小学校算数科における小数倍・分数倍を求める包含除についての測定の操作による意味づけ
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.2. 平 成 28 年 2 月 February, 2016. 小学校算数科における小数倍・分数倍を求める 包含除についての測定の操作による意味づけ 渡 会 陽 平 北海道教育大学札幌校数学教育学研究室. Defining the Meaning of Quotition for Estimating Quotients with Fractions by Operations of Measurement in Elementary School Mathematics WATARAI Yohei Department of Mathematics Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿の目的は,小数倍・分数倍を求める包含除を測定の操作によって意味づけるための学習 内容について提案することである。そのために,小数倍・分数倍を求める包含除と測定の操作 の対応関係を数学的に示した上で,その対応関係に焦点を当てた学習内容について検討した。 その結果として,小数倍・分数倍を求める包含除と測定の操作の対応関係は代数的な表現を 用いて数学的に示された。しかし,小数倍・分数倍を求める除法を学習する小学校第4,5学 年の児童の既習の知識ではそれを理解することはできないので,各学年の学習段階に応じた既 習の知識に基づいて小数倍・分数倍を求める包含除と測定の操作の対応関係を認めることがで きる学習内容として,小数倍を求める包含除については除法の筆算の計算手続きと測定の操作 を対応させる学習内容を,分数倍を求める包含除については測定の操作と同等とみなした小数 倍を求める除法を分数倍を求める除法に結びつける学習内容を提案した。. の意味を拡張する必要があることが指摘されてい. 1.研究意図. る(杉山, 1986)。つまり,小学校算数科第2学年. 小学校算数科第5学年の小数をかける乗法の学. において児童は2倍や3倍といった整数倍を「い. 習では,乗法の意味を同数累加から「(基準量)×. くつ分」の意味で学習しているため, 「いくつ分」. (割合) 」へと拡張する必要がある。その学習では. の 意 味 で は 小 数 の 乗 法 で 用 い る2.3倍 や0.7倍 と. 「一方の大きさがλ倍になれば,もう一方の大. いった小数倍の意味を説明することができないの. +. 」という2量に比例 きさもλ倍になる(λ∈ ℚ ). である。. 関係に基づいて乗法の意味づけがなされるため,. この指摘に対して,田端(2001)は,教科書で. 乗法の意味の拡張に先立って第4学年において倍. 一般に指導されている整数倍を求める場合をもと. 115.
(3) 渡 会 陽 平. に類推して小数倍を求める方法では,児童が除法. を構成し,数学の体系を作ることが目指されてい. を用いて何倍かを求めることができたとしても,. る。そこで,新たな問題場面において既習の知識. 小数倍の意味を説明することができない実態があ. では不都合が生じてしまう場合には,子ども自身. ることを報告し,b ÷ a = p の関係がある問題場. によって既習の知識と整合させながら新たな問題. 面において, 「a を1とみると b は p にあたる大. 場面にも適用できる知識に拡張していく。そうす. きさである」というように「1とみる」を用いた. ることで,子どもにとっての整合のとれた数学の. 割合の見方によって p 倍の意味を指導している。. 体系を作ることができるだけでなく,拡張の考. さらに,市川(2003)は,田端(2001)で扱われ. え・精神を育てることもできるのである。従って,. ている問題場面の数値は「2.5倍」や「3.5倍」といっ. 倍の意味の拡張に併せて,小数倍・分数倍を求め. た「○倍と半分」と解釈できる数値のため,小数. る場合の包含除が既習の意味では説明できないこ. 倍の意味を直観的に理解しやすい一方で,小数部. とにも焦点を当て,小数倍・分数倍の意味と対応. 分が5以外の小数倍の意味を解釈することができ. した操作として包含除の意味を拡張することは教. ないことを指摘し, 「基準の2.6倍とは,基準の2. 育的に価値があり,必要なことである。渡会(2011). つ分と,基準の1 / 10の6つ分」というように,. は,上記の問題点に対して,小数倍を求める包含. 倍を「基準をもとに再測定をした測定数」と意味. 除と測定の操作の数学的な対応関係を示した上. づける指導を行っている。また,松丸(2012)は,. で,小数倍の意味を「基準をもとに再測定した測. 分数倍を求める問題場面において,基準を1とし. 定数」と意味づけることと併せて,包含除の意味. て,それを等間隔に区切った物差しを作り,その. を「基準をもとに再測定した測定数を求める演算」. +. m / n(m ∈ ℤ , n ∈ ℕ)の大きさを分数倍の意味. と定め直す必要を指摘している。しかしながら,. として指導している。. 分数倍を求める場合についての対応関係について. このように,倍の意味を拡張するための指導に. は言及されておらず,また倍の意味の拡張と併せ. ついては先行研究でも検討されてきたが,渡会. て包含除の意味を拡張する場合の具体的な学習内. (2011)は,倍の意味の拡張の指導においては,. 容を提案するまでには至っていない。. 倍の意味の拡張だけではなく倍を求めるために用. 以上の問題意識から,本稿は,次の2点を研究. いる包含除の意味についても拡張が必要であると. の目的とする。. 指摘している。つまり,包含除は第3学年におい. ⅰ 小数倍・分数倍を求める包含除と,小数倍・. て「ある数量がもう一方の数量のいくつ分である. 分数倍を求める測定の操作の数学的な対応を明. かを求める場合」に用いられる演算として指導さ. らかにすることを通して,小数倍・分数倍を求. れているため,結果が小数倍になる問題場面にお. める包含除が測定の操作によって意味づけられ. いて,整数倍を求めた場合と同様に「いくつ分」. ることを示す。. を求める包含除を用いた場合には,等分除の割り. ⅱ 小数倍・分数倍を求める包含除を測定の操作. 進みを既習として形式的には小数倍を求めること. によって意味づける場合の,その具体的な学習. ができたとしても,小数点以下まで割り進むこと. 内容を提案する。. の意味を説明することができないのである。また,. 上記の目的を達成するために,本稿は,まず筆. 結果が分数倍になる問題場面においても,等分除. 者が小数倍・分数倍を測定の操作で意味づける立. における a ÷ b = a / b(a, b ∈ ℕ)を既習として形. 場をとる理由を述べた上で,測定の操作によって. 式的には分数倍を求めることができたとしても,. 小数倍・分数倍がどのように意味づけられるのか. なぜ包含除についても商を分数で表してよいのか. を示す。次に,小数倍・分数倍を求める場合の測. については説明することができない。. 定の操作を数学的に記述することによって,それ. 算数・数学教育では子どもによって数学の知識. が包含除の操作とどのように対応するのかを示. 116.
