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看護の視点の広がりを育成するための地域看護学実習 -実習効果を上げるための特徴的な取り組み-

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Academic year: 2021

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(1)

看護の視点の広がりを育成するための地域看護学実習

-

実習効果を上げるための特徴的な取り組み

-Practical training through a community health nursing course to enhance the perspective of students for providing care: characteristic activities to increase efficacy of practical training

工藤

節美

Setsumi Kudo, RN, PHN, MS

大分県立看護科学大学 広域看護学講座 地域看護学 Oita University of Nursing and Health Sciences

宇都宮

仁美

Hitomi Utsunomiya, RN, PHN

大分県立看護科学大学 広域看護学講座 地域看護学 Oita University of Nursing and Health Sciences

時松

紀子

Toshiko Tokimatsu, RN, PHN

大分県立看護科学大学 広域看護学講座 地域看護学 Oita University of Nursing and Health Sciences

大村

由紀美

Yukimi Ohmura, RN, PHN

大分県立看護科学大学 広域看護学講座 地域看護学 Oita University of Nursing and Health Sciences

2004年2月18日投稿, 2004年2月19日受理 要旨 大分県立看護科学大学における地域看護学実習では、実習を通して個人、集団、地域への看護の視点の広がりを育成 するために、県下全域で一斉に、同一保健所管内で訪問看護ステーション、市町村、保健所の順に実習を行っている。短 期間での実習効果を上げるために、施設毎の学生の配置数は2~4名の小人数とし、実習施設確保では県医務薬事課や保健 所との連携を図り、指導体制では行政保健師に臨地での実習指導を依頼し、さらに、広域看護学講座以外の看護系の全教 員の協力を得て指導にあたっている。実習後の学生の評価を総合的にみると、各施設の機能と役割、活動内容の理解、看 護職の役割と態度については十分理解が深まり、学生の主体性を伸ばす効果的な実習になっていた。今後の課題は、実習 施設•期間の調整、実習指導の平準化、市町村合併等に伴う新たな実習形態の検討等である。 Abstract

Practical training through the community health nursing course at Oita University of Nursing and Health Sciences aims to enhance the perspective of students for caring for individuals, groups, and the community. Students are required to train at visiting nursing stations, health organizations in municipalities, and public health centers, in this order. Students who are taking the community health nursing course are assigned to practical training at the same time, in facilities located all over the prefecture. Students are assigned to training at facilities governed by one public-health center in small groups of 2-4 students, in order to increase efficacy of training over a short period of time. The nursing school collaborates with the Medical and Pharmaceutical Affairs Division of Oita prefecture and public health centers to obtain approval for practical training from the facilities. The school asks public health nurses to supervise the practical training in clinical settings. We also provide supervision for students through collaboration with all faculty members teaching nursing except for those teaching public health nursing. Overall evaluations of students after the end of practical training demonstrate significant improvements in their understanding of the function and role of each facility and the roles and attitudes of nursing personnel. The training is effective in promoting initiative in students. Further evaluation is needed for arrangements with facilities and the duration of practical training, uniformity of content in practical training, and new methods of practical training through consolidation of municipalities.

キーワード

統合カリキュラム、地域看護学実習、訪問看護ステーション、保健所、市町村保健師 Key words

integrated curriculum, community health nursing practice, visiting nursing stations, public health center, municipal public health nurse

(2)

