Title
宇井純先生・大嶺哲雄先生退官記念論集の発刊にあたっ
て
Author(s)
平良, 研一
Citation
沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(15): 1-3
Issue Date
1998-03-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5818
沖縄大学紀要第15号(1998年)
宇井純先生・大嶺哲雄先生
退官記念論集の発刊にあたって
平良研
この度、大嶺哲雄、宇井純両教授が定年を迎えられるにあたり、記念紀要論 文集を刊行する運びとなったことを教養科をはじめ関係各位と共に喜び、長い 間の様々なご苦労とすぐれた業績に対し心から敬意を表し、新たな門出を祝福 いたします。両教授は特任教授として一定の制約のもとに研究・教育を継続さ れますが、一方名古屋大学退官後5年にわたって共に自然科学系を担当された 伊藤嘉昭教授が今年度限りで退職されるということもあり、本論文集が伊藤教 授を含めての「記念」と激励になれば幸いです。 さて、大嶺教授と宇井教授の研究業績や教育業績等の足跡については別稿で 述べられるので、詳細については割愛させていただき、両教授が本学において 果たしてきた貢献について若干触れていくことで本学の今後の教養教育・大学 教育の方向性や在り方について共に考えていく契機になり、また同時にそのこ とが両教授に対するささやかながらも“贈り物”となるなら望外の喜びであり ます。 周知のように現在大学教育は重大な転機を迎えており、「改革」が全国的に 多様な形で進められております。本学でも既に法経学部の「改組」が行われ、 さらに今人文学部の設置に向けての準備が取り組まれています。そこで教養教 育についても、大学教育の総合的なパースペクティブから改めて問い直すこと が求められています。こうした状況の中で、両教授による「自然科学」の教育 は、従来の一般教育における人文・社会・自然三系列の科目履修の「バランス 論」を超えたカリキュラム編成上の重要な問題を提起しているように思われま す。即ち大嶺教授の「生命科学」、「科学史」、宇井教授の「環境科学」、「公害 論」は、総合科学学習として人間の生命や自然環境(そこには「社会」が複雑. -1-沖縄大学紀要第15号(1998年) 多様に関わる)をグローバルな視野から捉えることを通して大学における「学 び」の本質的な意味を教え、考えさせる内容を備えていると言えよう。真面目 に受講した学生は、恐らく自然科学を学ぶだけではなく、自然科学を通して人 間と社会の問題について認識を深めていく「学び」のおもしろさを味わうこと ができたのではないでしょうか。そしてそこには、すぐれた生態学者伊藤教授 を加えて一層内容的にふくらみを増し、文系大学におけるカリキュラムの中身 を豊かで有用なものにしていく方向性が示されています。それは自然科学の科 目をただ増やせばよいという単純な問題ではありません。今の社会のシステム とその内包する様々な矛盾や構造的な変化・発展の状況に対応していくには、 「ヒューマニズム」(その概念も変化している)を根底においた科学的・系統的 な物の見方・考え方や知識を学生が多角的に着実に学べるようにしていくこと、 そのためには自然科学の科目をどのように大学教育全体のカリキュラムに組み 込んでいくかが必然的に問われてきます。 本学のような小さな文科系大学において、三人のすぐれた自然科学系研究者 の存在は、ある意味で一つの“驚き”であり、また一方で贄沢だとの声も聞か れたが、各々の研究と教育にかける情熱も相まって本学の一つの特色をつくり 出していたとも言えようし、今後の大学教育の在り方についても貴重な示唆を 与えてきたと思います。ちなみに、教養科内で私たちは大嶺・宇井それに伊藤 教授の存在を前提にして、文系の沖大において「環境科学」をベースにした社 会科学系の大学院を作る「夢」を話題にしたこともありました。それは沖縄の 自然・地理的環境と結合し、今後沖縄の「国際都市形成」とも結ぶグローバル な視野に基づく-つの「構想」です。ともかくインフォーマルなかたちではあ るが、そこには大学の研究・教育の骨格を確固としたものにしていくために新 たな可能性を追求していきたいとの熱い思いがあることは確かです。 上述のように三教授の業績は多面にわたって貴重なものがあり、例えば宇井 教授の国際的な視野からの公害問題の研究・教育の実践は、沖縄にこれまでに ない新鮮なインパクトを与えたと言っても過言ではないと思います。これらの 実践は、今後現法経学部の充実を図っていく上でも、また開設予定の人文学部 も合わせて、その有機的、総合的な発展のために生かしていきたいものです。 -2-
沖縄大学紀要第15号(1998年) またそのためには、大学教育全体を総合的に研究し、連携・統括する組織とし ての「センター」の設置をも真剣に考えていかなければなりません。 最後に、本記念論文集の刊行が奇しくも本学の「改組」の時期と重なり、教 養科の行方も定かでない状況の中で両教授とも何かと心残りのする退官となっ たと拝察しますが、この度の「記念」が教養教育の新たな意義の確認と「改革」 への門出を印すものであることを祈念し、倦越ながら刊行にあたってのにと ば」にさせていただきます。 -3-