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韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析 : 文教区・下町・農村部の小学生を対象にした,学力到達テスト及び生活実態調査を通して

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(1)Title. 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析 : 文教区・下町・農村 部の小学生を対象にした,学力到達テスト及び生活実態調査を通して. Author(s). 宋, 美蘭; 三上, 勝夫. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 55(1): 1-16. Issue Date. 2004-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/334. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第55巻 第1号. 平成16年9月. JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.55,No.1. September,2004. 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. ∼文教区・下町・農村部の小学生を対象にした,学力到達テスト及び生活実態調査を通して∼. 宋 美蘭・三上 勝夫 (北海道教育大学札幌枚 教育方法学研究室). AnalysISOfMathematicpro茄ciencyinKoreanElementaryschooIs −Comparingchildrenfromafnuent,innercityandruralareas. throughachievementtestsandquestionnaires岬. SONGMiran MIKAMIKatsuo. DepartmentofEducation,SapporoCampus,. HokkaidoUniversityofEducation. はじめに. 韓国では,「第7次教育課程=新教育課程(2000年3月)」の改訂により導入された,「水準別教育課程1)」 をめぐり,大きな論議が起きている.. 「水準別教育」とは,多様な学力水準をもった一人ひとりの子どもに対する教育を,個人によって異なる. 水準で提僕する,10年間の「国民共通基本教育課程」=「段階塑」「深化・補充塑」水準別の教育課程であり, 今回の新教育課程の目玉であるとされる.. これらを取り入れた趣旨は,子どもたち一人ひとりの学習現状を踏まえて,画一的に知識を教え込むこと. になりがちであった従来の教育を改めると同時に,これまでの教育の基調を転換し,「基礎・基本」を確実 に身につけさせ,個々人に応じた水準別教育を重視することとしたというものである.. しかし,これには,学力格差の構造的な問題と教育における不平等的な問題が多く含まれているという全 教組などによる批判がでている.このように,新教育改革路線の立案の側と教育実践(特に最大の批判グルー プであり,今の新教育課程を憂慮している全教組)の側との,対立的な論議があるにもかかわらず,学校現. 場では既にこ甲方針が実行されている.この論議は韓国において国民的関心事に広まっている・さらに,水. 準別教育運営にかかわる現実的な問題点として,①「水準別学習の指導体制の工夫」,②「水準別少人数授業」, ③「水準別教育理解度に応じた教材開発」,④「教員配置,教室確保」,⑤「財政負担の問題」などが浮上し ている.. したがって,本研究では,新教育課程の水準別教育が導入され4年が経過している現時点において,小学 校段階から適用される「数学」の「段階型水準別教育2)」下で学習する子どもたちの学力の実態を把握する. 1.

(3) 宋 美蘭・三上 勝夫. ことである.新教育課程が掲げる「個に応じた教育を通してすべての子どもに基礎・基本の定着を3)」とい うスローガンが,果たして,各学校において実現可能なのであろうか.. 本研究はこうした状況下にある韓国の三つの初等学校について,数学(韓国では初等学校においても「数 学」と呼称する)の学力の実態を調査しようとするものである.. 1.第7次教育課程の「水準別教育」をめぐる学力論争. 韓国の第7次教育課程の改訂をめぐっては,教育関係者(教育政策立案者,教育実践者,教育需要者であ る生徒や親を含む)問に深い不信感が存在している. その論点をみると,新教育課程を批判祝している教育実践の側は,新教育課程の水準別教育こそ下位圏の 生徒と上位圏の生徒の間の学力格差を増大させるとともに,下位圏の生徒の学習動機と意欲を減退させるな どの否定的な影響力があると見ているのに対して,教育政策立案の側は個別化教育をすることによって学業 成就が向上し,それが学力低下の解決の道であると主張している. 二者間の主要な論点をまとめると以下のように示される.. 1・1 新教育課程の批判側. 韓国の「第7 式は学年が上がるほど,上・下位の生徒たちの学力格差が大きくならざるをえない構造的な問題をもらてお り,それだけで『学業達成の増進効果もとるにたらず,情緒的な発達に及ぼす否定的な効果,不平等の再生. 産,全人教育に対する有害性,私教育費の増加の可能性』などのために,韓国教育開発院の教育課程の開発. 主導者たちの間でも否定的な見解が提起された4)」と述べている. また,現行の「第7r次教育課程」における無理な政策推進の導入を学力低下の問題に直接結びつける見方 も出されている.新教育課程の掲げる需要者中心,個別の能力の重視,生徒の選択を中心とした教育課程の 方針に対して,むしろ「勉強しなくなる生徒」が増えてくるという見方も出ている. 李ミンスクは,「第7次教育課程」における,個別化教育に基づく能力別班編成などの問題点を考察し,「個 別化教育に基づき成績という一元的な能力によって差等教育を行う水準別教育課程は,学業成就結果に否定. 的な影響をおよぼしている5)」とし,水準別教育課程が中下位圏生徒たちに劣等感・挫折感といった心理的 問題を呼び起こしていると述べている.. このように,「新教育課程」によって,学力格差は改善されるより,拡大するのではないかという論争が 新教育課程の批判側から提議されている.. 1・2 新教育改革路線の教育立案の側. これに対して,新教育改革路線の教育立案の側は,新教育課程の水準別教育における「個別化教育」は, 子ども一人ひとりの「学業成就」が向上するもので,これを学力低下の解決の道として認識し,今回の教育 課程をプラス志向としてとらえている.また,「最も良い教育は生徒の個人差が十分に考慮された教育であり,. 『個別化』は教育進度の程度においてももっとも重要な尺度となるため,生徒たちの潜在能力の発揮を伸ば. すために個人差を考慮した教育を行うべき6)」だという見解を示している.. 2.