(4) 小学校算数科における小数倍・分数倍を求める包含除についての測定の操作による意味づけ. す。最後に,小数倍・分数倍を求める問題場面に. 単位の何倍にあたるかを表わす数値を測定値と. おいて解決すべき課題を測定の操作に着目して解. いう。このことから,測定とは,量を単位と測. 決する方法について考察することを通して、小数. 定値で表わす手続きということができる。. 倍・分数倍を求める包含除と測定の操作を対応さ. このように倍の背景には,「基準を定め,それ. せるための学習内容を示す。. を単位として大きさを測る」という測定の操作が あるから,倍の意味を市川(2003)が提案するよ. 2. 測定の操作による小数倍・分数倍の意味 づけ. うに「基準にする大きさをもとに測定したときの 測定数」として意味づけて指導することは,倍の 本来の意味に立ち戻って指導することであり,整. ⑴ 本稿における倍の意味づけの立場. 数倍を求める場合の包含除の意味の自然な拡張と. 先行研究において倍の意味づけの立場は一つに. してみることができる。よって,具体的な操作を. 定まっているわけではない。先述したように田端. 伴った小数倍・分数倍の意味の理解と,整数倍の. (2001)は「1とみる」を用いた割合の見方によっ. 意味からの自然な拡張という2点から見て,小数. て倍を意味づけている。しかし,割合の見方によ. 倍・分数倍を測定の操作によって意味づけること. る意味づけは児童にとっては理解が困難であるた. は適切であり,妥当である。. め,市川(2003)は割合の見方による意味づけの. また,市川(2003)は割合の見方による倍の意. 前段階として,測定の操作による意味づけを提案. 味づけの前段階として測定の操作による倍の意味. している。筆者は,市川(2003)が提案する測定. づけを提案しているが,筆者は割合の見方による. の操作による倍の意味づけを支持する立場をと. 意味づけは不要であり,測定の操作による意味づ. る。なぜなら,倍は測定の操作に基づく概念だか. けだけでよいと考える。なぜなら,先行研究にお. らである。倍の意味について,算数教育指導用語. いて田端(2001)や市川(2003)は小数の乗法を. 辞典(日本数学教育学会編著, 2004)には次のよ. 「1とみる」を用いた割合の見方で意味づけるこ. うに記述されている。. とを視野に入れているために倍についても割合の. 倍の 意味: b の長さを(n 個)継ぎ足して,a の. 見方によって意味づけているが,渡会(2014)が. 長さが得られたとき,b に対して,a は b の n. 指摘するように,測定の操作による倍の意味づけ. 倍 と い い,a = b × n と 表 わ す。 一 般 に,b の. に基づいて「λ倍の大きさを求める」という小数. n 倍を b × n と表わすことにする。このように,. の乗法の意味を説明できるので,あえて「1とみ. 倍は一つの大きさを,他の適当な大きさを単位. る」必要が無いからである。それだけでなく, 「1. として,そのいくつ分にあたるかとみたり,表. とみる」によって乗法を意味づけた場合には,立. わしたりする考えである。. 式における比例関係に基づいた乗法の用い方と概. 上述のように,倍とは単位とする大きさがいく. 念的な不一致が生じるという不都合もある(渡会,. つ分あるのかに基づく概念である。そして,単位. 2014)。また,上記2点のような理論的な側面だ. とする大きさがいくつ分あるのかを求める操作が. けでなく,市川(2003)が授業実践を通して示し. 測定である。上記同辞典には測定と測定数の意味. たように,倍の意味を「基準をもとに再測定した. について次のように記述されている。. 測定数」と定めることで,児童は小数倍の意味を. 測定及び測定値(測定数)の意味:測定とは,量. 測定の操作に基づいて具体的に説明することがで. の大きさを数で表わすために,同種の量で,基. きたが,割合の見方による意味づけについては相. 準になる量を決めておき,数値化しようとする. 変わらず困難であったという実証的な側面からみ. 量がその何倍になるかを表わそうとする操作で. ても,倍を割合の見方で意味づけるよりも測定の. ある。この場合,基準になる量を単位といい,. 操作によって意味づけるほうが児童にとっては倍. 117.
