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我が国家族の家風の特性と戦後の実態

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(1)Title. 我が国家族の家風の特性と戦後の実態. Author(s). 北村, 達. Citation. 北海道學藝大學紀要. 第一部, 10(2): 275-285. Issue Date. 1960-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/3734. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 第 10 巻. 第2号. 北海道学芸大学紀要 (第一部). 昭和35年2月. 我が国家族の家風の特性と戦後の実態 北. 村. 達. 北海道学芸大学旭川分校社会学研究室. T6ru K =AMURA ; The Character of the Fami ly Cus tom i n Japan and its ActuaI State after vvor . d vvar l l ,. は 1且 し が. 目. 次. き. 鰯凝議耀容 邑 2. 3 4. 農漁業家族. は. し. 力;. 商 工 業 家 族 サ ラ リー マ ン 家 族 自 由 業 家 族 ,. き. 我々は種々なる社会集団の中で生活 している場合 自己の欲求だけに動かされて奔放な行動を し , ているのでなく, 社会的に一般 化しているか, 或は是認 、されている通路即ち社会規範に従って行動 ) 家族も最小の社会集団ではあるが 最も基盤的な集団である故 している事は言うまでもない1 . , , 家族成員も数多くの家族規範 に従って行動している ・ .. 国家主義的政治体制下にあった戦前における家族の社会規範と しては 家父長制維持の家族法 , , 権威, 恭順の上下関係に貫かれた家 族道徳は特に家族成員の行動を強く縛りつけてきた その他個 . 々の家族において, 家族員の行動の理想型と して守るべき捉たる家訓 個々の家族に世代を通して , 伝えられてきた 独自な家風によって, 家族員の行動が規制されてきた . このように家族は無数の綱 の目を張っていたため 個々の 成員の独立して自由に意志 し行動する , 範囲は極 めて挟く, 出生から死亡までの一生を通して没個性的な行動を強 いられてきた訳である 。 従来の我が国の家族規範と しての特質は, フオーマルに固定化していた家族法 家族道徳は勿論重 , 要な意味をもっていたが, これらは当時の社会組織の基本と して拡大されていたと共に 国家主義 , 的社会体制を存続強化するものでもあった. 然るに家訓や家風はフオーマルな規範体系の下にあっ て, イ ンフオーマルに定型化 していたものであって 夫々の家族にとって極めて複雑な形をとって , 家族成員の行動を拘束してきた. 戦後は旧政治体制の崩壊, 民主々義的諸制度の流入, 個人主義思想の導入に従って, 社会規範の 拘束力も弱められたか, 民主的に組み替えられ た. 当然家族規範も変化してきている. 即ち家族員. を律する法律も各個人の行動を尊重する如く改正されたし, 家族道徳も 権威主義的道徳から民主々. 義的道徳へと移行した. 家族主義に貫かれたフオーマルな規範体系が崩壊 したがために, 家族は成員が自由奔放に振舞え る生活の場となったであろうか. 確かに成員の自由, 合理主義的態度と行動 強い自己主張の一面 , として, 家族成員間の緊張、 その結果離婚 家出 少年非行者の増大 によって家族解体化の現象も , , , -275-.

(3) . 村. 北. 達. 表われ ている. 然 し大多数の家族は破壊される事な しに存続している. それらの家族における規範 と して, 民主的な法律や道徳が最小限度の拘束となっている し, 更に夫々の家族に特有な生活慣習. が家族成員の日常的生活行動を規制している事も確かである。 その生活慣習が依然と し て 個 人 を 「家」 に埋没させる家族主義の色彩濃厚で, 規範的要求の強いものもあれ ば, 家族個人の欲求を満. たすだけの通路としてだけの意味をもつ拘束性の極めて弱いものもある. 何れにしても家族生活は 長期, 永続的な日常的 生活であるために, 古い生活慣習 であれ, 新しい生活慣習であれ, 家族成員 の行動のしきたりとして重要 な意義を有している. 本稿においては日本の家族における家族 主義的な生活慣習の特質, 種類を明らかにすると共に,. 構造 上, 制度上, 一応近 代化を辿っている戦後の家族に焦点をあて , 職業別, 類型別に家風固着 の実態 と特質とを明らかにしたい. 1. 日本家族の家風の特性と内容. 戦前の日本 家族は構造的には直系家族が優位を占め, この家族は無限に連続するもの と 考 え ら れ, 血統による者の世代的継続が要求され, 「家」 の存続発展が家族個人の幸福より重大であると 考えられていた. 家族全員に対しては家長が権力者としての地位に立ち, 親子, 夫婦, 嫁姑間の人 間関係も権力を中心とする不平等な上下的関係に立ち, 凡て権威と恭順, 命令と服従の統制支配の 原理が支配していた. 叉川島教授は 「日本の家族は結合度の強い封鎖的な共同体と考えられていた ので, 家族員は個人の生活の場を殆ん ど持っておらず, 生活の全面に亘っての共同が存在し, 彼等 } は同じ感情, 思想をもち, 同じ様に行動する事が期待され要求される」 と言われる通り2 , 家族成 員の意識, 行動は 「家共同体」 の規制を受け, 没個性的 となっていた. 家族成員の行動のしきたりたる生活慣習も以上のような原理に基礎づけられたものであった. 日 本の家族生活が明治以降, 資本 主義的機構と欧化思想の下 で変化してきたとは言え, 根本において は伝統的な儒数道徳に貫かれていた. 家風の種類, 特質も夫々の家族において異質的, 独特なもの もあったけれ ども, 略々共通した内容をもっていた事は確かである. それらを一括して家風の種類 をあげれ ば, 次のように要約されるであろう. 1 ) 親子相互間の行動を規制せる生活慣習 ( ④ @. 子の立居振舞に対する親の干渉 (親の命令に対する子の絶対服従, 例えば親に対しロ答え しない, 感謝する事, 長, 次三男, 女子間の差別待遇等) 子の恋愛及び結婚に対する親の干渉 (異性間の男女交際, 恋愛禁止. 家相互間の釣合を考 慮した結婚, 仲人結婚の強制). 子の教育, 家業維承, 家産相続 (女子は義務教育,次三男のみ高等教育を受けさせる事.長 男による 家業維承と家産相続の強制, 扶養の強制等). ⑮. 2 ) 夫婦相互間の行動を規制する生活慣習 (. 妻の夫に対する仕え方 (夫の命令に対する妻の絶対服従, 丁重な言語, 態度, 妻の単独行. ④. 為禁止) ⑩ ⑭. 家事のやり方 (食事の仕方, 衣服の整理, 夫の家事不干与) 夫婦間の経済面 (夫の経済的実権掌握, 夫の購入決定権 等). (引 嫁姑相互間の行動を規制する生活慣習 ④. 嫁の姑に対する仕え方 (姑に対する嫁の従順 な言語, 態度, 姑の家事のやり方に嫁を馴致 す る 事 等). ◎. 嫁姑間の経済面 (姑の経済的実権掌握, 嫁を 「テマ」 と して酷使する事) 6- -27.

