周辺的法助動詞についての研究−dare
著者
今 佑介
著者別名
KON Yusuke
雑誌名
東洋大学大学院紀要
巻
56
ページ
189-202
発行年
2020-03
URL
http://doi.org/10.34428/00011697
1.はじめに
本論⽂では、周辺的法助動詞であるdareを扱う。周辺的法助動詞は助動詞における法助動 詞類に区分される。法助動詞として代表的なものは、will, can, may, shallやshouldである。 周辺的法助動詞はdare, need, mustである。代表的な法助動詞と周辺的法助動詞の差はNICE 特性である。今回はその中でも周辺的法助動詞に区分されるdareに焦点をあて考察していく。 そもそもdareは現代英語においては助動詞用法と本動詞用法を有している語であるが、助 動詞と本動詞の区分が曖昧といわれている。学習者用の英語辞典では助動詞用法の記載が本 動詞用法とほとんど変わらないものもある。 具体的にdareを見ていき、概要を探る。まずは下記の(1)~(3)より、助動詞用法と本動詞 用法そして混交用法を見てみる。
(1)He daren’t go back or they would see him. (BNC)
(彼は敢えて戻らなかった、さもなければ彼らは彼を見ただろう) (2)They did not dare to ask him. (BNC)
(彼らは彼に尋ねる勇気はなかった)
(3)He didn’t dare take it upon himself to enlighten her further. (BNC) (彼は敢えて独断で彼女を啓蒙することをしなかった) (1)は助動詞用法の例である。ほかの助動詞と同じように否定を直接付帯している。(2)はto 不定詞がdareの直後にあり、否定の為にdid notがdareの直前に来ているため、本動詞用法 である。(3)は助動詞用法と本動詞用法が混ぜ合わさった、混交用法である。Dareを中心に 直前をみると、(2)と同じように本動詞用法の否定方法だが、直後はtoなし不定詞つまり、 原形不定詞が来ている。(3)のような混交用法はdareにおいてはいくぶん容認傾向にあるよ うである。統語形式からみるとdareには以上のように、助動詞用法、本動詞用法、混交用法
周辺的法助動詞についての研究-dare
文学研究科英文学専攻博士後期課程2年
今 佑介
の三種類の形式がある。特に混交用法は他の語句ではあまり見ることのできない特徴的な統 語形式といえるであろう。そして先ほど述べたように助動詞用法と本動詞用法では差異が曖 昧といわれているが、統語形式にわずかであろうと差異があるということは意味においても、 多かれ少なかれ差異があるように考える。
東(2013)では本論と似たように、周辺的法助動詞であるdareに焦点を当てている。東 (2013)では、大規模現代アメリカ英語コーパスであるCorpus of Contemporary American
English(COCA)を用いて、dareを観察し、本動詞用法、助動詞用法、混交用法がそれぞ れどの程度存在しているのか観察している。その割合は助動詞用法が30%で、本動詞用法が 41%、混交用法が29%である。現代アメリカ英語では、本動詞用法が三つの用法の中では、 一番割合が高いが、助動詞用法も混交用法も一定数存在していることがわかる。また、混交 用法においては、否定平叙⽂と否定命令⽂の頻度が高く、混交用法が広く容認された語法で あると東は結論付けている。 そこで、本稿では、dareにおける助動詞用法と本動詞用法における意味の差異は存在する のかどうかを問題として見ていく。また、混交用法について、考察していく。 意味の差異が仮にほとんどなく、dareという語の歴史的変遷の中でどちらかの用法が未だ に、過去の残骸として残っているならば、これから衰退をたどる語の運命であり、それもま た1つの特徴といえよう。しかし、dareが周辺的法助動詞という分類に入っているならば、 他の法助動詞同様にモダリティを有していることを表しているはずである。助動詞用法には モダリティつまり、話し手(書き手)の心的態度があるのかどうか考察していく。 また、混交用法について、混交用法は、一般的には本動詞用法のto省略と扱われることが 多い。安藤(2005)では、この混交用法におけるto省略を主としてリズムに関係するとして おり、この場合、toを省略した場合では、本動詞用法から助動詞用法に一歩近づいたことに なる、としており、英⽂解釈の一助となる程度しか記載されていない。日本語でも、英語で も、形が変われば、意味も異なってくると考えるため、混交用法は本動詞用法であるとは考 えにくい。以上のことを先行研究を踏まえて、大規模コーパスを用いて考察していく。
2.先行研究
これまでの先行研究において、dareがどのように、扱われているかを見ていく。まず初め に、荒木・宇賀治(1984)をもとにdareの歴史的変遷を見ていく。通時的に見ていくことに よりdareがどのような変化を遂げて現代に至るのか確認する。そして、次に、⽂法書での dareの記述を見ていくとする。⽂法書においては語法や統語的、意味的特徴を特に中心的に 見る。2.1. 辞書
今回記述を確認した、英英辞典はOALD9,LDCE6,COB9,MED2であり、英和辞典では