(4) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. 2Ⅰ研究課題. 以上のような,第7次教育課程の水準別教育の導入・実施をめぐる,学力の論争を手がかりにし,二つの 研究課題を設定した.. 第1に,子どもたちの「数学」学力の水準はどのような形として表われているのかを,学業到達点の三つ の「平均正答率」(①「当該学年においての平均正答率」②「当該学年までの平均正答率」③「全設問平均. 正答率」7))によって把握する.これによって,調査対象とした3つの学校間に差があるかどうかを検討する. 第2に,子どもの「学習速進層」と「学習遅滞層」8)の状況を諸指標(学習に関する面と学習以外に関す る面)とクロスさせその実態を見る.とくに,両層の父親学歴及び母親学歴の構成比率を見,それを通して, 学力と階層間題ついて検討する.またこれを,学校間の学力の差の実態とクロスさせ,学力の格差を生み出 す要因について検討する. ボウルズは学歴の高い親をもつ子どもたちの成績は,学歴の低い親をもつ子どもよりもはるかに高く,親. の社会階層によって子どもの学業成績に大きな違いがあるとし,文化資本の相続によって階層の世代的再生 産(ブルデュー)が行われると指摘している.このように,階層研究の中で親の学歴の違いが子どもの学力 に与える影響が大きいという先行研究が多い9) ノ. 本研究においても,父学歴を学力差に直接的に関連していることを明らかにし,そういった家庭の文化的 環境の要因を媒介要因とみなして,学力差における階層差,地域との関連を探求する.. 3.研究の方法と対象 3・1 調査の方法. 具体的な調査内容は,(1)数学の学力テスト(129間),(2)生活実態調査(25間)(3)聞き取り調査である. (1)数学の学力テスト. 学力テストの枠組みについては,東京大学学校臨床給合教育研究センターが,2002年2月から3月にかけ て関東地方12都市の公立小学校,児童約7,000人(1年生から6年生の全学年)を対象に実施した学力到達 テスト(以下東大調査という)の算数の学力テスト問題に依拠した. 東大調査内容に依拠した理由については,第1に,韓国の初等学校で行う数学の領域内容,つまり,「計算」 「量と測定」,「図形」,「数量」関係の問題に日本の算数とほぼ変わりがないことである.第2に,全学年に わたる数学の学力を測定するテストの問題であることである.韓国の新教育課程の「段階型水準別教育」に おける授業の実施下において,このような特徴をもつ東大調査は各学年段階の状況を見るのに適当と思われ たからである.第3に,今回においては,東大調査分析と比較はしていないものの,今後,継続調査するこ とにより東大調査との比較が可能になるからである.. 数学の学力テスト129間(1年生から6年生にいたるまでの各学年に相当する問題)を実施した結果,三 つの平均正答率(①「当該学年においての平均正答率」②「当該学年までの平均正答率」③「全設問平均正. 答率」)を得た.. (2)子どもたちの生活実態調査 次に,「生活実態調査=アンケート調査」を実施した.これは,今回の数学の学力テストを受けた全員に行っ. たものである.子どもたちの数学の学力を規定する要因と関連があると思われる項目について質問した. ①学習面では,「通塾率」や学校以外,家での「学習時間と学習頻度」等の項目,②生活面では,「家でテ. 3.

