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知的障害特別支援学校における「運動の魅力」を大切にした体育授業づくりに関する実践報告

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(1)Title. 知的障害特別支援学校における「運動の魅力」を大切にした体育授業づ くりに関する実践報告. Author(s). 清野, 宏樹; 越川, 茂樹. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(1): 269-279. Issue Date. 2017-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9537. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第₁号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68, No.1. 平 成 29 年 ₈ 月 August, 2017. 知的障害特別支援学校における「運動の魅力」を大切にした 体育授業づくりに関する実践報告 清野 宏樹・越川 茂樹* 北海道釧路養護学校 *. 北海道教育大学釧路校保健体育科研究室. Practice Report about Design of Physical Education Classes Based on “Fun of Sport” in Intellectual Disabilities Special Needs School SEINO Hiroki and KOSHIKAWA Shigeki* Hokkaido Kushiro nursing school *. Department of Health and Physical education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 要 旨 本研究では,知的障害特別支援学校における体育授業を子どもたち一人ひとりにとっての運 動の意味を大切にした学習の考え方として構成する1つの手立てとして,運動固有の魅力を味 わうことに基づいた実践を行い,その可能性を探ることを目的とした。知的障害児の体育授業 づくりに関する文献を概観すると,機能訓練を前提とした運動の手段的な価値に基づいた授業 が多く,その中では「動き」に焦点が当てられていた。そこで,子どもたち一人ひとりにとっ ての運動の意味を大切にした学習として,運動固有の魅力を味わうことに基づいた実践を行っ た。その結果,運動の魅力にはまり込み,夢中になるといった没入した姿から運動固有の「楽 しさ」を体感していることや子どもたち一人ひとりが独自の意味づけをしていることがうかが われた。ゆえに障害児の体育にもプレイの楽しさ(fun)(竹之下,1972,p.140)を根幹に据 えた授業づくりを重視することについて一定の意義が認められた。また,運動の魅力を味わい 夢中になると,結果として,技能の高まりも生じ機能訓練やリハビリテーションに効果を及ぼ す可能性もあると示唆された。. 1.はじめに. こうした中で,今日障害者のスポーツ活動を一段 と推進する方向へと環境が整えられつつある。そ. パラリンピック出場選手に対するマスコミの取. れは,2010年スポーツ基本法において,障害者の. 材やドキュメンタリー番組,自伝書などの発売と,. スポーツ振興が明記されたこと,2020年の東京オ. 障害者スポーツにも徐々に注目が集まっている。. リンピック・パラリンピックの開催決定とそれに. 269.

(3) 清野 宏樹・越川 茂樹. 伴う厚生労働省から文部科学省への障害者スポー. も障害のある子どもを含めて実施されていると述. ツの所管の移行,ならびに,2015年のスポーツ庁. べている。体育授業の形態に関しては,小学校で. の設立といった動きに認められる。今後,まだ一. は「通常学級と障害児学級合同で実施」している. 部の障害者にしかスポーツをする機会が与えられ. 率が高く,中学校では,「全て通常学級で行って. ていない現状や障害者スポーツの在り方も大きく. いる」と「全て障害児学級(特別支援学級)で行っ. 変化することが予想される。こうした社会におけ. ている」という二極化する傾向が見られたと報告. る障害者のスポーツ環境の動きは,学校における. している。安井(2007)は,障害者の情報の少な. 体育の授業の役割を考えていく上でも注目される。. さや,研修の必要性を指摘する回答が多く見られ. 一方で,特別支援学校における体育に目を向け. たと指摘するとともに,インクルーシブな体育授. ると,現在特別支援教育は,従来から特殊教育の. 業に対する発展と内容の充実が期待されると結論. 対象となっていた障害に加えて,小・中学校の通. づけている。. 常学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等. こうした教員の体育に対する研修の乏しさ及び. の発達障害や個別的な配慮を必要とする子どもも. 研修の必要性に迫られている現状は,特別な支援. 支援の対象に含んでいることから,障害の状態や,. を要する体育・スポーツに関する理論的基盤の弱. 身体能力,年齢などにとらわれず,ルールや用具. いことを問題として認めることとなるように思わ. を工夫して,その人に適合させたスポーツを展開. れる注1)。そしてこのことは,子どもの実態に合. す る と い う ア ダ プ テ ッ ド・ ス ポ ー ツ(adapted. わない授業実践を生むことになり得,そしてそれ. sports)の概念が重要視されていることが金山ら. により,子どもの運動嫌いを生み出すことにつな. (2008) の全国実態調査において指摘されている。. がっていくと考えられる。. そして,そのような考え方の中,障害児への体育. 是枝(2009)は,一般に,身体の協応を要する. 授業の実施形態は,小・中学校の全ての通常学級. ものの難しさの兆候は年齢の経過や運動機能の発. で実施していくことが多く,小学校ではティー. 達とともに軽減していくが,学習と同様,運動に. ム・ティーチングの導入が,中学校では障害児学. おける失敗が度重なると,その子に対する仲間意. 級のみでの実施が続いているとされている。また,. 識や本人の自尊心を低下させてしまうと指摘して. 小・中学校の教師の意識比較では,中学校では卒. いる。実際,当事者の生の声を東條ら(2004)の. 業後の取り組みへの意識が,小学校では障害の程. 『発達障害のある成人当事者たちからの提言集』. 度に合わせようとする意識が,高いと指摘されて. に見ることができる。主なものは,以下の通りで. いる。さらに,障害児と健常児の合同授業では,. ある。. 両者ともに相互理解や相乗効果が認識されている 反面,健常児への配慮に伴う戸惑いも強いと報告. 運動が不器用で体育や技術では軒並み苦戦し. されている。. ました。劣等感を味わい,やる気をなくしてし. 北海道の小・中学校における障害児の体育の実. まうことが多かったです。. 施状況については,安井(2007)が報告している。. (東條ら,2004,p.71). そこでは,小・中学校の学習指導要領にあげられ た種目で,小学校では水を使った運動の他,ラジ. 私は体育が泣くほど嫌でした。運動能力全般. オ体操,短距離走など,中学校では,ストレッチ. が他の子よりも明らかに劣っていたからです。. なども多く取り入れられ,通常学級の取り組みと. (東條ら,2004,p.72). してはチームによるボール運動が多く見られると いう。また,北海道という地域性に合わせた取り. 習うより慣れろ式の体育では駄目だと思いま. 組みとしてスキーやスケートなどの冬季スポーツ. す。鉄棒を例に取れば,適切な鉄棒の高さ,握. 270.

