」 「メンタルサポート(メールなどの支援)」が提案されている 8)~12)。これらの先行 研究は,卒業生のキャリア実現に関すること,あるいは様々な理由で離職した後の復職の 準備に関することであった。 本学科が行っている「卒業生支援の取り組み」では,卒業生が看護学の学びを礎として 多様な生き方を選択し,保健・医療・福祉などの分野で看護職として活躍することだけに とどまらず,就業の有無や職種を問わず様々な形で地域社会における活躍を支援すること を目指している。本学科では, 「社会貢献部会」の活動の一部として「卒業生支援の取り組 み」を開始し,3 年が経過した。これまで,専門看護師や認定看護師を招き講演会や交流会 などを実施してきたが参加者は多くはなく,取り組み内容や方法が卒業生のニーズに合致 したものなのか検討する時期であると考えた。 本学科において,卒業生の動向調査は 2008 年に 1 期生~3 期生を対象に実施され,卒 業生の就業状況の実態と,看護職をやめたいと思った経験の有無やその理由,仕事を続け る上で支えになることについて明らかにしている 13)が,それ以降は調査されていない。そ こで今回,卒業生を対象に,卒業後の就業の継続,離職,転職あるいは復職などの動向の 実態を把握し,本学科に対する要望を明確にすること,さらにこれらをもとに卒業生に向 けて本学科が貢献できる内容を検討することを目的として調査を行ったので報告する。. 2.方法 調査対象. 112.
(3) 岐阜大学教育推進・学生支援機構年報 第5号 2019年. 2004 年度から 2017 年度までの本学科卒業生 1,042 名(住所不明除く)を対象とした。 調査方法 2018 年 12 月から 2019 年 1 月に,郵送による無記名自記式質問紙調査を行った。 「岐阜 大学医学部看護学科同窓会 個人情報保護方針」に基づき,岐阜大学医学部看護学科同窓会 の協力を得て,研究協力依頼書,質問紙および返信用封筒を同封して各個人宛に郵送した。 回収方法は,質問紙に記入後,専用の返信用封筒により看護学科学務係担当者宛に返送を 依頼した。 1)調査内容 調査用紙を現在の状況別である「看護職として就業している人(以下,看護職)」,「看 護職以外で就業している人(以下,看護職以外)」,「就業していない人(以下,未就業)」 に分け,調査を実施した。 (1)基本属性(性別,年齢,卒業年,現在保有している資格について) (2)卒業後の動向(現在の就職の有無とその理由,就業している職種,離職・転職経 験及び理由) (3)復職について:未就業対象(復職希望の有無,復職希望理由,復職に対する気が かりなことについて) (4)母校への要望 母校の要望に関しては,既存の文献を参考に著者らが抽出した 7 カテゴリー( 『研 修』 『研究』 『資格取得』 『就職』 『設備』『交流』『相談』)に関する 35 項目について, 「全くない」 「あまりない」 「少しある」 「ある」 「非常にある」の 5 段階で回答を得た。 なお, 『研修』は「基礎看護技術の研修」「各看護専門分野に関する研修」「看護管 理に関する研修」 「職種別(保健師,助産師,養護教諭)の研修」 「最新の知識・技術 を学ぶ研修」 「看護に関するトピックスに対応した研修」 「医療・保健・福祉に関する 制度を学ぶ研修」 「講義の聴講」の 8 項目, 『研究』は「看護研究の研修」 「看護研究 の個別支援」 「卒業生間での共同研究の実施」 「教員との共同研究の実施」の 4 項目, 『資格取得』は「大学院進学に関する情報」「専門・認定看護師資格取得に関する情 報」の 2 項目, 『就職』は「看護教員採用に関する情報」「公務員採用に関する情報」 「U ターン就職に関する情報」 「転職・再就職情報(看護系) 」 「転職・再就職情報(看 護系以外) 」 「女性の職業継続に関する情報」 「起業に関すること」の 7 項目, 『設備』 は「看護学科の施設(実習室,セミナー室等)の開放」「図書館の開放(図書館利用 の優遇)」 「図書館の蔵書の充実」「図書館の休日開館や開館時間の延長」の 4 項目, 『交流』は「在校生との交流の機会」 「同窓会組織の強化」 「同職者同士の情報交換や 交流の機会」 「同学年との情報交換や交流の機会」 「他学年との情報交換や交流の機会」 「教員との交流の機会」の 6 項目, 『相談』は「相談・支援窓口の設置」 「メンタルサ ポート」 「子育て相談」 「介護相談」の 4 項目で構成した。. 113.