(5) 宋 美蘭・三上 勝夫. レビの視聴時間」,「コンピュータゲームをする時間」,「友達と外で遊ぶ時間」といった質問項目を入れて行っ た.あわせて,③教師の学習指導(授業内容・方法)についての子どもの印象も質問している.しかし,こ れと子どもたちの学力との関連についての分析は,まだ行っておらず今後の課題とする.さらに,④子ども. の学力と階層的要因の相関を検討するため,質問項目では,「お父さんは大学(4年制,2年制,非大卒)を 出ている」「お母さんは大学(4年制,2年制,非大卒)を出ている」かについて聞いた.. (3)聞き取り調査. 聞き取り調査については,A,B,C初等学校の枚長先生及び教師に対するものである.調査内容は, 学校の「周辺環境」と児童の住んでいる「住居の様子」,「親の職業」と子どもたちの「通塾率」,「教職員の 実態」,第7次教育課程,特に水準別教育課程の「深化・補充」に関連しているものを中心に行っている.. 3・2 調査対象 調査対象は,学校を巡る周辺地域環境および家庭環境において文化的・琴済的な差異がある三つの初等学. 校(匿名性を保護するために,学校名をA,B,C小学校とする)を選んだ.ソウルの文教区に位置してい るA小学校は1学年3学級,2学年3学級,3学年4学級,4学年4学級,5学年3学級,6学年4学級, 計21学級(680人)である.そして,ソウルの下町に位置しているB/ト学校学校については1学年∼6学年の それぞれ1学級ずつ計6学級(191人)である.農村部に位置しているC小学校は,1学年∼6学年のそれぞ. れ1学級ずつ計6学級(149人),結果として3校,33学級,1学年から6学年の子どもを母集団としたもの である.三つの小学校を合わせて子どもたちの人数は1,024人(欠損4人)である.. 調査対象校の具体的な特徴については,以下のとおりである.. (1)調査対象校の特徴. ソウル市内にある,A初等学校の場合,ソウル南部の江南(韓国では,新興住宅街で中産層と富裕層の多い. いわゆる,高級住宅地のイメージが強い)地区にあたる瑞草区(ソテョグ)(人口39万)に位置している学校 である.学校の周辺には高層アパートが立ち並び,教育環境としては最適である所に位置している. ソウル市には25の自治区があるが,その中で「江南」と呼ばれる江南区・瑞草区の2区と非江南地区との 格差が日増しに拡大しているとの指摘がある. 聞き取り調査によるが,A初等学校の場合,学校の存立する,その地域の住居環境を見れば,富裕層は, 高層マンションに,中産層の子どもは普通のマンション,そして政府の補助を受ける賃貸マンションに住む 低階層の三種類に分かれる.親の階層は,中産層がほとんどで,全校生徒の10%程度は片親・母子家庭・貧. 困家庭である.単身父,母子家庭の生徒が1クラスに2,3名はいる.親の職業構成では,研究職,専門職, 会社員,自営業,日当職がある.従って,親の学力構成においても,全体的に高い. そして,B初等学校は,ソウル心臓部にあたる中心地区,鍾路(チョンノ)に位置している学校である. その学校の地域社会の特徴として,①地域的には,地下鉄の大衆交通の中心にあり,主要幹線道路に隣接し ているため,交通は便利とはいえ,学校周辺にはありとあらゆる貨物運送,宅配関係の会社が密集しており, 通学路が複雑である.②学校の周辺には,小規模の零細企業,必需品の小売業,露店などが多く,生活の水 準が低いとされる.③子どもの住宅環境は悪く,子どもたちの遊ぶ空間はほとんどない状態である.特に, 欠損家庭(母親のいない家庭)が多い.親の職業構成については,家内工業に従事している親と,日当職の労 働者が多い.いっぼう,親の学歴が大卒というケースは,1クラス(35人)につき,4,5人とどまっている. C初等学校は,息清南道のある邑・面地域(邑は市と村の中間的な行政区域で,日本の町に相当する.面. 4.

(6) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. は日本の村に相当する.)に所在する学校である.ソウルから約160キロほど離れている.学校の所在する面 の現在の全体世帯数は,1,607戸,そのうち農業に従事している世帯は,1,269戸,全体の78・5%,人口は5,434 名である.そこには初等学校が2校,中等学校が1校,高等学校が1枚あり,就学率は初等学校が100%, 中学校が98%,高等学校は95%となっている.実際,親の職業構成では,農業と畜産業を営んでいる家庭が 多い.なお,親の学歴が大卒の場合は少ない.. 以上の三つの初等学校は以上に示した地域の特徴を持っている.. (2)調査対象校を選んだ理由. A初等学校,B初等学校,C初等学校を調査対象にした理由は,上記のように明らかに異なると思われる. 地域差が生じているからである.さらに,大都市と農村では,学校を巡る周辺地域環境,家庭環境の文化的・ 経済的の諸要因が,数学の学力として表われるのではないかと考えたからである.もし,テストの結果にお いて3校に差異が見られるとすれば,地域・家庭の文化環境や教育への意識の差がこれに反映しているとい う仮設が支持されるといえる.. (3)調査実施. 調査の実施は2003年に実施した.学校別の実施日については,ソウルの学校に所在しているA初等学校 8月30日およびB初等学校は8月29日に施行し,農村地のC初等学校は,9月1日に行った.. 4」調査分析と結果. 4・1 第1の課題に対する分析・結果. 子どもたちの「数学」学力の水準はどのような形として表われているのかを,「数学」の学力テストの結 果に依拠し,三つの平均正答率の指標を用いて3校の学力状況及び学校間の学力格差を検討した・結果は以 下の通りである.. (1)「当該学年の平均正答率」と当該学年以前と以後の平均正答率の学校別状況 表1学校別の「当該学年の平均正答率」と当該学年以前と以後の平均正答率 学年別正答率(%)各学年別に1年生項目∼6年生項目の正答率を示す. 5.

