児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(3) : 小学校第3学年理科単元「明かりをつけよう」を例に
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(2) 釧路論集一北海道教育大学釧路校研究紀要一第38号(平成18年) KushiroRonshu,−JournalofHokkaidoUniversityofEducationat KushiroTNo.38(2006):133−138.. 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(3) 一小学校第3学年理科単元「明かりをつけよう」を例に−. 三 崎 隆1・土 居 慎 也2 1北海道教育大学釧路校理科教育研究室 2北海道教育大学附属釧路小学校. A case study of schooIchildrens’1earningin science classes(3) −The unit on’light’in the elementary school− TakashiMISAKIland Shinya DoI2 1Departmentof Science education,Hokkaido University ofEducation at Kushiro 2Kushiro Elementary Schoolattached to Hokkaido University ofEducation. 要 旨. 本研究では、小学校第3学年理科の単元「明かりをつけよう」において、探究過程における児童の思考を 支援する教材活用を工夫した授業実践を試みた。 その結果、次の点が明らかになった。 ・提示された教材を使って探究する中で、児童には自分の既習経験が想起され、それに基づいて思考が促さ れ、観察・実験が行われていく様態が見られた。 ・児童は相互に既習経験を発話したり交換したりしながら探究し、それによって電気を通すものについての 理解を深めていった。. [キーワード]教材提示、思考の流れ、児童の学び、電気 クスとして教材を提示し、探究過程における子どもの思考. 1.研究の背景. を促す授業展開の事例が報告されている(川崎市立小学校. 理科教育研究会、1988)。ブラックボックス化させることで、 子どもの疑問が誘発され、主体的な探究が促されることが. 子どもは固有の学びの状況を背景にして,それぞれにとっ て意味あると思われる考え方を作り上げている(桧森、1997; 森本、1999)。それだけに、授業を構想する際には、提示し. あることを考えると、有効な手法の一つである。また、金 属の線でも、太さの異なる線、材質が異なる線で、それぞ. たり子どもが使用したりする教材が命であると言われる(村. 山、2005)。 小学校の理科で教材研究を行うに当たっては、児童の既 習の知識や経験で理解できる教材であること、見通しのも. れ豆電球の明るさを比較することで物体の性質の違いにま. てる程度の難しさや不思議さのある教材であることが大切. で見方を深めさせる実践の報告がある(島田・島崎、1995)。 電気を通すもののうち、異なった複数の金属線の比較によっ て、子どもの電気の通り方に関する思考を促そうとするも. である(八田、2004)。特に、電気の通り方、電気を通すも. のである。. のの学習に当たっては同じ素材をどのように児童の学習に 関わらせていくことによって主体的な学習を促すことがで. 一方、子どもの主体的な学びを促す上で、同形同色の密 度の異なる金属を教材として用意して判別させたり、同色. きるのかを十分に考えて授業構成することが大切である(八. の粉末試料や水溶液を複数提示して探究を通して判別させ. 田、2004)。 電気の通り方、電気を通すものの学習における教材提示 を工夫した実践としては、配線ないしは回路をブラックボッ. たりする授業展開を採用することがある。子どもが自ら予 想を立て、探究方法を考え、追究していくことのできる有 効な手法の一つである。電気の通り方、電気を通すものの. −133−.
