• 検索結果がありません。

パターン視覚誘発電位に対する光の散乱の影響について : 心理物理学的検査との比較

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "パターン視覚誘発電位に対する光の散乱の影響について : 心理物理学的検査との比較"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

原  著 〔東女医大誌第64巻第9号頁 879∼888平成6年9月〕

パターン視覚誘発電位に対する光の散乱の影響について:

         心理物理学的検査との比較

東京女子医科大学 第二病院眼科(指導:宮永嘉隆教授)        テ   ツカ

      手 塚 ひ と み

      (受付 平成6年4月26日) Effect of I.ight Scatter on the Pattern Reversal Visual Evoked Response=         Comparison w量th Psychophysical Results

       Hitomi TETSUKA

Department of Ophthalmology(Director:Prof. Yoshitaka MIYANAGA)      Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital   The effect of light scatter on the pattern reversal visual evoked response(PVER)was studied in 6 normal subjects. The results were compared with contrast visual acuity, contrast sensitivity function, and g丑are disability.   Light scatter was induced by translucent acrylic sheets, Visual acuity measured with the low・contrast charts decreased significantly(p<0.0001)even with a small degree of light scatter.   Contrast sensitivity decreased with a small degree of light scatter especially for high spatial frequencies. Light scatter decreased PVER arnplitudes especially at the smaller checks with its peak shifted to larger checks. PVER was equally sensitive to light scatter compared to psycho− physical tests.          緒  言  パターン刺激による視覚誘発電位(pattern reversal visual evoked response, PVER)は,・ 1966年にSpekleijse1>により発表されてから眼科 的にまた神経学的に重要な検査法として発展し, その標準的な記録条件を確立するために数多くの 研究がなされてきた2).パターン刺激としては格 子(チェック)刺激が多く用いられているが,反 応に影響を及ぼすパターン刺激の因子としては, 時間周波数,空間周波数,コントラスト,刺激野 の大きさおよび平均輝度などがあげられる.その 結果の解析においては,記録できた最小のチェッ クサイズの評価だけでなく,横軸にチェックサイ

ズを,縦軸にPVERの振幅をとって描いた振幅

一チェックサイズ曲線からも検討する方法が考え られた3).最大の反応が中等度の大きさのチェッ

クの刺激によって得られる逆U字型の振幅

一チェックサイズ曲線が一般的に正常とされるが, 種々の視機能に影響を及ぼす疾患ではその曲線の 形に変化がみられるという報告がある4).一方,中 間透光体の混濁,例えば角膜の疲痕や浮腫,前房 内の細胞遊出や蛋白の析出,白内障,硝子体内の 混濁などは光を散乱させ,網膜に映る像のコント ラストを低下させるという5).初期の白内障の患 者はしばしば蓋明を訴えるが,高コントラスト指 標の一般の視力表め検査では変化を認めないかあ るいはあってもごく軽度である.しかし,このよ うな患者では低コントラスト像の分離能が低下し ているため,他の心理物理学的検査,例えばコン トラスト感度やグレア値などでは異常を示すこと がある6>∼8).Van der BergとBoltjesはくもりガ ラスを用いて散乱光を作ってパターンERGを記 一879一

(2)

録し,小さいチェック刺激において著明に振幅が 低下することを報告している9).しかし,視機能に 影響を与える重要な要素であるこの光の散乱の影

響をPVERで体系的に研究した報告は非常に少

ない.  今回,散乱光によってPVERがどのように影響 をうけるか研究し,また視力,コントラスト感度 およびグレア値などの心理物理学的検査の結果と 比較検討したのでここに報告する.        対象および方法  1.対象  眼科的に疾患のない6名(男性3名,女性3名) で,年齢は25丁目ら42歳(平均33.0歳)である. うち3名には中等度の屈折異常が認められたが各 検査に際しては完全に矯正し,すべての検査は hole−in−card法によって判定された優位眼にて 行った.検査の方法については被検者に充分説明 し,各被検者のインフォームドコンセントを得て から検査を実施した.  2.方法

