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会社機会の流用禁止 : 韓国の商法改正案を中心として 利用統計を見る

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(1)

会社機会の流用禁止 : 韓国の商法改正案を中心と

して

著者名(日)

李 芝妍

雑誌名

東洋法学

53

1

ページ

137-152

発行年

2009-07-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000697/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

︽論  説︾ 東洋法学 第53巻第1号(2009年7月)

会社機会の流用禁止

     韓国の商法改正案を中心として

はじめに

芝 妊

 取締役と会社との間に取引があった場合、日本と韓国では主に取締役の善管注意義務、忠実義務、競業避止義務 などの違反が問題となっている。これに対し、アメリカではこれらの義務以外に判例上の理論である会社機会の理 論︵跨①3。区器98∈貫四盆88濤毒芽︶を問題とする場合が多い。アメリカ法では、取締役の競業自体につい        ︵1︶ ての規制はないが、取締役が会社の機会を奪取することについては規制しており、同理論は取締役の忠実義務を基 礎として発展した法理である。この法理によると、取締役は会社に帰属すべき利益または事業上の機会を奪取でき ない。もしこれに違反した場合、会社は事前に上記利益または機会に対する禁止命令を請求できるし、事後的には それによって取得した財産を会社に返還するよう、請求するか、処分によって得た利益を会社に提供するよう、請 求できる。 137

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 日本と韓国の場合、会社機会の流用の法理に関連する直接的な規定は設けておらず、会社の営業部類に属する取 引に関連して同理論に類似する競業避止義務規定を設けていたが、最近、韓国の商法改正案では取締役が現在また は将来において会社に利益となり得る事業機会を不当に流用して自分または第三者が利益を得ることを禁ずること をその内容とする﹁会社機会の流用禁止規定﹂を取り入れている。具体的には、商法改正案第三九八条︵取締役と 会社との取引︶第三項は、﹁取締役が将来または現在において会社の利益となり得る次の各号の一つに該当する会 社の事業機会を第三者に利用させたりして会社と取引をする場合には、第一項に従って取締役会の承認を得なけれ ばならない。一号職務を行う過程で知ることになったか、会社の情報を利用した事業機会、二号会社が行っている か、行う予定の事業と密接な関係にある事業機会﹂と定めている。すなわち、取締役の会社機会の流用禁止を自己 取引の承認規定の中に定めることによって、その適用範囲を縮小している。そして、この定めについて、法務部 は、最近、一部の財閥企業が非上場の系列社に事業上の特恵を与えた後、それを通じて財閥二世に経営権の相続を 図ることが多いことから、現行商法の﹁取締役の充実義務﹂をより具体化して明記したのであるとその立法趣旨を 説明している。  韓国では大規模企業集団を中心に﹁仕事上の特恵﹂による財閥一家の私的利益の追求行為︵会社機会の流用︶ま たは系列社への不当な支援行為が蔓延っているし、その規模面でも深刻性をより増しっていることが確認されてい る。会社機会の流用及び仕事上の特恵は、最近、財閥一家の経営権の維持・承継の新たな手段として活用されてお り、その結果、得られる支配株主の利益は本来ならば会社及び少額株主の損害に帰結されるという点からすると、 これらの該当行為に対する規制の大切さは再論の余地がないものであるだろう。しかし、会社機会の流用禁止につ いては、アメリカやイギリスがその判例を通じて認めているだけであって、会社機会の流用禁止を直接に立法化し 138

