社
会
系
教
科
教
育
学
会
『社
会
系
教
科
教
育
学
研
究
』
第21
号 2009
(pp.41-50)
中小企業観の変容を促す社会科授業構想
−
「仲間取引」を通
した企
業間関係の研究と調査
を生か
して−
Development of
a Lesson That Encourages Transformation of the Students' View of Medium and
Small Companies:
Based on the Survey and Research on the Inter-company Relationship Through
“Nakama-Trade
”
I
問題の所在
わが国の経済基盤
を支える
工業,す
なわ
ち製造
業の事業所数は99.3%
が中小企
業である
。中小企
業は従業員数でも72.8%
を占めている(1)
。この数
値
を
,その
まま企
業に就職する生徒に当てはめる
と
,5人に3.7
人が中小企業に入ることになる。
この結果か
ら
,子どもに中小企業の優れた面,す
なわ
ぢ 意義”を深
く理解
させ
ることで
,中小企
業に対する肯定観
を形成させる必要が
あるといえ
るのではないだ
ろうか
。では
,社会科における中
小企業学習は
,希望の持てる内容になって
いるの
だ
ろうか
。
まず
,中小企
業の扱
いを,小学校
・中学校
・高
等学校
,それぞれの教科書記述よ
りみ
ていく。
小学校
では
,問題性は匚
低生産性。長時間労働
。
後継者
不足。大企業の移動に伴う影響」
,意義で
は「 ̄
す
ぐれ
た技術」と書かれている(2,pp.103-105)
。
中学校では
,問題性は匚
低賃金
。小さい企
業ほ
ど資金調達が困難
。不況期には不安定になりやす
い」
,意義では匚
先端技術を使って,新
しい分野
を開拓す
るベンチャ
ー
ビジネスが増
えている
。す
ぐれた技術」とある(3,p.11)
。
高等学校の政治
・経済では
,問題性は匚
二重構
造か
らくる大企業の下請」
,意義では匚
未開拓を
切
り開くベンチャ
ー
ビジネス
。
『隙間』を埋める
ニッチ産業」と書かれて
いる(4,pp.l29-130)
。
以上の記述
をまとめると
,経済の
二重構造から
見た大企業に対する低い賃金
・雇用条件などの,
“問題性"の側面は
多く取
り上げられている
。他
方
,肯定面と
しての
“意義”の側面では,一部の
オン
リ
ー
ワン技術を持った成功企
業を紹介す
る例
が
多い。中小企
業全体にかかわる強みでは,厂
す
松
尾
光
雄
(大阪府立吹田支援学校)
ぐれた技術
」と,大まかで抽象的な表現にとどまっ
ている
。したがって,社会科教科書の中小企業観
は
,
“問題性”の側面の方がより具体的で,中小
企業に関して
,より総体的な内容なので,必ず
し
も明るいとはいえない。
これに対し
,匚
教師用指導書」
,
「 ̄
授業実践」
,
匚
教育論」の三点の資料では,問題性の認識に終
わらないように
,肯定的な観点を意識して取り上
げている
。そこで,中小企業のもつ 意義”の扱
いについて
一点目に関して,まず小学校からみていく。A
,上記の資料からそれぞれ検討する。
社は
,匚
中小企業は単なる
『下請け』に過ぎない
という偏見を抱くことがないよう注意すると共に
,
高度な専門技術を生か
した
『ものづくり』に自信
を持
っているという認識を引き出すようにする。
」
(5・,pl38)
としている
。B社では匚
働く人たちの働く
様子やものづくりにかける思いをとらえる」
(6・p・134
)
と示しており
,前者と同様に労働者への共
感の視点を提示している。
中学校では
,C社は,匚
中小企業は働きがいが
ある
」というキーワー
ドを含む約1ページの文献
からの引用文から
,中小企業に対するイメージと
感想を書かせる問いを設定している
(7,p,117
)
。
高等学校では
,教科書と同様,
“問題性”に主眼
をおきつつ
,D社の現代社会
(8,p・158
)
,
E社の政治
・
経済
(9
が4
)
は
,いずれもベンチャー
・ビジネスに
代表される成功を取り上げている。
二点目に関しては,経済の二重構造をくぐらせ
て
,苦しい中でも努力と工夫を重ねている労働者
に共感することで,子どもに肯定面を理解させる
試みがある(10,pp.
193-207,11
,pp・200-205
)
。
三点目に関しては,授業記録と教師用指導書の
分析をふまえ
,肯定的な中小企業観
を提案する山
口の主張がある
。中小企業の扱いを従
来の二重構
造論か
らの視
点を見直
し
,労働への共感
,すなわ
ち生き甲斐の視
点を取
り入れた中小企業を見る視
点の変換
を求めている
(12
が41
)
。
整理すると
,一点目では,一部の成功企
業を取
り上げるにとどま
り
,多くの中小企
業に通
じる意
義とはなっていない
。また,三点に共通する中小
企
業の意義は
,生きが
いや労働への共感
といった
感性や価値観
である
。後者は
,確かに,明るい中
小企業観
を形成するための有効な
一つの方法であ
ろう
。
しか
し,事実に裏打ち
され
た観点では
ない。
そ
こで本稿では
,学習者が肯定的な,
しかも客
観的事実に根
ざ
した中小企業観を形成する授業構
想
をめ
ざす
。は
じめに
,
“意義”と
しての町工場
の存立要因の仮説を立て
,それ
を経済学
と大学
・
行政の研究機関による中小企
業研究の成果と
,筆
者に
よる調査か
ら検証
し
,中小企
業の
も
っ 意義
”
を客観
的に裏
づける
。次に
,
“意義”と
しての
,
町工場の存立要因に焦点
をあてだ中小企
業学習を
構想する
。なお,本稿で扱
う中小企業は工業集積
地における製造
業と
し
,対象規模は最も経済基盤
の弱
い
,ほぼ従
業員9人以下の小
・零細
業とする
。
それ
を以下,
“町工場”の名称で表す
。
n
意義
としての
町工場の存立要因一
一
企業間関係
1
町工場の存立要因を
“意義”とす
る背景
バ
ブル経済の崩壊後
,ものづくり(
製造業)
に携
わ
る中小企
業の減少は著
しい
。各都市の工業統計
調査によると,
1995-2005
年までの10
年間
,工業
都市のほ
とんどで20
%
以上の中小企
業が減って
い
る
。とりわ