(3) 三崎 隆・土居 慎也. どない。今後、同形等で異なる2種の素材を有効に活用す. ・身の回りには、電気を通す、通さないものがあることを 確認する。. ることによって、探究過程における子どもの思考の流れを. ・このきまりを利用したものが身の回りには多くあること. 促し、電気概念に関する子どもの理解を深めることが期待. をとらえる。 ・電気を通すかどうか、豆電球の点灯するときのきまりを 利用し、作れそうなものを考える。 第8・9時 ・自分がイメージしたものを作る。 ・液体などにも、電気が通る事例を見る。. 学習において、このような手法が試みられることはほとん. される。. 2.研究目的 本研究では、児童の思考の流れを促す教材を提示し活用 させる授業実践を試み、その有効性を明らかにすることを 目的とする。. ・学習を振り返る。. (5)授業実践の構想. (a)同形同色の異なる黄色い細線の活用. 本研究では、児童が自然の事物・現象と出会い、十 分にかかわる場を設定するために、素材を分析し、教 材を開発した。本単元では、児童に対してつなぎ方や. 3.研究方法 (1)実践研究期間. 2005年10月17日. 接点に着目させるためにソケットの導線や被覆導線に. は芯線が1本のものを使用し、電池ボックスは金属部 分が直接結ぶタイプのものを採用した(土居、2005)。 そこで、探究活動における児童の思考を促すための教 材として、類似の材質で、同じ黄色い色をしている見 かけ上全く同じ細線で、異なる役割を果たす2種の細 線を教材として活用した。一つは、芯線が1本の銅線 を黄色いビニールで被覆してある被覆導線である。一. (2)対象. 本学附属釧路小学校第3学年1クラス(男子18名、女子 18名、合計36名) (3)単元. 小学校第3学年:哩科の単元「明かりをつけよう」(全9時 間). (4)指導計画. 筆者らの一人が、次の児童の主な学習活動(土居、2005). つは表面がビニール質の黄色い細線で、芯となる中心. 部には銅線は存在しない。両者は見かけ上、全く同じ であり、表面を触ると前者はなめらかであるのに対し て、後者は若干ざらざらしている点で異なる。その意 味においては、前者の表面を被覆している黄色いビニー ルを被覆したまま児童に提示した場合には、見かけ上. に基づいて授業実践を行った。 第1時. ・豆電球の点灯に興味・関心を寄せる。 ・自分でも乾電池に豆電球をつないで点灯させようと意欲. が高まる。 ・豆電球を点灯させる。 ・どのようにつないだ時に点灯したかを練り合い、きまり を見いだす。 ・電球の中の仕組みを見る。. 後者との区別はつかないことが十分予想される教材で. ある。本研究では両者とも被覆したまま提示した。 (b)金具を取り外した電池ホルダーの活用. 本研究では、金具を取り外して電池ホルダーを児童 に提示した。通電実験後に金具を提示することによっ. 第2時. ・乾電池と離れたところで点灯させる方法を考える。 ・ソケットを使い、明かりを付ける。. それが日常生活の中でも有効に活用されていることに. ・回路について考えを持つ。. 関する理解を図ることを意図したことによる。. て、通電性を有する物体の一つとして金属を認識し、. 第3時 ・もっと離れたところで豆電球を点灯させるための方法を. 4.分析方法. 考える。 ・導線の代わりになるものを考える。 ・どのような性質のものであればよいかを考える。. 平成17年10月17日に平成17年度エジプト小学校理数科教 育改善プロジェクト釧路研修の一環としての研究授業とし. 第4・5時. て公開された本単元第3時「もっと離れたところで豆電球. ・身の回りから、電気を通すもの、そうでないものを探す。. を点灯させるための方法を考える。導線の代わりになるも のを考える。」の研究授業を、筆者らの一人がデジタル・ビ デオ・レコーダーですべて録画した。そして、そのトラン スクリプトを基に、児童の学習行動並びに授業者と児童の 発話内容を質的に分析した。. 第6・7時. ・電気を通したもの、そうでなかったものを交流し、類型 化する。 ・電気を通すものはどういったものかを広い言葉で表現す る。. −134−.