(7) 宋 美蘭・三上 勝夫 表1は,学校ごとに,当該学年においての平均正答率と当該学年の以前および以後の学年の平均正答率を. 学校ごとの学年別に示したものである.. 学校ごとの平均正答率をみると,いずれの学年においても,A初等学校の子どもがB初等学校,C初等 学校の子どもより平均正答率が高く示されている.また,学校間の差については,A初等学校とB初等学校 間の差が見られていることが明らかとなり,特に,A初等学校とC初等学校間の差が顕著に現れた.なお,. B初等学校とC初等学校間の差も見られている.学校間め学力の差は高学年で特に目立っている.. (2)「当該学年までの平均正答率」の学校別状況. 表2は,各学年ごと学校別の当該学年までの正答率を示したものである. 「当該学年までの平均正答率」は「当該学年の平均正答率」より高く示されている.これは,以前の学年. で習った学習の内容の定着度を意味するものと解釈できる.学校別の平均正答率は,全体的にA初等学校が. B,C初等学校より高く示されている.また,統計の検定により,1年生では,「A初等学枚とB初等学校」, 「A初等学校とC初等学校」との問で有意な差が見られた.高学年では,5年生で,「A初等学校とC初等 学校」との差が現れ,6年生についても,「A初等学校とC初等学校」間の有意な差が見られる. 表2 学校別の「当該学年までの平均正答率」. 学年平均正答率. 学校別. 平均値. (%). 標準偏差. 標準誤差. 平均値の95%倍率区間 下 限. 1学年正答率 A小学校 71.43 B小学校 57.39. 最大値. 上一 限. 17.70. 1.76. 67.93. 74.92. 19.42. 3.61. 50.00. 64.78. 21.43 21.43. 7.14. 100.00. 92.86. e小学校 56.−46 20.06. 4.38. 47.33. 65.60. 合 計 66.65. 1.59. 63.52. 69.78. 17.95. 1.85. 68.69. 76.05. 20.59. 14.88. 2.55. 60.73. 71.11. 32.35. C々、学校 63.09 19.54. 4.37. 53.94. 72.24 20.59 88.24. 合 計 69.63. 1.46. 66.74. 72.53. 20.59. 100.00. 1.47. 70.8∂. 76「66. 23.40. 100.bo. 2年生正答率 A小学校 72.37 B小学校、 65.92. 19.48. 17.80. 3学年正答率 A/ト学校 73.75 16.80. 7.14. B小学校 68⊥22. 16.51. 2.96. 62.17. 74.28. C小学校 68.86. 12.55. 2.68. 63.29. 74.42. 合 計. 16.40. 1.21. 69・83. 74.62. 16.80. 1.52. 76.36. 82.38. B/ト学校 70.25. 17.33. 2.97. 64.2. C小学校 69.81. 15.09. 3.22. 63.12. 76.49. 38.57. 合 計 76.44. 17.16. 1.29. 73.91. 78.9白. 17.14. 72.22. 4学年正答率 A小学校 .79.37. 76.30. 5学年正答率 A小学校 72.23 B小学校 69.32 C小学校 61.36 合 計 69.66. 16.02. 1.52. 69.21. 75.24. 17.85. 3.21. 62.78. 75.87. 19.36. 3.37. 54.5. 68.23. 17.. 1.32. 67.06. 72.26. 6学年正答率 A小学校 77.91. 14.10. 21.28 23.4 21.28 17.14 27.14. 14.00 35.00. 12.00. 1.28. 75.38. 80.43. 29.46. 3.52. 61.88. 76.25. 26.36. C小学校. 3.68. 55.93. 70.95. 1.27. 71.44. 76.46. 63.44. 20.47. 17.29. 92.86 100.00 100.00. 91.18. 93. 85.11 100.00 100,00. 98.57 95.71 100.00. 97・00. 95.00 95.00 97. B」、学校 69.06 19.93 合 計 73.95. 6. 最小値. 26.36. 6.36. 97.67 97.67 95.35 97.67.

(8) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. (3)「全設問平均正答率」の学校別状況. 表3は,「全設問平均正答率」と「標準偏差」を学校別に示したものである.. ここでもやはり,A初等学校の子どもがB,C初等学校の子どもより高正答率を示している.学校間の格 差については,低学年(1年生,2年生,3年生)ではそれほど見られていないが,高学年(4年生,5年 生,6年生)において顕著に現れている.高学年の(4年生,5年生,6年生)学校間の格差をみるとA 初等学校とC初等学校間に特に目立つ.次いで,標準偏差をみると,学年進行にしたがって標準偏差(=ば らつき)が開いていることがわかる.また,当然の結果ともいえるがその標準偏差(ばらつき)は低学年よ りは高学年において顕著に表われているiこれは,「学習理解の早い子ども」と「学習の理解の遅い子ども」. との分化によるものである.つまり,学力における「二極分化」の現象であることを意味する.(ここで示 したのは,韓国全体の「平均正答率」と「標準偏差」そして,東大調査によって分析されたものである・東 大調査の結果を載せた理由は両国の比較の意味はないが,参考までに載せておいた.) 表3 「全設問平均正答率」の学校別 、全設問平均正答率の学校別比較. 1 年 生 標準偏差. 2 年 生 標準偏差. 3 年 生 標準偏差. A/ト学校. 韓国調査. 東大調査. B/ト学校. C、小学校. 14.6. 11.9. 12.9. 10.3. 9.2. 4.2. 4.4. 4.5. 3.9. 3.9. 23.9. 19.5. 20.4. 18.4. 17.3. 6.5. 5.4. 5.5. 4.6. 5.3. 35.5. 29.8. 29.9. 29.1. 30.1. 9.9. 7.9. 8.0. 臥1. 7.2. 4 年 生. 53.9. 45て8. 47.5. 42.1. 42.1. 標準偏差. 13.8. 12.6. 12.4. 12,8. 10.7. 5 年生. 64.9. 58.4. 6. 57.0. 50.1. 標準偏差. 15.8. 16二2. 15.4. 15.6. 16.5. 78.5. 74.0. 77.9. 69.1. 63.4. 15.6. 17.Z. 14.0. 19.6. 20.1. 6 年 生 標準偏差. (4)学習遅滞及び学習速進発生率の学校別状況. 表4は,「全設問平均正答率」を用いて学習速進と学習遅滞の両層を算出し,学校別と3校をあわせた(学 校全体)結果を示したものである.表を見る限り,いずれの学校においても,速進・遅滞ともに学年の進行 に伴い発生率が上昇していることがわかる.. 速進層(1年生から5年生まで)では,低学年(1,2,3年生)において,わずかな発生率を見せてい るがA初等学校のみ存在しており,B初等学校とC初等学校では存在していない.それに対して,高学年 の(4年生,5年生)においては3校ともに存在し,A初等学校,B初等学校の両校とC初等学校間の格 差が顕著に現れていることが見出された.一方,遅滞発生率(2年生から6年生まで)の状況をみると,声 校ともに低学年の「2年生」の時点で遅滞発生の傾向を示しているが,B初等学校とC初等学校の高学年に おいての遅滞発生率は高い比率が示されている.学力の分極化は低学年より高学年で進んでいることが読み 取られる.. 7.

