日立グループは,これまで,SCM(サプライチェーンマネジメ ント)の概念に基づき,WMS(倉庫管理システム)や運行動 態管理システムなどのサプライチェーンを支援するシステムの 構築を数多く手がけてきた。また,これらの実績により培って きたノウハウを基にシステムのブラッシュアップを重ね,顧客 の要望に応えるパッケージやソリューションメニューを豊富に 取りそろえている。 今後はこれら「サプライチェーンの実行系システム」に,業 務システムなどから蓄積される企業内データを収集,加工,分 析して,企業の経営判断に活用するBI(ビジネスインテリジェ ンス)ソリューションを組み合わせたサービスの提供を進めて いく。実行系システムによって収集される「新鮮」かつ「正確」 なデータを,業績評価指標(KPI)に基づく評価が可能な形へ と加工,分析し,タイムリーに提供することで,迅速な企業経 営判断を支援する。 1.はじめに 現在の企業活動において最も基本的なCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)活動として挙げられ るのは,利害関係者(ステークホルダー)に対して説明責任を 果たすことである。株式上場企業に限らず,さまざまな企業が 会社の財務状況や経営の透明性を高めるなど,CSR活動に 取り組んでいる。 この取り組みに即応するべく,株式上場企業は,IR(Inves-tor Relations:投資家向け広報活動,決算報告など)情報を四 半期決算にて公開することが義務づけられるようになった。そ こで,各企業は迅速な決済処理が必要となる。しかし,現場 での実績データは,企業のネットワークがまだ統合型になって いないことから,迅速には収集できていないのが現状である。 ここでは,一般産業向けに日立グループが考える経営計 画のためのBI(Business Intelligence)ソリューションと,それを 支えるためのロジスティクス分野における実行系システムの
経営戦略を支援するロジスティクスソリューション
Logistics Solution that Supports Business Maneuver
大畠 麻里子
Mariko Ohata佐藤 秀樹
Hideki Sato中村 秀
Shu Nakamura梅木 春男
Haruo Umeki渡邉 徹
Toru Watanabe経営層 管理層 スタッフ ・作業実績管理 ・人時生産性管理 ・売り上げ管理 ・組織運営 ・業績管理 ・組織目標 ・個人目標管理 Check ・経営判断 ・経営目標 ・マネジメント BI 経営目標 ビジネス プロセス 業績評価指標(KPI)による モニタリングで迅速な経営判断 経営計画 事業計画 経営目標に基づく投資 判断,組織運営IR活動など, 経営判断に活用する。 個別組織活動全般のマネジ メントを行い管理を担う。 組織の目標と個人の行動 を的確に結びつけられる。 実績データに基づく 経営指標の早期把握 経営層・マネージャ層 にて計画を決定 次につながる経営判断 スタッフ部門による行動 実働に伴う実績データ収集 Plan Action Do サプライチェーン 現場でのデータ収集
注:略語説明 BI(Business Intelligence),KPI(Key Performance Indicator),IR(Investor Relations)
図1 経営戦略とサプライチェーンの構成
サプライチェーンを構成する各企業の連携を踏まえつつ,自社での経営戦略を実現するため,情報収集を早めることで強みとしていく。またサプライチェーン全体の高 効率化により,強固経営体質の実現が図れることとなる。