(4) 特別支援学校における運動の魅力を大切にした体育の授業づくり. り方,力の入れ方,目線,等,手を添えて教え. 寄り添う運動との関係を問題にする体育の授業の. るか,図で示して教えないといつまでもできま. 実践が求められる。. せん。. そこで本稿では,知的障害特別支援学校におけ (東條ら,2004,p.73). る体育授業を子どもたち一人ひとりにとっての運 動の意味を大切にした学習の考え方として構成す. こうした発言から,子どもの頃に体育嫌いに. る1つの手立てとして,運動固有の魅力を味わう. なった理由を読み取ることができるが,障害のあ. ことに基づいた実践を行い,その可能性を探るこ. る子どもたちのこうした発言の背景には,現在の. とを目的とする。. 体育の授業の考え方と実践の仕方に関する教員の. 具体的には,1.知的障害児の体育授業づくり. 理解の乏しさゆえの問題があると推察される。例. に関する文献を検討することによって現状を把握. えば,特別支援学校においては,障害のある子ど. する。2.運動の魅力に焦点をあてた体育授業と. もたちのからだの動きに対する「ぎこちなさ」や. して,プレイ論に基づく体育論を手がかりに実践. 認知処理速度の遅さが身体にも影響が出ているこ. を計画・実施し,その可能性を臨床的に考えてい. とを教員の中で暗黙の共通理解になっている。そ. く。. れゆえ,矯正的な指導観によって授業が展開され. その方法は,以下の通りである。. ることが少なくないように思われる。また,障害. 1については,これまでの知的障害児の体育授. 者スポーツを特殊と見る考え方や運動療法(主に. 業づくりに対する考え方や進め方に関する文献を. 動作法,ムーブメント教育,感覚統合法等)その. 検討する。. ものの概念が,現在の体育の方向性を踏まえた特. 2については,単元指導計画からの授業実践と. 別支援学校の体育の理解を妨げて実践の低調さを. 担任による児童の活動の様子を記述した振り返り. 生んでいると考えられる。この点と関連して,障. シート,研究授業当日の様子を録画したビデオ,. 害のある子どもたちの体育授業ならびに研究者や. ならびに授業者による授業内における観察や省察. 実践者における体育授業の考え方が「動きづくり」. について分析・検討する。. に焦点化されている状況があるように思われる。. . しかしながら今日の体育の考え方である「生涯 における豊かなスポーツライフの実現」に基づく ならば, 「動き」ではなく,学習者である子ども. 2.知的障害児の体育授業づくりに関する文 献の検討. たちの運動への「意味づけ」に焦点があてられる. 障害児の体育・スポーツ研究にいち早くとりか. ことが重要であると考えられる。そして,子ども. かった草分け的存在であり,当時の海外の動向を. たちの運動への意味づけは,彼らが運動に主体的. 日本の体育・スポーツ界に紹介もしている中川. にかかわることで円滑になると推定される。その. (1984)は,アメリカ健康・体育・レクリエーショ. 際,運動の面白さを味わうことが鍵となり,先述. ン同盟が,知的障害者の体育の目的を,身体的目. の障害のある子どもたちの提言集にもあったよう. 的,社会的目的,情緒的目的,そして知的目的に. な体育嫌いや運動嫌いになる状況も改善され得る. 分けていることを述べた上で,アーンハイムの知. 可能性が高まると考えられる。なぜなら,運動の. 的障害者の体育・スポーツの指導のヒントに次の. 魅力に触れることで特有の面白さや楽しさを知. ようにまとめている。. り,自発的な学びの広がりが深まる可能性が高ま ると考えられるからである。そのためには,教師. 知的障害者の体育・スポーツの指導は,⑴知. の専門性として指導技術を向上されること以上. 的障害者の発達に合わせ,年齢にふさわしい技. に,運動固有の面白さを大切にし,子どもたちに. 能を正しく身につけさせることを目標にするこ. 271.