(9) 宋 美蘭・三上 勝夫 泰4 学習速進および学習遅滞発生率の学校別 学. 年. 遅 速.率. (%). 韓国調. A小学校. B/ト学校. C/ト学′校. 1 年 生. 速 層 進. 4.0%. 5.9%. 0・.0%. 0.0%. 2 年 生. 速 層進. 1.4%. 2.1%. 0.0%. 0.0%. 遅滞 層. 0・1%. 8・%. 8.8%. 20.0%. 速 層 進. 2.2%. 3.1%. 0.0%. 0.0%. 遅 滞、層. 13.1%. 14.6%. 12.9%. 4.5%. 速 層 進. 15.2%. 17.7%. 5.9%. 13.6%. 遅 滞 層. 9.6%. 9.8%. 速 層 進. 16.6%. 遅 滞 層. 遅 滞 層. 3 年 生. 4 年 生. 5 年 生. 6 年 生. 11.由% ■. 4.5%. 1.9%. 19.4%. 6.1%. 25.7%. 19.8%. 29.0%. 42.4%. 17.8%. 9.0%. 31.3%. 38.7%. (5)ま と め. 以上,表(1)∼(4)についてまとめると以下の点が指摘できる. 第1は,三つの平均正答率すべてにおいて,A初等学校の子どもが,他のB,C初等学校の両校の子ど もより高正答率を示していた.そして,学校間の正答率の開きは低学年から現れ始め,学年が上昇するにし. たがって拡大傾向を示していた.特に,学校間の格差は,A初等学校の子どもとB初等学校の子どもの間 でも開きが見られているが,特に,A初等学校の子どもとC初等学校の子どもとの問に顕著に現れ,それは, いずれの学年においても共通した結果がうかがえることである.第2は,①学校ごとの学力の格差は,「学 習理解の早い子ども」と「学習理解の遅い子ども」の正答率の意味のある差によって生じたことが統計の検 定によって明らかになった.②「学習遅滞」と「学習速進」の指標を用いて検討した結果については低学年 は別として高学年では,B初等学校やC初等学校の子どもよりA初等学校の子どもの方において学習速進者. が多く存在し,それに対して遅滞層はB初等学校とC初等学校の子どもにおいて多発生率を示し学枚間の差 が顕著に現れていることであった.. 4・2 第2の課題に対する分析・結果 二極分化された,「学習速進層」と「学習遅滞層」の要因分析を子どものアンケート調査に依拠して行った. 結果は以下のように示される.. (1)学習面における速進層及び遅滞層との比較. 一. 1)通塾状況 図1では,「通塾状況」と学習速進層及び学習遅滞層の状況を示したものである. 図をみると,速進層では,塾に通っていない子ども(35.5%)より塾に通っている子どもの方(64.5%). 8.

(10) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. に多く含まれていることがわかる.それに対して,遅滞層では,塾に通っていない(59.9%)子どもの半 数以上占められている.この図を見ると通塾の影響が伺える.. 遅滞層. 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. 100%. 図1 速進層と遅滞層の通塾率(%). 2)家での「学習頻度」の状況 図2では,家での「学習頻度」と学習速進層及び学習遅滞層の状況を示したものである.. 図を見る限り,学習頻度数が多いほど学習速進層に属していることが伺える.速進層58.2%が「毎日勉 強する」と答えた子どもである.. 学習頻度. 殆毎日勉強する 週に4∼5日 週に2∼3日. 殆しない. 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 図2 速進層と遅滞層の学習頻度(%). 3)家での「学習時間」の状況 図3では,家での「学習時間」と学習速進層及び学習遅滞層の状況を示したものである.. ここでも,やはり,学習時間が長いほど速進層に多く含まれていることがわかる.学習速進層の子ども. においては,親の学歴が大卒か非大卒かは別にして,努力を媒介としながら学力が形成されている仕組み になっている.. 9.