け9人以下の中小企
業の減少率は高
い(13)
。
しかも,昨年の世界金融危機の影響で,
今年(2009
年)
はさらに
多くの中小企業にとって
,
減益傾向が加速
している(l4,pp.l-2)
。この
ような悪
条件の中でも
,廃
業せずに地道な経営
をし,存続
している中小企
業が数多くある。
全国有数の中小工場集積地で
ある大阪府
東大阪
市には
,
多くの町
工場が存立
している
。そこで,
本章では対象地域
を東大阪市と
し
,町工場が
“集
積
地”という特徴
を生か
して存立する上での諸要
因を
“意
義”と
して明らかにする。
-町
工場存立の意義は,東大阪市が行った1999
年
の全事業所実態調査のアンケ
ー
トから読み取るこ
とができる
。中でも,
『事業所の強み』という項
目が存立要因の
一指標と見なせる。複数回答の結
果からは
,9人以下の町工場で50
%を占めていた
のが
匚
製造技術」と匚
短納期」である。以下,
匚
小ロッ
ト
(多品種少量)
生産」匚
品質管理」が40
%
前後と続いているCl5,pp.26-27)
。すなわち,多くの町
工場の存立要因は,品質も含めた
「 ̄
高い技術力」
と小規模を生か
した匚
短納期
」匚
多品種少量生産」
であるといえる
。しか
し,これらは前章で述べた
教科書記述と
,ベンチャー企業を含むオンリーワ
ン技術を持った成功事例と重なる部分でもあり
,
“集積”という地域性を利用しなくても
,個々の
町
工場の自助努力で達成できる強みである。
これに対して筆者は
,厂
集積地では,個々の町
工場の努力や工夫を超えた存立要因があるのでは
ないだろうか
。
」と考えた。すなわち,この推論
から次の仮説が立てられる。
匚
集積地という地域性を生かした町工場の存立
要因は,企業間関係にある。
」
上記の仮説を受けて
,
“企業間関係”を二つの
視点から検証する
。一つは,一方向の発注関係で
ある
。加工品にメッキや溶接等の特殊加工をは
じ
めとする別
工程が含まれる場合は,その専門業者
に発注
,すなわち匚
外注」する必要がある。その
逆はないので
,一方向のみの企業間関係になる。
東大阪市には多様な製造業の業種が狭い地域に集
積しているので
,町工場間では多様な外注が行わ
れていると予想される
。市内町工場の
“多楡陛”
について
,湖中は次のように述べている。
「 ̄
(前文略)・
‥東大阪市には,地域内分業の発達
による基盤技術が高度に発達
している。製造業
8000
のうち従業員数10
人未満の企業が約80
%強を
占めているが
,これらの多くは,金型,鍛造,鋳
造
,プレス,切削,板金,プラスチック成型,メッ
キ
,塗装などの専門技術を有する層の厚い基盤技
術群によって形成されている
。これら基盤技術は,
地域共有の技術資源として
,企業間でコラボレー
ションすることによって
…
(後文略)
」(I6,p・16
)
東大阪市内の400
余りの製造業に対して行った
調査がある。この調査では,
「 ̄
外注取引先企業数」
42−
の項目において,
80%以上の企業が1社以上の外
注先をもつ調査結果を算出した
。うち半数以上が
6社以上の外注先をもっていた
。しかも,市内へ
の外注比率は41.2%
と高く
,集積が連続する八尾
市
,大阪市を含めると80
%にのぼっている
(17,p・43
)
。
しかも
,外注を行う主たる理由は,前述の調査
によると
匚
自社ではもっていない専門的技術」が
約30%,
匚
コス
ト削減」が15%,
「取引営業品目の
拡大
」が11
%だった
(17
が4
)
。いずれも受注の幅を
拡げることにつながるOしたがって
,外注は存立
要因の一つといえる。
もう
一つの予想しうる企業間関係は,双方向の
発注関係である
。手がかりは,東京都大田区の集
積地を例にとった
匚
大工場の下うけの仕事だけでなく,町工場が
,以下の教科書記述にある。
おたがいに助け合う
『横うけ』は
,以前からやっ
ていました。
」
(18,p.77
)
匚
横うけ」とは,国の施策として1981
年に始まっ
た異業種交流による企業間ネッ
トワ
ーク
(19,p.
4
)
で
はなく
,町工場が集積し始めた頃から連綿と続い
てきた,厂
個別受注の限界を打ち破るための自然
発生的な知恵
」
(20,p・126)
としてのネッ
トワークであ
る
。匚
横請け」は,
『仲間取引』という概念で経済
学
・行政機関で研究されている。仲間取引は双方
向の発注関係なので
,企業間関係は対等,すなわ
ち
,
“連携”となる。次節以降は,仲間取引を考
察
して,存立要因としての有効性を検証する。
2
仲間取引
仲間取引の定義づけは
,渡辺が東京都大田区を
調査地とした論文の中で初めて行った
。渡辺は,
仲間
取引について次のように定義している。
厂
まずその第
一の特徴は…
(中略)・
‥零細経営を
中心とした相互の利用取引関係であり,一方的外
注関係でないことである。
」(21,p.91
下
線
:筆
者
)
大
田区が
出
した
調
査
報告
書の
中
では
,次の
よ
う
な
定
義が
な
され
て
いる
。
叮
仲間
取
引』
とは
,大
田区内の機
械金
属
工業
に
お
ける
加
工
業者間
での
加
工
外注
で
あ
り相
互
補
完
的
な
双方
向の
取
引関
係の
こ
とで
ある
。
(22
」
が
)
大
田区
は匚
大
田
区内
」
と
して
いるが
,大阪
府
立
産
業開発
研
究所の
調
査
に
よる
と大
阪
府
内で
も
広
く
行わ
れ
て
い
るの
で
,仲
間
取
引は
大
田区
に限
定
され
ないといえる(23
が7)
。他地域では具体的な調査が
ほとん
どされ
ていないので
,性急な一般
化はでき
ないが
,取引割合の程度の差
こそあれ
,国内の産
業集積地では
一般
的に行われ
ていると推測できる
。
次に
,仲間取
引の分類について考察する
。義永
は仲間
取引を,
“量的
・質的
・情報の仲間取引”
の
3つに分類
している(24・pp.120-122)
。量的仲間取引
は
,自社でも生産できるが納期などの点で生産
量
が追いつかない場合
,仲間企
業と相互発注する取
引である
。質的仲間取
引は,自社の設備では生産
できない
,または苦手な発注
を受けた場合に設備
をもつ
,または得意とする仲間企業と相互発注す