1. はじめに 近年の医療・保健・福祉をとりまく環境の急激な変 化に伴い、多様な社会ニーズに柔軟に対応できる質の 高い看護が求められる中、4 年制看護系大学・学部・ 学科においては、そのほとんどが看護師および保健師 の国家試験受験資格を付与する教育を行っている。 看護師、保健師の統合カリキュラムにより、施設内 の看護と地域の看護等を視野に入れて看護を提供でき る能力を有する人材(田中 , 1997)の育成を目指し、 各校が特色ある教育活動の展開や、独自の教育方法を 模索している状況である。 本学では、看護の対象を総合的に判断し、社会の ニーズに沿った看護を自律的に提供できる人材の育成 を目指した看護教育を行っており、地域看護において は、開学以来 3 回の地域看護学実習(以下、実習)を 経験したところである。講義、演習、実習の連動性を 考慮しながら、限られた一定期間において効果的な実 習となるよう、実習方法や実習前の演習内容の改善を 重ね、現在の実習形態に至った。そこで、本学の実習 の現状をここに報告する。 2. 実習効果を上げるための工夫 実習を通して、全ての学生が以下の事項を理解し、 学びを深めることを目指している。 i) 施設の特性と機能および看護の役割と活動内容 図 1. 平成 15 年度地域看護学実習施設 熊 本 県 宮 崎 県 福 岡 県 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ 施 設 名 ① 大分県中央保健所 ②    中央保健所日出支所 ③    中央保健所大分郡支所 ④    日田玖珠保健所 ⑤    日田玖珠保健所玖珠支所 ⑥    臼杵保健所 ⑦    佐伯保健所 ⑧    三重保健所 ⑨    竹田保健所 ⑩    中津保健所 ⑪    宇佐高田保健所宇佐保健部 ⑫    宇佐高田保健所高田保健部 ⑬    国東保健所 ⑭ 大分市保健所 ○:保健所、支所 ■:市町村 ▲:訪問看護ステーション

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ii) 個人、家族、社会集団の健康問題の解決方法と その過程 iii) 地域看護に携わる看護職者としての技術と態度 なお、地域看護学の実習は、3 年次から 4 年次にわ たって行う各専門領域(成人老人看護学、小児看護 学、母性看護学、精神看護学)の実習の最後に位置づ け、他の領域の実習を修了していない学生は履修でき ないことにしている。 (1) 地域看護学実習の展開 それぞれの地域の特性に配慮して、個人、集団、地 域へと視点を広げながら地域を包括的に捉え、主体的 に取り組めることに重点を置いた実習を行うために、 学生は同一の地域で在宅看護は訪問看護ステーション (以下、ステーション)、公衆衛生看護は市町村および 保健所の3箇所の施設で実習できるように各施設に依 頼している。 4年次の 5~6 月の 4 週間に、県下全域で一斉に実習 を行い(図 1)、同一保健所管内において、原則的にス テーション 1 週間、市町村 2 週間、保健所 1 週間の順 に実習を行う。 また、施設毎の学生の配置数はステーション及び 市町村で 2 名、保健所では 2~4 名とするなど、少人数 の配置としている。 平成 15 年度の全施設数はステーション 32、中核市 を除いた市町村 35、中核市を含む保健所および支所 14の計 81 施設であった。 実習内容は、個から地域への視点の広がりを目指 したものとし、実習に先立ち学生のモチベーションを 高めるために、学内で全体および実習地域別のオリエ ンテーションをきめ細かく行っている。 ステーションでは実習期間中に継続訪問が可能な 対象者最低1名について、看護計画の立案から評価ま でを必ず行っている。市町村では保健・医療・福祉シ ステムを踏まえて、母子または成人・老人等最低 1 名 の訪問指導、集団を対象とした健康教育、地区視診を 必須としている。市町村での訪問指導の1名について は、ステーションと同じく看護計画の立案から評価ま でを行い個別性のあるきめ細かな訪問指導のあり方を 学んでいる。保健所では、精神、難病、結核等の訪問 指導、管内全体を視野に入れた取り組みを行い、さら に看護職以外の職種との協働、デイケアなど保健所の 広域性、専門性について学びを深めている(図 2)。 (2) 実習施設確保のための県医務薬事課および保健 所との連携 施設との連携は、実習内容の決定や実習成果に大 きな影響を及ぼすものである。本学では、施設確保の ための調整として県医務薬事課(以下、県)、保健所 との連携に重点を置いている。 具体的には、保健所実習は県に、市町村実習は保健 所に受入れ調整の一部を依頼し、併せて実習に伴う情 報交換を行っている。本学から実習開始8か月前に県 に対して施設確保計画を提出し、県からは他教育機関 との実習重複や施設の受入れ状況等の情報提供を受 け、さらに施設確保に関する助言を得ている。保健所 に対しては、本学からは各保健所の保健指導課長に管 内の市町村の実習受入れ調整を依頼し、実習受入れ市 町村名の報告を受けている。このような連携をとり実 習に対する理解と協力を得るためには、日常的な県や 図 2. 実習内容と視点の広がり 【 【 【 【実実習実実習場習習場所場場所所所】】】】 視点 個個個個人人人人・・・・家家族家家族族族 地地域地地域域域 【 【 【 【訪訪訪訪問問看問問看看看護護護護    スススステテーテテーーーシショシショョョンンンン】】】】 【 【 【 【    市市町市市町村町町村 村村   】】】】 【【【 【    保保保保健健所健健所所所  】  】】】 ・施設の機能や 看護職の役割 ・在宅看護の 体験学習 ・保健・医療・ 福祉システム ・保健師の役割と 活動内容 ・地域の健康問題を 解決する方法 ・訪問指導や健康 教育などの体験 学習 ・保健所の機能及び役割、 多職種の活動内容 ・保健師の役割と活動内容 ・管轄地域の健康問題を 解決する方法 ・専門的な保健活動 (デイケア)などの体験 学習 実習内容

