顎顔面再建治療におけるデジタルワークフローの活用
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(2) 顎顔面再建治療におけるデジタルワークフローの活用. 11(55). および手術への応用に取り組んでいる.腫瘍切除および顎. Ⅱ.連携ワークフロー. 骨再建症例においては,顎骨再建のワークフローに示した. 1.顎骨再建. 様に進められる(図 1).. 頭頸部腫瘍や骨壊死による顎骨切除を必要とされる患者. 1) CT DICOM データを技工室のシミュレーション担. 数は増加している.顎骨切除後に,顎骨再建手術さらに咬. 当技工士へ届ける.2)頭頸部外科医,口腔外科医による. 合再建が行われるため,補綴治療を見据えた効率的で精度. 顎骨切除ラインの決定.3)形成外科医,口腔外科医によ. の高い顎骨再建システムが望まれている.従来,術者の経. る移植骨排列デザインの決定(移植骨の排列,血管吻合の. 験や感覚に委ねられてきた顎骨再建においても,客観的な. 予定部位,皮弁の種類および配置等).4) 1)~ 3)情報を. 三次元データに基づく CAD/CAM 利用は効率的で効果的. 元に,歯科技工士によるバーチャルサージカルシミュレー. な方法として有用であると諸外国で報告されているが,高. ション.5)外科医,補綴歯科医,歯科技工士によるシミュ. 額な費用や運送時間などから,保険診療ベースである日本. レーションの確認,修正(図 2a).6)再建模型製作.7). への既存システム導入は非常に困難である.そこで本院で. 口腔外科医による再建模型を用いた再建プレートベンディ. は多職種連携のもと,院内の CAD/CAM システムを利用. ング(ミニプレート使用の場合は,術前準備を行わない場. したサージカルシミュレーション,サージカルガイド製作. 合もある) (図 2b).8)歯科技工士によるプレートポジショ. 図 1 顎骨再建のワークフロー Fig. 1 Workflow for maxillofacial reconstruction. 図2 a:下顎骨再建 simulation b:再建模型,再建プレート,プレートポジショニングトレー Fig. 2 a:Superimposition of simulated reconstruction and original mandible images b:Simulated model with pre-bent reconstruction plate and plate positioning tray.
(3) 12(56). 顎顔面補綴 43 巻 2 号,2020. ニングトレー(図 2b),顎骨・移植骨切除ガイドデザイン,. 重要な行程の一つである 4,5)再建デザインの決定にお. 製作.9)顎顔面補綴歯科医による顎間固定用のスプリン. いては,外科医,補綴歯科医,歯科技工士が同席し,残存. ト(バイトスプリント)装着,外科医と切除ガイド等の装. 骨と移植骨との接合面積の最大化,顔貌の回復,舌のスペー. 置確認,手術室へ提出.10)外科医によるガイド,ポジショ. ス確保,対合歯との咬合等を考慮してバーチャルサージカ. ニングトレーを応用した手術(図 3a︲f)および術後管理.. ルシミュレーションを行う.三次元の再建シミュレーショ. 11)口腔外科医と顎顔面補綴歯科医による術後の顎位確認.. ン画像を前方,上下方,内方からと多方面から確認するこ. 下顎偏位がある場合は,顎間牽引およびバイトスプリント. とで,形成外科医が重要視する骨癒合促進や審美性の回復,. 装着による下顎位修正.12)顎義歯製作(エピテーゼ製作) (図 4a,b),インプラント治療へという流れとなる.最も. および補綴治療やインプラント治療による機能回復を行う ために最適な移植骨排列が可能となる.このサージカルシ. 図3 a,b:下顎骨切除ガイド c :腓骨切除ガイド d:顎間固定 e:再建プレート固定 f :腓骨固定 Fig. 3 a, b:Mandibular osteotomies using cutting guides c:Fibular osteotomy using a cutting guide d:Intermaxillary fixation with an occlusal splint e:Fixation of the reconstruction plate in the mandible f :Fixation of fibular segments.
