治療関連骨髄異形成症候群を発症した頰粘膜癌の1例
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(2) 20. 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 吉 澤 泰 昌ほか. 図 1 初診時の口腔内写真および生検材料の病理組織像 A: 初診時の口腔内写真。左側頰粘膜から上顎結節にかけて,表面不整で潰瘍を伴う弾性硬の腫 瘤性病変が認められる。 B:生検材料の病理組織像。異型細胞が胞巣状,索状に増殖し,一部に角化巣が認められる。. 図 2 治療前の各種画像所見 造影 CT 所見: 左 側頰部の腫瘤(矢印)の位置に一致した造影効果を伴う領域が認められる(A)。また,左側顎下部に rim enhancement を伴う腫大したリンパ節が認められる(B)。 MRI 所見: 左側頰粘膜の腫瘤(矢印)に一致して,T1 強調像では低信号(C),T2 強調像では中間信号(D)を呈する 領域が認められ,同領域は造影 MRI で造影効果が認められる(E)。また,腫瘤は左側上顎洞底部にも及ん でおり,上顎洞底部への骨浸潤が疑われた。 PET-CT 所見: 病変と一致する部位に FDG の異常集積が認められる(F)。さらに,左側顎下リンパ節,左側中内深頸リン パ節(G),および左側副神経リンパ節に FDG の異常集積が認められる(H)。しかし,その他の部位に遠 隔転移を疑わせる異常集積は認められない。.
(3) t-MDS を発症した頰粘膜癌の 1 例. 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 21. 遠隔転移を疑わせる異常集積は認められなかった。. 個,左側顎下リンパ節の 2 個に認められた。いずれのリン. 臨床検査所見:赤血球数が 413 万 /μl,ヘマトクリッ. パ節も節外浸潤は認められなかったが,T4a で頸部多発リ. ト 値 が 41.6%, ヘ モ グ ロ ビ ン(Hb) 値 が 14.1g/dl で 貧. ンパ節転移症例であることより,術後補助療法を行うこと. 血 は 認 め ら れ ず,γ-GT が 27U/l,AST が 12U/l,ALT. とした。ESD 施行時に発見された下咽頭癌に対する治療. が 9U/l で, 肝 機 能 に 異 常 は 認 め ら れ な か っ た。 さ ら. も必要であることより,当院耳鼻咽喉科と相談するととも. に,クレアチニン値が 0.71mg/dl,尿素窒素が 3.8mg/dl,. に,長時間の持続点滴を避けて欲しいとの患者の希望を考. eGFR 88.4ml/ 分 /1.73m2 で腎機能に異常は認められず,. 慮し,術後補助化学療法として多剤併用化学療法(DTX:. 腫 瘍 マ ー カ ー で は SCC が 1.0ng/ml,CEA が 1.8ng/ml,. 80mg/body,CDDP:80mg/body,S-1:100mg/body;. CYFRA が 1.9ng/ml であった。. day1-14)を 2 コース施行した。その後,術後化学放射線. 上部消化管内視鏡所見:胃体上部大彎部および胃体中部. 療法として S-1(120mg/day)を 2 週投薬1週休薬で 2 コー. 前壁に発赤を伴う隆起状の病変が認められ,生検の結果,. ス投与するとともに放射線を 1.8Gy/ 回で 25 回,計 45Gy. いずれも高分化型管状腺癌との診断であった。. を右側梨状陥凹部を含めた頸部に照射した。化学放射線療. 臨床診断:左側頰粘膜癌(T4aN2bM0,Stage Ⅳa),胃. 法終了後,右側梨状陥凹に認められた腫瘍は CR となった. 癌(T1N0M0,Stage Ⅰ)。. が,2013 年 1 月の内視鏡検査にて再発が認められたため,. 処置および経過:2012 年 4 月下旬,左側頰粘膜の腫瘤. 