る取引である
。情報の仲間取
引は,仲間企
業が
も
つ外注情報
を利用
して相互発注する取引である
。
すなわ
ち
,仲間企業の紹介,または仲間を経由す
る場合
である
。当然
3つのケースはその逆もある。
義永は
自らの調査の中で
,無作為に抽出
した100
弱の事業所にア
ンケ
ー
トを実施
した
。 84
%の有効
回答の
うち,
70%近
くが質的仲間取引,
30%強が
量的仲間取
引だ
った
。情報が絡ん
でいるの
は
,質
・
量合わ
せて10
%あった(24,p.121)
。
3 企
業存立
の要因としての仲間取
引
先に引用
した論文の
中で
,渡
辺は仲間取引の形
態と機能に
匚(
前文略)
ついて次の
…この同業の友人
ように述べている
・知人関係こそ
。
,
通常
『仲間』
とよばれ
る存在であ
り
,この
『仲間』
関係によって各零細経営の
受注活動が支
えられ
,
変動に対
しても持ち
こた
えることを可能に
して
い
るので
ある
。この
『仲間
取引』
の第
1の機能は
,…
(中略)
…自ら得意でない加工も含むような工程全
体をまとめ
て受注
しうることにある
。さらに,納
期や量の関係で孤立
しては
受注できないよ
うな仕
事
を受注す
ることを
,零細経営にとって可能に
し,
…(
後文略)」(21,p.91)
大阪府の調査研究では
,匚
仲間取引の機能
を,
個別には
不安定な取引を仲間からの仕事や
,仕事
の紹介
を通
じて好不況に対応
してよ
り安定的に
し
て
いく仕事の融通と
しての働
きと
,集積地内の高
度な機能
を利用
して自社ではできない加
工をも受
注できる強み
を合わせもつ」(25,p.7)
,と整理
して
いる
能
している
。以上か
ことが明らかになった。
ら,仲間取引が企業存立に有効に機
4
大学
・研究機関による仲間取
引の調査
大阪府は
,東大阪市も含め
て府内の製造業調査
を毎年行って
いる
。 1995
年には
,大田区との比較
で仲間取引の調査
を行った
。それ
によると,東大
阪市は37.8%
の事
業所での実施がみ
られた
。ちな
みに大田区は50
%で
,仲間取引は全国
1位
とされ
ている(26)
。近年では大阪府下における金属機械
関連
工業の割合が調査され
た
。それによると,ほ
ぼ
6割の事
業所で仲間取引が確認
され
た
。中でも,
外注の30
%を超
える仲間工場との取引割合は
,9
人以下の
工場では
2割
以上で実施され
てお
り
,10
人以上では
1割未満にとどまっている゛)
。調査
結果か
らは,零細工場ほ
ど仲間取引の盛ん
なこと
が分かる。
関西大学では1997
年
,市内1121
社にアンケー
ト
調査
を実施
している
。集計結果か
らは
,19
人以下
の町工場では45
%が仲間取引を行ってお
り
,将来
の実施希望を含めると約50
%
であった(28,p,27)
。
6
筆者による市内町
工場の調査
筆者は東大阪市内
,大阪市に隣接する高
井田地
区を含めた西部か
ら中部にか
けて点在す
る
,従業
員が
1人∼50
人までの21
社を
,ほぼ5年がか
りで
調査
した
。うち,9人以下が15
社に及び,印刷
1
社
,卸兼ブロー
カー
1社
,ブ
ロー
カー
1社
を除い
た18
社は金属加
工関連の町工場である
。仲間取引
は
,21
社中
,18
社で行われ
ていた。未実施が金属
加工の
3社のみだった
。仲間取引の年数は
3年か
ら50
年と幅が
あ
り
,平均20
年余
りである。卸,ブ
ロ
ーカー
を除いた町工場の仲間数は平均4.6
社,
外注に占める割合は30
%強だった
。全て同業者が
仲間であるが
,関連
業者(
異種業)
と仲間関係に
あ
る工場も11
社
あった
。調査対象の町工場の仲間取
引を
,
2節で述べた義永の分類に
当てはめる。質
的仲間取
引では17
社
,量的仲間取
引では8社,情
報の仲間取引では14
社
,とそれ
ぞれ
に分類
され
た
。
なお
,質
と量とは約半数で重複
していた
。
次に
,仲間取引が果す存立への影響に
ついて分
析する
。売上に
占める仲間取引の割合では,
1社
のみ56
%に達
しているが
,残
り17
社に
目をやると
,
売上にか
らむ仲間への
外注額の割合が
,全売上に
対
して平均10
%
弱である
O平均
してみ
ると
,商取
引の金額だけでは,売上への貢献は少
ないといえ
る
。しか
し,仲間企
業間で何よ
り大切に
している
のは
,業界の動向,製造技術
,受注
した仕事の融
通
,設備のメンテナンス
,職人,価格
・納期,品
質管理
などの情報交換だった
。これ
は,互いに無
理
をきいてもらう発注
を出
し合
うことが
多いので
,
信頼の深ま
りか
らであると推測され
る
。
間接的な外注では
,仲間の外注先
を利用
して
い
る工場は14
社も
あり
,その外注は
平均で全売上の
1割
以上に関わ
っている
。ブローカーが仲間取引
の媒介
をするケ
ースも
8社で確認された
。また
,
17社が外注
・得意先で仲間の紹介
を受けてお
り,
外注先の
うち約20%,
得意先の
うち約15
%と
,そ
れ
ぞれ
工場の存立に大き
く関わ
る数字を示して
い
る
。また,仲間取引をしている経営者の18
人中8
人が,最も重要なパー
トナー
と
しで 仲間”を選
んでいる
。
以上か
ら
,調査
した町工場では
,仲間取引に関
する取
引額のみ
では工場の存立への影響は少ない
が
,経営の維持という点か
らみ
ると,仲間取引は
存立に大き
く関わ
って
いる
ことが
明らかになった
。
最後に
,仲間取引を始めた事例
と休
正
した事例
を紹介
し
,近年の町工場の減少に伴う,仲間企
業
の減少への対策と,仲間関係を崩す造反現象をあ
げる。
自社製品製造業のS
社は
,今までライバルだっ
た同業者と
2年前
より仲間取引を開始
した
。理由
は
,互
いの製品や部品を発注する
ことで不景気に
対応するためで
ある
。現在の取引額は全体の15
%
ほどだが
,年々増
えている。溶接業の
K社は,20
年程前か
ら同業者間で仲間取引を開始
した
。同業
界
でも各々専門分野
を持
っている
。そ
こで,自ら
が
あえて不得意分野
を引受けるよ
り
,互いに得意
の分野
を担
当す
る方が効率よく仕事ができるから