 角膜から12mmの位置に手持ちのフレームを

保持し透明なアクリルシートを1,2,4,5, 6,8,10枚と順次増やしていき,人工的にいろ いろな段階の光の散乱を作った.本研究ではこの アクリルシートの枚数をもって光の散乱の程度と した.  また,アクリルシートを加えた際の平均輝度の 変化を,PVERで用いるテレビモニターの中心部 で計測した.  1)心理物理学的検査  (1)視力:WangとPomerantze仔10)によって 開発されたvariable−contrast visual acuity charts(VCVAC)を用いて測定した.この視力表 は4種の異なるコントラスト指標のチャートで合 成されている.つまり,高コントラスト(90%), 中コントラスト(15%),低コントラスト(2.5%), そして高コントラスト(90%)ではあるが,黒い 背景に白い指標が配置されている特殊なチャート (リバースチャート)の4種である.平均輝度は各

チャートにおいて均一である.検査距離は10

フィート(3.05m)で,各チャートとも20/12から 20/200まで13殺階の視力レベルがあり,各視力レ ベルごとに2っの“E”の指標が上下左右に任意の 向きに配置されている.今回は2つの指標のうち 指標の向きが2つとも正答した場合の視力を採用 した.  (2)コントラスト感度:Ginsburgll)により開 発されたvision contrast test system(VCTS) 6500(Vistech, Dayton, Ohaio)を用いて50ft−し の明るさのもとで測定した.この検査表は直径3 インチの円形の縞の指標が横に5列,各列8個ず つ配置されており,空間周波数は上の列から,1.5, 3,6,12,18cycle/degree(CPD)と変化し,各 列は左から右の指標へ徐々に縞のコントラストが 低くなっている.縞は縦,右斜めおよび左斜めの 3方向に任意に向いており,各空間周波数におい て縞の方向を正しく認識できる限界のコントラス トを記録した.  (3)グレアテスト:Wolf12)により開発された グレア測定器を用いて検査した.検査距離71cm のところに透明スクリーンが設置されており,中 心部にグレア光,その同心円上4,7,10度の位 置にランドルト環(14.5分)が各々8個ずつ配置 されている.グレア光の強さは5段階変換でき,

透明スクリーンはフィルターの挿入により

0.00184∼21.38mしまで4010gずつ背景輝度を変 えられるようにできている.各グレア光の段階ご とに,ランドルト環の向きを正しく認識するのに 必要な背景輝度を測定した.その測定値の和から 各年齢層毎の正常値を1とした比較値を求め,そ れをグレア値とした.  2)電気生理学的検査  PVERを施行した.電極は銀電極を用い,関電 極はOz(10−20方式で正中線上後頭結節一鼻根部の 距離の10%)に,基電極はPz(10−20方式の30%) に,そして接地電極は両耳朶においた.パターン 刺激は17インチの高画質テレビモニターを用い, 刺激野の大きさは10×10度(120clnの距離で20× 20cmの大きさ),平均輝度は50cd/m2,コントラス トは30%とした.スクリーンの中央には小さな黒 い四角いテープをはって固視標とした.パターン 刺激のチェックの大きさは,10,20,40,80,160

(3)

分の5段階とし,反転頻度は12回/sec(6Hz),解 析時間は500msecとした.今回は,steady・stateの みの検査とし,潜時の解析は除外した.50回の反 応の記録をコンピュータに導入し,70Hz(high− cut)および1.OHz(10w−cut)のフィルター条件と して加算平均した.  3)統計学的解析  視力検査とPVERの結果には統計学的解析を 加えた.  視力検査では次の2点に注目して解析した.ま ず視力表の各コントラストチャートにおいて,光 の散乱のないときつまりアクリルシートを加えな い状態での視力に比べて,どの光の散乱の段階で つまりアクリルシート何枚で有意に視力が低下す るかである.次に各光の散乱の段階において,各 チャートで測定した視力問で有意な差を認めるか についてである.PVERの結果の解析にも同様に 2つの項目について解析した.まず各チェックサ イズにおいて,光の散乱のないときの振幅と比べ て,どの光の散乱の段階でPVERの振幅が有意に      図1 アクリルシートによって人工的に光を散乱させて得た像の写真 右上の数字はその枚数を示す. 881一