切除術が施行された。その後,頰粘膜癌および下咽頭癌,. に対して生検を行い,病理組織所見で異型細胞が胞巣状,. 胃癌いずれも再発・転移は認められず経過良好であった。. 索状に増殖し,一部に角化巣が認められたことから中分化. 2016 年 4 月上旬,39℃の発熱が生じるとともに,血液. 型扁平上皮癌と診断した(図 1B)。その後,術前検査にて. 検査にて汎血球減少(赤血球数:210 万 /μl,白血球数:. 認められた早期胃癌に対して,当院消化器内科にて内視鏡. 1,120/μl,好中球数:881/μl, 血小板数:3.5 万 /μl)が認. 的粘膜下層剥離術(ESD)が行われた。その際,右側梨. められ,Hb 値が 6.4g/dl に低下した(表 1)。そこで,血. 状陥凹部に径 5 mm の腫瘤が認められ,生検により下咽頭. 液疾患を疑い,当院血液内科に対診したところ,末梢血中. 癌(T1N0M0,Stage Ⅰ,高分化扁平上皮癌)と診断された。. の芽球数が 15%,WT1 mRNA が 680 コピー /μg RNA で. 下咽頭癌については当院耳鼻咽喉科に対診し,頰粘膜癌の. あった。さらに,末梢血のフローサイトメトリー解析にて,. 術後に対応してもらうこととなった。そこで,頰粘膜癌の. 白血病細胞マーカーである CD13,CD33 および CD34 が陽. 手術を計画したが,手術までの待機期間が約 1 か月となっ. 性であったが,染色体検査において染色体型は正常であっ. たため,腫瘍の増大を抑制する目的で術前に S-1(120mg/. た。その後,骨髄穿刺を行い病理組織学的に検索したとこ. day)を 2 週間投与した。. ろ,H-E 染色およびギムザ染色で小型の巨核球が主体で,. 2012 年 5 月下旬,全身麻酔下に左側機能的全頸部郭清. 分葉核球がなく,幼若な PAS 染色陽性の顆粒球が認めら. 術,左側頰粘膜腫瘍切除術および前腕皮弁による再建術を. れ,芽球数は 10% であった(図 3) 。以上より,染色体核. 行った。原発巣は腫瘍周囲に約 1 cm の安全域を設けて切. 型が正常(スコア 0)で,骨髄芽球数:10%(スコア 1.5) ,. 除し,上顎骨の左側臼歯部を後方の翼状突起外側板を含め. Hb 値:6.4g/dl,血 小 板 数:3.5 万 /μl お よ び 好 中 球 数:. て切除し,前腕皮弁にて再建した。手術時間は 14 時間 20. 881/μl で3系統の血球減少(スコア 0.5)が認められるこ. 分で,出血量は 1,650ml であった。切除物の病理組織検査. とから, 「MDS の国際予後予測スコアリングシステムであ. にて,原発巣の切除断端は陰性であったが,リンパ節転移. る International Prognostic Scoring System(IPSS) の ス. が左側副神経リンパ節の 1 個,左側中内深頸リンパ節の 1. コア」を算出すると,スコアは 2 となり,Intermediate-2. 表 1 t-MSD 治療中の血液検査データーの推移 治療前. AZA 1 クール前. AZA 4 クール前. AZA 8 クール前. AZA 11 クール終了時. 1,120. 6,200. 8,200. 7,200. 1,000. 赤血球数(×1,000 /μl). 210. 229. 474. 496. 221. 血小板数(×1,000 /μl). 3.5. 2.9. 27.4. 25.8. 14.0. 白血球数( /μl). ヘモグロビン値(g /dl). 6.4. 7.3. 13.2. 17.2. 6.6. 好中球数( /μl). 881. 806. 4,380. 5,500. 60. 芽球数(%). 15. 86. 0. 0. 92. WT1 mRNA(コピー /μg RNA). 680. 40. 69. 2,300. 20,000.