である
。共存のための
方向転換であるという。
金属切削のS
工業は
,30
年近
く同業者
1社
と仲
間取引
をしてきた
。しか
し,
1年程前か
ら仲間へ
の発注は
なくなった
。仲間企
業は
一得意先とな
り,
相互取引は休正
した
。情報交換や相談の相手と
し
ての関係は続いて
いるという
。
近年の仲間企
業の移転や転廃業の対策と
して
,
大学の調査研究がある
題が発
生
しているのは,東大阪市では112
。それによると,現実に問
(19
件
人
以
44
下
゛
匹)
の聞取
り中
,8%
であった
Oそれ
らの企業
が
とった対策としては
,匚
約半数が新たな仲間企
業の開拓」となっている(29,p28-29)
。
また
,過度な価格競争による
受注
をめ
ぐる
トラ
ブルと
,一部で,匚
紹介を受けた企業の頭ご
しに
直接取引きは
しない」
匚
不当な紹介手数料は要求
しない」匚
その仕事が最も得意な業者(
仲間:
筆
者)
に仕事
を回す」などの仲間同士の暗黙のル
ールが
破られて
いる事象が紹介
されている(30,p.l5)
。これ
らは
,昨年末,筆者が調査
した企
業に問
い合わせ
たところ
,自社の仲間関係では
1件も起きていな
かったが
,18
社中
3社が他
で起
きて
いる事象
を知っ
ていた
。価格競争は
,6社が匚
有
り」と回答
した。
この問題は
,仲間取引
を揺るがす
,町
工場にとっ
てのマイナス面だが
,事実認識
を深め
る観点に立
てば
,事例とともに必要な提
示だと筆者は考
える
。
Ⅲ町工場の存立の知恵に焦点をあてた授業構想
1
構想する授業の知識の構造
且
章では
,工業集積地という特徴を生かした,
中
小企業
(町工場)の持っ 意義”としての存立
要因を明らかにした。すなわち,町工場の存立要
因とは,個々の企業で達成できる匚
高い技術力」
匚
多品種少量生産」匚
短納期」に加えて,企業間連
携で成り立つ
匚
仲間取引」であることが分かった。
そ
こで本章では,上記の知識と町工場の存立と
の関係を理解するために
,以下の説明的知識の習
得をめざして授業構想を行った。
「米 ̄
萌荀 ̄
痼JG一中小企業の意義
(町
二C
場
O存
立
要
因
)
匚
東大阪市の町工場の多くは,高い技術力を背景
に多品種少量生産を短納期で行い
,工場の集積を
利用して,複数の外注先を持つことで小規模経営
ながらも受注を確保してきた
。さらに,“仲間取
引”という
,企業間の相互取引により,互いの工
場の設備の利用と経営上重要な情報を交換するこ
とで,経営基盤を強めている。
」
次に,この説明的知識を導くための下位の説明
的知識と,事実的知識としての分析
・記述的知識
を
以下に示す。
天
一三つの存立要因
A
多く立地しているので,常に企業間競争にさらさ
:
匚
工業集積地である東大阪市には,同業者が
れ
ている
。その結果
,高
い技術
力や短納期
,多品
種少量生産を得意とする企
業が
多い
。
」
B
:
「 ̄
東大阪市には
多様
な業種の町工場が集積
し
ているので
,自社にない技術
を互
いに補
うことが
できる
。その結果,得意先か
らの
多様
なニーズに
応
じた製品作
りを可能に
している
。
」
C
:
匚
東大阪市の町
工場の約半数は
,自社
で対応
できない加工品の量と技術を補
うために
,工場間
で相互発注
をす
る
“仲間取
引”
を
している
。また
,
一般的に同業者が
多い仲間企
業とは
,製造技術や
業界の動
きだけでなく
,得意先や外注先,職人の
雇用などの経営上不可欠な情報
を交換
している。
」
匹 コ 湎皿
A
−1東大阪市は全国有数の工業集中
(集積)
地
なので
,同
業者も
多く集積
して
いる。
した
が
って
,日々の
工場間の競争は激
しい。
A
↓あ東大阪市は全
国
一中小企業の割合が
多い。
A
↓い東大阪市の工場数は全国第
5位で
,工場
密度は群を抜いて全国
1位である
。
A
↓う東大阪市の製造
業は
,金属
・機械
・プラ
ス
チック関連が60
%
を占めている。
A-l-
え工場規模は大部分が零細
で
,9人以下の
比率が80
%
近
くを占め
ている。
A-2-
お町
工場は
,同業者が数
多く集まってお
り,
日々の競争は激
しい。
A
−
2東大阪市には,高い技術
を持ち,短納期
で多品種少量生産
を得意とする町
工場が
多
い。
A-2-
あ町工場は
日々
,製造技術を磨
いている
。
A-l-
い町工場は日々
,品質管理
をしっか
りして
いる。
A
↓う町工場は
,納期を短
くする努
力をしてい
る。
B
−
1
東大阪市の町工場は
,自社
でできない加
工も短期間
で仕上
げる
ことで
,得意
先の
ニー
ズに広
く応える
ことが
できる。
B
↓あ東大阪市には
,地場産
業は
あるが
,製造
業全体の出荷額の10
%
に満たない
。
B-l-
い東大阪市には
,主幹産
業は特になく,製
造業
の加工業種は様々である
。
B
↓う自社にない加工
市内に数
多くあ
り,自動車でも30
を代わ
ってやれ
る工場は
分
以内に
,
あ る 場 合 が多 い 。
B↓ え 東 大 阪 市 の 町 工 場 は, 他 の 工 場 に, 自 社
で で き な い 加 工 を 発 注 す る こ と が多 い 。
C − 1 東 大 阪 市 の 町 工 場 の約 半 数 は, 企 業 間 で
互 い の 設 備 と情 報 を 利 用 す る こ とで 経 営 基
盤 を 強 化 し て い る 。
C↓ あ 東 大 阪 市 の 中 小 製 造 業 の 約 半 数 は, 仲 間
取 引 を し て い る。
C↓ い 仲 間 取 引 と は , 2 社 間 で 互 い に仕 事 を 出
し 合 う 対 等 な 取 引 で あ る。
C↓ う 仲 間 企 業 は 同業 者 で あ る 場 合 が 多 い 。
C-1-え 仲 間 取 引 を す る こ と で, 得 意 先 の ニ ー ズ
に 細 か く応 え る こ と が で き る。
C − 2 仲 間 取 引 に は, 無 理 な 注 文 を き き 合 う こ
とで , 企 業 間 の 信 頼 を 深 め る 働 き が あ る 。
C↓ あ 仲 間 取 引 で は, 仲 間 企 業 に 不 定 期 な 注 文
を 出 す こ と が 多 い。
