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日本の未来のためにいかにして研究開発を活性化するか

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム]. 日本の未来のためにいかにして研究 開発を活性化するか ▪西 和彦  情報関係の仕事についてあっという間に 40 年が過ぎようとしている.日本の会社,アメリカの会社,日本の大学, アメリカの大学などに在籍した経験から,今後,実現したらいいと思うことなどを書いてみたい.. 大学と企業  企業人が定年を迎えて,大学の教授になることが流行っている.これはどういうことか.大学より企業のほうが研 究力が強いということである.大学の教授が定年を迎えて,企業の技術担当役員になった例はきわめて少ない.一部 のノーベル賞を取られた方は別にして,商品開発にも強い大学の研究室や教員はいるのかということに対しては,こ と情報分野においては少ないと言わざるを得ない.しかし,誰もこの事実を直視しない.まあ,マイクロ CPU もマ イクロ OS もアメリカの発明であるので,日本からのオリジナルで世界的に成功したものは少ない.  インテルとザイログで初期のマイクロプロセッサを作った嶋正利博士は当時としては大変ユニークな仕事をされ たが,現在の CPU はまったく別の分野であるスーパーミニコンの分野のエンジニアが作った技術が基になっている. いわゆるスーパースケーラー技術である.インテルも AMD も開発に成功したが,日本にはスーパーミニの研究はな かったにも等しい.だから日本のマイクロ CPU の開発はいつしか止まってしまった.ペンティアムのクローンすら 作れてはいない.残念である.  先日,台湾で USB の国際会議があった.その時に久しぶりに米国と台湾のコンピュータ業界の人に会う機会があっ たので,いろいろと話を聞いてみると,皆,とても元気で活躍している.それに比べて,日本の我々は,元気がない. どこかで戦略を間違ってしまったのである.  どうしたらいいのか.企業のことはそれぞれの企業のことであるので,個別に論じてもしかたがないから,別の機 会にゆずることにしても,本稿では企業と大学の関係について考えてみたい.. 220. 情報処理 Vol.59 No.3 Mar. 2018 .

(2) ■ 西 和彦 東京大学 IOT メディアラボラトリーディレ クター 早稲田大学在中に(株)アスキー創業. 米国マイクロソフト社極東担当副社長, 新技術担当副社長を経てボードメンバ. 国際連合大学高等研究所副所長,米国 マサチューセッツ工科大学メディア研究 所客員教授を経て現職.博士(情報学) .. 企業と大学との行き来を増やす  働きながら大学院にいくことができるという制度を活用するのがいいのではないだろうか.企業の研究開発を企業 の人が大学院でする.成果は企業のものにして,個人には修士号,博士号を与えるというものである.これまで大学 は主に研究,企業は開発,商品化といわれてきたが,その垣根を取り去るのがいいのではないか.社会と企業との関 係は 「企業論」 や 「マーケティング」 の分野で論じられているが,「エンジニアリング」の分野に入れてもいいのではない か.特に 「エンジニアリングの社会化」 はこれからしっかりと取り組まなければならないテーマである.  まず,大学と企業の行き来は教員の部分から始めるのはどうだろうか.文部科学省にお願いして,大学教員の資格 要件を弾力的にすることを許してもらわなければならない.社会人のポジションとの兼業についても同様である.  あと,企業人が週に 1 日,2 日ぐらい大学に通うということについての理解が得られやすい雰囲気を企業で作るこ とが望ましい.大学に行って修士や博士を自分の仕事をしながら取ることができるというのは,エンジニアにとって 大きな励みになると思うのである.これらの取り組みによって一人ひとりのエンジニアを元気にするということは大 切であると思っている.  次に必要なことは,企業からの寄付の扱いについてである.大学に対して頂いたお金についてである.大学の会計 基準は格段に厳しい.私のように企業にいた者にとっては,ここまでやるのと驚くことが多い.国のお金ならそれも 当然であるが,寄付してくれた人は,弾力的に使っていいと言っていたりして,効率よく研究を進めるためには,灰 色の部分は個人で負担するしかないと思っている.しかし,それには限界がある.ここのところは永遠の課題であ ろう.  今の日本に,これからの世界を引っ張っていく研究開発はできるのだろうか.私は「できる!」と断じたい.過去の 失敗から学ぶことも大切であるが,失敗を恐れずにやってみることを続けながら,その「研究開発の社会的な意味」 を 同時に考えてゆくことが求められているのではないだろうか.. 情報処理 Vol.59 No.3 Mar. 2018. 221.

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