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セキュリティ要求工学の実効性:6.日本ユニシスにおけるエンタープライズ・セキュリティ・アーキテクチャ(ESA)

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Academic year: 2021

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(1)セキュリティ要求工学 の 実効性. 特集. 6. 日本ユニシスにおけるエンタープライズ・ セキュリティ・アーキテクチャ(ESA) 平岡 昭良 日本ユニシス(株). これまでのセキュリティ対策は効率性,利便性を犠牲. ティ対策を年々厳しくしてきた結果,企業の ICT 鎖国,. にした過度なセキュリティ対策に陥るケースが多かった. ガラパゴス化といった現象が生じてきた.. が,今後は欧米企業と同様,バリューチェーン全体のビ.  グローバル化の波は,閉じた組織,企業から競争力を. ジネスリスクを見定めて,ビジネスプロセスにセキュリ. 奪うと言われている.ICT をビジネス基盤として利活用. ティ対策を埋め込んでいく必要がある.本稿では,自社. することで,グローバルレベルでの横断的な情報共有・. の経営戦略や外部からのセキュリティ要求との整合性を. 活用を図り,企業が持つバリューチェーンの最適化を図. 保った上で,管理および技術面のバランスがとれた情報 セキュリティ活動を実践していくための体系的な枠組み として「エンタープライズ・セキュリティ・アーキテク チャ」の全体構造,アーキテクチャの構成要素,および 構成要素間を効果的に連動させ情報セキュリティ活動を 統制する上でのポイントを考察する.また,日本ユニシ スグループでの取り組みを踏まえ,適用上の課題,今後 の方向性についての見解を紹介する.. ることが競争力につながることになる.単純に情報セ キュリティを強化するだけではなく,企業グループを超 えたオープンなサプライチェーンや顧客サービスの強化 に,いかにセキュリティ対策を組み込み,競争力を高め ていくかが問われている.  また,近年,ワーク・ライフ・バランスが注目を集め るようになってきている.人材を確保するための福利厚 生という狭い観点ではなく,働き方や働く環境,いわゆ るワークスタイルの変革が企業の競争優位と社員の仕事 と生活の調和をもたらすという考え方だ. テレワーク(在. 企業の情報セキュリティに対する 社会的要請の変化と ESA  相次ぐ情報漏えい事件と,2005 年 4 月の個人情報保. 宅勤務)やモバイルワークが代表的な手法だが,制度と 職場の風土,それを支える ICT の環境,特に十分な情 報セキュリティ対策がないと実施できない.  本稿では,企業が戦略的に情報セキュリティに取り組. 護法の全面施行により,情報セキュリティに対する社会. むためのフレームワークとなるエンタープライズ・セ. の関心や認識は高まり,それにともなって企業の情報セ. キュリティ・アーキテクチャ(ESA)の全体構造,アー. キュリティへの取り組みに対する社会的要請が強まって. キテクチャの構成要素を示し,その構成要素間を効果的. きている.. に連動させ情報セキュリティ活動を統制するポイントを.  さらに加えて,金融商品取引法(J-SOX 法)の施行. 考察する.また,実際の日本ユニシスグループの取り組. により,コンプライアンスや内部統制も一層求められる. み事例と,それを踏まえた運用上の課題,今後の方向性. ようになり,企業の社会的責任という観点から,企業に. についての見解を紹介する.読者の一助になれば幸いで. は適法性と適正性の遵守,透明性や情報開示を求める声. ある.. が高まり,リスクなどの情報開示,説明責任が求められ るようになってきている.社会的責任を考慮した,情報 資産の有効活用と管理の高度化,事業継続対応など,ま すます多岐にわたる取り組みが必要となってきている.. 企業における エンタープライズ・セキュリティの課題.  一方で,情報セキュリティ対策を過剰に優先させるあ.  前述したような環境変化が加速する中で,企業が情報. まり,モバイル PC の使用禁止など,せっかくの ICT(情. セキュリティ管理を継続的に維持していく重要性はます. 報通信技術)の利便性を犠牲にせざるを得ないケースや,. ます高まっていくであろう.しかしながら,情報セキュ. 運用負荷の増大や情報共有・交換の制限など,業務の効. リティが持つ特性, 特に「多様性と変化」 「運用負荷(業. 率性を阻害するケースも増えてきている.情報セキュリ. 務効率の低下) 」 「投資対効果の不透明さ」が,さらに情. 216. 情報処理 Vol.50 No.3 Mar. 2009.