(4) . 我が国家族の家風の特性と戦後の実態. ⑳. 「家」 の継承, (嫁は子を, 特に男子を生む事, 姑による孫の教育等) ) 家族全員の行動を規制せる生活慣習 建 ④ 立居振舞 (神仏への礼拝, 言語, 態度) ◎ 食事, 入浴 (食事の仕方, 入浴の順序). 5 ) 戸主或は家長に固着せる生活慣習 { ④. 家長の席順, 専用室所有. ⑩ 経済的実権掌握, 労働差配 近隣, 親戚交際における代 表 以上述べた如く我が国における家風は極めて多岐に分れる. 家族成員は親子, 夫婦, 嫁姑間の接 ⑭. 触, 家長と家族員間の接触を通して行動してきたが, 接触の過程において夫々の家に世代的に受継 がれてきた家風と 言う通路を通って行動していた訳で, この通路を外れた行動をなす場合には, 帆 笑, 非難, 噂と言う形で制裁が加えられていたのである. 多岐に亘る家風の第一の特性としては, 家族内の権力者の地位を確固たるものと し, 権力者によ. って統制する家風を生み出していた事である. 即ち親子関係においては父 により, 夫婦関係におい. ては夫により, 嫁姑関係においては姑により, 家族全員に対しては, 戸主により統制する家風が大 きな意義を有していた。 統制的色彩の強い家風は家族員の日常的行動, 経済面に表われていた。 こ れらの家風により家族内の空間的統一が強く 保たれていたのである. 第二の特性と しては 「家」 の 連続維承を図るための家風であった. 嫁が子を生む道具的扱いを受けたり, 祖先崇拝の慣行, 男女 の差別待遇, 長男への特別の期待と尊重などがその表われである。 第三の特性としては 「家」 帰一. 的性格であった. 即ち家族個人が意志 し, 行動する領域は極めて挟く, 個々の 「家」 に伝えられて きた生活様式に全員が拘束されていた事である。 家族全員は善悪を問わず, 同じように感じ行動し なければならなかった. 嫁が実家の家事のやり方を捨て 無私となり, 婚家の家事のやり方に従う 事, 日常の立居振舞において全 員が一致した行動をとる事等がその例であった. 戦後10年以上も経過 した今日においては, これらの家風は相当払拭されているとも考 え ら れ る し, 或は数百年の伝統で培われてきた家風は簡単に消滅するとも思われない. これらを調査するた めに各職業別, 類型別に家族生活の実態調査を行なった。 その方法として3 3年,34年の両年度に亘 って学芸大学旭川分校の在校生及び夏季講習性の各家族及び近隣家族に就いて正確に日常生活を記 録させた。 叉上川支庁の士別市, 美深町, 美瑛町, 十勝支庁の帯広市, 十勝清水町の都市, 農村家 族に就いての事例調査を行った。 これらにより調査対象家族数は, 農業2 2 3 戸, 漁業6 2戸, 商業. 112戸, 工 業56戸, サ ラリ ← マ ン 192 戸 自 由 業 112 戸, 合 計 767 戸 に達 し た , .. 標本 抽 出が 有意 選. 出法によった めに, 調査戸数が職業別に偏した不備は免れないが, 一応戦後家族の家風の残存実 態と特性とを概観出来るだろう。 1 職業別にみたる家風の実態 職業は産業別分類, 国勢調査における分類等種々に分けられるけれ ども, ここでの考察は便宜上 単純化して農漁業の第一次産業に従事する家族, 商工業に従事 する家族, 会社事務, 公務に従事す. るサラリーマン家族, 医師, 僧侶, 弁護士, 教員, 技術者等, 専門的, 技術的職業 に従事する自由 業家族に分けて, 家風の実態と特質とを探ってみよう. 前二者は主と して生産と消費との場が近接 している生産的家族であり, 後二者は生産と消 費の場が分離している消費的家族である。 1 農 漁 業 家 族. 85戸のうち家族主義的な家風が全然 農漁業の第一次産業に従事する家族においては, 調査戸数2 77- 一2.