分析しやすくするロジスティクスソリューションのメニュー,特に その中心となるWMS(Warehouse Management System)と輸配 送管理システムについて述べる(図1参照)。 2.経営分析/KPI設定サービスとBIソリューションサービス 経営から現場までプロセスを可視化し,問題点・優良点を 顕在化させて,意思決定を早くするソリューションについて述 べる(図2参照)。 2.1サービスの特徴 BIソリューションは,(1)経営課題の抽出,(2)KPI(Key Performance Indicator)の設定,(3)業務プロセスの改善サイ クル設定で構成され,利益最大化などの改革目標に対する 実行性評価を実現している。 各手順は通常のシステム要 件 定義をベースとし,BSC (Balanced Score Card)による課題抽出,経営から現場までの プロセス評価と組織階層間別PDCA(Plan,Do,Check,and Action)サイクルを行い,効率的に支援できるようにメニュー化 されている。 2.2 BSCによる経営課題の抽出 経営戦略に対し,業績評価を実現するためには,経営ビ ジョン,組織目標,現場指標が同じ方向を向いている必要が ある。そこで,組織内外で内在する課題を浮き彫りにし,改革 目標に対する効果的な指標をバランスよく設定する方策とし て,BSCを活用している。BSCは四つの視点(財務,顧客,プ ロセス,学習と成長)で整理するので,全社的,組織的課題 を網羅できる。さらに,課題の優先度と,想定しうる解決策を 整理することで,主要課題,解決策までを関連づけて整理で 題と優先順位を整理し,経営課題に対するゴール設定と効 果に対する評価項目の抽出ができるので,投資目的とプロ ジェクトのゴールを明確にすることができるようになる。 2.3 KPIの設定 経営課題に対する効果が定量的にわかるように,業績に対 する評価指標であるKPIを設定する。KPIの設定にあたっては 幾つか押さえておくべきポイントがある。 (1)BSCで挙げた解決課題を組織階層別に定量評価できる 項目を選定すること
(2)財務指標展開を行い,P/L(Profit and Loss Statement:損 益計算書)など財務に関連するデータがKPIに含まれている こと (3)財務指標だけでなく,プロセスから財務指標数値を事前 に推測できる非財務指標を選定すること (4)予定・実績管理する項目と組織階層に漏れがないこと, など こうしたポイントを踏まえ,円滑にプロジェクトを進行するた めに,各業務システムが持ちうるKPIやソースデータを整理し たプロセスを実施している。 2.4業務プロセスの改善サイクル 組織階層ごとにKPIを用いたPDCAが実現できるか,検討 を行う。このとき,KPIは組織階層ごとに整合性がとれている ことが必要である。組織階層における命題(Plan)に対し, KPIを評価(Check)し,達成できるかを予測する。業務実施 (Do)の結果,問題(予定と実績の差異)があるときにはその 情報を顕在化(アラーム)させ,命題(Plan)に対する影響を考 慮し,行動(Action)をとる。 改善サイクルを回すときは,KPIの相関性を考慮し,複数の KPIを組み合わせて判断する必要がある。日立グループはこ れまでの効果検証ノウハウを基に,業務プロセスのKPI選定と PDCAサイクルを実際の業務と照らし合わせることで,システ ム投資効果を判断している。 2.5 BIソリューションサービス こうしてできたKPIと業績評価の仕組みをシステムとして支 援しているのがBIである。 経営戦略,意思決定,業績管理といった領域に対し,レ ポーティング(分析資料の出力),分析(多次元分析),ダッ シュボード(個人別情報提供),およびスコアカード〔評価指標 俯瞰(ふかん)〕といった機能を有しており,WMSなどのシステ ムからのデータを基に分析を行うことができる。 このように,業務情報を迅速かつ正確に把握する業務シス Feature Article 組織階層 命題/経営課題 KPI設定/改善サイクル 経営 幹部 経営戦略立案 会社レベルの収益管理 ガバナンス 会社・組織予算管理 顧客・製品業績管理 利益・コスト 生産性 作業性 コスト 品質 ガバナンス 進捗(ちょく)管理 組織の業績管理 プロセスの進捗管理 現場の状況管理 組織管理者 現場管理者 業 績 管 理 オ ペ レ ー シ ョ ン 管 理 図2 組織階層別の命題設定とKPI活用による業績評価管理 組織階層別の命題と経営指標項目のKPIおよび改善サイクルの設定により, スピーディーな経営判断をサポートしている。