(4) 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(3). ルで被覆された導線と同形同色の細線(非導線)を提示し. 5.結果と考察. た際の授業者と児童並びに児童間の会話のプロトコルを示. している。図中のTは授業者、Sは児童のそれぞれ発話を 表している。括弧内は非言語的行為を表している。. (1)児童の学習活動 図1は、当該時において授業者が意図的に黄色いビニー. (児童が細線を取りに行って、実験開始). T:グループで2個あればいいなあ。. T:豆電球を、ソケットから、もっとはなれたところで つけてほしいんです。. (実験中). S:長いのを使えば。. S:つかない。. T:どうすればできるんじやないかなあ。ちょっとグル. S:むりだ。これただのひもじやない? S:つかない。. ープで相談してみよう。. S:えーつ、わかんない。. (グループで相談が始まる). S:これ、ただのひもで…、ひもじやない? S:紙ヤスリですればいいんじやない?. T:電池は1個だよ。1個のままだよ。 (話し中). T:なんか、グッドアイディアが浮かんだグループ。. S:やすり…。. S:グッドではない。グッドではない。グッドではない。. S:ひもじやない?これ、やっぱり。うん。 S:あっわかった。こうすればいいんだ。 S:ひもだから、つかないよ。 T:どうだ?ついたか?. T:グッドではない。グッドはいらない。はい。他のと ころは?こうやったらできるんじやないかなって。 00くん。. S:つかな−い。(大勢で). S:はい、えっと、長い導線があったらできるし、ソケ. S:あっ、むけた。. ットで導線が長いとできる。. T:この線自体が長ければいいということと、もっと長 い導線をもってきて、どうするの、これを?. S:ただのひもじやない? S:いや、ただのひもじやないよ。白い物体があった。. S:それを電池にくっつける。. S:白い物体。 (一人の男の子がビニール製の被膜部分を紙ヤスリで削. T:じやあ、仮にこっちはこうしたとして、もっと長い 導線を持ってきてこの導線をこうやってこうやって. ったら白いひもが露出した). やればつく?つく?大丈夫?00くんはどう考えた. S:何これ?. S:つかないよ。これ、ひもじやない?. の?. S:普通の導線をなんとかつなげて T:導線をつなげて. T:どうだい?ついたかい?. S:長くして. T:つかない。. T:長くして. S:先生、これひもじやない?. S:つける。. S:ひもじやない。. T:つなげるときはどうやってつなげるの?. S:ひも?. S:つかな−い。(大勢で). S:まいて。. S:ひも?. T:まいて。つてやったらできそう。横田くんは?. T:線、線。黄色い線。. S:中山くんと同じ。. S:白いの出てきた。. T:同じ。あとどう?. S:白いのが出てきた。. S:同じ. S:紙ヤスリで削った方がつくのかな?. S:つかないよ。ひもだもん。. T:同じ。長い導線があれば、遠くでも付く? S:長い導線があれば、00(聞き取れない) T:長い導線ね。よし、じやあ。 (授業者は黄色い細線(導線ではない方のもの)を取り. T:はい、いいよ。00くんいいよ。つかないでしょ?. ついたかい?つかないでしょ。じやあさ、ちょっと 考えて。. S:これ導線じやないんじやない?. 出す。) S:ああ。(大勢で) S:なが−い。. T:導線ではない。. S:なが−い。. T:黄色い線だ。他にも黄色い線あるんだけどな。今、. S:導線じやなきや。 みんなが言らてくれた黄色い線あげたんだけども。. T:よーし、みんなで協力してやるんだぞ。. S:これじや、つくわけない。 T:これじや、つくわけない。じやあ、どういう線にな. (適当な長さに裁断中). T:長い線、長い線今作ってるからな。乾電池は1個、. ればいいの?. 豆電球も1個だよ。いいかい。それだけだよ。ほか の乾電池とつなげないでね。ほかの乾電池とつなげ. S:導線(全員で). たらだめだよ。乾電池は1個。じやあね。もってっ. T:導線はなんで導線の線でないとだめなの?この黄色. い線じやだめなの?. てください。. −135−.