(5) . 北. 村. 達. みられない家族は僅か 6戸で, 殆ん ど凡ての家族が多かれ少かれ世代的に受け継がれてきた家風に よ っ て, 家族 成 員 の 行 動 が 拘 束 さ れ て い る と 言 っ て も よ い で あ ろ う. そ の 理 由 と し て, こ れ らの 家. 族は生産集団として, 職場と家族生活の場が近接し, 多数の家族成員を包含しながら常時面接的接 触をなしているために, 生活の全面に亘る統制, 指導が必要 とされるからである. 第二に代々家. 屋, 土地, 農具, 漁具等の生産手段が定礎され受維がれてきているので, これらを簡単に放棄出来 ず, 子供を通じて半強制的に継承させようとするからである. 第三に親夫婦, 子夫婦の同居を通じ て嫁姑関係を規制する家風が特徴的に固着しているからである. 第四に農漁村部落が戦後の進歩的. 思想の流入や, マス・コミュニケ←ションの影 響の下に, 個人の生活態度や行動面に大きな変化を 予想されながら意外に浸透度が低い事である. 即ち部落の閉鎖的な固い壁が都市とのコミ ュニケ-. ションを遮断しているか, マス・コミが部落社会へ一方交通的に流れ, これに対する批判も反応も ないので, 家族成員の意識, 行動も変らないからである. 第五に経済的貧困が封建的家風温存の基. 礎となっている. 経済的に貧困なるが故に子供の自由な芽を中途で摘んで終ったり, 家族員を無償 の労働力として酷使する事にもなるからである. 先ず家風のうちで普遍的に表われているのは権力者によって統制する家風である。 一家の家長と. して生産的労働, 消費生活全般に亘り, 権威的, 統制的地位にあって, 家族全員に命令 している者 2%であった. この場 合祖父や父は家族員 は, 夫婦家族では夫たろ父が81%, 直系家族では祖父が6 の毎日の労働の差配をし, 区分をする事, 生産物の売渡し, 肥料, 農具の購入は勿 論の事, 家計面 でも財 布の紐を握っていて, 日常必需品の購入決定権を掌握しているのである. 従って食費も小遣 いも入用の都度, 家長から貰わねばならないのである. 家庭内の振舞でも特別な待週が与えられて いる. 「食事は家長が帰宅してから行なう」 「入浴は必らず家長から先にする」 「家長の座席は部. 屋の中で最も良い場所があてられ, 冬季間はストーブの傍の最も暖かい場所である」 「近隣, 血緑 者との交際の代表者は家長である」 と言う如きである. 只家長に毎晩特別の副食物がついたり, 晩 酌する事例は意外に少なく, 夫婦家族では調査家族の9%, 直系家族で16%であった. これは経済 的貧困が原因であろう. 夫婦家族で消費的家計の実権のみ妻に移行しているのは19%である. 叉直系家族では消費面のみ 祖母に移行している比率は27%で, 子夫婦が凡ての面の実権を握っている家族は11%に過ぎない. 5才を過 ぎて足腰が不自由になったとか, 病気勝ちの場合で 子夫婦へ実権が移行するの は, 祖父が6. あって, 依然として 「自分の生きている限り実権を握る」 と言う頑冥な祖父が多い。 祖父が死亡 し た場合は原則的に生産面の実権は子たろ父へ, 家計の実権は祖母へ移行し, 所謂 「嫁」 に渡される のは2割程度であって, 嫁の座の低さを裏書きしている. 親子相互間の行動を規制する家風と しては 「家」 の連続継承を目指すものと して表われている場 合が多い. 即ち長男はあととりとして意識的或は半強制的に 「家」 継承者として運命づけられてい る. 「長男は健康でないに拘らず, 無理に家業を継がされた」 「長男はあととりであるから平生か. らしっかりしなければならない」 長男の座席は家長の次ぎ, 入浴も家長の次ぎにする」 と言うよう に, 未だに長男を他の子供達と区別して取扱っている. これは長男は 「家」 を守り, 「家」 の存続 発展者であり, 且つ親の将来の扶養を期待 している証拠である. 次に男尊女卑的傾向もみられる. 「女の子は将来結婚 して他家の人となるのであり, どうせ 「家」 にとって寄生的存在であるから, 義務教育で我慢 してもらう」 「女の子は不浄だから男子の後に入浴をする」 「女の子の一人での外. 出は禁止, 男女交際にも反対」 「家事労働は女だけがなすべき仕事である」 等と言うのが, 調査家 族の半数以上に家風と して残っていた.. 子供達全体に対して親として権力 を振っているのは子供達の 生産的労働面に就いてであるが, 親 8- -27.