『ジーニアス』、『コンパスローズ』である。辞書では、dareを助動詞と本動詞どちらも認め ており、本動詞用法におけるtoの省略も可能としているものが多い。つまり、混交用法を本 動詞用法の一部としている。
(4)No one dared to ask the question. (コンパスローズ 2018: 444) (敢えてその質問をする人はいなかった)
(5)She didn’t dare (to) tell the secret to her husband (コンパスローズ 2018: 444) (彼女はその秘密を夫に打ち明ける勇気はなかった)
(6)I dare not look down from here (コンパスローズ 2018: 444) (ここから見下ろす勇気がない) (4)は本動詞用法の例であり、(5)は混交用法の例である。(6)は助動詞用法の例である。 総じて、dareは肯定⽂よりも否定⽂の中で、使用される傾向があるようである。また、(5) の混交用法に関しては、否定⽂・疑問⽂ではdareの後ろの不定詞にtoがつかないことが多い。 その場合は助動詞のdareに近い性質となる。(コンパスローズ 2018: 444) しかし、本動詞用法の直後に続くtoが省略されることが容認されるならば、他の語彙にお いても同様な現象が起こり(特に同じ語彙類に分類されるであろうneedなどseem)、波及し ていくことが言語経済においては真っ当なであるはずだ。だが、そのような現象は見受けら れない。つまり、英語母語話者は、混交用法は使用するが、dareを本動詞として用いている のではなく助動詞として用いているのではないだろうか。二重助動詞となったとしても、 dareの法性をコンテクストにおいて使いたくて使っているはずである。そして、主に否定⽂、 疑問⽂での使用と定めているものが大半である。助動詞としての記載は、それほど多くはな い記述のみであった。そして、「How dare+主語+原形不定詞~?」、「Don’t you dare+原 形不定詞」、「Dare I say ~」や「I dare say」の4つの構⽂化したフレーズを記載している。 「Don’t you dare+原形不定詞」を以外の3つは統語形式上より、助動詞用法からのフレーズ
化したものであると考える。
2.2. 歴史的変遷
荒木・宇賀治(1984)によると、古英語期は助動詞としてのみ用いられており、toなしで 不定詞を従えていた。つまり助動詞の特性である原型不定詞を直後に伴うのである。そして、 助 動 詞dareの 過 去 形 はdurstで あ っ た。 意 味 は、‘to have boldness or courage (to do something)’ である。助動詞用法の統語法と意味は現在に至るまで変わらないが、19世紀
からは否定⽂、疑問⽂に限られる傾向にあるようだ。そして、初期現代英語期で、新たに本 動詞用法を発達させた。特徴としては、to不定詞を従えたり、名詞句目的語を従えたりする ようになった。また三人称単数現在形であるdaresや過去形の規則変化形であるdaredが16 世紀初めに出現し、三人称単数現在形daresや過去形daredも本動詞用法で用いられたよう だ。そして、三人称単数現在形を表す-sや過去形の規則変化形の-edという接尾辞は間もな く稀に助動詞にも拡げられたようである。また、本動詞用法でのdareは否定⽂、倒置⽂など で17世紀後半から助動詞doを伴うようになった。荒木・宇賀治(1984)の推論では本動詞 用法でのdoを用いた否定⽂、倒置⽂によって、助動詞dareも19世紀からdoを伴うことがあ るようだ。上記を図式化すると(5)のようになる。 (7)OE このようにdareは、助動詞用法だけで、16世紀に入り本動詞用法の出現に伴い、影響を受 け、助動詞としての統語的特徴を失っていったようである。現在においてdareが助動詞用法 よりも本動詞用法が優勢になったのは、dareにおける法助動詞として重要な機能である、モ ダリティが漂白化していったことが理由ではないだろうか。そして、本動詞用法の特徴であ る助動詞doを伴う否定や疑問⽂の形式が助動詞用法に影響を及ぼしたのは、dareが助動詞 と本動詞両方存在するために規範⽂法規則の適用を優先したためだと考えられる。 2.3. 文法書 デクラーク(1994)では、助動詞と本動詞の共通な意味として、助動詞にある違いとし て、「~するのをこわがらない」(to have the courage to)、「~するのに十分勇ましい〔たく ましい〕」(to be brave (or rude) enough to) を挙げている。また、本動詞to dare toは「~ する勇気がある」(to have the courgae to)という意味が助動詞のdareより普通に用いられ る。
助 動 詞 用 法 ( 過 去 形 : durst)
EModE 本 動 詞 用 法( 三 人 称 単 数 現 在 形:dares, 過 去 形:dared) 影 響
17 世 紀 後 半 助 動 詞 do を 伴 う 否 定 、 倒 置 文
19 世 紀 影 響
(8)I daren’t ask to tell mother about the broken vase. Will you tell her?