(5) 三崎 隆・土居 慎也. が入ってる、それがはいってれば、電気がここをず. S:電気通らないから。(大勢で). っと通って、な、分かりました。もっと長くすれば。. S:黄色だと電気通らないから。. T:黄色なら電気とおらない。じやあ、電気が通ればい. S:もう1本ながいのを. いんだな。電気が通るものであればいいんだな。こ. S:もう1本. こは電気が通るもの(板書)。電気が通るものだっ たらつく。電気が通らないものはつかない。じやあ、. T:もう少しながいのでつく。なら、ここにまたこうい うのとこうやったらつく。つきそう?なら、1本ず. 電気が通ると思われるみんなが言った導線というも. つ長いのもってるから、片方のながいのをもってき. のがここにある。これも黄色だね。これあげる。ち. て電池、乾電池1個だよ。これでもつくかもう1回. ょっと、さっきのやつと様子違う。これでちょっと. 確かめてみて。. やってみよう。はい。. 図1 同形同色の細線による観察・実験の場面. (一斉に導線を取りに来て実験開始). S:やっぱりにせものだったんだ。紙ヤスリがあったほ 児童の中に、「S:これ、ただのひもで…、ひもじやない?」. うがいいんじやない?. S:紙ヤスリでこすったほうがいいんじやない?. と提示された黄色い細線が導線ではないのでないかという. S:先生、むいちゃっていいんですか?. 考えを表明するものが現れている。それに対して、「S:延. T:いいよ。. ヤスリですればいいんじやない?」と発話されている。図. S:つかないよ。. 2は当該児童が紙ヤスリで提示された黄色い細線を削って. S:借りてくる?. いる場面を示している。この児童はひもではないかという 指摘に対して、日常生活における既習経験に結び付け、見. T:つくかい? S:とれた. かけ上ひもに見れる物体でも表面を覆っているビニールを. S:とれた、とれた(ビニールがはげた) S:10円玉でもできるよ。. 取り除くことによって中にある導線を引き出すことができ. るという経験に基づいた考えを伝えている。この意味にお いては、提示された導線であるはずに黄色い細線を使用す. S:あっ、とれた S:ついたついた。. る学習が、. S:ついた。. 日常生活における自らの既習経験を想起させる. S:導線出てきた。10円玉みたい。 S:指でこちょっとやるだけでつくよ。置いといた方が つきやすい。 S:つめでやるととれやすいよね。 S:あー、ついた。 S:お−、ついた。. S:導線出るからつくんだよ。 T:ついたかい? S:やったあ。. S:ついた。(あちこちからついたという声がでる). 図2 黄色い細線を紙ヤスリで. (実験続く). 削っている場面. T:はい、じやあ、手をおいて。今ここに1本入れたら。 S:ついた。. ことに機能していると考えられる。 また、導線を使用して実験を開始した児童においては、「S: とれた、とれた」という発話に対して、「S:10円玉でもで. S:ついた。. T:ついたでしょ。最初にやったただの黄色いひも…は、 だめだったね。あれは黄色いひもで、電気が‥・。. きるよ」と発話する児童が現れている。電気の流れる物体. S:通らない。. として10円玉を挙げるに至っている様子を読み取ることが. T:通らなかったね。きっとね。でも、今後から配った やつは、ここもやったらすぐにとおったね。何か何. できる。電気を通すものの学習として導線と10円玉が連関 して思考されているものと考えられる。同形同色の物体で あっても、被覆されたビニールをはがすことによって銅線 を発見できたことが電気が流れる物体として、日常生活に. 色がでてきた。 S:くろっぼい。 S:あかっぼい。. S:10円玉の色。 T:そうだ。10円玉の色のやつがでてきました。それ. 見られる10円玉の通電性に児童の思考を連動させたと解釈. できる。最初に提示された黄色い細線の中心部に導線が存 在しなかったことから、後から提示された被覆導線の被覆 部分をはがす作業を通じて電気を通す物体としての導線に. ー136−.