(5) 清野 宏樹・越川 茂樹. とが大切であり,⑵運動の成績(performance). であり,障害者スポーツの実施における配慮や工. =過去の経験 (learning) +動機づけ (motivation). 夫に重きを置いた内容である。そしてそれは,動. といわれるように,環境の設定をし,助言と励. きに焦点化された記述が多く,子どもの思いを認. ましを絶やさぬことが必要であり,⑶知的障害. めたり,スポーツの面白さや楽しさに触れたりと. 者が,なぜ失敗するのか,なぜやられないかな. いった体育授業の内容や工夫の記載に乏しい。. どを良く知ること―から始めなければならない. 全国体育学習研究同志会は,民間体育研究団体. のである。. として,いち早く,障害児の体育授業づくりの文 (中川,1984,p.141). 献を刊行している。近年に刊行されたものとして, 辻村(2008)が筆頭執筆しているものがある。そ. このように,中川(1984)の指導の目標は,指. れによると,障害のある子どもたちにとっての体. 導や訓練といったトレーニング的な発想に基づい. 育とは,「運動文化」を学ぶ体育であるとし,ね. た技能習得であることが認められる。. らいとして,①できる,②ともにうまくなる,③. また,日本特に障害児教育の領域でムーブメン. ともに楽しみ競い合うことをあげている。障害児. ト教育を最初に紹介し,さらに,障害児の体育・. の「できる」につながる基礎的運動能力には,①. スポーツに関する実態調査や研究も多く行ってい. 姿勢操作の能力,②スピードコントロール,③物. る小林(1995)は,日本の障害児体育の現状とア. や人の動きに対する,予測判断する能力の3点を. メリカを中心とした欧州諸国の応用体育の動向を. 挙げている。. 紹介した上で, 日本の障害児体育の取り組みが「貧. この考え方には,運動における「動き」や「技. 困」の状態であることを指摘し,体育実践として. 能」を大事にした体育授業のあり方に重点がおか. ムーブメント教育やそれに伴うアセスメントとし. れている。つまり,「できる」につながる基礎的. てMEPA評定法(Movement Education Program. 運動能力を基調としている。「できる」事実を大. Assessment)を提唱する。彼は,特別支援学校. 切にするとその先にあるものは,運動の「できる」. の体育のねらいが,運動技術だけではなく,心身. や「できない」という二者択一式の発想に陥りや. の調和や運動を通して心身機能など他の発達を育. すい危険性をはらんでいると思われる。その先に. てようとする考えを体育の中で追求することを求. は,運動ができないから体育が嫌いといった子ど. めている。つまり,体育を「運動による教育」の. もを生み出してしまう可能性がある。. 立場から考えている。. 障害児体育研究の草分け的な存在であり,さら. 後藤は,知的障害特別支援学校の教員を対象に. にその中でも早くからインクルーシブ体育に関す. いち早く,体育授業に関する全国研修会や指導事. る研究や普及に関する文献を著している草野ら. 例を伝えてきた存在である。後藤ら(2001)は,. (2007)は,障害のある子とない子が同じ集団の. 特別支援学校における体育授業を実践する中で気. 中で行う体育を「インクルーシブ体育」という。. づいた点として,小・中・高等学校在籍中に体育. これまでの障害のある子とない子を分けた体育の. 授業を見学してきた肢体不自由のある児童・生徒. 授業を受けるのが一般的であった。しかし,そこ. が,障害の程度に比べて運動技能が未成熟であっ. に生じる種々の問題に気づき,その反省にもとづ. たり,球技などの集団活動が不慣れであったりす. いてインクルーシブ体育が始まったとしている。. る傾向が見られたという。しかし,特別支援学校. 彼は,インクルーシブ体育について,「同じ目. や特別支援学級の主流を占める知的障害や発達障. 的のもとで活動する間に,子どもたちは,いろい. 害のある児童・生徒の調査を受けての指導法や実. ろな『ズレ』や『まさつ』を経験する。『ズレ』. 践事例がほとんど記されておらず,実践も健常児. とは意識や行為の『ズレ』である。『ズレ』の一. の障害の理解に重きをおいたバリアフリーの実践. 部は具体的な『まさつ』となってあらわれる。『ま. 272.