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保健所との信頼関係の形成が必須である。 (3) 実習施設との連携 施設決定後、保健所に対して実習打合せ会議の会 場提供や運営協力を依頼し、実習中は管内市町村から の問い合せへの対応を依頼している。さらに、市町 村、ステーション実習における緊急時対応の協力も保 健所にお願いしている(図 3)。 これらの連携体制は、初回実習時には十分に整っ ていなかった。これまでの実習を振り返り、施設確保 の段階からスムーズな実習運営と充実した実習を目指 して、県、保健所等の調整機能を活用して連携を図っ てきた成果である。さらに、日頃から大学と施設が双 方向性の関係で実習運営、学生指導に関われるよう、 より良い連携を築くことが重要である。 (4) 指導教員の配置と指導体制 学生に対して個別的かつ多角的な指導が行えるよ うに、指導教員は専任教員 2 名と担当教員 16 名で構 成されている。 専任教員は、広域看護学講座(地域看護学、保健管 理学、国際看護学)の教授、助教授が担当し、実習全 体の統括及び担当教員への助言や指導、そして必要時 には巡回指導を行っている。 担当教員は、A(8 名)と B(8 名)の 2 つの群に分 け、それぞれ直接担当する施設を巡回し、学生の指導 をすると共に各施設の実習指導者(以下、指導者)と の連絡、調整を行っている。 担当教員 A(以下、教員 A)は、広域看護学講座の 教員があたり、保健所管轄毎に配置し、担当教員B(以 下、教員 B)は、広域看護学講座以外(基礎看護学、 アセスメント看護学、精神看護学、小児看護学)の教 員があたり、大学近郊のステーションを巡回し、学生 指導にあたる。したがって、大学近郊のステーション で実習する学生は、保健所、市町村では教員 A が、ス テーションでは教員Bが指導を行っている。各教員の 担当施設は、スムーズかつ効果的な実習にするため可 能な範囲で毎年同じ施設になるよう配慮している。 担当教員は、事前に施設に出向き指導者と具体的 な実習内容や事例選定、カンファレンス時期等を決定 する。実習中は、カンファレンス日には必ず担当教員 が巡回し、学生、指導者、教員の 3 者で目標達成状況 を確認した後、その後の実習の修正を行う。実習終了 後は、指導者と教員とで意見交換を行い次年度の実習 に反映させている。 図 3. 実習施設決定以降の保健所へ依頼している事項等        保保 保保   健健 健健   所所所所 (実習打合せ会議 会場) 大分大大分分分県県県県立立看立立看護看看護護護科科科科学学大学学大学大大学学学 市市市 市町町町町村村村村 訪 訪 訪 訪問問問問看看護看看護ス護護ススステテーテテーシーーショシショョョンンンン 緊急時対応 ・市町村情報提供 ・実習打合せ会議運営協力 ・実習運営への助言 ・実習打合せ会議 開催連絡 調整・指導