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東洋法学第53巻第1号(2009年7月) ている国は存在しない。このような実情の中、韓国が会社機会の流用禁止を立法化しようとするのは、やはり韓国 の経済社会事情を反映した結果であるとしか言えないであろう。  しかし、韓国における取締役の会社機会の流用禁止は独立条文として規定するのではなく、自己取引承認規定       ︵2︶ ︵商法第三九八条︶の中に、取締役が第三者に対して会社の事業機会を流用させた後、再び会社と取引をする場合 には取締役会の承認を得なければならないと規定しているので、機会流用の禁止規定を自己取引とつなぐことに よってその適用範囲を縮小している。その結果、この規定については様々な意思と批難の声が多く寄せられている が、市民活動の中心団体である参與聯隊はこの条文の立法を強く求めている状況である。  以下、本稿ではアメリカの判例を通じて定着した会社機会の流用禁止について簡略に紹介した後、韓国において 議論されている会社機会の流用禁止条項の立法妥当性について考察する。 二 会社機会の流用禁止  1.意義  会社機会の流用の法理は、アメリカの判例法で認められている理論として、﹁会社の執行役員とか取締役など、 会社の委任を受けた受任者が受任者としての地位および信頼関係を利用して会社の機会を不当に奪い取って私的利 益を追求することを許容しないことである﹂と一般的に定義している。すなわち、企業の代理人である執行役員や 取締役などが企業と競争になる状況を規制するため、会社に与えられた事業機会を流用することを禁じている。  アメリカ法における会社機会の法理は取締役および役員だけでなく支配株主と重要な被雇用人にまで広く適用さ れており、公開会社だけでなく閉鎖会社にまでこの法理を適用しているにもかかわらず、この法理を明確に定義す 139

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るのは容易ではない。なぜならば、アメリカでは各州の会社法が会社機会の流用について明文規定を設けておら ず、判例法上、会社機会の成立についての基準が提示されているからである。しかも、関連団体および学者の立場       ︵3︶ も一致していなっかった。従って、上記内容の定義はあくまでも一般的な定義にすぎないのである。  アメリカ法律協会︵>B98⇒冨譲H房算昌曾>口︶のコーポレート・ガバナンスによると、会社の取締役また は上級執行役員︵ω①巳8①器2牙o︶は会社の機会を利用できない。会社の機会は、上級執行役員が分かることに なった機会の場合、会社が営むか営むだろうと期待される事業と密接な関係のある場合に限って会社の機会として 認める。そして、取締役の場合は、①取締役が会社のための職務執行と関連して分かった機会、②取締役が機会を 提供する者がその機会を会社に提供するだろうと合理的に期待できる状況の中で分かった機会、③もし取締役が会 社に利益となる機会であると信じられる合理的な期待がある場合には、会社に属する情報とか財産によって分かっ        ︵4︶ た機会は、会社の機会であると定義している。そして、会社の機会であるか否かを判断する際、ALIは事業計画 の出処を根拠として分析している。  2.判断基準と違反効果  前述のように、アメリカの判例によって発展した会社機会の流用は会社利益となり得る機会を自身または第三者 の利益として奪い取る行為として、取締役の個人的利益を会社の利益より優先するという点からすると、取締役の 忠実義務に対する違反である。そして、その義務違反を判断する基準については、期待理論︵HgR①曾9国昌の♀ 壁身↓①8、事業延長線理論︵匡話9ω房ぼ8ω↓①8、衡平性理論︵評一旨①ωω↓のω什︶、折衷理論︵国。一①。牙Φ︾マ 實8魯︶などがある。まず、期待理論は、ある事業が会社の機会であるか否かを判断するためには当該会社がそ 140