C-1-い 仲 間 企 業 同 士 は , 匚す け る( 助 け る)」 と
い う言 葉 で, 無 理 を き き 合 う 時 が時 々 あ る。
C↓ う 仲 間 企 業 と は, 製 造 技 術 や 業 界 の 動 向 だ
け て な く, 得 意 先 や 外 注 先 , 職 人 の 雇 用 も
含 め た 経 営 上 重 要 な 情 報 交 換 を す る こ と が
多 い 。
2 授 業 構 想
前 節 で 提 示 し た説 明 的 知 識 の 習 得 を め ざ し た 授
業 , 中 学 校 公 民 的 分 野 で の 経 済 領 域 と し て , 単 元
中学 校 公 民 的 分 野 で の 経 済 領 域 と し て , 単 元 匚生
【 表 1 学 習 過 程 ( 全 3時 間) 】 ( 左 欄 : ○ 主 要 発 問 ,
産 活 動 と 企 業 」 の下 , 小 単 元 匚中 小 工 場 の 集 積 し
て い る地 域 に お け る,『 仲 間 取 引 』 を 中 心 とす る ,
他工 場 と の結 びつ き を生 か した 町 工 場 の 存立 意 義 一
東 大 阪 市 を 事 例 と し て ー」 を 構 想 す る。 学 習 過 程
は , 岩 田 一 彦 の 概 念 探 究 型 を 参 考 と し た(31・p.58
)
。
第 1 時 は 匚問 題 の 把 握」 で あ る 。 日 本 の 中 小 企
業 , と く に製 造 業 を 概 観 し , “意 義 面 ” に し ぼ っ
て 中 小 企 業 の 長 所 ・ 強 み を 生 徒 の 意 見 と 資 料 よ り
あ げ る。 次 に, 自工 場 単 独 で し か で き な い 強 み と,
他 工 場 の 技 術 を 借 り な い とで き な い 強 み に 分 け て
整 理 す る。 さ ら に , 後 者 を 資 料 よ り 明 ら か に し 。
“仲 間 取 引 ” の 探 究 へ 向 け て 知 識 を 豊 か に す る。
第 2 時 は 匚探 究 」 で あ る。 生 徒 自 身 の 考 え と 資
料 を も と に 匚仮 説 一検 証 」 の 過 程 を ふ む 。 前 時 で
あ げ た 労 働 者 の 意 識 面 や 一 部 の 成 功 例 で は な く ,
中 小 企 業 全 体 に 関 わ る 客 観 資 料 を , 手 順 を ふ ん で
提 示 す る こ と で , 検 証 ま で の 思 考 活 動 を 円 滑 に さ
せ る。
第 3 時 は 匚検 証 と ま と め , 新 し い 問 い の 発 見 」
で あ る 。 仲 間 取 引 を す る, 別 の 側 面 か ら の理 由 を
資 料 ま た は 当 事 者 の 話 を も と に 検 証 し て , 第 1時
か ら 本 時 ま で の ま と めを す る。 続 い て , 探 求 す る
過 程 で 身 に つ け た 中 小 企 業 観 を 発 表 す る 。 最 後 に
仲 間 取 引 の 現 状 を 示 し, 新 た な 問 い を 生 み 出 す 契
機 とす る。
上 記 の 構 想 を 元 に, 以 下 に 学 習 過 程(表 1)を 示
すO
○ 補 助 発 問 )
( 右 欄 : ○ 上 位 の 知 識 ,0 下 位 の 知 識)
発 問(○ ○),予 想 さ れ る 発 言( ・),生 徒 の 活 動( ★) 資 料 指 示( ・) , 留 意 点( ※), 目 標 と な る知 識( ○ ○) < 1 時 間 目 > ○ 中小 企 業, と り わ け 町 工 場 か らイ メ ー ジす る も の は 何 か。 ・ く ら い 。 し ん ど い 。 す ぐ クビ にな る。 … ○ 日本 の 中小 企業 は どう な っ て い る の だろ う か。 ○ こ の数 字 ど お り に君 だち か 就 職 す る とす れ ば, 10 人 に何 人 くら い が 中 小 企 業 で 働 く こ と に な る だ ろ う か 。 そ れを どう 思 う か。 ・10 人 のう ち, 8人 か ら 9人 も ? ・ ど う し よ う 。 大 変 だ。・‥ ○ 中 小 企 業 に は ど ん な良 い と こ ろ(長 所 ・ 強 み) が あ る の だろ う か。 ・ 人 工 衛 星( まい ど 1 号) を 作 っ て 打 ち上 げ た。 → す ごい 技 術を 持 っ て い る。( ★ 資 料 ) ・ 大 企 業 に対 して 仕 事 の や り がい か おり, 自 由, マ イ ペ ー ス に 仕 事 が で き る。( ★ 資 料 ) 1 2 3 4 ※ マ イ ナ スイ メ ー ジ が多 い こ と か予 想 さ れ る が, 前 向 き な イ メ ー ジ( 人 工 衛 星 や 他 のす ぐ れ た技 術 な ど) を生 徒 が 出 せ ば, こ れを 中 小 企 業 の強 み に 関 す る 設 問 へ の回 答 につ な げ る。 O2002 年 時点 , 製 造 業 全 体 の 中小 企 業( 工 場) は99.6%, 従 業 員 数 は約85 % , 生 産 額 は約37 % で あ る。 < 中 小 企 業 : 従 業 員300 人 以 下 > ○ 東 大 阪 市 の チ ーム を 組 ん だ 町 工 場 が , 大 学等 の 専 門 機 関 と 連 携 し て 共 同 開 発 し た人 工 衛 星( ま い ど 1号) を, 2009 年 1月23 日 に 打上 げ ら れ た ロ ケ ッ ト に搭 載 し た こ と や , 勤 労 者 の意 識 調 査 か ら, 中小 企業 は 大 企 業 に 対 し て 仕 事 の や り が い が あ り , 自由 に仕 事 が で き る こ と に気 づ か せ る。46