(2) 日本ユニシスにおけるエンタープライズ・セキュリティ・アーキテクチャ (ESA) 報セキュリティ管理を困難なものにしていく可能性は否 定できない.. BCP(事業継続計画),コンプライアンス,効果測定な どを体系的な枠組みとして捉える ESA による活動が求. • 多様性と変化により,情報セキュリティの対象となる. められる時代になりつつある.. 事業,業務プロセス,それらに含まれる情報資産等の 範囲,情報セキュリティ事故の要因となるセキュリ ティリスク,およびリスク対応として実践すべきセ. 日本ユニシスが提唱するESA. キュリティ対策の種類と範囲がきわめて広範囲にわた.  ESA は,このようなセキュリティに関する多面的な. ること.また,企業が遵守すべきコンプライアンス要. 取り組みを対象としている.一般に ESA といわれるも. 件,経営戦略の変化に伴う事業ドメイン,活動拠点,. のには,システムセキュリティ・モデル,コモンクライ. プロセス,情報資産,コンピュータウィルスや不正ア. テリア(ISO 15408)や BS 7799/ISO 17799 などの各. クセス手法等のセキュリティリスクとその対策技術の. 種標準,FEA SPP. 要素が非常に短いサイクルで変化すること.. ス・モデル,NIST のセキュリティ・サービスモデル. • 運用負荷により,過剰なセキュリティ対策の実施によ. ☆3. など多数のセキュリティガバナン ☆4. などがある.. る,業務やシステム運用の効率が低下し,現場の不満.  日本ユニシスの ESA は,セキュリティガバナンス・. が増大すること.. モデルの 1 つである.セキュリティガバナンス・モデ. • 効果の不透明さにより,実施しなければならないセ. ルは,企業組織や企業文化にセキュリティ関連活動を結. キュリティ対策の効果を可視化し,経営陣,従業員の. 合させることを目的としている.そのため,このモデル. 理解を得ることが困難であること.. は企業構造や,ビジネス・ニーズと自社のセキュリティ.  これらの特性を踏まえ,企業が自社に合致した情報セ. 能力の適合度から出発し,情報セキュリティを企業全体. キュリティ活動を維持していくためには,情報セキュリ. にわたって義務付け,実行し,管理するという問題(セ. ティにかかわるさまざまな活動要素を体系化,標準化し. キュリティガバナンス)を解決することに注力する.先. た枠組みを整備し,企業戦略の一部として実行していく. に述べたように,情報セキュリティ対策を実施していく. ことが必要である.. 上での最大の課題は推進力をいかに維持していくかとい.  情報セキュリティ対策を継続的に実施していく上で,. う点であると捉えているため,日本ユニシスの ESA は. 最大の課題は,推進力をいかに持続させていくか,そこ. このモデルを採用している.. には,推進する立場と対策を実施する立場の両面での課.  セキュリティガバナンス・モデルは多数提唱されてい. 題がある.危機意識の低下も,推進力を妨げる一因と. るが,ガバナンスモデルであるため共通して,ポリシー. なる.. 策定とセキュリティ施策の実施がそれぞれ,集中して行.  漸次,セキュリティ対策を追加しているとはいえ,総. われるか,分散して行われているかに着目している.そ. 合的な対策には及ばず,場当たり的な対策にとどまって. こで,日本ユニシスの ESA は,ポリシーを定めて義務. いる企業も多いのではないだろうか.また,ISMS(情. 付けていくための組織構造と,実行させ管理していく管. シーマーク(個人情報保護). ☆2. ☆1. とプライバ. 