(6) 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(3). 対する着目をより一層促したのではないかと考えられる。. ただ被覆部分を取り除いた導線を児童に直接提示して通電. この児童の発話によって、その後の「S:導線出てきた。. 性を確認する授業展開ではなく、本研究で試みたような同. 10円玉みたい。」という他の児童の10円玉に対するメタファ 表現を誘発し、最終的には「T:通らなかったね。きっと. 形同色の異なる2種の細線を活用する授業の展開が児童の. ね。でも、今後から配ったやつは、ここもやったらすぐに. 電気を通すものに対する理解を促すものと考えられる。 図3は、金具を取り外した電池ホルダーを使用して観察・. とおったね。何か何色がでてきた。」、「S:くろっぼい。」、. 実験し、その後授業者が電池ホルダーに金具を装着させる. 「S:あかっぼい。」、「S:10円玉の色。」という会話が現. れた。そして、電気を通すものとして「T:そうだ。10円. S:セロハンテープがあればくっつく。 (導線をホルダーにセロテープでつけた。). 玉の色のやつがでてきました。それが入ってる、それがは いってれば、電気がここをずっと通って、な、分かりまし. S:できた。. た。もっと長くすれば。」というまとめに至っている。さら. S:ついた。. に、「S:指でこちょっとやるだけでつくよ。置いといた方. S:ぴったりはまるといいのに。. がつきやすい。」や「S:つめでやるととれやすいよね。」. (中略). T:(中略)電気を通すものな、電気を通すものをじや. という自らの経験を交換するような発話を引き出したもの. あ、たとえばだぞ、電気を通すものを、これにな、. と考えられる。. ぱかって入れたときにかばかばいわないか?. 本研究における同形同色の異なる2種の細線を被覆した. S:いった。. まま提示して探究を促した展開を通じて、児童の思考は、. S:隙間空いてるから. 次のように変容している。. T:うん。この隙間に電気を通すものをつめこんでかば かば言わないようにして、ぴたっとおさまれば、手. (∋「S:つかない。」. 「S:むりだ。これただのひもじやない?」. 離してたってこうやってたってつくんじやないの. ②「S:紙ヤスリですればいいんじやない?」. か?. 「S:いや、ただのひもじやないよ。白い物体があった。」 ③「S:つかないよ。これ、ひもじやない?」 「S:つかないよ。ひもだもん。」 ④「S:導線出るからつくんだよ。」 つまり、最初は、被覆したまま提示された黄色い細線を 使用しても豆電球が点灯しないことから、提示された細線 がひもではないかと考えている。その後、紙ヤスリを使用. S:あ、動かない。. T:電気を通すものをここにかばっていれちやうの。そ うしたら、こうやってたって落ちないよ。こうやっ てたって. S:あ、落ちた。. T:電気を通すもの。実はね、ケースのここ、穴あいて るでしょ。この穴あいてる両方電気をとおすものを かばかばって入れて電気を入れると落ちなくて済む. して表面の被覆を取り除けば中の導線が露出して通電させ. ようなものがある。じやあ、00さんのを代表して 借りるよ。(金具を用意し、配布) S:10円玉でも。. ることができるという経験が交換され、中の白いひもを発 見するに至る。中に存在した白い物体が通電されれば、電 気を通すものとして結論付けられると考えたことによるも. S:10円?. のと解釈できる。そして、被覆を取り除いた状態で実験を 行ったところ、豆電球が点灯しないことから、被覆を取り. S:ああ。. S:10円玉でもできるかな。 T:10円玉だとね、一杯ないとだめなんだ。はい、ほ. 除いても白い物体があるだけでは通電しないという考えを. もつに至っている。その後、授業者によって被覆導線が提 示され、見かけ上、黄色い細線と同じであるが被覆されて いるビニールを取り除くことによって、中の導線が露出し て、それに接続することによって通電することを理解する に至っている。この過程を通して、児童は電気を通すもの は導線であるという認識が深められたと考えられる。 提示された黄色い細線が「S:ひもじやない?これ、やっ ぱり。うん。」に代表されるように、導線ではないと考える 児童と、「S:いや、ただのひもじやないよ。白い物体があっ た。」に代表されるように、見か桝まひものように見えるが. ら(金具をつけたホルダーに電池を入れて逆さまに. して演示)。落ちないぞ。これだったら、ぽんと置 いたって、こうつないで、豆電球ついてくれるぜ。 いいもの見つけたの(金具を指さしながら)。 S:金屑だ。. T:うん。金具。こういう金具を見つけたの。これをつ ければぴたっとおさまって楽にできるみたいだぞ。. よし、これちょっと。みんなにもあげよう。 (金具を付けた実験開始). S:あっ、ほんとだ、落ちない。 S:見して。ちょっといい?ちょっといい?すごい。. 被覆を取り除くことによって導線として機能すると考える. S:あ、そう. 児童とが存在し、それらの考えを被覆部分を取り除いて通 電実験を行うことによってそれぞれの予想が確かめられ、 理解が促される学習が展開している。その意味においては、. いえばラジコンの中にも. 乏ジコンの中坤. あったよ、金具。. −137−. こういう. のあった。.