Vol.89 No.12 948-949 産業・流通分野の最新動向と日立グループのロジスティクスソリューション テムをBIで経営評価する仕組みが構築できると,業務システ ムをさらに効率よく活用することにつながる。 3.物流センター業務情報を収集・活用する WMSソリューション 3.1 WMSの役割 前述した経営レベルのKPIの有効性は,その基礎となる業 務情報の精度と鮮度に支えられている。ロジスティクスの現場 業務の根幹と言える物流センターでは,センター作業の生産 性など,KPIの基礎情報となる作業計画と実績や,在庫情報 などの業務情報が日常的に扱われている。これらの業務を効 率的に行うばかりでなく,情報をタイムリーに収集,管理活用 し,経営活動に役立たせるためには,WMSが不可欠となる。 日立グループは,顧客の規模や業務内容などに合わせて 複数のWMSパッケージを用意しているが,ここでは,2008年 度にリニューアル予定の「HITLUSTER」と,2007年6月にリ ニューアルした「 HITLOMANS 2.0」( Hitachi Logistics Management System 2.0)について述べる。 HITLUSTERは,特に流通業における物流センター業務の 機能の充実度が評価されており,大手の流通業の顧客にも 導入されている。一方,HITLOMANS 2.0は,多業種のさま ざまな業務形態に合わせやすいという従来からの特徴を,今 回のリニューアルによってさらに強化している。 3.2 HITLUSTER 3.2.1 WMSソリューションとしてのコンセプト 多くの企業においては,これまでローコスト経営のキーとし て物流改革が進められてきたが,さらなる経営改革のために, 情報をより迅速に収集する仕組みの導入が求められている。 日立製作所は,このような課題を解決するために,低コストで 短期導入が可能なパッケージを基に,物流業務に精通した人 材による,計画からサポートまでの一貫したサービスが必要で あると考え,次のようなコンセプトでWMSソリューションとして展 開している。 (1)企業戦略レベルから物流現場運用レベルまで,顧客の 目標とする改革レベルに合わせた対応が可能なように,複数 のパッケージをそろえている。 (2)物流業務のノウハウを熟知した専任のアプリケーションエ ンジニアにより,高品質で,柔軟かつ効率的なWMSを短期間 で実現する。 3.2.2 WMSソリューションの構成 WMSソリューションの構成としては,これまでのWMSパッ ケージのHITLUSTERに加え,システム導入支援サービスを WMSトータルサービスとして製品展開している。 (1)パッケージ「HITLUSTER」 流通業を中心に支援する通過型物流センターモデルと生 鮮加工型物流センターモデル,および在庫型物流センターモ デルを用意しており,流通業内の業種,業態別のテンプレー トを提供する。 (2)サービス製品「WMSトータルサービス」 WMS構築を低コスト,短納期で実現するため,パッケージ の適用を前提とした標準構築手順を提供する。 3.2.3 HITLUSTERの特徴 (1)流通業における物流分野でのシステム構築ノウハウを凝 縮したパッケージHITLUSTERの特徴としては,前述したとお り,機能別に異なる物流センターの特性を考慮して,通過型 WMSに対応した「HITLUSTER-TC」と,在庫型WMSに対応 した「HITLUSTER-DC」,生鮮加工型WMSに対応した 「HITLUSTER-PC」の三つのパターンを取りそろえていること である(図3参照)。 (2)「顧客運用(物と仕事の流れ)」と「技術(IT,設備,制 御)」を一体として考える。そのため,自動倉庫,ソーティング システム,デジタルピッキングシステム,無線端末などの物流 設備とのインタフェースや基幹システムや配送支援システムと の連動も容易に行うことができ,一貫した物流システム構築が 可能である。 3.2.4今後の展開 近年,社会環境の変化や消費者ニーズの多様化により, 商品がたどる経路が多種多様化している。