(デクラーク 1994: 578) (敢えて、壊れた花瓶について母に話さなかった)
(9)I do not dare to wear such conspicuous clothes. (デクラーク 1994: 579) (そんな派手な服を着ることを敢えてしない)
(8)と(9)どちらも、「~するのをこわがらない」、「~する勇気がある」の意味である。しか し、助動詞と本動詞で同様の意味でしかないならば、助動詞用法は廃れなくなるのが、世の 常である。憤慨を表す感嘆⽂は本動詞にはない統語形式であり、助動詞が持ち合わせている 特徴的な意味を有していると考える。
(10)How dare you? Give that back to me at once! (デクラーク 1994: 579) (よくもまあできるもんだね。すぐに返せ!) (10)は、驚きや怒りという感情を持ち合わせて、話し手は聞き手に対して、発話しているよ うだ。発話者がyouに対して、dareという心的態度を表しているのである。小西(2011: 364)あるように、「助動詞用法は話し手の心的態度を表しているので、本動詞用法とわずか な意味の違いが生じる」つまり、これは助動詞にあり、本動詞にはない法性つまり、モダリ ティがあることを明示している。
(11)How dare she take the exam without ever once coming to class?
(小西 2011: 364) (彼女は一度も教室に顔を出さないで、よくも試験を受けられたものだ)
(12)How did she dare to take the exam…? (小西 2011: 364) (どうして試験を受ける気になったのだろう)
(11)では、その行動に対して、主観的に話し手の憤慨を表しており、(12)では、単にこの学 生の行動について客観的に説明を求めている。
では、助動詞dareにはどのような、モダリティが存在するのだろうか。安藤(2005)では このように定義されている。法助動詞dareは、疑問⽂・否定⽂のみにおいて、用いられ、根 源的用法しかない。根源的用法では「大胆さ(…する勇気がある)(have the courage to …)」を表現し、助動詞用法は書き言葉で、話し言葉では本動詞が用いられる。また、本動 詞用法でのtoの出没は、主としてリズムによると考えてよいが、toを省略した場合は、助動 詞に一歩近づいたことになる。
つまり、本動詞用法と助動詞用法には大きな差異は存在しないが、toが存在するか存在し ないかによって、主観的な「大胆さ」の意味が⽂に付与されるかどうかわかれるようである。 (13)I daren’t ask my boss for a day off. (安藤 2005: 309)
(ボスに一日休ませてくれなんて、とてもじゃないがいえないよ)
(13)では、I do not ask my boss for a day off(上司に一日休みをもらうことを尋ねない)に dareの意味(…する勇気がある)を付加した⽂である。それによって、尋ねる勇気がないつ まり、尋ねてしまったら、大変なことになるという意味を含意していることになる。
また、助動詞用法では、疑問・否定を含意する⽂脈にも見出される。 (14)I wonder whether he dare try. (安藤 2005:309)
(彼にやってみるか勇気があるかどうか不思議だ) (15)That is as much as I dare spend on it. (安藤 2005:309)
(いくらはずんでも、それいじょうはだせないね) (14)では、疑問⽂に相当し、(15)では否定⽂に相当する。that(金額)が自分が⽀払える 最大限という客観的⽂に、dareのモダリティが加えられている⽂である。それによって、こ れ以上に⽀払ったら、自分の生活が苦しくなるなどの裏の状況の意味が含意されるのではな いだろうか。 統語形式として、混交用法ついて、以下の例を挙げる。 (16)I didn’t dare swing round. (Biber et all 1999: 163)
(意見をかえる勇気はなかった)
(17)He wouldn’t dare take it from you. (Aarts 2011: 299) (彼には君からそれを取り上げる勇気などない)
(16)は(3)のような例である。否定が本動詞用法のようになっている。しかし、to swingと なっていない。(17)では、助動詞(wouldn’t)と共起しているが、(16)と同様に、toがなく、 原形不定詞が後続している。
(18)…the angry husband said he dared not complain least they miss their flight.