(6) 我が国家族の家風の特性と戦後の実態. にとって好ま しい子供の型は 「文句を言わないで黙々として労働に専念する子」 である. 之に反し. て青年達ととしては 「労働に対する正当な報酬が欲しい, 休日も欲しい, 能率的に働らき, レクリ ェーションの機会を得たい」 と考えている. 調査結果では毎月子供達の労働に対して月給を支払っ ている事例は僅か2例のみで, その外は凡て 「無償の労働提供」 と して表われていた. 即ち親子関. 係は未だ保護と奉仕と言う非合理的関係で結を れている訳である。「春から秋まで懸命に働らけば, その働らきに応じて, 娘達には冬季間町の洋和裁学校に通わせてやる」 「娘時代よく働らけば, 結 婚の時に衣類, 家具を沢山持たせてやる」 男の子には 「町へ出かける時小遣銭を増してやる」 「分. 家の際に土地, 家屋, 農具を充分与える」 と言う如く, 労働に対する報酬は正当に評価されるので はなしに, 凡て恩恵として与えられているのである. 子供達の家庭内の日常的立居振舞に対しては 強制力が薄れている. 例えば朝夕の神仏の礼拝も, 家長, 祖父母は行なっているが, 子供達に強制 しようと していない し, 朝夕の挨拶も各家庭で自由に放任的である. 却って子供達の粗暴な態度, 行動は自由主義的な学校教育の影響で, 道徳教育の必要性を説いている親達が多かった.. 子供達の進学に対 しては親達は極めて消極的である. 「原則と して女の子と長男は義 務 教 育 の み, 次三男には高校教育或は大学教育を受けさせる」 と言う態度 で臨んでいる. 「女の子は何れ他 家に出ていく者であるから教育な ど不 必要であり, 叉農漁業に従事する長男に学問は不要である」. と考えている。 次三男の場合は無計画に, 目標もなく家業を手 伝わせている家族もあるけれども, 「分家をさせるにも土地もないから, 仕方なく高 等の教育を受 けさせて農業外の職業に 就 か せ よ. う」 と しているのである. 親のこのような態度, 行動は全く子供達に対する差別待遇であって, 強い進学意欲に燃えている子供達の芽を摘み取る結果になっている. 次に親が青年期にある男女の 自由恋愛を警戒し, 異性間の交渉を禁じている事例も多い。 子供達にくる手紙を開封 し, 日記を検 査する親達もいる. 従って未だ結婚は 「家」 と 「家」 との結婚, 親の意志による結婚と して行なわ れている事例が多い。 か る形で行なわれる結婚 では 「家」 の格, 「家」 の財産を考慮に入れた結. 婚となって表われるのである. 「豪農と貧農間, 上層と下層家族間の結婚はなされず, 略々同じ階 層間の結婚が普通とされる」 叉親が望む結婚の際の嫁の条件としては, 「嫁が過重の労働に 堪え得 るように体格の よい事」 「祖父母に文句を言わないように従順である事」 「嫁入道具を沢山持参す る事」 等であって, か る条件に合わない場合には農漁家の嫁として失格とされ, 部落の朝笑, 0枚以上の写真を 非難の的とされるのである. B村○部落では 「仲人専門の婆さんがいて, 常時10 C 整備し, 部落の青年達の結婚は凡て仲人を通して行なわれていた」 叉 部落では 「結婚の際嫁に2 馬車も 3馬車も荷物を持たせ, 持参調度品が多ければ多い程, 立派な嫁として評価される」 と言う ところの本人の能力を無視された結婚が行われていた. 農漁村部落では事実上男女のコミュニケ- ショ ンの場が, 月一回程度の青年会か或は青年学級であり, 他部落, 他町村間とのコミニケーショ ンも不可能であり, 結局親の取り決めか, 仲人結婚が優位性を占める事になるのである. か}る慣 習は僻村における程多い訳である。. 夫婦関係においては夫婦家族と直系家族の場合とで, 妻の地位も異なるが, 結婚の際の条件が貞 淑, 従順なる事を要求されるので, 家族の形態の如何に拘らず, 夫が権力を行使し得る 環 境 に あ る. 既に述 べた如く家計の実権が夫にある場合も比率的に高いし, 生産的労働も夫が独裁的で殆ん. ど妻と相 談 しようとしない. 実際に生産物の収入がどれだけあり, 肥料, 農具の購入代金が幾らで 2%に及んでい あり, 貯金, 借金は どの位あるのか解らない主婦も直系家族で68%, 夫婦家族で6. る. 即ち単に主要 な労働力と して酷使されている主婦が多い。 従って子供達の教育, 職業選択, 結 婚に際しても夫た ろ父の意見が優越する結果となっている. 最後に直系家族における嫁姑相互間の行動を規制している家風である. これは農漁村家族におい -- 【279.

(7) . 北. 村. 、達. て最も数多くみられた家風であった. 直系家族 型の農漁村家族では, 結婚は2人の男女の結合でな しに, 二つの家族共同体の結合とされていたからである. 森岡清美氏の指摘する如く, 嫁が結婚に. 際して期待されるのは, 「テマ」 (労働力) としての嫁であり, 家系を継承し労働力を担っていく ) あととりを生むものと しての嫁であり, 男姑に従順に忠実に仕える嫁であった3 . 従って か る期. 待に関連した家風が未だに残っている事は確か である. 即ち嫁は一人の労働力を確保して生産増に. 寄与させる事であるから, 「嫁は過重の労働に堪え得るように農家から迎え入れられる事を常に望 まれている」 「漸く成年に達した長男 であるが, 労働力を増すために早期に結婚を強い ら れ た」. 「秋に結婚すると結納金も高く, 嫁を一冬遊ばせて只飯を食 べさせなければならないので, 春に結 婚して直ちに働かせるように している」 「嫁は朝から晩まで幾ら懸命に働らいても当然の事と しか 考えられない」 「出産後一週間経過すれば田畑の労働に駆り立 てられる」 「嫁が新聞や雑誌を読ん でいると, そんな暇があったら繕ろいものでもやれ」 と言われる. 「嫁が学校参観日や婦人会等に 出る事を嫌われる」 等の事例は凡て嫁を 「テマ」 と考えているからである。 第二に累代的 「家」 を継承していくためのあととりを生まねばならない事, 特に男の子を生む事. を強く要求されている。 「嫁は子を生むまで籍を入れて貰われない」 「子が出来ないから離婚させ られた」 「女の子許り続けざまに生まれてきたので, 姑が若夫婦を別々の室に寝かせている」 等 は; 凡て嫁が男子の家系継承者を作る事を要求されている訳である.. 第三は嫁は鼻姑に従順であり, 婚家の家事のやり方に忠実でなければならない. 嫁は結婚によっ て従来の生家における家事のやり方を捨てて無私となり, 凡て婚家の家事のやり方に従って行動し. なければならないのである. 農漁村においては夫々の家族に特異な家事のやり方があるために極め て複雑である。 