(11) 宋 美蘭・三上 勝夫 学習時聞. 1時間以上. 1時間まで. 30分まで. 15分まで. 殆しない. 0%. 10%. 20%. 30%. 40%. 50%. 60%. 図3 速進層と遅滞層の学習時問(%). (2)学習以外の(生活面)における速進層及び遅滞層との比較. 図4では,学習以外の状況を示したものである.①友達と外遊びをする時間②家でのコンピュータゲーム をする時間③テレビを見る時間の学習速進と学習遅滞の状況を示したものである.. 子ども達の生活面と学力の相関をみると,遅滞層の子どもの方が学習時間以外の生活時間に多く費やされ ていることがわかる.. 学習以外の生活時間 (単位%). 0. 20. 40. 60. 80. 100. 国殆、ない 田15分から30分まで 固1時間まで 田1時間以上 図4 速進層と遅滞層の学習以外の生活時間(%). (3)「父・母親学歴=階層」構成比率の速進層及び遅滞層との比較. 図5と図6では,父母の学歴(階層)と学習速進層(平均層)学習遅滞層の構成比率を示したものである. 親の学歴と学力相関性については,特に,速進層に強く現れている.父大卒の場合の速進層に83%を占てい. 10.

(12) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. る.母親についても同様な傾向(74.6%)を占められる.なお,遅滞層については,父親にしても母親にし ても親の学歴とはそれほど相関性をもっていない. 1)「父親学歴」構成比率. 速進層. 平均層. 遅滞層 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. 100%. 図5 遅滞層・(平均層)・速進層の父親学歴(%). 2)「母親学歴」構成比率. 速進層. 平均層. 遅滞層 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. 100%. 図6 遅滞層・(平均層)・速進層の母親学歴(%). (4)階層別にみた学力(平均正答率)の状況. 1)階層別の平均正答率の状況. 表5では,「当該学年まで」の平均正答率を学年ごとの階層別に比較したものである.表をみると分か るようにいずれの学年においても父「大卒」の子どもが,父「非大卒」の子どもより平均正答率が高く示 されている.. 2)学習時間別による階層差. 表6は,学習時間別にみた階層間の正答率を示したものである.正答率の高低を問わず,両層ともに学 習時間が長ければ長いほど正答率が高い.しかし,学習時間が長くなるにつれ階層間の差については開く. 傾向が見える.つまり,父親が大卒の子どもは勉強時間の多少にかかわらず父親が大卒でない子どもの正 答率を上回っている.これは,階層に見られる学力の格差を意味するものである.. 11.

(13) 宋 美蘭・三上 勝夫. 表5 階層別の平均正答率. 1ヰ 生. 父非大卒. 父 大 卒. 2 年 生 3 年 生. 72.6. 62.1. 60. 50. 70.7. 69.3. 51. 22. 77.9. 70.0. 56. 1.5. 8.. 33. 81.6. 4−年 生. 10.5. 70.8. 10.8. 48. 5 年 生. 73. 67.3. 6.2. 46 6 年 生し\. 計. 合計人数. 79.5. 67.9. 90. 68. 76.0. 67.9. 426. 267. 11.6. 8.1. * 当該学年までの合計正答率. *()内は有効回答数 * 単位:正答率は%. 表6 学習時間別にみた平均正答率による階層差 学習時問. 父 学 歴. 15分まで. 30分まで. 1時間まで. 1時間以上. 全. 体. 父大卒(41). 7.5. 父非大卒(42). 67.2. 父大卒(80). 73.1. 父非大奉(62). 68.5. 父大卒(129). 77.0. 父非大卒(69). 70.9. 父大卒(1,13). 78.2. 父非大卒(30). 69.1. 父大卒(363). 75.2. 父非大卒(203). 68.9. * 当該学年までの合計正答率. *()内は有効回答数 * 単位:正答率は%. 正 答 率(%). 階 層. 5.3. 4.5. 6.1. 9.1. 6.3.

(14) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. (5)学習・学力における地域差・階層差の実態. 表7,8は,統計の結果による,A初等学校,B初等学校,C初等学校の父・母親の学歴を示したもので. ある.なお,聞き取り調査によれば,A初等学校の場合は,高学歴の親をもつ子どもが多く,「下町」のB 初等学校は,一クラスの35∼36名の中,親の学歴が大卒の場合は,わずか4,5人程度にとどまっている・「農 村部」のC小学校の場合は,「下町」のB小学校とあまり変わらない.家庭の階層差や地域差は子どもたち の学力差につながりやすい要因であることは明らかである. 表7 学校別の父親学歴状況 学. 校. (%). 無 回 答. 4・年生大学. 2年生大学. 非 大 卒. 合. 計. A/ト学一枚. 17.8. 46.3. 13.1. 22.8. 100.0. B小学校. 19.4. 19.4. 12.. 49.2. 100.0. C小学校. 30.9. 16.8. 50.3. 100.0. 2.0. 表8 学校別の母親学歴別 学. 校. (%). 無 回 答. 4年生大学. 2年生大学. 非 大 卒. 計. A小学校. 17.4. 52.2. 14.4. 16・0. 100.0. B/ト学校. 19.9. 23.0. 13.1. 44.0. 100.0. C小学校. 28.2. 18l. 4.0. 49.7. 100.0. (6)ま と め. 第1に,学習面の状況において,速進層が遅滞層より「通塾率」において高く占められていた・また,家 での「学習の頻度」(多い)や「学習時間」においても遅滞層より速進層に長いということが明らかになった・. それに対して,学習以外の生活面においては,遅滞層が速進層より,友達と遊ぶ時間が長く,テレビやゲー ムをする時間に多く費やしていることであった.. 第2に,子どもの学力と階層間題(父親学歴)との関連では,速進層では,父「大卒」の場合が83%を示し,. 一方,遅滞層では,父「大卒」と父「非大卒」の占める割合は半々で示されていた・・また,母親学歴につい ても同様な傾向を示されていた.すなわち,学習遅滞層については,父・母親の「学歴」とはそれほどかか わりがないにしても,学習速進層については,階層と密接な関係を持っていることが見られる・. 第3に,学校間の実態を検討したところ,次のようなことが明らかになった.都市部・下町のB初等学校, 農村部のC初等学校の子どもたちが,都市部・文教区のA初等学校の子どもたちより相対的に低学力である 直接的な理由として,家庭での学習頻度・時間が短いこと,特に,C初等学校の子どもたちがA初等学校の 子どもたちより相対的に低学力である直接的な理由として,通塾率が低いことが存在していることが指摘で きる.しかし,A初等学校とB初等学校においてはほぼ同じ通塾率を示していたにもかかわらず両校におい て学力の格差が生じていた.これは一概に言えないにしても今回のデータを見る限りでは地域的・家庭の文 化的な差異によるものであると推測できる.. 5.本研究の意義と今後の課題 5・1本研究の意義 第1に,今回の調査を通じて,現在進行中の「段階型水準別教育」という重要な特徴をもつ,「第7次教. 13.