(Ganer 2016: 243) (怒った夫は、フライトを逃すといけないので敢えて苦情は言わなかったといった)
(19) The professor in turn dares not tolerate the influence in his classes of such an organization. (Huddleston and Pullum 2002: 110)
(教授のほうは、クラスにおいて、そのような組織が影響を及ぼすことをあえて黙認す るつもりはない) (18)ではdaredと本動詞用法のように活用されているが、dared notという形での否定⽂つま り「本動詞+not」となっている。そのため、混交用法といえよう。また、(19)ではdares と三人称単数現在形の活用形である。こちらもまた、「本動詞+not」は本来容認されていな い形式であるため、混交用法である。 (16)と(17)はtoが省略された本動詞用法とみなされるものであるが、toがないため、明確 には本動詞用法といえないため、混交用法である。(18)と(19)は本動詞用法で用いられてい た活用方法が助動詞用法に組み込まれた例である。こちらは形態的に本動詞用法に接近して いるものである。 以上先行研究より、dareの助動詞用法と本動詞用法そして、混交用法の意味的な差異、混 交用法の統語上の差異をまとめると、意味的な差異は、本動詞用法では命題を伝えることに 終始する。つまり話し手(書き手)が状況や事実を客観的に叙述している。そして、助動詞 用法では話し手(書き手)の心的態度が命題に対して加わっている。つまり、モダリティを 有して命題を表現している。勇気がある、ずうずうしいなどといったことを命題に対して加 えることになる。混交用法は意味的には本動詞用法、助動詞用法どちらとも言い難いが、少 なからず、心的態度を表現していると考える。 混交用法での統語形式は、助動詞用法に近づこうとする形式((16)と(17))と本動詞用法 に近づこうとする形式((18)と(19))がある。統語形式より考察すると、助動詞用法に近づ こうとする形式は助動詞の意味を含意しようとしているとみられ、本動詞用法に近づこうと する形式は、本動詞の統語形式を用いて、助動詞の意味を表現しようとしているのではない だろうか。 では、三章では、上記先行研究をもとにdareを見ていく。使用するコーパスはBritish National Corpus(以下、BNC)である。BNCは話し言葉と書き言葉あわせて約一億語から なる大規模イギリス英語コーパスである。内訳は約90%が書き言葉、10%が話し言葉で、 1985年から1990年までに出版され、記録され、あるいは話されたテキストが収録されている。
3.結果
BNCにおいてdareは3302例あった。これは同じ周辺的法助動詞として分類されるneed (91285例)と比較すると、その頻度はかなり少なく、語が衰退しているように感じられる。 否定辞not (n’t)と共起することは本動詞、助動詞両方合わせて、1234例あった。さらに、準否定語など否定を含意する語を合わせると1337例ある。 BNC3302例中500例をとりあげ、本動詞用法、助動詞用法、混交用法の三つに分類わけし た。以下の表1がその表であるが、分類分けをする際に、dareの後続が省略されていて、明 確に分類できないもの、主語や目的語など名詞的に機能しているもの(人物の名前も含む) は除外した。 表1 本動詞用法 助動詞用法 混交用法 199例(39.8%) 161例(32.2%) 140例(28%) アメリカ英語では東(2013)が示したように、本動詞用法は割合が41%と割合が一番高 い。次に高かったのは助動詞用法で30%であった。そして、混交用法は29%であった。表1 が示すように、イギリス英語においても、割合的には、ほとんど差異はなく、英米の差異は ないとわかった。
4.考察
4.1. 本動詞用法と助動詞用法の意味的差異(20) She did not count this as a master and servant situation, yet she didn’t dare to presume too far. (BNC)
(彼女は主従関係としてこれを考えてはいなかったが、彼女は大いに敢えて想定しなか った)
(21)He daren’t call out; someone might hear him. (BNC)
(彼は敢えて叫ばなかった。誰かが彼の声を聴くかもしれなかったのだ) (20)は本動詞でも否定⽂であり、(21)は助動詞での否定⽂である。両者を比較すると、確か に一⽂だけではあまり意味の差はないように感じられる。しかし、(20)では、起こった事実 の描写であり、前⽂が原因となり、向こう見ずに想定しなかった、事実を述べている。だが、 (21)の後に続く⽂が理由説明になっているように、敢えてしなかったことを強く表現してい る。裏を返して言うと、してしまったら何か大変なことが起こってしまうことを意味してい るのである。 これは、dareが否定を表す語との共起がどの用法でも優勢であることは先行研究と同様で ある。否定との関係で、特徴的なことはdareの右側にくる否定を表す語はnotのみであった。 これはdareの後続に488例あった。準否定語などはdareに後続しないようである。
(22) She hardly dared to draw the curtains to show herself to the other girls, though she had warned them of the horrid sight in store for them. (BNC)
