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大学生の国語表記の実態と問題点 : 国語教員免許状取得希望者対象の調査結果

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(1)Title. 大学生の国語表記の実態と問題点 : 国語教員免許状取得希望者対象の調 査結果. Author(s). 馬場, 俊臣. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(2): 203-212. Issue Date. 2018-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9681. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 大学生の国語表記の実態と問題点 ―― 国語教員免許状取得希望者対象の調査結果 ――. 馬 場 俊 臣 北海道教育大学札幌校日本語学研究室. Orthographic Problems in college students: the results of a questionnaire survey for Teacher Training Course Students. BABA Toshiomi Department of Japanese Linguistics, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿では,質問紙調査の結果に基づいて,国語(中学校,高等学校)の教員免許状の取得を 希望する学生(主に大学1年生)の国語表記の実態とその問題点を,1996年に行った同様の調 査の結果と比較しながら報告した。調査項目は,現代仮名遣い,外来語の表記,ローマ字の綴 り方,送り仮名の付け方,学年別漢字配当表,筆順である。本稿での調査結果は,1996年の調 査結果と若干の相違は見られたが,全般的な傾向は1996年の調査結果とほぼ同様であった。 本稿で指摘した国語表記の実態と問題点は,高等学校までの国語表記に関する学習成果を反 映しており,国語科教育における表記指導の参考になるものである。また,小学校及び中学校・ 高等学校(国語)の教員免許状取得希望者に対する国語表記の指導の意義と重要性を示すもの でもある。. 1. はじめに 本稿では,国語(中学校,高等学校)の教員免許状の取得を希望する学生(主に大学1年生)の国語表記 の実態とその問題点を,質問紙調査の結果に基づいて報告する。 2016年に行った本稿の調査は,1996年に行った馬場(1997)の調査と同じ内容である。本稿では,20年を 隔てた二つの調査の結果を比較し,経年変化の有無も検討する。以下では,馬場(1997)での調査を1996年 調査,本稿での調査を2016年調査と呼ぶ。 本稿で指摘する国語表記の実態と問題点は,高等学校までの国語表記に関する学習成果を反映しており,. 203.

(3) 馬 場 俊 臣. 国語科教育における表記指導の参考になるものである。また,小学校及び中学校・高等学校(国語)の教員 免許状取得希望者に対する国語表記の指導の意義と重要性を示すものでもある。. 2. 大学生の国語表記の実態に関する先行研究 大学生の国語表記の実態に関して,質問紙調査による調査結果が示されている研究のうち,管見に入った 主に2000年以降の先行研究のいくつかを紹介する。 ママ. 紙ほか(2001)は,短期大学生1,2年生(約277名)を対象として,「言語意識と現状」についてのアン ケート調査を行っている。調査項目の一部に外来語の表記が含まれており, 「バイオレンス ヴァイオレンス」 「ウイスキー ウィスキー ウヰスキー」 「グアム島 グァム島 ガム島」などの表記を調査している。こ れらについて「第2表」 (ヴァ,ウィ,グァ)の仮名が「正しい」として選択された率は,それぞれ49%, 59%,52%であったとしている。 井上(2005)は,高等専門学校生(1年生,3年生,専攻科1年生,計176名)を対象とした調査であるが, 32語の送り仮名を調査し,送り仮名の付け方の誤答について主にモーラ数に着目して分析を行っている。ま た,井上(2007)は,高等専門学校生(3年生,専攻科1年生,計93名)を対象とした調査であるが,送り 仮名指導の授業効果などを検証するために,送り仮名の事前テスト,事後テストを行い,その結果に基づき, 送り仮名能力の育成の在り方について考察している。 