地域イノベーション協創プログラムのその後
著者名(日)
石曽根 孝之
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
33
ページ
1
発行年
2011
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002070/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja
**巻頭言**
地域イノベーション協創プログラムのその後
工業技術研究所長石曽根孝之
2008年8月に経済産業省関東経済産業局の方が研究所を
訪ねて来られ、経済産業局で「地域イノベーション協創プロ
グラム」を実施することになったので東洋大学にも協力して
欲しいと言われたことを2009年2月発行「工業技術」の巻頭
言でお話しいたしましたが、今回はその後についてお話し
いたします。このプログラムが始まったのは前政権のときで
した。ご存知のように2009年8月に民主党が大勝して政権
を執るようになると「コンクリートから人へ」をキャッチフレー
ズに、良くも悪くも、いろいろなことが変わるチャンスでした。
新しい政権は利権を貧り天下りを日常化していた官僚体質を
抜本的に改め、税金の無駄遣いを無くすために事業仕分け
を敢行致しました。大勢の国民が何かが起きて欲しいという
期待と不安の気持ちで仕分け作業を傍聴し、テレビで見てい
ましたが、印象的だったのが、我が東洋大学の元学長であら
れた神田道子女史でしょう。現在、彼女は武蔵嵐山にある独
立行政法人国立女性教育会館の理事長ですが、この会館が
事業仕分けされた訳です。事業仕分けの顔である蓮紡議員
に対して「私にも言わせて下さい」と敢然と立ち向かったと言
うか、切実に訴えた場面を覚えている方も多いと思います。
さすがに男女共同参画の推進に情熱と責任を持っている方
の発言です。その甲斐あってか22年度予算も年も押し迫っ
た年末に閣議決定されたとホームページに載っていまし九
それでは他の事業はどうだったでしょうか。経済産業省
が主催する「地域イノベーション協創プログラム」は産学
官の共同研究開発を促進し、地域経済の活性化を図る事業
で、産業技術総合研究所など公設試験研究機関(公設研)
が企業へ技術支援を行う①「イノベーション創出基盤形成
事業」と新しい産業を産学官で興す研究開発を公募する②
「イノベーション創出研究開発事業」です。①は私が関与さ
せられていた事業ですが、平成22年度の予算要求を取り辞
めたと言うのです。何故かといえば、私が勝手に想像する
に、あの事業仕分けに耐えられないと早合点したのでしょ
う。この事業は都道府県にある公設研が高額な機器を導入
して、企業支援の基盤を形成することが主目的であった訳
ですが、あの蓮紡議員の追求に対して、応えるだけの支援
成果が現れそうも無いと正直に判断したのでしょうか。い
ずれにしても①の事業は21年度で終了ということになりま
したが、予算的には8割以上を占めていた②の事業は22年
度も継続して公募されて6月末に確定したようです。
結局、私に予定されていた3年目の委託研究費「EMI測
定のための広帯域アンテナの研究」はあえなく消えました
が、これからも2年間の成果を踏まえてこの研究を推し進
めてゆくつもりです。途中経過は2009年、2010年版の東洋
大学研究成果シーズ集にも掲載されております。
度々出てきました産業技術総合研究所などの公設研では、
所有する高額な機器ならびに施設を企業に提供して、製品
が規格に合っているかどうかを安価にチェックができる環
境が整っています。この安価と言うところが企業を支援す
るための大切なキーワードです。最終的にはISO 9001(品
質)やISO 14001(環境)などを審査登録している財団法人
日本品質保証機構(JQA)に持ち込んで認証試験を受ける
訳ですが高価なものに付きます。
ここ工業技術研究所にも受託事業として依頼試験と依頼
分析を受付けております。大学は公設研並みの高額な機器
を所有しています。これらを安価で企業に提供して地域産
業の活性化に関わることも研究所の使命であります。研究
所発足当時は鉄筋の引張試験、コンクリートの圧縮試験、
人工降雨による雨音騒音測定、赤外分光計による化学分析
など多くの依頼試験を行っていましたが、最近はこれらの
依頼試験が激減しています。現今の不況もさることながら、
原因の一つには所員と企業の結びつきが希薄になってきて
いることが上げられるのではないでしょうか。既に、この
川越キャンパスにあるバイオ・ナノエレクトロニクス研究
センターでは新しい産業を生み出すべく最新鋭の高価な機
器と施設が企業との共同研究として使われています。幸い
なことに、2010年4月に7号館が完成し、理工学部棟に開設
された物創り工房には非常に高価な3次元加工機が設置さ
れています。これなどは近隣の中小企業からすれば垂誕の
装置である訳で、企業との共同研究として積極的に使って
頂きたいと考えております。その他にも私大研などの予算
で購入された高価な機器を開放できる場合には是非とも企
業と一緒に活用して頂きたいものです。そのためにも研究
成果を学会などで発表して終わるのではなく、広く産業界
等で活用して頂くことを視野にいれて活動することは外部
資金の導入と研究テーマの発掘に繋がる訳で、所員は研究
成果を企業に向かって発信して頂きたい。秋冬に開催され
る東洋大学アカデミックシーズ展は大学全体で知的財産を
学外に発信する絶好の機会であります。黙っていても良い
研究には必ず企業が飛びついてくると言う人もいますが、
そんなことを言わずに。
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工業技術No.33(2011)