(4) 22. 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 吉 澤 泰 昌ほか. 図 3 AZA 投与前の骨髄像 A:H-E 染色。主に,小型の巨核球が認められる。 B:ギムザ染色。主に,小型の巨核球が認められる。 C:PAS 染色。分葉核球がなく幼若な PAS 染色陽性の顆粒球が認められる。. 図 4 t-MDS 発症後の治療の概略. (Int-2)の t-MDS と診断した。. 白血球数が 8,200/μl,赤血球数が 474 万 /μl,好中球数が. そこで,Hematopoietic Cell Transplantation-specific. 4,380/μl,血小板数が 27.4 万 /μl と汎血球減少が改善し,. Comorbidity Index(HCT-CI) を算定したところ 4 点で. 芽球数が 0%,WT1 mRNA が 69 コピー /μg RNA であっ. 同種造血幹細胞移植の適応外であり,Int-2 の t-MDS で. たため完全寛解と判定したが,AZA の投与を継続した。. あったことより,中~高リスクの t-MDS の第一選択薬で. AZA 投与 8 コース前の血液検査で WT1 mRNA が 2,300. あるアザシチジン(AZA)による治療を選択した(図 4)。. コピー /μg RNA と上昇していたため骨髄穿刺検査を再度. AZA は 75mg/body を day 1 に投与し,27 日間休薬を 1. 行ったところ,骨髄巨核球はごく少数で一部に幼若な細. コースとして治療を開始した。AZA 投与 1 コース目から. 胞が少数残存していたが,CD34 は陰性で完全寛解は維持. 3 コース目までは濃厚赤血球製剤を合計 12 単位および濃. されていた(図 6)。なお,同時期に撮影した胸部 CT に. 厚血小板製剤を合計 18 単位輸血した。4 コース目以降は. て薬剤性肺炎は改善されていた(図 5B)。しかし,AZA. 汎血球減少も改善し輸血は不要となった。AZA 投与 2 コー. 投与 11 コース終了時に,芽球数が 92%,WT1 mRNA が. ス目に薬剤性間質性肺炎を併発したためステロイドパル. 20,000 コピー /μg RNA に上昇したため,再発と判定し,. ス療法を開始した(図 5A) 。AZA 投与前の発熱に対して. 化学療法を中止して緩和ケアに移行した。その後,汎血球. PIPC/TAZ を,1 コース目の発熱に対しては PIPC/TAZ. 減少が進行し,2017 年 4 月上旬,死亡した。. 4). および VACM を,さらに,抗真菌薬として MNZ および L-AMB を投与した。いったん解熱が得られたが,再度発 熱したため,抗菌薬を CFPM,CPFX および ST 合剤に,. 考 察. 抗真菌薬を ITCZ-OS に変更した。AZA 投与 3 コース目. MDS はクローン性造血障害であり,単一もしくは複数. で解熱が得られたが,ST 合剤および ITCZ-OS の予防投. の血球系の減少,形態学的異形成,骨髄における無効造血. 与は継続した。AZA 投与 4 コース投与前の血液検査にて. および急性骨髄性白血病の発症リスクを合わせ持つ予後.
(5) t-MDS を発症した頰粘膜癌の 1 例. 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 23. 図 5 薬剤性間質性肺炎の治療前後の CT 所見 A:治療前,B:治療後. 図 6 AZA 8 クール目開始前の骨髄像 A:H-E 染色。骨髄巨核球はごく少数で,一部に幼若な細胞が少数残存している。 B:ギムザ染色。骨髄巨核球はごく少数で,一部に幼若な細胞が少数残存している。 C:PAS 染色。PAS 染色陽性細胞は,ほぼ消失している。 D:CD 34 免疫染色。CD 34 は陰性である。. 不良の骨髄疾患である5)。WHO 分類の第 3 版 6)では,化. に比べて予後不良とされている10-13)。. 学療法あるいは放射線療法の後に発症する MDS が t-MDS. Kuendgenら12)は,t-MDS を発症した 1 次腫瘍において,. と分類されていた。しかし,WHO 分類の改訂第 4 版 7)で. 乳癌が 28%,前立腺癌が 18%で,固形癌が全体の 54%を. は,t-MDS は従来の MDS の分類から独立した疾患とし. 占めていたと報告している。また,Lindsayら14)は化学療. て therapy-related myeloid neoplasms(t-MN)に分類さ. 法を行った 23 種類の固形癌における t-MDS の相対的発症. れており,腫瘍性疾患の有無にかかわらず,細胞障害性の. 率は骨肉腫,精巣癌および軟部肉腫で 10 倍以上,腹膜癌,. 化学療法や放射線療法の既往歴がある患者において発症す. 小細胞肺癌,卵巣癌および卵管癌で 5 倍から 9 倍であった. る血液悪性腫瘍とされている。さらに,同第 4 版では染. と報告している。いずれの報告においても,頭頸部癌が 1. 色体異常の有無の併記が一般的になった。MDS における. 次腫瘍で t-MDS を発症した症例は少なく,本邦での報告は. t-MDS の割合は 10 ~ 20%で 1,8,9),t-MDS は原発性 MDS. われわれが渉猟し得た限りでは 10 例 15-23)であった。.