したがって流通業 では,WMSにおいても柔軟に対応できるシステム化への要望 が高まってきている。HITLUSTERは1999年にリリースしてか ら,これまで機能改良と拡充を行いノウハウを蓄積してきた。 これからも市場の要望に応え,真に価値のあるソリューション の提供をめざしており,今後,リニューアルを検討している。リ ニューアルの主なポイントは以下であり,2008年度のリリース をめざしている。 発注 事前出荷 取引先 本部 販売先 物流 注: 情報 通過型物流センター 在庫型物流センター 生鮮加工型物流センター 事前出荷 発注 発注 発注 入荷予定 出荷指示受信 在庫引き当て ピッキング 入荷 入荷/検品 包装/値札付け 仕分け 出荷 入庫 出庫 製造/加工/盛り付け 在庫管理 棚卸し 出荷確定 検品指示 出荷管理 検品実績 事前出荷情報受信 納品確定 納品確定 納品確定 HITLUSTER-TC HITLUSTER-DC HITLUSTER-PC 納品確定 図3 流通業における「HITLUSTER」の位置づけ 顧客の業務に柔軟に対応できる業種別パッケージを提供する。
(2)近年,顧客ニーズが高い「見える化(KPI指標),内部統 制(誰が何をしたかのアクセスログ)」に対応 (3)流通標準(流通ビジネスメッセージ標準,GTIN,GS1, GS1-128※1)など)に対応 3.3 HITLOMANS 2.0 3.3.1 HITLOMANS 2.0開発のコンセプト 近年,物流拠点の立ち上げにおいては,経営への早期貢 献を果たすために,物流システムの計画から運用開始までの 期間やコストの短縮が重要課題となっている。 従来のWMSパッケージHITLOMANSは,多業種対応のた め業種別にシリーズ化してきたが,まったく異なる業種へ適用 する場合,種々の問題があった。それは,(1)他の業種で作 成した同様の機能を使用するためには新たに開発が必要な こと,(2)カスタマイズボリュームと比例して,期間やコストが 増大するなどである。今回,従来のHITLOMANSを大幅に 見直し,「定義ツール」によるシステム変更機能を備え,高 い柔軟性を確保した「HITLOMANS 2.0」 を開発した。HIT-LOMANS 2.0では各機能を部品化し,製造業,卸売業,小 売業,倉庫業など,さまざまな業種ごとに組み合わせることで 機能を実現し,従来のHITLOMANSに比べ,短納期・低コス トを実現している。 3.3.2 HITLOMANS 2.0の特徴 (1)部品を組み合わせ,システムを構築 入荷検品・入庫・ピッキング・出荷検品・在庫管理・実績管 理・マスタ管理などのカテゴリごとにさまざまな部品を用意して いる。従来のパラメータ設定のみのテンプレートでは自由度が 狭いため,部品化したプログラムで提供することによって自由 度を広げており,新たに開発が不要となる。 すなわち,部品を組み合わせてプログラムを形作った後, パラメータの設定を行うことにより,システム構築が可能となっ ている(図4参照)。また,納期および顧客予算や稼働後のシ ステム変更も柔軟に対応可能である。このことにより,顧客コ ストやニーズに合わせることができる。 (2)パラメータ設定による画面および帳票 「定義ツール」機能により,画面構成(メニュー,表示内容 など)の設定,帳票構成(印字内容,印字位置など)の設定 が容易に行える(図5参照)。
(3)PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)型無線 ハンディターミナルの採用
無 線 ハンディターミナルは ,P D A 用リアルタイムO S (Operating System)であるWindowsCE※2)
搭載のPDAを採用 することで,従来のハンディターミナルよりも画面が見やすくな り,また,タッチパネル機能を活用することで高い操作性も実 現した(図6参照)。 3.3.3今後の展開 長年にわたりHITLOMANSで蓄積してきた運用のノウハウ Feature Article ※1)