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このような指導体制を構築するためには、3 者(専 任教員、教員 A、教員 B)の密な連絡や調整が必要で あり、人員や時間などの面で難しい点もあるが、学生 にとっては丁寧な指導が受けられ、充実した実習と なっている。また、広域看護学領域以外の教員にとっ ては、地域看護の視点をさらに広げそれぞれの専門領 域に活かすことができるため教員自身の資質向上へも 繋がっている。 (5) 学生の事前学習 実習に向け様々な形で事前学習を行っているが、 実習前1か月間で実施する地域看護診断および個人を 対象とした実践技術(以下、実践技術)に関する演習 には特に力を入れている。 演習は 5 名の教員が担当し、約 80 名の学生を 40 名 ずつ2群に分け、前半に地域看護診断を行った群は後 半に実践技術という形で展開している。 地域看護診断では、実習目標(以下、目標)の一つ である市町村における健康情報を収集し、地域の健康 問題を解決する方法やその過程を学ぶために、学生を 実習市町村毎にグループ編成(1 グループ 2 名)して 行っている。学生は実習市町村の既存資料や文献、イ ンターネット等により情報収集を行う。収集した健康 情報を解釈・判断して、実習地域における健康問題を 抽出し、レポートとしてまとめる。教員はこの過程に 詳細に関わりレポートが実習に直接役立つように指導 している。 実践技術は、目標の一つである直接的な対人支援 を体験学習し、保健師としての態度を身につけるため に、学生を 6 グループに編成(1 グループ 6~7 名)し て行っている。具体的には、在宅療養者の移動や入浴 援助、家庭訪問事例の検討とロールプレイ、訪問鞄の 扱い方などの最低限必要な技術・態度について実技や グループワークを行う。確実に技術習得できるように 2グループを1人の教員が担当し、指導を行っている。 この演習では、具体的に実習地域をイメージし、実践 に即した技術を習得した上で実習に臨めるように教員 と学生が密に関わる時間を設け、各々の学生の到達状 況に応じた個別的な指導を行っている。 3. 実習に対する教員の評価 実習は地域看護学研究室以外の研究室の協力を得 て行っているので、実習終了後に教員の意見交換会の 場を設け、実習の反省および改善に向けての参考にす ることにしている。 実習目標に即してみると、施設の機能の理解や地 域を包括的に捉ることについては、概ねプラスの評価 であった。これは、実習全般を通して体験学習の充 実、対象者とのコミュニケーションの徹底、学生と関 係職者とのディスカッションの機会などを積極的に取 り入れた成果である。さらに、同一保健所管内で実習 を行うことで、ステーション実習では家庭での療養者 に対する支援を、市町村実習や保健所実習では疾病予 防や健康づくりの側面からの支援を通して第一次予防 から第三次予防までの一連の関わりを理解させ、各施 設の役割、生活者としての対象者、生活の場としての 地域の理解が体験的に学習できたと考えている。学生 の看護職者としての態度に関しては、「実習経過とと もに看護職としての成長と自覚が感じられた」という 感想がある反面、「対象者に対してケアを積極的に提 供しようとする意欲が不十分である」等の意見もあっ た。これらは、看護職者としての資質に関わる重要な 課題であるが、実習のみでは培えないものである。そ のためには、教員は現代の学生の気質や特性を理解し たうえで、日頃の学習指導や各段階の実習指導等と連 動させ、学生個々の成長を助け見守っていくことが必 要である。 いずれにしても学生の学びを深め、効果的な実習 にするためには、学内外の実習指導体制をさらに充実 させていくことが重要であると考える。 4. 実習に対する学生の評価 実習終了後、学生にはファイナルレポートと実習 に対する自己評価表を提出させている。ファイナルレ ポートは実習全体を通した学びについて自由記述と し、自己評価表は「各施設の機能と役割」「看護職の 役割と活動内容」「健康情報の収集、健康問題の解決 方法と過程」「体験学習」「看護職者としての態度」「実 習態度」の 6 項目について 5 段階評価としている。 平成 15 年度のファイナルレポートを分析すると、 多機関・多職種との連携、保健活動の内容と看護職の 役割の関連性、専門職としての態度と能力、ステー ション・市町村・保健所への視点の広がり、法的根拠 に基づいた事業展開などの順で学びがあったとしてい る。中でも約 8 割の学生が多職種、多機関との連携の 実際を目の当たりにし、その重要性を実感している。 また、「情報収集、地区診断の必要性や重要性を認識 した」などの表現も目立った。 自己評価表では、「各施設の機能・役割」「看護職の 役割と活動内容」「看護職としての態度」「実習態度」

