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第66回全国高等学校スキー大会(アルペン種目)における頭頸部外傷に関する調査 ― 第2報 競技力の影響について ―

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Academic year: 2021

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(1)

1. 緒言  アルペンスキー競技は,その競技特性から下肢のス ポーツ傷害1-3)が注目されるが,顎口腔系を含む頭頸部 外傷4-6)も決して少なくないと考えられる.また,スキ ー場という医療遠隔地7-8)とも呼べる場所で行われる事

第66回全国高等学校スキー大会(アルペン種目)における

頭頸部外傷に関する調査

― 第2報 競技力の影響について ―

片野 勝司*,**  中島 一憲*  武田 友孝*

A Questionnaire Survey on Head, Neck and Oro-facial Injuries

at the

66th Inter-High School Athletic Meeting (Alpine skiing Competition)

― Part. 2 Effect of Competition ability ―

Katsushi KATANO*,**,Kazunori NAKAJIMA* and Tomotaka TAKEDA*

Abstract

 As for the Alpine skiing characteristics, lower limb injures were thought to be predominant. However, in our previous study, we

have reported head, neck, and oro-facial injuries were more common than upper and lower limb injuries. Further, the incidence of

the head, neck, and oro-facial injuries in GS

(Giant Slalom) was significantly bigger than that in SL (Slalom). The incidence of

menʼs oral injury in SL was bigger than womenʼs. The incidence of womenʼs neck injury in GS was bigger than men. And around

25 % skier experienced a concussion. At a higher competition level, a skier seems to be required a faster speed and gruelling line

related to injury incidence. The present study aims to clarify whether the competition level influences on an injuries incidence.

 A questionnaire survey was conducted in the 66th Inter High School Athletic Meeting (Alpine skiing competition). Four hundred

forty participants joined the survey. We used SAJ points for evaluation of competition ability.

The collection rate was 358 (81.4%). The high competition ability skiers showed bigger oral injury incidence in total SL and menʼs

SL significantly (P<0.01). The high competition ability women skiers showed bigger neck injury incidence in GS significantly

(P<0.01). The high competition ability skiers showed a higher incidence of concussion in both SL and GS.

 The competition ability influences the head, neck and oro-facial injuries. A skiing area usually locates in a remote area of

medical care. It is important to prevent and reduce injuries. It is thought that a mouthguard

(MG) has protective efficacy against

not only the oro-facial injury but also concussion and neck injuries. Therefore, it would be better alpine ski racers should wear the

MG to reduce and prevent those injuries.

Keywords

:Alpine skiing, oro-facial injury, lower limb, questionnaire survey, mouthguard

原著論文 原稿受付日 2018年10月26日   原稿受理日 2019年8月31日 * 東京歯科大学 口腔健康科学講座スポーツ歯学研究室 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-9-18 ** 片野歯科医院 〒379-1409 群馬県利根郡市みなかみ町湯宿温泉606 から傷害を予防,軽減する対策を確立し選手の安全を 守り,競技力を向上させる事は重要な課題の一つであ る.そこで著者らは多種多様な環境の競技レベルの選 手が集う全国高等学校スキー大会(以下IHと略す)ア ルペン種目の参加選手に対し,アンケートによる頭頚 部スポーツ外傷・障害に関する調査を行った.その結

(2)