一般 に家庭内の仕事で重要部分は主婦が担当し, 下働らきは嫁が行なっているのが. 原則である。 即ち日用品の購入決定, 米檀の管理, 献立の決定, 衣服の仕立, 仏壇, 神棚の掃除等 は姑が行ない, 実際の調理, 洗濯, 衣服の修理, 部屋の掃除等は嫁が行なっている. 祖父母が財布 の紐を握っている現状では, 「嫁は自分の子の衣服は勿論, 文具品も買ってやれない. 子供に菓子 も与えられない」 「嫁が食事一切を切り廻しているが, 献立だけは姑の指示を仰ぐ」 「米櫨は姑が. 管理していて, 毎日食べる米の量を計って嫁に渡す」 事等である。 兎に角嫁は姑に恭順して絶対に 服従しなければならないので, 「嫁が家事に就いて口出しすると 「生意気な奴」 と言われるので文. 句を言わない」 「嫁の風呂と就寝 は何時も最 後である」 「嫁は食事の給仕をしながら, しかも早く 食 べ終らなければならないので, 常に丸呑みして食べている」 等は嫁としての人間性を否定してい るものである. その他, 「孫の教育は祖父母が行なう」 「訪問客の接待役は祖母 である」 「孫の出 産は実家で行なう. 出産の費用は実家で負担する」 「嫁が病気になると出費が嵩むので 実 家 へ 帰 す」 「里帰りの時には実家より土産物を持参し, 実家から新しい衣服を着用 して帰らね ば な ら な い」 等, 嫁の行動を規制している家風は極めて種々雑多である. このように嫁は重要な労働力であり, 家系の存続者を生み, 夏姑に忠実であり, 婚家の家風と一 体とならねばならないから, 嫁個人が自由に意志し行動する領域は極めて挟く 「家」 帰一的性格が. 濃厚である. 都市家族では老夫婦と若夫婦とが同居していても, 各々の生活領域を確保して, 家風 によって成員の行動を規制する事は漸次薄れてきているが, 農村家族では依然と して共同生活を通 じて凡ての面で一致 し合い, 個人的生活をもつ事を嫌われるのである. 家族全員の融合した生活即. ち家族成員が同じ感情, 思想, 行動をとらされる生活があっても, 個人生活は分化していないので J ある4 。 従って川島教授も指摘する如くに, 異分子たる嫁は婚 家の帰一的共同体の一員となるよう ) に 同 化 さ れ る 事 に な る の で あ る5 .. 家風として迷信に従う行動は科学的知識の浸透によって薄れ てきたが, 尚次のような事例がみら -280-.

(8) . 我が国家族の家風の特性と戦後の実態. れた. 「女の人が朝, 火をたきつける時は必らず手を清めてからにする」 「死者の命日には日常使 用の鍋, 釜, 茶碗, 皿の使用を禁じ,特別の器具を使用する」「朝,如何に多忙でも仏壇の掃除を済ま せてからでなければ部屋の掃除をさせない」「家族に病人が出た時は医者を呼を ないで, 先ず祈祷師. に祈って貰う事にする」 「嫁は土蔵の中に絶対に入れない」 等, 宗教的なものに結びつく迷信は, 漁業家族にも根強い. 一般に漁業では不慮による事故が多いので, 事故を避けるために宗数に頼ろ うとして信仰心が強いのである. 神仏に対する毎日の礼拝も農家より漁家の方が比較的に多い.. 以上が農漁村家族に残る家風であるが, 各職業のうちでも最も多種多様に残されているし, 慣習 が道徳的慣習にまで高められて, 強い禁止規定で臨んでいる場合もある. 2. 商 工 業 家 族. 8戸のうちで家族主義的家 調査対象の商工業家族は大企業化されない中小商工業家族 で, 調査17 3戸であって, 農漁業家族に次いで世 風が全然みられず, 近代的, 民主的な生活をしている家族は1 代的に受け継がれた家風が残存していた. 商工業家族も生産と消費とが同一家族 内で一体となって 行なわれている生産的家族である. 家風の第一の特徴としては, 「家」 の連続継承を図るための家風と して表われている. 即ち2代 3代と受け継がれてきた家業は更に子供を通じて連続させようとしている. そのため 「長男を家業. の後継ぎとするために上級学校進学を断念させた」「男の子のうち家業を継ぐ者は高等教育を受けさ せず, その外の者に大学教育を受けさせている」 「相続は均分相続 でなく, 家業継承者へ単独相続. させている」 「手職を要する製造業にあっては, 子供が厭がるに拘らず, 幼時より家業の見習いを 強制している」 と言う形で表われている. 親達は現在の家業を必らず子供を通じて継承させようと する意識を持っているし, 実際に実行も している. この事が成長期にある親子間の大きな葛藤の原. 因ともなっている. 親としては 「学業より家業を重視 し, 家業に高等の学問は不必要である」 と考 ええている. 従って家計の面から大学まで進学させる事が充分裕福な家庭でも, 家業継承者に対す. る進学には冷淡で, 子供の進学意欲が無斬に摘み取られている例も多い。 女の子の高等教育を受け させる事も概して阻害されている. 叉高等教育も家業に寄与 しない教育は嫌われて い る. 例 え ば 「子供が工科の大学, 或は文科系の大学を希望していても, 家業が商業であれば, 希望を断念させ て, 商科の大学へ強制的に進学させている」 如きである. 一般 に家業を継承しない次三男に対する 教育は, 本人の自由に任せる如く, 子供達による差別待遇は歴然と表われている. 次に現在の家業の隆盛は祖先の恩恵によるものと して, 祖先を大切にするために, 家長は欠かさ. ず毎朝夕神仏に礼拝する慣習がある. これは家業の隆盛は祖先代々粒々辛苦の結果であり, 祖先の 加護によるものと考えている. 即ち祖先を家族の生々発展の保障者と意識するところから, 祖先崇. 拝心が生み出されている. 「或る家族の長は日に数回, 外出先から帰る度毎に仏壇に向って礼拝し ていた」 然し一般に子供達は神仏の礼拝を していないし, 親と しても強く要求していないようであ る.. 第二に権力者によって統制する家風であるが, 家業に関する権力者は経営者自体である. 農漁業 家族の直系型にあっては, 実際に経営に参加していない祖父が一家の権力者と して位置づけられて. いる場合も多いが, 商工業者では例外もあるが, 大体経営者自身が実権を掌握 している. これは取 引が対外的であるために 実際に経営に参画している者でなければ迅速に仕事を処理出来ないから である. 父或は夫の権力の及ぶ領域が, 主として生産面である点に, 生産, 消費の全面に亘って権 力が振われる農業家族と異なる所である. 家業の面では 「取引上の誤り, 金銭上の間違いに対して は家族員を強く責め, 客の前でも叱り飛ばす」 「子供達が遊んで許りいて, 家業の手伝いを嫌う, -281-.