鈴木(2008)は,日本語能力(敬語,書き順,語彙,表現)の実態調査の一部に筆順を取り上げている。 大学生を対象として,「飛,右,左,猫,遠」の5字について,「指示された画を解答用紙の漢字に矢印で記 入する」 (:143)という方法で調査を行っている。「「飛」(4画目)」の誤答率が最も高く66.5%であったと している。 磯部(2011)は,大学生(51名)を対象として, 「下関」「千葉」「津軽」「福岡」「富士」の5語について, ローマ字の綴り方を調査している。「し」「ち」「つ」「ふ(「福岡」の「ふ」)」「ふ(「富士」の「ふ」)」「じ」 についてヘボン式(第2表)の綴り方をした回答者数は,それぞれ46名(90%),50名(98%),43名(84%), 48名(94%) ,49名(96%) ,47名(92%)であったとし,「圧倒的に「ヘボン式」の表記が優勢である」 (:79)としている。また,「すべてを統一的に「ヘボン式」で表記したのは38名のみ」であり「実際に自 分で手書きで記述する機会は少なく,いかにローマ字の表記そのものに馴染んでいないかの表れである」 (:79)としている。 長澤(2012)(2013)は,JISキーボードでのローマ字入力によるタッチタイピングとローマ字教育との関 連を扱った研究であるが,短期大学生1年生を対象としてローマ字入力をする際の綴り方を,2011年(46名 対象)と2012年(41名対象)にそれぞれ調査している。タッチタイピングの実習の前後に,単音「ふ,じ, づ」 , 拗音「じゃ」などの綴り方を調べている。実習の前においては,本稿の調査でも対象とした「ふ」「じ」 について,第2表の「fu」を用いた学生の割合は30.4%及び24.4%(それぞれ2011年と2012年の調査),「ji」 を用いた学生の割合は52.2%及び53.7%(同前)であったとしている。. 3. 調査の概要 2016年調査の対象者の属性や方法は1996年調査とほぼ同一である。 調査対象者は,国語教員免許状の取得に関わる講義の受講学生(主に1年生)25名である。調査は,2016 年10月に行った。調査時間は約30分である。. 204.

(4) 大学生の国語表記の実態と問題点. なお,1996年調査の対象者も国語教員免許状の取得に関わる講義の受講学生(主に1年生)31名であり, 1996年10月に行っている。 調査内容は,国語表記の基準(『現代仮名遣い』『外来語の表記』『ローマ字のつづり方』『送り仮名の付け 方』 )及び学年別漢字配当表,筆順に関する内容である。具体的な調査内容は4節に示す。. 4. 調査結果・分析 4.1 現代仮名遣い 『現代仮名遣い』(昭和61年内閣告示1)の主にオ列長音と四つ仮名の表記の実態を調査した。調査に用い た語は,表1に示す27語である。調査では,これらの語を含む文2を口頭で読み上げ,それをすべて平仮名 で書き取らせるという方法を用いた3。 表1に2016年調査と1996年調査の結果を示す。 表1 現代仮名遣い. 2016年調査は,1996年調査に比べて,特に「どおり(通り)」「とお(十)」の正答率が極めて高くなって 「おうさか(逢坂)」「いちじく(無花果)」の正答率が低 いる4。しかし,それ以外はほぼ同様の傾向にあり, いことも同じである。「いちじく(無花果)」は「現代仮名遣い」の第2の5(1)の「同音の連呼によって生. 1  平成22年に一部改正(内閣告示)されているが,本調査の内容には関わらない。 2  「多くの人が大通り公園を往来する。」 「近々地震が大阪と沼津と逢坂の関で起こるとお父さんが言った。 」 「さかずきを持っ て,うなずくように何度も相槌を打つ。」「いちじくが一つずつ著しく縮んでいった。 」 「七つ,八つ,九つ,十,とうとう十 まで数えたぞ。」「日本中の人が仮名遣いは難しいとつくづくと思う。 」 。 3  調査語及び方法は,小林(1978)を参考にしている。 4  フィッシャーの正確確率検定(統計R(ver.3.4.0)fisher.test利用(両側検定) (5%水準)) (以下同じ)で「どおり(通り)」 は p=0.001, 「とお(十)」は p=0.02で有意差が認められた。ただし,この違いが経年変化として一般化できるかどうかにつ いては,調査対象者数が少ないため本調査だけでは断定することはできない。. 205.