(6) 特別支援学校における運動の魅力を大切にした体育の授業づくり. さつ』には不平や不満が伴う。 『まさつ』は次々. おけるスポーツ文化の醸成という面をもっている. に起こるが,その経験をするたびに子どもは成長. ことを指摘している。. していく。 」 (草野,2007,pp.12-13)として,こ. このように,プレイ論に基づく体育,別言すれ. れを「共振」状態と呼び,他者理解のひとつの到. ば,運動の面白さ,魅力を大切にした体育は,子. 達点であると述べている。こうした, 「共感」, 「共. どもたちの運動への意味づけ(意味生成)を創起. 振」の現象は,子どもと教師の関係からも構築さ. し,学習活動が営まれるということが前提となっ. れインクルーシブ体育にきわめて重要であるとま. た考え方であることが認められる。こうした思想. とめている。しかし,この考え方には,運動を手. の流れとは異なるが,以前には,高橋・稲垣(1983). 段として,障害児と健常児の関わりを「共振」状. もスポーツにはプレイに属する内在的価値がある. 態と称し,重点がおかれている。. としている。「プレイが人間の生活の欠くことの. 以上のように,知的障害児の体育授業づくりに. できない根源的な生命現象であり,人間の一つの. 関する文献を概観して見たが,機能訓練を前提と. 基本的な行動様式(a basic mode of behavior). した運動の手段的な価値に基づいた授業の計画と. と し て 捉 え る よ う に な っ た 」( 高 橋・ 稲 垣,. 実践事例のアラカルト的な紹介,運動の技能を大. 1983,p.156)と指摘し,スポーツに内在する価. 事にした体育授業づくり,運動を手段として障害. 値や意味をプレイに位置づけている。そして,体. 児と健常児の関係性の構築,動きづくりに中心が. 育授業における文化の位置づけとして,スポーツ. おかれている。. (文化)という教育内容の自己正当的価値を強調 している。. 3.知的障害特別支援学校におけるプレイ論 に基づく体育授業実践 3. 1. 「運動の魅力」を大切にした体育授業づく り論. これらの考え方を踏まえると,知的障害特別支 援学校の場合,最初に<障害のある子どもと運動 との関係>を前提に考えたうえで,障害のある子 どもの今もっている力で楽しめる体育授業づくり として,運動の魅力を大事にした授業づくりは理. 運動の魅力を,その楽しさ(fun)であるとし,. 解され得る。. プレイ論に基づく体育学習の考え方を示した人物. そこで,本研究では,運動の魅力,つまり,運. は,竹之下(1972)である。その後,その考え方. 動の面白さが,プレイの世界におけるプレイヤー. は楽しい体育論として民間教育研究団体において. (遊び手)の意味生成として創起すると考え,こ. 具体化されていく。その中で,佐伯(2008,p.36). うした経験の保障をすることが体育の授業づくり. は,プレイとは遊び方と遊び手の間における意味. であると捉えて,単元指導計画を作成し授業を実. 生成の時空間に立ち現れる経験であり,それは,. 践することとした。その際,単元指導計画につい. プレイの世界における遊び方とプレイヤー(遊び. ては,鈴木他(2014)の「楽しい体育」論の形式. 手)の意味生成として創起し,そこに学習活動が. を参考とした。単元の流れは,図1~3の通りで. あるとしている。鈴木(2014)は, 「楽しい体育」. ある。. が運動の「おもしろさ」を大切にし,それを目の 前にいる子どもから見た特性としてとらえ直し,. 3. 2.中学部における「リズムダンス」の実践. そしてその子どもたちが今もっている力で楽しむ. 本単元は6時間構成で,ねらいを,「先生の動. ことの連続で体育の学習を構想してきたと説明し. きをまねしたり,友達の動きを見合ったりして,. ている。また,越川(2014)は,プレイ論に基づ. リズムに乗って,なじみのある動きを手がかりに. く体育が,運動の意味や価値について学ぶことを. 怪獣になりきって,思い切りからだを動かしてみ. 眼目としていること,子どもたちの遊びの世界に. んなで仲よく楽しく踊ろう」である。子どもたち. 273.

(7) 清野 宏樹・越川 茂樹. 時. 1. 2. 3. 4. 5. 6. ・オ リエンテー ねらい①:今もっている力で楽しく踊ろう! ション ( 「なじみのある動き」で踊ろう!) 学習内容. ねらい②:いろいろな動きに挑戦して楽しく踊ろう! ( 「怪獣ルーティンに挑戦だ!」) ・発表会だ! 図1. 「リズムダンス」の単元の流れ. 時. 1. 2. 3. 学習内容. ねらい①:先生と一緒に遊び方を試してみよう! ねらい②: ・先生と一緒にいろいろなコースで自由に走ろう! ・先生と一緒にいろいろな跳びっこ遊びをしよう! 図2. 「走ってみよう!跳んでみよう!(陸上運動系)」の単元の流れ. 学習内容. 時. 1. 2. 3. 4. 5. 6. ね ら い ①: 教 師 と 一 緒 に 的 に 向 ねらい②:先生と一緒に的当てで遊んでみよう! かってボールを投げたり転がした りしてみよう! 図3. 「的あて遊びをしよう!(ボール運動系)」の単元の流れ. が毎時間リズムダンスを踊る楽しさを味わい,喜. 動きを教師の見本に合わせて行っていった。その. ぶことを体感できるように学習の道筋として,ね. 際,教師はその子なりに模倣できるようにゆっく. らい①では,なじみのある動きを反復することに. りと言葉を添えて見本を示した。その後,同じ動. よって音楽に乗って踊ることを意図して「今もっ. きで音楽や教師のかけ声やユーモアに合わせてそ. ている力を出して,楽しく踊ろう!」という設定. れぞれに楽しく踊れるようにしていった。からだ. をした。ねらい②では,ねらい①でのリズムダン. を動かすことが好きな子どもは,初めから自分な. スのなじみのある動きを反復することによって表. りにアレンジを加えて楽しそうに踊っていた。ボ. 現された子どもたちの動きの深まりから,自分か. ディイメージが難しい子どもも見よう見まねでか. ら踊ったり,アレンジして踊ったりといった場面. らだを一生懸命に動かしていた。その後,音楽を. や連続技を行ったりといった課題を設定し,踊る. かけて実際に同じ動きを行っていった。リズムダ. ことを意図した。そして,最終日には発表会を行. ンスの音楽が心地よい様子で,それぞれに笑顔を. い子どもたちに思う存分にからだを動かし表現で. 垣間見せながら取り組んでいた。そこには,リズ. きるように単元指導計画を作成し授業実践を行っ. ムに乗って,からだを動かすことで楽しいものだ. た。 単元全体を通して,子どもたちがリズムに乗っ. という認識にも近い何かをつかまえたかのような. て自分なりに, 容易にからだを動かし,徐々に様々. 感覚を抱いたようにみえた。そこから,徐々にマ. な動きに挑戦し,楽しめる学習活動を心がけ,工. ナーとして,各学年で並ぶことや子ども同士でぶ. 夫をした。. つからないように互いに適度な距離感を保って行. はじめの段階では,音楽なしで,なじみのある. うなどの確認や,「体育の授業が好きだから早く. 274.