(5) 渡 会 陽 平. の意味を構成しやすいと言える。以上の理由から,. …の大きさを2倍,3倍, …,E / 10 の1つ分,. 筆者は,小数倍・分数倍を一貫して測定の操作に. 2つ分,3つ分, …の大きさを0.1倍,0.2倍,0.3. よって意味づける立場をとる。. 倍, …,そして,E / 100 の1つ分,2つ分,3 つ分, …の大きさを0.01倍,0.02倍,0.03倍, …. ⑵ 測定の操作による小数倍・分数倍の意味づけ. というように定義すれば,21mは4mを5つ分. 測定の操作とは,具体的には次のような操作の. (5倍),0.4mを2つ分(0.2倍),0.04mを5つ. ことである(日本数学教育学会編著, 2004)。. 分(0.05倍)を合わせた大きさだから,21mは. 測定 の操作:A という量を測定しようとすると. 4mの5倍+0.2倍+0.05倍=5.25倍の大きさで. き,A と 同 種 の 量 で E を 単 位 に と っ た 量 と. ある。. し,A > E の場合,A がどんなに大きな量で. 以上のように,小数倍を測定の操作によって意. あっても,E の2倍,3倍, …をつくっていけ. i (i ∈ ℕ) 味づける場合には,単位と単位の(1 / 10). ば, つ い に は A よ り 大 き く な る。 例 え ば, E × 3 ≦ A < E × 4 のとき,A は E の3倍に等. の大きさである下位単位をそれぞれいくつ分か合 わせた大きさとして意味づけることができる。. しいか,または E の3倍と4倍の間の大きさ. ② 測定の操作による分数倍の意味づけ. である。後者の場合,単位の E より小さなは. 例えば,23mのリボンは3mのリボンの長さの. したが出る。これを A' とし,はじめの単位 E. 何倍であるかを測定の操作に基づいて求める場合. の1/10の大きさ E' をとり,はした A' が E' の. に,上記と同じ手続きを繰り返しても,余りを下. 何倍にあたるかをみる。また,さらに E' より. 位単位で割り切ることができず,余りが出続けて. 小さいはした A'' が出るときは,これまでの単. しまう。このような場合に正確な測定数を表現す. 位 E' の1 / 10の大きさ E'' をとり,はした A'' が. るためには分数倍での表現が必要になる。測定の. E'' の何倍にあたるかをみるのである。このよ. 操作に基づいて分数倍を求める場合には,以下の. うにしてはしたが残るかぎり,小数表示の桁数. ような手続きによって求められる。. が増えていくわけである。. ⅰ 3mを単位とすると,23mの中には3mが7. 上記の測定の操作に基づいて,小数倍・分数倍 がどのように意味づけられるのかを示す。. つ分あり,2m余る。 ⅱ 3mを3等分した1つ分の大きさ1mを新し. ① 測定の操作による小数倍の意味づけ. い単位とすると,ⅰの余りの2mの中には1m. 例えば,21mのリボンは4mのリボンの長さの. が2つ分あり,余りなし。. 何倍であるかを測定の操作に基づいて求める場合. ⅲ 以上より,23mは3mを7つ分と3mの 1 / 3. には,以下のような手続きによって求められる。. の大きさである1mを2つ分を合わせた大きさ. ⅰ 4mを単位とすると,21mの中には4mが5. である。そこで,最初に定めた単位 E の2つ分,. つ分あり,1m余る。. 3つ分, …の大きさを2倍,3倍, …,E / 3 の. ⅱ 4mを10等分した1つ分の大きさ0.4mを新し. 1つ分,2つ分, …の大きさを 1 / 3倍,2 / 3倍. い単位とすると,ⅰの余りの1mの中には0.4m. というように定義すれば,23mは3mを7つ分. が2つ分あり,0.2m余る。. (7倍)と3mの 1 / 3 の大きさである1mを2. ⅲ 0.4mを10等分した1つ分の大きさ0.04mを新 しい単位とすると,ⅱの余りの0.2mの中には 0.04mが5つ分あり,余りなし。 ⅳ 以上より,21mは4mを5つ分,0.4mを2つ. つ分(2 / 3倍)を合わせた大きさだから,23m は3mの7倍 + 2 / 3倍=72/3倍の大きさである。 また,23.3mのリボンは3mのリボンの長さの 何倍であるかという数値がより複雑な場合につい. 分,0.04mを5つ分を合わせた大きさである。. ては次のような手続きで求められる。. そこで,最初に定めた単位 E の2つ分,3つ分,. ⅰ 3mを単位とすると,23.3mの中には3mが. 118.