(彼女は他の女の⼦に自分自身を見せるためにカーテンを引くことをあえてしませんで した。けれども、彼女は彼女たちのために店での恐ろしい光景を警告しました) (23) Again this is a common and “normal” reaction, but many people feel so ashamed of
thoughts like these that they hardly dare express them unless they feel safe enough to do so and trust the person they are talking to sufficiently for such a revelation to seem acceptable. (BNC) (繰り返しますが、これは一般的で「通常の」反応です。しかし、たくさんの人々はこ のような考えを恥ずかしく感じているので、そうするのに十分に安全だと感じ、その ような暴露を許容できると思われるが見えるように十分に話をしている人を信用しな いかぎり、彼らはほとんどあえて表現しなかった) (BNC) (22)と(23)を用いて本動詞用法と助動詞用法における意味の差異を比較する。(22)は本動 詞用法であり、(23)が助動詞用法である。(22)をみると、客観的な事実として、しなかった ことを明示している。しかし(23)は事実としてはしなかったことを明示しているが、書き手 の心的態度をうかがうことができる。「そうするのに十分に安全だと感じ、そのような暴露 を許容できると思われるが見えるように十分に話をしている人を信用しないかぎり」という 条件提示し、それを満たせば表現するが、満たさない限り、敢えて表現はしないというよう に、unless以下によって、(23)ではdareのモダリティを保持していると考える。 また、疑問⽂のなかで、最も多い、用例は、howと共起した例である。これは慣用句化し たものだと思われる。それはBNCに372例あった。
(23)How dare you touch me? (BNC) (よくも私を触ったね)
(24)“How dare you accost us, you — you Outsider” he screamed. (BNC)
(「よくもおまえは我々に声をかけたな、おまえ―このよそ者が」と彼は叫んだ) (23)はhowの直後にdareがあることから、dareが倒置を起こして、疑問⽂を形成しているこ
とがわかる。つまり、このdareは助動詞である。そのため、触ってほしくないのにさわった という意味が含意している。(24)も同じく声をかけてほしくないのにも拘らず声をかけてき たことに対して怒りを示している。それは後続のyou — you Outsiderからもわかる。また、 原形不定詞以下が省略される例も多くある。
(25)How dare you? (BNC) (よくもまあできるもんだ) 原形不定詞以下が省略されているのは、なくても聞き手(読者)は何をなすかわかるからで ある。この短縮された、形式によって、この「How dare ~」という慣用句がなお一層構⽂ 化していることがわかる。 このように、本動詞用法と助動詞用法の差異はあることがわかった。本動詞用法は客観的 な事実の叙述をしており、これに対し、助動詞用法では、話し手(書き手)の心的態度を命 題に対して付け加えている。今回提示した例は一⽂内で、その心的態度を表現している例を あげたが、一⽂内にとどまらず、前後関係によって、その心的態度を保持していることもあ る。 4.2 混交用法 混交用法を取り上げる。混交用法は本動詞用法と助動詞用法が混ざり合ったものである。 混交用法は2種類の成り立ちがある。一つ目は、本動詞用法のようだけれども、dareの直後 にtoがない混交用法である。
(26) He shouted something at Endill but he couldn’t hear because of the wind and didn’t dare move or shout back, frightened he would upset the basket. (BNC)
(彼はエンディルに向かい何か叫んだが、風のせいで聞こえず、あえて動きも叫びもし なかった。かごをひっくり返すことを恐れたのだ) (26)は否定形式が本動詞用法と同じ形式でdareの直後が助動詞用法となっている。解釈とし ては、直前が原因となって、心情的には動きたいけれど、現状動けないため状況にあるため、 「敢えて、大胆にも」という心的態度を用いて表現している。 (26)のような例は従来toを dareの後続に補い、dareを本動詞用法として理解し、扱うことが無難だとされているが、な いtoを補うことは書き言葉では推敲作業が行われて、⽂章になっているため、話し言葉では あったとしても、toを敢えて落とす理由や目的がないため、本動詞用法として扱うのは不適 切だと思う。そのため、統語形式上本動詞用法のように見えるが、dareに助動詞用法の意味 つまりモダリティを付与して解釈すべきである。 また、2つ目は本動詞用法と同じような活用が行われているのにも拘らず、dare (dares/ dared)の後続にtoがない混交用法である。
comprehension. (BNC)
(知性に対する私の評判を考慮に入れると、私は理解の欠如をあえて告白しませんでし た)