「流通ビジネスメッセージ標準」は日本の流通業界のEDI(Ele-ctronic Data Interchange)の規格,GTIN(Global Trade Item
Number)は国際標準の商品識別コード,GS1(Global Standard
One)は国際的な流通標準化機関,GS1-128は流通・製造・物 流・サービス分野における商品関連情報や企業間取引情報を 「コード128」というバーコードシンボルで表現したものである。 ※2)WindowsCEは,米国およびその他の国における米国Microsoft Corp.の登録商標である。 出 荷 検 品 部 品 マスタ管理部品 入 庫 部 品 入荷 ラベル 入荷検品リスト 入庫日管理 製造日管理 ロケ変更リスト 在庫引き当て ピッキングリスト 出荷検品リスト 商品マスタ 管理 入庫 ラベル 入荷 ラベル 入荷検品リスト パレット分割 入庫ロケ引き当て 入庫完了 HT 製造日管理 リスト 在庫 在庫調整 端末 HT ロケ変更 登録 HT 入荷検品 完了 端末 積み込み 完了 出荷検品 ラベル 引き当て 在庫 棚卸しリスト HT 出荷検品 完了 HT ピッキング 完了 オーダー ピッキング HT 棚卸し 入力 端末入庫 完了 在庫調整 端末 棚卸しリスト 端末 ロケ変更 登録 在庫 引き当て ピッキング オーダー 積み込みリスト 端末 ピッキング 完了 在庫 リスト ルート マスタ管理 ロケ管理 入荷実績管理 在庫実績管理 作業実績管理 出荷実績管理 届け先マスタ 管理 入庫 ラベル 入庫完了 端末 端末 積み込み 完了 棚卸し リスト 入庫ロケ 引き当て パレット 分割 ロット管理 賞味期限管理 ピッキング オーダー 出荷検品ラベル 端末 ピッキング 完了 端末 ロケ変更 指示 入荷データ 集約 品質 管理 荷主管理 ピッキング トータル 出荷仕分けリスト HT ピッキング 完了 端末 ロケ変更 登録 端末 入荷検品 完了 HT 入荷検品 完了 在庫 リスト 不良品 完了 分納 完了 在庫調整 端末 積み込みリスト HT ロケ変更 登録 端末 品質変更 登録 端末 出荷検品 完了 端末 日次棚卸し 開始 端末 棚卸し 入力 HT 出荷検品 完了 入庫 リスト 入庫完了 HT 配送完了 端末 棚卸し差異 リスト エリア 引き当て 端末 移動棚卸し 開始 HT 棚卸し 入力 HT 仕分け 完了 実績管理部品 (a)HITLOMANS2.0の主要部品 (b)帳票(リスト)による倉庫業務の構成例 (c)無線ハンディターミナルによる倉庫業務の構成例 注:略語説明 HT(ハンディターミナル),ロケ(ロケーション) 図4 「HITLOMANS 2.0」のコンセプト 作業ごとの部品の組み合わせにより,多様な業務に対応したシステムを構築 する。 物流管理サーバ データベース 定義ツール ・メニュー定義 ・検索項目定義 ・表示項目定義 ・ファンクション定義 ・帳票ヘッダ可変定義 ・帳票明細可変定義 ・ヘッダ固定位置 ・ヘッダ可変位置 ・明細固定位置 ・明細可変位置 帳票レイアウト ヘッダ内容 明細内容 表示内容 ファンクション内容 検索内容 メニュー内容 クライアントPC 図5 「HITLOMANS 2.0」の定義ツールの概要 定義ツール機能により,画面構成や帳票構成の設定が容易に行える。
Vol.89 No.12 950-951 産業・流通分野の最新動向と日立グループのロジスティクスソリューション を部品化するとともに,自動倉庫やソータなどの設備連携イン タフェースの部品化を進め,さらなる機能強化を行う予定で ある。 4.輸配送ソリューションによる迅速な業務情報の収集 4.1輸配送業務の「見える化」への取り組み背景 製造業,流通業を問わず,近年のロジスティクス投資は, サプライチェーン視点の業務改革やシステム化に向けられて きた。このシステム化によって,配送センター内の業務に関す る作業の進捗(ちょく)や実績の「見える化」が図られてきたと 言える。しかし,輸配送業務に関しては,荷主,3PL(Third Party Logistics)業者とも,進捗や実績の把握ができている会 社は少ない。