理の仕組みを 2 つの柱として考え,その前提となるセ. の運用もそれぞれでな. キュリティ戦略と,情報システムに埋め込まれる技術と. 報セキュリティマネジメントシステム). されているというのが実情ではないかと推察される.. 併せ,ESA を 4 つのレイヤ(セキュリティ戦略レイヤ,.  全体最適な視点で,情報セキュリティ管理を経営戦略. セキュリティ組織レイヤ,セキュリティ管理レイヤ,セ. や社会,取引先などからのセキュリティ要求と整合性. キュリティ技術レイヤ)で構成し,個々のレイヤに含ま. が保たれた状態で統制していく必要がある.リスク管. れる構成要素を定義している(図 -1) .. 理,ポリシー,管理の仕組み,技術面の対策,人的対策,.  基本的な考え方は,ESA を定めることがすべての出 発点であり,そこから企業の情報セキュリティの品質を 決定するということである.そして,ESA から導かれ. ☆1. ISMS:組織が,情報セキュリティリスクを管理し,継続的にリ. スクの回避や軽減ができるマネジメントシステム. プライバシーマーク:個人情報保護に関して一定の要件を満たし た事業者について, (財)日本情報処理開発協会により使用を認め られる登録商標.. ☆2. ☆ 3. Security and Privacy Profile for the Federal Enterprise Architecture(FEA SPP):米国連邦政府の各省庁で共有する情報. の保護についてのガイドライン. NIST(米国国立標準技術研究所)が公布する情報セキュリティ施 の 1 つ. 策実施のための文書 (SP800 シリーズ). ☆4. る制約条件に基づいてセキュリティ要求レベルを決定 し,この要求レベルを企業が自社のセキュリティ品質を 具体的に評価するための基準とする.  ESA の起点は,経営のセキュリティへの関与である. どのように企業戦略と情報セキュリティが関連するかを 表明したものが「情報セキュリティ戦略」であり,セキュ リティ戦略レイヤで定める. 情報処理 Vol.50 No.3 Mar. 2009. 217. 6.

(3) 特集. セキュリティ要求工学 の 実効性. セキュリティ戦略レイヤ 情報セキュリティ戦略 情報セキュリティ戦略 など. 内部要求 内部要求 自社の経営戦略 自社の事業戦略. セキュ リティ組織レイヤ セキュリティ組織レイヤ CIO, CISO セキュリティ専門人材 セキュリティ専門人材 など. 外部要求 外部要求 コンプライアンス要件 コンプライアンス要件 顧客・株主・業界などの 顧客・株主・業界などの セキュリティ外部要求事項 セキュリティ外部要求事項 セキュリティ事故事例 セキュリティ事故事例. セキュリティ管理レイヤ セキュリティ管理レイヤ 情報セキュリティポリシー セキュリティ管理プロセス など など. セキュリティ技術レイヤ システムリスク評価 システムリスク評価 セキュリティ共通実装 セキュリティ共通実装 など など. セキュ リティが考慮された セキュリティが考慮された 業務プロセス 業務プロセス 対策の業務への組込み. 事業継続管理. 情報セキュリティポリシー 方針,対策基準,手順 方針、対策基準、手順. 図 -1 エ ン タ ー プ ライズ・セキュリテ ィ・アーキテクチャ の概要. 投資効果の測定. 情報セキュリティ管理プロセス 継続性維持のためのPDCA 継続性維持のためのPDCA. セキュリティ調整 セキュリティ調整 顧客・協力企業との情報資産, 顧客・協力企業との情報資産、 対策についての調整 セキュリティ管理レイヤ. セキュリティ情報の公開 組織内の継続的な意識向上, 事故発生予防 図 -2 セ キ ュ リ テ ィ管理レイヤ.  