(7) 三崎 隆・土居 慎也. 場面を示している。実際に提示した金具を取り外した電池. 文 献. ホルダーは図2に示されている。記号については図1と同 様である。. 八田明夫:小学校理科教材研究の視点と実践事例,八田明. 金具を取り外したままの電池ホルダーを使用して観察・. 夫・丹択哲郎・土田理・田口哲著「理科教育学一. 実験を行った児童は、セロテープを使って導線を電池の両. 教師とこれから教師になる人のために−」所収,. 極に接続したり導線を電池の両極に押さえつけたまま実験. 56−60,2004,東京教学社.. を行ったりしていたが、「S:ぴったりはまるといいのに。」. 川崎市立小学校理科教育研究会:まめ電球にあかりをつけ. という発話が見られた。金具の取り外された電池ホルダー. よう,飯利雄一・奥井智久・山際隆・武村重和監. では、電池を装着しても若干の空間ができ、電池を接続す. 修「理科教育実践講座16 教材教具の開発と利用」. る上では困難を来たしていた。その意味においては、当該. 所収,120−123,1988,小学館. 松森靖夫:子どもの多様な考えを活かして創る理科授業,. 発話は、電池に接続される通電性の高い物体は存在しない のかという疑問につながる発話であるとも解釈可能である。. 全201,東洋館出版社,1997.. 授業者が金具を示し、電池ホルダーに装着することによっ. 文部省:小学校学習指導要領解説理科編,19,1999,. て通電実験を容易に行うことができることを示した時点で、. 東洋館出版社.. 「S:金属だ。」という発話が見られた。この発話から、前. 森本信也:子どもの学びにそくした理科授業のデザイン,. 全177,東洋館出版社,1999.. 述の通電実験時における容易性を高める道具として金属を. 村山哲哉:理科の授業論一理科の授業改善を目指して−,. 理解した可能性と、通電物体として導線以外に金属がある. 理科の教育54(8),58−61,2005.. ということを理解した可能性が考えられる。後者の場合、. 島田光雄・島崎初枝:電気を通すもの,荻須正義・清水東. 通電性を有する物体としての金属に対する思考の広がりの 可能性と、電池ホルダーを提示するときから金具を取り付. 編「小学校理科実践指導全集2 対象と比較」所. けて提示する場合よりも金属が通電性を有していることに. 収,201−215,1995,日本教育図書センター. 土居慎也:理科学習指導案,北海道教育大学附属釧路小学. 各児童が自分で金具を電池ホルダーに装着する際には、「垂. .. 関する理解をより促す可能性が示唆される。 そういえばラジコンの中にもこういうのあった。ラジコン. 校・北海道教育大学附属釧路中学校「生きるカを はぐくむ義務教育のあり方Ⅰ一健康な身体にささ. の中にもこういう金具ついてた。あった、あったよ、金具。」. えられた「確かな学力」を求めて−」所収,40−43,. という発話が見られた。金属の金具に関する学習が、当該. 2005.. 児童の日常生活における経験を想起させた発話である。そ の意味においては、金具を通電の観察・実験後に提示した. [問い合わせ先]. ことが、当該児童の思考を日常生活との連関へと促したも のと考えられる。. 〒085−8580 釧路市城山1−15−55 北海道教育大学釧路校 三崎 隆 misaki@kus.hokkyodai.ac.jp. 6.まとめと今後の課題 本研究では、小学校第3学年理科の単元「明かりをつけ よう」において、児童が見かけ上区別することの困難な2 種の教材を提示した授業を実践した。 その結果、次の点が明らかになった。 ・提示された教材を使って探究する中で、児童には自分の 既習鍵験が想起され、それに基づいて思考が促され、観 察・実験が行われていく様態が見られた。 ・児童は相互に既習経験を発話したり交換したりしながら. 探究し、それによって電気を通すものについての理解を 深めていった。. 小学校第3学年においては、学習の過程において、自然 事象の違いに気づいたり、比較したりする資質・能力を育 成することに重点が置かれている(文部省、1999)。今後、 児童の問題解決の能力を育成する上で、比較できる素材を 教材化し、継続的に学びの場を構想していくことが大切で ある。. −138−.
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