(6) 小学校算数科における小数倍・分数倍を求める包含除についての測定の操作による意味づけ. 以上のように,小数倍を求める測定の手続きに. 7つ分あり,2.3m余る。 ⅱ 3mを3等分した1つ分の大きさ1mを新し. i おいては必ずもとの単位の(1 / 10) (i ∈ ℕ)の大. い単位とすると,ⅰの余りの2.3mの中には1m. きさを下位単位としたのに対して,分数倍を求め. が2つ分あり,0.3m余る。. る測定の手続きにおいては,もとの単位を任意に. ⅲ 1mを10等分した1つ分の大きさ0.1mを新し. 等分割した1つ分の大きさを下位単位として測定. い単位とすると,ⅱの余りの0.3mの中には0.1m. が な さ れ る。 従 っ て, 分 数 倍 は 単 位 と 単 位 の. が3つ分あり,余りなし。. 1 / m(m ∈ ℕ)の大きさである下位単位をそれぞ. ⅳ 以 上 よ り,23.3mは 3mを 7 つ 分, 3mの 1 / 3 の大きさである1mを2つ分,3mの 1 / 3. れいくつ分か合わせた大きさとして意味づけるこ とができる。. の 大 き さ で あ る 1mの 1 / 10 の 大 き さ で あ る 0.1mを3つ分を合わせた大きさである。そこ で,最初に定めた単位 E の2つ分,3つ分, … の大きさを2倍,3倍, …,E / 3 の1つ分,2. 3. 小数倍・分数倍を求める測定の操作と包 含除の対応関係. つ分, …の大きさを 1 / 3倍,2 / 3倍, (E / 3)/ 10. 次に,2.で示した小数倍・分数倍を求めるた. の1つ分,2つ分,3つ分, …の大きさを 1 / 30. めの測定の操作を数学的に記述することで,測定. 倍,2 / 30倍,3 / 30倍, …というように定義す. の操作と包含除の操作がどのように対応するのか. れ ば,23.3mは 3mを 7 つ 分( 7 倍 ), 3mの. を示す。. 1 / 3 の大きさである1mを2つ分(2 / 3倍), 3mの 1 / 3 の大きさである1mの 1 / 10 の大き. ⑴ 小数倍を求める測定の操作と包含除の対応関係. さである0.1mを3つ分(3 / 30倍)を合わせた. 小数倍を求める測定の操作と包含除の対応関係. 大きさだから,23.3mは3mの7倍 + 2 / 3倍 +. は既に渡会(2011)で示されているが,分数倍の. 倍の大きさであ. 場合の前提になるので,改めてもう一度示す。2.. 3 / 30倍 =7倍 + 23 / 30倍=7. 23 30. る。. ⑵①で示した小数倍を求める測定の操作におい. もしくは,. て,ⅰの「4mを単位とすると,21mの中には4. ⅰ 3mを単位とすると,23.3mの中には3mが. mが5つ分あり,1m余る。」では21 = 4 × 5 + 1. 7つ分あり,2.3m余る。. という関係が成り立つ。同様に,ⅱの「4mを10. ⅱ 3mを30等分した1つ分の大きさ0.1mを新し. 等分した1つ分の大きさ0.4mを新しい単位とす. い単位とすると,ⅰの余りの2.3mの中には0.1m. ると,ⅰの余りの1mの中には0.4mが2つ分あ. が23つ分あり,余りなし。. り,0.2m余 る。」 で は21 = 4 × 5 + 0.4 × 2 + 0.2,. ⅲ 以 上 よ り,23.3mは 3mを 7 つ 分 と 3mの. ⅲの「0.4mを10等分した1つ分の大きさ0.04mを. 1 / 30 の大きさである0.1mを23つ分を合わせた. 新しい単位とすると,ⅱの余りの0.2mの中には. 大きさである。そこで,最初に定めた単位 E. 0.04mが5つ分あり,余りなし。」では21 = 4 × 5. の2つ分,3つ分, …の大きさを2倍,3倍,. + 0.4 × 2 + 0.04 × 5 という関係が成り立つ。最. …,E / 30 の1つ分,2つ分,3つ分, …の大. 後の式を変形すると,. きさを 1 / 30倍,2 / 30倍,3 / 30倍, …というよ. 2 ×5 21 = 4 × 5 + 4 ×(1 / 10)× 2 + 4 ×(1 / 10). うに定義すれば,23.3mは3mを7つ分(7倍). であるから,両辺を(÷ 4)すれば,. と3mの 1 / 30 の 大 き さ で あ る0.1mを 23 つ 分. 21 ÷ 4 = 5 +(1 / 10)× 2 +(1 / 10)2 × 5. (23/30倍)を合わせた大きさだから,23.3m. である。よって,21 ÷ 4 = 5.25が成り立つ。つま. 倍の大きさであ. り,数学的には21mについての単位4mとその下. は3mの7倍 + 23 / 30倍 = 7 る。. 23 30. 位単位のいくつ分の構成の関係に対して, (÷ 4). 119.