(4) 岐阜大学医学部看護学科における卒業生の動向と本学科に対する要望. 分析方法 回答者の属性,卒業後の動向については度数と割合及び平均値±標準偏差を算出した。看 護学科に対する要望に関しては, 35 項目および 7 カテゴリーについて信頼性検討のために Cronbach の α 係数(以下,α と記す)を求めた。35 項目全体および 7 カテゴリーそれぞれ の α を算出し,おおよそ 0.9 以上を確保していたため,十分な信頼性が認められた。また, Shapiro-Wilk 検定で正規性を確認し,ほぼすべてのカテゴリーにおいて p<0.05 であった。 そのうえで,看護職と未就業の 2 群間で 7 カテゴリーにおいて Mann-Whitney の検定を行 った。一連の分析は SPSS Ver25 for Mac を使用し,有意水準は 5%(両側)とした。 倫理的配慮 本調査は,岐阜大学大学院医学系研究科医学研究など倫理審査委員会の承認を得て実施 した(承認番号 2018-101)。質問紙は無記名であり,対象者には文書にて,調査目的,調査 方法,調査で得たデータは本調査以外では使用しないこと,自由意思の尊重,個人情報の 保護などを明記した。また,調査用紙には,調査に関する同意の確認欄を設けた。 用語の定義 本研究における転職とは, 「看護職以外の職に就くこと」とし,離職とは「職場を退くこ と(退職と同義) 」とした。. 3.結果 1,042 名中 310 名から回答があった(回収率 29.8%)。そのうち回答が不明瞭な 1 人を除 いた 309 名を分析対象とした(有効回答率 99.6%) 。 表1 所属期生別就業・未就業者数 就業. 基本属性 回 答 者 の 性 別 は 女 性 が 300 名 (97.1%) ,男性が 9 名(2.9%)であ った。回答者の平均年齢は,全体で 30.3±6.0 歳であり, 看護職が 30.0±6.6 歳,看護職以外が 31.7±3.2 歳,未就 業が 31.7±3.4 歳であった。回答者の. 所 属 期 生. 所属期生別就業未就業者数を表 1 に 示した。2019 年 1 月現在,看護職は 239 名(77.3%) ,看護職以外は 13 名 (4.2%),未就業は 57 名(18.5%). 114. 1期生 2期生 3期生 4期生 5期生 6期生 7期生 8期生 9期生 10期生 11期生 12期生 13期生 14期生 未回答 平均年齢. 看護職以外. N=239(9). N=13(0). N=57(0). 18 15 13 15 17 19 18 15 10 20 19 16 20 19 5. 1 1 2 2 2 0 2 0 0 1 0 1 0 0 1. 7 7 8 3 6 6 4 3 7 1 1 1 0 1 2. 30.0±6.6. 合計. 未就業. 看護職. N=309(9). 31.7±3.2 31.7±3.4 *()内は男性の人数. 26 23 23 20 25 25 24 18 17 22 20 18 20 20 8.
(5) 岐阜大学教育推進・学生支援機構年報 第5号 2019年. であった。 現在保有している資格は,看護師が 308 名(99.7%),保健師が 260 名(84.1%) ,助産 師が 37 名(12.0%) ,養護教諭が 16 名(5.2%) ,ケアマネジャーが 9 名(2.9%),認定看 護師が 4 名(1.3%)であった。その他にも,衛生管理者一種や治験コーディネーター,鍼 灸師,食生活アドバイザーなどの資格を取得している者もいた。 離職や転職経験について 回答者の離職・転職状況を 表 2 に示した。離職や転職経. 表2 回答者の離職・転職状況 看護職以外 N=13(%). 未就業 N=57(%). 合計 N=309. 離職・転職 回数. 看護職 N=239(%). 0回. 142 (59.4). 1 (7.7). 1 (1.7). 144. 1回. 51 (21.3). 6 (46.1). 28 (49.1). 85. 2回. 23 (9.6). 2 (15.4). 23 (40.4). 48. が 19 名(11.7%) ,4 回が 6. 3回. 14 (5.9). 2 (15.4). 3 (5.3). 19. 名(3.7%)であった。. 4回. 3 (1.3). 1 (7.7). 2 (3.5). 6. 5回. 2 (0.8). 1 (7.7). 0 (0.0). 3. 6回. 0 (0.0). 0 (0.0). 0 (0.0). 0. 7回. 1 (0.4). 0 (0.0). 0 (0.0). 1. 未回答. 3 (1.3). 0 (0.0). 0 (0.0). 3. 合計. 239 (100.0). 13 (100.0). 57 (100.0). 309. 験のある人は 162 名 (52.4%) であり,1 回が 85 名 (52.5%) , 2 回が 48 名(29.6%) ,3 回. 1 回目の離職・転職の理由 を図 1 に示した。理由として 最も多かったのは,「結婚」 であり,次いで「 (看護職の) 他の職場への興味」 , 「勤務時. 