(5) 馬 場 俊 臣 5 じた「ぢ」 「づ」 」の項で「「いちじく」 「いちじるしい」は,この例にあたらない。」 と「注意」書きされている。. 「いちじるしい(著しい)」に比べて「いちじく(無花果)」の仮名書きは親しみがないのであろうか。「じゅ う(中) 」 「さかずき(杯)」「うなずく(頷く)」「ずつ〈副助詞〉」の「じ」「ず」は「二語の連合によって生 じた「ぢ」 「づ」 」 (第2の5(2))であり「現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等」として「じ」 「ず」を用いて書くことを「本則」としているが「 「ぢ」 「づ」を用いて書くこともできる」と許容を認めて いる6。特に「さかずき(杯)」は許容の「づ」で書く回答が比較的多いことも1996年調査と同じである。 4.2 外来語の表記 『外来語の表記』 (平成3年内閣告示)の,主に「第1表」と「第2表」の仮名(「ウイ/ウィ」 「ウエ/ウェ」 「クオ/クォ」 「バ/ヴァ」 「ベ/ヴェ」――それぞれ前者が第1表の仮名,後者が第2表の仮名)及び「フィ ルム/フイルム」の慣用について調査を行った。調査では,仮名表記する場合にこれらの仮名を用いる英単 語7を示し,それを片仮名で書かせるという方法を用いた。 「第1表」 「第2表」については,「国語化の程度の高い語は,おおむね第1表に示す仮名で書き表すこと ができる。一方,国語化の程度がそれほど高くない語,ある程度外国語に近く書き表す必要のある語――特 に地名・人名の場合――は,第2表に示す仮名を用いて書き表すことができる。」(留意事項その1「4」) と示されている。また,「フィルム/フイルム」については,「注2 「ファン」「フィルム」「フェルト」等 は, 「フアン」 「フイルム」「フエルト」と書く慣用もある。」(留意事項その2の「I 第1表に示す「シェ」 以下の仮名に関するもの」の「5」)と注記されている。 表2に2016年調査と1996年調査の結果を示す。 表2 外来語の表記. 2016年調査では,「ウイ/ウィ」「ウエ/ウェ」「クオ/クォ」はいずれも,1996年調査に比べ,第1表の 仮名の使用が増えている8。「バ/ヴァ」も1996年調査に比べ,第1表の仮名の使用がわずかに増えているが, 2016年調査及び1996年調査ともに第2表の仮名の使用が極めて多い結果となっていることは同じである。 「ベ /ヴェ」及び「フィルム/フイルム」については,1996年調査とほぼ同じ結果である。 5  歴史的仮名遣いで「じ」と表記される。 6  表1では, 「じゅう(中)」「さかずき(杯)」「うなずく(頷く)」「ずつ〈副助詞〉」は,便宜的に「じ」「ず」を「正答」 として扱っている。 7  「whisky」「wedding cake」「quarterly」「violin」 「veil」 「film」 「recreation」 。 た だ し, 本 稿 で は「recreation」 の 分 析 は省略する。 8  フィッシャーの正確確率検定を行った結果,「ウエ/ウェ」のみ有意差が見られた(p=0.003) 。. 206.