セキュリティ管理レイヤでは,情報セキュリティにか. アセスメント」(セキュリティ管理レイヤ)の作業と連. かわる包括的な施策(セキュリティ技術レイヤ)を定め. 動して行われる.. るため,「情報セキュリティ戦略」 (セキュリティ戦略レ.  そして,このような関連する活動を継続的に実行する. イヤ)の重要な目標を詳細化する(図 -2) .これが ESA. には,役割に応じた教育や人材育成(セキュリティ組織. から導かれる制約条件の内容となる.. レイヤ)が重要である(図 -4).1 つは,専門家の育成.  この制約条件は,セキュリティ技術レイヤ(図 -3). である.情報セキュリティ人材にはさまざまなスキルが. の要件となる.包括的な施策を徹底するには, 「セキュ. 必要とされるため,すべてのスキルを持つスーパー人材. リティ共通実装」(セキュリティ技術レイヤ)として要. を育成することはきわめて難しい.ESA の構成要素に. 件を定め,共通基盤として提供することが望ましい.し. 必要なスキル定義に基づいて,自社に必要なセキュリ. かし,実際には,情報システムは多種多様であり,機密. ティ人材を定義し,人材育成計画に組み込んで育成を図. 性の高い情報資産を扱うシステムや,そうでないシステ. ることが重要である.もう 1 つは,非専門家への教育. ムもある.これらに対して,すべて均一的な対策を実施. である.他のガバナンス施策と同様に,情報セキュリ. することは,コストや運用負荷の面で望ましくない.そ. ティは,経営者の立場で情報セキュリティの立案,実施. のため,個別システムの種類によって対策や方法を選択. に責任を持つ CIO(最高情報責任者)や CISO(最高情. できるようにしておくことが求められる.. 報セキュリティ責任者)の熱意と,情報セキュリティの.  情報セキュリティ対策は,このようにして定められた. 各種施策を業務の一部として実行する従業員の高い意識. 包括的な方策と個別の選択肢を合わせたものになる.セ. に支えられることが望ましい.経営者や従業員の多くは. キュリティ要求レベルは,この対策を「システムリスク. セキュリティの専門家ではないので,意識づけを中心と. 評価」(セキュリティ技術レイヤ)で評価した結果とし. した教育が重要となる.. て定められる.このリスク評価は,セキュリティと業務 プロセス効率とのバランスをモニタリングする「リスク. 218. 情報処理 Vol.50 No.3 Mar. 2009.

(4) 日本ユニシスにおけるエンタープライズ・セキュリティ・アーキテクチャ (ESA)  当社では,自社の経営戦略,事業戦略を踏まえた システムリスク評価 システムリスク評価 個々の情報システム についての評価と対策. 上で,「情報セキュリティ総合戦略」として戦略策. セキュリティ技術標準 セキュリティ技術標準 ポリシーの下位規程 ポリシーの下位規定 技術的要件. 定し実践中である.2004 年に策定した「第一次情 報セキュリティ総合戦略」は,情報セキュリティに. セキュ リティ運用標準 セキュリティ運用標準 セキュリティ共通実装 セキュリティ共通実装 共通的な対策を 実装した基盤. 関して単に「守り」の視点からの対応のみならず, 技術・ノウハウを活かし企業の情報セキュリティの. テク ノロジスキャン テクノロジスキャン 技術標準と 技術の進化の同期. 高度化を実現し, 生産性向上およびコスト削減等 「攻 め」の視点を定めた.その後,2 年ごとに,経営戦 略の変化, セキュリティ外部要求事項の変化, セキュ. セキュリティ技術レイヤ. リティインシデントの変化等を的確に捉え,見直し を実施している.昨年,「情報セキュリティ総合戦. 