(4)

低下するか,次に各チェックサイズ間で,光の散

乱の程度とPVERの振幅の関係が同様であるか

についてである.  各々の解析では,F検定で有意の差が認められ

た場合にDunnettのrnultiple comparison

procedure13)を用いて解析を行った.          結  果  図1はカメラのレンズの直前にアクリルシート を順次重ねていって撮影した写真の例で,シート により光の散乱が増すにつれて徐々に像が不鮮明 になる様子を示した.2枚では像の輪郭が鮮明さ を失い,8枚ではかなりコントラストが低下して いるのが認められた.  一方,平均輝度はアクリルシートを加えるにつ れてほぼ直線的な低下が認められ,10枚で0.210g unitの低下,つまり1枚では0.0210g unitの低下 であったため,諸検査の結果への影響はほとんど ないと判断した.  1.心理物理学的検査  1)視力

 図2はアクリルシートの枚数を変化させて

VCVACで視力を測定した6人の結果の平均の

グラフである.視力は視角で表し,光の散乱の少 ない段階での各コントラストチャートで測定した 視力の差異を強調するために,対数値で表示して ある.視力はどの光の散乱の段階でもリバース チャート,90%チャート,15%チャートそして 2.5%チャートの順であった.光の散乱のないとき の視力に比べて有意な視力の低下は,90%コント ラストチャートでは4枚目以上で,2.5%と15%, コントラストチャートではともに2枚目以上で, そしてリバースチャートでは90%コントラスト チャートと同様に4枚目以上で認められた(p〈 0,0001).  2)コントラスト感度  図3はアクリルシートを順次増やしていったと きの6人のコントラスト感度の結果を平均したグ ラフである.横軸は空間周波数を示している.光 の散乱なしでは,6.OCPDにおいて最も高いコン トラスト感度が得られ,わずかな光の散乱によっ

てとくに中空問周波数から高空間周波数

(6.0∼18.OCPD)においてコントラスト感度の低 下が顕著であった.その結果,グラフのピーク(最 も高いコントラスト感度を示す空間周波数)は光 の散乱が増えるとともに低空間周波数のほうへ移 動し,光の散乱なしではグラフのピークは6.O

CPDだったのが,2枚で3.O CPDへ,4枚目は

1.5CPDへと変化した.それとともにコントラス ㊨ 亀 も .貞

5

P

〈 日 〈

D

匹 〉 孟00 10 N=6 * * * * 1

0123456 

8 

10

 NUMBER OF ACRYHC SHEETS

犀■■怦黶。一  90%一contrast ■■■■o=「■■一  15%一contrast 嗣一一。匿一一  25%一contrast 一一軍O.一一  廼eversal po玉arity 図2 光の散乱による視力の変化(4種のコントラストチャートを用いて) *印は各コントラストチャートにおいてアクリルシートのない時の視力と比較して初 めて有意の差を認めた点.

(5)

〉・ ヒ ≧ ヒ ω

Z

山 ω ト ω 《 匡 ト

z

o

o

1000 100 10 重 N=6 1 1.5   3.0   6.0  12.018.0 number of sheets 一一 ■一  〇 一一汕黶@ 1 一一癘嚠黶@ 2 一一揶黶@ 3 一一。卜騨 4 一一 一一 5 一一ワ一一 6 一一勛鼈黶@8 100 SPATIAL. FREQUENCY (CPD) 図3 光の散乱によるコントラスト感度の変化 横軸は空間周波数(cycle/degree, CPD)を示す.  隻000 目 目 語 屋 100 田 謡 。 国  10 ≧ < 国

   0123456 

8

     NUMBER OF ACRYHC田EETS

   図4 光の散乱によるグレアの変化 アクリルシートなしのときのグレア値を1として比較 したグレア値(平均±標準偏差) *印はアクリルシートのない時のグレア値と比較して 初めて有意の差を認めた点. ト曲線の形状の平坦化も認められた.  3)グレアテスト  図4は6人のグレアテストの結果の平均から得 られたグラフである.光の散乱なしのときのグレ ア値を1として,光の散乱を加えた時の各グレア 値を計算し対数で表してある.シートを増やすに つれてグレア値は上昇し,シート2枚で5.40± 1.66(平均±標準偏差)とかなり増加したが,統