(9) . 北. 村. 達. もっと懸命に働らけ」 と言って, 自分達の若い時を回想して, 労働を押しつけようとしている如 く, 家業面では厳しい態度で臨んでいる. これは毎日の製造高, 取引高が直接生活を左右するから 真剣となるのだろう. 家業に従事している者が家族全員 であっても, 毎日の収支決算を行ない. 現 状を把握している者が父一人と言う事例が多く, 家業の実態が他の家族員に知らされて い な い 点. も, 父が家業の面での権力者である事を裏書きしている. 従業員を使用 している場合, 雇主との関 係は徒弟関係にあって, 労働基準法に定められた時間労働が守られている所は殆んどなく, そのた. め青少年労働者 は定時制高校へ通学の意欲があっても, 殆ん ど断念させられている. 叉会社組織で. 経営 している場合には同族的組織が多く, 或る事例では 「父が社長, 長男が副社長, 次男が専務, 三男が課長と言うように全く血縁の者によって占められている会社もあった」 この二つの事例を通 して言い得る事 は, 我が国家族の家族主義的秩序と組織が経営の面に明らかに延長されている点で あ る.. 然し家族の日常生活面における親子, 夫婦, 嫁姑関係は権威と恭順と言う権力関係によって貫か れていない点は注目される. その原因は父或は夫が家業の面で多忙なために, 家族成員の日常的行. 動面まで監視出来ないか, 面倒をみられないためである. 反面家族全員が平等民主的な立場で話 し 合い, 合意的な決定に基づいて行動 している訳でなく, 寧ろ子供達を放任していると言った方が当 を得ているだろう. 「仕事に追われて家族全員で共同の食卓を囲めない」 「家族全員の レクリェー ションの機会がない. 特に祭, 盆等他人が楽 しん でいる時に却って多忙である」 「親は子供達と一 緒に遊ぶ事は殆んどない」 と言う如きである. このように家族成員が夫々個別的行動をしているた. めに, 子供達の行動も放任的となり, 親子間の愛情が充分交流せず, 冷たい緊張関係を生んでいる 事例も多かった. 叉父や夫は主観的にも客観的にも, 経営の責任者であり, 実力者である事を認識 されているので, 「父或は夫は家庭における大将で, 家族員は部下である」 と言う意識をも ってい て, そのため彼に特別の副食物や晩酌がつく慣習は比率的に他の職業家族に比して高かった. 次に家長が迷信に従った行動をとり, これを家族員にも強制 している事例 は相当みられた. 「今. 日は仏滅で日が悪いから旅行しない」 「今日は茶柱が立ったから良い事がある」 「鉄瓶ややかんの 口は絶対に玄開の方に向けてはならない」 r塩水或は塩物を投げる時には, 塩よ海に帰れと 唱 え る」 「米をとぐ場合, 米が こぼれたら三粒だけ拾う事」 等である. これらの迷信的行動は商売繁盛 を願う家業の面より結果する現象である.. 以上述べてきた如く商工業 家族における家風の特色としては, 家族内の消費的, 日常的行動面に 表われているものは少なく, 家業に関連した家風が多かった. 消費的面で家族主義的色彩の濃い家 風がみられないからと言って, 真に民主的な家族が形成され, 新しい家庭慣習の下に家族員が行動 しているの でない事は前述した通りである. 3. サラ リ ー マ ン家 族. 92戸中, 封建的家風が全然みられないのが, 46戸, 24%であっ サラリーマン家族は調査家族 1 て, 各職業別家族のうち最も進歩的, 近代的生活が行なわれていると言えよう. その最も大きな原. 因は家庭における消費の場 と生産の場とが完全に分離し, 父或は夫が民主的機構の中で生活してい. るからである. 然し家族外で民主的な生活が行なわれていても, 家族内の生活が必らずしも民主的 に行われている訳でない. 即ち家族は感情の支配する場だからである. 従って家風として第一にあ. げられるのは, 家族員の日常的行動面に就いてであった. 調査対象が夫婦と子供よりなる単純構成 の夫婦家族が76%を占 めていたが, この家族では父の権威者と しての地位を肯定 し, 母や子が従属 させられている事例が数多くみられた. 即ち 「父の言う事には批判をせず, 口答えせずに絶対に従 82- -2.