(8) 特別支援学校における運動の魅力を大切にした体育の授業づくり. 並ぼう!」といった思いが芽生え,主体的に行え. の前で,自信を深めた様子を見ることができた。. るようになっていった。 第2時の活動からは,リズムダンスの楽しさを 体感するために,なじみのある動きを簡単に確認. 3. 3. 小学部1学年における「走ってみよう! 跳んでみよう!」の実践. し,早速音楽に合わせて踊ることにした。子ども. 本単元は3時間構成で,ねらいを「先生と一緒. は上手に教師の手本を真似しいきいきと取り組ん. に遊び方を体感し,思い切り走ったり,跳んだり. でいた。そこには,第1時の活動で「楽しさ」を. してみよう!」とした。3時間という短い単元構. 巧拙に関係なく感じとっていたからだと推察でき. 成であることから,まず,1回目は,走・跳の運. た。こうした中で,指導計画の中盤に位置する第. 動遊びを先生と一緒に試してみるかたちをとっ. 3時の活動では,気持ちやからだ全体で,誰もが. た。小学部1年生という発達段階や実態を加味し. 容易に行える表現運動をめざして1人ひとりが怪. て,やさしい運動を取り組むことで,体を動かす. 獣になりきって大きな声で「うぁー」や「がおー」. ことが楽しいことを体感して欲しいことや少しで. と叫んで「怪獣ルーティン」を行うようになって. も難しい課題や授業後改善案としてよい遊びが提. いた。当初は,動きが小さかったり,声を恥ずか. 案できるかもしれないことから,先生と一緒に試. しがったりしてあまり出せない子どももいたが,. しにやってみることを重視して実施することと. MT(主担当)やST(副担当)の教師たちが堂々. し,それに従い,ねらい①を「先生と一緒に遊び. と怪獣になりきってユーモアも交えて,声を出し. 方を体感し,試してみよう!」としてやってみる. て,動く見本を見せることによって,子どもたち. ことで素地を育てるかたちをとった。次に,ねら. の動きもそれぞれの怪獣の表現に変化していっ. い②では,「先生と一緒にいろいろなコースで自. た。子どもたちの動きも, 「歩く」 「走る」 「はずむ」. 由に走ろう!」や「先生と一緒にいろいろな跳びっ. 「跳ぶ」 「振る」といったなじみのある動きをリ. こ遊びをしよう!」として,残り2回の授業を設. ズムに乗って踊り,怪獣ルーティンといった連続. 定課題を極端に変えることなく, 「走る」ことや「跳. 動作なども入り,動きも大きくなっていた。また,. ぶ」ことにおける一人ひとりの課題に向かう中で,. 目の輝きや会場いっぱいに声が響き渡り,笑顔で. 「できた!」や「やった!」といった達成感と「先. 活動する余裕も生まれた。リズムダンスの「歩く」. 生に褒められた!」という承認により,運動によ. 「走る」 「跳ぶ」 「振る」といった子どもたちにとっ. り意欲的に取り組むことができるような雰囲気と. てなじみやすい動きから始めたことをきっかけ. 運動のおもしろさに触れ,遊び込むことで,走・. に,徐々にリズミカルに大きくからだを動かすこ. 跳の運動遊びの世界に浸り,好きになってもらう. とで,表現運動の魅力に引き込まれて楽しそうに. ことを意図して単元指導計画を作成し授業実践を. 踊っている様子がうかがわれた。. 行った。. 単元のまとめとなる最終日では,各グループで. 運動会終了後の単元ということもあって,子ど. のステージ発表だからと言って,過剰に言葉がけ. もも運動会練習の延長のように取り組むことがで. をしたり,特別なことをしたりという雰囲気を出. きたと推察される。走る,跳ぶといった動きが小. さずに, 普段の学習通りに行えるように心がけた。. 学部1年生で求める遊びとして,単純であったた. ステージ発表では,子どもたちは,戸惑うことな. め,ある程度の反復によって, 「もっと走りたい!」. く対応し,楽しんで踊ることで自分のものとして. 「もっと跳びたい!」といった意欲の高まりがみ. 行っていた。そこに,からだを動かすことへのそ. られた。. れぞれの楽しさを表現している姿が確認できた。. 第1時の活動では,体育館に入るなり,設置さ. 学習発表会の中でリズムダンスを披露した子ども. れた,走るや跳ぶ,歩くコースを見て子どもたち. たちからは,自信満々でたくさんの観客や保護者. も驚いた様子であった。児童によっては,初めて. 275.