間が長い・超過勤務が多い」であった。看護職以外の現在の職種は,エステティシャン, 客室乗務員,治験コーディネーター,保育士,鍼灸師などであった。一見看護と関係がな い職種と思われる客室乗務員に転職したものは, 「不規則な勤務や急病人対応など看護師と しての経験すべてが役に立っている」と記載している。看護職を退職して転職した理由は, 「様々な視点からその人の健康,美しさに関わりたいと思った」,「助産師時代から東洋医 学に興味があった」,「学生のころから目指していた」,「ワーク・ライフ・バランスを考え て転職した」などであった。 未就業の 57 名のうち,46 名(80.7%)が「いずれ就業したいと思う」と回答しており, そのうち 35 名(76.1%)が看護職として復職希望であった。看護職として復職したい理由 を自由記載から表 3 にまとめた。 看護職として復職したい理由として最も多かったのは, 「せ っかく身につけた職業なので,今までの知識や経験,技術を活かせたら良いと思う」など の『資格を活かしたい』であった。次いで, 「保健師の経験や子育ての経験を活かして働き たい」などの『経験を活かしたい』,「看護職にやりがいを感じるから」などの『看護職に やりがい』であった。復職することに対して気がかりなことは, 「ブランクがあるのでつい ていけるかということ」が 39 名(84.8%), 「家事,育児,介護との両立ができるかという こと」が 37 名(80.4%) , 「技能が低下していること」が 36 名(78.3%)であった。. 115.
(6) 岐阜大学医学部看護学科における卒業生の動向と本学科に対する要望. 表 3 看護職として就業したい理由. 図1. (重複記述あり). 1 回目の離職・転職の理由(複数回答あり). 表 3 看護職として復職したい理由(複数記述あり) 理由 資格を活かしたい(10). 具体的な記載内容 ・せっかく身につけた職業なので今までの知識や経験,技術を活かせた ら良いと思う ・せっかく大学院で勉強しているので 学んだことを活かしたい. 経験を活かしたい(5). ・保健師の経験や子育ての経験を活かして働きたい ・今までの経験を生かせるから. 看護職にやりがい(3). ・看護職にやりがいを感じるから. 給料がいい(3). ・賃金が高いことが多いから. 生計を立てるため(3). ・生活のため. 子育てが落ち着いたら働きたい(3). ・現在は子どもが小さいので,少し落ち着いたら働きたい. 看護師として成長したい(2). ・看護を通して人と関わることが好きだったから。まだ仕事をやりきった と思えるほど働けていない. 看護職が好き(2). ・看護職が嫌になって辞めたわけではなく,現在は育児を優先したいと いう思いで主婦をやっている現状であります。育児が一段落し,時間 が確保できるようになったら就業を考えています. 保健師として働きたい(2). ・看護の技術低下に不安も大きいため,保健師の資格もあるのでそち らで働いてみたい. その他(3). ・看護職しかできないと思うから ・社会的立場が欲しい. 116.
(7) 岐阜大学教育推進・学生支援機構年報 第5号 2019年. 本学科に対する要望について 本学科への要望を図 2 に示した。要望について, 「非常にある」「ある」の回答をあり群 とし, 「少しある」 「あまりない」 「全くない」の回答をなし群とした。要望で最も多かった のは, 「同窓会組織の強化」であり,次いで「在校生との交流の機会」 「起業に関すること」 であった。反対に最も少なかったのは, 「最新の知識・技術を学ぶ研修」であり,次いで「職 種別(保健師・助産師・養護教諭)の研修」 「図書館の開放(図書館利用の優遇)」であっ. 図 2 本学科への要望. た。研修に関する要望は全体的に少. 表4 カテゴリー別就業・未就業者比較. なく,就職などの情報や在校生や他 カテゴリー 就業形態 就業 研修 学年,教員との交流に関する要望が 未就業 多かった。 就業者と未就業者の 2 群間で有意 差が見られたカテゴリーは,『設備 (p=0.02) 』と『交流(p=0.007) 』 であり,どちらも就業者の点数が高. 研究 資格取得 就職 設備. かった(表 4) 。また,今回有意差は. 交流. 見られなかったものの,『研修』と. 相談. 117. 就業 未就業 就業 未就業 就業 未就業 就業 未就業 就業 未就業 就業 未就業. 度数 218 54 224 54 224 55 221 55 223 55 224 55 220 56. 平均ランク 135.19 141.81 143.2 124.17 143.47 125.87 135.96 148.69 145.04 117.04 146.45 113.74 139.3 135.36. 中央値 29 30.5 12 11 6 5 21 22 15 14 16 12 11 11. P値 0.579 0.117 0.143 0.289 0.02 0.007 0.74.