(7) 渡 会 陽 平. を適用することで小数倍を求めている。では数学. m + ··· + bm + rm = rm-1 (bm = b / 10m), b. 的な操作である(÷ 4)は現実場面の具体的な操. (bm)+ ··· + (bm)+ (rm)= (rm-1). ここで (rm)=0 ならば,rm = 0 だから,. 作としてどのように解釈することができるのか。. . 渡会(2011)は概念野理論(Vergnaud, 1983, 1988). m + ··· + bm = rm-1 (bm = b / 10m), b. を枠組みとして,包含除を立式する際に「児童に よって暗黙的に考慮されている数学的な関係」. (bm)+ ··· + (bm)= (rm-1). よって,. (theorems-in-action)を,図1について次のよ. a ÷ b = (b)+ ··· + (b)+ (r). うに表している。. +···+ (b) }+{ (b1)+···+ (b1) }+··· ={ (b) ―――――― ―――――――― n0個 n1個. 包含除を立式するためのtheorems-in-action: +. , ∀b ∈ ℚ \{ 0 }, a = b + ··· + b + r(0 ≤ r < b). :M2 →M1, (x) =x÷b について,(a) =a÷b. . +{ (bm)+ ··· + (bm)} ―――――――― nm個 = (b)× n0 + (b1)× n1 + ···+ (bm)× nm =(b) ×n0+(b/10) ×n1+···+(b/10m) ×nm =(b) ×n0+ (b) ×n1 /10+···+ (b) ×nm /10m =n0 + n1 / 10 +···+ nm / 10m. (∵ (b)= 1) ⑵ 分数倍を求める測定の操作と包含除の対応関. 【図1】. 係 分数倍を求める測定の操作と包含除の操作の対. 図1において,M1 と M2 は測度空間で,M1 と. 応関係についても,小数倍の場合と同様に示すこ. M2 は比例関係にある。a, b, r ∈ M2 であり, は. とができる。例えば,2.⑵②で最初に示した分. b ∈ M2 を 1 ∈ M1 に対応させる写像である。つま. 数倍を求める測定の操作についてならば,23 = 3. り,b ∈ M2 を 1 ∈ M1 に 対 応 さ せ る 写 像 と し て. × 7 +{ 3 ×(1 / 3)}× 2 という関係が成り立つか. (÷ b) が適用されている。また,測定の操作とは,. ら, 両 辺 を( ÷ 3) す れ ば,23 ÷ 3 = 7+(1 / 3). もとの測度空間(M2)の単位とする大きさ(b). × 2 で あ る。 よ っ て,23 ÷ 3 = 72/3 = 23 / 3 が 成. を,測定後の測度空間(M1)の1に対応させる. り立つ。. 操作とみることができる。従って,b を単位とし. 一般には,:M2 → M1, (x)= x ÷ b について,. た測定の操作は包含除の操作(÷ b)と同等のも. 次の関係が成り立つから,b を基準としてある大. のとして解釈することができるのである。そして,. きさ a を測定したときの測定数を分数値 a / b と. この場合, :M2 → M1, (x)= x ÷ b について,. して包含除 a ÷ b によって求めることができる。. 次の関係が成り立つから,b を基準としてある大. + ··· + b + r = a (0 < r < b), b. きさ a を測定したときの測定数を包含除 a ÷ b で. (b)+ ··· + (b)+ (r)= a ÷ b. 1 + ··· + b1 = r (b1 = b / m, m ∈ ℕ), b. 求めることができるのである。. + ··· + b + r = a (0 < r < b), b . + ··· + (b)+ (r)= a ÷ b. (b) 1 + ··· + b1 + r1 = r (b1 = b / 10), b. + ··· + (b1) + (r1) = (r). (b1) 2 + ··· + b2 + r2 = r1 (b2 = b / 102), b + ··· + (b2) + (r2) = (r1) . (b2). ⋮. 120. . (b1)+ ··· + (b1)= (r). よって,. a ÷ b = (b)+ ··· + (b)+ (r) +···+ (b) }+{ (b1) +···+ (b1) } ={ (b) ―――――― ―――――― n0個 n1個 = (b)× n0 + (b1)× n1 = (b)× n0 + (b/m)× n1.
(8) 小学校算数科における小数倍・分数倍を求める包含除についての測定の操作による意味づけ. = (b)× n0 + (b)× n1 / m. 割り進むことができる意味へと拡張する必要があ. =n0 + n1 / m. (∵ (b)= 1). る。. / m. = (n0m + n1). 例えば,第4学年において「21mのリボンは4. また,. mのリボンの長さの何倍であるか」という問題を. a / b = (b +···+ b + r) /b. 扱ったとする。児童は第3学年において何倍かを. ={ (b +···+ b + r) ÷ b } /(b ÷ b). 求める場合は除法を用いることを既習としている. = (b ÷ b)+···+(b ÷ b)+(r ÷ b) ―――――――― n0個. から,21 ÷ 4 を立式することができる。さらに,. =1 × n0 + (r). て,21 ÷ 4 の計算の仕方を既習としているから,. =n0 + (b1)+···+ (b1) ―――――― n1個. 21 ÷ 4 = 5.25 と正しく計算することができる。こ. × n1 =n0 + (b1). 形式的には正答を求めることができる。しかしな. =n0 + (b / m) × n1. がら,この段階においてこの解決の方法は上記の. =n0 + (b)× n1 / m. 2つの既習に基づけばこうなりそうであるという. =n0 + n1 / m. (∵ (b)= 1). 予想であり,こうなってほしいという欲求でしか. / m. = (n0m + n1). ない。なぜなら,これまでに倍を求めるために除. / m=a / bが成り立つ。 従って,a ÷ b =(n0m + n1). 法を用いてきたが,倍を求めるために小数点以下. 第4学年の割り進みのある等分除の学習におい. れにより児童は「21mは4mの5.25倍である。」と. まで割り進むことはまだ未習だからである。そこ. 4. 小数倍・分数倍を求める包含除を測定の 操作によって意味づけるための学習内容の 検討. で,この解決の方法が児童によって構成される数 学として正しいことを認めるためには,次の3つ の課題を解決する必要がある。 第一の課題は「倍を求めるための除法において,. 3.において,小数倍・分数倍を求める包含除. 小数点以下まで割り進んでよいのか」である。整. が測定の操作と数学的に対応することを示した。. 数倍の意味は「いくつ分」であったから,既習の. しかし,その対応関係は代数的な表現として表さ. 倍を求めるための除法の意味は「ある数量の中に. れるので,小数倍・分数倍を求める包含除を学習. もう一方の数量がいくつ分あるか」を求める演算. する小学校第4,5学年の児童の既習の知識では. である。よって,「いくつ分」を求めるという除. 理解することができない。そこで,小学校第4,. 法の意味では,小数点以下まで割り進むことの意. 5学年の児童の既習の知識に基づいて小数倍・分. 味を説明することができないから,小数点以下ま. 数倍を求める包含除の意味を測定の操作と対応さ. で割り進んでよいことの保証がなされていないの. せ,包含除の意味を拡張することができる学習内. である。第二の課題は「倍を求めるための除法を. 容について検討する。. 小数点以下まで割り進んでよいのならば,その場 合の除法の意味はどのようになるのか」である。. ⑴ 小数倍を求める包含除を測定の操作によって 意味づけるための学習内容の検討. 小数点以下まで割り進んでよいのならば,既習の 「いくつ分」を求めるという除法の意味とは異なっ. 1.で述べたように,「いくつ分」を求める包. た意味になるはずである。そして第三の課題は「倍. 含除の意味では,小数倍を求める場合に小数点以. を求めるための除法を小数点以下まで割り進んで. 下まで割り進む理由を説明することができない。. よいのならば,小数倍の意味はどのようになるの. よって,小数倍を求める問題場面において,包含. か」である。倍の意味についても整数倍の場合の. 除の意味を何倍かを求める場合に小数点以下まで. 「いくつ分」とは異なった意味になるはずである。. 121.