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の 4 項目は約 9 割が「できた」もしくは「ほぼできた」 と回答し、「健康情報の収集・健康問題の解決方法と 過程」「体験学習」の 2 項目は約 8 割が「できた」もし くは「ほぼできた」と回答した。「健康情報の収集、健 康問題の解決方法と過程」については、幅広い知識と 技術を身につけることと、それを実践に結び付けてい くことなどを学生自身が今後の課題としてあげてお り、実際に看護展開の過程を限られた期間で実践する ことは難しかったようである。また、「体験学習」に ついては、保健事業に参加する対象者がいなかったな ど体験学習を行う機会が不足していた地域もあり、自 己評価ができなかったという学生もいた。 学生の評価を総合的にみると、目標である各施設 の機能と役割、活動内容の理解、看護職の役割と態度 については十分理解が深まったものと考えられる。そ して、本実習の特徴の一つである、同一管内でのス テーション、市町村、保健所の順番で実習を行った学 生では、「視点の広がりがより実感でき具体化された」 などの表現が目立った。さらに、実習態度に対する自 己評価では 9 割が高く評価し、レポートでは「他の学 生に頼らず、問題解決をする積極性を養うことができ た」「人間的に成長した」などの表現もあり、少人数 の実習体制が、学生の責任感、積極性など主体性を伸 ばす効果的な実習になったと考えている。 5. 今後の課題 (1) 実習施設・期間の調整 県内の他の教育機関との地域看護学実習を行う施 設、期間等の調整が今後の大きな課題のひとつであ る。本学では実習準備を実習開始8か月前から行って いるが、施設確保計画作成の段階で、他教育機関と施 設や期間の重複が生じている。現在は、教育機関の担 当者レベルでの話し合いで決めているが、希望通りに はなりにくく、調整にもかなりの時間を費やしてい る。この状況は、実習運営面で少なからず支障をきた している。 各校が平等で、しかも効果的な実習を行えるため に全体を調整できる組織が必要であり、県の協力を得 て、施設や期間の調整を担う組織を明確に位置づけて いくことが必要である。 (2) 実習指導の平準化 学生の学習内容の平準化についてである。様々な 施設や指導者のもとで実習を行うことに伴い、施設に よって実習内容が限定されたり、指導者や教員の指導 方法が異なることによる差が生じることは否めない。 全ての学生が戸惑うことなく、整った環境のもと で目標にそった実習成果が得られるように指導者、教 員間での情報交換をさらに密接に図ること等による実 習環境の整備が重要である。 (3) 市町村合併等に伴う課題 県内市町村では、平成 17 年度を目途に市町村合併 に関する協議が行われているが、まだ具体的な方向性 は定まっていない状況である。合併に伴い、市町村数 や各自治体のシステム、さらに保健所数にも変化が生 じることが予測される。これらの動向を見据え、学内 においても今後の実習展開について十分な検討を重 ね、関係者からの的確な助言や協力を得て早期に試案 を作成する必要がある。 6. おわりに 近年、行政改革と共に地域保健の動向はますます 変化し、住民のニーズも多様化しつつある。地域で活 動する看護職にも、社会の動向に即した柔軟な対応が 求められ、地域保健活動の役割もより重要となる。大 学教育においても、看護師、保健師の統合的な教育が 可能となった中で、広い視野を持った質の高い看護職 の育成が求められる。教育カリキュラムにおける臨地 実習の意義もますます大きくなり、施設との連携の強 化を図る必要がある。より効果的な実習を展開してい くために、今回までの実習を踏まえ、今後も地域保健 の動向に即した実習環境の整備や、学生の社会性の希 薄さなど変化に応じた指導の改善を図りつつ、常に学 生の能力を伸ばす効果的な実習を模索していきたい。 参考文献 田中英雄 . (1997). 看護教育カリキュラム . :第一法規 出版株式会社 . 著者連絡先 〒 870-1201 大分県野津原町廻栖野 2944-9 大分県立看護科学大学 地域看護学研究室 工藤 節美 kudo@oita-nhs.ac.jp

参照

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