(4) 顎顔面再建治療におけるデジタルワークフローの活用. 13(57). 図4 a:1 年経過時の口腔内写真 b:顎義歯装着時の口腔内写真 Fig. 4 a:Intraoral views at 1 year after surgery b:Intraoral views with prosthesis. ミュレーションをもとに,切除ガイド,プレートポジショ. 間固定することはできない.当院では術前に,顎顔面補綴. ニングトレーを製作し,実際の手術で再現する.この様に,. 歯科医は患者に,下顎偏位が生じる可能性の高い手術であ. 多職種連携によるチーム医療が必要である頭頸部腫瘍治療. る旨を説明し,上下顎固定スプリント(バイトスプリント). のワークフローの構築にあたり,デジタルテクノロジーを. を製作する.手術待機中に,悪性腫瘍増大により下顎が偏. 活用することで,効率的で効果的な医療提供を目指してい. 位する,または患部の歯が挺出する場合があり,中心咬合. る.顎顔面補綴歯科医は,このワークフローにおいて,外. 位が不明瞭になる場合があるため,患者受診後は早期にバ. 科医に委ねる手術以外の全ての過程で関与し,外科医や歯. イトスプリントを製作する様に心掛けている.下顎骨離断. 科技工士と密な連携をとり,円滑に手術および術後の治療. や Le fort Ⅰ 型骨切術等においては,術中,プレートや移. が進行するように取り組んでいる.しかし,悪性腫瘍の場. 植骨を用いた顎骨再建や骨整復の際に IMF スクリューを. 合などは,手術直前にプランが変更となる場合があるため,. 埋入しスプリントを用いて顎間固定を行う.しかし,プレー. 拡大切除に対応できる様にシミュレーションの段階で移植. トを用いて移植骨を残存骨に固定した後,皮弁処理等のた. 骨の配置は考慮するが,腫瘍の増大を確認しながら外科医. めに顎間固定は解除される.よって術後に,口腔外科医や. や歯科技工士と情報伝達を迅速に行い対応してゆかなけれ. 顎顔面補綴歯科医は顎位を確認し,偏位が見られればバイ. ばならない.. トスプリントを用いて顎間牽引を行う.経時的に下顎偏位. 2.下顎位. が起こりやすいため観察が必要であり,軽度の下顎偏位や. 腫瘍切除後には,下顎位の偏位に注意しなければならな. 中心咬合位が不安定な患者には,術後しばらくバイトスプ. い.日常臨床において,約 40 μm の厚さの咬合紙を用い. リントの装着による改善を行っている.また,下顎骨離断. てミクロン単位の咬合調整をする補綴歯科医が,下顎骨区. や Le fort Ⅰ 型骨切術や下顎骨離断を行わない顎骨部分切. 域切除,再建や咀嚼筋の切断などにより生じるミリ単位で. 除症例においても,偏咀嚼の影響からか下顎偏位がおこる. 偏位する下顎位に対応しなければならず,戸惑いは大きい. 場合がある.また,舌切除や創部,皮弁,植皮の瘢痕拘縮. と思われる.口腔外科では残存歯を利用し,術後一定期間. により,歯の舌側(口蓋側)への歯の傾斜がおこるため,. 顎間固定することで下顎偏位が最小限に抑えられることが. 術後の早期接触や下顎位変化には注意が必要である.. 多い.しかし,口腔内を皮弁再建した場合は,形成外科医. 3.顎堤粘膜形態. による皮弁血流確認等の診察が必要となるため,完全に顎. 術後の補綴治療を考える際,デンチャースペースの確保.
(5) 14(58). 顎顔面補綴 43 巻 2 号,2020. が最低条件であるが,義歯の安定においては,薄くて硬く. いる.中央技工室は一つ上の階にあり,歯科技工士との連. かつ機能時可動しない顎堤粘膜が好条件である.腫瘍切除. 携も取りやすい環境にある.顎骨再建シミュレーションの. 後に口腔粘膜が縫縮される場合は,義歯床下が口腔粘膜と. 際も,外科医を交えて三次元画像を動かしながら実際確認. なり,唾液分泌が正常であれば辺縁封鎖はしやすくなる. することで,顔貌回復に必要な骨格のポイント,咬合回復. が,デンチャースペースが小さくなる.下顎において,口. に必要なポイントを盛り込み,最善の再建プランの製作を. 唇や頬粘膜と舌や口腔底の粘膜が縫縮されると,機能時の. 効率的に行えるようになってきている.. 義歯床下粘膜の可動性が大きくなり,義歯の維持安定が困. Ⅲ.考 察. 難となる.そのため,義歯床を小さくして対応するが,無 歯顎の場合は義歯の維持安定を得るのは難しく,有歯顎の. 頭頸部腫瘍治療において,多職種連携によるチーム医療. 