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東洋法学 第53巻第1号(2009年7月) の事業に対して実質的な利害関係または期待があったかを判断しなければならないとしている。この基準は会社に 特別な利害関係のある具体的な投資状況を中心としており、会社の機会というのは事業の機会を意味するものとし       ︵5︶      ︵6︶ て、事実関係と密接な関連がある。従来、アメリカ法院の多くがこの理論を適用した判決を下していたが、現在は この理論を適用する判例は殆どない。  事業延長線理論とは、機会が会社の現在または将来の事業の延長線上にある時には会社の機会と看倣すことであ る。この理論を適用する法院の場合、新たな事業と既存の事業を比較して機能的な関連性の有無を判断した上、関        ︵7︶ 連性がある場合を会社の機会と看倣すとしている。そして、衡平性理論は、ある事業が会社に属するものであるか 否かを判断するためには、会社の役員によって奪取された機会が会社に衡平なものであったかどうかで判断すべき        ︵8︶ であるとしている。最後に、折衷理論とは、上記の理論を折衷した理論であり、最近、アメリカ法院の殆どがこの       ︵9︶ 理論を適用している。そして、︾口国β。邑①§98︵び︶もこの理論に従って定められている。  会社機会を流用してはならない義務を負う取締役および役員が会社の事業機会を取得することでその義務を違反 する場合、会社は事前に会社機会の流用行為に対する禁止命令を請求できるし、事後的には流用行為によって取得        ︵10︶ した財産や利益を会社のために擬制信託︵8房霞琴牙曾旨8したものと看倣す。  なお、会社の機会であると判断されても、会社から事前に同意を得て事業を行った場合には免貢されることにな る。  3.区別概念 ︵1︶取締役の自己取引制限との区別 141

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 取締役の自己取引は会社と同会社の取締役、役員、従業員などと取引をすることを意味するが、会社機会の流用 禁止は取締役、役員、従業員などが自分の利益のために取引をしたり、機会を得られたりする状況をいう。すなわ ち、会社の受任者である者が忠実義務を負っている会社に当然与えるべきである事業機会を奪い取ることを禁じる ことである。従って、アメリカの判例上の会社機会の流用禁止では会社との取引は会社の機会に含まれない。  取締役の自己取引を制限する基準は公正性にある反面、会社機会の成立可否の判断基準は告知である。取締役の 自己取引制限は取締役がその地位から離れて個人的な立場で会社に利益相反取引をする場合であって、取締役が会 社と直接の取引相手方となったり、相手方の代理人または代表者として取引をする場合、自らの地位を利用して会 社に損害を被らせる恐れがあるので、取引の公正性を確保し会社の損害を防止しようとするものである。これに対 し、会社機会は取締役が取引をする前に告知をしたのか、会社がその機会を引き受けなかったか、あるいは引き受       ︵n︶ けられなかったかなどに関するものである。  このように、アメリカでは取締役の自己取引制限とは別途の理論として発達した会社機会の流用禁止を韓国の改 正案は取締役の自己取引制限の中で規定している。特に、その適用範囲を取締役が第三者に対して会社の事業機会 を利用できるようにして、会社と取引をする場合に制限しているので、アメリカの判例法での解釈とは異なるもの   ︵12︶ である。 ︵2︶取締役の競業禁止義務との区別  競業禁止義務はその競争が善意である場合を除き、受任者が競争する事業を取得してその雇用主と競争すること を強制的に禁ずることで、受任者である取締役などが直接に会社が営んでいる営業と同種の営業を行うことを禁じ ている。これに対し、会社機会の流用禁止は競業禁止義務の範囲を少し拡大したものとして、受任者が競業する事 142

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東洋法学 第53巻第1号(2009年7月)       ︵1 3︶ 業を取得することでその義務を違反したことになるかを決定することと関連するものである。  会社機会の流用と関連して取締役や役員などの競業避止義務の違反有無が問題となる場合は、取締役や役員など       ︵14︶ が会社機会の利用範囲を超過した場合となるだろう。韓国商法第三九七条の競業避止の対象となるものは、自己ま たは第三者の計算で会社の営業部類に属する取引をすることである。この競業避止と会社機会の流用禁止は同じく 取締役の忠実義務を基礎としており、取締役が特定の営業に従事することを禁じす点でも同様である。しかし、競 業避止義務は現在において会社の営業部類に属する取引がその禁止対象であるが、会社機会の流用禁止では会社機 会が必ずしも会社の営業部類に属する必要はないが、一定の要件を備えると会社の事業機会であると認められ、そ の流用が禁じられることになる。そして、競業避止義務の違反について、会社が取締役に対して損害賠償請求権の       ︵15︶ 以外に介入権も行使できるという点で異なっている。  会社機会の流用禁止を立法することに反対する見解では、忠実義務に関する規定または取締役の競業禁止︵避        ︵16︶ 止︶義務に関する規定の解釈を通じて十分に取締役の会社機会の流用行為を阻止できると主張している。この点に ついて、アメリカのALI原則では両者を明らかに区別しており、会社機会の流用禁止関するアメリカの判例に よっても会社機会の流用では会社の事業と競争関係でなくても会社機会に含まれるので、会社機会の流用禁止を独 立的に規定しないで、取締役の競業避止義務に関する規定の解釈を通じて会社機会の流用を防ごうとするのは会社       ︵17︶ 機会の適用範囲を縮小解釈することになってしまい、その効率性を保障できなくなってしまうという見解もある。 143