(6) 24. 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 吉 澤 泰 昌ほか. 化学療法後に発症した t-MDS では,投与薬剤の用量依. の症例では易疲労感,倦怠感などの貧血症状が,10%に発. 。Tra-. 熱が認められたと報告している。自験例における t-MDS の. visら25)は,卵巣癌患者を対象にした研究において CDDP. 初発症状は 39℃の発熱および汎血球減少であり,骨髄芽球. 存的に発症リスクが高まることが知られている. 24, 25). あるいは CBDCA の投与歴のある患者の t-MDS の発症リ. が 15%,WT1 mRNA コピー数が 680 コピー /μg RNA で. スクは非投与群に対しそれぞれ 3.3 倍あるいは 6.4 倍であ. あったため,血液疾患を疑い骨髄穿刺にて Int-2 の t-MDS. り,CDDP 総投与量が 1,000mg を超えると 7.6 倍となると. の診断に至った。. 報告している。. t-MDS の根治的治療は同種造血幹細胞移植以外にはな. さらに,化学放射線治療による t-MDS は治療後,約. いと考えられていた35)。しかし,t-MDS の患者は高齢者. 5 ~ 7 年で汎血球減少を発症することが多いとされてい. や併存疾患を有する患者が多いため姑息的に支持療法の. 。また,仁村ら は,t-MDS の発症までの期間は. みしか行えないことも多い。これまで,通常療法として用. 治療後 3 か月から 14 年と報告している。本邦で報告され. いられてきた低用量 Ara-C(cytosine arabinoside)療法. る. 26,27). 22). に CDDP や. や多剤併用療法である DCMP 療法(daunomycin;DM,. CBDCA の投与歴があり,また,放射線治療に関しては 7. Ara-C,6-mercaptopurine および predonisolone),DC 療. た頭頸部癌患者 10 例 例. では,4 例. 15-23). 15, 20, 22, 23). に外照射が施行され,1 例. 15,17-20, 22, 23). では小線源によ. 21). 法(DM,Ara-C)も輸血等の支持療法を上回る成績は得. る組織内照射が行われていた。自験例では,頰粘膜癌の術. られていない 36)。. 前に S-1 を 2 週間投与し術後,CDDP,DTX および S-1 に. それ以外にも,レナリドミドによる免疫抑制療法,ダル. よる多剤併用化学療法を行い,その後,S-1 を併用した化. ベポエチンアルファによるサイトカイン療法,デフェラシ. 学放射線療法を施行した。多剤併用化学療法の使用薬剤は. ロスクによる鉄キレート療法などの治療法がある37,38)。免. DTX,CDDP,S-1 であるがタキサン系,フルオロウラシ. 疫抑制療法は Hb 値の上昇および輸血非依存化という血液. 。自験. 学的改善のみならず,細胞遺伝学的な染色体異常クロー. 例における CDDP の総投与量は 269.1mg であり,t-MDS. ンの消失という効果をもたらし,完全寛解が得られる根. の発症への影響は低いと考えられた。. 治的治療で,特に輸血依存性の del(5q)を伴う低リスク. ル剤でも t-MDS を発症することが知られている. 20, 28). 