(6) 大学生の国語表記の実態と問題点. 学校教育における『外来語の表記』の「第1表」「第2表」の扱いについては,「学校教育における外来語 の取扱いについて」 (平成3年文部省初等中等教育局長通知)によれば,小学校の第1学年から第3学年ま では原則として第1表の左欄の表記が指導の範囲とされ9,第4学年から第6学年までは原則として第1表 の左欄の表記及び右欄の表記の大体が指導の範囲とされている10。中学校では原則として第1表の表記及び 第2表の表記の大体,高等学校では原則として第1表及び第2表の表記が,それぞれ指導の範囲とされてい る。 小学校及び中学校・高等学校の国語の教員免許状の取得を希望する学生は,こうした指導の範囲を十分理 解したうえで,自らの表記を省みる必要がある。 4.3 ローマ字のつづり方 『ローマ字のつづり方』 (昭和29年内閣告示)の,「第1表」と「第2表」の綴り方(「si / shi」「ti / chi」 「tu / tsu」「hu / fu」「zi / ji」「sya / sha」――それぞれ前者が第1表の綴り方,後者が第2表の 綴り方)について調査を行った。調査では,平仮名表記の語11を示し,ローマ字で書かせるという方法を用 いた。 「第1表」 「第2表」については,「一般に国語を書き表わす場合は,第1表に掲げたつづり方によるもの とする。 」 「国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り,第2表に掲げたつづ り方によってもさしつかえない。」(「まえがき」)と示されている。 表3に2016年調査と1996年調査の結果を示す。 表3 ローマ字のつづり方. 2016年調査の結果は全体的に「第2表」の綴り方が多く用いられており,1996年調査の結果とほぼ同じ傾 向にあるが,2016年調査の方が1996年調査に比べて「第2表」の綴り方の回答率が概して高くなっている12。 また,1996年調査では,すべて「第1表」の綴り方を用いた回答者が1名(3%),すべて「第2表」の 綴り方を用いた回答者が2名(6%)であり,残り28名(90%)は「第1表」と「第2表」の綴り方が混在 していた。2016年調査では,すべて「第1表」の綴り方を用いた回答者が0名(0%),すべて「第2表」 の綴り方を用いた回答者が9名(36%)であり,残り16名(64%)は「第1表」と「第2表」の綴り方が混. 9  ただし,特に慣用の強いものについては,第1表の右欄及び第2表の表記によることができるとしている。 10 ただし,特に慣用の強いものについては,第2表の表記によることができるとされている。 11 「しずか」「ちはる」「つねお」「ふみお」「じしゃこ」 。 12 ただし,フィッシャーの正確確率検定を行った結果,いずれも5%水準で有意差は見られなかった(p値は省略) 。. 207.

(7) 馬 場 俊 臣. 在していた。このように,2016年調査では「第2表」の綴り方のみを用いる回答者が増えている13。 ローマ字の指導は,小学校で「第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で 表記されたものを読み,また,ローマ字で書くこと。」(平成20年文部科学省告示『小学校学習指導要領』) とされており,小学校国語教科書14では,「第1表」とともに「第2表」の綴り方も「使うことができる」 などとして示され,「書き方が二つあるものがある」などの説明がなされている。 小学校及び中学校・高等学校の国語の教員免許状の取得を希望する学生は,いわゆる訓令式の綴り方であ る「第1表」と,いわゆるヘボン式及び日本式の綴り方である「第2表」との区別に自覚的であることが望 まれる。 4.4 送り仮名の付け方 『送り仮名の付け方』(昭和48年内閣告示,昭和56年(一部改正)内閣告示15)に基づいた送り仮名の付け 方の実態を調査した。調査に用いた語は,表4に示す16語である。調査では,表4の「提示語」欄に示した 送り仮名を付けルビを振った語(提示の順序は表4と同じ)を示し,間違っているものを選択させるという 方法を用いた。 表4に2016年調査と1996年調査の結果を示す。 表4 送り仮名の付け方. 表4には, 『送り仮名の付け方』の通則の番号及び「本則・例外」「許容」のいずれに該当するのかを示し 「本則」は「送り仮名の付け方の基本的な法則と考えられるもの」 (「「本文」の見方及び使い方」), ている16。 13 フィッシャーの正確確率検定を行った結果,有意差が見られた(p=0.015) 。 14 『国語 三上 わかば』(光村図書,平成26年3月検定済),『ひろがる言葉 小学国語 3上』(教育出版,平成26年3月 検定済)。 15 平成22年にも一部改正(内閣告示)されているが,本調査の内容には関わらない。 16 「正誤」欄は,「提示語」通りの送り仮名の付け方が「本則・例外」 「許容」のいずれかに該当する場合は「正」 ,いずれに も該当しない場合は「誤」としている。「正答率」は,この「正誤」欄通りに正しく「正」又は「誤」を選択して回答した. 208.