計的に有意な変化は6枚目以上で認められた

(40.05±23.7,F=18.29, p<0.05).  コントラスト感度とグレアテストはアクリル シート10枚での測定も試みたが,信頼性のある結 果は得られなかった.  2.電気生理学的検査 .PVERの振幅は光の散乱が増加するにつれて 減少した.図5に同一被検者から得られたPVER の記録例を示す.10分の小さいチ.エックではアク リルシート1枚でも顕著に反応が低下し4枚目で は記録不能となったが,160分および40分のチェッ クではアクリルシートを加えてもかなり振幅は保 たれ8枚目までPVERの記録が可能であった.  光の散乱のないときには,4人の被検者では最

大のPVER振幅が40分のチェックサイズで得ら

れたため,振暗チェックサイズ曲線は逆U字型 を示し,他の.2人では最大の振幅が10分のチェッ クサイズで得られたため振幅一チェックサイズ曲 線はhigh pass mter型を示した.すべての被検者 においてわずかな光の散乱でも正常の形はくず れ,曲線のピークが大きいチ手ックのほうへとず れるとともに平坦化が見られた.ピークの大きい チェックのほうへの移動は,被検者6人のうち1 人ではアクリルシートわずか1枚ですでに認めら

れ,3人では2枚目で,そして残りの2人では3

一883一

(6)

窯60min,of arc 40min.o「arc 10min. of arC 0 2 聾 2 9 名 雪 ε 乙 弱 己 き ち 麗 5 岩 1

2ゾ▽∼ヘハ摩

3       図5 PVER(チェックサイズ160,40,10分)の記録例 左端の数字はアクリルシートの枚数を示す.     サリ 

櫛_」

四 〇 ⊃ ヒ 」 ユ 《 田 〉 山 ≧ ト < 一J

u

1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 Number of sheets 一一 一・ 〇 一一怦鼈黶@1 一一?鼈黶@ 2 一一揶黶@ 3 一一?鼈黶@4 一一宴Rー一  5 一一q一一 6 一一D一一 8 α0     160    80     40     20     10     CHECK SIZE(min of arc) 図6 光の散乱によるPVERの振幅一チェックサイズ曲線の変化 各被検者から得られた最大の振幅を1として計算した6人の結果の平均をとってい る. 枚目で認められた.  図6は各々の被検者から得られた最大の振幅を 1として計算し,その6人の結果を平均して得ら 884 れた振幅一チェックサイズ曲線である.光の散乱な しでは曲線は逆U字型でピークは20分にあった. アクリルシート1枚でピークは40分のチェックの

(7)

四 〇 ⊃ ヒ _1 ら く α= 山 〉 四 ≧ ← 《 」 国 匡 1.2 tO 0.8 0.6 0.4 0,2 0 N=6 * *  * * * 一一ワ一一 160min.of arc 一一一Z一一 80mln,of arc ・一一マ一一 40min.of arc 一蹴一一 20min.of arc _一怦鼈黶@10min.of arc

  0123456 

8

    NUMBER OF ACRYLIC SHEETS

        図7 PVER振幅の光の散乱による変化 各チェックサイズにおいてアクリルシートなしのときの振幅を1として計算した6人 の結果の平均をとっている.*印は各チェックサイズにおいてアクリルシートのない 時の振幅と比較して初めて有意の差を認めた点. 方へずれ,シートを重ねるに従い曲線の平坦化が 見られた.  図7は各チェックサイズごとに光の散乱の程度 とPVER振幅の関係を示したグラフである.アク リルシートなしのときの振幅を1として計算し, その6人の結果を平均したものである.チェック サイズ10,20,40,80,160コ口グラフの傾斜の角 度は各々一L29,一〇.91,一〇.68,一〇.31そして一 〇.21であり,F検定では,チェックサイズ問で光の