(8) 岐阜大学医学部看護学科における卒業生の動向と本学科に対する要望. 『就職』に関する要望では,未就業者の得点が高かった。. 4.考察 卒業生の動向 本学科卒業生の就業状況は,看護職が 77.3%,看護職以外が 4.2%,未就業が 18.5%で あった。他大学の調査結果では,卒業生の約 90%が就業しているという結果が出ているが 7)14),本調査では. 81.5%の就業率であり,他大学と比べて低い結果となった。これは,本調. 査の対象の平均年齢が 30.3±6.0 歳であり,30 代は結婚や妊娠,出産などのライフイベント があることが影響していると考えられ,30 代前半は就業率が下がるとしている矢野ら 8)と 同様の結果が得られた。 卒業から今までに取得した資格では看護師が最も多く,次いで保健師,助産師,養護教 諭の順であった。本学科は四年制大学開学当初より,看護師・保健師が統合カリキュラム (保健師課程は 2012 年より選択制へと変更), 助産師養成課程が選択制で導入されていた。 また,2010 年より養護教諭養成課程が開始となったことから,看護師,保健師,助産師, 養護教諭の資格取得者が多い。その他にもケアマネジャーや認定看護師,衛生管理者一種, 治験コーディネーター,鍼灸師,食生活アドバイザーなどの資格を取得した者もいること から,専門領域でのキャリア形成志向があることや,働く中でさらに興味・関心を持った ことを深めていることが推測される。原. 15)は,中堅看護師のキャリアニーズについて,認. 定看護師,専門看護師といった分野を特定してスペシャリストになっていくだけではなく, その他の資格取得や大学院の進学など自分自身にあった分野を探したい者が多いと述べて いる。本学科の卒業生も,看護職として職務を継続していくだけでなく,自分自身のキャ リアについて考え,看護職の資格を活かしさらなる資格を取得していくことで,自分自身 の可能性を広げていることが示唆された。 卒業生の離職・転職状況 今回,およそ半数の卒業生が離職や転職経験ありと回答していた。日本看護協会が行っ た看護職員実態調査 16)においても,20 代は転職経験のある者が 2 割程度であったことに対 して,30 代は 5 割を超えていた。今回の調査対象も平均年齢が 30 代であることから,日 本看護協会の看護職員実態調査と同様の結果といえる。 離職・転職の理由として「結婚」が最も多く,女性が多い看護職では,結婚や妊娠・出 産といったライフイベントがあるため,先行研究 7)14)においても最も多い理由として挙げら れている。それに加えて本調査で「他の職場への興味」を持って離職・退職していること が明らかとなった。浜端ら. 17)も,転職理由として. 2 番目に「他にやりたいことがあった」. を挙げており,「職場に人間関係の不満」を上回る結果が明らかにされている。大原ら. 18). は,キャリア志向が強い看護師は,現状に強い不満はなくても,自己の専門性がもっと活. 118.