(15) 宋 美蘭・三上 勝夫. 育課程」の下において,現時点での数学の「学力」の実態および子どもたちの現況を知ったことである. 第2に,数学の学力に地域的,文化的な差異が見られたことである.調査対象となった,都市部「文教区」 のA初等学校,都市部「下町」のB初等学校,「農村部」のC初等学校の3校において,考察の結果,確か にその差異が見られ,地域・家庭の文化環境(特に父学歴)の要因がおそらく,これに反映していることが 挙げられる. 第3に,今回の調査を通じて,数学の学力及びそれを規定する要因についての今後の比較調査のベースを つくったということである.今後,何年かおきに同一の調査を継続することにより,今回の研究と比較可能 になったことである.同時に,今回の韓国で調査した問題は東京大学学校臨床総合教育研究センターが調査. した学力到達テスト問題などに依拠したため,今後,韓国と日本との比較が可能になったことである.. 5・2 今後の課題. 第1に,学校ごとの教育の方針と運営,いわば数学に適用している「段階型水準別教育課程」の導入によ. り,「第7次教育課程」が目指す,個に応じた授業の展開がそれぞれ一人ひとり生徒の学業成就の向上に寄 与することができたかどうか.それが,実際に,その効果として教育現場で表れているのかどうかというこ との更なる究明が必要になってくることである. つまり,本研究で明らかになった学校差が学校の教育方針によるものか,単に,地域的・文化的差異によ るものかについて,持続した調査を積み重ねることで明らかにしたい. 第2に,課題として取り上げた子どもたちの数学の学力実態を家庭的な背嚢とのかかわりのなかでみたよ うに,子どもの学習においては,家庭環境の実態の把握を抜きにして語れないことである.その意味で,学. 校の存立する親・地域の持つ,学校・教育文化のありようを社会階層差によってどのような違いがみられる のか究明する必要がある.. 第3に,なお,地域的・文化的差については,さらにきめ細かい検討が必要である.つまり,子どもたち の学力格差を生じさせている一要因については一定の結果が得られてはいるが,学校差を生み出していると. 考えられる文化的・地域的な要素のメカニズムの解明については十分に検討ができなかった. しかし,地域的・文化的差を宿命的と考えてはならないと思う.したがって,教育方針の在り方によって は,この差を縮める可能性はないのか,このことがもっとも大きな課題といえるかもしれない.. したがらて,今後,今回の調査をより深く,学力格差を生み出している要因についての詳細な分析・検討 をし,次の展望を開くための位置付けを行ないたい.そのために,継続した研究によって,今回,本研究で, できなかった諸課題点を補うことによって,今後の展望を持ちたい.それが,本研究に含まれる今後の課題 であると同時に展望につながる.. 1)水準別の教育課程は,段階塑,深化・補充型,科目選択型の三つがある. 段階型水準別教育課程の適用科目及び適用学年:数学(1学年∼10学年),英語(7学年∼10学年) 深化・補充水準別教育課程の適用科目及び適用学年:国語(1学年∼10学年),社会及び科学(3学年∼1b学年),英語(3学 年∼6学年). 科目選択型の水準別教育課程:11学年∼12学年(現在の高校2年∼現在の高校3年) ※ 新教育課程では,10学年制の導入と国民教育の共通基本10科目が特徴として挙げられるが,初等1学年を1学年とし て高等学校1学年までを10学年に編成. 国民教育の共通基本10科目:数学,英語,社会,科学,国語(水準別教育課程),音楽,美術,体育,道徳,実科目 (非水準別教育課程). 14.