これは,物流業務の中でも,輸配送業務は外注 化される傾向が強いことに起因していると考えられる。 輸配送業務は通常,納品書へ押印した結果によって荷物 の到着を把握しており,荷物が届いたという事実確認しかで きていないのが実情である。しかし,温度状態によって効能 に影響を与えてしまう一部の医薬品や,衛生状態によって品 質維持の難しい食品など,品質管理条件の厳しい荷物を扱 う輸配送においては,輸送途中の荷物の状態をシステムに よって自動的に監視したいという輸配送品質へのニーズが高 まっている。 しかも,輸配送途中の状態把握は輸配送品質の維持にと どまらず,業務のむだや効率化のポイントを発見するのに役 立つとともに,業務改善によるコスト削減や経営管理強化にも つなげることができる。そのため,医薬品や食品といった特定 業種に限定させず,他の業種においても潜在的ニーズはある と考えており,日立グループは,荷主または3PL業者が主体と なり,責任をもって自社製品の供給といったサービス提供を遂 行するための管理の仕掛けとして,運行動態管理システムの 導入を提案している。 4.2運行動態管理システムの概要 運行動態管理システムは,輸配送中の車両位置を把握し, 地図上に表示して確認することができる「動態管理機能」〔図 7(右上)参照〕と,業務進捗を把握し,一日の走行および作 業履歴から報告書の出力や,配車計画の反映を支援する 「運行管理機能」〔図7(右下)参照〕を有している。 このシステムは,輸配送車両の位置や速度といった運行状 態や,出発,荷降ろしといった配送進捗の情報を取得する車 載システムと,車両から上がってくる情報に基づき動態管理, 運行管理を行うサーバシステムにより構成されている〔図7(左) 参照〕。
車載システムは,定期的にGPS(Global Positioning System) 位置情報,車速,貨物室の温度を収集し,サーバへこれら のデータを伝送する。さらに,ドライバーによる操作入力情報 運行動態 管理サーバ システム 携帯電話網 車載システム 動態管理機能 運行管理機能 図7 運行動態管理システムの構成と画面・帳票の例 図中の地図はインクリメント・ピー株式会社の「MapDK」を使用している。 入庫 EP1 エンタープライズ 入庫ラベルNo 入庫予定数 管理日付 良品数 不良品数 ロケーション 決定 戻る >ロケーションのバーコードをスキャンして 下さい 予定ロケーション : : : : : : : HK0015070109247 16 20070101 16 0 1-A-5-01-01-02 数 図6 無線ハンディターミナル画面例(HITLOMANS 2.0) 従来のハンディターミナルよりも画面が見やすく,操作もしやすい。 表1 運行動態管理システムの主な機能 動態管理機能,運行管理機能,マスタメンテナンスとしてさまざまな機能を提 供する。 動態管理機能 (1)車両位置のリアルタイム地図表示 (2)配送進捗管理 ¡配送作業進捗管理 ¡コースごとの配送予定/実績一覧表示 ¡配送遅延アラート表示 ¡配送先到着自動検出 (3)車の走行軌跡/進行方向表示機能 ¡急加減速/速度超過時の警告(車載機能) (4)メッセージ送受信機能 (5)温度管理機能 ¡庫内温度のリアルタイム遠隔監視 ¡温度異常時のアラート表示(車載含む) 運行管理機能 (1)運転日報の作成 (2)運転評価点数の算出・警告メッセージ (3)庫内温度履歴管理 (4)配送先ごとの配送実績管理 (5)アイドリング時間の累計 マスタメンテナンス 車両,ドライバー,配送先,コース,ランドマークほか