(9) 清野 宏樹・越川 茂樹. のことであったので,慎重に階段を上がったり,. ら一人で走るコースに行って歩くといった行動が. 下りたり,歩いたり,走ったりといった動きや中. 今回の体育授業で運動の持つ魅力や底力といった. には見通しが持てずに泣き出してしまう様子など. ものを子どもたちが力強く表現していたように考. もみられた。しかし,教師と手をつないで取り組. えられる。「楽しいからやる」という行為が授業. んだり,体を支えられることで,どのコースも意. の回を重ねるにつれてみられるようになった。. 欲的に行ったりといった姿もみられた。こうした ことから,第2時の活動では,前時の授業反省か ら改善を行い,各コースに取り組む前の待ち時間. 3. 4.小学部1学年における「的あて遊びをし よう!」の実践. に活動できる場の設定や各種目の動きの見本を写. 本単元は6時間構成で,ねらいを「先生と一緒. 真に撮り,提示した。また,MTである教師の見. にボールを投げたり,転がしたりして遊んでみよ. 本も動きを大きく行うことで子どもがわかりやす. う!」とした。そして単元の前半のねらい①を「先. いように行った。STの教師も見本を見て動ける. 生と一緒にボールを投げたり,転がしたりして遊. ように支援の具体性を図った。それにより,子ど. び方を体感し,試してみよう!」とした。児童が. もの活動は, スポンジ台から大きく跳び下りたり,. 毎時間的に向けて,ボールを押す,離す,転がす,. ブルーシートの線を目がけて思い切り走ったりと. 投げるといった投動作の楽しさを味わい,喜ぶこ. いった姿に変容していった。どの子も前時よりも. とを体感できることとし,教師と一緒にボールを. スムーズに動けていた。夢中に取り組む姿やフィ. 持って押す,離す,投げる動作を反復することを. ニッシュ後に笑顔が生まれる余裕が出てきた。2. 意図した。後半の単元のねらい②「先生と一緒に. 回目の授業ということもあり,見通しをもって,. 的あて遊びをしよう!」では,ねらい①でのボー. どの種目も取り組む姿が見られた。取り組む姿は. ルを転がす,投げるといった,なじんできた動き. 真剣でフィニッシュ後の子どもは笑顔が多かった。. を夢中になって何度も行うことによって自分なり. そして,研究授業となった第3時の活動では,. の投動作を子どもの動きの深まりと捉え,何度も. 参観者はいたが,あまり気にする様子もなく楽し. 投げたり,的の距離を離したりといった課題を設. い雰囲気で行えるように行うことができた。両下. 定した。そして,最終日には自分たちで的に向かっ. 肢障害・両上肢障害のある子どもは,友達と順番. てボールを自発的に投げて遊べるように単元指導. に取り組み,1つずつ横のコースに移って挑戦し. 計画を作成し授業実践を行った。. ていた。取り組む姿は自信に満ち溢れていた。ま. その結果,当初は,場に圧倒された様子で驚い. た,自分の好きな跳びっこコースでは,先に走っ. たが,その後ワクワクしてジャンプしたりして喜. て取り組む様子であった。ある子どもは,ロイター. ぶ姿が次第に顕著になっていった。そこには,的. 版からジャンプしてタンブリンにタッチすること. あて遊びの場という魅力に子どもたちが引き込ま. は,難しくても,とても意欲的で自分から行って. れる姿があった。また,ボールを触ると,持った. いたという姿からは, 「失敗してもやってみた. まま的を倒す姿も単元のはじめには見られたが教. い!」という欲求や姿勢を感じることができ,肢. 師の見本や身体を支えてもらって投げてみたり,. 体不自由のある子どもが,それぞれのコースを2. 「ぽい」,「手を伸ばして投げてごらん」といった. 回も行ったが,教師が「もう1回やる?」と質問. 日常で使用するような分かりやすい言葉がけに. すると, 「うん!」と人指し指を立てながら自分. よって手を放して投げたりする姿など徐々に増え. のやりたいコースをやりに行った。走・跳の運動. ていった。毎回,シートに記入したり,簡単な検. 遊びの提案によって,失敗したから自信を失う,. 討会を実施したりする中で,的を大きいものから. やらないではなく,それでもやるということ,肢. 小さいものに変えたり,大きな桶に小さな桶を追. 体不自由という障害特性にとらわれず,楽しいか. 加したり,傾けた桶を設置したりと場の工夫をし. 276.