散乱の程度とPVERの振幅の関係が有意に異

なっていた(p<0.0001).グラフの傾斜の角度は 80分と160分,あるいは20分と40分の間では有意差 はなかったが,80分目よび160分と40分および20分 を比較すると有意な差が認められた.また10分の グラフの傾斜は40分の傾斜より有意に大きかっ た.各々のチェックサイズにおいては光の散乱の ない時に比べていろいろな光の散乱のレベルで PVER振幅に有意な低下が見られ,10分ではアク リルシート2枚,20分と40分では3枚,そして80 分と160分では4枚以上で有意差が認められた.          考  察  コントラストの変化と視力の関係についてはこ れまでいくつかの報告があり,黄斑部や視神経の ごくわずかな異常を検出するためには低コントラ スト指標の視力表を用いるのが有用だといわれて いる14)∼16).このような患者の視力を,高コントラ スト視力表で測定するとしばしば正常範囲内であ るが,低コントラスト視力表で測定すると低下し ているのが認められることがある.今回の研究で は,アクリルシートの枚数が少ない時,標準の高 コントラスト(90%)チャートで測定した視力よ りも,低コントラスト(2.5%)や中コントラスト (15%)チャートで測定した視力の方が大きく低下 したため,わずかな光の散乱の影響を検出するの に効果的であるといえる.  つまり,一般の高コントラスト視力表では,中 間透光体のごく軽微な混濁による視力障害を検出 できない可能性があることを示唆する.例えば白 内障患者の70%は,戸外で視力を測定すると室内 での測定結果に比べて2段階の低下がみられたと いう報告がある17).一方,リバースチャートで測定 した視力は最も光の散乱の影響を受けにくかった が,これは低視力者の中に白い背景に黒字よりも 黒い背景に白字の方が見やすい人がいる事実と一 一885一

(8)

致する.  これまでコントラスト感度はいろいろな障害, たとえば弱視4)18)や角膜浮腫7)など’によって変化 することが報告されてきた.ごく軽微な角膜浮腫 によっても高空間周波数に対するコントラスト感 度が低下することが報告されており,また白内障 患者においても高空間周波数から中空間周波数に おけるコントラスト感度の低下が報告されてい る6)8).  我々の方法は,眼前にアクリルシートをおくこ とで光の散乱をおこし,白内障や角膜混濁といっ た病態に類似した状態を作りだしたと考えている が,当然全く同等ではない.けれども今回の結果 は概してこれまでの臨床的な研究の報告に反する ものではなかった.コントラスト感度はごくわず かな光の散乱でも変化を示し,特に高周波数領域 でより顕著にコントラスト感度が低下するのを認 めた.  グレアテストではわずかアクリルシート1枚で 正常値の約3倍のグレア値を示し,中等度の光の 散乱で明らかなグレア値の増加を認めた.ランド ルト環の大きさは被検者の視力の限界より明らか に上であったので,識別能の低下はアクリルシー トによる光の散乱の増加によるものであるといえ る.  以上の結果より,コントラスト視力,コントラ スト感度およびグレアテスト等の心理物理学的検 査においてはわずかな光の散乱,たとえばアクリ ルシート2枚程度でも視機能に影響がでることが’ わかった。  次にPVERの結果では,わずかな光の散乱で振 幅一チェックサイズ曲線の正常な形が失われ,とく にチェックサイズ10分および20分といった小さい

チェックサイズにおいてPVER振幅の低下が顕

著であった.これらの結果は光の散乱の影響を PERGで研究したVan der BergとBoltjes9>の結 果と合致する.PVERへの光の散乱の影響につい てはMitsuyuとZlmmer18)のバンガーターパッ チを用いた研究で,半透明なシートを与えること は焦点のずれというよりも中間透光体の混濁の模 擬になるだろうと述べている.ただし今回の実験 において8枚から10枚とアクリルシート数が多く なると,やはり光の散乱のみでなく焦点のずれの 影響が加わったであろうと思われる.PVERに対 する焦点のずれの影響については,小さいチェッ クサイズにおいては非常に影響があるという報告 がいくつかある19)∼22).焦点のずれと光の散乱は異 なった現象ではあるが,アクリルシートの数がか なり多くなると明確にこれらの影響を分離できな くなるのは避けられない.  PVERと心理物理学的検査の関係については, 勝海ら23)がPVERによって得られたコントラス ト感度と心理物理学的検査から得られたコントラ スト感度を比較検討して,ほとんどの空間周波数 で平行した結果が得られたと報告している.今回