(16) 韓国の初等学校における「数学」の学力実態分析. 2)段階型水準別教育課程が適用されている数学教科では,1学年から10学年まで10段階を置き,さらに各段階毎に学期を単 位とする2つの下位段階を設定している.各段階の学習評価の基準に不合格し,進級できなかった生徒は,再履修すること になる.段階型水準別教育課程において,初等学校の場合は,クラス別編成はなく,学級内の集団編成を原則としている. また,進級のための評価課程はあるものの,段階型という概念から誤解を招きやすい,飛び級と留年制度は小学校段階で は設けられていない.. 段階型水準別教育課程における通常の授業では,ついていけない落ちこぼれのための対策の一環として,この制度が導入 されたため,落第は設けていないのである.. つまり,水準別(習熟度)授業とは,通常の授業では理解度が中間に位置する子どもを対象に行われるために,理解度の高 い子も低い子も意欲を失いがちになる.そこで勉強のできる子をさらに伸ばす一方で(韓国では,深化型)落ちこぼれを防ぐ ために(韓国では,補充型),一人ひとりの理解の程度に応じた授業として導入されたのである. 言い換えれば,段階型水準別教育は,当該学年の同一段階において,個々の能力に応じて探化・補充の学習指導が行われ るということである.. そういう意味において,第7次教育課准における段階型水準別教育課程(初等学校では数学のみ)は,段階塑であると同時 に,補充・深化の性格があるといえる. 初等学校において段階型水準別教育課程は,数学に限られている.水準別教育課程の運営・編成の目的について述べる. ① すべての子どもたちに基礎・基本学力を持てるように指導する. ② 子どもたちの能力・適正・必要・興味を生かし,個人差を尊重する. ③ 個々人の学習能力と適正に応じた教育内容を提示し,それぞれ異なった教育機会を与える. ④ 子どもたちの自己主導的な個別化学習を図る.. この課程は,充実な基礎・基本教育を通じて,当該段階における学習欠損を防止することによって,次段階への学習をサ ポートするためのものである.. ① 子どもの能力の個人差(学習速度)が生じやすい教科に通用されている. ② 学習内容の難易度によって段階が区分される. ③ 個々の学習能力に合った速度で段階的に学習される.. ④ 到達水準を決め,その水準までは誰でもきちんと学習するようになる. 段階型水準別教育課程における運営の実際 ① 段階型教育課程は学期を単位にして編成される.. ② 段階型教育課程は各下位段階において,深化。補充の授業運営ができるよう,教育内容が編成される. ③ 該当段階の学習目標の60%の成就範囲内で次上級段階への進級のための資格基準が設けられる.(60%以上は次上級 段階へ進級,60%未満は再履修) ④ 一つの学期が終われば,次段階への進級及び再履修のための評価が実施される. ⑤ 一定の水準に達しえなかった子どもが次学期に次上級段階への進級を願う場合は,・その学期が始まる前に再評価が実 施される.その再評価において一定の水準に達しえずに,次上級への進級を願う場合は,学期初めに1∼2ケ月にわた る,放課後のプログラムに参加させるが,ただし,次上級段階への進級希望よりは,再履修の方を願う子どもは特別プ ログラムに参加する必要はないとされる.. ⑥ 促進制の導入は,授業の進み具合が速く,競争にかりたてる可能性があるため,許されない. ⑦ 水準別の班編成はせず,学級内の集団編成を原則とするが,学級の特性によって多様な方法を適用する. 3)教育部告示199仁15号「第7次教育課程総論」. 4)『日韓教育フォーラム』8,9号 2001,3 全教組「第7次教育課程を撤回させよう」. 5)李ミンスク 2002,3「教室一授業と教育不平等」『教育批評』第7号 6)韓国教育人的資源部 ホームページー『第7次教育課程』http://www.moe.go.kr/ 7)平均正答率. ① 「当該学年における」の平均的正答率(算数Ⅰと算数Ⅱを足したもの). =自分の学年の該当する問題だけの正答率.つまり,当該学年における給合的正答率である. ② 「当該学年まで」の平均的正答率. =自分の学年より以前の学年で学習した問題までと当該学年までの総合的正答率(1年生は1年生の問題,4年生は, 1年生の問題から4年生の問題まで,6年生はすべての問題)である.. 15.

(17) 宋 芙蘭・三上 勝夫 ③ 「全設問」平均正答率. =配列された同じ問題(1年生∼6年生までの『129間』に対する全設問)を,すべての子どもが解けるところまで解 答してもらい,それを算出したものである. 8)「遅滞」と「速進」の定義. 両者の「定義」づけについては,『東大報告書』により,同一の「定義」とする. 東大報告書によれば,「平均得点」が「『ある学年の児童が得た得点が,1学年上の児童の平均得点を上回ることがあった』. 場合を1学年速進した状態と見なす」とし,(=「学習の理解が早い子ども」).そして「『ある学年の児童が得た得点が1年 下の児童の平均点を下回ることがあった』場合を1年遅滞した状態とみなす」(=「学習の理解が遅い子ども」)と,定義づ けられている.. 学習遅滞及び学習速進を定める際に用いた指標は,「全設問」に対する「平均正答率」としたものである.. 9)s.ボウルズ,Hギンタス著;宇沢弘文訳1987『アメリカ資本主義と学校教育:教育改革と経済制度の矛盾』(岩波 現代選書123)岩波書店. (宗 美蘭 北海道大学大学院教育学研究科博士課程) (三上 勝夫 本学教授札幌校). 16.

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