まえがき
分析化学において,試料の微量化は絶対的に善であると考えられる.多くの 分析機器では,検出性能(感度,精度),測定時間,必要試料量などが装置性 能の指標となっており,試料の微量化は重要な開発項目の1 つである.本書の 「マイクロ流体分析(μTAS)」は,特定の分析機器の名称ではなく,さまざま な分析法を実現するためのプラットフォームである.微量試料を迅速に操作・ 解析できるμTAS は,多くの分析法に応用することができる.実際に,本シ リーズの機器分析編で取り上げられているほとんどの分析法がμTAS で実現 されている.さらに,μTAS は分析化学以外の分野にも広く応用されており, これらすべてを本書で紹介することはできない.そのため,本書では,マイク ロ流体分析(μTAS)の基本的な考え方,μTAS を実現するためのデバイスの 作製法,マイクロ流路内における流体のふるまい,などを紹介した後に,代表 的なアプリケーションと最近のトピックを紹介する.これらを読めば,初学者 でもマイクロ流体分析の概略が理解できるように構成されている.Chapter 1 では,μTAS の歴史と現状について解説する.Chapter 2 では, μTAS を実現するためのデバイスの作製法について述べ,Chapter 3 では,バ イオ分析の例として,バイオアッセイ,DNA 分析,免疫分析について解説す る.Chapter 4 では,マイクロ流路内の流体のふるまいなどのμTAS を実現す る上で理解しておかなければならない重要事項と,その流体の流れを利用した 湿式分析について概説する.Chapter 5 では,マイクロチップクロマトグラ フィーとして,ガスクロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーを取り上げ る.Chapter 6 では,最近の話題として,生体模倣デバイス,デジタルマイク ロフルイディクス,Microfluidic Paper―Based Analytical Device(紙チップ) を紹介する.生体模倣デバイス(Organ―on―a―Chip)は,臓器機能が集積化さ
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分析化学実技シリーズ 全30巻 機器分析編 【19】巻 マイクロ流体分析
日本分析化学会 編・渡慶次 学・真栄城 正寿・佐藤 記一・佐藤 香枝・火原 彰秀・石田 晃彦著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320044593
れたデバイスの総称で,現在世界中で研究開発競争が行われている.生体機能 の解明のような基礎科学研究から,薬剤のスクリーニングや動物実験の代替と いった応用まで,幅広い応用が期待されている.デジタルマイクロフルイディ クスは,液滴を操作して分析プロセスをデバイス上で実現するもので,従来の マイクロ流体分析の概念を広げるユニークな手法である.紙は,古くから分析 化学ではなじみのある材料であるが,近年,紙上に流路を作製した紙チップが 注目されている.グローバルヘルスのキーテクノロジーの1 つとして期待され ているだけでなく,食品分析や環境分析の簡易・迅速・安価なツールとしても 注目されている. Chapter 6 で紹介するように,μTAS は現在進行形で拡張・進化している. ちょっとしたアイデアが,新しいμTAS の潮流を生む可能性は十分にある. 本書がそのようなアイデアを生むきっかけになれば幸いである.さらに高度な μTAS について学びたい読者には,多数の成書が出版されているので,それ らを参考にされたい. 最後に,本書の執筆の機会を与えていただいた原口紘炁編集委員長および編 集委員の先生方に感謝申し上げます.また,執筆にあたってご協力いただいた 共立出版編集部の皆様に厚くお礼申し上げます. 2020 年 9 月 渡慶次 学 iv 分析化学実技シリーズ 全30巻 機器分析編 【19】巻 マイクロ流体分析 日本分析化学会 編・渡慶次 学・真栄城 正寿・佐藤 記一・佐藤 香枝・火原 彰秀・石田 晃彦著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320044593