図 -3 セキュリティ技術レイヤ. 略 2008」を策定,キーワードを「攻め」と設定し, 企業グループの枠組みを超え,オープンなサプライ CIO, CIO, CISO CISO 戦略の実行に責任を持 つ経営陣. 情報セキュリティ委員会 戦略に基づく 施策の立案・実施. 情報セキュリティ 情報セキュリティ 専門人材 専門家としての助言. 従業員・協力会社など 従業員・協力会社など 戦略に基づき 教育を受けた要員. チェーンや顧客サービスのさらなる強化を行い企業 競争力を高めるための活動を 2 年計画で推進中で ある.  これら情報セキュリティへの取り組みを,顧客, 株主等のステークホルダへ公開するために,毎年発 行される当社「CSR 報告書」にて公開している.. セキュ リティ事故 セキュリティ事故 対策チーム 再発防止、緊急対応 再発防止,緊急対応.  公的認証取得については,ISMS(ISO 27001) やプライバシーマークの認証取得を「総合セキュリ. セキュリティ組織レイヤ. ティ戦略」で取得計画を定め,グループ全社が認証 取得すべく推進中である.すでに ISO 27001 は全. 図 -4 セキュリティ組織レイヤ. グループ企業で取得済みであり,プライバシーマー クについても年内に全企業取得予定である.  以下では,この日本ユニシスの ESA モデルを適用した.  . 実例として,日本ユニシスグループ(以下,当社)にお. ◆セキュリティ組織レイヤ. ける情報セキュリティへの取り組みを紹介する.当社の.  セキュリティ組織レイヤは,情報セキュリティ戦略に. セキュリティガバナンスの型は,ポリシーの策定も,施. 基づきセキュリティを実践する組織から構成される . セ. 策の実行・管理も,CIO/CISO に集中した一体型である.. キュリティの実践に責任を持つ経営陣である CISO,. CPO(最高個人情報保護責任者),全社横断の情報セキュ. ESA の適用事例. リティ委員会,セキュリティ技術や監査の専門性を備え た情報セキュリティ専門人材,セキュリティ事故発生時.  当社の ESA の適用事例について,前章で紹介した. の緊急対応チーム等の要素が必要とされる.. 4 つのレイヤ(セキュリティ戦略レイヤ,セキュリティ.  当社では,CISO のもとに「総合セキュリティ委員会」. 組織レイヤ,セキュリティ管理レイヤ,セキュリティ技. が組織されている.同委員会は当社の最高意思決定機関. 術レイヤ)の構成要素に従って,その取り組みを以下に. と位置付けられ,情報セキュリティ戦略に基づく各種施. 紹介する.. 策の承認を行う.実施する情報セキュリティ活動は多岐 にわたるため,情報システム部門のみならず,営業,シ. ◆セキュリティ戦略レイヤ. ステム,経営企画,人事,法務等の各部門長で構成され,.  セキュリティ戦略レイヤは,情報セキュリティに対す. 迅速な意思決定と情報セキュリティを実践するための中. るさまざまな要求事項を分析し,企業の戦略の一部とし. 心的な役割を担っている.. て情報セキュリティ活動を実践していくための中長期戦.  情報セキュリティの各種施策の立案および推進を実施. 略を策定するとともに,公的認証取得により情報セキュ. する情報セキュリティ専門部隊は,2004 年の「第一次. リティが第三者評価を受けること, 顧客, 株主等のステー. 情報セキュリティ総合戦略」を開始した時点で,50 名. クホルダに対してその活動を公開することが必要とさ. の専門部員で新たな組織として構成された.ISMS の構. れる.. 築や,内部監査等の実施を同部門が特化して実施して 情報処理 Vol.50 No.3 Mar. 2009. 219. 6.