○ 東 大 阪 市 の 中 小 企 業( 製 造 業 )は どう な って い る の か。 ○東 大 阪 市 に は ど ん な 優 れ た 会 社 が あ る の か。 ま た, 東 大 阪 市 の オ ンリ ー ワ ン技 術 を 持 っ た, ト ッ プ 企 業 は 全 体 の何 パ ー セ ント く ら い あ る の か。( ★ 資 料 よ り 調 べ る) ・ 東 大 阪 市 で は20 % く らい あ るか な 。 ○ 中小 企 業 は, や はり 大 半 が 苦 しい 状 態 な の か。 東 大 阪 市 の 近 年 の減 少 率 を 見 よ う。( ★ 資 料) ・ か な り 減 っ て い る 。 ・ 最 盛 期 の35 % も 減 っ て い る 。 ・ や っ ぱ り 中 小 企 業 は ダ メ か な … 065% の 中 小 企 業 は 今 も生 き 残 って い る。 と す れ ば, そ こ に生 き 残 って い る 中小 企業 の 本 当 の 強 みが あ る ので はな い だろ う か。 ○ 東 大 阪 市 の 町 工 場 の す ぐ れ た と こ ろ は, ど こ に あ る のだ ろ う かo ( ★ 資 料 よ り調 べ る) ・ す ぐ れ た 点 は, な ぜ達 成 で き た の か。 ま と め る と 。 5 6 7 5 8 8 ○ 全 国 の工 業 都市 の 中で , 工 場 数 は 第 5 位, 会 社規 模 に中 小 企 業 の 占 め る 割合 , 工 場 密 度 は 共 に群 を 抜 い て 全 国 第 1 位 で あ る。 特 に, 中 小 企 業 は99.95%, 従 業 員 9人 以 下 の 町工 場 は80 % 近 く も 占 め る 。 隣 接 の大 阪 市 ・ 八 尾 市 は工 場 地 帯 で , 工 場 数 は そ れ ぞ れ 全 国 2 位 ・10 位 で あ る こ と に も触 れ る。 ○ 大 企 業 に はで き な い 独 自 の 技 術 で 成 功 し て い る 企 業 が あ る 。 こ れ ら は, ペ ン チ ヤ ービ ジ ネ ス やニ ッ チ( 隙 間) 産 業 の 中 で オ ンリ ーワ ン技 術 を も ち, 全 国一 の生 産 を 誇 る ト ップ シ ェ ア 企 業 とい う 。 し か し な が ら , 東 大 阪市 で は 大 半 (約80 %) が当 て は ま ら な い こ と に 気 づ か せ る 。 ○ バブ ル 景 気 の崩 壊 後,1990 年 代 前 半 か ら 現 在 の金 融 不 況 に至 る長 い 不況 の 影 響 で , 特 に29人 以 下 の 零 細 工 場 の 減 少 は 著 し いo ※ 以 下 , 町工 場( 9人 以 下) を 対 象 に 探 究 を す す め る。 ○ 東 大 阪 市 の 中小 工 場 は, 自社 の 持つ「 高 い 技 術(製 造 技 術)」 匚短 納 期」「 小 ロ ッ ト( 多 品種 少 量)生 産」 を 主 に , “自 社 の強 み" とし て あげ て い る こ と に 気 づ か せ る。 ○ 上 記 の “ 強 み" は, 自 社 自 体 の 努 力 だ け で 達 成 で き る とい う点 , 同 時 に, 同 業 者 も多 く 立 地 し て い る た めに , 必 然 的 に起 き る工 場 間競 争 に 培 わ れ て い る 点 に も気 づ か せ る。 工 業 集 積地 で あ る東 大 阪 市 に は 同 業 者 も多 く立 地 し て い る ので , 常 に工 場 間 競 争 に さ ら さ れ て い る。 そ の結 果 , 高い 技 術力 や 短 納 期 , 多 品種 少 量生 産 を 得 意 と す る 企 業 が 多 い 。 ○ 人( 従 業 員) も機 械 な ど の設 備 も 少 な い 町 工 場 は, 自 分 の工 場 の努 力 だ け で や っ て い け る の だ ろ う か 。 ○ ネ ジ 1本 を 作 る に は ど れ だ け の工 程 か あ る の だ ろ う か 。( ★ 資 料 よ り 調 べ る) ○ 東 大 阪 市 の ど の く ら い の 割 合 の 工 場 か 外 注 (他 工 場 へ 加 工 を 発 注 す る こ と) を し て い る の か 。 ( ★ 資 料 よ り調 べ る) @ 自 分 の工 場 だ け の 努力 に よ ら な い 強 み と は 何 か 。 地 域 性 を 生 か し た強 み と は 何 か。 ま と め る と 。 9 10 ○ ネ ジで す ら, 切 削 す る だ け で な く, 曲 げ や, 穴 あ け や, 熱 処 理 や メ ッ キ 等 の 特 殊 加工 が い る の で, 特 殊 加 工 以 外 の製 造 , ま して は 組立 工 場 に至 っ て は , 自工 場 で で き な い 技 術 を 借 り る こ と にな る。 よ って , 一 般 の 製 造業 は 他 工 場 と 結 びつ き な が ら 生 産 し て い る こ と に気 づ か せ る。 ○80 %以 上 の 企 業 が 1 社 以 上 , 半 数 以 上 が 6社 以 上 も の 外 注先 を も っ て い る 。 市 内 へ の 外 注 は40 % を 超 え て お り , 隣 の工 業 都市( 大 阪 市, 八 尾 市) を 含 め る と80 % と, 外 注 先 の 多 く は 近 く の地 域 内 で あ る こ と を 把 握 さ せ る。 そ れ には, 工 場 の 集 ま っ て い る 地 域 に立 地 す る とい う利 点 を 生 か して い る こ と に も 気 づ か せ る. 労 働力 や 機 械 設 備 の少 な い 町 工 場 で は, 自 社 でで き な い工 程 を 外 注 す る 必 要 か お る。 そこ で , 東 大 阪 市 の 町工 場 は, 周 り に多 様 な 業 種 か 集 ま る 地 域 性 を 生 か し , 自社 に ない 技 術を 互 い に 補 う こ と で 多 様 な 製 品 作 り を 可 能 に して い る。 < 2 時 間 目 > ○ 外 注 は一 方 通 行 だ け だろ う か。 ・ メ ッ キ屋 で は仕 事 を 出 す こ と は な い の で は ? ・ そ ん な 時 は, 同じ メ ッ キ 屋 に 仕 事 を 出 す こ と にな る のか な 。 故 障 等 は お 互 い あ る か も し れ な い 。 ・ 同 じ よ う な 仕 事 で は, お 互 い に 仕 事 を 出 す こ と もあ る ので はな い だろ う か。 ○ お 互 い の町 工 場 に と って 利 益 に な る 取 引 の 関 係 は な い だろ う か。 ○ 東 大 阪 市 で は, ど の く ら い の 割 合 の工 場 が 仲 闇 取 引 を し て い る の か。(★ 資 料 よ り 調 査 ) ○ な ぜ , 同業 者 同士 か 仕事 を 発 注 し 合 っ て , 相 互 の 取 引 を し て い る の だ ろ う かo O 同 業 者 はラ イ バ ル 同士 な の に, な ぜ 外 注 を し 合 う の だろ う か。 自 分 が 町工 場 の 社長 に な っ た とし て , 同業 者 に 頼 ま な け れ ば な ら な い 事 態 を 想 像し て み よ う。 ・ 機 械 にト ラブ ル が あ っ た と き, 急 に 故 障 し た とき 。 ・ 大 量 に 注文 が き た と き ・ 急 な 注 文 を 受 けて , い くつ も仕 事 か 混 ん だ と き ・ 急 に( 機 械 を 使 え る)従業 員 か や め た と き … ○ 実 際 に, 仲 間取 引 に は ど の よ う な パ タ ー ン か あ る の だろ う か。 ( ★ 資料 よ り 調 べ る ) 11 10 12 13 ・ 「 も し メ ッ キ 屋 で も , 得 意 で な い 仕 事 が き た り, 機 械 の 調 子 が惡 か っ た り し た ら ど う す る だ ろ う。 」 厂メ ッキ に 限 ら ず 同じ よ う な 仕 事 な ら …」 な ど と 生 徒 の 意 見 に 疑 問 を 投 げ か け る 。 ・ 「 お 互 い に 仕 事 を 出 し 合 え ば, 互 い の も う け ( 利 益 ) に つ な が る だろ う。 」 と, 生 徒 の 意 見 を 土 台 に 外 注 のバ リエ ー シ ョ ンを 示 唆 す る。 ○ 主 に 同 業 者 同士 が 互 い に仕 事を 出 し 合 う( 外 注 し 合 う )こ と を,「 仲 間 取 引 」 ま た は 「 横 請 け( 横 う け )」 とい う 。 ○ 約 半 数 。 大 阪 府 全 体 の 工 場 の 調 査 で は, 仲 間取 引 を し て い る 工 場 の10 % は , 売 上 の30 % も 仲 間 取 引 に 頼 って い るこ と か分 か る。 ・ 文 章化 し て 仮 説 へ と 高 め る ○ 自 社 で で き る 仕 事 だ が , 納 期 か 短 すぎ た り大 量 の 注文 を受 け た 時 な ど は , い く ら か の 仕 事 を 仲 間 企 業 に外 注 す る。( ※手 数 料 を 取 ら な い 時 も あ る。 ) ○ 機 械( 設 備)が な い 等 で , 不 得 意 な 仕 事 を 請 け た と き, よ り 得 意 な 仲 間 に 外 注 す る。 得 意 な 仲 間 か い な い 場 合 , 仲 間 の持 つ 外 注先 に 得意 な工 場 が あ れ ば , そ こ に 仲 間を 通 し て 外 注 す る 。( ※ い ず れ も 暗黙 の ル ー ル で あ る。 )
@ 仲 間 取 引 の 利 点 を ま と めて み よう 。 14 ○ 機 械 にト ラ ブ ル か あ っ た と き, 同 業 者 に 頼 む 必 要 が あ る。 東 大 阪 市 の町 工 場 の 半 数 は, 自 社 で で き な い製 造 品 の量 と技 術 を 補う た め に仲 間 取 引 を し て い る 。 仲 間 取 引 と は, 緊 急 時 も 含 め, 得 意 先 か ら, 自社 で 製 造 で き な い 量 や, 自 社 で で き な い 技 術 を 含 ん だ加 工 を 受 注 し た 時 に, 製 造 能力 の あ る 仲 間企 業 へ互 い に外 注 し 合 う , 工 場 間 相 互 の取 引で あ る。 ○ 仲 間 取 引 の す ぐ れた 点 は, 目 に見 え る利 益 か 関 係 す る モ ノ と お 金 の取 引 だ け だろ う か。 ★ 次 時 へ 向 け, 資 料( 筆 者 の調 査 記 録) を 読 み, 考 えを 整 理 す る 。 可 能 な ら , 町工 場 の社 長 に 話 を 聞 い て く る 。 < 3 時 間 目 > ★ 前 時 の宿 題。 仲 間取 引 の, 他 長 所 を 発 表 す る。 ○ 仲 間 取 引 か 町工 場 の 強 みと い え る た め の, も う一 つ の 側 面 と は 何 だ ろ う 。 15 ※仮 説 を , 文 献 を も と に 検 証 し て い く 過 程 を ふ ん だ 。 し か し , こ れで は 仲 間 取 引 か , 利 益 を 少 し上 げ る一 手 段 と い う 理 解 し か 生 まな い 。 そ こ で , 詳 しい 資 料 を 読 ん だ り, 町工 場 の 経営 者 か ら 話 を 聞 くこ とで , 仲 間取 引 が もつ 重 要 な 側 面( 経 営 者 間 の情 報 交 換) を 検 証 す る 。 ・ グル ープ で の討 議 。 発 表。 ○ 製 造 技 術 , 設 備 機 械, 品質 や 価 格 等, モ ノ づ く り に関 わ る情 報 の交 換 。 ○ 職 人 の情 報 や業 界 の動 き( こ れ か ら 売 れ る 製 品 等) や 得 意 先 , 外 注 先 と い っ た 経 営 そ の も の に 関 わ る 情 報 の交 換。 仲 間 取 引 の もう 一 つ の側 面 と は, 製 造 技 術 や業 界 の 動 き だ け で な く, 得 意 先 や 外 注先 , 職人 の 雇 用 な ど の 経 営 上 不 可 欠 な 情 報 交 換 で あ る 。 @ 以 上 か ら, 町 工 場 の す ぐ れ た とこ ろ を , 小 さい が ゆえ に知 恵 を し ぼ っ て 経 営 を 続 け て い るこ と に注 目 して , ま と め よ う。 東 大 阪 市 の町 工 場 の多 く は, 高い 技 術を 背 景 に多 品 種 少 量 生 産 を 行 い , 工 場 の集 積を 利 用 し て, 複 数 の 外 注 先 を 持 つ こ とで 小 規 模 経 営 な が ら も受 注 を 確 保 し て き た。 