(8) 大学生の国語表記の実態と問題点. 「例外」は「本則には合わないが,慣用として行われていると認められるものであって,本則によらず,こ れによるもの」 (同前) , 「許容」は「本則による形とともに,慣用として行われていると認められるもので あつて,本則以外に,これによってよいもの」(同前)である。表4に示す通り,「許容」がある場合は二通 りの付け方のいずれでも間違いではない。ただし,学校教育における扱い17は,原則として「本則」「例外」 によるものとなっており, 「許容」については中学校及び高等学校で「取り扱うものとする」とされているが, 扱い方は「許容等のあることを説明する程度」とするものとされている。 2016年調査では,1996年調査に比べて,「行(おこ)なう」「起(おこ)る」「変(かわ)る」「聞(きき) 苦(ぐる)しい」の正答率が極めて低くなっている18。いずれも許容であり間違いではないが,間違ってい ると答えた回答が多くなっている。送り仮名の付け方の「許容」に関する知識が乏しくなっているのであろ うか。あるいは「許容」の送り仮名の付け方を目にする機会が少なくなっているのであろうか。 2016年調査では,この4語以外は,1996年調査に比べて正答率の多少の増減はあるが,ほぼ同じ傾向であ る。名詞の「後(うしろ) 」 「情(なさけ) 」は「例外」として「最後の音節を送る」ものでありいずれも間 違いであるが,正しく間違いと回答した率は低い。また,「願(ねがい)」「向(むか)い」は「読み間違え るおそれのない」場合はそれぞれ「い」 「か」を省くことができるものでありいずれも正しいが,特に「願(ね がい) 」については正答率が低い。さらに,副詞の「恐(おそら)く」は,「最後の音節を送る」という「副 詞」の「本則」は適用されず,「恐れる」という「他の語」(動詞)が含まれているため「恐れる」と同じ送 り仮名の付け方によるという「例外」に当たるものであり,正答率は高くはない。 『送り仮名の付け方』は,他の表記の基準に比べて,「許容」「例外」などが複雑であり,実際に迷った場 合は一つ一つ辞書で確認する必要がある。しかし,ワープロなどの仮名漢字変換機能を用いることが多い現 在では, 変換候補として先に出てきたものをそのまま用いてしまう傾向にあるのではないだろうか。しかし, 小学校及び中学校・高等学校の国語の教員免許状の取得を希望する学生は,『送り仮名の付け方』の概要を 理解しておく必要がある。 4.5 学年別漢字配当表,筆順 学年別漢字配当表( 『小学校学習指導要領』19),筆順(文部省(1958)『筆順指導の手びき』)は,内閣告示 の表記の基準ではないが,表記に関連するものとして調査を行った。 学年別漢字配当表に関しては,小学校で学習する漢字かどうかを正しく判断できるか調べた。表5の10種 類の漢字(提示の順序はランダム)を示し,小学校で学習すると思われる漢字を選択させるという方法を用 いた。提示する漢字の選択は, 「小学校で学習する漢字のうち比較的画数の多い漢字,また中学校で学習す る漢字のうち比較的画数の少ない漢字を選び,さらに任意にその他の漢字を混ぜてある。」(馬場1997:39) というものである。 表5に2016年調査と1996年調査の結果を示す20。. 率である。 17  「学校教育における「当用漢字音訓表」及び「送り仮名の付け方」の取り扱いについて」 (昭和48年文部省初等中等教育局 長通知)。 18 フィッシャーの正確確率検定を行った結果,有意差が見られた( 「行なう」p=0.0002, 「起る」p=0.005, 「変る」p=0.001, 「聞苦しい」p=0.0001)。 19 調査対象の漢字の配当学年は,2016年調査(平成20年文部科学省告示『小学校学習指導要領』 ) ,1996年調査(平成元年文 部省告示『小学校学習指導要領』)ともに同じである。 20  「正誤」欄は,小学校で学習する「学年別漢字配当表」の漢字は「正」 , そうでない漢字は「誤」としている。 「正答率」は,. 209.