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三 商法改正案第三九八条第三項︵会社機会の流用禁止︶  1.導入への背景と内容  株式会社において会社と取締役との関係においては民法上の委任に関する規定︵韓国民法第六八○条以下︶を準 用︵商法第三八二条二項︶することになっているので、取締役は会社に対して受任者の立場から取締役会を構成員 として会社の業務執行の意思を決定する権限を有することになる。そして、商法は、取締役に業務執行の決定権を 与えるとともに会社に対する義務と責任を付与している。従って、取締役は会社の業務を執行する立場から会社の 製品、顧客など、会社の内部情報を容易に取得できるし、会社の業務執行に関連する取引先とか人脈などを活用で きる有利な立場にある。従って、会社の業務を執行・決定できる取締役がその地位から知ることになった会社の営 業機会を利用して、会社の利益を犠牲にしながら取締役または第三者の個人的な利益を図ることで取締役と会社と の間に利益が衝突することになる。そこで、韓国商法第三九七条一項は﹁取締役は、取締役会の承認がなければ自 己又は第三者の計算で会社の営業部類に属する取引をし、又は同種営業を目的とする他の会社の無限貢任社員又は 取締役となることができない﹂とし、取締役と会社間の競業を禁じている。しかし、近年、韓国では会社機会と関       ︵18︶      ︵19︶ 連して会社利益の侵害事例が頻繁に問題となっており、この問題について参與聯隊などの市民団体の主導下で、財 閥企業の不透明な経営を改善しようとする財閥改革運動が展開され、その中で行われた調査結果などの情報開示を 通じて社会へ反映されたのが会社機会の流用禁止に関する条項である。  二〇〇六年と二〇〇七年に提案された改正案は、会社機会の流用禁止を取締役の自己取引禁止の類型の一つとし て規定していなかった。その改正案では、第三八二条の五︵会社機会の流用禁止︶﹁取締役は将来または現在にお 144

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東洋法学 第53巻第1号(2009年7月) いて会社の利益となり得る会社の事業機会を利用して自己利益を取得したり、第三者が利益を取得できるようにし てはならない﹂と定めていた。これに対し、二〇〇八年に出された改正案では、取締役が職務上に分かった会社の 情報を利用して個人的に利益を取得する行為を明確に規制するために、取締役が職務を行う過程で分かった会社情 報を利用した事業機会または会社が行っている事業もしくは行う予定の事業と密接な関係のある事業機会を第三者 に利用させることで会社と取引をする場合には、取締役会の承認を得るように規定している。すなわち、会社機会 の利用行為を取締役の自己取引の一つの類型として定めて、事業機会を利用する形態は取締役が第三者に対して事 業機会を利用させることにした。この内容は、従来の会社機会の流用禁止理論とは異なるものとして、取締役が直 接に会社機会を利用する行為を排除し、第三者を暗黙の媒介者とする会社との取引を規制できるようになってい る。これについて、取締役の会社機会の流用についての認識を新たにし、取締役が関連する違法行為に対してその 責任を追及する根拠として活用できることを期待していると立法趣旨は説明している。  2.立法妥当性に関する議論 ︵1︶反対意見  会社機会の流用禁止に関する改正案に反対する立場では、会社機会の概念が不明確であるため、過度な適用と訴 訟の濫用の恐れがあるし、現行商法の条項を適用することで不法行為は十分に処罰できるので、立法の必要はない と主張している。会社機会の流用禁止規定を設けることによって企業の経営判断を遅延させるだけでなく、消極的 な経営となる恐れもあると説明している。  そして、世界の中で会社機会の流用禁止を立法した国は全くないし、アメリカの場合も取締役の公示義務を強調 145