場合は残存歯への負担が増加する.皮弁再建では,厚い皮. が必要とされており,お互いの専門性を最大限に活用する. 弁の影響で,義歯床下粘膜の被圧変位量は大きくなる.し. ことで,より良い医療の提供がなされる.東北大学病院は,. かし,経時的に皮弁は萎縮し厚みは減少するため,義歯安. 医科部門と歯科部門が統合されていることにより,電子カ. 定に不利な環境は改善されていく.例えば,下顎骨区域切. ルテでの診療内容把握および院内 PHS による迅速な対応. 除後の骨性再建の場合は,必要十分な皮弁の大きさがあれ. が可能となっており,多職種連携によるチーム医療は行い. ば垂直的デンチャースペースが小さくとも,義歯装着によ. やすい環境にあるのかもしれない.しかし,多くの専門家. り皮弁を圧迫することで数年経過時に皮弁の厚みがさらに. が関わるがゆえの問題もある.顎骨再建手術においてはス. 薄くなり,デンチャースペースは確保される.よって,有. ピーディーなワークフローが求められるが,外科医の多忙. 歯顎の場合は,皮弁の厚みの問題は経時的に解消されてい. や専門性による着眼点の違いなどからプロセスの確認,決. く場合が多いが,義歯床下粘膜の可動性が大きい場合は,. 定,承認に時間がかかってしまえば,製作担当の歯科技工. 支台歯への過重負担は注意しなければならない.無歯顎の. 士の業務負担が増えてしまう.歯科技工士は他にも多くの. 場合は唾液分泌が正常であっても,皮弁―口腔粘膜縫合部. 仕事に従事しているため,手術日までの作業期間で効率的. と義歯床との位置関係や舌の状態にも関係するが,縫合部. に作業が進められるように環境を整える必要がある.よっ. の瘢痕拘縮が無く相当良好な状態でない限りは,義歯の辺. てチーム内での情報共有,お互いの専門知識の向上を定期. 縁封鎖は口腔粘膜に劣る印象である.顎堤粘膜相当部の皮. 的に行い,システマティックなワークフローを構築しなけ. 弁ボリュームが小さい場合は,舌,頰粘膜,翼突下顎縫線. ればならない.それにより,細部への配慮が可能となるこ. の動きに連動してテンションがかかり,皮弁の動きが大き. とから,さらにより良い医療提供が可能となる.各病院,. くなってしまう.よって,舌の可動時や開閉口時に義歯床. システムが違い協力体制も違うので,その中でできるベス. 下粘膜が大きく可動し義歯が離脱する.また,義歯が動く. トなワークフローを構築し効率的で質の高い医療提供を目. ことで,周囲組織に刺激となり炎症を誘発することがある. 指すためには,デジタルテクノロジーの活用は非常に有用. ため,義歯装着が困難になるケースもある.このように,. である.. 患者と顎顔面補綴歯科医が術後に直面する問題を外科医に も知ってもらうことは重要である.外科的に改善可能か不. 謝辞:本論文作成に多大なるご協力をいただきました,頭頸部. 可能か,お互いの知識向上のためにミーティングを開催す. 腫瘍チームメンバー皆様,本学,口腔外科 宮下 仁先生,形. るのが一番良いが,多忙などにより困難な現状にある.当 院では,当治療部は口腔外科と同じ階で隣接して診療をし ているため,問題点があればお互いすぐにフィードバック. 成外科 黒沢是之先生,高木尚之先生,頭頸部外科 小川武則 先生,大越 明先生,中央技工室 加藤裕光先生,原田貴之先 生に心より感謝申し上げます.. を行うようにしている.形成外科は一つ下の階であり相談 しやすい環境にはあるが,外来診察を合わせることが難し. 本論文の要旨は,一般社団法人日本顎顔面補綴学会第 35 回. いため,後日写真や模型を用いて症例のフィードバックを. 総会・学術大会(2019 年 6 月,仙台)において発表した.. 行っている.採取皮弁の大きさや縫合する位置などへの配 慮により補綴治療の難易度は大きく変わるため,フィード バックを通じて補綴しやすい環境整備に努めることで,機 能的な補綴装置製作が可能となる.頭頸部外科医,口腔外 科医とも毎週行われているキャンサーボードにて,切除内 容の確認,術後の再建方法について情報を密に取り合って. 開示すべき COI 関係にある企業などはない. 文. 献. 1)小山重人:大学病院における多職種連携,顎顔面領域におけ る疾病マネージメント.顎顔面補綴 41:12︲16,2018..
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