果を第1報9)で頭頸部外傷は,上肢74名(20.7%),下肢 140名(39.1%)に対し,163名(45.5%)と最も多かったこ と,全体の25.4%(91名)の者が歯科関連外傷の受傷経験 ありとしたこと,また,歯科関連外傷は,大回転種目 (以下GSと略す)に比べ回転種目(以下SLと略す) は有意に多く,SLにおいては男性が女性に比べ有意に 多い傾向があること,さらに脳震盪と頸部損傷におい ては,SLに比較しGSに多く,頸部損傷は,GSの女子 に最も多発していたことを報告した.これらの結果は, 過去の調査10)と異なり,歯科関連外傷を含む頭頸部外 傷が多いことを示した.これは,直接的にパフォーマ ンスに影響を与えないと判断されがちな軽微な歯科関 連外傷などは,調査の対象とされずにいたことや,調 査方法が選手自身への聞き取り調査であったことが要 因と思われる9)  今回,顎口腔系,頭頸部外傷受傷傾向に滑走スピー ドと滑走ラインの違いが影響するのではないかと考え られるため,競技力レベルの違いによる影響について, 更なる検討を行った. 2. 方法  群馬県高体連スキー専門部と群馬県スキー連盟を通 じ全国高体連の許可を得て,平成29年2月に群馬県の 片品村で開催された第66回全国高等学校スキー大会 のアルペン競技の出場選手440名(42都道府県,男子 228名,女子212名)を対象に日本スポーツ歯科医学会 大規模調査11)の調査用紙を基に作製したアンケート用 紙を用いて調査を行った(表1).開会式直後の監督会 議にて趣旨説明し,同会場に回収BOXを設置し回収で きた358名(回収率81.4%)について分析し,さらに 参加選手のSAJポイント(表2)を競技力の目安として 受傷との関係性についてエクセル統計:(株)社会情報 サービスを用いてマンホイットニーのU検定によって 分析を行った. 3. 結果 3.1 歯科関連外傷について  受傷経験を競技力で比較した結果,SLにおいて競技 力 の 高 い(SAJポ イ ン ト の 少 な い ) 選 手 ほ ど 有 意 (P<0.01)に受傷経験が多く(図1(a),(b)),男子SLに おいて競技力の高い選手の方が有意(P<0.05)に受傷 経験が多かった(図2(a),(b)).

Table1 Questionnaire (head, neck and oro-facial injury)

Table2  SAJ points of participated Alpine skier

Fig.1 Effect of performance (SAJ points) on Oral injury in      SL and GS

(3)

3.2 頸部外傷について  頸部外傷では,SLとGSのそれぞれの種目での受傷経 験において競技力での差は認められなかった(図3(a), (b))が,女子GSにおいて競技力の高い選手に受傷経 験が多い傾向が認められた(図4 (a),(b)). 3.3 脳震盪12)について  SL,GSとも 競技力の差において有意差は認められ なかったが,競技力の高い選手の方に多い傾向が認め られた(図5 (a),(b)).

Fig.2 Effect of performance (SAJ points) on Oral injury in

     SL in gender Fig.4 Effect of performance (SAJ points) on Neck injury in      GS in gender

(4)