(5) 特集. セキュリティ要求工学 の 実効性 いる.. 報システムのセキュリティ対策に特化した統制の仕組み.  セキュリティ事故対応については,企業内にセキュリ. を考慮しなければならない.. ティ事故対策チームを設置し,事故原因の究明,再発防.  当社では早くから種々のセキュリティ技術的対策を. 止のための緊急対応を実施する.これらの対応は,専門. 講じてきていたが,これらは IT 分野に限られた対症療. 的な知識を要するため,このチームはバーチャルな組織. 法的な対応であった.2004 年の情報セキュリティ戦略. として,事故状況に対応して専門家集団による最適な布. 策定後は,情報セキュリティガバナンスを継続的に維持. 陣で対応できるように考慮している.. すべく,戦略に基づく各種対策の策定に際してセキュリ ティ事故や外部・内部の変動要因を分類整理の上,リス. ◆セキュリティ管理レイヤ. クアセスメントを実施し,その結果に基づいてセキュリ.  セキュリティ管理レイヤは,情報セキュリティ委員会. ティの要求レベルを定め,情報セキュリティポリシーの. で決定された各種施策の実体である.セキュリティ管理. 見直しと改定, その下位規程類である各種管理策の改定,. レイヤの中心は,セキュリティマネジメントシステムに. および技術的対応策の決定を統括的に行っている.. おける情報セキュリティポリシーと継続性維持のための.  具体的には,システムのリスク評価に際しては,全社. 情報セキュリティ管理プロセスであり,セキュリティ規. 内システムの重要度や保持する情報資産の価値に応じ. 程により文書化された管理の仕組みが全従業員に公開さ. て,社内システムを層別し,そのレベルに応じた基本的. れるとともに教育される必要がある.. なセキュリティ技術的対策を決定して,個別システムへ.  当社の情報セキュリティポリシーは,グループ企業共. の適用を実施している.セキュリティ共通実装は,特に. 通であり,セキュリティの対策基準や,実施手順を定め. 重要課題であると認識している.この基盤を利用するこ. た規程類で構成される. 毎年実施する情報資産の棚卸や,. とにより,情報システムに対して特に重要な部分のセ. セキュリティ事故等に基づくリスクアセスメント結果に. キュリティ対策や運用負荷を軽減するとともに,統制の. より定期的な見直しを実施し陳腐化を防止している.. とれた情報システム構築を図るべく対応を行っている..   「情報セキュリティ総合戦略」の一施策として ISMS. 具体的には, 「情報セキュリティ総合戦略」に着手する. 日 本 ユ ニ シ ス グ ル ー プ 全 社 統 一 認 証 を 掲 げ て い る.. までは,システムの利用者パスワードやアクセス制御・. ISMS の管理策やセキュリティマネジメントシステムの. 権限情報の保持やパスワード変更,アクセス権付与・剥. フレームを活用することにより,リスクアセスメントを. 奪等は,すべて個別業務システムごとに運用されていた. 行い,セキュリティ施策を実施し,内部監査,対策の見. ため,運用負荷の増大や,セキュリティ統制面でも問題. 直しを行うこれらの工程(PDCA サイクル)を,継続. をはらんでいた.これらの問題を解決すべく, 個人認証,. 的に廻している.. 権限管理,アクセス制御,監査ログ管理等を,セキュリ.  セキュリティにかかわる各種情報は,イントラネット. ティ共通実装要件として定め,社内システムを一元的に. 上にセキュリティポータルサイトを構築し全従業員への. 管理するための共通認証基盤(Usagi : Unisys Secure. 情報共有を図っている.また,セキュリティ教育につい に対しても集合教育や e- ラーニングにより定期的な目. Authentication Global Infrastructure)の構築を実施 した.Usagi の導入によりグループ全従業員のユーザ ID・パスワードを一元管理することで,アカウント統合,. 的別の教育を実施している.. ロール管理,シングルサインオン,ログ監視等を実現す.  各種セキュリティ施策で技術的な対応を要し投資を伴. ることが可能となった.結果,新システムへの実装,運. うものについては,最適な投資であるか第三者の判断を. 用コストの低減化が図れた.. 行うためのボードを設置して,定性効果および定量効果.  セキュリティ技術標準に関しても,入退室管理やセ. の両面で費用対効果が審議され投資費用の最適化を図っ. キュリティ区画を定めた物理セキュリティ,ファイア. ている.. ウォールの実装や配置を定めたネットワークセキュリ. ては,役員,従業員のみならず,派遣社員,委託先社員. ティ,モバイル PC の暗号化等々,セキュリティに関す ◆セキュリティ技術レイヤ. る技術要件を定め,情報システムに適用している . .  セキュリティ技術レイヤは,自社で使用する情報シス.  また,利便性と安全担保の追求においては,技術的な. テムが保持すべき技術的セキュリティ対策に関する統制. 情報漏えい対策のみならず,グループ各社・各部門が情. を行うレイヤである.情報セキュリティポリシーをセ. 報共有を安全に行えるための, 「シェアード IT サービス」. キュリティ要求に変換し,技術上の対策として実装し,. を構築し,オンラインストレージ,グループウェア機能. 運用する.適用するセキュリティ対策の選択肢が多く,. を充実させ,USB 型認証基盤キーデバイス(SASTIK;. 利用技術の変化も非常に早いため,適用にあたっては情. 図 -5)の提供により,業務の効率性を阻害しないよう. 220. 情報処理 Vol.50 No.3 Mar. 2009.