(9) 渡 会 陽 平. 上記の3つの課題を解決するために,まず等分. 新しい単位とすると,(m1)の余りの1m. 除の場合に成り立っていた小数点以下までの割り. の中には0.4mが2つ分あり,0.2m余る。. 進みが倍を求めるための除法でも成り立つと仮定. (m3)0.4mを10等分した1つ分の大きさ0.04m. する。つまり,新しい問題場面において既習の知. を新しい単位とすると, (m2)の余りの0.2m. 識では不都合が生じてしまう場合には,新しい概. の中には0.04mが5つ分あり,余りなし。. 念・方法を作ったり,既習の知識を修正・拡張し. また,除法21÷4=5.25の計算手続きは,筆算. たりする必要があるが,その際には既習で成り. で表すと図2のようになる。. 立っていたことは新しい問題場面においても成り 立つように知識を構成することが整合的な数学の 体系を作ることにつながるから, 「倍を求める場 合には除法を用いる」,「除法は小数点以下まで割 り進むことができる」という2つの既習が「倍を 求める場合に商が整数値で割り切れない」という 新しい問題場面においても成り立つと仮定するの 【図2】. である。そして,第二,第三の課題について児童 の構成する数学として筋の通った説明をすること ができるならば,第一の課題についても「倍を求. この筆算では,次のように小数点以下まで割り. める除法においても小数点以下まで割り進んでよ. 進まない除法が3回用いられている。. い」と結論づけてよいことになる。. (d1)21 ÷ 4 = 5,余り1. そこで,まずは第三の課題を解決する。第三の. (d2)10 ÷ 4 = 2,余り2. 課題については,市川(2003)の提案する測定の. (d3)20 ÷ 4 = 5,余りなし. 操作による小数倍の意味づけによって解決でき. (d1)~(d3)の除法は,被除数の中に除数がい. る。具体的には,小数の導入場面において基準と. くつ分含まれるかを考えているから,除法の筆算. なる単位量を10等分したうちの1つ分の大きさを. の過程で用いられている除法は「いくつ分」を求. 下位単位として測定したことを既習として,21m. める包含除である。このことに基づいて,(m1). を4mを単位として再測定する活動をする。この. ~(m3)の測定の手続きと(d1)~(d3)の除法の. 活動を通して,児童は「5.25倍とは単位とする大. 手続きを比較すると,(m1)と(d1)は同じ操作で. きさの5つ分と,単位を10等分したうちの1つ分. あり,(m2)と(d2),(m3)と(d3)はそれぞれ操. の大きさの2つ分と,単位を100等分したうちの. 作が類似している。そこで,除法の筆算の手続き. 1つ分の大きさの5つ分を合わせた大きさであ. の仕組みを考えてみると,(d2)における 10 ÷ 4. る。 」というように小数倍の意味を測定の操作に. の「10」は,小数点の位置に基づけば実際には1. 基づいて説明することができるようになる。. である。では,10 ÷ 4 の「4」は何を意味するの. 次に第二の課題を解決する。第二の課題につい. か。除法では被除数と除数を同じ数で割っても商. ては,測定の操作による数値化の手続きと除法の. は変わらないから,. 計算手続きの対応関係について検討する。21mを. 10 ÷ 4 =(10 ÷ 10)÷(4 ÷ 10)= 1 ÷ 0.4. 4mを単位として再測定する場合には,次の3段. が成り立つ。よって,10 ÷ 4 の「10」が実際には. 階の測定の手続きをした。. 1であるなら,10 ÷ 4 の「4」は実際には「0.4」. (m1) 4mを単位とすると,21mの中には4m. である。つまり,筆算の過程では 10 ÷ 4 を計算. が5つ分あり,1m余る。 (m2)4mを10等分した1つ分の大きさ0.4mを. 122. しているが,実際には 1 ÷ 0.4 を計算しているの である。では,1 ÷ 0.4 とは何をしていることに.