(10) 特別支援学校における運動の魅力を大切にした体育の授業づくり. た。そうしたことで,子どもの実態に即した毎回, 授業展開になっていった。後半には,ほぼ全員が. 4.総合考察. 一度は手からボールを放して投げることができた. 障害児の体育授業づくりに関する文献の検討及. ことから的とフラフープの足形の距離を徐々に離. び,知的障害特別支援学校における体育授業実践. していった。. から,次の2点が結論としてあげられた。. 中には,子ども独自に体育館の天井に目がけて. 1)障害児体育における「動きづくり」から「意. 思い切りボールを投げたり,お化けの的の後ろに. 味生成」へ. 回ってボールを投げて倒したりといった様子もみ. 知的障害児の体育授業づくりに関する文献を概. られた。その時の顔は真剣であったり,集中して. 観すると,機能訓練を前提とした運動の手段的な. いたりといった様子であった。さらに,授業が終. 価値に基づいた授業がほとんどであった。また,. わる合図になっても止めずに「もう1回!」や「ま. そこには「動き」に焦点化された学習が意図され. だやりたい!」 ,「先生,見て!」と言った自閉症. ていた。特別支援学校の体育がリハビリテーショ. のある子どもや肢体不自由のある子どもは,何度. ンの場(藤田,2013,p.238)として位置づけら. も手を振ってボールを的にぶつけたがっていたり. れてしまうと,先の東條ら(2004)が示した成人. した。そこには,「遊びこむ」というディープな. 当事者の幼少期の思い出の語りである「運動が不. 世界観(今村,2011)がみられた。遊びこんでし. 器用で体育や技術では軒並み苦戦しました。劣等. まい我を忘れてしまい,教師の終わりの合図に. 感を味わい,やる気をなくしてしまうことが多. よって,現実世界に返ることの難しさを表してい. かったです」や「私は体育が泣くほど嫌でした。. た。まさに,遊びの深い次元に入っていたことや. 運動能力全般が他の子よりも明らかに劣っていた. 的あて遊びの魅力に引き込まれてしまったがゆえ. からです。」といった,体育が嫌いになった生の. の溶解体験(今村,2011)であった。ボールを何. 声が更に助長されてしまうと考えられる。. 度も投げることによって,自分の体ほどあるお化. そこで,本研究の体育授業実践においては,運. けの的が倒れる,崩れる,鈴がなる,そして何よ. 動の魅力とは,運動固有の面白さであり,それは,. りも身近な先生が褒めてくれる。子どもにとって. プレイの世界におけるプレイヤー(遊び手)の意. は,何度も投げる楽しさや喜びがそこには体から. 味生成として創起すると考えた。そして,こうし. 湧き上がってきているようであった。また,面白. た経験の保障をすることが体育の授業づくりであ. いからこそ,これまで行ってきた両手投げや下か. ると捉え,単元計画を作成し,授業を実践するこ. ら転がすといった投動作の変化や調整を子ども自. ととした。. らが行うといった様子があった。的に向けて,ボー. 結果として,リズムダンスでは,子どもたちの. ルを投げる,転がすといった制限のない投動作の. 動きも,音楽に合わせて,その場で「歩く」 「走る」. 楽しさの世界に夢中になっているようでもあっ. 「はずむ」「跳ぶ」「振る」といったなじみのある. た。授業の後半には走って体育館に行く姿や朝の. 動きをリズミカルに踊り,怪獣ルーティンといっ. 会で時間割の確認をすると体育があると分かると. た連続動作なども入ることによって,動きも大き. 「やったー!」と喜ぶ子どもの姿からもうかがえ. くなり,表現運動のもつ魅力に引き込まれ,目の. る。また,体育の授業があると,廊下を走って体. 輝きや会場いっぱいに声が響き渡り,笑顔で活動. 育館に向かう子どもや急ぎ歩きで向かう姿もあっ. する余裕も生まれた。走・跳の運動遊びでは,ブ. た。それぞれの子どもが,今もっている力で,的. ルーシートを意識して,夢中になって真っ直ぐに. に向かってボールを投げる,ぶつける,転がすこ. 走っていた。的あて遊びでは,ボールを投げる,. との面白さを体感し,好きになるという様子で. 転がすといった制限のない投動作の楽しさの世界. あった。. に夢中になっているようでもあった。それは,授. 277.

(11) 清野 宏樹・越川 茂樹. 業の後半には走って体育館に行く姿や朝の会で時. 界に夢中になっている姿が確認された。その中で,. 間割の確認をすると体育があると分かると「やっ. 当初は,ボールを持ったまま的に体当たりしてい. たー!」と喜ぶ子どもの姿からもうかがえた。. た子どもは,教師の投球動作を見たり,「投げて. 実践を総括すると,運動の魅力にはまり込み,. ごらん」といった言葉かけを聞いたりすることで,. 夢中になるといった没入した姿から運動固有の. 徐々にボールを両手で持ちながら,振りかざすよ. 「楽しさ」を体感していることや子どもたち一人. うに投げることができるようになった。. ひとりが独自の意味づけをしていることがうかが. 従って,運動固有の魅力を味わい,夢中になる. われた。ゆえに障害児の体育にもプレイの楽しさ. と,結果として,技能の高まりも生じ,機能訓練. (fun) (竹之下,1972,p.140)を根幹に据えた. やリハビリテーションに効果を及ぼす可能性もあ. 授業づくりを重視することに一定の意義が認めら. ると考えられた。. れた。 2) 「運動の魅力を味わうこと」によって機能訓 練やリハビリテーションの効果も期待できる。. 5.今後の課題. リズムダンスでは,今もっている力を存分に発. 今後の課題としては,次の3点に集約される。. 揮することによって,楽しんで踊ることができて,. 1)学校教育と体育の授業の関係性をめぐる課題. 全身運動を行い,からだいっぱい汗をかいて,ダ. 本研究では,体育授業実践の研究として3事. ンスの魅力に子どもが自ずと取りつかれ,夢中に. 例に絞って行った。