の実験では光の散乱によってPVERの振幅

一チェックサイズ曲線はとくに小さいチェックサ イズにおいて正常の型が失われたが,これは心理 物理学的検査においても同様に見られており,わ ずかな光の散乱に対して,PVERは中コントラス トから低コントラスト指標の視力検査やコントラ スト感度,およびグレアテストと同等に感受性が あるといえる.  また,今回の研究はPVERの結果の解釈に重要 な示唆を与えていると思われる.高齢の患者に黄

斑および視神経の疾患の検出のためPVERを施

行した場合,特に水晶体の核の硬化などがある場 合などに,PVERの結果に光の散乱の影響が加味 される可能性が高いからである.加齢によっての グレアの増加24),コントラスト感度の低下25)およ びPVERの変化26)などが報告されている.PVER は視機能を評価する臨床検査としては有用である が,正常なPVERを変化させるすべての要因を考 慮しないと正しい診断はできない.光の散乱はそ の一つの重要な因子であろう.  以上の結果より,PVERは眼に対する光の散乱 の影響を客観的に分析するための有用な方法の1 つであると思われ,今後実際の臨床における応用 が望まれる.          結  論  パターン視覚誘発電位(PVER)および心理物理 学的検査に対する光の散乱の影響について実験を

(9)

行った.心理物理学的検査としては,4種類のコ ントラスト指標を用いた視力検査,コントラスト 感度,およびグレア検査を行い,PVERの結果と 比較検討した.高コントラストチャート(90%) で測定した視力は光の散乱があっても比較的保た れたが,中コントラスト(15%)および低コント ラスト(2.5%)チャートで測定した視力はわずか な光の散乱でも明らかな低下が認められた.また コントラスト感度は,特に高空間周波数領域にお いてわずかな光の散乱でも低下が認められ,グレ アテストでも,グレアの増加が認められた.   一方,PVERにおいてはわずかな光の散乱で特 に小さいチェックサイズにおいて振幅が減少し, 振幅一チェックサイズ曲線の形も変化した.PVER は光の散乱の影響に対する他覚的検査の1つとし て応用が期待される.  稿を終えるにあたり,御指導および御校閲いただき ました宮永嘉隆先生,勝海 修先生,広瀬竜夫先生に 深謝いたします.        文  献   1)Spekreijse H: Analysis of EEG Responses in     Man Evoked by Sine Wave Modulated Light.     pp129−152, Junk, The Hague(1966)   2)Arden GB, Bodis・Wallner I, Halliday AM et     al:Methodology of patterned visual stimula−     tion.肋Vi.sual Evoked Potentials in Man:New     Developments(Desmedt JE ed)pp1−15, Claren−     don Press, Oxford(1977>   3)Regan D:Speedy evoked potential methods     for assessing vision in norlnal and ambIyopic     eyes:Pros and cons. Vision Res 20=265−269,      1980   4)Levi DM, Harwerth RS= Contrast evoked     potentials in strabismic and anisometropic     amblyopia. Invest Ophthalmol Vis Sci 17:     571−575, 1978   5)Miller D, Benedek G:Relationship between     eye pathology and light scattering. ∫η     Intraocular Light Scattering, Theory and Clini−     cal Application, pp53−74, Charles C Thomas,     Spring丘eld(1973)   6)Hess R, Woo G:Vision through cataracts.     Invest Ophthalmol Vis Sci 17:428−435,1978   7)Hess RF, Carney LG: Vision through an      abnormal cornea:Apilot study of the relation・    ship between visual loss from corneal distor−    tion, corneal edema, keratoconus, and some    allied corneal pathology. Invest Ophthalmol    Vis Sci 18:476−483,1979 8)Abrahamsson M, Sjostrand J:Impairment    of contrast sensitivity function (CSF)as a    measure of disability glare. Invest Ophthalmol    Vis Sci 25=1131−1136,1986 9)Van der Berg TJTP, Boltjes B: The point−    spread function of the eye from O to 100 and the    pattern electroretinogram. Doc Ophthalmol    67:347−354, 1988 10)Wang J−G, Pomerantze宜0:Anew set of    variable−contrast visual acuity charts. Optom    Vis Sci 68=34−40,1991 11)Ginsburg AP: A new contrast sensitivity    vision test chart. Am J Optom Physiol Opt 61:    403−407, 1984 12)Wolf E:Glare and age. Arch Ophthalmol    64:502−514, 1960 13)Dunnett CW:Amultiple comparisons proce−    dure for comparing several treatments with a    control. J Am Stat Assoc 50:1096−1121,1955 14)Mainster MA, Timberlake GT, Schepens CL=    Automated variable contrast acuity testing.    Ophthalmology 88:1045−1053,1981 15)Regan D, Neima D=Low−contrast letter    charts as a test of visual function. Ophthalmo1−    ogy 90:1192−1200, 1983 16)Neumann AC, McCathy GR, Steedle TO et al:    The relationship between indoor and outdoor    SneUen visual acuity in cataract patients. J    Cataract Refract Surg 14:35−39,1988 17)Sawada K=Spatial modulation transfer func−    tion of anisometropic amblyopia−The study of    the anisometropic eye(II), Acta Soc Ophthal−    mol Jpn 87:827−831,1983 18)Mitsuyu M, Zimmer EM l Bangerter oc.    clusives versus spherical convex Ienses in the    evaluation of visual acuity by visually evoked    cOrtical potentials. Dev Ophthalmol g:    115−122, 1984 19)Van LG, Van MW, Bartl G et al:Visual    acuity and checkerboard potentials with    defocusing lenses. Doc Ophthalmol Proc Series    13二13−19, 1978 20)AdacLi−Usami E:Comparison of contrast    thresholds of Iarge bars and checks measured    by VECPs and psychophysically as a function    of defocusing. Graefes Arch Clin Exp Ophtha1−    mol 212:1−9,1979 21)Kakisu Y, Runne A: Pattern VECP in rela. 一887一