(9) 岐阜大学教育推進・学生支援機構年報 第5号 2019年. かせるような職場があれば,いつでも離職したい,あるいはそのような職場を積極的に探 していると述べている。現在看護職以外で就業している卒業生においても,客室乗務員や 治験コーディネーター,鍼灸師など看護学科で学んだことや看護職としての経験を活かし て働いている。 「給与」や「職場の人間関係」といった職場環境へのネガティブな内容では なく「他の職場への興味」が上位であることから,卒業生が自己のキャリアを考え,キャ リアパスの通過点として離職や転職を行っていることが考えられる。 未就業の人において,およそ 6 割が看護職として復職を希望していた。その理由として, 「資格を活かしたい」や「経験を活かしたい」,「保健師として働きたい」といったこれま での資格・経験に関すること, 「看護職にやりがい」や「看護職が好き」 , 「看護師として成 長したい」といった看護への価値に関すること, 「給料がいい」や「生計を立てる」といっ た生活に関することが多く挙げられた。看護職の資格や経験,看護への価値に関すること が生活に関することを上回っており,結婚や出産を経て看護職を離れてはいるものの,看 護職の仕事自体に否定的な感情を持っていないことが推測される。しかし,同時に復職へ の気がかりとして,「ブランクがあり技能が低下しているのではないか」といった不安や, 「家事や育児,介護との両立ができるか」という懸念を抱いている。看護職の資格を持ち ながらも現在看護職として就業していない者を潜在看護師というが,平成 22 年度末の調査 で潜在看護師の数は約 71 万人と報告されている 19)。これらの結果から,看護職の資格を有 する卒業生が潜在看護師としてとどまるのではなく,復職に向けて準備できるような研修 などの支援を検討していく必要があると考えられる。 本学科に対する要望と今後の取り組み 卒業生の大学に対する要望に関して,先行研究においては学習会や研修会が上位であっ た. 7)9)12)が,本調査では研修に関する要望は少なく,就職などの情報や交流が多いことが明. らかとなった。現在,研修会や学習会は病院内でも多く計画されていることや,院外研修 の機会も豊富にある。回答者の約 8 割が看護職であり,そういった機会が身近にあるため, 大学に対しての要望では低くなった可能性がある。この点について就業・未就業別で要望 を比較したところ,未就業の人の研修に関する要望が多かった。これは,未就業の人は研 修などの機会が少なく,上述したように復職したいとは考えていても復職に様々な不安を 抱いているため,研修などを希望していることが推測される。そのため,子育て中の卒業 生が受講しやすいような託児付きの研修や,週末の昼間の研修などを検討していく必要が ある。 要望として最も多かった同窓会組織の強化や,2 番目に多かった在校生との交流に関して は,現在同窓会会報の発行や同窓会総会の実施,同窓会と学科共催の在校生・卒業生交流 会を開催している。しかし,広報活動が十分ではないことやまだ活動を開始して期間が短 いことがあり,十分に卒業生に活動が知られていない可能性がある。今後は同窓会のホー ムページだけでなく SNS などの活用や,交流会を毎年同日に開催して定例化するなどの検. 119.
(10) 岐阜大学医学部看護学科における卒業生の動向と本学科に対する要望. 討も必要である。 3 番目に多かった要望は起業に関することであった。国の在宅医療推進の流れの中でそれ らへの関心や,鍼灸師として活躍している卒業生がいるように,看護職として働く中で他 の分野に興味を持ち,起業を考えている卒業生が多いことが推測される。この結果を受け て,今年度の Home Coming Day では,起業に関するセミナーの開催を予定している。 看護職と未就業で本学科への要望を比較した結果では,前述した「在校生との交流の機 会」などの『交流』以外に『設備』に関する要望が多かった。 『設備』に関する要望として は,実習室やセミナー室の開放,図書館の休日開館や閉館時間の延長,書籍の充実などが 含まれている。看護職として就業している人は,研修だけではなくタイムリーに書籍など で知識を得たい,さらに,就業先ではできない自分自身の技術の練習や確認などを行いた い,という気持ちを抱いていることが推測される。今後は,図書館との調整や実習室など の開放を検討し,リカレント教育の一環として卒業生が気軽に技術練習や学習会を実施し 自己研鑚していけるような場所の提供を検討していく必要がある。. 【引用・参考文献】 1) 文部科学省(2017) :文部科学大臣指定(認定)医療関係技術者養成学校一覧(平成 2 9 年 5 月 1 日現在) , http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/_ _icsFiles/afieldfile/2018/03/22/1314031_03.pdf,2018 年 7 月 29 日. 2) 日本看護協会(2003) :看護者の倫理綱領,https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/ rinri/rinri.html,2018 年 7 月 29 日. 3) 竹原則子,和田恵美子,後藤佳子(2015) :A 病院における看護師のキャリアアップと 院内継続教育へのニーズに関する実態調査,新潟県立看護大学紀要,4 巻,1-6. 4) 日本看護協会(2005) :2005 年新卒看護職員の入職後早期離職防止対策報告書,http s://www.nurse-center.net/nccs/scontents/sm01/SM010801_S1701.html,2018 年 7 月 29 日. 5) 文部科学省(2011):大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会最終報告, http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/40/toushin/__icsFiles/afieldfile /2011/03/11/1302921_1_1.pdf,2018 年 8 月 6 日. 6) 川原理香,伊藤美千代,岡田弘美,他(2017) :東京医療保健大学医療保健学部看護学 科卒業生の動向調査第 2 報-卒業生が職務遂行をする中でキャリアをはぐくむ経験と 求める支援-,東京医療保健大学紀要,12 巻 1 号,45-51. :長野県看護大学看護学部卒業生の動 7) 竹内幸江,安田貴恵子,有賀美恵子,他(2017) 向調査-1 期生(1998 年度卒業)から 16 期生(2013 年度卒業)までの調査-,長 野県看護大学紀要,19 巻,23-32. 8) 矢野紀子,徳永みなじ,野村美千恵,他(2007) :愛媛県立医療技術短期大学看護学科. 120.