バへ伝送する。これらの実績データに基づき,車両位置の把 握や,配送遅延・温度異常などの有無を管理している。さらに, 車速の差分からの急加減速の検出や,車速ゼロの時間の累 計によるアイドリング時間算出など,輸配送の品質を管理する さまざまな機能を提供している(表1参照)。 4.3コスト管理・経営管理への応用 運行動態管理システムによって取得する実績情報は,物流 品質に関する要素であるが,コスト管理や事業管理の面でも 活用可能である。 輸配送のコストは,その大部分をドライバーの人件費と燃料 費および車両維持にかかわるメンテナンス費用によって構成さ れている。これらの主なコスト要因は輸配送に要する時間, すなわちドライバーの拘束時間と走行距離である。これらの実 績は,運行動態管理システムによって実績を取得することが できる。そこで,発生コストを時間,距離の関数として近似し, 係数を指標化して継続的にモニタリングすることにより,過去 の履歴や他の配送との比較や査定が可能となる。 このように,今後は運行動態管理システムから取れる実績 を履歴データベースとして蓄積してKPIへとつなげ,経営分析 に活用できるように,ソリューションメニューの整備を進めてい く。最終的には輸配送のみならず,在庫推移や物流拠点の オペレーション実績などの履歴と合わせ,事業管理や経営管 理へとつなげることのできる統合ロジスティクス管理システムの 実現をめざしていく(図8参照)。 5.おわりに ここでは,一般産業向けのBIソリューションサービスと,そ れを支える現場系実行システムとしてのロジスティクスソリュー ションの中心となるWMS,輸配送管理システムについて述べた。 企業のサプライチェーンを構成する中でも,重要となる物流 現場においては,その現場系のデータをより迅速かつ正確に つかむことが大切である。この実績管理が経営を支え,企業 の成長戦略を立てるうえでも重要なキーとなる。ここで紹介し た物流現場データを収集し,分析する情報システムが,この SCMソリューションを支え,ひいては企業の意思決定を速め, 成長に寄与することとなる。 企業の経営層は現場での動きがなかなか把握できない。 ほんとうの「見える化」とは,それを必要とする人が必要とする データの形で情報を把握できることである。このために,さまざ まな現場系システムから情報を迅速に収集する機能を有した うえで,経営指標に基づいて分析するソリューションを提供す ることにより,真に顧客の経営を支えることができるものと考え ている。 1)田沢,外:製造流通分野における高付加価値化の動向と日立グループの 取り組み,日立評論,87,12,883∼886(2005.12) 2)杉浦:経営計画はレビューに始まる,情報マネジメント(2004.5) 参考文献 執筆者紹介 大畠 麻里子 1990年日立製作所入社,トータルソリューション事業部 産業・流通システム本部 ロジスティクスシステム部 所属 現在,小売業向けロジスティクスソリューションの拡販およ び開発に従事 Feature Article 梅木 春男 1998年日立製作所入社,トータルソリューション事業部 プロジェクト統括本部 環境エネルギーソリューションセンタ 所属 現在,食品産業関連システムの事業企画・取りまとめに業 務に従事 佐藤 秀樹 2001年日立製作所入社,情報・通信グループ 産業・流通 システム事業部 流通システム本部 第二システム部 所属 現在,ロジスティクスソリューションの拡販に従事 渡邉 徹 1981年日立製作所入社,株式会社日立プラントテクノロ ジー メカトロニクス事業本部 搬送・CSシステム事業部 ロジスティクス設計部 所属 現在,ロジスティクスシステムの設計・取りまとめに従事 中村 秀 1994年日立製作所入社,トータルソリューション事業部 産業・流通システム本部 ロジスティクスシステム部 所属 現在,製造業・運輸業向けロジスティクスソリューションの 拡販および開発に従事 管理 (納期順守率, 物流予算乖離率など) コスト内訳展開 (車両費,燃料費, 人件費など) 走行距離 配送時間 距離単価 投入人事 方針 検討 改善 検討 方針 説明 現場 指導 事業 管理 輸配送 コスト 管理 輸配送 品質 管理 (運行実績) ・GPS位置情報 ・車速・貨物室温度 ・ドライバー操作入力情報 安全運転警告 省エネルギー管理 配送遅延管理 温度異常管理 急加速度 アイドリング 配送時刻 貨物室温度
注:略語説明 GPS(Global Positioning System)
図8 実績情報の応用概念
実績情報を履歴データベースとして蓄積し,KPIへとつなげて経営分析に活用 する。