(10) . 我が国家族の家風の特性と戦後の実態. ぅ」 「食事は父が帰宅してからにする」 「父が箸をつけてから家族の者が箸をとる」 「入浴は先づ 父が入ってからにする」 「父に毎晩特別食をつける」 「父は家事には一切干渉しないし, 手伝いも. し な い」 等の 事 例 は, 同 じ親 でも 母 と L ての地位は低いが, 父は家族内の一 段上位者にあって, 家. 族員を統制しているのだと言う意識が強いか らであろう.. 父は子の膜, 教育に対 しては仲々厳格である. 子の教育に熱意を持ち, 子供達の行動に干与する 事は望ましいが, 必要以上に干渉的な場合が多い. 「子の将来に大きな期待をかけ, 子の能力以上 に伸ばす事に懸命である」 「朝夕の神仏の礼拝, 挨拶, 立居振舞に対し, 必要以上に厳格である」 「青年期にある男女の手紙, 日記等の私物検査をして, 行動監視に神経質になっている」 「子の恋 愛を不潔と考えて禁止する. 男女の交際を禁ずる」 「子供が一人で映画へ行く事を禁ずる」 「娘が. 雑誌, 小説類を読む事を好まない」 等の事例である. これらの事は子供達は進歩的な考えを直ちに 実行に移そうとするに反 し, 親達は子供達の進歩的な考えを一応肯定し, 理解していても, 実行面 に は 消 極 的 で, 危 険視 し て い る と 言 う相 異 か ら 生ま れ て いる の であ る.. 「家」 の連続継承を図るための家風, 或は 「家」 帰一的家風は少ない. それは 「家業」 と 「家 事」 とが分離 しているからである. 子供達により進学の面で差別する事も殆ん どない. 只日常的に. 長男を他の子供達と分離して, 特別に尊重 している態度は種々観察された. 「長男の意見の みを採. り入れる」 「長男を常に父の代理者として, 近隣, 血縁の家族との交際の衝に当たらせる」 「入浴 の順序は父の次ぎは長男」 「長男の遊学には充分の送金をする」 等である. これらは長男は父母の. 老後を世話する者, 父母と同居する者と言う家族主義的意識の残存であるが, 現在の不安定な社会 保障の下では避けられない現象とも言えるであろう.. 夫婦関係においては妻の地位向上を目指し, その地位を尊重しようとする傾向に移り つ ある が, 尚 「夫が財布の紐を握っていて, 生計費を月数回に分割して支払う」 「毎日の消費物資の購入 を夫が指図する」 と言うのが28例, 「家庭内の仕事は一切妻や子の領域で, 夫は一切手伝わない」 2例あった. その外 「夫は妻の外出を好まない」 「食事の残り物, 余り物は妻が食べる」 等, のが4. 夫と妻との対等的地位は完全に確 保されていないのが現状である.. 老夫婦と若夫婦とが同居している直系家族においては, 嫁の行動を規制する家風が残 さ れ て い る. この点嫁姑問題は家族民主化最大の癌と言えよう. 「嫁は家族員の誰よりも早く起き, 遅く寝 る」 「女中のようによく働らかされる」 「姑が経済的実権を握っていて, 嫁は生計費を必要の都度 姑から貰う」 「姑の留守中 に使った金は全部書いておいて姑に報告する」 「嫁は姑と共に食前に神 5分, 仏壇に向って30分礼拝する」 等の事例は姑が依然として権力者と しての地位を占 棚に向って1. め, 姑の意志によって嫁の自由を拘束している訳である. 農家の場合も既に述べたように, 嫁は 「テマ」 として重労働を課せられ, 婚家の家事に忠実に奉仕しなければならないので, 嫁は低い地. 位に甘んじていた. 然し昼間, 嫁は主と して家族外の農事, 姑は家族内の労働と言うように分業が 行なわれているため, 姑の監視に曝されて精神的圧迫を受ける事 はなかった. これに反してサラリ. ーマン家族では嫁と姑とが一日中同居 しているので, 嫁の行動は常に姑の監視下にあって, 肉体的 な労働よりも 精神的苦痛の方が一層大きいのが特徴的である.. 以上述べた如くサラリーマン家族の夫婦家族では, 主として家族員の日常的行動面において封建. 的家風が残存しているし, 直系家族では嫁の行動を拘束する面で表われている. 4. 自 由 業 家 族. ここで言う自由業家族とは 「専門的, 技術的職業」 に従事する家族であるから, 前三者に比し最 も知識階級に属し, 知識や技術を授ける事 によって生計を立て いる家族である. 同 じく自由業家 -283-.