さ ら に, 仲 間 取 引 と い う , 企 業 間 の相 互 取 引 に よ り, 互 い の工 場 の 設 備 の 利 用 と経 営 上 重 要 な 情 報 を 交 換 す る こ とで , 経 営 を よ り 強 く し て い る。 ○ 町工 場 が 生 き続 け るた め の知 恵 って 何 だ ろ う。 … 東 大 阪 市 の 町工 場 の 強 みに つ い て , こ れ まで に 学 ん で き た こ と か ら 感 想 を 出 し て みよ う 。 ・ 人 工 衛 星 な ど 目 立 っ た 良 さ もあ る け ど, 多 く の工 場 は い ろ い ろ 知 恵 を し ぽ って い るこ と が 分 か っ た。 ・ 小 さ い 町工 場 は, 違 う 業 種 だ け で な く, 同業 者 と もつ な が っ て工 場 を 続 け て い く力 を , お 互 い に 強 く し て い る こ と か 分 か っ たo ・ 同 じ よ う な 者 ど う し, つ な が る こ と の大 切 さ を 分 か っ た 気 が す る。 と く に弱 い 者 の 場 合… 。 ○ 東 大 阪 市 の, 町 工 場 間 の 仲 間 取 引 の現 状 は ど う な っ て い る の だ ろ う か。 ・ 景 気 が悪 く な っ て い る の で , みん な 自分 の工 場 だ け で 精一 杯。 そ の た め , 仲 間 取 引 は少 な く な っ て き て い る の で は な い だ ろ う か 。 ・ 景 気 が悪 い と き こ そ, 助 け 合 って 盛 ん にし て い か な け れ ば な ら な い の で は な い だ ろ う か 。 ( ★ 資 料 よ り 調 べ る。 或 い は, 可 能 な ら 町 工 場 の 経営 者 に 話 を し て もら う 。 ) ○ 町工 場 は, 仲 間 取 引 を 続 け る 上 で ど のよ う な 対 策 と っ て い る の だ ろ う か 。 ○ 東 大 阪 市 の 仲 間 取 引 は , 今 後 どう な って い く の だろ う か。 町工 場 の 将 来 も含 めて 考 え よ う。 17 15 18 18 ○ 東 大 阪 市 の 町工 場 は,「 競 争 」 に よ っ て 製 造 技 術 ・ 効 率 を 高 める だ けで な く, 人 も機 械 設 備 も少 な い( 経 営 規模 か 小 さ い )が ゆ え に 自 工 場 で で き る 限界 を , 他 工 場 とつ な が って 匚共 存」 す る こ と で 乗 り 越 え て き た 。 中 小 企 業 を ト ップ 企 業 だ け で 評 価 す る の で は な く, 匚共 存 」 の視 点 か ら, 名 もな い 多 く の町 工 場 も積 極 的 な 評 価 の対 象 と す る こ と を 確 認 す る。 ○ 高井 田地 区 で は,9 人 以 下 の 町工 場900 社 余 り の約 半 数 が 仲 間 取 引 を して お り, 1997 年 と2003 年 の調 査 の 比率 は ほ ぼ 同 じ で あ る。 し か し , 近 年 の不 況 や安 い 外 国 製 品 の 流 入 によ る 過 度 な 価 格 競 争 等 の 悪 影 響 で ,「 信 頼 」 に よ っ て 成 立 つ 仲 間 同 士 の暗 黙 のル ー ル が一 部 で崩 れ始 め て い る 。 02008 年 秋 の金 融 危 機 以 降, 仲 間 に 仕 事 を 回 す 余 裕 の な い 町 工 場 も出 始 めて い る 。 最 低 限 の利 益 確 保 の た め, 外 注 は 減 少 傾 向。 < 相 互 取 引 の休 止 例 > ○ 仲 間 取 引 を す る 町 工 場 の う ち, 8 % が 仲 間 企 業 の 転 廃 業 な ど の影 響 で 受 注 が 減 っ た 等 の問 題 か 起き て お り, 31% が 今 後 の 発 生 に 不 安 を もっ て い る。 以 上 の , 現 在 の問 題 点 を 把 握 す る。 ○ 新 た な 仲 間 企 業 の 開拓 が 約半 数 と最 も多 く, 加工 の 内 製 化 ( 自 分 の工 場 で 加 工 す る) が そ れ に次 ぐ と い う 経 営 者 の 意 識 を 知 る 。 ※ 仲 間 取 引 の今 後 を 考 え る と 同 時 に, 町工 場 自 体 の こ れ か らの 存 立 も, 合 わ せ て 考 え て い く た め の問 い と す る。 資 料 1 中小 企 業 庁 『 中小 企業 白 書 』2004 2 朝 日 新 聞2009 年 1月24 日 号( 大 阪 版 ) 夕 刊 第 1面 3 中小 企 業 庁 「 勤労 意 識 実 態 調 査」1996 4 名 古 屋 市 市 民 経 済 局生 活 流 通 部 勤 労 福 祉 室 「 モ ノづ く り 産業 に お け る 勤 労 者 意 識 調 査 」2007 5 経 済 産 業 省 『 工 業 統 計 』2005 6 経 済 産 業 省 『2003 年 度 版 製 造 基 盤 白 書 』2004,pp.98-107 7 大 阪 中 小 企 業 情 報 セ ン タ ー 「 東 大 阪 市 に お け る 中小 企 業 の 集 積 と 企 業 間 ネ ット ワ ー ク の変 貌 」1996,p.8 8 東 大 阪 市 経 済 部 『 東 大 阪 市 内 全 事 業 所 実 態 調 査 』 2000,p.20 9 10 11 12 13 14 15 16 48 イ ンタ ー ネ ッ ト上 の “ ネ ジ ” 関連 用 語 を 使 っ た 検 索 に よ る. [引 用 文 献 お よ び 出典 資 料]17 Cp.43) [引 用 文 献 およ び 出典 資 料]21 (p.9l) 22(p.8) [引 用 文 献 およ び 出典 資 料]27 [引 用 文 献 お よ び 出典 資 料]24(pp.l20-122) 額 田 春 華 「 大 田 区 工 場 群 に よ る 『 柔 軟 な 連 結 』 の連 続 的 プ ロ セ ス」 『 国 際分 業 パ タ ー ン と 企 業 間 連 携 』 中 小 企 業 総 合 研 究 機 構, 2005,p.7 本 稿p.4 参 照 [引 用 文 献 お よ び 出典 資 料] 30(p.10)