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することがその主な目標であり、情報公開の不十分がある場合にはそれを補完することで問題はないはずである。 会社機会はあいまいで広範囲の概念であるため、恣意的な解釈となって法的安定性を害し、広範囲の立法行為への        ︵20︶ 適用可能性による訴訟の濫用で企業経営を深刻に委縮する可能性が高いという見解がある。また、商法の取締役の 競業避止義務と取締役の自己取引承認規定、取締役の忠実義務などで取締役の私的利益の追求行為は規制できる し、商法遺体に公正取引法の不当内部取引に関する処罰規定と刑事上の背任罪の適用も可能であるので、追加的な       ︵21︶ 規制の導入は重複過剰であるという見解もある。  会社機会と個人機会との区別があいまいであるであるだけでなく、アメリカの企業活動によって派生されたもの をそのまま韓国の企業に適用した場合、相当な副作用と法的不安の発生が予測される。そして、改正案のそのまま 解釈する場合、﹁現在または将来において会社の利益となり得る事業機会﹂とはその幅があまりにも大きくて、経 済社会に困難を招くことになるだろう。      ︵22︶ ︵2︶賛成意見  会社機会の流用禁止に関する改正案は、会社と利害衝突のない投資の意思決定や経営行為については何の影響も 与えないし、そのような投資は殆ど経営判断の原則によって保護されることになる。そして、会社機会の流用禁止 として規制される投資行為は、実際には支配株主と取締役、経営主による私的利益の追求行為であるという。な お、財界が投資阻害の事例として提示したのは、仮に改正案が新設されるとしても取締役会に事前告知および事前       ︵23︶ 承認などの免責手続きを経てからであれば、十分に執行が可能なケースであると思われると主張している。  また、会社機会の法理を競業禁止規定と取締役の忠実義務で解決することは、同法理の独自性をあいまいにする だけでなく、競業避止規定を拡大解釈することにも限界がある。競業避止義務規定で適用できない場合、取締役の 146

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東洋法学 第53巻第1号(2009年7月) 忠実義務の一般規定を適用することもやはり具体的な規定ではなく一般規定に依存することになるので、限界があ ると思われる。現行商法にお競業避止義務規定によって会社機会の流用ケースを処理できない場合は、最終的には        ︵別︶ 会社機会の流用禁止についての具体的な立法を行う方法しかないという見解もある。  なお、反対意見で言われる訴訟の濫用については、韓国の司法制度はアメリカと大きくことなるため、そのよう       ︵25︶ な恐れはないと経済改革連帯の報告書は説明している。韓国商法において株主代表訴訟制度が導入されたのは約 四〇年前であるが、現在までに株主代表訴訟が提起されたのは約一〇件もない状況であって、取締役の貢任追及に        ︵26︶ 関連する訴訟は活性化していない。もっぱら会社機会の流用禁止違反による株主代表訴訟で勝訴してもその利益は 会社に帰属されるだけであって、原告には直接に経済的な補償がないので、訴訟を提起する可能性は低いため、濫       ︵27︶ 用への危険はない類型の訴訟である。 四 終わりに  韓国の大企業、いわゆる財閥の場合、有望な事業について支配株主︵同時に会社の経営者でもある︶に持分を与 えて、ある企業との事業を通じて人為的に売り上げを高めた後、成長した子会社の持ち分をある企業か市場に再び 売る方法で支配株主が個人的に利益を受け取るパタンでの成長過程が頻繁に見られている。これらの過程において 大企業のトップやその一家は株主からいかなる制裁と牽制も受けないだけでなく、取締役らに対する善管注意義務 をめぐる判例もほとんどないのがその実情である。このような現状からすると、取締役の忠実義務を具体化し、会 社の利益をより強く守ることになる会社機会の流用禁止は非常に意味のあるものであるだろう。しかし、既に多く の学者らが言っているように、会社機会の流用禁止規定は取締役の競業禁止義務とその適用要件が類似しているの 147