放射線療法後の t-MDS の発症リスクは,赤色骨髄が残. t-MDS に有効な治療法であるとされている。サイトカイ. る胸骨や椎体への放射線照射で特に高くなる 。口腔癌症. ン療法は低リスクで貧血を伴い,血清エリスロポイエチン. 例の放射線照射領域には下顎骨や頸椎が含まれ,これらの. 濃度が 500mIU/ml 以下の症例において , 輸血の回避や輸. 部位は造血髄であるため,照射が t-MDS の発症率を誘発. 血依存の回避に有効であると考えられている。鉄キレート. させる可能性が推測される。t-MDS の発症率や発症まで. 療法は頻回の輸血を伴う低リスクの MDS に有効な治療法. の期間は,放射線や化学療法の種類,総量および治療強度. で,頻回の輸血による鉄過剰によって引き起こされる心不. に依存し,化学放射線療法併用は化学療法あるいは放射線. 全や肝不全を経口鉄キレート剤によりコントロールするこ. 療法単独より発症率が高いと言われている 。自験例にお. とを目的とする37,38)。自験例では,血清エリスロポイエチ. いては,多剤併用化学療法に加えて化学放射線併用療法を. ン濃度は 538mIU/ml であり,輸血依存性の del(5q)が. 実施したことが t-MDS を発症させた要因と考えられた。. 認められず,頻回の輸血による鉄過剰も認められなかった. ま た,t-MDS 発 症 ま で の 期 間 は 治 療 後 4 年 で あ り,. ため,免疫抑制療法,サイトカイン療法および鉄キレート. Travisら の報告や仁村ら の報告と概ね一致している. 療法は適応ではなかった。. が,t-MDS の発症までの期間は多岐にわたっており,注. また,同種造血幹細胞移植の適否を評価する HCT-CI4). 意深く経過を見ていく必要があると考えられる。. を算定したところ,頰粘膜癌,胃癌および下咽頭癌という. 本疾患の大きな特徴として,染色体核型異常が著しく高. 固形腫瘍の既往(スコア 2 点)と一秒率が 60.93%の中等. 頻度にみられることが挙げられ,主に 5 番染色体や 7 番染. 度肺疾患(スコア 2 点)のためスコアが 4 点となり,スコ. 色体の欠失性変化や 11q23 を基軸とする染色体相互転座. アの合計が 2 点以下である同種造血幹細胞移植の適応外と. 。この染色体. なった。そこで,中~高リスクの MDS の第一選択薬であ. 29). 30). 25). 22). を示すことが多いことが報告されている. 31, 32). 核型異常は t-MDS の 80%に存在するとされているが,認. る DNA メチル化阻害薬の AZA の投与が考慮された。. められない場合もある 。自験例においては末梢血単核球. AZA はリスクの高い MDS で生存期間の延長に優れた. を用いて染色体検査を実施したが,染色体異常は認められ. 効果が示されており,造血幹細胞移植以外に MDS の予. なかった。. 後を有意に改善できる治療選択肢として極めて重要であ. 鵜池 34)は,t-MDS の患者の 15%は症状がなく,経過観察. ると考えられている35)。しかし,リスクの低い MDS の場. 中の血液検査で発見され,Hb 値の低下が 96%,血小板数. 合,血液学的改善効果は期待されるものの生存期間延長効. の減少が 80%,白血球数の減少が 54%に認められ,半数. 果は明らかでないことから,他の治療に優先して AZA を. 33).