(11) . 北. 達. 村. 族でも, 医師, 弁護士, 僧侶等の家族と教員, 技術者の家族とでは, 家風が若干異なって表われて いる事が注目される. 比較的 生計も安定し, 親子, 夫婦間に相互的に愛情が交流し, 子の人格も尊 重されている点はサラリーマン家族に類似している. 従って封建的家風の全然認められない家族は. 2戸の中24戸, 22%に達し, 漸次民主化されっ 調査対象11. あ る.. 然し仔細に家族員の行動を調査してみると, 医師, 弁護士, 僧侶等は親達の家業を子供を通じて 受け継がせようとしている. そのための子供の教育に熱意を示しているが, 長男には特に大きな期. 待をかけ, 子供の意志に反して圧迫的となっている場合もある. 例えば 「子は父の職業は嫌いだ が, 無理に継がされた」 「子は自分の能力, 性格に適 した高等の教育を受けさせて貰えない」 等の 事例がみられた。 叉 「祖父の代から医者をやってきたが, 現在世帯主に子供がないので, 次男の子. を養子として, 家業を継がせた」「子供が女許りであるため, 女の子 一人に養子を迎 えて家業を継が せた」 等と言う事例は, 未だに 「家」 と「家産」継承の意識の強い事を裏書きしている証拠である. 子供達の日常的な立居振舞に対 しては, 父の多忙の故もあって一切母任せで, 寧ろ放任的な傾向. が強い. 只食事の面では 「父に晩酌と特別な副食物」 がつくので子供達の不満となっている. 入浴 の順序も父-男の子-母-女の子と言う男尊女卑的傾向がある. 家庭内の雑事も 一切母や女の子, 女中任せであって, 父や男の子は全然関与しない如く, 妻の座の低い家族もみられた.. 教師, 技術者の家族では子供達の適性に応 じて高い教育を受けさせようと しているし, 朕, 教育 面 で男女間の差別もみられなかった. これは親自身の高い教養と職業的な生活が原因であちう. 只 親達も新教育や社会の動きに就いて勉強もし, 読書もしているので, この面で親子間の葛藤がみら れる. その際親子間で人生観, 世界観が異なり, どちらかと言えば親達の考え方が保守的なため, 子供達の進歩的, 社会主義的な考えに反対して, 子供達を圧迫する傾向がある. 例えば 「子供達の. 考えはマルクス主義一辺倒で困る」 「学生運動は学 生本来の活動でないから反対である」 「女の子 の男女交際を警戒する」 「子供にくる手紙や私物を検査する」 「教科書以外の小説, 雑誌類の読書. を禁ずる」 事等である. 家庭の日常生活に秩序と規律は保たれているが, 秩序維持が どちらかと言. えば圧迫的, 官僚的であるのは, 親達が戦前, 戦時中官制的 な生活過程を経験し, 戦後民主的な生 活に切り換えられたが, 未だ過去の生活への憧れが強いからだろう. 「子供の勉強時間, 起床, 就. 床に対し尺子定規的である」 「神仏の礼拝, 朝夕の挨拶, 礼儀作法に対して厳格である」 「子供一 人の映画観覧を禁ずる」 等はその表われである. 直系家族の場合には未だ祖父母によって統制する家風が依然として残されている点は, 自由業家. 族共通にみられる現象である. 「祖父が経済の実権を握っ ている」 「祖母が朝夕家族全員が仏壇に 礼拝する事を強制する」 「祖母が孫の媛をする」 「食事は祖父が感謝の言葉を述 べてから家族員が 箸をとる」 「家族員が外出する時は必らず祖母の了承を得る事」 等である. 嫁姑間では 「姑は息子. を奪われたと言う嫉妬心が強く, 若夫婦が余り睦じくする事を好まない」「夫が妻に暴力的であれば 姑の機嫌がよい」 等で不和を醸している. 叉嫁姑間は食事, 掃除, 洗濯等の些細な家事のやり方 で 探める事が多いが, 和解は容易でない. これむ ま若い妻は新しい家 庭慣習の導入を図ろうとしている の に 対 し て, 祖 母 は 古 い 家 風 で 抑 え よ う と し て い る か らで あ る.. 要するに自由業家族では家業をもつ医師, 弁護士, 僧侶等の家族と教師, 技術者の家族とでは若 干異なり, 前者では 「家」 の連続継承に関連する家風が特徴的 であり, 後者では日常の立居振舞の 面での家風が残っている. 両者通じて直系家族では家事の面での家風が主たるものである. あ. と. が. き. 以 上述べてきた所により, 我が国家族の特質を究明すると共に, 戦後の家風の実態を各職業別家 -284-.

(12) . 我が国家族の家風の特性と戦後の実態. 族に就いて明らかにしてきた. 戦前における家族は欧化思想の影 響を受けながら, 尚根強い封建的 家族制度の下に, 家風は家族成員の凡ゆる面の行動を規制してきた. これらの家風は戦後の家族において払拭されて しまったものもあるけれ ど, 多くは世代的に受け. 継がれて家族員の 行動のしきたりとなっている事は, 調査の結果明らかである. それだけ家族の民 主化は他の社会集団に比して遅れているとも言える訳である. 例え意識の面で進歩的であろ う と. も, それに比例して行動面まで近代化していると言えない事を裏書きしている. 特に我が国家族の約半数を占めている農漁業家族において, 多種多様な封建的家風が残されてい る現状では全国的な家族の民主化, 近代化への道は遠い. 叉生産的家族, 直系家族に根強い家風が 残存している事は, 考察した如くであるが, 消費的家族, 夫婦家族においても古い家風が払拭され. ている家族は比率的に少ない. これは現在の日本家族の中核をなす者が, 中年層以上の戦前の生活 過程の経験者である事に大きな原因がある. 従って新しい生活慣習の下に真に民主的な家族が形成 され るま で に は, 相 当 な 時 を 籍 さ ね ば な ら な い で あ ろ う. ) 註1 2) 3) 4). 福武直, 日高六郎 : 「社会学」21 4頁, 川 島 武 宜 : 「結婚」86一87頁. 森 岡 清 美 ; 「嫁と姑の生態」(現代家族講座第 3巻所収)56一57頁. 北 村 達 : 「我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化」 (学大紀要第9巻第 1号所収). 88頁,. 5 ) 川 島 武 宜 : 「前掲書」98頁,. -285一.

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