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で、新たな明文規定を設けなくても、商法上の取締役の忠実義務と競業禁止義務に関する規定の解釈のみで十分で はなかろうか。この点については、まだ英米法上の忠実義務の法理が包括的に発展していない韓国の場合、会社機 会の流用を忠実義務に関する商法規定を適用して解決することは困難であるので、明文規定で定める必要があると       ︵28︶ いう見解がある。しかし、改正案では、代表的な事例問題を解決するための対策としか思えない。  会社機会の流用禁止を立法化するのは会社の利益を保護できるという肯定的な面があるのは周知のとおりである が、訴訟の濫用、消極的な経済活動と企業経営への悪影響の恐れがあるという否定的な面も当然あるわけで、その 導入については慎重に判断しなければならない。  取締役の自己取引と会社機会の流用は異なる概念であり、会社機会の流用は取締役の忠実義務に反する行為であ るため、会社機会を自己取引規定の中に定めることは不適切な構成である。現在、会社機会を流用することで私的 利益を取得する大企業の事例が多数問題となっている韓国の現状からすると、会社機会の流用に関する規制は必要 であると思われるが、この立法案はあまりにも特定のケースを規制するためのものになっている。もし会社機会の 流用禁止規定を立法するならば、独立した一つの条項として定めるのが本来の趣旨からすると妥当であろう。ま た、会社機会の流用禁止規定を設けるためには、その適用要件、免責要件、義務違反の効果などを具体的に明示す るのが必需的な先行課題であると思われる。 148 ︵1︶北村雅史﹃取締役の競業避止義務﹄︵有斐閣、 ︵2︶第三九八条︵取締役と会社問の取引︶  取締役は、取締役会の承認があるときに限り、 二〇〇〇年︶八頁以下 自己又は第三者の計算で会社と取引できる。この場合には、民法第一二四条︵双

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東洋法学第53巻第1号(2009年7月) 方代理禁止︶の規定を適用しない。 ︵3︶置朗望﹁会社機会の法理﹂商事法研究二五巻四号︵韓国商事法学会、二〇〇七年︶七一∼七三頁 ︵4︶ALI原則㈱伊09司唱司﹁会社の機会流用に対する規制﹂商事法研究二〇巻二号︵韓国商事法学会、二〇〇一年︶四七六∼  四七七頁 ︵5︶閃ぎRダω段く碧い磐αO。B冨身﹂⇒pO①N国鐸ωδ︵㎝響O甘るo 。一︶は、会社がゴルフ事業を進めながら土地を購入した二年 後、その近辺の土地を会社の執行役員と主要株主が購入した後、その執行役員と主要株主が会社とともにその土地を第三者に売却 した場合、執行役員と主要株主は会社の事業機会を流用していたと認められた事例である。 ︵6︶Ω仁号ダ8津冒P8U①一〇げ謡αひ︾母㎝8︵ち$︶は、被害会社はキャンディおよびシロップを製造する会社であり、また清 涼飲料を販売するフランチャイズなども運営していた。その過程で、会社の社長と少数役員らがある清涼飲料会社が会社を処分す  る計画があることを知り、その会社を個人の立場で引受けた。この事件の判決を下した法院は、役員らが当該清涼飲料会社を引受 けた時点では会社に対する所有権がなかったとしてもいくつかの状況から鑑みると近い将来にその飲料会社を引受ける十分な根拠 があったので、会社の役員らは会社の機会を奪取したことが認められると判示した。この判決理由において法院は社長と少数役員 らが会社の資金を利用して契約を締結したことを重視している。 ︵7︶上記Oq爵法院は同事件において、事業延長線理論についても言及している。すなわち、会社の機会とは次のような要素を考 慮してその機会が会社に属するものであるか否かを判断しなければならないとした。①会社の事業的な経験と事業を推進する能 力、②会社の財務的な状況等を考慮して会社が運営できる事業であるか否か、③会社の立場から合理的な機会であるかまたは拡張  に対する熱意があるかなどを総合的に考慮すべきであると判示した。 ︵8︶その際、考慮すべき要因としては、①当該管理人と会社との関係、②事業の機会が会社に個人的な資格として提供されたもの  であるか、あるいは公式的なルーツを通じて議論されたものであるかの可否、③当該管理人が会社にその機会を事前に知らせたか 否か、④当該管理人が会社の資産、人材等を流用したか否か、などがある。置一再‘言一醇る9言目8刈る認2≦窪目︵這謹︶ ︵9︶>口窪鼠幕留8︵σ︶UΦ匿け一8。30。壱。聾Φ○署。昌巨一9閃。同2も。ωΦ9量ωω①。ぎPp8B。雪Φ・署。肘ε耳く幕弩ω一 149