(9) 馬 場 俊 臣. 表5 学年別漢字配当表. 2016年調査では,1996年調査に比べて, 「笛」の正答率が極めて高くなっていること21以外は,ほぼ同様 の結果となっている。主に大学1年生である調査対象者は正誤を正しく判断できなくても大学1年生の時点 では問題はなかろうが,今後学生が小学校の教育実習に行った際に,比較的画数の少ない漢字を既習だと思 い込んで指導に当たるようなことがあれば問題であろう。 次に, 筆順に関しては,漢字10字について調査を行った。表6の10種類の漢字(提示の順序は表6と同じ) を示し,一画ずつ増やして漢字を完成するようにさせるという方法を用いた。提示する漢字の選択は,筆順 の間違いが生じやすいであろうと予想されるものを選んでいる。 小学校国語教科書に記載されている筆順は,現在でも,実質的には文部省(1958)『筆順指導の手びき』に 基づいているため,『筆順指導の手びき』に示された筆順を「正答」と見做して集計を行った22。 表6に2016年調査と1996年調査の結果を示す。 表6 筆順. この「正誤」欄通りに正しく「正」又は「誤」を選択して回答した率である。 21 フィッシャーの正確確率検定を行った結果,有意差が見られた(p=0.001) 。 22  「冊」は,当用漢字別表の漢字ではなく,昭和43年文部省告示『小学校学習指導要領』で追加されたいわゆる備考漢字で あるため,『筆順指導の手びき』に載っていない。江守賢治(1982) 『漢字筆順ハンドブック 第二版』 (三省堂)に示され た筆順によった。. 210.

(10) 大学生の国語表記の実態と問題点. 2016年調査は,1996年調査に比べ,「可」の正答率が極めて高くなっている。それ以外も全体的には, 2016年調査の正答率はやや高い傾向にある23。 中学1年生(201人)対象の筆順調査を行った齋木(2007)では,「「誤った」筆順24で書いていた生徒の 割合」は, 「飛」は5割台,「区,成,有,皮」は6割台,「乗」は7割台であったとしている(:17)。正答 率に直すと, 「飛」は4割台,「区,成,有,皮」は3割台, 「乗」は2割台となる。多少の違いはあるが, 表6の2016年調査の正答率とほぼ同様となっている。 筆順の実態のおおよそは調査結果に現れている。小学校及び中学校・高等学校の国語の教員免許状の取得 を希望する学生は,『筆順指導の手びき』に示された筆順に関する知識の習得が必須である。. 5. おわりに 馬場(1997)では, 「調査の対象者は,高等学校卒業者のうちの,比較的国語に関心を持っている(と思 われる)教員志望者の集団であるが,後述のように,その国語表記にはいろいろと問題が見られる。だが, ママ. 彼らは,この科目25の受講を通して,国語表記の諸規準の理解を得られる。ところが,こうした内容の科目 を受講しない,すなわち国語免許を取得しない学生は,何らかの学習機会がなければ,極端な場合,これか ら紹介する表記の実態のレベルに止まったまま,教育現場に出ていく恐れがあり,学校の国語環境に悪影響 を与えかねない。杞憂であればよいが。」(:31-32)と述べている。 2016年調査の結果は,1996年調査の結果と,部分的に違いは見られたが,全体としてはほぼ同じであった。 同じであったということをどのように評価するか,いろいろな見方ができる。変化していないことに安堵す る見方もあるであろうし,逆に,改善されていないことを危惧する見方もあるであろう。いずれの見方に立っ たとしても,馬場(1997)の上記の指摘は,現在でもやはり変わらないであろう。 国語教員免許状に関わる単位を修得する教職課程における「教科に関する科目」としての「日本語学概論 (国語学概論) 」の意義と問題点を分析考察した浅川(2017)は, 「日本語学概論(国語学概論)」の受講者(計 380名)を対象として「五十音図」を平仮名及び片仮名で書かせる調査を行い,「調査した範囲では,44.5% の大学生が「現代仮名遣い」の〈五十音図〉を正確に書くことができない26。」(:17)と指摘している。