(10)

tion to spatial contrast the effect of defocus. Fortschr Ophthalmol 81:651-653, 1984 22) Katsumi O, Hirose T, Sakaue H et al : Effect of optical defocus on the steady-state pattern reversal visual evoked response. Ophthalmic Res 22:383-390, 199e

23) Katsumi O, Tanino T, Hirose T: ment of contrast sensitivity function using pattern-reversal visual evoked responses. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 223: 190-195, 1985

24) Wolf E, Gardiner JS : Studies on the scatter of light in the dioptric media of the eye as a basis of visual glare, Arch Ophthalmol 74 : 338-345, 1965

25) Owsley C, Sekular R, Siemsen D: Contrast sensitivity throughout adulthood. Vision Res 23 : 689-699, 1983

26) Adachi E: Objective assessment of senile changes in vi.sual function by visually evoked cortical potentials. Acta Soc Ophthalmol Jpn 93 : 1085-1097, 1989

参照

関連したドキュメント

遺伝子異常 によって生ずるタ ンパ ク質の機能異常は, 構 造 と機能 との関係 によ く対応 している.... 正 常者 に比較

自ら将来の課題を探究し,その課題に対して 幅広い視野から柔軟かつ総合的に判断を下す 能力 (課題探究能力)

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

視することにしていろ。また,加工物内の捌套差が小

■使い方 以下の5つのパターンから、自施設で届け出る症例に適したものについて、電子届 出票作成の参考にしてください。

 親権者等の同意に関して COPPA 及び COPPA 規 則が定めるこうした仕組みに対しては、現実的に機

さらに, 会計監査人が独立の立場を保持し, かつ, 適正な監査を実施してい るかを監視及び検証するとともに,

光を完全に吸収する理論上の黒が 明度0,光を完全に反射する理論上の 白を 10