(10) 小学校算数科における小数倍・分数倍を求める包含除についての測定の操作による意味づけ. なるのか。小数で割る除法は第5学年の学習内容 であるが,除数が小数の場合の包含除は既習の意. ⑵ 分数倍を求める包含除を測定の操作によって 意味づけるための学習内容の検討. 味のままで説明することができるし,形式的な計. 第5学年の分数倍を求める除法の学習において. 算はできなくとも包含除の意味に基づいて解答を. も解決すべき課題がある。例えば,「8mのリボ. 求めることができる。従って,1 ÷ 0.4 は1の中. ンは3mのリボンの長さの何倍であるか」という. に0.4がいくつ分含まれているのかを求めている. 問題を扱ったとする。児童は既習に基づいて何倍. ことだと判断でき,包含除の意味に基づいて「1. かを求めるために除法 8 ÷ 3 を立式することがで. の中に0.4は2つ含まれていて,余りは0.2である。」. きる。8 ÷ 3 は割り切れないから,等分除の問題. と計算結果を求めることができる。同様に, (d3). 場面において除法の商を分数で表したことを用い. については,20÷4 の「20」は実際には0.2だから,. て,8 ÷ 3 = 8 / 3 と商を分数で表すことができる。. 20 ÷ 4 = (20 ÷ 100)÷(4 ÷ 100)= 0.2 ÷ 0.04. これにより児童は「8mは3mの 8 / 3 倍である。」. が 成 り 立 つ。 よ っ て,20 ÷ 4 は 実 際 に は 0.2 ÷. と形式的には正答を求めることができる。しかし. 0.04 であり,0.2の中に0.04がいくつ分含まれてい. ながら,小数倍の場合と同様にこの段階において. るのかを求めていることになるから,包含除の意. この解決の方法はまだ未確定である。従って,こ. 味に基づいて 「0.2の中に0.04は5つ含まれていて,. の解決の方法を認めるために,次の3つの課題を. 余りなし。 」と計算結果を求めることができる。. 解決する必要がある。. 従って, (m2)と(d2),(m3)と(d3)についても. 第一の課題は「倍を求めるための除法において,. それぞれ同じ操作をしているといえる。以上より,. 商を分数で表してよいのか」である。等分除の商. 倍を求める除法の計算手続きは測定の操作による. を分数で表してよいことは既習であるが,包含除. 数値化の手続きをしているとみなすことができ. の商についても分数で表してよいことについては. る。よって,既習の知識では包含除の意味は「い. まだ保証されていない。第二の課題は「倍を求め. くつ分」を求める演算であったが,それを拡張し. るための除法の商を分数で表してよいのならば,. た意味として新たに「基準にする大きさをもとに. その場合の倍の意味はどうなるのか。小数倍と同. 測定したときの測定数」を求める演算と意味づけ. 様に測定の操作によって意味を説明できるのか」. ることができる。この意味づけにより,倍を求め. である。小数倍を測定の操作によって意味づけて. る除法において小数点以下まで割り進むことの理. いるから,分数倍の意味についても測定の操作に. 由を, 「余りが出た場合は単位を10等分したうち. よって説明できることが数学の体系として整合的. の1つ分の大きさのを新しい単位として測定を続. である。そして第三の課題は「分数で表された倍. けるから」と測定の操作に基づいて説明すること. の意味が測定の操作によって説明できるならば,. ができるようになる。. その測定の操作が除法と対応しているといえるの. 以上のように第二の課題,第三の課題について. か」である。小数倍を求める場合には測定の操作. 筋の通った説明をすることができたので, 「倍を. による数値化の手続きと倍を求める除法の計算手. 求める除法においても小数点以下まで割り進む」. 続きが同等のものとみなすことができた。しかし,. という仮定のもとで数学的な不整合が生じないこ. 分数倍を求める場合は商を形式的に分数で表すた. とが示された。よって,第一の課題について「小. め,除法が測定の操作と対応しているのか明らか. 数点以下まで割り進んでよい」と結論づけること. ではない。分数倍を求める場合についても測定の. ができる。. 操作と除法の操作が対応していることを示さなけ れば,除法によって分数倍を求めることができる 理由を説明することはできない。 上記の3つの課題を解決するために,小数倍の. 123.