(7) t-MDS を発症した頰粘膜癌の 1 例. 選択する利点は乏しいと考えられている37)。AZA による 治療は国際第Ⅲ相試験において通常治療(支持療法,低 用量 Ara-C 療法,多剤併用療法)と比べ高リスク MDS 患 者の生存期間を有意に延長したという報告がある35)。さら に,芽球数の割合が 20-30%の急性骨髄性白血病(AML) および 30%以上の高齢者 AML に対しても有効で,65 歳 以上の症例に対しても安全に使用できることが報告されて いる39)。MDS 患者を対象とした Fenaux らの海外臨床試 験 35)では,輸血などの支持療法や抗癌剤を使用した通常 治療と AZA による治療を比較した結果,通常治療の生存 期間中央値が 15 か月であったのに対し,AZA による治療 では 24.5 か月に伸びており,2 年後の生存率も AZA 治療 群では 50.8%で,通常治療群の約 2 倍と報告されている。 しかしながら,自験例の場合,AZA 投与により一時は完全 寛解が得られたが,AZA 療法を継続していたにもかかわら ず,完全寛解開始から 7 か月で再発し,その 1 か月後には 死亡し,Fenaux らの報告 35)した生存期間より短かった。 口腔癌治療に対して,化学放射線療法を行った場合,腫 瘍の再発および転移の有無の経過観察は当然のことである が,t-MDS を念頭において,倦怠感,発熱などの全身所 見に気を配るとともに,汎血球減少などのチェックのため に定期的な血液検査を実施する必要があると考えられた。 結 語 治療関連骨髄異形成症候群を発症した頰粘膜癌の 1 例を 経験したので報告した。 謝辞 稿を終えるにあたり,本症例に関して多大なる御協力ならびに 御助言を頂きました高知大学医学部附属病院血液内科の森 正和 先生,谷口亜希子先生に心より深謝いたします。 本論文に関して,開示すべき利益相反状態はない。 文. 献. 1) Ades, L., Fenaux, P., et al. : Myelodysplastic syndromes. Lancet 28:2239-2252, 2014. 2) 内山 卓,石川隆之,他:骨髄異形成症候群診療ガイド.最 新医学 61:375-388,2006. 3) Swerdlow, S.H., Campo, E., et al. : WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, IARC, Lyon, 2008, 88-93. 4) Mohamed, L., Sorror, M.B., et al. : Hematopoietic cell transplantation(HCT)-specific comorbidity index : A new tool for risk assessment before allogeneic HCT. Blood 106: 2912-2919, 2005. 5) Mufti, G.J., Bennett, J.M., et al. : Diagnosis and classification of myelodysplastic syndrome: International Working Group on Morphology of myelodysplastic syndrome(IWGM-MDS). 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 25. consensus proposals for the definition and enumeration of myeloblasts and ring sideroblasts. Haematol 93:1712-1717, 2008. 6) Jaffes, W.S., Harris, N.L., et al. : WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, IARC Press, Lyon, 2001, 63-67. 7) Swerdlow, S.H., Campo, E., et al. : WHO Classification of Tumors of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed, International Agency for Research on Cancer, Lyon, France , 2017, 153-155. 8) Leone, G., Mele, I., et al. : The incidence of secondary leukemias. Haematol 84:937-945, 1999. 9) Vardiman, J.W., Thiele, J., et al. : The 2008 revision of the World Health Organization(WHO)classification of myeloid neoplasms and acute leukemia : Rationale and important changes. Blood 114:937-951, 2009. 10) Smith, S.M., Huo, D., et al. : Clinical-cytogenetic associations in 306 patients with therapy-related myelodysplasis and myaeloid leukemia : The University of Chicago series. Blood 102:43-52, 2003. 11) Takeyama, K., Seto, M., et al. : Therapy-related leukemia and myelodysplastic syndrome: a large-scale Japanese study of clinical and cytogenetic features as well as prognostic factors. Int J Hematol 71:144-152, 2000. 12) Kuendgen, A., Nomdedeu, M., et al. : Therapy-related myelodysplastic syndromes deserve specific diagnostic sub-classification and risk-stratification-an approach to classification of patients with t-MDS. Leukemia, in press, 2020. 13) Zeidan, A.M., Al, A.N., et al. : Comparison of clinical outcomes and prognostic utility of risk stratification tools in patients with therapy-related vs de novo myelodysplastic syndromes : A report on behalf of the MDS Clinical Research Consortium. Leukemia 31:1391-1397, 2017. 