4. 考察  受傷傾向について著者らは,前報9)において,アル ペン競技ではヘルメット装着が義務化され,種目によ って規格化13)されているにも関わらず頭頚部の外傷の 受傷経験のある者が上下肢に比較し多いことを報告し た.今回は,さらに競技力レベルの違いが顎口腔系, 頭頸部外傷受傷に影響するのではないかと考え更なる 検討を行った. 4.1 歯科関連外傷と競技力について  SLはGSに比べ競技力が,歯科関連外傷に影響してい た.さらに最も大きく関連があったのは,男子SLにお いてであった.確かに,転倒時における歯の破折や口 腔粘膜の受傷も考えられるが,GSに対しポールの近く を通るSLで歯科関連外傷が多いのは,ポールを通過す る際に顔面をポールに衝突する俗にいう「顔ポ」によ って受傷するためと考えられた.SLで女子に比較し男 子に多く,さらに競技力が高い選手ほど受傷経験が多 い傾向があることから,それぞれの滑走ラインと通過 速度の違いが大きく関与しているものと推察された. SLでは,顔面へのポールの衝突を防ぐために,選手の ほとんどがSL用のヘルメットにチンガードを装着して いるにも関わらず,SLでの歯科関連外傷の受傷が多い という調査結果であった.このこともMGの使用の必 要性を示すものと考えられる. 4.2 脳震盪・頭部外傷について  前報において,脳震盪および頸部損傷は,GSにおい て有意に多く認められたことを報告した.今回の報告 で,競技力の高い選手ほどこれらの損傷が多い傾向が あった.これは,滑走速度の差から生じる転倒時の衝 撃力の違いによるものと思われた.そのような事から も種目に適した外傷予防の対策を立てる事が重要であ ると考えられる.脳振盪は頭部に対する直接的あるい は間接的な外力によって発症するとされている.頭部 以外に作用する間接的な外力により生じる脳振盪に対 して,歯科医により製作,調整された適切なMG使用 時には,強く噛み締める事が出来るため,換言すると 咀嚼筋の筋活動を向上させる事が出来るため,この筋 活動の向上に連携して頸部の筋もより早く・強く緊張 させる事が可能となる.さらに,下顎下方より衝撃力 が作用した場合,MG材による衝撃力の吸収作用があ り,かつ顎関節の関節腔空隙も確保できる事から,MG の装着は脳震盪の予防・軽減に対する効果が期待され る14-15).この適切なMGによる効果は,器具による衝 突が少なく,転倒時における脳振盪などの頭頚部外傷 が多いとされるモーグルスキーやハーフパイプなどに も外傷予防の観点から有効と考えられている16-19).今 後MGの使用をアルペンスキー競技のみならず,フリ ースタイルスキーやスノーボード競技にも検討すべき 一つの要因かと思われる.  また,筆者らは,頸部外傷は種目間と男女間の両方 で有意差が認められ,GSの女子に最も多く生じていた ことを報告した9).今回,女子において競技力の高い 選手ほど頸部外傷の受傷経験が多いという結果も,脳 震盪と同様に種目間の滑走速度の差による転倒時の衝 撃の違いよるものが要因の一つと考えられたが,性差 による頸部の筋力の差異20)が,このような傾向を示し たと推測された. 4.3 今後の検討事項  前報9)において,アルペンスキー競技において,歯 科関連外傷を含む頭頚部外傷の受傷経験者も少なくな いことが示されている.また今回,種目間と競技力に おいて,受傷傾向が多少異なるものの,競技力の高い ほど受傷経験が多いことが判った.これらの事により, 選手や指導者に対し歯科関連外傷や間接的な外力によ る脳振盪などの予防・軽減に効果があるとされるMGを 認知し,その使用を促すと共に競技種目に合わせたMG の作製などの体制づくりを検討していく必要があるも のと考えられた21-22)  しかし今回の調査は,高校生のみを対象とし,SLと GSの種目での調査を主とした.また,IH出場時のSAJ ポイントから競技力を推察し分析を行ったため,受傷 時の個人の競技レベルを図る事は出来なかった.今後, 他の年代や幅広いレベルへ調査の対象を拡げ,受傷時 の状況や,レベル差による衝撃の強度差を調べると共 に,その際のMGの有効性等についても調査していきた いと考えている. 5.まとめ  歯科関連外傷の受傷経験を競技力で比較した結果, SL,男子SLにおいて競技力の高い選手の方が有意に 受傷経験が多かった.頚部外傷の受傷経験は,GS女子 において競技力の高い選手の方が受傷経験が多い傾向 があった.さらに脳振盪に関しても,有意差はなかっ たが競技力の高い選手の方が受傷経験が多い傾向であ った.この様に,今回の調査で歯科関連外傷を含む頭

(5)