(11) 岐阜大学教育推進・学生支援機構年報 第5号 2019年. 卒業生の動向(第 1 報)-職業定着と職業継続意思-,愛媛県立医療技術大学紀要,4 巻 1 号,13-50. 9) 山口利子,塩月ぬい子,矢野紀子,他(2007) :愛媛県立医療技術短期大学看護学科卒 業生の動向(第 2 報)-キャリア形成と本学への要望-,愛媛県立医療技術大学紀要, 4 巻 1 号,51-58. 10)南堀直之,村井嘉子,中道淳子,他(2014) :石川県立看護大学看護学部卒業生の動向 調査,石川看護雑誌,1 巻 11 号,51-62. 11)日比野直子,野呂千鶴子,山路由美子(2009):看護大学における卒業生サポートネッ トワークの構築を目指した卒後同行の把握及びニーズに関する研究,保健師ジャーナ ル,65 巻 8 号,676-682. 12)竹本由香里,桑名佳代子,原玲子,他(2014) :看護系大学におけるキャリア開発支援 に関する研究-卒業生の動向調査から-,北日本看護学会誌,16 巻 2 号,23-31. 13)杉浦浩子,中島美奈子,伊藤郁子,他(2010) :岐阜大学医学部看護学科卒業生の動向 及び勤務状況の実態,岐阜大学医学部紀要 56 巻,1-8. 14)岡田弘美,伊藤美千代,川原理香,他(2017) :東京医療保健大学医療保健学部看護学 科卒業生の動向調査 第 1 報―職業コミットメントに焦点をあてて―,東京医療保健大 学紀要,1 号,27-33. 15)原玲子(2016) :中規模急性期病院に勤務する看護師のキャリアニーズと職場定着意思 に関係する要因,北日本看護学会誌,19 巻 1 号,1-13. 16)日本看護協会(2014):2013 年看護職員実態調査,日本看護協会調査研究報告 No.88, https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/research/88.pdf,2019 年 7 月 26 日. 17)浜端賢次,江角伸吾,島田裕子,他(2013) :自治医科大学看護学部卒業生の現状調査 ―看護職を継続するための要因に着目した一考察―,自治医科大学看護学ジャーナル, 11 巻,65-73. 18)大原まゆみ,丸口ミサヱ,西尾和子,他(2004) :高度専門病院に勤務する看護師の定 着可能性,国立看護大学校研究紀要,3 巻 1 号,75-82. :第七次看護職員需要見通し期間における看 19)小林美亜,伏見清秀,白岩健,他(2013) 護職員需給数の推計手法と把握に関する研究,厚生労働科学研究費補助金(地域医療 基盤開発推進研究事業)平成 24 年度総括研究報告書,file:///C:/Users/%E8%81%96% E7%BE%8E/Downloads/201232026A0001%20(1).pdf,2019 年 7 月 21 日. 謝辞 動向調査にご協力賜りました本学科卒業生の皆さまに深く感謝いたします。また本調査 は「岐阜県看護学生等県内定着促進事業費補助金」の支援のもと実施できましたことを関 係者の方々に御礼申し上げます。. 121.
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2018 年度 2019 年度 2020 年度 2021 年度 2022 年度 2023 年度 2024 年度 2018 年度入学生 1 年次 2 年次 3 年次 4 年次. 2019 年度入学生 1 年次 2 年次
支援級在籍、または学習への支援が必要な中学 1 年〜 3
1978年兵庫県西宮市生まれ。2001年慶應義塾大学総合政策学部卒業、
●2014 年度に文部科学省からスーパーグローバル・ハイスクール(SGH)の指 定を受け、GGP(General Global Program 全生徒対象)
今年度は 2015
活動回数は毎年増加傾向にあるが,今年度も同じ大学 の他の学科からの依頼が増え,同じ大学に 2 回, 3 回と 通うことが多くなっている (表 1 ・図 1