さ らに「初等教育・中等教育においての基本的な言語事項である〈五十音図〉の指導ですら低水準の状態にあ るという事実は,国語科の教職課程を設置し,国語科の教員免許状の取得者を養成する大学教育の現場がそ の設置目的に必ずしも応えてはいないということになる。(中略)高等教育機関たる大学において「日本語 ママ. 学概論」の講義を担当する大学教員は,国語科教員を養成しているのだという自覚を以て,その講義内容が 大学教員自身の研究分野に偏することのないように配慮しなければならないものと考える。」(:20)と述べ ている。重要な指摘であり,肝に銘じたい。. 23 フィッシャーの正確確率検定を行った結果,「可」のみ有意差が見られた(p=0.013)。なお,正答の1漢字を1点として 各回答者の回答を得点(10点満点)として集計し,2016年調査と1996年調査とで得点の平均値に差がないか,t 検定(Excel T.TEST関数利用)(両側検定)を行った結果,5%水準で有意差は見られなかった(p=0.08) 。 24 「「誤った」筆順」とは,『筆順指導の手びき』に示されている筆順とは異なった筆順のことである(齋木2007:5) 。 25 国語教員免許状の取得に関わる科目。 26 「現代仮名遣いの「や行」を段の位置を考慮せずに「やゆよ」とマス目を詰めて記入」する誤答及び「 「わ行」を「わをん」 のように撥音を併せて書く」誤答が目立ったとしている(浅川2017:17-18) 。. 211.

(11) 馬 場 俊 臣. 参考文献 浅川哲也(2017)「国語科教職課程における「日本語学概論」の意義と問題点―〈五十音図〉を正確に書けない大学生―」『首 都大学東京教職課程紀要』(1),首都大学東京教職課程紀要編集委員会,pp.13-20 磯部佳宏(2011)「「ローマ字のつづり方」をめぐって」 『山口大学文学会志』61,山口大学文学会,pp.71-81 井上次夫(2005)「 「送り仮名の付け方」の難易度――モーラ数から見た難しさの傾向――」 『奈良教育大学 国文―研究と教 育―』(28),奈良教育大学国文学会,pp.85-71 井上次夫(2007)「送り仮名の誤答分析―誤答例を用いた送り仮名指導に向けて―」 『小山工業高等専門学校研究紀要』(39), 小山工業高等専門学校,pp.1-10 紙宏行,飯野守,実川恵子(2001)「本学学生の言語意識と現状に関する調査報告」 『文藝論叢』(37),文教大学女子短期大学 部現代文化学科,pp.42-49 小林和彦(1978)「仮名遣いの指導について――言語の系統的指導についての一試案――」 『語学文学』(16),北海道教育大学 語学文学会,pp.24-30 齋木久美(2007) 「筆順の「誤り」に関する研究―中学生を対象とした学年別漢字配当表所収全字種の筆順調査結果をもとに して―」『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』56,茨城大学教育学部,pp.1-21 鈴木裕子(2008)「大学生の日本語能力の現状・各論(敬語・書き順・語彙・表現)―豊橋技術科学大学生の場合」 『雲雀野』 (30),豊橋技術科学大学,pp.137-154 長澤直子(2012) 「ローマ字教育とローマ字入力について考える―二者の間の接点に注目して―」 『情報化社会・メディア研究』 8,放送大学情報化社会研究会,pp.21-32 長澤直子(2013) 「続・ローマ字教育とローマ字入力について考える―学習による綴り選択の変化に注目して―」 『情報化社会・ メディア研究』9,放送大学情報化社会研究会,pp.73-80 馬場俊臣(1997) 「「おおどうり」は固有名詞か――国語教員免許取得希望者の表記の実態と問題点――」 『札幌国語研究』(2), 北海道教育大学札幌校国語国文学科,pp.31-40 文部省(1958)『筆順指導の手びき』博文堂出版 付記 本研究は,北海道教育大学大学研究倫理委員会の承認を受けている(承認番号 北教大研倫 2017051002) 。. (札幌校教授). 212.

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