今後,学校の教育目標や運. なって行うことにより,結果として,リズムに乗っ. 営方針と単元学習の関係性について,子どもの. て頭上まで手を伸ばしたり,足を思い切り前に出. 実態に即した単元ごとの実践と成果,反省をさ. したりといった普段はつかっていない可動範囲ま. らに集積して考察することが求められる。. で広げるといった機能訓練やリハビリテーション. 2)カリキュラムに関する課題. としての効果も認められた。. 「運動の魅力」に焦点を当てた学びの連なり. また,走・跳の運動遊びでは,今もっている力. として,小・中学部全体でどのように子どもの. で,やさしい内容から取り組むことで,子どもが. 育ちを保障していくのかといった視点からカリ. 進んで取り組み,からだいっぱい走ったり,跳ん. キュラムを検討することが求められる。. だりして, 「走・跳の運動遊び」の魅力を子ども. 3)研究の方法に関する課題. が味わい,夢中になって行うことにより,結果と. 本研究では,質的な研究手法によって実践の. して,歩行や走る,跳ぶといった肢体不自由のあ. 分析・検討を行った。今後,障害のある子ども. る子どもが,真っ直ぐ走るコースを自ら一人で歩. たちの学びの深まりを理解する尺度や分析方法. いてフィニッシュするというように歩行における. の厳密化が求められる。また,年間を通した体. 訓練やリハビリテーションとしての効果が認めら. 育授業実践から子どもたちの実態に応じて例え. れた。. ば,MEPAや新体力テスト等のアセスメント. さらに,的あて遊びでは,やさしい内容から取. の定期的な実施による定量的データの算出そし. り組み, 様々な設定の場を挑戦課題とすることで,. てその分析・検討も必要であると考えられる。. ボールを的に向けて投げることによって自分の体 ほどあるお化けの的が倒れる,崩れる,鈴がなる 等対象物の変化や身近な先生が褒めてくれること. 注. で嬉しくなり,投げる楽しさや喜びが体から湧き. 注1) これら以前に,国立特殊教育総合研究所(1995). 上がってきているように見え,ボールを投げる,. が実施した教科学習に特異な困難を示す子どもたち. 転がすといった制限のない運動遊びの楽しさの世. 278. を対象とした調査では,小学校2年生で,器械・器.

(12) 特別支援学校における運動の魅力を大切にした体育の授業づくり. 具を使っての運動やなわとび,水泳,スキップの指. り入門,学文社:東京.. 導に教師が困難を感じる児童の割合が高く,器械・. 高橋健夫・稲垣正浩(1983)スポーツ教育の基本問題の. 器具を使っての運動と水泳はいずれの学年でも指導. 検討Ⅰ-スポーツ教育の論拠と基本的性格-.奈良教. が難しい種目であると報告されている。また,なわ とびやスキップといった身体の協応を要するものに ついては学年進行とともに減少傾向が認められるも のの,6年生でも指導が困難だという結果も示され ている。. 育大学紀要,32⑴:149-166. 竹之下休蔵(1972)プレイ・スポーツ・体育論,大修館 書店:東京. 東條吉邦他(編)(2004)ADHD・高機能自閉症の子ども たちへの適切な対応-成人当事者たちからの提言集-, 独立行政法人国立特殊教育総合研究所.. 文 献 独立行政法人国立特殊教育総合研究所(1995)教科学習 に特異な困難を示す子どもたちを対象とした調査,独 立行政法人国立特殊教育総合研究所. 藤田紀昭(2013)障害者スポーツの環境と可能性,創文 企画:東京. 学校体育研究同志会(編)(2008)みんなが輝く体育⑦ 障害児 体育の授業,創文企画:東京. 今村光章(2011)森のようちえん-自然のなかで子育て. 中川一彦(1984)特殊教育諸学校の体育・スポーツ.浅 見俊雄他(編)現代体育・スポーツ大系,5.講談社: 東京. 安井友康(2007)小中学校における障害のある児童生徒 の体育授業に関する研究-北海道における実態調査か ら-.北海道教育大学紀要(教育科学編) ,58⑴:165179.. (清野 宏樹 北海道釧路養護学校教諭) (越川 茂樹 釧路校准教授) . を-.解放出版:大阪,pp.145-169. 金山千広・齋藤まゆみ・稲嶋修一郎・山崎昌廣(2008) 小中学校における障害のある児童生徒の体育授業に関 する研究-全国の実態調査から-.聖和大学論集A・ B,教育学系・人文学系,36:49-59. 小林芳文(1995)障害児の体育授業.宇土正彦(監修) 阪田尚彦・高橋健夫・細江文利(編)学校体育授業事典, 大修館書店:東京,pp.97-99. 是枝喜代治(2009)「楽しい体育」の工夫で対人関係と動 きのぎこちなさを支援する,実践障害児教育,430: 34-37. 越川茂樹(2014)短編小説『あそび』にみる『遊び』の 解釈の試み-体育学習の原理的考察の手がかりとして -.釧路論集-北海道教育大学釧路校研究紀要-, 46:123-129. 草野勝彦・西洋子・長曽我部博・岩岡研典(2007)イン クルーシブ体育の創造-「共に生きる」授業構成の考 え方と実践-,市村出版:東京. 佐伯年詩雄(2008)脱規律訓練をのぞむ未完のプロジェ クト.全国体育学習研究会(編)「楽しい体育」の豊か な可能性-授業実践への手引き-,明和出版:東京, pp.25-49. 清野宏樹(2015)特別な支援を要する生徒の授業につい て考える.鈴木秀人他(編)中学校・高校の体育授業 づくり入門,学文社:東京,pp.284-292. 鈴木秀人(2008)子どもの「現在」にとって意味のある 学習を問う.全国体育学習研究会(編)「楽しい体育」 豊かな可能性-授業実践への手引き-,明和出版:東 京,pp.50-63. 鈴木秀人他(編)(2014)第三版 小学校の体育授業づく. 279.

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参照

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