(6) 日本ユニシスにおけるエンタープライズ・セキュリティ・アーキテクチャ (ESA). 6. 挿すだけで,どこでもオフィス,抜くだけで安全に消去 『利便性』, 『安全性』, 『経済性』のベストバランスを実現. 活用例. 接続例. 主な機能. インターネットに接続されたPCから, お客様のWebアプリケーションを利用. 出張や外回りの多い社員 のモバイル代替え. 【支社,支店】 共用PC. 社員の出向先・派遣先に   イントラネット閲覧   環境を提供. 【自宅,公共】 一般PC. も安心. は0MB.紛失時. とサーバ間は VPN ※1による接続 SSL-VPN 通信. 会員(企業)に対する    限定情報の提供. Internet •認証機能 •ID管理機能 •Webアプリケーション 登録機能 他. 新型インフルエンザ対策   の緊急連絡インフラとして 整備. • Webアプリケーション • メール 他. 等,順次拡大中. メール添付のWord®文 書等も閲覧可能 の個体番号と ID,PWD の3つで認証 アクセスログの採取で,   不正利用も防止. ※1VPN(Virtual ※1VPN(Virtual Private Private Network):インターネットや公衆回線を使って,あたかも Network):インターネットや公衆回線を使って,あたかも 自社内で構築した専用線のようにプライベートなネットワークを構築すること 自社内で構築した専用線のようにプライベートなネットワークを構築すること. 対応を実施している.SASTIK は当社の全社員に配布さ れ,ワークスタイル変革に対応すべく,セキュアな環境 で「AnyPlace AnyTime」を実現するとともに災害・ 緊急時の連絡手段,事業継続手段としても有効に機能す ると考えている.. 図 -5 USB 型認証基盤キーデバイス (SASTIK). 参考文献 1) 「第一次情報セキュリティ基本計画」,情報セキュリティ政策会議(Feb. 2006). 2)ユニシス技報「特集:エンタープライズ・セキュリティ」,日本ユニ シス(2008 年 11 月),http://www.unisys.co.jp/tec_info/home.. html?num=tr98. (平成 21 年 2 月 2 日受付). ESA の適用に向けて  本稿では当社においての実践を素材として,ESA に 基づいて要求を定め,実現していく過程を紹介した.こ の事例は一体型のセキュリティガバナンスの事例である が,いくつかの大企業で見られるように企業グループで 守るべき共通セキュリティポリシーと,グループ企業各 社が個別に定めるポリシーを分けて,施策を進める分散 型であっても,この ESA のモデルは適用できる.この モデルの詳細は,ユニシス技報 きたい.. 2). の特集をご覧いただ. 平岡 昭良 ▶ [email protected] 日本ユニシスにて,営業部門,マーケティング部門などの統括 を経て,平成 14 年より日本ユニシス(株)執行役員.現在,同社 上席常務執行役員,日本ユニシスグループの CIO(最高情報責任 者),CISO(最高情報セキュリティ責任者),CPO(最高個人情報 保護責任者).. 情報処理 Vol.50 No.3 Mar. 2009. 221.

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