頸部外傷において種目,競技力の差が受傷に影響を与 える事が示唆された.今後,これらの外傷予防に効果 があるとされているMGの使用が,アルペンスキー競技 において検討され,普及する事が望まれる.  謝 辞  今回,全国高等学校スキー大会において,アンケート による外傷調査の機会をいただいた事を群馬県スキー 連盟,群馬県高体連スキー専門部ならびに大会関係者 の皆様に心より深謝いたします.  文 献 1)堀江雅史,宗田大.【競技特性からみた前十字靱帯損 傷⊖競技復帰に向けたアプローチ⊖】総論 当科にお けるハムストリング腱を用いた2重束ACL再建術後 のスポーツ復帰状況.臨床スポーツ医学.2014, 31 (11), p.1016-1020. 2)寒川美奈.【競技特性からみた前十字靱帯損傷⊖競技 復帰に向けたアプローチ⊖】スキー選手のACL再建 術後リハビリテーションと競技復帰.臨床スポーツ 医学.2014, 31 (11), p.1088-1091. 3)古賀英之,宗田大.【競技特性からみた前十字靱帯損 傷⊖競技復帰に向けたアプローチ⊖】アルペンスキー におけるACL損傷頻度,メカニズム,予防 国際ス キー連盟の取り組み.臨床スポーツ医学.2014, 31 (11), p.1082-1087. 4)田久保興徳,橋口淳一,木村隆.滋賀県スキー指導 員に対するスキー傷害調査.日本臨床スポーツ医学 会誌.2017, 25 (3), p.416-422. 5)片野勝司,武田友孝,松田祐明,西野仁奏,鈴木義弘, 河野克明,中島一憲,木下理恵.第66回全国高等学校 スキー大会における頭頸部外傷に関する調査 アル ペンスキー競技において(会議録).スポーツ歯学. 2018, 21 (2), p.62. 6)片野勝司,松本文男,今成亮,星野晃,宮下清,割田 一敏,武田友孝,石上恵一.アルペンスキー競技に おける頭頸部外傷ならびに咬合・MGに対するアンケ ート調査(会議録).スポーツ歯学. 2006, 9 (1), p.73. 7)木下理恵,西内辰也,平出敦.事前調査が効した医 療僻地におけるスポーツ競技会(スキーフリースタ イル・モーグル競技)の救急医療体制について(会議 録).日本救急医学会雑誌.2015, 26 (8), p.446. 8)木下理恵,片野勝司,窪田愛恵,西内辰也,平出敦. 護医療体制について(会議録).日本臨床スポーツ医 学会誌. 2015, 23 (4), p.203. 9)片野勝司,中島一憲,松田祐明,西野仁泰,鈴木義 弘,河野克明,武田友孝.第66回全国高等学校スキ ー大会における頭頚部外傷に関する調査・アルペン スキー競技において.スポーツ歯学.2018, 22 (1), p.10-14. 10)安井利一.【スポーツ現場での頭頸部外傷】現場で のケアのヒント・指針 マウスガード(マウスピー ス ) の 役 割. 臨 床 ス ポ ー ツ 医 学.2014, 31 (3), p.236-239. 11)安井利一,前田芳信,田中佑人,石上恵一,上野敏 明,松田成俊,松本勝,月村直樹,竹内正敏,武田友 孝,額賀康之,坂東陽月.マウスガードの外傷予防 効果に関する大規模調査について 中間報告.スポ ーツ歯学.2013, 17 (1), p.9-13. 12)大伴茉奈,山田睦雄,谷諭,福林徹.【スポーツ現場 での頭頸部外傷】頭頸部外傷の最前線 第4回スポ ーツにおける脳震盪に関する国際会議 解説と翻訳 の抜粋.臨床スポーツ医学.2014, 31 (3), p.202-215. 13)国際スキー連盟 編.FIS競技用品規格&コマーシャ ルマーキング規格2012/2013.2012, p.9-10.

14)Nakajima, K.; Takeda, T.; Nishino, M.; Matsyda, Y.; Saito, M.; Suzuki, Y.; Kawano, Y.; Katano K. Effects of Mouthguard on Concussion Reduction or Prevention. International Journal of Sports Dentistry. 2018, 10 (1), p.47-49.

15)Takeda, T.; Nakajima, K.; Suzuki, Y.; Kawano, Y.; Katano K. What Type of Concussion Could be Reduced By Clenching with an Appropriate Mouthguard. An In-Depth Guide to Sports. 2018, p.111-130.

16)杉本 信吾.一般スキーヤー・スノーボーダーにお ける脳振盪に対する認識状況調査(第2報).日本臨 床スポーツ医学会誌.2017, 25 (4), p.179. 17)福田 修.コンタクトスポーツの脳振盪 各スポー ツでの脳振盪の現状と対策 スノーボードにより外 傷性健忘を呈した98例の検討.日本臨床スポーツ医 学会誌.2017,25 (2), p.191-195. 18)福田 修.【冬季スポーツにおける外傷・障害】冬 季競技と外傷・障害 スキー・スノーボード競技に おける頭部外傷.臨床スポーツ医学.2015, 32 (11), p.1046-1052. 19)三島 攻,額賀 英之,小澤 卓充,雨宮 あい,武田

(6)

スポーツ特性と顎口腔系状態との関連.日本スポー ツ歯科医学会学術大会プログラム抄録集20回.2009, p.52. 20)金久博昭.【性差の運動生理学】骨格筋量および 筋 力 に お け る 性 差. 体 育 の 科 学.2012, 62 (12), p.905-913.

21)Yasui, T.; Gonda, T.; Maeda, Y. Do Mouthguards Prevent or Reduce Oral Injuries and Concussion during Sports Events?. International Journal of Sports Dentistry. 2017, 10, p.7-11.

22)武田友孝.スポーツマウスガードの効果・効能を探 る スポーツマウスガードの頭頸部外傷予防・軽減の 可能性.日本臨床スポーツ医学会誌. 2017, 25 (4), p.135.

Table 2   SAJ points of participated Alpine skier
Fig. 2 Effect of performance  (SAJ points)  on Oral injury in

参照

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