(11) 渡 会 陽 平. 場合と同様に第一の課題が成り立つと仮定する。. 2 + 0.666… = 2 +(2 ÷ 3). つまり,等分除の場合に成り立っていた商の分数. と表せる。0.666…倍という小数倍は除法 2 ÷ 3 で. 表示が倍を求めるための除法でも成り立つと仮定. 求められているから,2 ÷ 3 は測定の操作に対応. する。. している。そして,第一の課題が成り立つことを. まず第二の課題を解決する。8mを3mを単位. 過程としているから,. として測定すると,3mが2つ分と余りが2mで. 2 +(2 ÷ 3)= 2 +(2 / 3). ある。仮定の 8 / 3 は22/3に変形できるから,22/3. と倍を求めるための除法の商を分数で表せる。そ. 倍の整数表示されている2は単位の2つ分のこと. して,帯分数の意味に基づくと,. であると判断できる。小数倍を測定の操作によっ て求める際に余りが出た場合には単位を10等分し. 2 +(2 / 3)= 22/3 と表せる。帯分数を仮分数で表せば,. たうちの1つ分の大きさを新たな単位としてさら に測定したが,この問題場面においては単位を3. 22/3 = 8 / 3 である。以上の手続きにより,. 等分したうちの1つ分の大きさを新たな単位とし. 8÷3=8/3. て測定することで余りが出ることなく測定の手続. が示された。最初に 8 ÷ 3 は小数倍を求めるため. きを終えることができる。つまり,3mを単位と. の除法として用いた。小数倍を求める除法は測定. して測定して余った2mは,単位を3等分したう. の操作による手続きと同等とみなすことができ. ちの1つ分の大きさである1mの2つ分である。. た。そして,小数倍として求めた結果が分数倍と. 小数倍の場合には単位の 1 / 10 の大きさを0.1倍と. して表すことができた。従って,結果が分数倍に. 定めたから,分数倍の場合にも単位を3等分した. なる除法についても小数倍を求める除法と同様に. うちの1つ分の大きさを 1 / 3倍と定めれば,2m. 測定の手続きを行っているとみなすことができる. は3mの下位単位1m(1 / 3倍)の2つ分だから. のである。. 2 / 3倍である。よって,2 / 3倍とは単位を3等分. 以上のように第二の課題,第三の課題について. したうちの1つ分の大きさの2つ分のことであ. 解決することができたので,第一の課題が成り立. り,22/3倍とは単位の大きさ2つ分と単位を3等. つという仮定のもとで数学的な不整合が生じない. 分したうちの1つ分の大きさの2つ分を合わせた. ことが示された。従って,第一の課題について「分. 大きさのことであり,8 / 3倍とは単位を3等分し. 数倍を求める除法についても商を分数で表してよ. たうちの1つ分の大きさの8つ分の大きさのこと. い」と結論づけることができる。. である。このように分数倍についても測定する活 動を通して,その意味を測定の操作に基づいて説 明できるようになる。. 5.まとめと今後の課題. 次に第三の課題を解決する。8mは3mの何倍. 本稿では,小数倍・分数倍を求める包含除と測. の大きさであるかを分数倍ではなく小数倍で表せ. 定の操作の対応関係を数学的に示した上で,その. ば,. 対応関係に焦点を当てた学習内容について検討し 8 ÷ 3 = 2.666…. た。小数倍・分数倍を求める包含除と測定の操作. より2.666…倍である。2.666…倍とは2倍と0.666. の対応関係は3.で示したように代数的に記述す. …倍を合わせた大きさだから,. ることで簡潔・明瞭に表現される。しかしながら,. 2.666… = 2 + 0.666…. その代数的な表現は小数倍・分数倍を学習する小. である。0.666…とは 8 ÷ 3 を計算する過程におい. 学校第4,5学年の児童にとっては未習の内容で. て,8を3で割った余りの2を3で割った商であ. あり,理解できるものではない。そこで,4.で. るから,. は小数倍・分数倍を求める包含除と測定の操作の. 124.
(12) 小学校算数科における小数倍・分数倍を求める包含除についての測定の操作による意味づけ. 対応関係を各学年の学習段階における既習の知識 に基づいて認めることができるように,小数倍を 求める包含除については除法の筆算の計算手続き と測定の操作を対応させる学習内容を,分数倍を. 日本数学教育学会(2004) . 『算数教育指導用語辞典 第三 版』 .教育出版. 松丸剛(2012) . 「分数乗除の意味を実感的に理解し,説 明できるようにする指導」,日本数学教育学会誌 第94 巻 第12号,2-12,日本数学教育学会.. 求める包含除については測定の操作と同等とみな. 渡会陽平(2011).「小学校算数科における乗除法の意味. した小数倍を求める除法を分数倍を求める除法に. に関する学習過程の分析 -G.Vergnaudの概念野理論. 結びつける学習内容を示した。. を枠組みとして-」 .日本数学教育学会誌 数学教育学 論究.第93巻.Vol.97・98.3-16.. 本稿で示した学習内容は,実質陶冶の面では小. 渡会陽平(2014).「小学校算数科における倍と割合の意. 数倍・分数倍を求める包含除の意味を測定の操作. 味に関する学習過程の分析 -G.Vergnaudの概念野理. という具体的な操作に基づいて理解することがで. 論を手がかりとして-」 .日本数学教育学会誌 数学教. きるという価値がある。また,形式陶冶の面では, この学習内容を位置づけることで数学の知識の拡 張場面を増やすことができるから,新しい問題場. 育学論究臨時増刊.第96巻.217-224.. (札幌校特任講師). 面において既習の知識では不都合が生じた場合に は,数学の知識の整合性を保ちながら既習の知識 を修正していくという拡張の考え・精神を育てる ことができるという価値がある。これらの教育的 な価値があるから,本稿で示した学習内容を小数 倍・分数倍を求める学習内容に組み込んでいくこ とを提案する。 しかしながら,本稿では理論的考察に基づいて 学習内容を提案したにすぎない。授業を設計・実 践し,その有効性や児童にとっての困難点を実証 的に検討することが今後の課題である。. 引用・参考文献 Vergnaud, G.(1983). Multiplicative structures. In R. Lesh & M. Landau(Eds.), Acquisition of mathematics concepts and processes, New York; Tokyo: Academic Press, 127-175. Vergnaud, G.(1988). Multiplicative structures. In J. Hiebert & M. Behr (Eds.), Number concepts and operations in the middle grades, Hillsdale: Lawrence Erlbaun Associates, 141-161. 市川啓(2003). 「割合の見方を育てる小数倍の意味指導」 , 日本数学教育学会誌 第85巻 第12号,31-41,日本数学 教育学会. 杉山吉茂(1986) .『公理的方法に基づく算数・数学の学 習指導』.東洋館出版社. 田端輝彦(2001).「小数倍の導入についての一考察-小 数倍に表すよさに焦点をあてて-」,日本数学教育学会 誌 第83巻 第12号,2-12,日本数学教育学会.. 125.
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