丹羽宣子著『〈僧侶らしさ〉と〈女性らしさ〉の宗教社会学――日蓮宗女性僧侶の事例から』
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(2) 常生活の連続性」を用い,他の 8 人の語りも適切に引用し, 「個人の問題として矮 小化させる圧力」が記述された(192 頁) . そして,僧侶たる彼女らの生活には,圧倒的多数の男性僧侶による(上下関係や 年功序列など暗黙のルールに支えられる)男社会,寺院は男性が継ぐとの固執した 考え,寺務と主婦業の両立困難さ, 「女性」という単純カテゴリー化,伝統的尼僧 観の強さ,など問題群への対応が必要とされていた.彼女らは,それぞれ〈僧侶ら しさ〉を再定義し,現場で自らの力を発揮し,多面的な戦略バリエーションを選択 し行動していた. このように,現代仏教界のジェンダー問題を析出した本書は,人口減少・後継者 不足・兼務兼職など,現代の宗教界の課題を遠景におきつつ,示唆に富む議論を展 開している.評者自身,大いに学ぶところが多かった.以下,若干気になったこと を指摘する. まず,本書の目的として扱われた事例は戦略的選択といえたかどうかである. 2000 年代以降,構築主義的な信仰理解が進むなか, 「信仰形成の自己物語」は「何 度もバージョンアップされる」ため,櫻井義秀は「従来の『事実発見型』調査研究 は意義を失った」と述べている(櫻井 2014) .A さんや B さんの信仰史に即応した 複数回のインタビューで違いが示されたのは興味深い.だが,本書では教師数が多 い 50 歳以上ではなく,少数派の若手僧侶が考察の中心に据えられた. 「らしさ」な どの意識には世代差もあると思う評者にとって,年代差についてもう少し知りたか った. 出家型尼僧の〈僧侶らしさ〉でもなく,男性僧侶の〈僧侶らしさ〉でもない,女 性僧侶の〈僧侶らしさ〉を描いた本書は,前二者の多様さに重きはおかれない. 「正しい姿」 「完成形」との理解があるからだろう(165 頁).男性僧侶が抱くᷤ藤 やジェンダーにまつわる息苦しさは今後の課題と言及され,単純な見方の危惧も表 明されている.剃髪・有髪はしばしば論及されていたが,他の「らしさ」も気にな るところだった. 『月刊住職』など業界誌では,本書の影響からか女性僧侶の紹介記事もみられる. ただし,日本でジェンダー宗教学をݗ引してきた川橋範子が述べるように, 「活発 に主体を発揮させ自己充足感を得ているかのように一面的に描」くことで「男性中 心主義的な宗教の構造的暴力や搾取を不問にし,不可視化してしまう」との注意は 常に必要だ(川橋 2019: 255) .筆者は本書で構造的差別のメカニズムにもしばし ば言及している.評者としては,それらに気をつけた上で,今後,筆者および関心 をもつ方々に,他宗派・他宗教への拡張を期待したい. [文献] 川橋範子,2019, 「ジェンダー論的転回が明らかにする日本宗教学の諸問題. ウルスラ・キング. とモーニィ・ジョイを中心に」 『宗教研究』93(2): 241-65. 櫻井義秀,2014, 『カルト問題と公共性. 裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか』北海道大. 社会学評論. 70(4) 423.
(3) 学出版会.. 唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖. 星野英紀・弓山達也 編. 『東日本大震災後の宗教とコミュニティ』 (ハーベスト社,2019 年,A5 判,384 頁,7,200 円+税). 猪瀬 優理. (龍谷大学社会学部准教授). 近年,日本全国各地でさまざまな災害によって多くの被害を人びとが受けている. 1 つひとつの災害において,1 人ひとりの被害があり,苦しみや悲しみ,悔しさや 寂しさが生まれている.一方で,少なからぬ人が「何かしたい」との思いを自発的 にもち,できる限りの支援をお互いに提供し合うことも生じている.そのような 「思いやり」が生まれる空間において,小さな慰めや励みも生まれるのかもしれな い.このようなとき,被災した人にとっても,それを支援したいと思う人にとって も,宗教的なものの見方や考え方が助けになることがある. 阪神・淡路大震災と東日本大震災を中心に『宗教と震災』について論じた三木英 は,この書の冒頭で「この復興のため,宗教には何ができるのだろう.人々の『宗 教離れ』が喧伝されるなか,宗教はいかなる貢献をなすことができるだろうか」と 問う.宗教こそ,このようなときに力を発揮するべきとの視点もあるだろう. この問いかけは,本書においても共有されている.本書の目的は,調査地を福島 県いわき市と相馬地域と双葉地域(以下,相双地域)に絞って, 「東日本大震災後 のコミュニティの再建における宗教(避難場所としての宗教施設,宗教教団や宗教 者の動向,祭りや民俗芸能や震災モニュメントの持つ意味など)の役割を解明する こと」 「現代社会における宗教の社会関係資本としての有用性・存在意義を教団ご と・地域ごとの特性に即した形で実証的に検討すること」である(ⅸ頁) . 編者の 1 人である星野英紀を中心に総勢 30 名ほどのチームで 2011 年から 2016 年までの 5 年間にわたり,復旧・復興対策期にある調査地での宗教諸集団の動向を 継続して調査してきた(一部の調査は,現在も継続中とのことである) .本書はそ の成果のまとめとなる. 本書は⚔部で構成されている.第⚑部「調査地の概要と震災被害」は,調査地で あるいわき市と相双地域の概略,当地における震災直後の宗教集団や宗教者の動向 について解説する.第 2 部「いわき市における震災後の宗教教団と宗教者」では, いわき市における震災直後から復旧・復興対策期の宗教集団と宗教者の動きが示さ れる.具体的には,高野山真言宗獨鈷山冷泉寺,浄土宗福島教区浜通り組青年会, 大國魂神社,いわき平キリスト福音協会,孝道教団,天理教,創価学会と伝統仏教, 70(4). 424.
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