(26)で は、 理 解 の 欠 如 を 告 白 し な い 方 が 主 語 の た め に な る と、 ⽂ 頭 のGiven my reputation for intelligenceで判断したために、告白しなかったと、「敢えて」とう心的態度 加えて表現している。つまり、告白すると何かしらの弊害をうけてしまうことを暗示してい るのである。
(28) Judge Smith formerly chairman of the Rules Committee was a man greatly feared by his colleagues, but no chairman would dare follow his example in the congress of today. (BNC) (ルール委員会の前委員長であったスミス判事は同僚に大いに恐れられていたが、今日 の会議で彼の例に敢えて従う議長はいなかった。) そして、2つ目の混交用法と成り立ちが同じ例である(28)は助動詞wouldがdareの直前に来 ていることより、dareは原形不定詞でなければならないが、dareの直後には原形不定詞が来 ている。そのためこのdareには助動詞的意味を付与しなければならないと考える。よって、 従わないと、痛い目に合うかもしれないが、「敢えて」従わないという心的態度を表してい る。 このように混交用法では、本動詞用法と助動詞用法が入り混じった用法に見えるが、助動 詞的要素つまり、話し手(書き手)の心的態度を表現しているのではないだろうか。Dare に後続していたはずのtoが落ちる根拠としては、dareはもともと助動詞用法だけであったが、 後に助動詞から外れ、本動詞用法を確立したためであろう。本動詞用法が確立したことは、 dareの「大胆」というモダリティが弱まったことを意味する。本動詞用法が主たる用法であ ったとしても、助動詞用法が廃ることがなかったため、このような混交用法が出現したと考 える。
5.結論
本稿では周辺的法助動詞である、dareの助動詞用法と本動詞用法の意味の違いと混交用法 について、先行研究をもとに考察してきた。本動詞用法と助動詞用法では歴然とした意味の 違いはないが、助動詞用法にはモダリティがあることがわかった。モダリティがあるという ことは話し手(書き手)の命題に対する「大胆」という心的態度を表しているということで ある。それがdareにおいては、大胆さであり、「勇敢さ」「しなくてもよいのに」(to bebrave (or rude) enough to)を示すようである。それは、感嘆⽂である「How dare 主語 動詞 ?(!)」が顕著に示すことである。驚きや感銘を表す感嘆⽂と助動詞dareは双方の意味 により、相性が良く、現在でも見ることができる用例であろう。そして「How dare 主語」 というように語数が少なくなればなるほど、構⽂化が進み、固定化していくのである。よっ て助動詞用法は圧倒的に少なくなるけれども、残り続けるのではないだろうか。 混交用法において、助動詞の意味に近いのか、本動詞に近いのか明確に考察することがで きなかったのが今回の反省点である。次回にそれをいかしたい。先行研究では、toの省略と されていることが多いが、統語形式が変われば、意味も変化するはずである。つまり、モダ リティを持つかどうかが焦点である。推論ではあるが、モダリティを持つときと持たない時 が半々なような気がする。しかし、書き言葉においてはtoがない場合は助動詞としての意味 が強く出てくると考える。
参考文献
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辞書
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Oxford Advanced Learner’s Dictionary, 9th ed. 2015, Oxford University Press, Oxford.
コーパス
A Study of Marginal Modal Auxiliaries—dare
KON, Yusuke
Abstract
In this paper, the word of dare in marginal modal auxiliaries is considered. Originally dare had only the auxiliary verb usage, but in the 16th century, this main verb usage appeared in it. As a result, there are now three usages in dare. Perhaps, dare in auxiliaries seems to have modality. So, dare has the differences in the meaning between the auxiliary verb usage and the main verb usage. Also, there is blending usage in dare. This paper shows the frequencies in use of the three usages, and what meaning is caused by the modality of dare which is ‘boldness’. Blending usage which is like ‘I didn’t dare ask her’, is also considered.