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︵一︶>昌・8霞ε葺讐・窪鵯鴨ぎ曽ど旨①ωω8身芽9妻再げ餌9吋g目Rω98①蓉。鼠くΦ誇8B霧署震ρ①酵震一 ︵︾︶討8目Φ&8惹浮9①℃R嘗B目8・障巨98器節爵①。葺・寓Φ昌巨Φ蓉窪牙ρ自巨αR&8日馨き8ωけ富3ぎ巳α8学  ω・轟亘≦$牙冨爵88同・塞窪目①蓉窪身①8σΦ冨く曾冨二冨需拐8良Φ践轟9①・署9ε巳蔓①捲9骨巴淳O幕・浮おα8跨Φ  8GO声江p映oぺ ︵切︶日ぼ。轟馨びΦ仁ωΦ98巷・鼻①巨。§豊g・暮村8Φ博く﹂協跨①おω鼻一福・oも・目ε鼻≦ω号Φ8①跨讐9Φα一お。§・凄Φ巳・﹃①図−  Φ窪穿①吟○巳似お器8筈辱富Φ捲g8α8幕冨く①≦窪匡幕9β什霞①ω暮○跨①8∈○蚕ぎ員R ︵N︶>薯・8。﹃ε嘗讐・①畠諾Φぎ四どωぎΦωω8け一<ξ9毛げ喜霧Φ⇒目震8鼠<Φσ①8目Φω餌譲巽Φ磐α巨・≦一ω。一。ω昌お一器牙。   曽どのぎΦωのヨ≦匡39①8∈○惹け一・三ωΦ罐謎Φα○﹃①捲Φoけω8①鑛甜①● ︵10︶権純姫﹁商法改正案第三九八条第三項︵会社機会の流用禁止︶に関する理論的検討﹂商事法研究第二六巻三号︵韓国商事法学 会、二〇〇七年︶四二∼四三頁 ︵U︶卑一。Φ9冒ωξ−①冒B①ωωg。搾㌣鳶冨霞$3震2ωの鼻①9爵Φ。目四巳・浮R8邑一。富・=づ§①ω亘G。刈−閃田ζ傘ω↑G。9 ω○ 。︵NOO斜︶ ︵12︶権純姫・前掲注︵9︶四三∼四四頁 ︵13︶司歪祖﹁会社機会流用禁止理論に関する考察﹂ジャスティス九五号︵韓国法学院、二〇〇六年︶二一五頁 ︵14︶韓国商法第三九七条︵競業禁止︶ ①取締役は取締役会の承認がなければ自己又は第三者の計算で会社の営業部類に属する取引をし、又は同種営業を目的とする他の   会社の無限責任社員又は取締役となることができない。 ②取締役が第一項の規定に違反して取引をした場合に、会社は、取締役会の決議でその取締役の取引が自己の計算で行ったもので   あるときは、これを会社の計算で行ったものとみなすことができ、第三者の計算で行ったものであるときは、その取締役に対し   てこれによる利得の譲渡を請求できる。 ③第二項の権利は、取引があった日から一年を経過すれば消滅する。 150