14) Lindsay, M., Graca, M., et al. : Association of Chemotherapy for Solid Tumors With Development of Therapy-Related Myelodysplastic Syndrome or Acute Myeloid Leukemia in the Modern Era. JAMA Oncol 5:318-325, 2019. 15) 藤澤 信,丸田壱郎,他:Therapy related leukemia の臨床 的検討.臨血 36:1163-1169,1995. 16) 秋定 健,折田洋造,他:喉頭癌治療中に発症した骨髄異形 成症候群.耳鼻臨床 90:1393-1397,1997. 17) 永井孝一,阿部 惇,他:二次癌としての治療関連白血病の 臨床.新潟県病医誌 6:1-4,1998. 18) 井口芳明,小川克二,他:頭頸部悪性腫瘍の治療後に発症し た骨髄異形成症候群の 1 例.耳喉頭頸 72:264-267,2000. 19) 井内康之,佐藤一也,他:甲状腺癌に対する131I 内照治療後 に発症した (4;11) t (q21;23)を有する急性リンパ性白血病. 臨血 46:1202-1207,2005. 20) 土井勝之,浅野貴徳,他:口腔癌治療後に発症した骨髄異形 成症候群の 2 例.日耳鼻 113:556-560,2010. 21) 中川貴之,太田耕二,他:小線源治療による治療関連骨髄異 形成症候群を発症後に晩期再発をきたした舌癌の 1 例.日口 外誌 64:38-42,2018. 22) 仁村文和,丸山哲昇,他:進行癌治療後に発症した治療関連 骨髄異形成症候群の 1 例.口腔腫瘍 31:91-96,2019. 23) 松尾美央子,次郎丸利那:口腔癌化学放射線治療後に骨髄異 形成症候群に至った 1 例.頭頸部癌 43:388-392,2017. 24) Kollmannsberger, C., Beyer, J.P., et al. : Secondary leukemia following high cumulative doses of etoposide in patients.
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(9) t-MDS を発症した頰粘膜癌の 1 例. 口腔腫瘍 33 巻 1 号 2021. 27. A case of carcinoma of the buccal mucosa with the development of therapy-related myelodysplastic syndrome Yasumasa Yoshizawa, Naoya Kitamura and Tetsuya Yamamoto Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Kochi Medical School, Kochi University (Chief : Prof. Tetsuya Yamamoto) Abstract Therapy-related myelodysplastic syndrome(t-MDS)is a pathological condition with quantitative and qualitative dysplasia of erythrocytes, leucocytes, and platelets after chemotherapy and/or radiotherapy for malignant tumors. Here, we report a case of carcinoma of the buccal mucosa with the development of t-MDS. The patient was a 57-year-old male. He had noticed painful swelling and ulceration on the left buccal mucosa and visited our department. General examination revealed gastric carcinoma, which was treated with endoscopic submucosal dissection, and hypopharyngeal carcinoma. Histopathological diagnosis of a biopsied buccal mucosal material was moderately differentiated squamous cell carcinoma. Clinical diagnosis was buccal mucosal carcinoma (T4aN2bM0, Stage Ⅳa). Functional total neck dissection, buccal mucosal tumor resection, and reconstruction by a forearm flap were performed after administration of S-1 for 2 weeks. Pathological examination revealed four regional lymph node metastases, but the surgical margin was negative. Then, combined chemotherapy(CDDP, DTX, and S-1) and chemoradiotherapy with S-1 and X-rays were performed as adjuvant therapy for buccal mucosal carcinoma and chemoradiotherapy for hypopharyngeal carcinoma. Four years after the adjuvant chemoradiotherapy, continued fever and pancytopenia were observed, and the number of myeloblasts and WT1 mRNA copies in peripheral blood increased. Bone marrow examination revealed CD13-, CD33-, and CD34-positive cells. The patient was diagnosed as t-MDS. Eleven courses of azacitidine were administered. Though the patient remitted temporarily, he died of pancytopenia. Key words:therapy-related myelodysplastic syndrome, chemoradiotherapy, azacitidine, oral cancer Requests for reprints to : Dr. Yoshizawa Y., Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Kochi Medical School, Kochi University, Kohasu, Oko-cho, Nankoku-city, Kochi 783-8505, Japan.
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