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東洋法学 第53巻第1号(2009年7月) ︵15︶・−・刈遇﹁会社機会の流用﹂人権と正義三六三巻︵大韓弁護士協会、二〇〇六年︶一八一頁 ︵16︶司歪壇・前掲注︵η︶一三六頁 ︵17︶権純姫・前掲注︵9︶四四∼四五頁 ︵18︶改正案は企業界で問題となった特定事例をモデルとしている。その例として、︵株︶現代自動車とKIA自動車の物流営業部門  はグロビスという会社が独占しており、グロビスはその支配株主である現代自動車の社長が一〇〇%投資した会社であった。グロ ビスは現代車グループの自動車物流事業の独占で急成長し、その結果、上場企業となり、その株価は急上昇して支配株主は高い利 益を得ることになった。 ︵19︶参與聯隊とは、一九九四年九月一〇日に発足した市民活動団体で、従来の名称は”参与民主社会と人権のための市民聯隊”で ある。参與聯隊は国家権力に対する監視と政策対案の提示、実践的な市民活動を通じる民主社会の建設をその目標とする団体であ  る。学界と法曹界、宗教・社会活動分野などから約二五〇名の人が参加して発足させたこの団体は、議政監視センター・司法監視  センター・人権活動愛クラブ・共益訴訟センター・内部問題告発者の支援センターなど、五四個の専門センターを設けている。そ  の以外、分野別の専門家で構成された政策委員会と個人および団体などが参与する市民委員会があり、市民活動と政策開発を条件 として活動している。最近には少額株主活動を主導し、サムソンとSKなどの大企業の悪い慣行のない株主中心の新たな企業構造  の確立に寄与している。ホームページは拝昼\\≦︵藝冨8一80類Φ吋田b樋である。 ︵20︶司宅剤﹁商法改正の方向に関する考察﹂外法論集二五集︵韓国外国語大学法学研究所、二〇〇七年︶一九三∼一九五頁 ︵21︶司望剤・前掲注︵19︶一九四頁 ︵22︶会社機会の流用禁止に関する立法例については、経済改革連帯と参與聯隊が提出した﹃法務部商法改正案に対する意見書﹄で 詳しく紹介している。 ︵23︶経済改革連帯﹁財界の会社の機会流用の規制反対の主張に対する反対報告書﹂企業支配構造の研究︵二〇〇七年︶七三頁 ︵24︶叫層暑﹁会社機会の法理に対する討論文﹂商事法研究二五巻四号︵韓国商事法学会、二〇〇七年︶一一四頁参照 ︵25︶韓国はアメリカのような証拠開始制度︵田ω8く①員︶がないので、訴訟をする場合、原告の負担が大きい。また、立証責任の配 151

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分でも韓国の法律体系はアメリカより原告の立証負担が大きいため、原告の勝訴可能性は低いと思われる。従って、訴訟の濫用可 能性はコントロールできるだろう。また、アメリカと異なり韓国は○○昌畠①旨閃8︵勝訴金額の最高三〇%を訴訟代理人︵弁護 士︶に支給することを約定する原告と訴訟代理人との契約︶が認定されないので、訴訟代理人の経済的な誘因側面でも訴訟が濫用 される可能性は大変低くなると思われる。経済改革連帯﹁財界の会社機会の流用規制の反対主張に対する反論報告書﹂企業支配構 造研究︵好ましい企業支配構造研究所、二〇〇七年︶七六∼七七頁 ︵26︶提起された訴訟のほとんどは市民団体が主導した公益目的の訴訟である。 ︵27︶司望週・前掲注︵19︶四七頁 ︵28︶権純姫・前掲注︵9︶四九頁 い じよん・法学部講師ー 152

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